説明

ガラスパッケージをシールするマスクの製造方法

ガラス基板にペーストを付与し、基板およびペースト上に金属層を付与し、ペーストおよび金属層の一部を除去する各工程を有してなる、ガラスエンベロープをシールするフリット用のマスクの製造方法を提供する。例えば、ペーストは、ガラスフリットであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクの製造方法に関し、とくにガラス基板をフリットシールするためのマスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、放射吸収ガラスフリットを使用するガラスパッケージのフリットシールのための方法を開示する。特許文献1に一般的に開示されているように、ガラスフリットは、第1のガラス基板上の閉じた線(通常は額縁の形状)に付与されて、フリットをプレ焼結するために加熱される。その後、第1のガラス基板は第2のガラス基板の上に配置されるが、その際第1および第2の基板の間にはフリットが配置される。続いて、フリットを加熱して溶融し、基板の間において密封シールを生成するために、レーザビームをフリット上において(通常1つまたは双方の基板を通って)横断させる。
【0003】
このようなガラスパッケージの1つの用途は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイデバイスの製造にある。典型的なOLEDディスプレイデバイスは、第1の電極材料、1以上の有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料、および第2の電極材料が付与される、第1のガラス基板を備える。電極層のうちの少なくとも1つは、ディスプレイデバイスがトップ発光デバイスか、ボトム発光デバイスかまたはその両方であるかによるが、通常透明である。
【0004】
有機EL材料の1つの特徴は、熱に関してのその低い破損しきい値にある。すなわち、EL材料の温度は、材料の劣化およびその後のディスプレイデバイスの故障を回避するために、通常約100℃よりも低い温度に維持されなければならない。したがって、シーリング作業は、EL材料の加熱を回避するように行われなければならない。
【0005】
フリットをレーザ加熱するための典型的な手法は、1mmを超えてもよい、第1の基板に付与されたフリットラインと少なくとも同程度の幅のレーザビーム(またはフリットをその溶融温度まで加熱可能な他の光源)の使用を含む。フリットは、通常EL材料から相当に離れては付与されないため、ELがレーザビームと不用意に接触しないように注意が必要である。EL材料の必要以上の加熱を防止すると同時に、フリットの加熱を促進すべく、レーザビームがフリットから確実に逸れないようにするために、マスクが使用されることがある。マスクはフリットを挟む2つの基板上に配置され、マスク(およびフリット)にビームが照射される。レーザ(または他の光源)から発せられてマスクに入射する光は、マスクにより吸収されるか、好ましくは反射される(マスクの加熱がマスクの寿命に有害となる可能性があるため)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6998776号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスプレイ基板のサイズが、数平方メートルを超えるようなかなり大きいサイズとなっているため、EL材料の不用意な加熱を防止するために、必要な精度を有するマスクの製造能力が課題となってきている。ディスプレイの価格の大部分が、デバイス内に付与されたEL材料および他のサポート構造(例えば電極)に内在し、フリットシール工程中の異常が経済的に大きな影響を及ぼすため、これはとくに重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、透明基板を提供し、該基板にペーストを付与し、該基板および該ペースト上に金属層を付与し、前記透明基板上にマスクを形成するために、前記ペーストおよび前記金属層の一部を除去する、ガラスパッケージをシールするためのマスクの製造方法を特徴とする。
【0009】
他の態様において、透明ガラス基板を提供し、該基板にフリットのラインを付与し、該基板および該フリット上に金属層を付与し、前記透明基板上にマスクを形成するために、前記フリットおよび前記金属層の一部を除去する、ガラスパッケージをシールするためのマスクの製造方法を特徴とする。
【0010】
上述した概要の説明および後述する詳細な説明が本発明の態様を示し、クレームされた発明の本質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図するものであることが理解されよう。本発明のさらなる理解のために添付図面が含められ、本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する。図面は発明の詳細な説明とともに本発明の典型的な実施形態を示し、本発明の原理および動作を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】基板およびフレーム形状のペーストラインを有する、本発明の実施形態によるマスクアセンブリの一部を上から見た斜視図
【図2A】マスクアセンブリを製造する各種ステージの断面図であり、ペーストラインを付与する開始時点を示す図
【図2B】基板およびペーストライン上に金属層を付与する時点を示す図
【図2C】金属層およびペーストラインの一部を除去した後の完成したマスクを示す図
【図2D】多重化した金属層を示す図
【図3】基板および多数のフレーム形状の露出部を有する、本発明の実施形態によるマスクアセンブリの一部を上から見た斜視図
【図4】OLEDディスプレイデバイスのシールのために使用される、本発明の実施形態によるマスクの平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明において、限定のためではなく説明の目的のために、本発明を完全に理解するための具体的な内容を開示する実施形態が記載される。しかしながら、本発明が本明細書に開示された具体的な内容から外れた他の実施形態においても実施できることは、本明細書の利益を得た当業者には明らかであろう。さらに、本発明の記載を不明瞭なものとしないために、周知のデバイス、方法および材料の記載が省略されてもよい。最後に、それが適用できるところはどこであっても、同じ参照番号は同じ部材を参照する。
【0013】
本発明によれば、図1,2に示すように、ほぼ透明の基板12(例えば透過率が少なくとも約90%)に、まずペーストライン10を付与する、フリットによりガラスパッケージをシールする際に使用するマスクの製造方法が検討される。好ましくは、ペーストはガラスフリットであるが、ある実施形態においてはポリマーペーストとすることができる。ペーストライン10は、ラインがそれ自体の上で切れ目のない範囲を形成するために閉じているという点において、通常は額縁の形状をなしている。ペーストライン10は一般的に矩形であるが他の形状でもよく、いずれにしても、シールされるガラスパッケージのフリットの形状に適合する。好ましくは、ペーストラインの幅「d」は、シールされるフリットの幅「D」(図4参照)より小さい。基板12に付与されるペーストライン10の断面図を図2Aに示す。
【0014】
多数の方法のうちのいずれかの方法によってペーストを基板に付与することができる。例えば、ノズルまたは中空針からペーストを押し出すことにより、スクリーン印刷により、または他の付与方法によりペーストを付与することができる。しかしながら、ペーストがその後のシールフリットラインの形状に確実に適合するようにするために、基板のシールのためにフリットが付与されるのと同一の方法により、ペーストが付与されることが好ましい。
【0015】
マスクの製造に使用されるペーストがガラスフリットである場合、そのガラスフリットを、乾燥のために(例えば揮発性の媒体を取り除くために)付与後に加熱してもよい。フリットは、主として種々のガラス粉、バインダおよび通常は溶剤媒体を含む。揮発性の媒体を除去することにより、汚れのないマスクライン(マスクにおける透明開口)を形成できる。後でフリットを除去するため、フリットを焼結するほど十分に加熱しないことが望ましい。例えば、フリットを、約15分(例えば15〜20分)よりも長い一定の時間、約50℃であるが300℃よりも低い温度となるまで加熱することができる。しかしながら、フリットを積極的に加熱する必要はなく、その代わりに、室温で15〜20分の外気乾燥を行ってもよい。
【0016】
ペーストが広範囲に亘るアクリルポリマーのうちのいずれかのポリマー材料である場合、選択された特定のポリマーに対する硬化指示にしたがって、ペーストを付与する工程の後に、ポリマーを硬化することができる。
【0017】
ペーストが付与され、適切な場合には処理されると(ポリマーペーストの場合は硬化)、ペーストライン10を有する基板は、図2Bに示すように金属層14によりコートされる。例えばアルミニウム、銅、銀、または金等の金属から金属層を選択することができる。金属層は、その後のパッケージシール工程中にシールフリットを加熱するために使用される、特定の放射波長を反射するものであることが好ましい。
【0018】
金属層14は、例えば蒸着またはスパッタリングを含む、任意の従来の付与方法により付与することができる。基板ペーストアセンブリが金属層の付与工程中に静止していると、金属層をより均一に付与できることが分かった。金属層が付与されると、ペーストおよびペースト上に付与された金属層の一部は、基板を洗浄することによって除去される。例えば、基板12は、アセトン等の溶媒内において洗浄され、ペーストおよびペースト上に付与された金属層の一部を除去するために、丁寧に拭き取られる。ペーストおよびペースト上の金属層の一部を除去する他の方法を、必要に応じて使用することができる。ある実施形態において、ペーストおよびペースト上の金属層の一部を除去するために、圧力スプレーを使用できる。ポリマーの場合、ポリマーの除去を容易にするために、ポリマーおよび金属層を含む基板を加熱する必要があるかもしれない。ポリマーの種類は多岐に亘るため、ポリマーの除去を支援するために加えられる熱もポリマーの種類に応じて変更することができ、当業者であれば容易にかつ必要以上の実験を行うことなく決定できる。図2Cに示すように、ペースト10およびペースト上の金属層の一部を除去することにより、基板の部分16は除去されたペーストの形状に露出する。
【0019】
ある例において、多重金属層14を使用することが必要であるかもしれず、その場合、図2Dにおける層14aおよび層14bに示すように、金属層14それ自体が1以上の層からなるものとすることができる。例えば、金属層は、アルミニウム(Al)の層および銅(Cu)の層からなるものとすることができる。例えばアルミニウム層を、銅および基板の間の粘着層として機能するように使用してもよい。異なるシールフリットは異なる吸収特性を有する可能性があるため、特定のシール放射の特性に応じて、他の金属を使用してもよい。
【0020】
完成したマスク18を必要に応じてさらに洗浄してもよく、上述したOLEDディスプレイデバイスの製造におけるガラスパッケージ等の、ガラスパッケージを製造するためのフリットシール工程において使用してもよい。ある実施形態において、マスクを、ガラスパッケージ上において、下方へ向かうほぼ均一な力を確保するための重りとして、2次的に機能させることができる。一定のシーリング圧力は、パッケージを密封シールする際の助けとなる。ある実施形態において、金属層の酸化を防止するために、金属層を透明SiOの薄い層によりコートしてもよい。金属層の酸化は、ガラスパッケージを密封するために使用される放射がマスクにより過度に吸収されて、マスクが過熱される原因となる可能性がある。この過熱は、最終的にはマスクの劣化を引き起こす可能性がある。
【0021】
図3に示すある実施形態において、マスク18は、使用されるシール技術に応じて、複数のガラスパッケージを高速に連続して、あるいは同時にシールするための、複数の露出部16を有するものとすることができる。これにより、大規模生産環境におけるスループットに効果があることが分かる。
【0022】
図4はOLEDディスプレイデバイスの製造のためのアセンブリ20のシール時に典型的に使用される、本発明により製造される単一の露出部を有するマスク18を示す断面図である。マスク18はシールされるガラスアセンブリ20上に配置される。ガラスアセンブリ20は、第1の基板22、第2の基板24、フリットライン26および本実施形態においてはEL層28を有する。マスク18の露出部16は、アセンブリ20のフリットライン26と一致するように揃えられ、マスク18は、シールを行うために、矢印30に示す適切な放射により照射される。ある実施形態において、放射30を、フリット26に吸収される波長を有するレーザビームとすることができる。例えば、レーザビームを、フリット26を照射しかつ加熱するために、露出部16を横断するようにしてもよい。ある実施形態において、放射を、広帯域の赤外線源から発せられ、マスクの全体または実体的な部分を同時に照射するものとすることができる。放射のフリット26上への広がりに際してより好ましい制御を行うことができるため、金属層がアセンブリ20に隣接するように、マスク18は位置決めされる。しかしながら、多重金属層を使用し、第1のAl層を基板12に直接付与する例において、第2の金属層がAl層よりも反射するものである場合、Alの上にある第2の金属層に最初に放射が入射するように、基板12の方向を逆にしてもよい。通常、金属層をガラスとよりよく密着させるために、薄いAl層が必要である。しかしながら、このように方向を反転することにより、フリット26への放射が横方向に大きく広がることとなる。適切な光源およびマスクの照射の仕方は、加熱され溶融されるフリットの組成、およびシール工程のアプリケーションに依存する(例えば、ガラスパッケージの製造に感熱有機材料が使用されているか否か)。放射は、マスクの金属層部分において反射および/または吸収され、金属層により変換されずに露出部16を通過し、その結果、密封シールされたガラスパッケージ(例えばOLEDディスプレイデバイス)を形成すべく、フリット26を加熱かつ溶融し、第1および第2の基板22,24を互いにシールする。
【0023】
本発明の上述した実施形態、とくにあらゆる「好ましい」実施形態は、実施可能な実施例であり、本発明の原理を明確に理解するためにのみ記載されたものであることが強調されるべきである。本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなく、上述した本発明の実施形態に対して、多くの変形および修正が可能である。すべてのそのような修正および変形は、本明細書の開示および本発明の範囲内においてここに含まれ、以下の特許請求の範囲により保護されることを意図している。
【符号の説明】
【0024】
10 ペーストライン
12 基板
14 金属層
16 基板の部分
18 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスパッケージをシールするためのマスクの製造方法であって、
透明基板にペーストラインを付与する工程、
前記透明基板および前記ペーストライン上に金属層を付与する工程、および
前記マスクを形成するために、前記ペーストラインおよび前記金属層の一部を除去する工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記ペーストラインが、ガラスフリットからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ペーストラインの付与工程が、ノズルから前記ペーストラインを押し出すものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記金属層が、アルミニウム、銀、銅、金およびこれらの組合せからなる群から選択された金属からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記金属層が複数の層からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
ガラスパッケージをシールするために、請求項1に記載のマスクを使用する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
ガラスエンベロープをシールするためのマスクの製造方法であって、
ガラス基板にフリットラインを付与する工程、
前記ガラス基板および前記フリットライン上に金属層を付与する工程であって、該金属層は複数の層からなり、該複数の層はAlからなる層およびCuからなる層を含むものである工程、および
前記マスクを形成するために、前記フリットおよび前記金属層の一部を除去する工程、
を有してなる方法。
【請求項8】
前記金属層を、SiOによりコートすることをさらに含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項7の方法により製造されたことを特徴とするフリットシールガラスパッケージ用マスク。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520142(P2010−520142A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551700(P2009−551700)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/002508
【国際公開番号】WO2008/106123
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】