説明

ガス遮蔽フィルム、電極膜付きフィルム、及び表示素子

【課題】屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制されるガス遮蔽フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂フィルム基材102と、樹脂フィルム基材102の表面に形成され、含有量0.1原子%以上30原子%以下の水素を含み、かつ非晶質の酸化ガリウム膜104と、を有するガス遮蔽フィルム100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮蔽フィルム、電極膜付きフィルム、及び表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸化スズ系の非晶質膜からなる透明酸化物膜が、ガスバリア層として、樹脂フィルム基材の少なくとも一方の表面に形成されたことを特徴とするガスバリア性透明樹脂基板が開示されている。
【0003】
また特許文献2には、樹脂基板の少なくとも片面上に、有機層および無機層をそれぞれ1層以上積層して設けた構造の透明ガスバリアフィルムにおいて、該無機層がプラズマCVD法により、無機層の膜厚、樹脂基板の搬送速度および樹脂基板の電極通過総長さが、特定の関係を満たす条件で作製されたものであることを特徴とする透明ガスバリアフィルムが開示されている。
【0004】
また特許文献3には、導電性基体と、感光層と、表面層とを含み、前記導電性基体上に前記感光層と前記表面層とがこの順に積層された電子写真感光体において、前記表面層の少なくとも最表面が、酸素と、1 3 族元素とを含み、前記最表面における前記酸素の含有量が15原子%を超えることを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0005】
また特許文献4には、基材上に形成され、13族元素と窒素と15原子%以上の酸素とを含むことを特徴とする半導体膜が開示されている。
【特許文献1】特開2005−103768公報
【特許文献2】特開2005−212231公報
【特許文献3】特開2006−267507公報
【特許文献4】特開2007−300001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、水素含有量が下記範囲であり非晶質の酸化ガリウム膜を有さない場合に比較して、屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制されるガス遮蔽フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
フィルム基材と、
前記フィルム基材の表面に形成され、含有量が0.1原子%以上30原子%以下の水素を含み、かつ非晶質の酸化ガリウム膜と、
を有するガス遮蔽フィルムである。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記酸化ガリウム膜中における酸素の含有量は、前記酸化ガリウム膜中におけるガリウムの含有量の、1.3倍以上1.6倍以下である、請求項1に記載のガス遮蔽フィルムである。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記酸化ガリウム膜中における酸素の含有量は、15原子%以上55原子%以下である、請求項1又は請求項2に記載のガス遮蔽フィルムである。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記酸化ガリウム膜の前記フィルム基材に接しない表面における算術平均表面粗さRaが、1.5nm以下である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルムである。
【0011】
請求項5に係る発明は、
JIS K7129(2008)附属書Bに従った赤外線センサ法によって測定された前記ガス遮蔽フィルムの水蒸気透過度が、0.01g/(m・24hr)以下である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルムである。
【0012】
請求項6に係る発明は、
波長400nm以上800nm以下における前記酸化ガリウム膜の光透過率が80%以上であり、波長350nmにおける前記酸化ガリウム膜の光透過率が50%以上である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルムである。
【0013】
請求項7に係る発明は、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルムと、
前記ガス遮蔽フィルムに形成された電極膜と、を有する、電極膜付きフィルムである。
【0014】
請求項8に係る発明は、
前記電極膜は、前記ガス遮蔽フィルムにおける前記酸化ガリウム膜の前記フィルム基材に接しない表面に形成された、請求項7に記載の電極膜付きフィルムである。
【0015】
請求項9に係る発明は、
請求項4に記載のガス遮蔽フィルムと、
前記ガス遮蔽フィルムにおける前記酸化ガリウム膜の前記フィルム基材に接しない表面に形成された電極膜と、を有し、
前記電極膜の前記ガス遮蔽フィルムに接しない表面における算術平均表面粗さRaが、1.8nm以下である、電極膜付きフィルムである。
【0016】
請求項10に係る発明は、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルムを備えた表示素子である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、水素含有量が上記範囲であり非晶質の酸化ガリウム膜を有さない場合に比較して、屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制される。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、ガリウムの含有量に対する酸素の含有量の比率が上記範囲から外れる場合に比較して、屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制される。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、酸素の含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、酸化ガリウム膜の光透過性が高くなる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、酸化ガリウム膜表面の算術平均表面粗さRaが1.5nmよりも大きい場合に比較して、ガス遮蔽フィルムを用いた素子における酸化ガリウム膜表面の凹凸に起因する性能の低下が抑制される。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、水蒸気透過度が上記範囲から外れる場合に比較して、ガス遮蔽フィルムを透過した水蒸気に起因するガス遮蔽フィルムを用いた素子の性能の低下が抑制される。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、酸化ガリウム膜の光透過率が上記範囲から外れる場合に比較して、酸化ガリウム膜の光吸収に起因するガス遮蔽フィルムを用いた素子の性能の低下が抑制される。
【0023】
請求項7又は請求項8に係る発明によれば、水素含有量が上記範囲であり非晶質の酸化ガリウム膜を有さない場合に比較して、屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制される。
【0024】
請求項9に係る発明によれば、電極膜の算術平均表面粗さRaが1.8nmよりも大きい場合に比較して、電極膜付きフィルムを用いた素子における電極膜表面の凹凸に起因する性能の低下が抑制される。
【0025】
請求項10に係る発明によれば、水素含有量が特定の範囲であり非晶質の酸化ガリウム膜を有さない場合に比較して、屈曲による水蒸気透過度の上昇に起因する性能の低下が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のガス遮蔽フィルム、電極膜付きフィルム、及び表示素子の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、これに限定されるわけではない。
【0027】
[ガス遮蔽フィルム]
図1は、本実施形態に係るガス遮蔽フィルムの構成の一例を示す模式断面図である。
図1に示すガス遮蔽フィルム100は、例えば、樹脂フィルム基材102の表面に、酸化ガリウム膜104が形成されている。図1のガス遮蔽フィルム100は、樹脂フィルム基材102における一方の面に酸化ガリウム膜104が形成されているが、これに限られず、樹脂フィルム基材102の両面に酸化ガリウム膜104が形成されていてもよい。また図1のガス遮蔽フィルム100は、樹脂フィルム基材102の表面全体に酸化ガリウム膜104が形成されているが、これに限られず、酸化ガリウム膜104をパターニングして形成してもよく、具体的には、例えば、ガス遮蔽フィルム100上の素子を形成する部分のみに酸化ガリウム膜104を形成してもよい。
以下、樹脂フィルム基材102及び酸化ガリウム104について、それぞれ説明する。
【0028】
<樹脂フィルム基材>
樹脂フィルム基材102は、樹脂で構成された膜であれば特に限定されない。樹脂としては、具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂等のプラスチック基板等が挙げられる。
【0029】
本実施形態のガス遮蔽フィルム100を、例えば表示素子等に用いる場合は特に、樹脂フィルム基材102として、光透過性を有するものを用いることが好ましい。樹脂フィルム基材102の光透過率としては、具体的には、例えば、400nm以上800nm以下における光透過率(以下、「可視赤外域透過率」と称する場合がある)が80%以上が挙げられ、90%以上がより好ましい。また350nmにおける光透過率(以下、「紫外域透過率」と称する場合がある)は、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0030】
光透過率の測定は、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ社 U−4000)を用いて行う。具体的には、400nm以上800nm以下の範囲における光透過率の最小値を可視赤外域透過率として求め、350nmにおける光透過率の値を紫外域透過率とする。
【0031】
また、本実施形態のガス遮蔽フィルム100を、例えば電子ペーパー等の可撓性を求められる電子デバイスに用いる場合は特に、樹脂フィルム基材102として、柔軟性を有する(フレキシブルな)ものを用いることが好ましい。樹脂フィルム基材102の柔軟性を示すパラメータである曲げ弾性率としては、例えば、1000MPa以上が挙げられ、5000MPa以上がより好ましい。なお、上記曲げ弾性率は、JIS K7203(1995)に規定された値である。
【0032】
さらに、上記樹脂フィルム基材102の水蒸気透過度としては、例えば、0.5g/(m・24hr)以上50g/(m・24hr)以下の範囲が挙げられる。なお、上記水蒸気透過度は、JIS K7129(2008)附属書Bに準拠した赤外線センサ法に従って測定された値である。
【0033】
また樹脂フィルム基材102は、単層であっても多層であってもよい。樹脂フィルム基材102全体の厚みとしては、樹脂フィルム基材102を構成する材料や特性(例えば上記光透過度、水蒸気透過度、柔軟性等)に応じて選択されるが、例えば、10μm以上2000μm以下の範囲が挙げられ、50μm以上1000μm以下の範囲がより好ましい。
【0034】
<酸化ガリウム膜>
酸化ガリウム膜104は、ガリウム、酸素、及び水素を含んで構成された非晶質の酸化物膜である。そして、酸化ガリウム膜104中における水素の含有量は、0.1原子%以上30原子%以下である。
【0035】
ここで非晶質とは、隣接する原子との近距離秩序のみ有する状態である場合のほか、微結晶を有する場合、及び全体が微結晶の集まりである場合を包含し、全体的には構造的秩序が認められないとみなせるものである。ただし、この場合、微結晶とは最長径が50Å未満の結晶を意味する。
【0036】
また、酸化ガリウム膜104が非晶質であるかどうかは、例えば、X線回折、電子線回折、及び電子顕微鏡を用いた断面形状の観察等によって結晶状態を測定することによって判断される。具体的には、酸化ガリウム膜104が「非晶質」であるとは、例えば、透過電子線回折や低速電子線回折において、全くリング状の回折パターンが現れずハローパターンが現れる場合、ハローパターンの中にさらにリング状の回折パターンが見られる場合、及びリング状の回折パターンの中にさらに輝点が見られる場合が挙げられる。また、非晶質性は、X線回折スペクトル測定で、結晶構造に固有の回折角に鋭いピークが現れないことによっても判別される。
【0037】
具体的には、例えば、エイコーエンジニアリング社製MB−1000型RHEED装置を用いて電子回折像を以下のようにして観測し、結晶状態を確認する。
まず、分析室の中央の試料台に10mm×10mmのガス遮蔽フィルムを水平に設置した後、ターボポンプにより1×10−4Pa以上に排気する。その後、電子銃の電圧を−15kVとし、電子ビームに試料に対する入射角とXYデフレクターとフォーカスを調整して電子銃と反対方向に設置したスクリーンに回折像が出現するようにして投影する。投影した像をデジタルカメラで撮影し、現れた回折パターンから結晶状態を評価する。
【0038】
また、上記酸化ガリウム膜104中における水素の含有量は、5原子%以上30原子%以下がより好ましく、10原子%以上20原子%以下がさらに好ましい。
【0039】
そして、酸化ガリウム膜104中における酸素の含有量は、酸化ガリウム膜104中におけるガリウムの含有量の1.30倍以上1.60倍以下が好ましく、1.35倍以上1.55倍以下がより好ましく、1.40倍以上1.50倍以下がさらに好ましい。
上記酸素の含有量とガリウムの含有量との比(以下、「O/Ga比」と称する場合がある)が上記範囲であることにより、ガス遮蔽フィルム100の屈曲による水蒸気透過度の上昇がより抑制される。その理由は定かではないが、O/Ga比が上記範囲であることにより、O/Ga比が上記範囲よりも大きい場合に比べて、酸化ガリウム膜104の弾性率が低くなるため、耐屈曲性が向上するものと推測される。
【0040】
O/Ga比が上記範囲である酸化ガリウム膜104の弾性率としては、例えば、50GPa以上100GPa以下の範囲が挙げられ、その中でも60GPa以上90GPa以下の範囲が好ましい。弾性率が上記範囲であることにより、上記範囲から外れる場合に比べ、ガス遮蔽フィルム100の屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制される。
上記弾性率の値は、以下のようにして測定する。具体的には、ナノインデンテーション法(連続合成測定法)により測定した。東洋テクニカ社製Nano Indenter G200型を用い、厚さ250nmの酸化ガリウム膜における押し込み深さ20nmでの荷重を求める事により、酸化ガリウム膜104単独の弾性率の値が求められる。
【0041】
また、酸化ガリウム膜104中における酸素の含有量は、15原子%以上55原子%以下が好ましく、40原子%以上55原子%以下がより好ましく、45原子%以上50原子%以下が更に好ましい。
上記酸素の含有量が上記の範囲内であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べて酸化ガリウム膜104の光透過率が高く、上記範囲よりも高い場合に比べて耐屈曲性が良好である。
【0042】
酸化ガリウム膜104の光透過率としては、可視赤外域透過率が80%以上であり、紫外域透過率が50%以上であることが望ましい。また、可視赤外域透過率は、85%以上より好ましく、90%以上がさらに好ましい。さらに、紫外域透過率は、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。酸化ガリウム膜104の光透過率が上記範囲であることにより、上記範囲から外れる場合に比べ、酸化ガリウム膜104の光吸収に起因する、ガス遮蔽フィルム100を用いて作製した素子の性能の低下(例えば、発光取り出し効率の低下等)が抑制される。
【0043】
酸化ガリウム膜104の膜厚はとしては、例えば、10nm以上500nm以下の範囲が挙げられ、50nm以上300nm以下の範囲がより好ましい。酸化ガリウム膜104の膜厚が上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べて酸化ガリウム膜104の光透過率が大きくなり、上記範囲よりも小さい場合に比べてガスバリアフィルムの水蒸気透過度が小さくなる。
【0044】
酸化ガリウム膜104は、上記ガリウム、酸素、及び水素のほかに、例えば炭素や窒素等の他の元素が含まれていてもよい。他の元素の含有量としては、例えば、15原子%以下が挙げられる。
【0045】
酸化ガリウム膜104中における、ガリウムの含有量、酸素の含有量、炭素(C)等のその他の元素の含有量は、ラザフォードバックスキャタリング(以下、「RBS」と略す場合がある)により求められる。
【0046】
ここで、前記ラザフォードバックスキャタリング(RBS)について詳述する。RBSでは、加速器(NEC社製の3SDH Pelletron、エンドステーション、CE&A社製のRBS−400)及びシステムとして3S−R10が用いられ、解析にはCE&A社製のHYPRAプログラム等が用いられる。
RBSの測定条件は、以下の通りである。
・He++イオンビームエネルギー:2.275eV
・検出角度:160°入射ビームに対してGrazing Angle 109°
【0047】
RBS測定では、厚み方向の分布を含めて測定される。具体的には、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームの方向に対して160°の位置にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比と膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定してもよい。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度が向上する。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素のみにより決まる。測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて膜厚を算出する。密度の誤差は20%以内である。
【0048】
また、酸化ガリウム膜104中における水素の含有量は、ハイドロジェンフォワードスキャタリング(以下、「HFS」と略す場合がある)により求められる。HFSは、加速器(NEC社製の3SDH Pelletron、エンドステーション、CE&A社製のRBS−400)が用いられ、システムとして3S−R10が用いられる。解析には、CE&A社製のHYPRAプログラムが用いられる。
HFSの測定条件は、以下の通りである。
・He++イオンビームエネルギー:2.275eV
・検出角度:160°入射ビームに対してGrazing Angle 30°
【0049】
HFS測定は、He++イオンビームの方向に対して、検出器が30°に、試料が法線から75°になるようにセットすることにより、試料の前方に散乱する水素のシグナルを拾う。このとき、検出器をアルミ箔で覆い、水素とともに散乱するHe原子を取り除くことがよい。定量は、参照用試料と被測定試料との水素のカウントを阻止能で規格化した後に比較することによって行なう。参照用試料としては、Si中にHをイオン注入した試料と白雲母を使用する。白雲母は、水素濃度が6.5atomic%であることが知られている。最表面に吸着している水素(H)は、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって行なわれる。
【0050】
酸化ガリウム膜104中における各元素の含有量を測定する方法としては、上記方法の他、例えば、X線光電子分光(XPS)、二次電子質量分析法等が挙げられる。
また、酸化ガリウム膜104中の水素含有量を測定する方法としては、上記方法の他、例えば、赤外吸収スペクトル測定により、ガリウム−水素結合によるピークやN−H結合によるピークの強度から水素含有量を推定する方法も挙げられる。
【0051】
<ガス遮蔽フィルム100の特性>
以下、本実施形態におけるガス遮蔽フィルム100の特性について説明する。
ガス遮蔽フィルム100における酸化ガリウム膜104側の表面、すなわち、酸化ガリウム膜104の樹脂フィルム基材102に接しない表面においては、算術平均表面粗さRa(以下、「Ra1値」と称する場合がある)が1.5nm以下であることが好ましい。上記Ra1値は、1.3nm以下がより好ましく、1.0nm以下がさらに好ましい。上記Ra1値が上記範囲であることにより、ガス遮蔽フィルム100を用いた素子における酸化ガリウム膜104表面の凹凸に起因する性能の低下(例えば、酸化ガリウム膜に積層した透明導電膜の耐リーク性能の低下等)が抑制される。すなわち、上記Ra1値が上記範囲であれば、例えば、酸化ガリウム膜104に接するように形成された膜における表面の凹凸が小さくなることにより、ガス遮蔽フィルム100を用いて作製した素子の性能が良好となると考えられる。
なお、算術平均表面粗さは、JIS B 0601(2001年度版)に準じて測定された値であり、具体的には、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定できる。日本ビーコ社製Dimension3100型AFMを用い、酸化ガリウム膜表面の1μm×1μm領域を測定して算術平均粗さRaを求めた。以下同様である。
【0052】
また、ガス遮蔽フィルム100の水蒸気透過度は、0.01g/(m・24hr)以下であることが好ましい。ガス遮蔽フィルム100の水蒸気透過度が上記範囲であることにより、ガス遮蔽フィルム100を透過した水蒸気に起因するガス遮蔽フィルム100を用いた素子の性能の低下(例えば、各層間の耐剥離性能の低下等)が抑制される。なお、上記水蒸気透過度の値は、ガス遮蔽フィルム100を屈曲させる前における水蒸気透過度の値である。また、上記水蒸気透過度の値は、後述する水蒸気透過度の測定方法においては、0.01g/(m・24hr)が検出限界である。
【0053】
<ガス遮蔽フィルム100の製造方法>
以下、本実施形態におけるガス遮蔽フィルム100の製造方法について説明する。
本実施形態におけるガス遮蔽フィルム100の製造方法としては、例えば、樹脂フィルム基材102上に、プラズマ化学気相成長法(以下、「プラズマCVD法」と称する場合がある)により酸化ガリウム膜104を成膜する方法が挙げられる。
【0054】
プラズマCVD法により酸化ガリウム膜104を成膜することにより、非晶質であり、水素の含有量が上記範囲である酸化ガリウム膜104が形成されるため、ガス遮蔽フィルム100の耐屈曲性が上がり、ガス遮蔽フィルム100の屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制される。
【0055】
プラズマCVD法は、化学反応により分子レベルで基板に堆積させて膜を形成する方法であり、例えば粒子を基板に堆積させて膜を形成するスパッタリング法に比べて、緻密な薄膜が形成されると考えられる。そのため、プラズマCVD法を用いると、スパッタリング法等を用いた場合に比べて、上記Ra1値の低い酸化ガリウム膜104が形成されるとともに、酸化ガリウム膜104の膜厚を薄くしてもガス遮蔽フィルム100の水蒸気透過度が低くなる。さらに、一般的に薄膜の光透過率は膜厚が厚いほど低くなるため、上記プラズマCVD法を用いて膜厚の薄い酸化ガリウム膜104を形成することによって、光透過率が高く、かつ、水蒸気透過度の低いガス遮蔽フィルム100が形成される。
【0056】
以下、プラズマCVD法によるガス遮蔽フィルム100の製造方法の一例を説明する。
図2は、プラズマCVD法によって樹脂フィルム基材102の表面に酸化ガリウム膜104を形成する薄膜形成装置の一例である。なお、本実施形態では、図2に示す薄膜形成対象部材40として上記樹脂フィルム基材102を用いる。また、薄膜形成装置10によって薄膜形成対象部材40上に形成された「薄膜」が上記酸化ガリウム膜104である。
図2に示す薄膜形成装置10は、真空排気される反応容器12と、薄膜形成装置10の装置各部を制御するための制御部16と、を含んで構成されている。
【0057】
反応容器12の内部には、円柱状部材18が設けられている。円柱状部材18は、反応容器12内において長尺方向を回転軸方向として回転するように設けられている。円柱状部材18の円柱軸方向の一端は、図示を省略する複数のギアを介して回転手段としてのモータ30に接続されている。モータ30の駆動力が図示を省略する複数のギア及び支持部材を介して円柱状部材18に伝達されることにより、円柱状部材18は回転する。なお、本実施形態では、円柱状部材18は円柱状であるものとして説明するが、回転軸方向に平坦な形状であればよく、柱状部材や多角形の長尺状部材であってもよい。
【0058】
円柱状部材18の外周面には、本発明の薄膜形成装置10によって薄膜を形成する対象となる薄膜形成対象部材40を保持するための保持部材32が備えられ、保持部材32によって薄膜形成対象部材40が固定されている。
【0059】
反応容器12の内部に設けられた円柱状部材18の周囲には、円柱状部材18の回転方向(矢印方向)に沿って、排気管14と、非成膜性ガス供給管22及び放電電極20と、遮蔽部材26と、成膜性ガス供給管24と、が設けられている。
【0060】
排気管14は、反応容器12の開口12Aを介して連続して設けられており、反応容器12内のガスを排気するための管である。排気管14の一端は、開口12Aを介して反応容器12内につながっており、他端は、反応容器12内のガスを真空排気するための真空排気装置28に接続されている。
【0061】
真空排気装置28の駆動によって、反応容器12の内部は減圧される。真空排気装置は、ひとつまたは複数のポンプと、必要に応じてコンダクタンスバルブなどの排気速度調整機構と、を含んで構成される。ガス供給量と排気速度から決まる膜形成時の反応容器内の圧力は、反応容器12内においてプラズマが発生する圧力であればよく、ガスの種類、電源の種類にも依存するが、具体的には、例えば、1Pa以上200Pa以下の範囲が挙げられる。
【0062】
反応容器12の内壁を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
放電電極20は、マッチングボックス34を介して高周波電源36に接続し、電力を供給している。高周波電源36としての電力供給源としては、直流電源または交流電源が用いられるが、その中でも効率的にガスを励起する電源としては、例えば、交流の高周波電源や、マイクロ波電源等が挙げられる。
【0064】
放電電極20は、円柱状部材18と対向するように円柱状部材の回転軸方向に向けて設けられ、且つ円柱状部材18の外周面から離間されて設けられている。放電電極20の向きは、生成したプラズマの少なくとも一部が円柱状部材18と接していればよく、完全に対向する向きでなくてもよい。
【0065】
放電電極20は、中空状(空洞構造)で放電面に非成膜性ガスを供給するための複数のガス供給孔(図示省略)を有するガス透過型のものである。放電電極が空洞構造でなく放電面にガス供給孔が無いものである場合、別に設けられた非成膜性ガス供給口から供給された非成膜性ガスが放電電極と円柱状部材18の間を通過するようにした構成でもよい。
また、放電電極と反応容器12との間で放電が起こらないように、円柱状部材18と対向している面以外の電極面が3mm以下の隙間を有して接地された部材におり覆われていることが好適である。
【0066】
非成膜性ガス供給管22は、反応容器12内に非成膜性ガスを供給するための管である。非成膜性ガス供給管22の一端は、放電電極20の放電面に直交する方向に予め開けられた1または複数の非成膜性ガス供給口22Aを通して反応容器12内につながっており、他端は、電磁弁38を介して非成膜性ガス供給源42に接続されている。非成膜性ガス供給源42は、非成膜性ガスが充填された容器と、レギュレーターなどの圧力を調整する機構と、マスフローコントローラーなどの原料ガスの流量を調整する機構と、を必要に応じて備えている。複数の非成膜性ガスを用いる場合、これらのガスを合流させて供給してもよい。
非成膜性ガスは、非成膜性ガス供給源42から非成膜性ガス供給管22を介して非成膜性ガス供給口22Aから反応容器12内へと供給される。
【0067】
真空排気装置28によって反応容器12内が減圧された状態で、マッチングボックス34を介して高周波電源36から放電電極20に高周波電力が供給されると共に、非成膜性ガス供給源42から非成膜性ガス供給管22及び非成膜性ガス供給口22Aを通って反応容器12内の放電電極20と円柱状部材18との対向する領域へ非成膜性ガスが供給されると、非成膜性ガスのプラズマ(以下、「非成膜性プラズマ」と称する場合がある)が生成される。
【0068】
なお、上記「非成膜性ガス」とは、プラズマ状態に励起したとき、あるいは、プラズマに曝されたときに単体では反応生成物を生ぜず、膜を形成しえない、すなわち成膜性を有さないガスである。このため、非成膜性ガスが反応活性領域44に単体で供給された場合であっても、非成膜性ガス単体では反応生成物の生成は、なされない。
【0069】
この非成膜性ガスのプラズマが生成された領域に、成膜性ガス供給管24から供給された成膜性を有する成膜性ガス(詳細後述)が到ると、少なくとも成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする反応生成物が生成される。この生成された反応生成物が薄膜形成対象部材40上に堆積されると、薄膜形成対象部材40上に上記反応生成物によって構成された薄膜が形成される。
【0070】
上記「成膜性ガス」は、プラズマに曝されたときに励起分解して単体で、又は、プラズマ状態にある励起、分解された非成膜性ガスと反応して反応生成物を生成しうる、成膜性を有するガスである。この「成膜性を有する」とは、膜を形成しうる性質を有することを示している。具体的には、成膜性ガスは、プラズマに曝されたときに励起・分解されて反応生成物を析出するもの、あるいはプラズマに曝されたときに励起・分解されて上記非成膜性ガスを構成する元素と反応して反応生成物を析出するガスである。
【0071】
ここで、反応容器12内の非成膜性ガスのプラズマが生成された領域を、反応活性領域44と称する。
非成膜性ガスのプラズマが生成されることによって、反応容器12内の全ての領域は、成膜性ガスが励起分解されて反応生成物を析出しうる領域としての反応活性領域44と、この反応活性領域44に連続する領域であって成膜性ガスが励起分解されえない領域としての反応不活性領域48と、に分けられる。このため、反応容器12内には、円柱状部材18の回転方向に沿って、反応活性領域44と反応不活性領域48とが連続して設けられることとなる。
【0072】
成膜性ガス供給管24は、反応容器12の外部から反応容器12の内部へと成膜性ガスを供給するための管である。成膜性ガス供給管24は、成膜性ガス供給管24の一端に設けられた成膜性ガス供給口24Aを介して反応容器12内につながっており、成膜性ガス供給管24の他端は、電磁弁46を介して成膜性ガス供給源49に接続されている。
【0073】
成膜性ガス供給源49は、成膜性ガスである原料ガスが充填された容器と、恒温槽などの原料ガス温度を調整する機構と、レギュレーターなどの圧力を調整する機構と、マスフローコントローラーなどの原料ガスの流量を調整する機構と、を必要に応じて備えている。成膜性ガスが液体や固体を気化させて供給されるガスである場合は、成膜性ガスは恒温槽の中に所望の温度に保たれていて、必要に応じてキャリアガスとともに供給される。
【0074】
成膜性ガス供給源49から成膜性ガス供給管24に供給された成膜性ガスは、成膜性ガス供給管24を通って成膜性ガス供給口24Aに到り、成膜性ガス供給口24Aから反応容器12内部へと噴き出される。
【0075】
この成膜性ガス供給口24Aは、反応容器12内の反応不活性領域48に位置するように、成膜性ガス供給管24に設けられている。
この成膜性ガス供給口24Aの反応不活性領域48内における位置は、例えば、反応活性領域44との境界から、反応不活性領域で原料ガスの密度が平均化されるための拡散が行われるために必要な距離以上離れた領域(例えば20mm以上)が挙げられる。
【0076】
反応容器12中において、成膜性ガス供給口24Aから薄膜形成対象部材40に向かって成膜性ガスを噴き出すように、すなわち円柱状部材18の外周面に向かって噴き出すように、成膜性ガス供給口24Aが設けられている。
【0077】
成膜性ガス供給管24を構成する材料としては、真空排気装置28によって減圧状態とされた反応容器12内の反応不活性領域48内に、上述の方向に向かって成膜性ガスを噴き出すための硬度を有する材料であればよく、例えば、ステンレスパイプが挙げられる。
【0078】
上述のように、上記反応不活性領域48と、上記反応活性領域44とは、反応容器12内の連続した領域であり、遮蔽部材26を設けない構成であってもよいが、遮蔽部材26によって反応不活性領域48を、反応活性領域44から遮蔽することが好ましい。
【0079】
遮蔽部材26は、反応不活性領域48と反応活性領域44との境界の一部を遮蔽するように反応容器12の内周面に設けられている。遮蔽部材26は、反応不活性領域48に成膜性ガスが供給された場合であっても、励起分解により目的の生成物が生じない程度に、反応活性領域44の非成膜性プラズマを遮蔽するように設けられていればよく、どの形状であってもよく、例えば板状であってもよい。
【0080】
遮蔽部材26と円柱状部材18との最小間隔は、反応不活性領域48と反応活性領域44との間の領域の一部を遮蔽し、且つ保持部材によって円柱状部材18上に保持された薄膜形成対象部材40表面への薄膜形成を妨げない程度の距離である事が好ましい。例えば、円柱状部材18上に保持され、且つ本発明の薄膜形成装置10による薄膜形成が成される前の状態の薄膜形成対象部材40が、遮蔽部材26と円柱状部材18との対向領域に位置した状態において、該薄膜形成対象部材40と遮蔽部材26との最短距離は、10mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが好ましい。
【0081】
なお、遮蔽部材26と円柱状部材18とは、接触していてもよいが、遮蔽部材26と、円柱状部材18表面に保持された薄膜形成対象部材40上と、の間で摩擦が生じない程度の押し当て力で接触していることが好ましい。
【0082】
遮蔽部材26の材質は、適度な機械強度を有するものであれば特に限定されるものではなく、導電性(20℃における体積抵抗率:1×1013Ωcm未満)のものであっても、また絶縁性(20℃における体積抵抗率:1×1013Ωcm以上)のものであってもよいが、上述のように遮蔽部材26が薄膜形成対象部材40に接触するように設けられている場合には、薄膜形成対象部材40または薄膜形成対象部材40上に形成された膜に傷が発生することを抑制するために、薄膜形成対象部材40及び薄膜形成対象部材40上に形成された膜よりも硬度が低い材料を用いる。
【0083】
制御部16は、上記真空排気装置28、モータ30、電磁弁46、電磁弁38、及びマッチングボックス34に信号を授受するように接続されている。このため、制御部16によって真空排気装置28の制御が行われることで、反応容器12内の圧力を目的とする圧力に減圧する。また、制御部16がモータ30の回転数を制御することによって、目的とする速度で円柱状部材18を回転する。また、制御部16によって、電磁弁46及び電磁弁38各々と成膜性ガス供給源49に含まれるマスフローコントローラーが制御されることによって、成膜性ガス及び非成膜性ガス各々の供給量が調整される。
なお、薄膜形成対象部材40に熱を加えるための加熱装置(図示省略)を設けてよいが薄膜形成対象部材40に熱を加えることは必ずしも必須ではない。
【0084】
次に、本実施の形態の薄膜形成装置10における薄膜形成方法を説明する。
制御部16の制御によって真空排気装置28が駆動して、反応容器12の内部が減圧されると、制御部16は、円柱状部材18を回転するようにモータ30を制御する。この回転速度の制御は、例えば、モータ30に円柱状部材の回転速度を測定するためのセンサを設けて、このセンサからの入力信号に基づいて、目的とする回転速度となるようにモータ30の回転速度を調整するようにすればよい。
【0085】
円柱状部材18の回転によって、円柱状部材18上に保持された薄膜形成対象部材40が反応容器12内で回転移動する。
【0086】
次に、制御部16は、電磁弁38を制御することによって、反応容器12内への非成膜性ガスの供給を開始すると共に、高周波電源36からマッチングボックス34を介して放電電極20に高周波電力を供給する。このとき、放電電極20の放電面から円柱状部材18の外周面の対向領域に向かって広がるように非成膜性プラズマが生成される。この非成膜性プラズマの生成により、反応容器12内に反応活性領域44が形成される。また、この反応活性領域44の形成により、反応容器12内には、反応活性領域44以外の領域としての反応不活性領域48が、反応活性領域44に連続して形成されることとなる。
【0087】
次に、制御部16は、反応容器12内の反応不活性領域48に成膜性ガスを供給するように、電磁弁46を制御する。この電磁弁46の制御によって、成膜性ガスが成膜性ガス供給管24の成膜性ガス供給口24Aを介して、反応容器12内の反応不活性領域48に噴き出される。
【0088】
成膜性ガス供給口24Aから反応不活性領域48に噴き出され薄膜形成対象部材40に滞在している成膜性ガスは、円柱状部材18の回転による薄膜形成対象部材40の移動に伴って移動し、反応活性領域44に到る。なお、円柱状部材18の回転方向は、薄膜形成対象部材40の移動に伴って成膜性ガスを反応不活性領域48から遮蔽部材26との対向領域を介して反応活性領域44へと到る方向に移動させる方向であってもよく、反対に、成膜性ガスを反応不活性領域48から遮蔽部材26との対向領域を介さずに反応活性領域44へと到る方向に移動させる方向であってもよい。
【0089】
反応不活性領域48から反応活性領域44に到った成膜性ガスは、反応活性領域44において、非成膜性ガスによる非成膜性プラズマに曝されることによって、励起分解されて、成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする反応生成物、または成膜性ガスに含まれる元素と非成膜性ガスに含まれる元素とを構成要素とする反応生成物が生成される。この生成された反応生成物が薄膜形成対象部材40上に堆積されることにより、反応活性領域44に位置する薄膜形成対象部材40上には、成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする薄膜、または成膜性ガスに含まれる元素と非成膜性ガスに含まれる元素とを構成要素とする薄膜が形成される。
【0090】
円柱状部材18の回転が継続されることによって、薄膜形成対象部材40は、反応容器12内において、反応活性領域44と反応不活性領域48との間を繰り返し移動することとなり、薄膜形成対象部材40上には、除々に成膜性ガスに含まれる元素、または成膜性ガスに含まれる元素と非成膜性ガスに含まれる元素とを構成要素とする反応生成物が堆積されて、より層厚の厚い膜が形成される。
以上のようにして、薄膜形成装置10による薄膜の形成が行われる。
【0091】
上記薄膜形成装置10により薄膜を形成する際に用いる非成膜性ガスの一般的な例としては、例えば、N、H、NH、N、O、O、NO、NO、He、Ar、Ne、Kr、及びXe等の気体またはこれらの混合ガスが挙げられる。本実施形態のように、反応生成物として上記酸化ガリウム膜104を生成する場合、非成膜性ガスとしては、例えば、N、H、O、He、Ar又はこれらの混合ガス等が挙げられる。
また、本実施形態のように、反応生成物として上記酸化ガリウム膜104を生成する場合、成膜性ガスとしては、例えば、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、t−ブチルガリウム等が挙げられる。
【0092】
上記薄膜形成装置10を用いて上記ガス遮蔽フィルム100を製造する場合、上記水素の含有量、酸素の含有量、及びO/Ga比を制御する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。具体的には、Hを含む非成膜性ガスの流量と真空排気装置の排気速度によりプラズマ生成に適切な圧力を選択し、ガリウム源となる反応性ガスの流量と酸素源となるOなどの非成膜性ガスの流量の比を適切に選択すればよい。あわせて所望のO/Ga比を得られる高周波電力を適切に選択すればよい。
【0093】
以上のように、本実施形態のガス遮蔽フィルム100は、樹脂フィルム基材102と、樹脂フィルム基材102の表面に形成され、0.1原子%以上30原子%以下の水素を含み、かつ非晶質の酸化ガリウム膜104と、を有する。そのため、本実施形態のガス遮蔽フィルム100においては、ガス遮蔽フィルム100を屈曲させることによる水蒸気透過度の上昇が抑制される。
【0094】
本実施形態のガス遮蔽フィルム100は、例えば、後述する表示素子等の発光素子の基板として用いられるほか、発光素子以外の素子(例えば、受光素子、調光素子等)にも用いられる。
【0095】
[電極膜付きフィルム]
図3は、本実施形態に係る電極膜付きフィルムの構成の一例を示す模式断面図である。
図3に示す電極膜付きフィルム110は、例えば、ガス遮蔽フィルム100における酸化ガリウム膜104の表面に、電極膜112が形成されている。図3の電極膜付きフィルム110は、酸化ガリウム膜104の表面全体に電極膜112が形成されているが、これに限られず、必要に応じて酸化ガリウム膜104の表面の一部のみに電極膜112を形成してもよい。また図3の電極膜付きフィルム110は、ガス遮蔽フィルム100の酸化ガリウム膜104側に電極膜112が形成されているが、ガス遮蔽フィルム100の樹脂フィルム基材102側に電極膜112が形成されていてもよい。
以下、電極膜112について説明する。
なお、電極膜付きフィルム110を構成するガス遮蔽フィルム100については、上記のガス遮蔽フィルム100と同じであるため、説明を省略する。また、符号は省略する場合がある。
【0096】
<電極膜>
電極膜112に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、金属、金属酸化物、導電性高分子等が使用される。
金属としてはマグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、タンタル、インジウム、パラジウム、リチウム、カルシウムおよびこれらの合金が挙げられる。
金属酸化物としては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等の金属酸化膜があげられる。
導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリピリジン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等があげられる。
【0097】
電極膜112の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、キャスト法、スピン塗布法、浸漬塗布法、ラングミュア・ブロジェット(LB)法、インクジェット法、バー塗布法、ナノインプリンティング法などが挙げられる。さらに具体的には、例えば、上記の電極材料を、蒸着法やスパッタ等の公知の薄膜形成方法を用いて作製した薄膜を、公知のフォトリソグラフィー法やリフトオフ法を利用して形成する方法、インクジェット等によりレジストを用いて所望のパターン(電極形状)にエッチングする方法、アルミニウムなどの電極材料を直接熱転写する方法等が挙げられる。また、電極材料として導電性高分子を用いる場合には、例えば、これを溶媒に溶解させ、インクジェット等によりパターニングする方法も挙げられる。
【0098】
電極膜112に用いられる材料としては、上記の中でも、電極膜付きフィルムを例えば表示素子等に用いる場合は、光透過性を有する材料を用いることが好ましい。光透過性を有する材料としては、具体的には、例えば、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、及び蒸着もしくはスパッタされた金、白金、パラジウム等が挙げられる。
【0099】
本実施形態においては、上記ガス遮蔽フィルム上に電極膜112を形成するため、ガス遮蔽フィルム100を透過する水蒸気透過量が低い。そのため、例えばスパッタリング法等により電極膜112を形成しても、電極膜112形成時にガス遮蔽フィルム100を水蒸気が透過することによって電極膜112が着色されることが抑制されると考えられる。よって、本実施形態では光透過率の高い電極膜112が形成されると考えられる。また本実施形態のガス遮蔽フィルムは屈曲による水蒸気透過度の上昇が抑制されるため、電極膜112の光透過率の低下がさらに抑制されると考えられる。
【0100】
電極膜112の光透過率としては、例えば、可視赤外域透過率が80%以上が挙げられ、90%以上がより好ましい。また、紫外域透過率は、30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。
【0101】
電極膜112の表面抵抗としては、例えば、200Ω/□以下が挙げられ、50Ω/□以下の範囲がより好ましい。
さらに、電極膜112の膜厚としては、電極膜112に用いられる材料や光透過率等の特性に応じて選択されるが、例えば、50nm以上200nm以下の範囲が挙げられる。
【0102】
<電極膜付きフィルムの特性>
電極膜付きフィルム110における電極膜112側の表面、すなわち、電極膜112の酸化ガリウム膜104に接しない表面においては、算術平均表面粗さRa(以下、「Ra2値」と称する場合がある)が1.8nm以下であることが好ましい。上記Ra2値は、1.5nm以下がより好ましく、1.0nm以下がさらに好ましい。
例えば電極膜112をスパッタリング法により形成する場合、Ra2値を上記範囲にする手段としては、例えば、上記Ra1値が1.5nm以下のガス遮蔽フィルム110を用い、酸化ガリウム膜104側の面に電極膜112を形成する方法が挙げられる。
【0103】
[表示素子]
<有機電界発光素子>
以下、本実施形態における表示素子の一例として、有機電界発光素子について説明する。なお、本実施形態の有機電界発光素子について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
図4は、本実施形態の有機電界発光素子の層構成を説明するための模式的断面図であり、有機化合物層が複数の場合の一例であるが、後述するように有機化合物層が1つであってもよい。
【0104】
図4に示す有機電界発光素子は、基板1上に、電極2、正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3、発光層4、電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5、並びに背面電極7が順次積層されたものである。但し、符号3で示される層が、正孔輸送層及び正孔注入層から構成される場合には、電極2の背面電極7側に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層4がこの順に積層される。また、符号5で示される層が、電子輸送層及び電子注入層から構成される場合には、発光層4の背面電極7側に、電子輸送層、電子注入層、背面電極7がこの順に積層される。
【0105】
本実施形態においては、基板1が上記ガス遮蔽フィルム100に相当し、図示しないが樹脂フィルム基材102及び酸化ガリウム膜104を含んで構成されている。また、基板1及び電極2によって上記電極膜付きフィルム110が構成され、電極2が電極膜112に相当する。また基板1を構成する上記樹脂フィルム基材102及び上記酸化ガリウム膜104、並びに電極2に相当する上記電極膜112は、上記と同様であるため、説明を省略する。
【0106】
前記正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3、並びに電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5に用いる材料としては、例えば、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、スピロフルオレン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が用いられる。これらのうち特に好ましい材料としては、芳香族三級アミン化合物が挙げられ、その重量平均分子量としては、例えば、10000以上1000000以下の範囲が挙げられる。
【0107】
さらに、前記正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3、並びに電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5には、樹脂(ポリマー)、添加剤等をさらに加えてもよい。
具体的な樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂等が挙げられる。
また、添加剤としては、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【0108】
また、前記正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3、並びに電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5の電荷注入性を向上させる場合は、正孔注入材料や電子注入材料を用いる場合がある。正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、フタロシアニン誘導体、インダンスレン誘導体、ポリアルキレンジオキシチオフェン誘導体等が用いられる。また、これらには、ルイス酸、スルホン酸等を混合してもよい。電子注入材料としては、例えば、Li、Ca、Ba、Sr、Ag、Au等の金属、LiF、MgF等の金属フッ化物、MgO、Al、LiO等の金属酸化物が用いられる。
【0109】
発光層4に用いる発光材料としては、固体状態で高い発光量子効率を示す化合物を用いる。発光材料は、低分子化合物又は高分子化合物のいずれでもよく、有機低分子である場合の好適な例としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合の好適な例としては、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が用いられる。
【0110】
また、上記発光材料にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。該色素化合物のドーピングの割合としては、対象となる層の0.001質量%乃至40質量%、好適には0.01質量%乃至10質量%が挙げられる。このドーピングに用いられる色素化合物としては、例えば、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、具体的は、例えば、クマリン誘導体、DCM誘導体、キナクリドン誘導体、ペリミドン誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン誘導体、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスニウム、イリジウム、白金、及び金などの金属錯体化合物等が挙げられる。
【0111】
前記正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3、発光層4、並びに電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5は、電極2の上に順次形成される。具体的には、例えば、上記各材料を用いて真空蒸着法により形成する方法や、上記材料を適切な有機溶媒に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて、スピンコーティング法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法等により形成される。
【0112】
正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3、発光層4、並びに電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5の膜厚は、各々10μm以下、特に0.001μm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。上記各材料(前記非共役系高分子、発光材料等)の分散状態は分子分散状態でも微結晶などの粒子状態でも構わない。塗布液を用いた成膜法の場合、分子分散状態とするために分散溶媒は上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する。粒子状に分散するためには、例えば、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ホモジナイザー、超音波法等が利用される。
【0113】
上記電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5の上に、背面電極7を真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することにより、本実施形態の有機電界発光素子が得られる。
【0114】
背面電極7に用いる材料としては、電子注入を行なうため仕事関数の小さな金属、金属酸化物、金属フッ化物等が挙げられる。金属としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、インジウム、リチウム、カルシウム及びこれらの合金が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズインジウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等が挙げられる。また、金属フッ化物としては、例えば、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウムが挙げられる。背面電極7の形成方法としては、例えば、真空蒸着等が挙げられる。
【0115】
また、背面電極7上には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、例えば、In,Sn,Pb,Au,Cu,Ag,Alなどの金属、MgO,SiO,TiO等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂等が挙げられる。保護層の形成には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用される。
【0116】
なお本実施形態の有機電界発光素子は、上記層構成に限られず、例えば、上記正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3のない層構成、具体的には、基板1上に、電極2、発光層4、電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5、並びに背面電極7が順次積層された層構成のものであってもよい。
【0117】
また本実施形態の有機電界発光素子は、上記層構成に限られず、例えば、上記電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5のない層構成、具体的には、基板1上に、電極2、正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3、発光層4、並びに背面電極7が順次積層された層構成のものであってもよい。
【0118】
さらに本実施形態の有機電界発光素子は、上記層構成に限られず、例えば、上記正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層3並びに上記電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層5が無く、発光層4の代わりに電荷輸送能を持つ発光層が用いられた層構成のものであってもよい。すなわち、このような有機電界発光素子としては、例えば、基板上に、電極、電荷輸送能を持つ発光層、及び背面電極が順次積層されたものが挙げられる。
【0119】
また、本実施形態の有機電界発光素子は、背面電極7として光透過率の高い材料を用いた形態としてもよく、上記層構成を複数段積重ねた構造としてもよい。
【0120】
本実施形態の有機電界発光素子は、マトリクス状及びセグメント状の少なくともいずれかに配置された表示媒体に用いてもよい。有機電界発光素子をマトリクス状に配置する場合、電極のみをマトリクス状に配置する態様であってもよいし、電極及び有機化合物層の両方をマトリクス状に配置する態様であってもよい。また、有機電界発光素子をセグメント状に配置する場合、電極のみをセグメント状に配置する態様であってもよいし、電極及び有機化合物層の両方をセグメント状に配置する態様であってもよい。
【0121】
前記マトリクス状又はセグメント状の有機化合物層は、例えばインクジェット法を用いることにより容易に形成される。
【0122】
マトリクス状に配置した有機電界発光素子及びセグメント状に配置した有機電界発光素子から構成される表示媒体の駆動装置及び駆動方法としては、従来公知のものが用いられる。
【0123】
<液晶表示素子>
以下、本実施形態における表示素子の他の一例として、液晶表示素子について説明する。なお、本実施形態の液晶表示素子について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0124】
図5は、本実施形態の液晶表示素子の層構成を説明するための模式的断面図である。図5に示す液晶表示素子は、例えば、液晶202を内包したマイクロカプセル壁203を樹脂部材201中に分散・保持させた液晶含有組成物204が、電極211が設けられた基板221と電極212が設けられた基板222との間に挟まれている。そして本実施形態の液晶表示素子は、駆動回路230によって電極211及び電極212に電圧パルスが与えられ、画像が表示される。
【0125】
本実施形態の液晶表示素子においては、基板221及び基板222が上記ガス遮蔽フィルム100に相当し、図示しないが、それぞれ樹脂フィルム基材102及び酸化ガリウム膜104を含んで構成されている。なお、基板221又は基板222の少なくともいずれか一方が上記ガス遮蔽フィルム100に相当するものであればよい。
また、基板221及び電極211によって上記電極膜付きフィルム110が構成され、電極211が電極膜112に相当する。さらに、基板222及び電極212によっても上記電極膜付きフィルム110が構成され、電極212が電極膜112に相当する。基板221及び基板222を構成する上記樹脂フィルム基材102及び上記酸化ガリウム膜104、並びに電極211及び電極212に相当する上記電極膜112は、上記と同様であるため、説明を省略する。
【0126】
液晶202としては、例えば、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶等が挙げられる。
上記コレステリック液晶は、光学活性化合物を含む液晶材料であり、1)ネマチック液晶にカイラル剤と呼ばれる光学活性化合物等を添加する方法、2)コレステロール誘導体などのようにそれ自身光学活性な液晶材料を用いる方法などによって得られる。前者の場合、ネマチック液晶材料としては、シアノビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルベンゾエート系、シクロヘキシルベンゾエート系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系、スチルベン系、トラン系など公知のネマチック液晶含有組成物が利用される。カイラル剤としてはコレステロール誘導体や、2−メチルブチル基などの光学活性基を有する化合物等が利用される。
【0127】
マイクロカプセル壁203を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。また、マイクロカプセル壁203は、必要に応じて、配向剤、ポリオール成分等を含んでもよい。
【0128】
マイクロカプセル壁203を形成する方法としては、例えば、1)液晶202を分散した高分子水溶液を相分離させて液晶滴表面に皮膜を形成する相分離法、2)高分子と液晶202とを共通溶媒に溶解して、これを水相中に分散して溶媒を蒸発させる液中乾燥法、3)液晶202と油溶性モノマーAとの混合溶液(油相液)を水相中に分散して、これに水溶性モノマーBを添加して、モノマーAとモノマーBとを界面重合反応させて皮膜を形成する界面重合法、4)液晶202中又は水相中にモノマーを溶解して加熱等によって重合させて析出した高分子で皮膜を形成するin situ重合法などが挙げられる。
【0129】
樹脂部材201としては、例えば、ポリビニルアルコール、アルキルセルロース、ゼラチン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル、ポリウレタン、エポキシ、ポリカーボネート、ポリオレフィン、シリコーンなどの高分子や、金属アルコキシドをゾル−ゲル反応して生成される金属酸化物などが挙げられ、その中でも透明樹脂部材であることが好ましい。
【0130】
樹脂部材201、液晶202、及びマイクロカプセル壁203を含む液晶含有組成物204は、例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、フレクソ印刷などの印刷法や、スピン塗布法、バー塗布法、ディップ塗布法、ロール塗布法、ナイフ塗布法、ダイ塗布法などの塗布法を用いて、基板221上に形成された電極211上に塗布される。
【0131】
<その他の表示素子>
本実施形態における表示素子としては、上記有機電界発光素子及び液晶表示素子に限られず、例えば、画像表示用粒子分散液が一対の基板間に封入された電気泳動方式の表示素子であってもよく、分散液ではなく画像表示用粒子がそのまま一対の基板間に封入された表示素子であってもよい。その場合、一対の基板の少なくとも一方が上記ガス遮蔽フィルム100である。
【実施例】
【0132】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
【0133】
[ガス遮蔽フィルムの製造]
<実施例1>
樹脂フィルム基材として樹脂フィルム基材1(材料:ポリエチレンテレフタレート樹脂、製造元:東レ社製、製品名:ルミラー、厚さ:75μm、可視赤外域透過率:85%、紫外域透過率:35%、曲げ弾性率:4GPa、水蒸気透過度:8g/(m・24hr)を用いた。図2に示す薄膜形成装置10を用いて、上記樹脂フィルム基材に酸化ガリウム膜1の形成を行った。
【0134】
なお、薄膜形成条件は、以下のように設定した。
・反応容器12:
内径400mm、円筒軸方向長さ400mmの円筒状部材。
内壁の材質 ステンレス鋼SUS304。
・円柱状部材18:
直径84mm、長尺方向長さ 340mm、アルミ製の円筒状部材
・放電電極20:
放電面の円柱状部材18の回転軸方向長さ:350mm
放電面の該回転軸方向に直交する方向の長さ:50mm
・非成膜性ガス供給管22:
内径4mmのSUS304製パイプ
・非成膜性ガス供給口22A:
放電電極20の放電面(円柱状部材18との対向面に相当)に、80mm間隔で4個設置。
・成膜性ガス供給管24:
内径4mmのステンレスパイプ
・成膜性ガス供給口24Aの位置:反応容器12内の反応不活性領域48に設置。
成膜性ガス噴出方向:円柱状部材18の回転中心方向で基板表面に向かう方向。
円柱状部材18回転軸方向における位置:放電電極20の放電面上の、円柱状部材18回転軸方向中心位置と同一位置。
円柱状部材18表面からの距離:5mm
放電電極20によって形成される反応活性領域44と、反応不活性領域48との境界からの距離:40mm
・薄膜形成対象部材取付け位置:円柱状部材18の外周面に、円柱状部材18の回転軸方向に20mm間隔で5箇所、回転方向に向かって等間隔で4箇所、合計20箇所に、寺岡製作所社製、商品名 カプトン粘着テープを用いて貼付。
・遮蔽部材26:
平板状(156mm×400mm、厚み3mm、材質 アルミニウム)
円柱状部材18上に保持された薄膜形成対象部材としての単結晶Si基板(薄膜未形成状態)が、遮蔽部材26と円柱状部材18外周面との対向領域に位置したときの、該薄膜形成対象部材表面との最小距離が2mmとなるように、反応容器12の内周壁に設置した。
【0135】
なお、上記「電極中心」とは、放電電極20の放電面における、円柱状部材18の回転軸方向中心位置を示している。
【0136】
上記構成の薄膜形成装置10を用いて、排気管14を介して反応容器12内を圧力が1×10−2Pa程度になるまで真空排気した。次に、非成膜性ガスとして、水素500sccm、窒素1000sccm、酸素5sccmを合流させて非成膜性ガス供給管22から、放電電極20に設けられた非成膜性ガス供給口22Aを介して反応容器12内に導入するとともに、真空排気装置28に含まれるコンダクタンスバルブを調整し、反応容器12内の圧力を30Paとした。高周波電源36かららマッチングボックス34により、13.56MHzの交流波を出力100Wにセットしチューナでマッチングをとり、放電電極20から放電を行った。このときの反射波は0Wであった。
【0137】
次に、成膜性ガスとして恒温槽中で20℃に保たれたトリメチルガリウムを用い、水素ガスをキャリアガスとしてバブリングし、成膜性ガス供給管24から成膜性ガス供給口24Aを介して反応容器12内の反応不活性領域48に、トリメチルガリウムと水素の混合ガスの流量が10sccmとなるように供給した。真空排気装置28に含まれるコンダクタンスバルブを調整し、反応容器12内圧力を30Paとした。
【0138】
この状態で、円柱状部材18を0.2rpmの回転速度で図2に矢印で示した方向に回転させながら60分間成膜した。このとき、円柱状部材18の温度は、25℃から約50℃の範囲であった。
【0139】
<実施例2>
60分間成膜の代わりに120分間成膜とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜2を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0140】
<実施例3>
反応容器内圧力を30Paの代わりに50Paとした以外は、実施例2と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜3を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0141】
<実施例4>
酸素流量5sccmの代わりに10sccmとした以外は、実施例3と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜4を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0142】
<実施例5>
60分間成膜の代わりに360分間成膜とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜5を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0143】
<実施例6>
窒素1000sccm、高周波電力100Wの代わりにヘリウム500sccm、高周波電力200Wとした以外は、実施例1と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜6を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0144】
<実施例7>
反応容器内圧力を30Pa、60分間成膜の代わりに50Pa、120分間成膜とした以外は、実施例6と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜7を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0145】
<実施例8>
水素流量500sccmの代わりに1000sccmした以外は、実施例7と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜8を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0146】
<実施例9>
酸素流量5sccmの代わりに10sccmした以外は、実施例7と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜9を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0147】
<実施例10>
反応容器内圧力を50Paの代わりに70Paとした以外は、実施例8と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜10を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0148】
<実施例11>
反応容器内圧力を50Paの代わりに70Paとした以外は、実施例9と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜11を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0149】
<実施例12>
酸素流量10sccmの代わりに20sccmした以外は、実施例11と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜12を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0150】
<実施例13>
高周波電力200Wの代わりに300Wとした以外は、実施例12と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜13を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0151】
<実施例14>
樹脂フィルム基材1の代わりに樹脂フィルム基材2(材料:ポリエーテルサルフォン樹脂、製造元:住友ベークライト社製、製品名:スミライトFS−1300、厚さ:100μm、可視赤外域透過率:89%、紫外域透過率:40%、曲げ弾性率:1.9GPa、水蒸気透過度:124g/(m・24hr))を用いた以外は、実施例2と同様にして、樹脂フィルム基材2上に酸化ガリウム膜14を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0152】
<比較例1>
反応容器内圧力を30Paの代わりに120Paとした以外は、実施例2と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜15を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0153】
<比較例2>
プラズマCVD法により、樹脂フィルム基材1上に酸化アルミニウム膜1を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。具体的には、薄膜形成装置10から遮蔽部材26を取り外し、トリメチルガリウムの代わりにトリメチルアルミニウムとした以外は、実施例2と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化アルミニウム膜1を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0154】
<比較例3>
プラズマCVD法により、樹脂フィルム基材1上に酸化アルミニウム膜2を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。具体的には、120分間成膜の代わりに360分間成膜とした以外は、比較例2と同様にして、樹脂フィルム基材1上に酸化アルミニウム膜2を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。
【0155】
<比較例4>
スパッタリング法により、樹脂フィルム基材1上に酸化ケイ素膜1を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。具体的には、装置としてRF−マグネトロンスパッタリング装置(製造元:日本真空技術株式会社、型番:SV‐4540型)、キャリアガスとしてAr/酸素(0.5体積%)混合ガス、ターゲットして酸化ケイ素を用い、キャリアガス流量:25sccm、圧力:0.4Pa、基板温度:80℃、成膜速度:1μm/hの条件で、酸化ケイ素膜1を形成した。
【0156】
<比較例5>
スパッタリング法により、樹脂フィルム基材1上に酸化ケイ素膜2を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。具体的には、装置としてRF−マグネトロンスパッタリング装置(製造元:日本真空技術株式会社、型番:SV‐4540型)、キャリアガスとしてAr/酸素(0.5体積%)混合ガス、ターゲットして酸化ケイ素を用い、キャリアガス流量:25sccm、圧力:0.4Pa、基板温度:100℃、成膜速度:1μm/hの条件で、酸化ケイ素膜2を形成した。
【0157】
<比較例6>
スパッタリング法により、樹脂フィルム基材1上に酸化スズ膜1を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。具体的には、装置としてRF−マグネトロンスパッタリング装置(製造元:日本真空技術株式会社、型番:SV‐4540型)、キャリアガスとしてAr/酸素(0.5体積%)混合ガス、ターゲットして酸化スズを用い、キャリアガス流量:25sccm、圧力:0.4Pa、基板温度:100℃、成膜速度:1μm/hの条件で、酸化スズ膜1を形成した。
【0158】
<比較例7>
スパッタリング法により、樹脂フィルム基材1上に酸化ガリウム膜16を形成し、ガス遮蔽フィルムを製造した。具体的には、装置としてRF−マグネトロンスパッタリング装置(製造元:日本真空技術株式会社、型番:SV‐4540型)、キャリアガスとしてAr/酸素(0.5体積%)混合ガス、ターゲットして酸化ガリウムを用い、キャリアガス流量:25sccm、圧力:0.4Pa、基板温度:100℃、成膜速度:1μm/hの条件で、酸化ガリウム膜16を形成した。
【0159】
<ガス遮蔽フィルムの評価>
−酸化ガリウム膜、ガス遮蔽フィルムの特性−
形成された酸化ガリウム膜の結晶性、ガリウム、酸素、及び水素の含有量、弾性率、可視赤外域透過率及び紫外域透過率、並びに膜厚を表1に示す。また、得られたガス遮蔽フィルムの上記Ra1値、及び水蒸気透過度を併せて表1に示す。
【0160】
−耐屈曲性の評価−
また、得られたガス遮蔽フィルムの耐屈曲性を以下のようにして評価した。
具体的には、ガスバリア層の厚さの100000倍の曲率半径の円筒に巻き付けてガス遮蔽フィルムの屈曲を行った。例えばガスバリア層の厚さが100nmの場合は、直径20mmの円筒に巻き付けた。そして、屈曲後におけるガス遮蔽フィルムの水蒸気透過度を、屈曲前におけるガス遮蔽フィルムの水蒸気透過度と同様にして測定した。屈曲前の水蒸気透過度を100としたときの、屈曲後の水蒸気透過度を求め、耐屈曲性の指標とした。結果を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
[電極膜付きフィルムの製造]
得られたガス遮蔽フィルム上に、スパッタリング法により電極膜としてITO膜を形成した。具体的には、装置としてRF−マグネトロンスパッタリング装置(製造元:日本真空技術株式会社、型番:SV‐4540型)、キャリアガスとしてArガス、ターゲットして酸化インジウムに錫を5質量%添加した密度99%以上のターゲットを用い、キャリアガス流量:20sccm、圧力:0.3Pa、基板温度:100℃、成膜速度:2μm/hの条件で、ITO膜16を形成した。
【0163】
得られた電極膜はいずれも、表面抵抗値が20Ω/□であり、膜厚が100nmであった。
得られた電極膜の可視赤外域透過率及び紫外域透過率、並びに得られた電極膜付きフィルムの上記Ra2値を表2に示す。
【0164】
[有機電界発光素子の製造]
得られた電極膜付きフィルムの電極膜形成面に、正孔注入輸送層として、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(Bayer社製、Bytron P CH8000)の懸濁液を、スピンコーターにより80nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で150℃、15分間乾燥した。次いで、正孔注入輸送層上に、発光材料として下記化合物X−16(n=8、重量平均分子量:200000)のキシレン溶液をスピンコーターにより90nmの厚みで成膜した。続いてこの上に、短冊状の穴が設けられている金属性マスクを用いてバリウムを10nm蒸着した後、アルミニウム100nmを蒸着し、背面電極をITO電極膜と交差するように形成した。このようにして有機電界発光素子を作成した。この有機電界発光素子の有効面積は、0.04cmであった。
【0165】
【化1】



【0166】
≪有機電界発光素子の評価≫
以上のように作製した有機電界発光素子に対し、乾燥窒素中で、ITO膜側をプラス、背面電極側をマイナスとして直流電圧を印加して測定し、下記の評価を行なった。結果を表2に示す。
(1)発光特性
直流駆動(DC駆動)方式で初期輝度を500cd/mとしたときの駆動電流密度により、発光特性を比較し、実施例1の値を1.0として規格化して相対評価した。
(2)発光寿命
25℃下で、直流駆動(DC駆動)方式で初期輝度を500cd/mとし、実施例1の有機電界発光素子の輝度(初期輝度L:500cd/m)が輝度L/初期輝度L=0.5となった時点での駆動時間を1.0として規格化した場合の相対時間により、発光寿命を相対評価した。
【0167】
【表2】

【0168】
前記表1及び表2に示すように、実施例では、比較例に比べ、ガス遮蔽フィルムの耐屈曲性が良好であり、電極膜付きフィルムにおける電極膜の光透過性が良好であり、有機電界発光素子の性能が良好であった。なお、ガス遮蔽フィルムの水蒸気透過度が1.00g/(m・24hr)以上の比較例については、屈曲前においてもガス遮蔽フィルムとして機能していないため、屈曲による水蒸気透過度の変化が小さくても、実施例に比べ、電極膜付きフィルムにおける電極膜の光透過性が低く、有機電界発光素子の性能が低くなった。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本実施形態に係るガス遮蔽フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本実施形態に係るガス遮蔽フィルムの製造する薄膜製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る電極膜付きフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図4】本実施形態に係る有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。
【図5】本実施形態に係る液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0170】
100 ガス遮蔽フィルム
102 樹脂フィルム基材
104 酸化ガリウム膜
110 電極膜付きフィルム
112 電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材と、
前記フィルム基材の表面に形成され、含有量が0.1原子%以上30原子%以下の水素を含み、かつ非晶質の酸化ガリウム膜と、
を有するガス遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記酸化ガリウム膜中における酸素の含有量は、前記酸化ガリウム膜中におけるガリウムの含有量の、1.3倍以上1.6倍以下である、請求項1に記載のガス遮蔽フィルム。
【請求項3】
前記酸化ガリウム膜中における酸素の含有量は、15原子%以上60原子%以下である、請求項1又は請求項2に記載のガス遮蔽フィルム。
【請求項4】
前記酸化ガリウム膜の前記フィルム基材に接しない表面における算術平均表面粗さRaが、1.5nm以下である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルム。
【請求項5】
JIS K7129(2008)附属書Bに従った赤外線センサ法によって測定された前記ガス遮蔽フィルムの水蒸気透過度が、0.01g/(m・24hr)以下である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルム。
【請求項6】
波長400nm以上800nm以下における前記酸化ガリウム膜の光透過率が80%以上であり、波長350nmにおける前記酸化ガリウム膜の光透過率が50%以上である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルムと、
前記ガス遮蔽フィルムに形成された電極膜と、を有する、電極膜付きフィルム。
【請求項8】
前記電極膜は、前記ガス遮蔽フィルムにおける前記酸化ガリウム膜の前記フィルム基材に接しない表面に形成された、請求項7に記載の電極膜付きフィルム。
【請求項9】
請求項4に記載のガス遮蔽フィルムと、
前記ガス遮蔽フィルムにおける前記酸化ガリウム膜の前記フィルム基材に接しない表面に形成された電極膜と、を有し、
前記電極膜の前記ガス遮蔽フィルムに接しない表面における算術平均表面粗さRaが、1.8nm以下である、電極膜付きフィルム。
【請求項10】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のガス遮蔽フィルムを備えた表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−79197(P2011−79197A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232646(P2009−232646)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】