説明

キーユニット、キーユニット背板の製造方法及び携帯電話

【課題】複数のキートップを備える場合でも、組立が容易であり、且つ、キートップの形状に容易に対応した操作性のよいキーユニットを提供すること。
【解決手段】表面にキートップ212が配設された可撓性を有するキーシート210の裏面側に、ダイヤフラム226を備える基板220を、ダイヤフラム226の突出方向を、キーシート210側とは逆側にして配置する。ダイヤフラム226は、キートップ212の裏面に位置し、このダイヤフラム226に対向して、背板部230に形成された樹脂製の凸部240を対向配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の電子機器において、情報選択や機能選択等など操作を行うために搭載されるキーユニット、キーユニット背板の製造方法及び携帯電話に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PHS(Personal Handy-phone System)、携帯電話等の移動携帯端末に搭載されるキーユニットは、特許文献1等に示すように、ケースの表面で露出するキートップの裏面側に下方に突出する押し子を配置し、押し子の下部に、印刷回路基板の可動接点であるダイヤフラムを配置することで構成されている。
【0003】
ダイヤフラムは、金属性ばね材を半球状に絞り込むことにより形成され、基板表面の2つの固定接点部の上部に、それぞれに対向して配置され、縁部の一部で一方の固定接点部に接続され、中央部を、他方の固定接点部と離間するように配置されている。ダイヤフラムは、上部からの圧力により変形することで、中央部と他方の固定接点部とが接触し、2つの固定接点部の間を接続する。なお、ダイヤフラムのずれや離脱を防ぐために、ダイヤフラムが配設された印刷回路基板の表面は、絶縁フィルムにより被覆されている。
【0004】
上記構成のキーユニットでは、キーシートにキートップが複数並んで配置される場合、それぞれのキートップの裏面に押し子を配設する構成となるため、キートップの位置に対応して配置された押し子を備えるシートを用意して、キーシートと印刷回路基板との間に配置する必要がある。
【0005】
したがって、上記キーユニットを組み立てる場合、背板となる部材上に配置される印刷回路基板と、印刷回路基板上のキーシートとの間に押し子を備えるシートを、押し子をキートップに対応させつつ配設するため、その分手間がかかるものとなっている。
【0006】
これに対して、従来では、図6に示すように、キートップ裏面側に配置されるダイヤフラムにより接続される固定接点部を有する基板を反転させ、背板部分に押し子を形成したものが知られている。
【0007】
図6に示すキーユニット1は、キートップ2の裏面に、可動接点であるダイヤフラム3を備えたフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit)4を、ダイヤフラム3を下方に突出させた状態で配置し、ダイヤフラム3の突端に、キートップ側に突出する突部5が形成された背板6を配置している。
【0008】
背板6は、キートップ2を介して押圧されるダイヤフラム3を変形させるに必要な硬さを有する部材により構成され、突部5は、背板6となる板金を絞り成形にすることによって形成されている。
【0009】
この構成では、キートップ2とダイヤフラム3との間に押し子が介在しないため、複数のキートップを備えるキーユニットの場合、押し子を配置する作業を簡略化することができる。
【特許文献1】特開2001−312944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、背板に絞り成形を施して、背板に押し子としての突部を設けた従来のキーユニットでは、突部の径は、絞りの対象となる板金の厚みに依存する。
【0011】
このため、キートップ自体の小型化が図られた場合、つまり、キートップ自体の押圧領域が小さくなる場合、キートップの押圧に耐え得る硬さを有する背板に、径の小さい突部を形成することは困難である。よって、キートップ及びダイヤフラム径を小さくした場合、これらの径に対して大きな径の突部で、押圧されるダイヤフラムを受ける構成となり、組立の際に突部とダイヤフラムとでずれが生じやすく、操作性の悪いキーユニットとなる可能性がある。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、複数のキートップを備える場合でも、組立が容易であり、且つ、キートップの形状に容易に対応した操作性のよいキーユニット、キーユニット背板の製造方法及び携帯電話を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のキーユニットは、表面にキートップが配設された可撓性を有するキーシートと、前記キーシートの裏面側に、前記キーシートに対向して配置される背板部と、前記キーシートと前記背板部との間に配置される基板と、前記キーシートの裏面側で、前記キートップと前記背板部との間に配置され、前記キートップを介して前記背板部側に押圧されることにより変形して、前記基板の固定接点部に接続する可動接点部と、前記背板部に形成され、前記可動接点部と対向する位置で、且つ、前記可動接点部側に突出する樹脂製の凸部とを有する構成を採る。
【0014】
本発明のキーユニット背板部の製造方法は、上記構成のキーユニットが備える背板部の製造方法であって、前記キーシートのキートップに対応する位置に表裏方向で貫通する貫通穴が形成された前記背板部を、前記凸部を成形する金型内に設置し、前記貫通穴を介して前記凸部を成形する金型側に樹脂を射出して充填することによって、前記背板部に前記凸部を形成するようにした。
【0015】
本発明の携帯電話は、上記構成のキーユニットを備える構成を採る。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、複数のキートップを備える場合でも、組立が容易であり、且つ、キートップの形状に容易に対応することができ、操作性の良いユニットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係るキーユニットを備える携帯電話を示す図である。図1に示す携帯電話100は、キーユニット200が搭載された下部筐体110に、液晶パネル122を備える上部筐体120をヒンジ部130により折り畳み自在に結合してなる。
【0019】
図2は、本発明の一実施の形態に係るキーユニットの説明に供する図であり、キーユニットの構成を説明するための下部筐体の要部分解図である。
【0020】
図2に示すようにキーユニット200は、下部筐体110に収容されており、キートップ212が表面に配設されたキーシート210と、キーシート210の裏面に配置され、下方に突出するダイヤフラム(図3参照)226の変形により接続される固定接点222、224が設けられた回路基板220と、背板部230とを有する。
【0021】
キーシート210は、下部筐体110の表面部分を構成するものであり、ここでは、シリコーンゴム等の弾性体により構成され、可撓性を有する。キートップ212は、シート状の本体部分の表面に複数の並んで配置され、下部筐体110の表面で露出し、ユーザにより押圧される。
【0022】
キーシート210の裏面側には、キートップ212の直下に、回路基板220のダイヤフラム(図3参照)226と、ダイヤフラム226と対向して、背板部230に形成された凸部240とが配設されている。
【0023】
図3は、本発明の一実施の形態に係るキーユニットの構成を示す要部断面図である。
【0024】
回路基板220は、ここでは、可撓性を有するフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit)であり、ポリエステルシート等のフィルム状ベース材における一方の面に回路パターンが配線されてなる。回路パターンが配線された面側には、変形により回路パターンの固定接点部222、224を接続するダイヤフラム226が、固定接点部222、224上に配設されている。
【0025】
ダイヤフラム226は、半球状の金属膜であり、回路基板220に、外周の一部を固定接点部222、224のうちの一方(ここでは、固定接点部224)に接続し、突出する中央部分(頂部)を固定接点部222の上方に位置するように配置されている。
【0026】
ダイヤフラム226は、凹状に変形することによって、中央部分が固定接点部222に接触し、固定接点部222,224を接続する。
【0027】
ダイヤフラム226の頂部は、凸部240の頂部と対向しており、ここでは、互いに当接する位置に配設されている。
【0028】
凸部240は、ABS樹脂、ポリカーボネート等の樹脂からなり、金属製の板材からなる背板部230に形成されている。ここでは、凸部240は、表面側に向かって突出する半球状に形成されている。
【0029】
凸部240は、ダイヤフラム226が凸部240側に押圧された際に、頂部で接触するダイヤフラム226の頂部226aを基板220側に押し込み、ダイヤフラム226の頂部の裏面側を固定接点部222に接触させる高さを有する。
【0030】
凸部240は、背板部230に、表裏方向で貫通する貫通穴232に挿入された基部242を介して背板部230の裏面側に配置された樹脂層244と一体的に形成されている。凸部240は、肉薄の樹脂層244とで背板部230を挟持するように配設されているため、樹脂層244によって背板部230から抜けることなく強固に取り付けられている。
【0031】
ここでは、凸部240は、背板部230となる金属板をインサート成型することによって、背板部230に形成されている。
【0032】
図4は、背板部に凸部を形成する方法を示す模式図である。なお、図4では、背板部230に一つの凸部240を形成する場合を示しているが、背板部230に形成される他の凸部240も同様に形成されるものであり、それらの説明は省略する。
【0033】
図4(a)に示すように、キーシートのキートップに対応する位置に、表裏方向で貫通する貫通穴が形成された背板部230を、凸部240を成形する金型300の第1金型310内に設置する。なお、この金型300の第1金型310は、背板部230に形成する凸部240に対応した形状の窪み311を有し、窪み311に貫通穴232を対応させつつ、当該窪み側に表面を対向させた状態で、背板部230を第1金型310内に設置する。そして、第1金型310内に背板部230を設置した状態で、第1金型310内に、第2金型を背板部230の背面側から配置する。
【0034】
そして、図4(b)に示すように、背板部230の裏面側の第2金型320の射出孔322から、背板部230の貫通穴232を介して、凸部240が形成される第1金型310側、つまり、背板部230の表面側に樹脂射出して充填してインサート成形を行う。これにより、背板部230の表面には、所定位置に凸部240が形成される。
【0035】
背板部230には、凸部240が形成される部位に貫通穴232が形成されているため、この貫通穴232を介して樹脂を射出成形することによって、背板部230において、表面側に配置されるキートップ212及びダイヤフラム226に体呼応した正確な位置に凸部240を形成することができる。
【0036】
このように凸部240は、インサート成形などによって背板部230に形成されるため、背板部230の板厚に依存することなく、キートップ212の底面形状に対応した径で形成することができる。
【0037】
よって、凸部240構成の自由度を向上させることができ、キートップ212が小さくなっても、つまり、キートップ212の底面形状の大きさが小さくなっても、これに対応して、ダイヤフラム226の径及び凸部240の径を小さくすることができ、操作性の向上も図ることができる。
【0038】
このキーユニット200では、ユーザによりキートップが上方から押圧されると、キートップは下方(裏面側)に移動し、ダイヤフラム226が設けられた基板220を背板部230方向に押圧する。
【0039】
すると、ダイヤフラム226は、背板部230の凸部240の頂部に向かって押圧されることで凹状に変形して中央部分の頂部が固定接点部222に接続する。これにより、キートップ212に対応する固定接点部224、222が接続される。また、キートップ212からの押圧状態が解除されると、ダイヤフラム226は元の半球形状の状態に復元し、中央部分が固定接点部222から離間する。これにより、固定接点部222、224の接続は解除される。
【0040】
このように、キーユニット200は、表面にキートップ212が配設された可撓性を有するキーシート210と、キーシート210の裏面側に対向配置される背板部230と、キートップ212の直下で、且つ背板部230上に配置され、表面側から背板部230側に押圧されることにより変形して、キーシート210と背板部230との間に配置された基板220上の固定接点部222、224を接続するダイヤフラム(可動接点部)226とを具備する。
【0041】
これにより、凸部240の形状を任意に変更することができ、背板部230を絞り加工して形成される従来の凸部と比較して、より小さい径で凸部240を形成することができる。
【0042】
なお、貫通穴232の径は、凸部240の底面の径よりも小さいものが好ましい。その形状はどのような形状でも良い。
【0043】
図5は背板部の変形例を示す図である。
【0044】
図5に示す背板部260は、図3に示す背板部230と貫通穴の形状のみ異なり、その他の構成は同様の構成である。よって、同一の構成要素には同名称、同符号を付して説明は省略する。
【0045】
貫通穴262の内径は、背板部260の裏面側から表面側に向かって漸次狭窄しており、断面視略等脚台形状となっている。
【0046】
この変形例の構成によれば、背板部260の表面側に形成された凸部240は、貫通穴262に内嵌された基部242を介して、背板部230の裏面に配置された樹脂層244により支持させることができる。
【0047】
また、図5に示す背板部260は、背板部230と同様に、凸部240をインサート成形により形成する際に、凸部240、基部242及び樹脂層244となる樹脂を、背面側から表面側に円滑に注入して充填させることができ、凸部240自体の成形性を高めることができる。
【0048】
なお、上記実施の形態において、キーシート210のキートップ212の裏面に配置される基板220の可動接点をダイヤフラム226として説明したが、これに限らない。
【0049】
可動接点は、金属製ばね材からなり、キートップ212側から凸部240に押圧されることによって変形して、固定接点部222、224とを接続し、押圧状態が解除された際に、両固定接点部222、224との接続を解除するものであれば、どのように構成されてもよい。
【0050】
なお、上記本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の改変をなすことができ、そして本発明が該改変させたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るキーユニット、キーユニット背板の製造方法及び携帯電話は、複数のキートップを備える場合でも、組立が容易であり、且つ、キートップの形状に容易に対応することができ、操作性の良いキーユニットとなる効果を有し、携帯電話等の移動携帯端末に搭載されるキーユニットとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係るキーユニットを備える携帯電話を示す図
【図2】本発明の一実施の形態に係るキーユニットの説明に供する図
【図3】本発明の一実施の形態に係るキーユニットの構成を示す要部断面図
【図4】背板部に凸部を形成する方法を示す模式図
【図5】背板部の変形例を示す図
【図6】従来のキーユニットの構成を示す図
【符号の説明】
【0053】
100 携帯電話
110 下部筐体
200 キーユニット
210 キーシート
212 キートップ
220 基板
222、224 接点部
226 ダイヤフラム
230、260 背板部
232、262 貫通穴
240 凸部
242 基部
244 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にキートップが配設された可撓性を有するキーシートと、
前記キーシートの裏面側に、前記キーシートに対向して配置される背板部と、
前記キーシートと前記背板部との間に配置される回路基板と、
前記キーシートの裏面側で、前記キートップと前記背板部との間に配置され、前記キートップを介して前記背板部側に押圧されることにより変形して、前記回路基板の固定接点部に接続する可動接点部と、
前記背板部に形成され、前記可動接点部と対向する位置で、且つ、前記可動接点部側に突出する樹脂製の凸部と、
を有するキーユニット。
【請求項2】
前記背板部において、前記凸部が形成された部位には、前記背板部の表裏方向で貫通する貫通穴が設けられ、
前記凸部は、前記貫通穴に挿入された基部を備える請求項1記載のキーユニット。
【請求項3】
前記貫通穴は、前記背板部の裏面側から表面側に向かって漸次狭窄している前記請求項2記載のキーユニット。
【請求項4】
前記背板部の裏面には、前記基部を介して前記凸部と一体の樹脂層が形成されている請求項2又は3記載のキーユニット。
【請求項5】
前記背板部は、前記凸部と一体的成形されてなる請求項1記載のキーユニット。
【請求項6】
請求項2記載のキーユニットが備える背板部の製造方法であって、
前記キーシートのキートップに対応する位置に表裏方向で貫通する貫通穴が形成された前記背板部を、前記凸部を成形する金型内に設置し、
前記貫通穴を介して前記凸部を成形する金型側に樹脂を射出して充填することによって、前記背板部に前記凸部を形成する製造方法。
【請求項7】
請求項1から5の何れか記載のキーユニットを備える携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−26701(P2009−26701A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191300(P2007−191300)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】