説明

ガイド装置、定着装置及び画像形成装置

【課題】定着装置に向けて用紙をガイドするガイド装置において、用紙の種類に応じて可動ガイドの姿勢を切り替える機構の構成を簡略化し、更に装置全体を小型化できるガイド装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】熱源81を有する定着回転体82と、前記定着回転体82に対して加圧可能な加圧回転体83とを有する定着装置8に向けて搬送される記録用紙Pをガイドするガイド装置7において、回転軸72で回転可能に支持され、記録用紙Pから受ける押圧力に応じて第一姿勢と第二姿勢とに切替え可能なガイド71部材を設ける。ガイド部材71は、分割可能な上流側ガイド部材71aと下流側ガイド部材71bとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド装置、定着装置及びその定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真式等の画像形成装置においては、画像を形成する方法として、用紙に転写されたトナーに熱を加えて定着する熱定着の方法が採られている。その際には、熱源によって加熱される定着ローラと、定着ローラに対して加圧可能な加圧ローラとを有する定着装置が用いられる。更に、この定着装置に向けて搬送される用紙をガイドするガイド装置が設けられている。
【0003】
図5に示すように、定着装置100の定着ローラ110と加圧ローラ120とによって形成される定着ニップ130に向けて用紙Pを搬送する際、通常は、記録媒体をガイド部材210で定着ローラ110に向けてガイドし、定着ローラ110とガイド部材210の先端との隙間を通るように記録用紙Pを撓ませてから定着ニップ130に突入させることで、定着後の用紙での皺の発生を防止している。
【0004】
一方、厚みのある記録用紙P、例えば封筒を搬送する際に同様に記録媒体を撓ませると、定着ニップ130を通過する際に記録用紙Pに皺が発生するという問題がある。これを防止するため、図6に示すように、厚みのある記録用紙Pが搬送された際に、ガイド部材210を、記録用紙Pが定着ニップ入口に向うような姿勢に変更し、記録用紙Pの撓みを回避することが求められる。このようなガイド部材210の姿勢制御のための機構として、例えば特開2006−098572号公報(特許文献1)に記載されているように、電気信号によりソレノイド220をオン/オフすることで、ガイド部材210の姿勢を切り替えることが考えられる。
【0005】
ガイド部材の姿勢制御のための同様な機構については、特開2009−003304号公報(特許文献2)にも記載されており、記録用紙の種別によってガイド部材の位置を調整することも記載されている。更に、特開昭59−212865号公報(特許文献3)には、ガイド部材の姿勢制御の機構として、上記ソレノイドの他にカム機構やスライド板等を用いた様々な機構が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ソレノイドでガイド部材の姿勢制御を行ったのでは、姿勢の制御機構が複雑化し、コストアップを招く。これは他の機構を用いた場合でも同様である。また、ソレノイドを含む駆動系等の占有スペースが大きくなるため、ガイド部材210の回転軸210aは用紙搬送方向(同図の矢印方向)の最上流端に配置せざるを得ない。この場合、上流側の回転軸210a周辺では軸受等を用いた複雑な回転支持機構が必要となり、さらに下流側ではガイド部材とソレノイド等を機械的に分離する必要があるため、ガイド部材の着脱は困難となる。そのため、定着装置200の周辺ユニットの着脱を可能とするためには、ガイド部材との干渉が生じないような着脱経路を確保する必要があり、設計自由度が低下すると共に、画像形成装置の大型化を招く。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑み、低コストでかつ定着装置の周辺ユニットの取り外しに容易に対応でき、設計自由度の向上、さらには画像形成装置全体の小型化を達成可能なガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、未定着画像が形成された記録媒体をガイドするガイド部材を備え、前記ガイド部材を、加熱される定着回転体と、前記定着回転体に加圧される加圧回転体とで形成した定着ニップよりも記録媒体搬送方向の上流側に配置したガイド装置において、ガイド部材に第一姿勢と第二姿勢との間の姿勢変更を許容し、第一姿勢と第二姿勢の間のガイド部材の姿勢変更を、ガイド部材に当接した記録媒体が与える押圧力と、ガイド部材に常時付与される付勢力とで行い、前記付勢力を、低剛性の記録媒体に押圧されたガイド部材が第一姿勢となり、高剛性の記録媒体に押圧されたガイド部材が第二姿勢となるように設定したことを特徴とするものである。
【0009】
上記構成では、ガイド部材の姿勢変更に際して、ガイド部材に当接した記録媒体の剛性差を利用している。そのため、ガイド部材の姿勢制御機構には、姿勢変更後にガイド部材を初期姿勢に復帰させるための付勢力を与えるだけで足りる。この付勢力は、外部動力の入力なしに自己復帰できる付勢力(例えば弾性力や重力)であればよい。そのため、ガイド部材の姿勢制御機構を簡略化し、その低コスト化および小型化を図ることができる。また、このように姿勢制御機構を簡略化することで、ガイド部材の一部または全部の着脱を容易に行うことが可能となり、周辺ユニットを取り外す際のガイド部材との干渉を回避できる。これにより、周辺ユニットの取り外し経路の確保が容易となり、装置全体の設計自由度の向上や小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストでコンパクトなガイド装置を提供することができる。また、画像形成装置全体の設計自由度の向上、および小型化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るガイド装置及び定着装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】図2に示すガイド装置の他の状態を示す側面図である。
【図4】図2に示すガイド装置のメンテナンス時における概略構成を示す側面図である。
【図5】従来の定着装置に用いられるガイド装置の概略構成を示す側面図である。
【図6】図5に示すガイド装置の他の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置1は、露光部2、画像形成部3、画像転写部4、給紙部5、搬送路6、ガイド装置7、定着装置8、及び排出部9等より構成されている。
【0014】
露光部2は、画像形成装置1の上部に位置しており、レーザ光を発光する光源や各種光学系より構成されている。具体的には、図示しない画像取得手段から得られた画像データに基づいて作成される画像の色分解成分毎のレーザ光を、後述する画像形成部3の感光体に向けて照射することで、感光体の表面を露光するものである。
【0015】
画像形成部3は、露光部2の下方に位置しており、画像形成装置1に対して着脱可能に構成された複数のプロセスユニット31を備えている。各プロセスユニット31は、表面上に現像剤であるトナーを担持可能な感光体ドラム32と、感光体ドラム32の表面を一様に帯電させる帯電ローラ33と、感光体ドラム32の表面にトナーを供給する現像装置34と、感光体ドラム32の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード35等で構成されている。なお、各プロセスユニット31は、カラー画像の色分解成分であるイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色に対応した4つのプロセスユニット31(31Y,31C,31M,31Bk)からなっており、これらは異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっているため、符号は省略している。
【0016】
画像転写部4は、画像形成部3の直下に位置する。この画像転写部4は、駆動ローラ41及び従動ローラ42に周回走行可能に張架されている中間転写ベルト43、中間転写ベルト43の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置44、各プロセスユニット31の感光体ドラム32に対して中間転写ベルト43を挟んだ対向位置に配置されている一次転写ローラ45等で構成されている。各一次転写ローラ45はそれぞれの位置で中間転写ベルト43の内周面を押圧しており、中間転写ベルト43の押圧された部分と各感光体ドラム32とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。
【0017】
また、中間転写ベルト43の駆動ローラ41と、中間転写ベルト43を挟んで駆動ローラ41に対向した位置には二次転写ローラ46が配設されている。二次転写ローラ46は中間転写ベルト43の外周面を押圧しており、二次転写ローラ46と中間転写ベルト43とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。更に、ベルトクリーニング装置44によってクリーニングされた廃トナーを収容する廃トナー収容器47が、中間転写ベルト43の下方に図示しない廃トナー移送ホースを介して配設されている。
【0018】
給紙部5は、画像形成装置1の下部に位置しており、記録媒体としての記録用紙Pを収容した用紙トレイ51や、用紙トレイ51から記録用紙Pを搬出する給紙ローラ52等からなっている。
【0019】
搬送路6は、給紙部5から搬出された記録用紙Pを搬送する搬送経路であり、一対のレジストローラ61の他、後述する排出部9に至るまで、図示しない搬送ローラ対が搬送路6の途中に適宜配置されている。
【0020】
ガイド装置7は、二次転写ニップと後述する定着装置8の定着ニップとの間の搬送路6に設けられており、ガイド部材71、およびガイド部材71を回転可能に支持する回転軸72等を有している。ガイド部材71は、搬送される前記用紙との当接時に記録用紙Pから受ける押圧力によって第一姿勢と第二姿勢とに切替え可能であり、後述する定着装置8に向けて搬送される用紙をガイドする。
【0021】
定着装置8は、ガイド装置7の搬送経路下流に位置しており、熱源としての加熱源81によって加熱される、定着回転体としての定着ローラ82、その定着ローラ82を加圧可能な加圧回転体としての加圧ローラ83等を有している。
【0022】
排出部9は、画像形成装置1の搬送路6の最下流に設けられ、記録用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ91と、排出された記録媒体をストックするための排紙トレイ92とが配設されている。
【0023】
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
【0024】
画像形成装置1において、画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット31Y,31C,31M,31Bkの感光体ドラム32が、図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、感光体ドラム32の表面が帯電ローラ33によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体ドラム32の表面には、露光部2から形成する画像の色成分毎のレーザ光がそれぞれ照射されて、感光体ドラム32の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム32に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体ドラム32上に形成された静電潜像に、各現像装置34によって現像剤であるトナーが供給されることにより、静電潜像は顕像であるトナー画像(現像剤像)として可視像化される。
【0025】
次いで、画像転写部4の駆動ローラ41が図の反時計回りに回転駆動されることにより、中間転写ベルト43が図の矢印Aで示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ45には、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ45と各感光体ドラム32との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット31Y,31C,31M,31Bkの感光体ドラム32上に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト43上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト43の表面には、フルカラーのトナー画像が形成される。
【0026】
その後、トナー画像が転写された後の各感光体ドラム32は、表面に付着している残留トナーがクリーニングブレード35によって除去され、次いで、その表面が図示していない除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0027】
一方、画像形成動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部5の給紙ローラ52が回転駆動することによって、用紙トレイ51に収容された記録用紙Pが搬送路6に送り出される。搬送路6に送り出された記録用紙Pは、レジストローラ61によってタイミングを計られて、二次転写ローラ46とそれに対向する駆動ローラ41との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ46には、中間転写ベルト43上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト43上のトナー画像が記録用紙P上に一括して転写される。
【0028】
トナー画像が転写された記録用紙Pは、ガイド装置7によってガイドされながら定着装置8へと搬送され、加熱源81によって加熱されている定着ローラ82と加圧ローラ83とによって記録用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が記録用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された記録用紙Pは、定着ローラ82から分離され、図示しない搬送ローラ対によって搬送され、排出部9において排紙ローラ91によって排紙トレイ92へと排出される。また、転写後の中間転写ベルト43上に付着している残留トナーは、ベルトクリーニング装置44によって除去され、除去されたトナーは、図示しないスクリューや廃トナー移送ホース等により廃トナー収容器47へ搬送され回収される。
【0029】
以上の説明は、記録用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット31Y,31C,31M,31Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニット31を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0030】
次に、図2及び図3に基づいて、画像形成装置1におけるガイド装置7及び定着装置8について詳しく説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るガイド装置7及び定着装置8を示す側面図である。
【0031】
図2に示すように、定着装置8では、定着ローラ82と、図示しない加圧手段によって定着ローラ82に向けて加圧されている加圧ローラ83とが定着ニップNを構成する。定着ローラ82の内部には、定着ローラ82を加熱する加熱源81が配設されている。また、定着ローラ82と加圧ローラ83とはそれぞれ図の矢印の方向に回転可能に構成されている。その結果、記録用紙Pは図の下方から上方に向けて定着ニップNを通過する。
【0032】
定着ローラ82は熱伝導性基体の周囲に弾性層を形成し、さらに被覆層で被覆された円筒状部材である。熱伝導性基体としては、所要の機械的強度を有し、熱伝導性の良好な炭素鋼材やアルミニウム材が主として用いられる。また、弾性層は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムで形成される。さらに弾性層の外側(外周面)の被覆層は、トナーとの離型性を良好とすると共に、弾性層の耐久性を高めるためのもので、熱伝導率が高く耐久性に富む材料で形成される。例えば、フッ素樹脂(PFA)チューブで被覆したものやフッ素樹脂(PFA又はPTFE)塗料を塗布したもの、あるいはシリコーンゴム層やフッ素ゴム層を形成したもの等が被覆層として用いられる。
【0033】
一方、加圧ローラ83は、芯金、その芯金の外側(外周)に形成された弾性層、及び弾性層を被覆する被覆層からなる円筒状部材である。芯金としては、例えばSTKM(機械構造用炭素鋼鋼管)等が用いられ、弾性層としては、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはこれらの発泡体が用いられる。被覆層は例えば離型性に富むPFA,PTFA等の耐熱性フッ素樹脂のチューブで形成される。
【0034】
また、定着ローラ82の周囲には、図示しない温度検知手段としてのサーミスタや、異常温度防止用のサーモスタット等が配設され、サーミスタからの検出信号によって定着ローラ82の表面温度が所定の温度域内に維持されるように、図示しない制御手段によって制御されている。
【0035】
定着装置8よりも記録用紙Pの搬送方向上流側に、ガイド装置7が設けられており、ガイド装置7は、ガイド部材71、回転軸72、付勢手段としての弾性体73、および位置決め機構76を有している。ガイド部材71は、搬送方向に沿って分割されており、図2では上流側ガイド部材71aと下流側ガイド部材71bとに二分割した場合を例示している。ここで、駆動ローラ41の駆動力で搬送される記録用紙Pは、まず先端が上流側ガイド71aに当たり、続いて下流側ガイド部材71bにガイドされることにより定着ニップNに突入する。
【0036】
上流側ガイド部材71a及び下流側ガイド部材71bは、それぞれ断面がL字形状をなす樹脂製もしくは金属製であり、L字の一辺同士を衝合させ、他辺を搬送方向に連続させた形態で結合されている。上流側ガイド部材71aおよび下流側ガイド部材71bの他辺のうち、搬送路6と対向する面がガイド面71cを構成する。上流側ガイド部材71aおよび下流側ガイド部材71bの結合構造は、両者の結合・分離が容易である限り任意で、例えばスナップフィット等を用いることができる。具体的には、一方の部材に設けたフックを素材の弾性を利用して他方の部材に引っ掛けて機械的に保持する方法、一方の部材に設けたピンを他方に設けたピン穴に押し込み、両者間の摩擦力で保持する方法等が考えられる。上流側ガイド部材71aおよび下流側ガイド部材71bのガイド面71cを連続させることで、ガイド部材71の姿勢変更後も滑らかに記録用紙Pをガイドすることができる。
【0037】
回転軸72は、ガイド部材71のガイド面71cの搬送方向中間部であって、上流側ガイド部材71aと下流側ガイド部材71bの境界部に配置される。この回転軸72は、下流側ガイド部材71bに固定されている。回転軸72の両端を図示しない静止部材に軸受を介して取り付けることで、ガイド部材71が回転軸72を中心として回転可能となる。
【0038】
弾性体73は圧縮状態で下流側ガイド部材71bに取り付けられている。ガイド部材71は、弾性体73の弾性力により図中の反時計回り方向に常時付勢される。ガイド部材71の反時計回り方向の回転は、位置決め機構76によって規制される。位置決め機構76は、ガイド部材71に設けた当接部74と位置決め部材75とで構成され、当接部74と位置決め部材75との当接により、ガイド部材71の反時計方向の回転が規制される。この位置決め状態でのガイド部材71の姿勢を「第一姿勢」と呼ぶ。ガイド部材71を第一姿勢にすることにより、記録用紙Pは定着ニップNの延長線(破線で示す)よりも定着ローラ82側に向けてガイドされる。
【0039】
位置決め部材75は静止部材に取り付けられるが、図示のように、定着ローラ82および加圧ローラ83を支持する定着装置8の支持部材84(例えばフレーム)に位置決め部材75を取り付ければ、ガイド装置7と定着装置8とを近接して配置することができ、装置全体をコンパクト化することができる。弾性体73は、ガイド部材71の可動範囲内において、第一姿勢方向(反時計回り方向)の弾性力をガイド部材71に付与できるものであればよく、この弾性力を生じる限り、任意の弾性部材(コイルばね、トーションスプリング、ゴム材等)を使用することができる。また、弾性体73としては、圧縮状態のものの他、引張状態のものも使用することができる。
【0040】
記録用紙Pと当接したガイド部材71は記録用紙Pから押圧力を受ける。この押圧力は、記録用紙Pの厚さやサイズ、形態等によって異なる値となり、通常は剛性(紙面鉛直方向の力に対する曲げ剛性)の高い記録媒体ほどガイド部材71が受ける押圧力が大きくなる。本発明のガイド装置では、この性質を利用してガイド部材71の姿勢制御を行う。
【0041】
図2は、記録用紙Pが、比較的薄い普通紙P1(低剛性紙)である場合を示している。この場合、用紙P1がガイド部材71と当接した時にガイド部材71に作用する押圧力F1は小さく、従って、この押圧力F1によりガイド部材71に生じる時計回り方向のモーメントM1も小さくなる。その一方で、ガイド部材71には、弾性体73の弾性力Fにより、ガイド部材71を逆方向(反時計回り)に回転させようとするモーメントMが常時作用する。この時、M>M1となるように弾性体73の弾性力Fを設定しておけば、ガイド部材71を第一姿勢に保持することができる。従って、普通紙P1は、ガイド部材71よって定着ローラ82に向けてガイドされ、定着ローラ82の外周面に当接した後、ガイド部材71の下流端と定着ローラ82の外周面の間の隙間を通過して撓みを生じ、定着ニップNに供給される。このようにして、普通紙P1を撓んだ状態にすることで、用紙の幅方向に腰を与えて平面性を確保することができ、皺の発生を抑制することができる。
【0042】
図3は、記録用紙Pが、例えば封筒や秤量100g/m2以上の比較的厚い厚紙P2(高剛性紙)である場合を示している。この場合、厚紙P2がガイド部材71と当接した時にガイド部材71に作用する押圧力F2は低剛性紙の時の押圧力F1より大きく、従って、この押圧力F2によりガイド部材71に生じる時計回り方向のモーメントM2も低剛性紙の時のモーメントM1より大きくなる。この時、弾性体73の弾性力Fによりガイド部材71に生じるモーメントMがM2より小さくなるよう弾性力Fが設定されていれば(M<M2)、ガイド部材71が時計回りに回転して第二姿勢に移行する。この第二姿勢では、厚紙P2が、第一姿勢でのガイド方向よりも定着ニップ入口への接近側、すなわち定着ニップNの延長線に漸近する方向にガイドされる。そのため、厚紙P2は定着ニップNに向けてガイドされ、殆ど撓みを生じることなくそのまま定着ニップNに搬送される。ここで、厚紙P2は、定着ローラ82に突き当たることがないため、搬送不良を起こす虞がなく、また、撓みが抑えられるため、厚紙P2が封筒であっても封筒皺の発生は軽減される。
【0043】
このようにM>M1およびM<M2の双方の条件を満たすモーメントMが得られるように弾性体73の弾性力Fを設定することで、ガイド部材71を記録用紙Pの剛性差に応じた最適姿勢に制御することが可能となる。これは、低剛性の記録用紙P1に押圧されたガイド部材71が第一姿勢となり、高剛性の記録用紙P2に押圧されたガイド部材71が第二姿勢となるように弾性体73の弾性力Fを設定することを意味する。この場合、想定可能な最高剛性を有する記録用紙Pを使用した時でも、ガイド部材71による記録用紙Pのガイド方向が定着ニップNの延長線よりも加圧ローラ83側にならない(記録用紙Pが加圧ローラ83の外周面に突き当たることがない)ように弾性力Fを設定することが望まれる。
【0044】
以上に述べたガイド部材71の姿勢制御は、弾性体73を使用するだけで行うことができる。そのため、ソレノイド等を使用した従来装置に比べ、ガイド部材71の姿勢制御機構を簡略化することができ、低コスト化やコンパクト化を図ることができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、ガイド部材71を付勢する手段として、弾性ばねやゴム等の弾性体73を用いる場合を例示したが、これに限ることはない。例えば、ガイド部材71に重りを付加することにより第一姿勢となるようにしておき、記録用紙Pによって所定以上の押圧力が加えられることにより第二姿勢に切り替えられるようにしてもよい。更に、軸の位置を工夫することによって、ガイド部材71の自重により第一姿勢となるようにしてもよい。これらによって、弾性体が不要となるため、更にガイド装置の構成を簡素化できる。このように付勢手段としては、ガイド部材71の姿勢変更後(第一姿勢→第二姿勢)、外部動力を付与することなく初期姿勢(第一姿勢)に自己復帰できるものを使用することが望まれる。以上の説明はこの種の自己復帰力を有する付勢手段として、弾性力や重力を利用した場合を例示したものである。
【0046】
このように本発明のガイド部材71の姿勢制御では、ガイド部材に当接した記録用紙Pの剛性差を活用し、さらに自己復帰力を備えた付勢力を活用しているため、姿勢制御機構の構成を簡略化することができる。そのため、図2等に示すように、ガイド部材71の姿勢制御に関与する機構や部材(弾性体73、位置決め機構76等)を下流側ガイド部材71bに集約することができ、上流側ガイド部材71aは姿勢制御に関係する機構の制約を受けない。従って、上流側ガイド部材71aのガイド部材71に対する着脱が容易なものとなる。
【0047】
このようにガイド部材71の一部(上流側ガイド部材71a)を着脱可能とすることにより、図4に示すように、上流側ガイド部材71aを取り外した状態では、定着装置8の下方に、画像転写部4の取り外しスペースを十分に確保することができる。よって、例えば、中間転写ベルト43を含む画像転写部4のユニット全体を水平方向(図4の矢印Bの方向)に引き出すことによって、画像転写部4のメンテナンスが可能となる。そのため、ガイド部材71の姿勢制御にソレノイド等を用いた従来のガイド装置と比較すると、画像転写部4の取り外し経路を確保することが容易となり、ガイド装置7や定着装置8との配置距離を近づけることが可能となるため、画像形成装置1全体の設計自由度の向上や小サイズ化を図ることができる。
【0048】
ここで、上流側ガイド部材71aの有無をセンサー等によって検出するようにしてもよい。それにより、引き出したユニットのメンテナンスが終了した際に上流側ガイド部材71aが再度取り付けられたかどうかを確実に検出することができ、上流側ガイド部材71aの取り付けミスや、取り付けられていない状態での装置の使用を防止することができる。
【0049】
また、第一姿勢と同様に、ガイド部材71の第二姿勢についても、図示しない位置決め機構により位置決めを行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。本発明に係る画像形成装置は、図1に示す画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 画像形成装置
7 ガイド装置
71 ガイド部材
71a 上流側ガイド部材
71b 下流側ガイド部材
72 回転軸
8 定着装置
81 加熱源(熱源)
82 定着ローラ(定着回転体)
83 加圧ローラ(加圧回転体)
P 記録用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2006−098572号公報
【特許文献2】特開2009−003304号公報
【特許文献3】特開昭59−212865号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着画像が形成された記録媒体をガイドするガイド部材を備え、前記ガイド部材を、加熱される定着回転体と、前記定着回転体に加圧される加圧回転体とで形成した定着ニップよりも記録媒体搬送方向の上流側に配置したガイド装置において、
ガイド部材に第一姿勢と第二姿勢との間の姿勢変更を許容し、第一姿勢と第二姿勢との間のガイド部材の姿勢変更を、ガイド部材に当接した記録媒体が与える押圧力と、ガイド部材に常時付与される付勢力とで行い、前記付勢力を、低剛性の記録媒体に押圧されたガイド部材が第一姿勢となり、高剛性の記録媒体に押圧されたガイド部材が第二姿勢となるように設定したことを特徴とするガイド装置。
【請求項2】
前記ガイド部材を、上流側ガイド部材と下流側ガイド部材とに分割可能に構成したことを特徴とするガイド装置。
【請求項3】
前記ガイド部材を回転可能に支持し、その回転軸を下流側ガイド部材に設けたことを特徴とする請求項2に記載のガイド装置。
【請求項4】
前記上流側ガイド部材と下流側ガイド部材とを一体回転可能にしたことを特徴とする請求項3に記載のガイド装置。
【請求項5】
第一姿勢のガイド部材が、定着ニップ入口よりも定着回転体側に記録媒体をガイドし、第二姿勢のガイド部材が、第一姿勢よりも定着ニップ入口への接近側に記録媒体をガイドすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項6】
前記付勢力を弾性力もしくは重力で構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項7】
前記ガイド部材の第一姿勢を規定する位置決め部材を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項8】
前記位置決め部材を、前記定着回転体および加圧回転体を支持する支持部材に設けたことを特徴とする請求項7に記載のガイド装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のガイド装置と、定着回転体と、加圧回転体とを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項9に記載の定着装置と、記録媒体に未定着画像を転写する画像転写部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15551(P2013−15551A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146135(P2011−146135)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】