説明

ガソリン容器

【課題】ポリエチレンから本質的になるガソリン容器であって、ガスバリヤ性を有し且つ加飾性に優れたガソリン容器の提供。
【解決手段】ポリエチレンから本質的になるガソリン容器の表面にフッ化処理層を有するガソリン容器であって、該容器は0.01〜1.5(g/m/日)のガソリン透過量を有し、且つ該容器の外側の表面であってフッ化処理層の一部又は全部の表面上に加飾処理層を有するガソリン容器により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン容器に関する。特に、本発明は、ガスバリヤ性を有し(即ち、ガソリン透過性が有効に抑えられ)、且つ加飾性に優れたガソリン容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン容器の重量を軽減させること及び設計の自由度を高めることを目的として、プラスチック製、特にポリエチレン製のガソリン容器を用いることが近年、開発・研究され、商品化が進んでいる。
ここで、プラスチック製、特にポリエチレン製のガソリン容器の表面に、ロットナンバーなどの種々の文字を印字する要望、種々の塗装を施す要望がある。
例えば、コロナ処理などのポリエチレンの表面酸化処理などを施すことにより、ポリエチレン表面に直接、印字することが提案されている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。しかしながら、コロナ処理などの表面酸化処理を施すと、文字の印字又は所望の外観への塗装などの要望を満たすことができるが、ガソリン容器にとって重要なガスバリヤ性を損なうこととなる。
【0003】
一方、ポリエチレン製燃料タンクの表面をフッ化処理し、優れたガスバリヤ性(低いガソリン透過量)を有するポリエチレン製燃料タンクが提案されている。しかしながら、容器表面への文字の印字又は所望の外観への塗装などの要望を満たすものは提案されていない。
【非特許文献1】高分子表面加工学(技報堂出版、岩森 暁著)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、ポリエチレンから本質的になるガソリン容器であって、ガスバリヤ性を有し且つ加飾性に優れたガソリン容器を提供することにある。
また、上記目的に加えて、本発明の目的は、加飾性を有することにより、ガスバリヤ性をさらに高めたガソリン容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、フッ化処理層を有することにより、ガスバリヤ性を有し且つ加飾性に優れたガソリン容器を提供できることを見出した。なお、本願において、「加飾」又は「加飾処理」とは、ガソリン容器の表面外観を所望の外観とする全ての処理をいう。具体的には、「加飾」又は「加飾処理」として、種々のインクによる印字又は印刷、種々の塗料の塗布、種々の貼付物による貼付などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、本願において、「加飾性」とは、該「加飾」を行え得る性質をいう。
【0006】
より具体的には、本発明者らは、以下の発明により、上記課題を解決できることを見出した。
<1> ポリエチレンから本質的になるガソリン容器の表面にフッ化処理層を有するガソリン容器であって、該容器は0.01〜1.5(g/m/日)、好ましくは0.01〜1.0(g/m/日)、より好ましくは0.01〜0.5(g/m/日)のガソリン透過量を有し、且つ該容器の外側の表面であってフッ化処理層の一部又は全部の表面上に加飾処理層を有するガソリン容器。なお、ここでいうガソリン透過量は、燃料C(トルエン50%、イソオクタン50%の混合物)とエタノールの割合が90:10の混合燃料を用いた場合の28℃での燃料透過量をいう。具体的には、上記燃料を公称容量満タンまで入れた燃料タンクを40℃±5℃の雰囲気で10週間静置したのち、新しい燃料に入れ替えて28℃±2℃の雰囲気で測定した一日当り、単位面積あたりの燃料透過量(g/m/日)をいう。
<2> 上記<1>において、加飾処理層が外観装飾部材であって容器の外側表面に接着する接着層を有する外観装飾部材を貼付して成るのがよい。
<3> 上記<2>において、外観装飾部材を貼付して成る加飾処理層により、加飾処理層のない状態のガソリン透過量を100%とした場合、該ガソリン透過量が95%以下、好ましくは90%以下となるのがよい。
【0007】
<4> 上記<1>〜<3>のいずれかにおいて、加飾処理層は、インクが印字されて成るのがよい。
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、加飾処理層は、フッ化処理層の一部又は全部の表面上に配置されるプライマー層、及び該プライマー層上に配置される塗料層を有してなるのがよい。
【0008】
<6> 上記<5>において、プライマー層及び塗料層を有する加飾処理層により、加飾処理層のない状態のガソリン透過量を100%とした場合、該ガソリン透過量が95%以下、好ましくは90%以下となるのがよい。
<7> 上記<1>〜<6>のいずれかにおいて、ポリエチレンは、ブロー成形用ポリエチレン(190℃において21.16Nの荷重を加えて測定したメルトフローレートが1.0g/10min以下であるのが好ましい)であるのがよい。
<8> 上記<1>〜<7>のいずれかにおいて、フッ化処理層は、フッ素を主に有して成るのがよい。なお、フッ化処理層は、容器の外側表面と内側表面との双方に有するのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ポリエチレンから本質的になるガソリン容器であって、ガスバリヤ性を有し且つ加飾性に優れたガソリン容器を提供することができる。
また、上記効果に加えて、本発明により、加飾性を有することにより、ガスバリヤ性をさらに高めたガソリン容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリエチレンから本質的になるガソリン容器の表面にフッ化処理層を有するガソリン容器であって、該容器は0.01〜1.5(g/m/日)、好ましくは0.01〜1.0(g/m/日)、より好ましくは0.01〜0.5(g/m/日)のガソリン透過量を有し、且つ該容器の外側の表面であってフッ化処理層の一部又は全部の表面上に加飾処理層を有するガソリン容器を提供する。
【0011】
<ポリエチレン>
本発明に用いるポリエチレンは、特に限定されないが、高いガスバリヤ性をもたらすためには、ブロー成形用ポリエチレン(190℃において21.16Nの荷重を加えて測定したメルトフローレートが1.0g/10min以下であるのが好ましい)であるのがよい。
【0012】
<フッ化処理層>
本発明の容器は、ポリエチレンからなる容器の表面にフッ化処理層を有する。フッ化処理層は、容器の表面の内側及び外側に有するのがよい。
フッ化処理層は、従来より公知、又は将来公知となりうる、種々のフッ化処理により得られる層であるのがよい。なお、種々のフッ化処理として、フッ素ガス又はフッ素ガスとその他のガスとの混合ガスによる処理(例えば、特許第3629031号を参照のこと)などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0013】
<ガソリン透過量>
本発明のガソリン容器は、上記フッ化処理層を有することにより、0.01〜1.5(g/m/日)、好ましくは0.01〜1.0(g/m/日)、より好ましくは0.01〜0.5(g/m/日)のガソリン透過量を有する。該ガソリン透過量により、本発明は、軽量且つ所望のガスバリヤ性を有するガソリン容器を提供することができる。
また、後述するが、本発明の容器は、加飾処理層を有することにより、ガスバリヤ性をさらに保持するガソリン容器を提供することができる。
【0014】
<加飾処理層>
本発明の容器は、フッ化処理層の一部又は全部の表面上に、加飾処理層を有する。ここで、「加飾」又は「加飾処理」とは、上述の定義を有する。
具体的には、加飾処理層として、i)容器の外側表面に接着する接着層を有する外観装飾部材の接着又は貼付による層、ii)インクなどが印字又は印刷される層、iii)プライマー層及び該プライマー層上に配置される塗料層、などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0015】
<外観装飾部材>
外観装飾部材は、容器の表面、特にフッ化処理層の表面に接着する接着層を有する部材であって外観を装飾する部材であれば、特に限定されない。いわゆる「グラフィック」と呼ばれるものがこれに該当する。接着層としては、いわゆる「グラフィック」と呼ばれるものに用いられる、従来公知の接着層又は将来公知となりうる接着層を挙げることができる。
【0016】
本発明のガソリン容器は、外観装飾部材を貼付して成る加飾処理層を有することにより、そのガスバリヤ性を高めることができる。具体的には、外観装飾部材がない状態での容器のガス透過量を100%とした場合、外観装飾部材を貼付して成る加飾処理層を有する容器のガス透過量が95%以下、好ましくは90%以下であるのがよい。
【0017】
<インクなどが印字又は印刷される層>
本発明の加飾処理層は、ii)インクなどが印字又は印刷される層であることができる。なお、この層ii)は、上記層i)と共に存在してもよい。即ち、容器の外側表面のある部分Aには上記層i)が存在する一方、該部分Aとは異なる部分Bに層ii)を有してもよい。
【0018】
<プライマー層及び該プライマー層上に配置される塗料層>
本発明の加飾処理層は、iii)プライマー層及び該プライマー層上に配置される塗料層であることができる。なお、この層iii)は、上記層i)及び/又は層ii)と共に存在してもよい。即ち、容器の外側表面に、層i)と層iii)とが存在する場合、層ii)と層iii)とが存在する場合、層i)〜層iii)が存在する場合があってもよい。勿論、層iii)のみが存在する場合があってもよい。
【0019】
プライマー層は、その素材は特に限定されないが、特に変性ポリオレフィンを含むものを用いるのが好ましい。この場合、フッ化処理層とプライマー層とが強固に結合し、且つプライマー層と塗料層とが強固に結合することにより、加飾処理層が容易に剥離することがないため、好ましい。
【0020】
塗料層に用いられる塗料は、特に限定されない。
【0021】
本発明のガソリン容器は、プライマー層及び塗料層を有する加飾処理層により、そのガスバリヤ性を高めることができる。具体的には、プライマー層及び塗料層を有する加飾処理層がない状態での容器のガス透過量を100%とした場合、プライマー層及び塗料層を有する加飾処理層を有する容器のガス透過量が95%以下、好ましくは90%以下であるのがよい。
【0022】
<加飾処理層の非剥離性>
本発明の容器の加飾処理層は、容易に剥離することがない。これにより、本発明の加飾処理層は、容易に剥離することがないため、取引者及び需要者にとって使用の便がよいガソリン容器を提供することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
<高密度ポリエチレン容器の製造>
メルトフローレート0.4g/10minのポリエチレンをブロー成形し容量6Lの燃料タンクB−1を形成した。この燃料タンクB−1をフッ化処理専用チャンバ(以下、単に「チャンバ」と略記する)内に静置し、チャンバ内を真空にした後、フッ素と窒素との混合ガスを導入し、表面にフッ化処理層を有する燃料タンクA−1(外表面の面積:約3000cm)を得た。
【0024】
<グラフィックの貼付>
燃料タンクA−1の表面に、接着層としてアクリル系粘着材を有するグラフィックX−1(幅:25mm、長さ:200mm)を、貼付し、グラフィック貼付燃料タンクA−2を得た。貼付したグラフィックは、容易には剥離しないものであった。なお、燃料タンクB−1(ポリエチレンのみ)にグラフィックX−1を貼付したところ、グラフィックX−1の一端が容易に剥離した。
【0025】
<剥離試験>
グラフィック貼付燃料タンクA−2のグラフィックについて剥離試験を行った。剥離試験は、次のように行った。
即ち、短冊状のグラフィックの一端(幅:25mm)を180℃折り曲げ剥離速度300mm/分で剥離を試みた。該短冊片の該一端にゲージを取付け、剥離中の引張強度、即ち剥離強度を測定した。
グラフィック貼付燃料タンクA−2の剥離強度は、18Nであった。
なお、燃料タンクB−1(ポリエチレンのみ)にグラフィックX−1を貼付したものの剥離強度を測定したところ、測定不能な程度で剥離強度が小さい、即ち直ぐに剥離するものであった。
【0026】
<ガソリン透過量>
燃料タンクB−1(ポリエチレンのみ)、燃料タンクA−1(フッ化処理層あり)のそれぞれについて、ガソリン透過量を測定した。
ガソリン透過量は、燃料タンクB−1が7.5g/m/日、燃料タンクA−1(フッ化処理層あり)が0.5g/m/日、燃料タンクA−2(フッ化処理層及びグラフィック層あり)が0.4g/m/日であった。この結果から、フッ化処理によりガソリン透過量が減少すること、即ちガスバリヤ性が向上することがわかる。また、グラフィック層があることにより、グラフィックを張る前の80%にまでガソリン透過量が減少すること、即ちガスバリヤ性が向上することがわかる。
【実施例2】
【0027】
<高密度ポリエチレン容器の製造>
実施例1と同様に、表面にフッ化処理層を有する燃料タンクA−1(外表面の面積:約3000cm)を得た。
【0028】
<インクの印字>
燃料タンクA−1の外表面に、フォントサイズ:□13.8mmの文字を、インク種:専用顔料インク及びLinx6800スペクトラム(株式会社ユニオンコーポレーション)を用いて、印字した。印字した文字は、手で擦っても簡単には剥離せず、頑強なものであった。
一方、燃料タンクB−1(ポリエチレンのみ)の外表面に、上記と同条件で、印字を行った。印字した文字は、手で擦ると、即座に剥離し、ティッシュペーパーにより容易に印字がにじんだ。
【実施例3】
【0029】
<高密度ポリエチレン容器の製造>
実施例1と同様に、表面にフッ化処理層を有する燃料タンクA−1(外表面の面積:約3000cm)を得た。
【0030】
<プライマー層の形成>
燃料タンクA−1のフッ化処理層表面上に、プライマー層を形成した。即ち、燃料タンクA−1の外表面に、変性ポリオレフィンを含む物質を塗布することにより、該容器の表面に、厚さ10μmの変性ポリオレフィンを含むプライマー層を形成した。
該プライマー層を有する燃料タンクの該プライマー層上にウレタン系塗料を塗布することにより、該容器の表面に、厚さ30μmのウレタン系塗料からなる塗料層を有する燃料タンクA−3を得た。燃料タンクA−3の塗料は、容易には剥離しないものであった。なお、燃料タンクB−1(ポリエチレンのみ)に、上述の塗料を塗布したところ、塗布後すぐに、塗布部分がはがれ始めた。
【0031】
<剥離試験>
塗料塗布燃料タンクA−3の塗布部分について、JIS Z 1522に準拠して剥離試験を行った。即ち、該塗布部分にセロハン粘着テープを完全に密着させ、テープの一端を塗膜面に垂直に保ち瞬間的に引き剥がし、残った碁盤目の数を調べた。なお、碁盤目は1mm×1mmとした。
この剥離試験を実施した結果、塗膜面の剥がれは観察されなかった。
なお、燃料タンクB−1(ポリエチレンのみ)に、上記と同じ塗料を塗布したものの剥離強度を測定したところ、測定不能な程度で剥離強度が小さい、即ち直ぐに剥離するものであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンから本質的になるガソリン容器の表面にフッ化処理層を有するガソリン容器であって、
前記容器は、0.01〜1.5(g/m/日)のガソリン透過量を有し、且つ
前記容器の外側表面であって前記フッ化処理層の表面の一部又は全部に加飾処理層を有するガソリン容器。
【請求項2】
前記加飾処理層が、前記容器の外側表面に接着する接着層を有する外観装飾部材を貼付して成る請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記加飾処理層は、インクが印字されて成る請求項1又は2記載の容器。
【請求項4】
前記加飾処理層は、前記フッ化処理層の一部又は全部の表面上に配置されるプライマー層、及び該プライマー層上に配置される塗料層を有してなる請求項1〜3のいずれか1項記載の容器。




【公開番号】特開2008−62976(P2008−62976A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243467(P2006−243467)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】