説明

ガスセンサ、空燃比制御装置および輸送機器

【課題】ヒータの電気抵抗値の誤差を正確且つ簡便に補償し得るガスセンサを提供する。
【解決手段】本発明によるガスセンサは、ガス検出部1と、温度に応じて電気抵抗値が変化するヒータ2と、ヒータ2の動作を制御し、ヒータ2への加熱のための通電を行う制御部3とを備える。制御部3は、ヒータ2への加熱のための通電が停止されている期間にヒータ2へ電流を供給する電流供給部6と、電流供給部6からヒータ2に電流が供給されているときのヒータ2の両端電圧を検知する電圧検知部7と、ヒータ2の冷間時に、周囲の温度および電圧検知部7によって検知されるヒータ2の両端電圧に基づいて、電流供給部6から供給される電流の大きさを調整する電流調整部8と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関し、特に、ガス検出部を昇温させるヒータを備えたガスセンサに関する。また、本発明は、そのようなガスセンサを備えた空燃比制御装置や輸送機器にも関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題やエネルギー問題の観点から、内燃機関の燃費を向上させたり、内燃機関の排気ガス中に含まれる規制物質(NOxなど)の排出量を低減したりすることが求められている。このためには、常に最適な条件で燃料の燃焼が行えるよう、燃焼状態に応じて燃料と空気との比率を適切に制御する必要がある。空気と燃料との比率は空燃比(A/F)と呼ばれ、三元触媒を用いる場合、最適な空燃比は、理論空燃比である。理論空燃比とは、空気と燃料とが過不足なく燃焼する空燃比である。
【0003】
理論空燃比で燃料が燃焼している場合、排気ガス中には一定の酸素が含まれる。空燃比が理論空燃比よりも小さい場合、つまり、燃料の濃度が相対的に高い場合には、排気ガス中の酸素量が、理論空燃比の場合の酸素量に比べて減少する。一方、空燃比が理論空燃比よりも大きい(燃料の濃度が相対的に低い)場合には、排気ガス中の酸素量は増加する。このため、排気ガス中の酸素量あるいは酸素濃度を計測することによって、空燃比が理論空燃比からどの程度ずれているかを推定し、空燃比を調節して最適な条件で燃料が燃焼するように制御することが可能となる。
【0004】
排気ガス中の酸素濃度を計測するためには、酸素センサが用いられる。酸素センサを好適に動作させるためには、300℃以上の高温が必要であるため、酸素センサにはヒータが設けられている。ヒータを備えた酸素センサの一例を図14に示す。なお、図14では、わかりやすさのために酸素センサ510を分解して示している。
【0005】
酸素センサ510は、アルミナなどの絶縁体から形成された基板531と、基板531の主面531a上に設けられたガス検出部501とを備えている。ガス検出部501は、酸化物半導体から形成されており、雰囲気中に含まれる酸素の分圧に応じてその抵抗値が変化する。基板531の主面531a上には、ガス検出部501の抵抗値を検出するための電極532がガス検出部501に接触するように設けられている。なお、ガス検出部501は、上述したような抵抗型ではなく、固体電解質を用いた起電力型であってもよい。
【0006】
基板531の裏面531b側には、ガス検出部501に対応する位置にヒータ502が配置されている。ヒータ502は、抵抗体に電流を通したときの抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の加熱素子である。ヒータ502から引き延ばされた電極533に所定の電圧を印加すると、所定の形状に形成された抵抗体に電流が流れて抵抗体が発熱し、そのことによって加熱が行われる。ヒータ502は、白金などの金属材料を用いてスクリーン印刷法などにより形成されている。ヒータ502によってガス検出部501を昇温させ、ガス検出部501を速やかに活性化させることにより、内燃機関の始動直後における検出精度を向上させることができる。
【0007】
また、ヒータ502の抵抗値はその温度に応じて変化するので,ヒータ502の抵抗値を測定することで、ヒータ502の温度や、ヒータ502と薄い絶縁体(基板531)を介して熱的に接触しているガス検出部501の温度(以下では「センサ温度」とも呼ぶ。)を推定することができる。推定されたセンサ温度に基づいて、ヒータ502の温度を制御することにより、センサ温度を適切な範囲内に制御することができる。
【0008】
しかしながら、ヒータ502の抵抗体は、製造プロセスにおける寸法精度に依存してその線幅や厚さがばらついてしまうので、ヒータ502の抵抗値が設計値からずれ、ばらついてしまうことがある。また、ヒータ502の抵抗値は、抵抗体の材料が経時劣化することによっても変動してしまう。このように、ヒータ502の抵抗値は誤差(設計値からのずれ)を有する。
【0009】
このため、設計値通りの抵抗値を用いて制御を行うと、ガスセンサごと(つまりヒータごと)に、あるいは使用時間によって、抵抗値−センサ温度特性にばらつきが生じ、推定されたセンサ温度と実際のセンサ温度とにずれが生じることがある。そのため、センサ温度を所望の範囲内に制御できないという不具合が発生してしまう。抵抗型のガス検出部を用いる場合、センサ出力の温度依存性が高いので、このような不具合が発生すると、空燃比を高精度で制御することが難しい。また、近年では、空燃比をいっそう高精度で制御することが要求されているので、起電力型のガス検出部を用いる場合についても、センサ温度を正確に推定することが望まれる。さらに、推定されたセンサ温度よりも実際のセンサ温度が高い場合、例えば700℃で一定になるようにセンサ温度を制御しても、実際のセンサ温度がそれ以上になるので、ガスセンサの寿命が短くなってしまう可能性がある。
【0010】
例えば、温度Tと、その温度Tにおけるヒータ502の抵抗値Rとは、ヒータ502の0℃における抵抗値R0、ヒータ502の抵抗温度係数(抵抗体材料に固有の係数)α、抵抗値の誤差δを用いて式(1)のように表される。
【0011】
R=R0・(1+δ)・(1+α・T) ・・・(1)
【0012】
そのため、誤差δがゼロである(δ=0)ときの温度T(つまり真の温度)は、式(2)で表される。
【0013】
T={(R/R0)-1}/α ・・・(2)
【0014】
これに対し、誤差δがゼロでない(δ≠0)ときの温度T’(つまり推定される誤った温度)は、式(3)で表される。
【0015】
T'={R0・(1+δ)・(1+α・T)/R0-1}/α
={(1+δ)・(1+α・T)-1}/α
=T+δ・(1/α+T) ・・・(3)
【0016】
従って、温度誤差ΔTは、式(4)で表される。
【0017】
ΔT=T'-T=δ・(1/α+T) ・・・(4)
【0018】
例えばヒータ502の材料が白金であるとき、抵抗温度係数αは0.4%/℃であるので、式(4)から、誤差δ(例えば製造プロセスに起因するばらつきつまりヒータ502の個体差)が±5%程度であっても、真の温度Tが700℃の場合、温度誤差ΔTは±35℃と非常に大きくなってしまう。
【0019】
上述したような推定温度と実温度とのずれを小さくするため、特許文献1は、ヒータの抵抗値が設計値通りの抵抗値となるように、ヒータに補正抵抗を直列または並列に接続したり、ヒータをレーザトリミングしたりする技術を開示している。
【0020】
また、特許文献2は、ヒータに電圧を印加した直後にヒータに流れる突入電流と印加電圧とから、常温におけるヒータの抵抗値を算出し、算出された抵抗値に基づいて制御を行う技術を開示している。
【特許文献1】特開2000−180406号公報
【特許文献2】特開2000−2678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献1に開示されているようにガスセンサごとに補正を施すことは、製造工程の複雑化を招き、製造コストが増加してしまう。また、特許文献2に開示されている技術を用いる場合には、突入電流を計測する手段と、印加電圧を計測する手段の両方を設ける必要があり、また、実際にはこれらを計測するわずかな時間にヒータ温度が上昇してしまうので、常温におけるヒータの抵抗値を正確に算出することが難しい。
【0022】
また、ガスセンサごとにそれぞれ異なるヒータの抵抗値(常温時の抵抗値)に対応した計算プログラムをマイクロコンピュータに搭載することも考えられるが、そのような手法は非常に煩雑であり、現実的ではない。
【0023】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒータの抵抗値の誤差を正確且つ簡便に補償し得るガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によるガスセンサは、ガス検出部と、温度に応じて抵抗値が変化するヒータと、前記ヒータの動作を制御し、前記ヒータへの加熱のための通電を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記ヒータへの加熱のための通電が停止されている期間に前記ヒータへ予め設定された大きさの電流を供給する電流供給部と、前記電流供給部から前記ヒータに電流が供給されているときの前記ヒータの両端電圧を検知する電圧検知部と、前記ヒータの冷間時に、周囲の温度および前記電圧検知部によって検知される前記ヒータの両端電圧に基づいて、前記電流供給部から供給される電流の大きさを調整する電流調整部と、を有する。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記電流調整部は、周囲の温度に応じて決定される目標電圧と前記ヒータの両端電圧とが実質的に一致するように前記電流供給部から供給される電流の大きさを調整する。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記制御部は、周囲の温度を検出する周囲温度検出部をさらに有する。
【0027】
ある好適な実施形態において、前記制御部は、前記電流調整部によって調整された大きさの電流が前記ヒータに供給されているときに検知された前記ヒータの両端電圧に基づいて前記ヒータの温度を決定し、前記ヒータの温度が所定範囲内の値を有するように前記ヒータの通電状態を調節する。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記制御部は、前記ヒータの二次以上の抵抗温度係数を含む補正式を用いて前記ヒータの温度を決定する。
【0029】
ある好適な実施形態において、前記補正式は、温度誤差を正負に略均等に振り分けるための補正係数を含む。
【0030】
ある好適な実施形態において、前記ガス検出部は酸素を検出する。
【0031】
本発明による空燃比制御装置は、上記構成を有するガスセンサを備える。
【0032】
ある好適な実施形態において、本発明による空燃比制御装置は、前記ガスセンサに接続された電子制御ユニットをさらに備え、前記電子制御ユニットが前記ガスセンサの前記制御部としても機能する。
【0033】
本発明による輸送機器は、内燃機関と、前記内燃機関の空燃比を制御する上記構成を有する空燃比制御装置を備える。
【0034】
ある好適な実施形態において、前記ガスセンサの前記ヒータは、前記内燃機関からの排気ガスに晒されるように配置されている。
【0035】
ある好適な実施形態において、前記電流調整部は、前記内燃機関の始動時に電流調整を実行する。
【0036】
本発明によるガスセンサは、ヒータの動作を制御し、ヒータへの加熱のための通電を行う制御部を備えている。ヒータへの加熱のための通電は、オン動作とオフ動作とを交互に繰り返すことによって間欠的に行われる。制御部は、ヒータへの加熱のための通電が停止されている期間にヒータへ予め設定された大きさの電流を供給する電流供給部と、電流供給部からヒータに電流が供給されているときのヒータの両端電圧を検知する電圧検知部とを有しているので、電圧検知部によって検知された電圧(ヒータの抵抗値に依存して変化するので、ヒータの温度に対応した値となる)に応じてヒータの温度を制御することができる。制御部は、さらに、ヒータの冷間時に、周囲の温度および電圧検知部によって検知されるヒータの両端電圧に基づいて、電流供給部から供給される電流の大きさを調整する電流調整部を有するので、この電流調整部によって、電流供給部から供給される電流の大きさが、抵抗値の誤差を相殺するように(すなわち抵抗値の誤差の大きさによらず温度と両端電圧とが一定の関係を有するように)調整される。つまり、電流調整部により、ヒータの抵抗値の誤差(製造時のばらつきや経時劣化による変動に起因した設計値からのずれ)が補償される。そのため、ヒータの抵抗値の誤差に依存しない、正確な温度測定を行うことができる。
【0037】
電流調整部は、典型的には、周囲の温度に応じてある目標電圧を決定し、この目標電圧とヒータの両端電圧とが実質的に一致するように電流供給部から供給される電流の大きさを調整する。
【0038】
制御部は、周囲の温度を検出する周囲温度検出部を含んでいてもよい。周囲温度検出部(例えば周囲温度検出回路)は、具体的には、ガス検出部を支持する基板の温度や内燃機関の吸入空気の温度などを計測することにより、周囲温度を検出することができる。
【0039】
制御部は、典型的には、電流調整部によって調整された大きさの電流がヒータに供給されているときに検知された両端電圧に基づいてヒータの温度を決定(推定)し、ヒータの温度が所定範囲内の値を有するようにヒータの通電状態を調節する。より正確な温度測定を行うためには、制御部がヒータの二次以上の抵抗温度係数を含む補正式を用いてヒータの温度を決定することが好ましく、補正式が、温度誤差を正負に略均等に振り分けるための補正係数を含むことがさらに好ましい。
【0040】
本発明によるガスセンサは、例えば、ガス検出部が酸素を検出する酸素センサとして好適に用いられる。
【0041】
本発明によるガスセンサは、内燃機関の空燃比を制御する空燃比制御装置に好適に用いられる。この場合、空燃比制御装置の電子制御ユニットがガスセンサの制御部としても機能する構成を採用してもよい。
【0042】
本発明によるガスセンサを備えた空燃比制御装置は、各種の輸送機器に好適に用いられる。ガスセンサのヒータが内燃機関からの排気ガスに晒されるように配置されている構成においては、ヒータの経時劣化が激しいので、本発明を用いる意義が大きい。また、電流調整部は、例えば、内燃機関の始動時に電流調整を実行する。
【発明の効果】
【0043】
本発明によると、ヒータの抵抗値のばらつきを正確且つ簡便に補償し得るガスセンサが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、以下では酸素を検出するための酸素センサを例示するが、本発明は酸素センサに限定されず、ヒータを備えたガスセンサ全般に好適に用いられる。
【0045】
図1は、本実施形態における酸素センサ10の構成を示す回路図である。酸素センサ10は、図1に示すように、ガス検出部1と、ガス検出部1を昇温させるヒータ2と、ヒータ2の動作を制御する制御部3とを備える。
【0046】
ガス検出部1は、ガス検出部1に接する雰囲気中に含まれる所定のガスの濃度や量を検出する。本実施形態におけるガス検出部1は、いわゆる抵抗型であり、雰囲気中に含まれる所定のガス(ここでは酸素)の分圧に応じてその抵抗値が変化する。
【0047】
抵抗型のガス検出部1は、例えば酸化物半導体から好適に形成される。多孔質構造を有する酸化物半導体は、雰囲気の酸素分圧に応じて酸素を放出あるいは吸収する。これにより、酸化物半導体中の酸素濃度が変化し、酸化物半導体の抵抗値が変化する。酸化物半導体としては、例えばチタニア(二酸化チタン)やセリア(酸化セリウム)を用いることができる。酸化物半導体は50wt%以上のセリアを含むことが好ましい。なお、ガス検出部1として、固体電解質を用いた起電力型のガス検出部を用いてもよい。起電力型のガス検出部は、例えば特開平8−114571号公報に開示されている。
【0048】
ヒータ2は、抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の加熱素子である。ヒータ2は、具体的には、白金やタングステンなどの金属材料や、酸化レニウムなどの良導体酸化物から形成された抵抗体から構成されている。ヒータ2によってガス検出部1を昇温させることにより、ガス検出部1を速やかに活性化させることができる。
【0049】
また、ヒータ2は、温度に応じてその抵抗値(電気抵抗値)が変化する。そのため、ヒータ2の抵抗値を測定することにより、ヒータ2の温度を検出できる。ヒータ2とガス検出部1とは薄い絶縁体(後述するような基板)を介して熱的に接触しているので、ヒータ2の温度を検出することにより、ガス検出部1の温度も検出できる。つまり、ヒータ2は、ガス検出部1を昇温させる「加熱素子」として用いられるだけでなく、ヒータ2やガス検出部1の温度を検出する「温度検出素子」としても用いられる。
【0050】
図2に、ガス検出部1およびヒータ2とその近傍の構造の一例を示す。ガス検出部1は、図2に示すように、基板31によって支持されている。基板31は、アルミナやマグネシアなどの絶縁体(好ましくはセラミックス材料)から形成されている。基板31は、互いに対向する主面31aおよび裏面31bを有しており、主面31a上にガス検出部(酸化物半導体層)1が設けられている。
【0051】
また、主面31a上には、ガス検出部1の抵抗値を検出するための電極32が形成されている。電極32は、導電性を有する材料から形成されており、例えば、白金や白金ロジウム合金、金などの金属材料から形成されている。電極32は、ガス検出部1の抵抗値の変化を効率よく計測できるよう、櫛歯状に形成されていることが好ましい。
【0052】
なお、ここでは図示しないが、ガス検出部1上には、触媒層が設けられている。触媒層は、触媒金属を含んでおり、触媒金属の触媒作用によって、検出すべきガス(つまり酸素)以外の少なくとも1種の物質を分解する。具体的には、ガス検出部1による酸素の検出に悪影響を及ぼすガスや微粒子(例えば雰囲気が排気ガスである場合には完全には燃焼しなかった炭化水素や炭素、窒素酸化物など)を分解し、そのようなガスや微粒子がガス検出部1の表面に付着するのを防止する。触媒金属としては、例えば白金が用いられる。
【0053】
基板31の裏面31b側に、ヒータ2が設けられている。ヒータ2の両端は、図2に示されているように電極33aおよび33bに接続されている。電極33aおよび33bは、ヒータ2に電力を供給するため(加熱のための通電)にも用いられるし、ヒータ2の抵抗値を測定してヒータ2の温度を検出するためにも用いられる。電極33aおよび33bは、好適にはヒータ2と一体に形成される。後述するように輸送機器に酸素センサ10を設けた場合、ヒータ2は排ガス雰囲気に晒されるので、経時劣化はいっそう激しくなる。
【0054】
続いて、制御部3の機能を説明する。制御部3は、ヒータ2への加熱のための通電を行う。制御部3は、より具体的には、ヒータ2への加熱のための通電を行うオン動作と、ヒータ2への加熱のための通電を停止するオフ動作とを選択的に実行する。オン動作を実行することにより、ヒータ2の温度を上昇させることができ(加熱モード)、オフ動作を実行することにより、ヒータ2の温度を低下させることができる(冷却モード)。ただし、本実施形態では、加熱モードにおいて、オン動作が行われるだけでなく、オフ動作も周期的且つ短期的に行われる。つまり、ヒータ2の温度を上昇させる加熱モードにおいてオン動作とオフ動作との切り替えが周期的に行われ、ヒータ2の温度を低下させる冷却モードにおいてオフ動作が実行される。オン動作の実行時間およびオフ動作の実行時間は、それぞれ例えば5msec〜50msec程度である。なお、ヒータ2の温度の調節は、単なるオン・オフ制御(2値制御)でなくともよく、ヒータ2への印加電圧を多段階に制御してもよい。
【0055】
加熱モードにおいてオフ動作が実行されるのは、加熱モードにおけるヒータ2の温度を測定するためである。本実施形態における制御部3は、オフ動作を実行している期間(つまりヒータ2への加熱のための通電が停止されている期間)にヒータ2へ予め設定された大きさの電流を供給する電流供給部(例えば後述する定電流回路6)と、電流供給部からヒータ2に電流が供給されているときのヒータ2の両端電圧を検知する電圧検知部(例えば後述する両端電圧検知回路7)とを有している。そのため、制御部3は、ヒータ2へ電流を供給することによって、ヒータ2の抵抗値に依存して変化するヒータ2の両端電圧を検知する動作(以下では「電圧検知動作」と呼ぶ。)を行い、この電圧検知動作によって検知された電圧に応じてヒータ2の温度を制御することができる。より具体的には、制御部3は、電圧検知動作によって検知された電圧に基づいてヒータ2の温度を決定し、ヒータ2の温度が所定範囲内の値を有するようにヒータ2の通電状態を調節することができる。
【0056】
本実施形態における制御部3は、さらに、ヒータ2が常温にあるときからオン動作が開始されるまでの間(つまりヒータ2の冷間時)に、ヒータ2の抵抗値の誤差(製造時のばらつきや経時劣化による変動に起因した設計値からのずれ)を補償するための動作を行う補償部を有している。この補償部は、具体的には、周囲の温度および電圧検知部によって検知されるヒータの両端電圧に基づいて、電流供給部から供給される電流の大きさを調整する電流調整部(例えば後述するコントローラ8)である。電流調整部は、例えば、周囲の温度に応じて決定される目標電圧にヒータ2の両端電圧が実質的に一致するように、電流供給部から供給される電流の大きさを調整する。電流調整部の上述したような動作(電流調整動作)によって調整された大きさの電流を用いて電圧検知動作を行うことにより、ヒータ2の抵抗値の誤差に依存しない、正確な温度測定を行うことができる。以下、上述した電流調整動作によってヒータ2の抵抗値の誤差が補償される理由を説明する。
【0057】
まず、ヒータ2に微弱な電流I(典型的にはヒータ2を加熱するための電流の1/30以下)を流したときのヒータ2の両端電圧VRは、ヒータ2の温度T、0℃におけるヒータ2の抵抗値R0、ヒータ2の抵抗温度係数(抵抗体材料に固有の係数)α、ヒータ2の抵抗値の誤差(抵抗値の設計値からのずれ)δを用いて式(5)で表される。
【0058】
VR=I・R0・(1+δ)・(1+α・T) ・・・(5)
【0059】
電流調整動作では、両端電圧VRが周囲温度(冷間時の温度)Taに応じて設定される目標電圧Vsetに一致するように、ヒータ2に流れる電流Iの大きさが調整される。目標電圧Vsetは、式(6)で表される。
【0060】
Vset=V0+Va ・・・(6)
【0061】
ここで、V0は、周囲温度Taが0℃のときの目標電圧であり、電流Iが十分に微弱となるような適当な値(例えば0.1V程度)に設定される。また、Vaは、周囲温度Taの高さに応じた目標電圧の増分(周囲温度Taが0℃のときからの増分)である。
【0062】
周囲温度Taが0℃のときに両端電圧VRを目標電圧Vset=V0に設定したとすると、式(5)から、周囲温度Taが0℃のときの目標電圧V0は、式(7)のように表される。
【0063】
V0=I・R0・(1+δ) ・・・(7)
【0064】
式(5)で表される両端電圧VRを、式(6)で表される目標電圧Vsetに設定すると、式(8)が導かれる。
【0065】
V0+Va= I・R0・(1+δ)・(1+α・Ta)
=V0・(1+α・Ta) ・・・(8)
【0066】
そのため、増分Vaは、式(9)のように、V0に抵抗温度係数αと周囲温度Taとを乗じた値として表される。
【0067】
Va= V0・α・Ta ・・・(9)
【0068】
従って、周囲温度Taに応じて設定される目標電圧Vsetは、式(10)のように、V0、抵抗温度係数αおよび周囲温度Taによって表される。
【0069】
Vset=V0+Va=V0+V0・α・Ta=V0・(1+α・Ta) ・・・(10)
【0070】
上記式群から、結局、ヒータ2の両端電圧VRは、周囲温度Ta=0に対応する目標電圧V0(ヒータ2の実際の抵抗値に関係なく予め設定された値である)、抵抗温度係数α、温度Tのみをパラメータとして含み、誤差δを含まない式(11)で表される。
【0071】
VR=V0・(1+α・T) ・・・(11)
【0072】
上述したように、電流調整動作によって設定された大きさの電流を用いて電圧検知動作を行うことにより、ヒータ2の抵抗値の誤差に依存しない、正確な温度測定を行うことができる。このように電流調整動作によりヒータ2の抵抗値の誤差が補償されるのは、電流調整動作によって、電圧検知動作で用いられる電流の大きさが、抵抗値の誤差δを相殺するように(つまり抵抗値の誤差δの大きさによらず温度Tと両端電圧VRとが一定の関係を有するように)調整されるからである。
【0073】
次に、上述の電流調整動作を実行するタイミングを説明する。
【0074】
例えば、エンジン(内燃機関)を備えた輸送機器に酸素センサ10を搭載する場合、電流調整動作は、操作者によるエンジン始動動作に対応して、つまり、エンジンのメインスイッチをオンした直後で、かつ、周囲温度Ta(つまり排気官内の温度)が室温程度に低いときに実行すればよい。エンジンのメインスイッチをオフした直後や、すぐにまた再始動したときなどの周囲温度Taが高いときには実行しなくてよい。
【0075】
図3は、電流調整動作を実行するタイミングを説明するためのフローチャートである。エンジンを始動させると、まず、周囲温度Taの計測が行われる(ステップS1)。次に、計測された周囲温度Taと所定値A(例えば50℃)との比較が行われる(ステップS2)。周囲温度Taが所定値A未満(Ta<A)である場合、電流調整動作が実行され(ステップS3)、ヒータ2に通電される電流値が更新される(ステップS4)。一方、周囲温度Taが所定値A以上(Ta≧A)である場合、電流調整動作は実行されない。
【0076】
なお、電流調整動作は、必ずしもエンジンを始動させる度に実行する必要はない。前回の電流調整動作から所定時間が経過した後のエンジン始動時に電流調整動作を実行してもよく、例えば、週に1回あるいは月に1回程度の頻度で定期的に実行してもよい。始動時に電流調整動作を実行しない場合には、電圧検知動作を実行するときの電流値は、前回の設定値(あるいは規定値)を採用すればよい。さらに、エンジンの運転時間を積算し、積算値が所定値になるごとに電流調整動作を実行してもよい。一回目の電流調整動作によって、ヒータ2の抵抗値の、製造プロセスに起因したばらつきが補償される。また、2回目以降の電流調整動作によって、ヒータ2の抵抗値の、経時劣化に起因した変動が補償される。
【0077】
続いて、再び図1を参照しながら、制御部3の具体的な構成を説明する。本実施形態では、輸送機器のエンジン制御装置が酸素センサ10の制御部3としても機能するが、本発明は勿論このような構成に限定されるものではない。ガス検出部1は、電極32を介して制御部3に電気的に接続されており、ヒータ2は、電極33aおよび33bを介して制御部3に電気的に接続されている。
【0078】
制御部3は、図1に示すように、周囲温度検出回路4と、ガス検出部1に接続された抵抗−電圧変換回路5と、ヒータ2に接続された定電流回路6および両端電圧検知回路7と、周囲温度検出回路4、抵抗−電圧変換回路5および両端電圧検知回路7の出力を受け取るコントローラ8とを備えている。本実施形態のコントローラ8は、1チップマイクロコンピュータによって構成されている。定電流回路6、両端電圧検知回路7およびコントローラ8は、既に述べた電流供給部、電圧検知部および電流調整部としてそれぞれ機能する。
【0079】
制御部3は、さらに、不図示の各種センサ(スロットルセンサや水温センサなど)に接続されたセンサ入力回路9を有しており、このセンサ入力回路9の出力もコントローラ8に入力される。また、コントローラ8には、アクチュエータ出力回路11が接続されており、アクチュエータ出力回路11の出力により、エンジン各部の動作が制御される。
【0080】
周囲温度検出回路4は、酸素センサ10の周囲の温度Taを検出する。周囲温度検出回路(周囲温度検出部)4は、例えばサーミスタを含んでおり、基板31の温度や内燃機関の吸入空気の温度などを計測することにより、周囲温度Taを検出することができる。なお、周囲温度Taは、必ずしもサーミスタで検出する必要はなく、内燃機関の冷却水の温度を測定する水温センサや排気ガスの温度を測定する排気温度センサの出力を用いて検出しても(つまりこれらを周囲温度検出部として機能させても)よい。
【0081】
周囲温度検出回路4の出力は、コントローラ8のセレクタ12を介してアナログ−デジタル変換器(ADC)13に入力される。ADC13からは、周囲温度検出回路4の出力(アナログ値)に対応するデジタル値(周囲温度Taを示す値)がコントローラ8内のデータバスライン14に出力される。コントローラ8は、既に述べたように1チップマイクロコンピュータから構成されており、CPU(中央演算処理ユニット)15、ROM(リードオンリーメモリ)16、RAM(ランダムアクセスメモリ)17およびタイマー18、センサインターフェース(SIF)回路19、アクチュエータインターフェース(AIF)回路20などを備えている。CPU15からの指令やROM16から読み出されたデータなどのやり取りは、データバスライン14を介して行われる。SIF回路19は、ADC、タイマー、ポートなどを含み、センサ入力回路9に接続されている。AIF回路20は、DAC、タイマー、ポートなどを含み、アクチュエータ出力回路11に接続されている。
【0082】
抵抗−電圧変換回路5は、ガス検出部1の抵抗値Rgを計測し、計測した抵抗値Rgに応じた電圧を出力する(抵抗−電圧変換)。抵抗−電圧変換回路5は、コントローラ8の内部で生成されてポート21から与えられるデータ(例えば2ビットのデータ)によって制御される。抵抗−電圧変換回路5によってガス検出部1の抵抗値Rgを計測することにより、雰囲気ガス中の酸素濃度を求めることができる。ガス検出部1に接続された抵抗−電圧変換回路5の出力(電圧)は、セレクタ12を介してADC13に入力される。ADC13からは、抵抗−電圧変換回路5の出力(アナログ値)に対応するデジタル値(酸素濃度を示す値)がデータバスライン14に出力される。
【0083】
両端電圧検知回路7は、ヒータ2に所定の大きさの電流Iが供給されているときのヒータ2の両端に印加されている電圧(両端電圧)VRを検知する。ヒータ2の両端電圧VRは、式(11)にも示されているように温度に依存するため、検知された電圧の値からヒータ2の温度を決定することができる。ヒータ2はガス検出部1と薄い絶縁層(基板31)を介して熱的に接触しているため、ヒータ2の温度を検出してヒータ2の温度を所定範囲内に制御すれば、ガス検出部1の温度も適切な範囲内に制御することができる。
【0084】
制御部3は、ヒータ2へ電流を供給する定電流回路(電流供給部)6に加え、制御部3内における各電子回路の動作に必要な電源電圧を生成する電源回路22を備えており、電源回路22は+12Vの電源(バッテリー)に接続されている。電源からヒータ2に供給される電流がヒータ2を加熱するために用いられるのに対し、定電流回路6からヒータ2に供給される電流は、ヒータ2の抵抗値を計測するために用いられる。
【0085】
ヒータ2は、コントローラ8のポート23がゲートドライブ24を介して半導体スイッチング素子25のオン・オフを切り替えることにより、図2に示す電極33aおよび33bを介して+12Vの電源または定電流回路6に選択的に接続される。ヒータ2を加熱するときは、ヒータ2と電源とを接続するが、ヒータ2の温度を計測するときには、半導体スイッチング素子25により、ヒータ2の接続先を電源から定電流回路6に切り替える。なお、ヒータ2を加熱するときに定電流回路6に電源からの電流が流れ込まないように、ダイオード26を設けることによって電流に方向性が付与されている。定電流回路6から供給される微弱な電流の大きさは、デジタル−アナログ変換器(DAC)27の出力電圧によって制御される。定電流回路6は、電流調整動作によって電流の大きさが調整されない限り、一定の大きさの電流をヒータ2に供給する。
【0086】
ヒータ2が定電流回路6に接続されると、定電流回路6から電極33bおよび33cを介してヒータ2に所定の大きさを有する電流Iが流れ、電極33bおよび33cに接続された両端電圧検知回路7により、ヒータ2の両端電圧VRが検知される。定電流回路6から供給される電流Iは、ヒータ2が実質的に加熱されないような大きさ(例えば10mA以上50mA以下)の微弱なものである。両端電圧VRの検知は、短時間(例えば1ms〜5ms程度)で行うことができる。ヒータ2の両端電圧VRと温度との間には、所定の関係が存在するため、検知された電圧の値に基づいて、ヒータ2の温度(ガス検出部1の温度にも対応する。)を推定することができる。
【0087】
具体的には、ヒータ2の両端電圧VRと0℃時の両端電圧VTとを差動増幅(A倍)した電圧VhをADC13でアナログ−デジタル変換し、コントローラ8(1チップマイクロコンピュータ)のプログラムで温度を計算する。0℃時の両端電圧VTは、コントローラ8のポート28の出力電圧を分圧して得る。
【0088】
なお、本実施形態では、1つのADC13により、周囲温度検出回路4、抵抗−電圧変換回路5および両端電圧検知回路7のいずれの出力に対してもアナログ−デジタル変換を施している。周囲温度Taを検出するタイミング、ガス検出部1の抵抗値Rgを計測するタイミングおよびヒータ2の両端電圧VRを検知するタイミングは相互にずれているため、セレクタ12による切り替え動作により、1つのADC13を用いて効率よく種々のアナログ−デジタル変換を行うことができる。
【0089】
ここで、再び図3を参照しながら、電流調整動作を実行するタイミングをより具体的に説明する。エンジンを始動させると、まず、周囲温度検出回路4により周囲温度Taの計測が行われる(ステップS1)。周囲温度検出回路4の出力は、セレクタ12を介してADC13に入力され、ADC13からは、周囲温度Taを示すデジタル信号がコントローラ8内のデータバスライン14に出力される。次に、CPU15により、計測された周囲温度Taと所定値A(例えば50℃であり、ROM16に記憶されている)との比較が行われる(ステップS2)。CPU15により周囲温度Taが所定値A未満(Ta<A)であると判断された場合、コントローラ8による電流調整動作が実行される(ステップS3)。電流調整動作が実行されると、RAM17に記憶されていたヒータ2への通電電流値が書き換えられ、通電電流値が更新される(ステップS4)。一方、CPU15により周囲温度Taが所定値A以上(Ta≧A)であると判断された場合、電流調整動作は実行されない。
【0090】
次に、図4を参照しながら、制御部3の電流調整動作をより具体的に説明する。
【0091】
まず、エンジンのメインスイッチをオンした時点で、ヒータ2に加熱のための通電を開始する前(つまりヒータ2の冷間時)に、コントローラ8のポート28からの出力電圧を0Vにし、両端電圧検知回路7内の分圧器29からの出力電圧VTを0Vに設定する。このとき、両端電圧検知回路7内の差動増幅器30からの出力電圧Vhは、ヒータ2に流れる微弱電流I、冷間時のヒータ2の抵抗値Rhおよび差動増幅器30の増幅度Aを用いて式(12)で表される。
【0092】
Vh=A・I・Rh ・・・(12)
【0093】
ここで、冷間時のヒータ2の抵抗値Rhは、ヒータ2の抵抗温度係数α、0℃におけるヒータ2の抵抗値R0、周囲温度Taを用いて式(13)で表される。
【0094】
Rh=R0・(1+α・Ta) ・・・(13)
【0095】
そのため、差動増幅器30からの出力電圧Vhは、式(14)で表される。
【0096】
Vh=A・I・R0・(1+α・Ta) ・・・(14)
【0097】
DAC27の出力を調整することによって、V−I変換回路(定電流回路)6の出力である微弱電流Iを変化させ、差動増幅器30からの出力電圧Vhが目標電圧Vsetになる(つまりVh=Vset)ようにすると、そのときの電流Iは、式(15)で表される。
【0098】
I=Vset/{A・R0・(1+α・Ta)} ・・・(15)
【0099】
このようにして設定された微弱な電流Iを保持しつつ、コントローラ8のポート28の出力電圧を電源電圧(VDD)にし、0℃におけるVhが0Vになるようにしてヒータ2への加熱のための通電を開始し、温度制御および温度計測(電圧検知動作)を行う。
【0100】
電圧検知動作時の差動増幅器30からの出力電圧Vhは、式(16)で表される。
【0101】
Vh=A・(I・Rh-VT)
=A・{I・R0・(1+α・T)-VT} ・・・(16)
【0102】
0℃のときのVhを0Vにするためには、分圧器29の分圧比Dは、式(17)の関係を満足する必要がある。
【0103】
VT=VDD・D=I・R0 ・・・(17)
【0104】
そのため、式(16)は、式(18)のように変形される。
【0105】
Vh=A・{I・R0・(1+α・T)-I・R0}
=A・I・{R0・(1+α・T)-R0}
=[Vset・{R0・(1+α・T)-R0}]/{R0・(1+α・Ta)} ・・(18)
【0106】
目標電圧Vsetは、周囲温度Ta=0に対応する目標電圧V0、抵抗温度係数αおよび冷間時の周囲温度Taを用いて式(10)のように表されるので、差動増幅器30からの出力電圧Vhは、式(19)に示すように、V0、抵抗温度係数α、温度Tのみをパラメータとして含むものである。
【0107】
Vh=[V0・(1+α・Ta)・{R0・(1+α・T)-R0}]/{R0・(1+α・Ta)}
=V0・α・T ・・・(19)
【0108】
このように、本実施形態の酸素センサ10によれば、ヒータ2の冷間時に電流調整部によって行われる電流調整動作によってヒータ2の抵抗値の誤差が補償されるので、ヒータ2の抵抗値の誤差に影響されない正確な温度を電圧検知動作によって推定(決定)することができる。なお、ヒータ2の「冷間時」とは、文字通りヒータ2が十分に冷えているときを指し、ヒータ2の温度が酸素センサ10の動作温度(ガス検出部1が十分に活性化され、酸素濃度の検出を実際に行う温度)よりも十分に低い所定温度以下(例えば既に例示したような50℃以下)のときを指す。
【0109】
V−I変換回路(定電流回路)6の具体的な構成の一例を図5に示す。図5に示すV−I変換回路6は、複数の抵抗素子R1〜R9、容量素子C1、増幅素子A1およびトランジスタT1によって構成されている。これらの回路素子によって、V−I変換回路6は、DAC27からの入力電圧を、所定の大きさの電流に変換してダイオード26を通してヒータ2に出力する。勿論、V−I変換回路6を構成する回路素子の種類や個数、配置などは、図5に例示したものに限定されない。
【0110】
図6および図7に、目標電圧Vsetの設定手順および電流調整動作の実行手順のフローチャートを示す。
【0111】
目標電圧Vsetを設定する際には、図6に示すように、まず、周囲温度Taの検出を行う(ステップS11)。次に、検出された周囲温度Taから目標電圧調整式(例えば式(10))に基づいて目標電圧Vsetの値を決定する(ステップS12)。その後、決定された目標電圧Vsetの値を保持する(ステップS13)。
【0112】
また、電流調整動作を実行する際には、図7に示すように、まず、分圧器29からの出力電圧VTを0Vに設定し(ステップS21)、調整回数Nのカウントを1とする(ステップS22)。次に、ヒータ2への通電を行う(ステップS23)。このときの電流の大きさΔIは、最大値IMAXの半分(IMAX/2)である。
【0113】
続いて、差動増幅器30からの出力電圧(以下では「ヒータ電圧」とも呼ぶ。)Vhを計測し(ステップS24)、ヒータ電圧Vhと目標電圧Vsetとを比較する(ステップS25)。ヒータ電圧Vhが目標電圧Vset未満である場合(Vh<Vset)には、通電電流の大きさΔIをIMAX/(2・N)だけ大きくする(ステップS26)。一方、ヒータ電圧Vhが目標電圧Vset以上である場合(Vh≧Vset)には、通電電流の大きさΔIをIMAX/(2・N)だけ小さくする(ステップS27)。
【0114】
次に、調整回数Nのカウントを1増やし(ステップS28)、調整回数Nが所定値Nset以上であるか否かを判定する(ステップS29)。調整回数Nが所定値Nset未満である場合(N<Nset)には、ヒータ電圧Vhの計測(ステップS24)から調整回数Nと所定値Nsetとの比較判定(ステップS29)までの一連のステップを繰り返す。また、調整回数Nが所定値Nset以上である場合(N≧Nset)には、そのときの通電電流の大きさΔIを保持し(ステップS30)、分圧器29からの出力電圧VTを所定値(0℃におけるVhが0Vになるような値)に設定する(ステップS31)。
【0115】
通電電流の大きさΔIの調整(ステップS26またはステップS27のような増減)を例えば8回行えば(つまり所定値Nsetを8とすれば)、ヒータ電圧Vhを目標電圧Vsetに十分近付けることができるので、電流調整動作は、数msec〜数十msec程度の非常に短い時間で完了することができる。
【0116】
本実施形態における酸素センサ10では、ヒータ2の抵抗値の誤差を上述したような電流調整動作によって補償する。そのため、特許文献1に開示されている手法のように、ガスセンサごとに個別に補正(実際に製造されたヒータの抵抗値に応じた補正)を施す必要がない。また、特許文献2に開示されている手法では、突入電流および印加電圧の計測中にヒータの温度が上昇してしまい、そのために正確な補償を行うことが困難であったが、本実施形態の酸素センサ10では、補償のための電流調整動作によってはヒータ2の温度はほとんど上昇しないので、そのような問題が発生することもない。このように、本実施形態における酸素センサ10では、ヒータ2の抵抗値の誤差(製造時のばらつきや経時劣化による変動)を正確且つ簡便に補償することができる。
【0117】
続いて、ヒータ2の温度の推定誤差をより小さくするための手法を説明する。既に述べたように、本実施形態の酸素センサ10では、電流調整動作を行うことにより、ヒータ2の抵抗値の誤差に起因した推定誤差を低減することができる。ただし、ヒータ2の抵抗値と温度との関係をどのように近似するか(つまりどのような関係式で表現するか)によって、推定される温度と実際の温度とに多少の誤差が生じることがある。以下に説明するような手法により、そのような推定誤差を小さくすることができる。
【0118】
ヒータ2の抵抗温度係数は、温度に依存するため、ヒータ2の抵抗値と温度との関係は、直線的ではない。そのため、ヒータ2の抵抗値を単純に温度の一次式で近似(つまり直線近似)すると、推定誤差が大きくなることがある。この問題を解決するために、ヒータ2の抵抗値と温度との関係を折れ線特性で近似したり(アナログ回路の場合)、ヒータ2の抵抗値と温度との関係を不揮発性メモリに詳細にマッピングしたり(デジタル回路の場合)することが考えられるが、以下に説明する手法を用いることにより、より簡単に推定誤差を小さくできる。
【0119】
制御部3は、具体的には、ヒータ2の二次以上の抵抗温度係数を含む補正式を用いてヒータ2の温度を決定することが好ましい。このようにして温度を決定することにより、実温度と推定温度との差を小さく(例えば±5℃以内に)することができる。以下、より具体的に説明する。
【0120】
ヒータ2の温度Tと抵抗値Rhとの関係を、式(20)のように温度Tの一次の項と二次の項とを含む多項式で表現する。式(20)において、αはヒータ2の一次の抵抗温度係数、βはヒータ2の二次の抵抗温度係数である。α、βとしては、理論値を用いてもよいし、実測値を用いてもよい。
【0121】
Rh=R0・(1+α・T-β・T2) ・・・(20)
【0122】
式(20)を、差動増幅器30からの出力電圧Vhと温度Tとの関係式に変換すると、式(21)となる。
【0123】
Vh=I・A・{R0・(1+α・T-β・T2)-R0}=V0・(α・T-β・T2) ・・・(21)
【0124】
なお、式(21)中のV0は、T=0℃のときの出力電圧であり、式(22)で表される。
【0125】
V0=I・A・R0 ・・・(22)
【0126】
式(21)に基づいて、出力電圧Vhを温度Tに変換するための逆関数を作る。具体的には、図8に示すように、十分に大きなある温度Tpにおける出力電圧VhをVpとし、Vh=0の点とVh=Vpの点とを結ぶ直線を仮想すると、この仮想直線の傾きkは、式(23)で表される。なお、出力電圧Vhと温度Tとの実際の関係は、図8中に示しているように、直線的ではない。
【0127】
k=Vp/Tp={V0・(α・Tp-β・Tp2)}/Tp
=V0・(α-β・Tp) ・・・(23)
【0128】
また、この仮想直線は、出力電圧Vhと温度Tとの関係を一次式で表現したときの推定温度をTEとすると、式(24)で表される。
【0129】
Vh=k・TE ・・・(24)
【0130】
式(21)、(23)および(24)に基づいて、TEからTを求める式を作ると、まず、下記の式(25)が得られる。
【0131】
V0・(α-β・Tp)・TE=V0・(α・T-β・T2) ・・・(25)
【0132】
式(25)の両辺からV0を除し(式(26))、さらに変形すると式(27)が得られる。
【0133】
(α-β・Tp)・TE=(α・T-β・T2) ・・・(26)
【0134】
T=[α-√{α2-4・β・(α-β・Tp)・TE}]/(2・β)
=[1-√{1-4・(β/α)・(1-(β/α)・Tp)・TE}]/{2・(β/α)} ・・・(27)
【0135】
式(27)から、TEの多項式でTを表すと、式(28)のようになる。
【0136】
T≒[2・(β/α)・{1-(β/α)・Tp}/{2・(β/α)}]・TE
+[2・(β/α)2・{1-(β/α)・Tp}2/{2・(β/α)}]・TE2
+[4・(β/α)3・{1-(β/α)・Tp}3/{2・(β/α)}]・TE3+・・・
={1-(β/α)・Tp}・TE+(β/α)・{1-(β/α)・Tp}2・TE2
+2・(β/α)2・{1-(β/α)・Tp}3・TE3+・・・
=TE-(β/α)・(Tp-TE)・TE-2・(β/α)2・(Tp-TE)・TE2+δ ・・・(28)
【0137】
式(28)の右辺の第1項TEは、単純な一次式(仮想直線)から推定される温度であり、第2項以降が補正項である。第2項での補正不足分を第3項で補正することを式(28)は意味している。なお、T=0とT=Tpのときに仮想直線と実際の特性曲線とが交わるため、誤差がゼロとなる。そのため、(Tp−TE)・TEおよび(Tp−TE)・TE2を多項式の変数としている。
【0138】
式(28)のような補正式を用いることによって得られる効果(シミュレーション結果)を図9に示す。図9から、補正しない場合、つまり一次式で温度を推定した場合に比べ、二次の補正項(式(28)の右辺第2項)を追加した場合には誤差が小さくなり、三次の補正項(式(28)の右辺第3項)を追加した場合にはさらに誤差が小さくなる(具体的には5℃以下になる)ことがわかる。
【0139】
上述したように、制御部3は、ヒータ2の二次以上の抵抗温度係数を含む補正式を用いてヒータ2の温度を決定することにより、推定誤差をいっそう小さくすることができる。なお、上記の説明では、補正式が一次の抵抗温度係数αに加えて二次の抵抗温度係数βを含む場合を例示したが、三次以上の抵抗温度係数をさらに含む補正式を用いてもよい。
【0140】
また、図9に示したように、補正後の誤差は全て正である。そのため、補正後の誤差を正負に振り分ければ誤差をより小さくすることができる。例えば、誤差を正負に略均等に振り分ければ、誤差を約半分にできる。
【0141】
誤差を正負に振り分けるためには、二次の補正項や三次の補正項の係数を本来よりも大きくして過補償させればよい。例えば、三次の補正項まで含む補正式を用いて、三次の補正項の係数を約1.22倍すると、図10に示すように、0〜1000℃の範囲で誤差を±2℃以内にすることができる。
【0142】
このように、補正式が温度誤差を正負に略均等に振り分けるための補正係数を含むことにより、温度の推定誤差をいっそう小さくすることができる。式(28)を式(29)のように表した場合、三次の補正項に含まれる補正係数pは、具体的には2〜2.5であることが好ましい。
【0143】
T≒TE-(β/α)・(Tp-TE)・TE-p・(β/α)2・(Tp-TE)・TE2 ・・・(29)
【0144】
なお、式(29)では、簡略化のために式(28)における微小部分δを省略しているが、その分は補正係数pの調整により補うことができる。
【0145】
図11に、上述した温度誤差補正の実行手順のフローチャートを示す。まず、T=0℃のときのヒータ電圧(差動増幅器30からの出力電圧)V0のデータ「0」を取得し(ステップS41)、続いて、T=Tp℃のときのヒータ電圧Vpのデータ「p」を取得する(ステップS42)。
【0146】
次に、取得したデータ0、pから、直線近似で温度を推定する式TE=Vh/k(式(24)を変形したもの)を作成する(ステップS43)。続いて、ある温度のときのヒータ電圧Vhを検出し(ステップS44)、式TE=Vh/kからそのときの温度TEを推定(算出)する(ステップS45)。
【0147】
その後、TE、Tp、抵抗温度係数α、βから温度補正を実施し、実温度Tを算出する(ステップS46)。このようにして、温度誤差の補正を実行することができる。
【0148】
続いて、本実施形態における酸素センサ10を備え、内燃機関を駆動源とする車両を説明する。図12に、酸素センサ10を備えた自動二輪車300を模式的に示す。
【0149】
自動二輪車300は、図12に示すように、本体フレーム301とエンジン(内燃機関)100とを備える。本体フレーム301の前端にヘッドパイプ302が設けられている。ヘッドパイプ302にはフロントフォーク303が左右方向に揺動可能に設けられている。また、フロントフォーク303の下端に前輪304が回転可能に支持されている。ヘッドパイプ302の上端にはハンドル305が取り付けられている。
【0150】
本体フレーム301の後端上部から後方に伸びるようにシートレール306が取り付けられている。本体フレーム301の上部には燃料タンク307が設けられ、シートレール306上にメインシート308aおよびタンデムシート308bが設けられている。また、本体フレーム301の後端に後方へ伸びるリアアーム309が取り付けられている。リアアーム309の後端に後輪310が回転可能に支持されている。
【0151】
本体フレーム301の中央部にはエンジン100が保持されている。エンジン100の前部にはラジエター311が取り付けられている。エンジン100の排気ポートには排気管312が接続されている。以下において詳細に説明するように、排気管にはエンジン100に近い順に酸素センサ10、三元系触媒104および消音器106が設けられている。酸素センサ10の先端部は排気管312の排気ガスが通過する通路内に露出しており、酸素センサ10は排気ガス中の酸素を検出する。酸素センサ10には、図2などに示したヒータ2が取り付けられており、エンジン100の始動時にはヒータ2によりガス検出部1が昇温される(例えば5秒で700℃まで昇温される)ことによって、酸化物半導体から形成されたガス検出部1の検出感度が高められる。
【0152】
エンジン100には、変速機315が連結されており、変速機315の出力軸316は駆動スプロケット317に取り付けられている。駆動スプロケット317はチェーン318を介して後輪310の後輪スプロケット319に連結されている。
【0153】
図13は、エンジン100の制御系の主要な構成を示している。エンジン100のシリンダ101には吸気弁110、排気弁106および点火プラグ108が設けられている。またエンジンを冷却する冷却水の水温を計測する水温センサ116が設けられている。吸気弁110は、空気吸入口をもつ吸気管122に接続されている。吸気管122にはエアーフローメータ112、スロットルバルブ114、スロットルセンサ114aおよび燃料噴射装置111が設けられている。エアーフローメータ112の代わりにスロットルバルブ114と吸気弁110との間に負圧センサを設けて吸気量を測定してもよい。
【0154】
エアーフローメータ112、スロットルセンサ114a、燃料噴射装置111、水温センサ116、点火プラグ108および酸素センサ10は、ECU(電子制御ユニット)118に接続されている。ECU118には自動二輪車300の速度を示す車速信号120も入力される。
【0155】
図示しないセルモータによって、ライダーがエンジン100を始動させると、ECU118はエアーフローメータ112、スロットルセンサ114aおよび水温センサ116から得られる検出信号および車速信号120に基づき、最適な燃料量を計算し、計算結果に基づいて、燃料噴射装置111へ制御信号を出力する。燃料噴射装置111から噴射される燃料は、吸気管122から供給される空気と混合され、適切なタイミングで開閉される吸気バルブ110を介してシリンダ101へ噴出される。シリンダ101において噴出された燃料は燃焼し、排気ガスとなって排気弁106を介して排気管312へ導かれる。
【0156】
酸素センサ10は排気ガス中の酸素を検出し、検出信号をECU118へ出力する。ECU118は、酸素センサ10からの信号に基づき、空燃比が理想空燃比からどの程度ずれているかを判断する。そして、エアーフローメータ112およびスロットルセンサ114aから得られる信号によって定まる空気量に対して、理想空燃比となるように燃料噴射装置111から噴出する燃料量を制御する。このように、酸素センサ10と、酸素センサ10に接続されたECU118とを含む空燃比制御装置によって、内燃機関の空燃比が適切に制御される。
【0157】
なお、ECU118は、酸素センサ10の制御部3としても機能してもよい。つまり、図1などに示した制御部3を構成する構成要素(コントローラ8を構成するマイクロコンピュータなど)は、ECU118に搭載されているものであってよい。
【0158】
本実施形態における酸素センサ10を備えた自動二輪車300では、センサ温度を正確に測定することができるので、センサ温度を所望の範囲内に好適に制御できる。そのため、酸素センサ10の寿命が長く、長期間にわたって適切な空燃比で燃料および空気を混合し、最適な条件で燃料を燃焼させることができる。また、センサ温度を狭い範囲で制御できるので、抵抗型のガス検出部1のようなセンサ特性の温度依存性が大きなガス検出部を用いた場合でも、温度変動がセンサ特性に与える影響を小さくし、正確な空燃比を検出することが可能となる。
【0159】
なお、ここでは自動二輪車を例示したが、本発明は四輪自動車などの他の輸送機器にも好適に用いられる。また、内燃機関はガソリンエンジンに限られず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0160】
さらに、本発明は、酸素センサに限定されず、種々のガスセンサに用いられる。例えば、水素センサ、NOxセンサ、炭化水素センサ、有機化合物センサなどにも好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明によると、ヒータの電気抵抗値のばらつきを正確且つ簡便に補償し得るガスセンサが提供される。本発明は、種々のガスセンサに好適に用いられ、本発明によるガスセンサは、乗用車、バス、トラック、オートバイ、トラクター、飛行機、モーターボート、土木車両などの種々の輸送機器の空燃比制御装置に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の好適な実施形態における酸素センサ(ガスセンサ)10を模式的に示すブロック図である。
【図2】酸素センサ10が備えるガス検出部およびヒータとその近傍の構造を示す分解斜視図である。
【図3】電流調整動作を実行するタイミングを説明するためのフローチャートである。
【図4】電流調整動作を具体的に説明するための図である。
【図5】V−I変換回路の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【図6】電流調整動作における目標電圧の設定手順を示すフローチャートである。
【図7】電流調整動作の実行手順を示すフローチャートである。
【図8】差動増幅器からの出力電圧と温度との関係を示すグラフである。
【図9】好ましい補正式(ヒータの高次の抵抗温度係数を含む補正式)を用いてヒータ温度を推定した場合の誤差を示すグラフである。
【図10】温度誤差を正負に略均等に振り分ける補正係数を含む補正式を用いた場合の誤差を示すグラフである。
【図11】温度誤差補正の実行手順を示すフローチャートである。
【図12】酸素センサ10を備えた自動二輪車の例を模式的に示す図である。
【図13】図12に示す自動二輪車におけるエンジンの制御系を模式的に示す図である。
【図14】従来の酸素センサ500を模式的に示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0163】
1 ガス検出部
2 ヒータ
3 制御部
4 周囲温度検出回路(周囲温度検出部)
5 抵抗−電圧変換回路
6 定電流回路(定電流供給部)
7 両端電圧検知回路(電圧検知部)
8 コントローラ(電流調整部)
9 センサ入力回路
10 酸素センサ(ガスセンサ)
11 アクチュエータ出力回路
12 セレクタ
13 アナログーデジタル変換器(ADC)
14 データバスライン
15 CPU(中央演算処理ユニット)
16 ROM(リードオンリーメモリ)
17 RAM(ランダムアクセスメモリ)
18 タイマー
19 センサインタフェース(SIF)回路
20 アクチュエータインタフェース(AIF)回路
21、23、28 ポート
22 電源回路
24 ゲートドライブ
25 半導体スイッチング素子
26 ダイオード
27 デジタルーアナログ変換器(DAC)
29 分圧器
30 差動増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検出部と、
温度に応じて抵抗値が変化するヒータと、
前記ヒータの動作を制御し、前記ヒータへの加熱のための通電を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ヒータへの加熱のための通電が停止されている期間に前記ヒータへ予め設定された大きさの電流を供給する電流供給部と、
前記電流供給部から前記ヒータに電流が供給されているときの前記ヒータの両端電圧を検知する電圧検知部と、
前記ヒータの冷間時に、周囲の温度および前記電圧検知部によって検知される前記ヒータの両端電圧に基づいて、前記電流供給部から供給される電流の大きさを調整する電流調整部と、を有する、ガスセンサ。
【請求項2】
前記電流調整部は、周囲の温度に応じて決定される目標電圧と前記ヒータの両端電圧とが実質的に一致するように前記電流供給部から供給される電流の大きさを調整する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記制御部は、周囲の温度を検出する周囲温度検出部をさらに有する、請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流調整部によって調整された大きさの電流が前記ヒータに供給されているときに検知された前記ヒータの両端電圧に基づいて前記ヒータの温度を決定し、前記ヒータの温度が所定範囲内の値を有するように前記ヒータの通電状態を調節する、請求項1から3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記制御部は、前記ヒータの二次以上の抵抗温度係数を含む補正式を用いて前記ヒータの温度を決定する、請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記補正式は、温度誤差を正負に略均等に振り分けるための補正係数を含む、請求項5に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記ガス検出部が酸素を検出する請求項1から6のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のガスセンサを備えた空燃比制御装置。
【請求項9】
前記ガスセンサに接続された電子制御ユニットをさらに備え、
前記電子制御ユニットが前記ガスセンサの前記制御部としても機能する請求項8に記載の空燃比制御装置。
【請求項10】
内燃機関と、
前記内燃機関の空燃比を制御する請求項8または9に記載の空燃比制御装置を備えた輸送機器。
【請求項11】
前記ガスセンサの前記ヒータは、前記内燃機関からの排気ガスに晒されるように配置されている請求項10に記載の輸送機器。
【請求項12】
前記電流調整部は、前記内燃機関の始動時に電流調整を実行する請求項10または11に記載の輸送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−58501(P2009−58501A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195931(P2008−195931)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】