説明

ガラス板加工装置及びその加工方法

【課題】搬送ベルトによって搬送されるガラス板の速度と、製造関連処理を実行するための加工具が搭載された移動体の速度との間に正確な同期を取ることで、ガラス板に製造関連処理を正確に施す。
【解決手段】搬送ベルト2でガラス基板Gを搬送しながら、その搬送方向にガラス基板Gとともに砥石3を並走させてガラス基板Gに角取り加工を施す。この際、速度検出手段10によって搬送ベルト2のガラス板支持領域の速度を検出するとともに、砥石3が搭載された移動台車4の駆動モータ5による送り駆動速度を、速度検出手段10の検出結果に基づいて調整し、移動台車4および搬送ベルト2のガラス板支持領域を同期走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を搬送しながら、その搬送方向にガラス板とともに加工具を並走させることにより、搬送中のガラス板に製造関連処理を施すガラス板の加工技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)のガラス基板に代表されるように、各種ガラス板の製作に際しては、その製造工程中に含まれる製造関連処理の一環として、ガラス板の直交する二辺が交差して形成されるコーナー部に対して角取り加工(詳しくはコーナー部から三角部分を削り取る加工)が行われる場合がある。
【0003】
この角取り加工としては、静止した作業台の上に載置されたガラス板に対して砥石(加工具)を移動させ、ガラス板の全てのコーナー部に角取り加工を施すという方法を採用する場合があるが、この場合には、角取り加工を行っている間、ガラス板が搬送経路上の定位置に保持されるため、ガラス板を連続搬送することができず、作業効率が極端に悪くなる。そのため、オーバーフローダウンドロー法などの公知の方法によって大量に生産されるガラス板に対して、短時間で角取り加工を施すことが要請される場合には、当該要請に対応することが実質的に不可能となる。
【0004】
また、ガラス板を搬送しながら、その搬送経路上の定位置に配置された砥石で角取り加工を施す方法もあるが、この場合には、ガラス板の搬送速度を速めると、ガラス板と砥石との相対速度差が大きくなり、角取り加工を正確に実行できなくなる。したがって、ガラス板を低速で搬送することが余儀なくされ、依然として角取り加工を効率よく行うことができない。
【0005】
そこで、これらの問題に対処すべく、搬送ベルトでガラス板を搬送しながら、該搬送方向にガラス板とともに砥石を並走させることにより、搬送中のガラス基板に角取り加工を施すという方法が採用される場合がある。なお、この場合、角取り加工を正確に行う上でも、ガラス板の速度と砥石の速度とを一致させ、両者の速度を同期させることが肝要である。
【0006】
そのため、例えば、特許文献1では、無端状の搬送ベルトによって搬送されるガラス板の先端面に接触子を接触させることで、ガラス板と接触子を一体的に移動させるとともに、この接触子の移動位置を検出手段で検出して、その検出結果に基づいて砥石が搭載された砥石載置台のガラス板の搬送方向における位置を移動させることが提案されている。なお、同文献には、接触子によってガラス板の位置を直接的に検出する方法の他に、搬送ベルトの走行を検出して、ガラス板の位置を間接的に検出することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−171134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されているように、ガラス板の先端面に接触子を直接接触させ、ガラス板の推力で接触子を押しながら両者を移動させた場合、ガラス板の移動に伴って、接触子がガラス板の先端面に常に押し付けられることになる。しかしながら、接触子が押し付けられているガラス板の端面は、機械的強度が弱く破損を来たし易い部位であるため、接触子との接触部に過度な応力が作用してガラス板が破損するおそれがある。特に加工対象のガラス板が、FPD用のガラス基板のように薄板である場合には、上述の接触子による破損の問題はより顕著になる。
【0009】
また、ガラス板を搬送する搬送ベルトは、ゴムなどの弾性体で形成されるのが通例である。そのため、搬送ベルトは、その弾性に伴ってある程度の伸縮性を有しており、ガラス板を搬送している途中においても搬送方向に沿って伸縮を繰り返す。その結果、搬送ベルトの伸縮に伴って、搬送ベルト上のガラス板も搬送方向に脈動(例えば、前後動)を繰り返しながら搬送される。すなわち、搬送ベルトを一定速度で駆動しても、ガラス板は厳密な意味では等速運動を行わないことになる。したがって、ガラス板の先端端面に接触子を接触させるだけでは、ガラス板の脈動動作に接触子が追随しない場合も生じるため、ガラス板と砥石載置台を正確に同期させることが困難となる。
【0010】
そして、このようにガラス板の脈動動作と、砥石載置台の移動動作との同期が不十分であると、ガラス板の移動速度の脈動周期が加工時間よりも長いときには、加工中に砥石載置台とガラス板との速度差が大きくなったり小さくなったりする。仮にこの速度差が大きい状態で角取加工を行うと、加工誤差が大きくなってしまう。一方、ガラス板の移動速度の脈動周期が加工時間と同等かそれよりも短いときには、ガラス板の角部を所望の形状に切除することができなくなる。そのため、以上のいずれの場合であっても、加工対象となるガラス板は不良品として取り扱わざるを得なくなるので問題となる。
【0011】
また、特許文献1には、接触子をガラス板の先端面に接触させてガラス板の位置を直接検出する方法以外にも、ガラス板を搬送する搬送ベルトの走行を検出して、ガラス板の位置を間接的に検出する方法も開示されているが、搬送ベルトの走行の具体的な検出方法については何ら開示されていない。ここで、搬送ベルトの走行を検出する方法としては、搬送ベルトを駆動するモータの回転数などから検出することも考えられるが、上述のように、搬送ベルトが搬送方向に伸縮を繰り返している場合には、搬送ベルトを駆動するモータの回転数から算出される搬送ベルトの走行速度と、搬送ベルトの実際の走行速度との間に不一致が生じるので、ガラス板と砥石載置台を正確に同期させることは依然として困難となる。
【0012】
なお、以上では、ガラス板の角取り加工を例にとって説明したが、角取り加工以外の製造関連処理においても、搬送ベルトで搬送されるガラス板に対して加工具を並走させて、搬送中のガラス板に製造関連処理を施す場合には、同様の問題が生じ得る。
【0013】
以上の実情に鑑み、本発明は、搬送ベルトによって搬送されるガラス板の速度と、製造関連処理を実行するための加工具が搭載された移動体の速度との間に正確な同期を取ることで、ガラス板に製造関連処理を正確に施すことを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、搬送ベルトでガラス板を搬送しながら、該搬送方向に前記ガラス板とともに加工具を並走させて前記ガラス板に製造関連処理を施すガラス板加工装置において、前記加工具が搭載され且つ搬送方向に移動可能な移動体と、前記搬送ベルトのガラス板支持領域の速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段の検出結果に基づいて前記移動体の送り駆動速度を調整して、前記移動体を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域と同期走行させる駆動手段とを備えていることに特徴づけられる。なお、ここでいう「ガラス板支持領域」とは、狭義には、搬送ベルトのうちガラス板を支持している領域を意味するが、広義には、狭義の支持領域と同速度となるその前後領域も含む。
【0015】
このような構成によれば、速度検出手段によって、搬送ベルトのうち、ガラス板が支持されているガラス板支持領域の速度が検出される。そして、駆動手段によって、この速度検出手段の検出結果に基づいて、加工具が搭載された移動体の駆動速度が調整され、当該移動体が搬送ベルトのガラス板支持領域と同期走行する。すなわち、仮に搬送ベルトが搬送方向に伸縮したとしても、その伸縮動作に伴う搬送ベルトの速度変化に応じて移動体の駆動速度も調整されるため、移動体と搬送ベルトのガラス板支持領域との同期状態は維持される。そして、移動体が同期走行する搬送ベルトのガラス板支持領域には、ガラス板が支持されているので、ガラス板支持領域の速度とガラス板の速度は一致する。したがって、以上のようにして、移動体を搬送ベルトのガラス板支持領域と同期走行させれば、移動体とガラス板の間の相対速度が実質的に零となるので、当該移動体に搭載された加工具によって、ガラス板に正確な製造関連処理を行うことが可能となる。
【0016】
上記の構成において、前記速度検出手段は、被検出子と、該被検出子の速度を検出する検出部と、前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域の速度を検出する際に、前記被検出子を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域に連結する連結機構とを備えていることが好ましい。
【0017】
すなわち、連結機構によって、被検出子と搬送ベルトのガラス板支持領域とを連結すれば、搬送ベルトの駆動に伴って、被検出子がガラス板支持領域と一体となって移動する。そのため、この状態で、検出部によって被検出子の速度を検出すれば、ガラス板支持領域の速度を正確且つ容易に検出することができる。
【0018】
上記の構成において、前記連結機構の一端は、前記被検出子と前記搬送ベルトを連結した状態において、前記搬送ベルトの側面に係合されることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、連結機構の一端を、ガラス板との接触を確実に回避しつつ、搬送ベルトのガラス板支持領域に確実に係合させることが可能となる。
【0020】
上記の構成において、前記連結機構の一端は、前記移動体と前記搬送ベルトを連結した状態において、前記搬送ベルトに当接されるとともに、その摩擦力でもって係合状態が維持されることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、連結機構の一端を搬送ベルトに当接させるだけで、両者間に発生する摩擦力で両者の係合状態は維持されるので、連結機構を介して移動体と前記搬送ベルトとを容易に連結することが可能となる。また、連結機構の一端を、搬送ベルトから離間させれば、両者間の摩擦力はなくなって係合状態は解除されることになるので、連結機構による移動体と搬送ベルトとの連結状態を容易に解除することもできる。
【0022】
上記の構成において、前記被検出子は、第2連結機構を介して前記移動体と連結された状態で、前記駆動手段により前記ガラス板の搬送予定速度まで送り駆動されるとともに、前記搬送予定速度まで加速された段階で前記第2連結機構による連結状態が解除され、前記連結機構による連結状態に切り替えられることが好ましい。なお、ここでいう「ガラス板の搬送予定速度」とは、搬送ベルトの伸縮等を考慮した現実の搬送速度を意味するものではなく、予め決められた搬送ベルトによるガラス基板の搬送予定速度、換言すれば、搬送目標速度を意味する。
【0023】
このようにすれば、被検出子は、第2連結機構による連結状態で、駆動手段によりガラス板の搬送予定速度まで予め加速された後、この第2連結機構による連結状態が解除され、次いで、上述の連結機構による連結状態(搬送ベルトのガラス板支持領域と連結された状態)に切り替えられる。そのため、被検出子が搬送ベルトのガラス板支持領域と連結される段階で、被検出子と、搬送ベルトのガラス板支持領域との間の相対速度差が可及的に小さくなるので、相対速度差が大きい状態で両者を連結する場合に比して、両者の連結作業を円滑に行うことが可能となる。
【0024】
上記の構成において、前記移動体を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域と同期走行させた状態で、前記ガラス板の搬送方向での絶対位置を検出する位置検出手段を備え、該位置検出手段の検出結果に基づいて、前記移動体に対する前記加工具の位置が微調整されることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、ガラス板に対して加工具をより正確に位置決めすることができるので、加工具による製造関連処理の正確性の更なる向上を図ることができる。
【0026】
上記の構成において、前記搬送ベルトは、前記ガラス板の表裏面の両側に配置されるとともに、前記ガラス板の幅方向両端部を表裏面の両側から挟持しながら搬送するように構成されていてもよい。
【0027】
このようにすれば、搬送ベルト上でガラス板の位置ズレが生じ難くなるので、加工具による製造関連処理をより正確に行うことができる。なお、搬送ベルトは、ガラス板の裏面側にのみ配置されていてもよく、この場合には、搬送ベルトでガラス板の裏面を吸着保持して、ガラス板の位置ズレを防止することが好ましい。
【0028】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、搬送ベルトでガラス板を搬送しながら、該搬送方向に前記ガラス板とともに加工具を並走させて前記ガラス板に製造関連処理を施すガラス板加工方法において、前記搬送ベルトのガラス板支持領域の速度を検出するとともに、該検出結果に基づいて、前記加工具が搭載された移動体の前記搬送方向における送り駆動速度を調整しながら、前記移動体を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域と同期走行させることに特徴づけられる。
【0029】
このような方法によれば、既に述べた対応する構成が有する作用効果を同様に享受し得る。
【0030】
以上において、前記製造関連処理が、ガラス板の角部の角取り加工、ガラス板の表面への印刷加工及びガラス板の穴あけ加工の中から選択される一の加工であることが好ましい。
【0031】
すなわち、角取り加工、印刷加工、穴あけ加工のいずれもが、ガラス板のどの位置に加工を施すかが予め決められており、しかも、その位置が非常に重要になる加工である。したがって、これらの加工であれば、本願発明が享受し得る作用効果を最大限発揮することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のような本発明によれば、搬送ベルトのうち、ガラス板が実際に支持されているガラス板支持領域の速度と、製造関連処理を施すための加工具が搭載された移動体の速度との間に同期が取られる。その結果、搬送ベルトのガラス板支持領域に支持されているガラス板と、移動体との同期が正確に取られることになるので、ガラス板に対して製造関連処理を正確に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラス基板加工装置の全体構成を示す概略平面図である。
【図2】本実施形態に係るガラス基板加工装置の第2連結機構による連結状態を示す概略正面図である。
【図3】本実施形態に係るガラス基板加工装置の第1連結機構による連結状態を示す概略正面図である。
【図4】(a)は、本実施形態に係るガラス基板加工装置の第2連結機構による連結状態を示す概略平面図であって、(b)は、本実施形態に係るガラス基板加工装置の第1連結機構による連結状態を示す概略平面図である。
【図5】本実施形態に係るガラス基板加工装置の要部を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、以下では、加工対象のガラス板として、厚み3mm以下のFPD用のガラス基板を例にとって説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス板加工装置の全体構成を示す概略平面図である。同図に示すように、このガラス板加工装置1は、平置き状態(例えば水平姿勢)でガラス基板Gを搬送しながら砥石3を並走させることにより、搬送中のガラス基板Gに対して角取り加工を施すもので、ガラス基板Gを搬送する搬送ベルト2と、砥石3が搭載された移動台車4と、移動台車4をガラス基板Gの搬送方向に送り駆動する駆動モータ5とを備えている。
【0036】
搬送ベルト2は、ガラス基板Gの幅方向に並列に4本配列されている。幅方向中央に位置する2本の搬送ベルト2は、ガラス基板Gの裏面側のみに配置されており、ガラス基板Gを下方から保持する構成とされている。一方、幅方向両端に位置する2本の搬送ベルト2は、ガラス基板Gの表面側と裏面側にそれぞれ配置されており、ガラス基板Gを挟持した状態で上下両側から保持する構成とされている。各搬送ベルト2は、図2に示すように、内周側にガイド部材6を備えた無端ベルトで構成されており、ガラス基板Gを搬送方向前方に送るように、図示しない駆動機構によってそれぞれ同速度で駆動される。
【0037】
移動台車4は、図1に示すように、ガラス基板Gの搬送方向に沿って延びるガイドレール7上に搭載されており、駆動モータ5によってガイドレール7上をガラス基板Gの搬送方向前方に送り駆動される。ここで、移動台車4は、ガラス基板Gの幅方向の両外側方にそれぞれ配置されているが、各移動台車4は、各駆動モータ5によって同速度で送り駆動される。なお、この実施形態では、ガイドレール7は、駆動モータ5によって回転駆動されるボールネジと、その両側に設けられた案内支持レールとで構成されており、このボールネジにナットを介して移動台車4が取り付けられている。駆動モータ5によってボールネジを正転させると、移動台車4がその回転量に応じてガラス基板Gの搬送方向前方に前進し、これとは逆に駆動モータ5によってボールネジを逆転させると、移動台車4がその回転量に応じてガラス基板Gの搬送方向後方に後退する。
【0038】
砥石3は、各移動台車4にそれぞれ2つずつ搭載されており、ガラス基板Gの4つの角部に対して角取り加工を同時に施す。各砥石3は、X方向(ガラス基板Gの搬送方向)移動機構8と、Y方向(ガラス基板Gの搬送方向と直交する方向)移動機構9とを介して、移動台車4の上に搭載されており、これら移動機構8,9によって移動台車4に対する位置調整が可能であるとともに、角取り加工時には図1の矢印a方向に沿って斜めに移動可能とされている。
【0039】
更に、このガラス板加工装置1は、図2に示すように、搬送ベルト2のガラス板支持領域(図1の符号Zを付したクロスハッチング領域)の速度を検出する速度検出手段10を備えている。この速度検出手段10による速度検出情報は、駆動モータ5に入力される。駆動モータ5は、この入力された速度検出情報に基づいて移動台車4の送り駆動速度を調整しながら、移動台車4と搬送ベルト2のガラス板支持領域とを同期走行させる。
【0040】
詳細には、速度検出手段10は、被検出子11と、被検出子11の速度を検出する検出部12と、被検出子11を搬送ベルト2のガラス板支持領域に連結する第1連結機構13とを備えている。
【0041】
被検出子11は、搬送ベルト2のガイド部材6に固定された状態でガラス基板Gの搬送方向に沿って延びるガイドレール(例えば、LMガイド)14に、スライド自在に保持されている。
【0042】
検出部12は、搬送ベルト2のガイド部材6に固定された状態でガラス基板Gの搬送方向に延びるスケール15と、このスケール15に設けられたスリット等を光学的又は電磁的に読み取って速度情報を検出するヘッド16とを備えたリニアスケールによって構成されている。このヘッド16は被検出子11に接合されており、被検出子11の移動に伴って、被検出子11と一体となってヘッド16がスケール15上を移動することにより、被検出子11の速度が検出される。
【0043】
第1連結機構13は、被検出子11の下端に取り付けられた第1シリンダ17と、第1シリンダ17に取り付けられた出退ロッド18と、出退ロッド18の先端に固定された押圧部材19とから構成されている。出退ロッド18は、第1シリンダ17によって突出動及び後退動する。押圧部材19は、図2に示すように、出退ロッド18を後退させた状態で搬送ベルト2の内側面と非接触(縁切り状態)となり、図3に示すように、出退ロッド18を突出させた状態で搬送ベルト2の内側面に当接するとともに、その摩擦力によって搬送ベルト2との係合状態を維持するようになっている。第1シリンダ17による出退ロッド18の突出動は、押圧部材19が搬送ベルト2のガラス基板支持領域に当接可能なタイミングで行われる。そのため、第1連結機構13による連結状態では、搬送ベルト2の駆動に伴って、被検出子11が搬送ベルト2のガラス基板支持領域と一体となって移動し、検出部12によって、被検出子11を介して搬送ベルト2のガラス基板支持領域の速度が検出される。駆動モータ5は、この検出部12の検出結果に基づいて移動台車4の送り駆動速度を順次調整し、移動台車4と搬送ベルト2のガラス基板支持領域とを同期走行させる。なお、図4(a),(b)及び図5に示すように、第1連結機構13の押圧部材19は、搬送ベルト2との接触面積を確保するため、ガラス基板Gの搬送方向に幅広な部材で構成される。また、押圧部材19の搬送ベルト2との接触部には、ゴム等の弾性体が貼着されている。
【0044】
更に、被検出子11は、上記のような第1連結機構13による連結状態に至る前に、予め移動台車4と共に駆動モータ5によってガラス基板Gの搬送予定速度まで送り駆動されるようになっている。
【0045】
詳細には、図2に示すように、被検出子11は、上記の第1連結機構13による連結状態が解除された状態で、移動台車4に固定されたアーム20に第2連結機構21を介して連結されるようになっている。図4(a),(b)に示すように、この第2連結機構21は、アーム20の先端に取り付けられた第2シリンダ22と、第2シリンダ22に取り付けられた出退ロッド23と、出退ロッド23に板状体24を介して固定されたロックピン25とを備えている。出退ロッド23は、ガイドブッシュ26に挿通されたガイドピン27によってガイドされながら、第2シリンダ22により突出動及び後退動する。ロックピン25は、図2に示すように、出退ロッド23を突出させた状態で被検出子11に設けられた係合孔28に挿入され、図3に示すように、第2出退ロッド23を後退させた状態で被検出子11に設けられた係合孔28から離脱して被検出子11と縁切り状態となる。そして、図2に示すように、ロックピン25を被検出子11の係合孔28に挿入させると、ロックピン25が係合孔28と嵌合し、被検出子11が移動台車4に固定されたアーム20に連結される。このような第2連結機構21による連結状態で、被検出子11は、アーム20が固定された移動台車4と一体となって駆動モータ5によってガラス基板Gの搬送予定速度まで送り駆動される。
【0046】
次に、以上のように構成されたガラス板加工装置1によるガラス基板Gの加工手順を説明する。
【0047】
まず、図1に示すように、搬送ベルト2によってガラス基板Gを搬送方向の上流側から下流側に向けて連続的に搬送する。そして、搬送中のガラス基板Gの先端部が、搬送経路上に配置された第1検出センサ29の上方位置に至ると、第1検出センサ29によってガラス基板Gの先端部が検出されるとともに、この検出情報が駆動モータ5に入力され、待機位置で待機していた移動台車4が駆動モータ5からの駆動力によって走行を開始し、ガラス基板Gの搬送予定速度まで加速される。この際、図2に示すように、速度検出手段10の被検出子11は、第2連結機構21を介して移動台車4に固定されたアーム20に連結され、移動台車4と一体となってガラス基板Gの搬送予定速度まで加速される。なお、移動台車4が搬送予定速度まで加速された段階で、ガラス基板Gの側方位置に移動台車4が並走するように、駆動モータ5による移動台車4の駆動条件が予め定められている。
【0048】
次に、移動台車4が、駆動モータ5によって搬送予定速度まで加速されると、図3に示すように、第2シリンダ22により第2出退ロッド23が後退し、ロックピン25が被検出子11の係合孔28から引き抜かれ、第2連結機構21による連結状態が解除される。これと同時に、第1シリンダ17により出退ロッド18が突出し、押圧部材19が搬送ベルト2のガラス基板支持領域の内側面に当接し、第1連結機構13による連結状態へと切り替わる。この第1連結機構13による連結状態において、搬送ベルト2のガラス基板支持領域と一体となって移動する被検出子11の速度が、速度検出手段10の検出部12によって検出され、その速度検出情報が駆動モータ5に順次入力される。そして、駆動モータ5は入力された速度検出情報に基づいて移動台車4の駆動速度を調整し、移動台車4が搬送ベルト2のガラス基板支持領域と同期走行する。すなわち、仮に搬送ベルト2が搬送方向に伸縮したとしても、その伸縮動作に伴う搬送ベルト2の速度変化に応じて、移動台車4の駆動速度も調整されるため、移動台車4と搬送ベルト2のガラス基板支持領域との同期状態は維持される。そして、移動台車4が同期走行する搬送ベルト2のガラス基板支持領域には、ガラス基板Gが支持されているので、ガラス基板支持領域の速度とガラス基板Gの速度は一致する。したがって、以上のようにして、移動台車4を搬送ベルト2のガラス板支持領域と同期走行させれば、移動台車4とガラス基板Gの間の相対速度が実質的に零となるので、移動台車4に搭載された砥石3によって、ガラス基板Gに対して正確な角取り加工を行うことができる。
【0049】
更に、この実施形態では、ガラス基板Gの搬送経路のうち、移動台車4と搬送ベルト2のガラス基板支持領域とが同期走行しているエリアの中に第2検出センサ30が配置されており、搬送中のガラス基板Gの先端部が第2検出センサ30の上方位置に至ると、第2検出センサ30によってガラス基板Gの先端部が検出される。この第2検出センサ30による検出情報は、移動台車4のX方向移動機構8に入力され、角取り加工を行う前に、ガラス基板Gの絶対位置に応じて砥石3の移動台車4に対する位置が微調整される。
【0050】
また、ガラス基板Gの角取り加工が終了すると、再び、第1連結機構13による連結状態から第2連結機構21による連結状態に切り替えられ、アーム20を介して被検出子11と連結された移動台車4が、被検出子11とともに、駆動モータ5の逆転動作によって搬送方向上流側の待機位置まで戻される。そのため、この一連の動作を繰り返すことで、搬送ベルト2によって連続的に搬送される複数枚のガラス基板Gに対して、順次角取り加工が施される。
【0051】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態において実施することができる。例えば、上記の実施形態では、搬送ベルト2によってガラス基板Gの幅方向端部を上下両側から挟持して搬送する場合を説明したが、搬送ベルト2は、ガラス基板Gの裏面のみに配置されていてもよい。この場合、加工中にガラス基板Gの位置ズレが生じないように、ガラス基板Gを搬送ベルト2に吸着保持することが好ましい。
【0052】
また、上記の実施形態では、第1連結機構13の押圧部材19を、ガラス基板Gが実際に支持されている搬送ベルト2のガラス基板支持領域に当接する場合を説明したが、押圧部材19をガラス基板支持領域の前後近傍に当接するようにしてもよく、更にこの場合には、押圧部材19を搬送ベルト2の表面(外周面)に当接するようにしてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、第1連結機構13の押圧部材19を、ガラス基板Gの表面側に位置する上方の搬送ベルト2に当接する場合を説明したが、押圧部材19をガラス基板Gの裏面側に位置する下方の搬送ベルト2に当接するようにしてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、ガラス基板Gを平置き状態で搬送する場合を説明したが、ガラス基板Gを縦姿勢(例えば、鉛直姿勢)で搬送するようにしてもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、ガラス基板Gの製造関連処理として、砥石3による角取り加工を行う場合を例示したが、製造関連処理はこれに限定されるものではなく、例えば、ガラス基板Gの印刷加工や、穴あけ加工などであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ガラス板加工装置
2 搬送ベルト
3 砥石
4 移動台車
5 駆動モータ
7 ガイドレール
10 速度検出手段
11 被検出子
12 検出部
13 第1連結機構
17 第1シリンダ
18 出退ロッド
19 押圧部材
21 第2連結機構
22 第2シリンダ
23 出退ロッド
25 ロックピン
28 係合孔
G ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルトでガラス板を搬送しながら、該搬送方向に前記ガラス板とともに加工具を並走させて前記ガラス板に製造関連処理を施すガラス板加工装置において、
前記加工具が搭載され且つ搬送方向に移動可能な移動体と、前記搬送ベルトのガラス板支持領域の速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段の検出結果に基づいて前記移動体の送り駆動速度を調整して、前記移動体を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域と同期走行させる駆動手段とを備えていることを特徴とするガラス板加工装置。
【請求項2】
前記速度検出手段は、被検出子と、該被検出子の速度を検出する検出部と、前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域の速度を検出する際に、前記被検出子を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域に連結する連結機構とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のガラス板加工装置。
【請求項3】
前記連結機構の一端は、前記被検出子と前記搬送ベルトを連結した状態において、前記搬送ベルトの側面に係合されることを特徴とする請求項2に記載のガラス板加工装置。
【請求項4】
前記連結機構の一端は、前記移動体と前記搬送ベルトを連結した状態において、前記搬送ベルトに当接されるとともに、その摩擦力でもって係合状態が維持されることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス板加工装置。
【請求項5】
前記被検出子は、第2連結機構を介して前記移動体と連結された状態で、前記駆動手段により前記ガラス板の搬送予定速度まで送り駆動されるとともに、前記搬送予定速度まで加速された段階で前記第2連結機構による連結状態が解除され、前記連結機構による連結状態に切り替えられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のガラス板加工装置。
【請求項6】
前記移動体を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域と同期走行させた状態で、前記ガラス板の搬送方向での絶対位置を検出する位置検出手段を備え、該位置検出手段の検出結果に基づいて、前記移動体に対する前記加工具の位置が微調整されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板加工装置。
【請求項7】
前記搬送ベルトは、前記ガラス板の表裏面の両側に配置されるとともに、前記ガラス板の幅方向両端部を表裏面の両側から挟持しながら搬送することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス板加工装置。
【請求項8】
前記製造関連処理が、ガラス板の角部の角取り加工、ガラス板の表面への印刷加工及びガラス板の穴あけ加工の中から選択される一の加工であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス板加工装置。
【請求項9】
搬送ベルトでガラス板を搬送しながら、該搬送方向に前記ガラス板とともに加工具を並走させて前記ガラス板に製造関連処理を施すガラス板加工方法において、
前記搬送ベルトのガラス板支持領域の速度を検出するとともに、該検出結果に基づいて、前記加工具が搭載された移動体の前記搬送方向における送り駆動速度を調整しながら、前記移動体を前記搬送ベルトの前記ガラス板支持領域と同期走行させることを特徴とするガラス板加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−168444(P2011−168444A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33737(P2010−33737)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】