説明

クラッキングコンロッドの製造方法

【課題】フェライト・パーライト型の非調質鋼からなり、優れた機械強度と、クラッキングコンロッドとしての優れたクラッキング性能とを具有するコンロッド部材を得るためのクラッキングコンロッドの製造方法を提供する。
【解決手段】鋼材を用意するステップと、この鋼材を1200℃〜1300℃の温度範囲まで加熱するステップと、1000℃以上の温度で鋼材の少なくとも所定部位に50%以上の加工率となるような圧縮加工を与えて粗鍛造体に熱間鍛造するステップと、この粗鍛造体を少なくとも5℃/s以下で冷却してフェライト・パーライト組織を与えるステップと、を含む。ここで、必須元素として、質量%で、0.16〜0.35%の範囲内のCと、0.1〜1.0%の範囲内のSiと、0.3〜1.0%の範囲内のMnと、0.040〜0.070%の範囲内のPと、0.080〜0.130%の範囲内のSと、0.10〜0.35%の範囲内のVと、及び、0.08〜0.20%の範囲内のTiと、を含み、上述した所定部位において少なくとも250HV以上の硬さを有するコンロッド部材を与えるよう、鋼材が選択されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジン等に使用されるコネクティングロッド(以下、「コンロッド」と称する)の製造方法に関し、特に、フェライト・パーライト組織の非調質鋼からなるクラッキングコンロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等に使用されるコンロッドの1種類として、クラッキングコンロッドが知られている。例えば、特許文献2の図面に示されるように、これはシャフトとしての桿部の一端部に形成される大端部に機械加工で円孔を設け、この円孔周辺部をロッド部及びキャップ部の2つにクラッキング(かち割り)して分離する。クランクシャフトをこの間に挟み込み、再度、ロッド部及びキャップ部を組み合わせて固定すると、コンロッドとクランクシャフトが係合する。
【0003】
このようなクラッキングコンロッドには、フェライト・パーライト組織の非調質鋼が使用され、ロッド部及びキャップ部の組み合わせ時には、クラッキングにより現れたフェライト・パーライト組織のランダムな破面により、ロッド部及びキャップ部が互いに噛合し、その合わせ面の横滑りを防止できる。従来のロッド部及びキャップ部の合わせ面を機械加工していた組立型のコンロッドと比べ、横滑り防止のリーマボルトやノックピンなどの部品を減じることができて、軽量化及びコスト削減が可能である。
【0004】
例えば、特許文献1乃至3には、Ti及びVを添加したクラッキングコンロッドに使用されるフェライト・パーライト組織の非調質鋼が開示されている。所定の鋼にTi及びVを添加すると機械的性質がより脆的になってクラッキング(かち割り)を行いやすくなると述べられている。
【0005】
特許文献1では、このような非調質鋼として、質量%で、C:0.15〜0.40%,Si:0.4〜1.5%,Mn:0.5〜2.0%,P:0.10〜0.15%,S:0.01〜0.15%,V:0.15〜0.40%,Ti:0.05〜0.30%,Al:0.001〜0.1%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を開示している。かかる鋼を1000℃以上に加熱して熱間鍛造を行い、その後、フェライト変態温度に達するまでの間を0.5〜5℃/sの平均冷却速度で冷却してフェライト・パーライト組織を得ている。
【0006】
特許文献2では、このような非調質鋼として、質量%で、C:0.20〜0.40%,Si:0.05〜1.50%,Mn:0.30〜2.00%,P:0.040%未満,S:0.040〜0.130%,V:0.10〜0.50%,Ti:0.10%を超えて0.50%まで,Al:0.002〜0.100%,N:0.002〜0.020%の範囲で、且つ、C,Si,Mn,Cr,V,Sを所定の条件式を満たすような範囲で含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を開示している。かかる鋼を1200〜1350℃に加熱して、800℃を超えて1300℃までの間で熱間鍛造を終了し、その後、800〜600℃における冷却速度を1.7〜2.5℃/sとしてフェライト・パーライト組織を得ている。
【0007】
特許文献3では、このような非調質鋼として、質量%で、C:0 .30〜0.55%、Si:0.50〜1.30%、Mn:0.25〜1.00%、S:0.05〜0.30%、Al:0.005〜0.035%、V:0.03〜0.30%、N:0.0030〜0.0250%を含み、且つ、Ti:0.01〜0.15%およびNb:0.01〜0.20%の1種または2種を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を開示している。かかる鋼を1100〜1300℃に加熱して、850〜1250℃で熱間鍛造してフェライト・パーライト組織を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−137542号公報
【特許文献2】特開2004−277838号公報
【特許文献3】特開2005−2367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したようなTi及びVを添加したクラッキングコンロッドに使用される非調質鋼では、熱間鍛造後に所定の冷却速度で冷却してフェライト・パーライト組織を得たとしても、所定の機械強度を得られなかったり、またクラッキングコンロッドとしてのクラッキングを良好に出来ない、といった問題が散見された。
【0010】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、フェライト・パーライト型の非調質鋼からなり、優れた機械強度と、クラッキングコンロッドとしての優れたクラッキング性能とを具有するコンロッド部材を得るためのクラッキングコンロッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者においては、Ti及びVを添加したクラッキングコンロッドに使用される非調質鋼では、熱間鍛造後に所定の冷却速度で冷却してフェライト・パーライト組織を得たとしても、所定の機械強度を得られなかったり、またクラッキングコンロッドとしてのクラッキングを良好に出来ない、と散見されたその原因が熱間鍛造の温度及び加工率によることを発見した。そして室温での硬さに影響を与える低温(α域)での微細なTi及びVの炭化物の析出が高温(γ域)で析出する炭化物によって抑制されてしまうものと考えた。これに対して、非調質鋼の成分組成と、熱間鍛造の温度及び加工率との関係を鋭意研究し、本願発明に至った。
【0012】
そこで、本発明によるクラッキングコンロッドの製造方法は、フェライト・パーライト組織を有する非調質鋼からなるクラッキングコンロッドの製造方法であって、鋼材を用意するステップと、前記鋼材を1200℃〜1300℃の温度範囲まで加熱するステップと、1000℃以上の温度で前記鋼材の少なくとも所定部位に50%以上の加工率となるような圧縮加工を与えて粗鍛造体に熱間鍛造するステップと、前記粗鍛造体を少なくとも5℃/s以下で冷却してフェライト・パーライト組織を与えるステップと、を含み、必須元素として、質量%で、0.16〜0.35%の範囲内のCと、0.1〜1.0%の範囲内のSiと、0.3〜1.0%の範囲内のMnと、0.040〜0.070%の範囲内のPと、0.080〜0.130%の範囲内のSと、0.10〜0.35%の範囲内のVと、及び、0.08〜0.20%の範囲内のTiと、を含み、前記所定部位において少なくとも250HV以上の硬さを有するコンロッド部材を得ることを特徴とする。
【0013】
かかる発明により得られるフェライト・パーライト組織からなるコンロッド部材は、加工率50%程度の部位であっても、少なくとも250HV以上の硬さ、すなわち、少なくとも800MPa級の機械強度を得られるとともに、クラッキングコンロッドとしてのクラッキングを良好に行い得るのである。
【0014】
上記した発明において、前記所定部位の加工率は80%よりも小さいことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、得られるコンロッド部材の所定部位の硬さを低下させ過ぎることなく、また、クラッキングコンロッドとしてのクラッキングを良好に行い得るのである。
【0015】
上記した発明において、任意添加元素として、質量%で、0.30%以下でCuと、0.20%以下でNiと、0.20%以下でCrと、0.05%以下でMoと、を含むコンロッド部材であってもよい。かかる発明によれば、各成分の微量の添加により、上記した機械的性質に影響を与えることなく、鋼塊の溶製及び熱間鍛造などを安定した品質で行い得るのである。
【0016】
また、上記した発明において、任意添加元素として、質量%で、0.01%以下でNを含むコンロッド部材であってもよい。かかる発明によれば、高温γ域において炭化物とともに生じる窒化物の過剰析出を防止できて、得られるコンロッド部材に所定の機械強度と良好なクラッキングを与え得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による実施例及び比較例に関する鋼の成分組成及び機械特性の一覧である。
【図2】図1のNo.1に示す組成の鋼の機械特性の一覧である。
【図3】図1のNo.1に示す組成の鋼の機械特性の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、Ti及びVを含むクラッキングコンロッド用のフェライト・パーライト組織からなる非調質鋼において、熱間鍛造の加工温度(以下、単に「加工温度」と称する。)及び熱間鍛造の加工率(以下、単に「加工率」と称する。)が冷却後の室温での機械的特性に与える影響を調査した。
【0019】
まず、所定の成分組成の鋼材を60秒間かけて1240℃まで加熱し、この温度で90秒間保持した。(「所定の成分組成」は、加工後に図1のNo.1の成分組成となるような成分組成であるが、ここでは加工の前後で成分組成に変化はなかった。)その後、950℃、1000℃、1050℃、1100℃、1150℃及び1200℃の各温度まで570℃/min(9.5℃/sec)の冷却速度で冷却しながら、熱間鍛造を模した圧縮加工を行った。圧縮加工は、歪速度5sec−1の圧縮速度で加工率を0%、50%及び70%まで変えて行った。その後、この粗鍛造体は、78℃/min(1.3℃/sec)の冷却速度で少なくとも300℃まで冷却され、フェライト・パーライト組織からなるクラッキングコンロッド用の鋼部材としての鋼を得た。
【0020】
得られた冷却後の鋼の成分組成は、図1のNo.1である。また、図2及び図3には、加工率毎にその加工温度とその硬さについてまとめた。
【0021】
図3に示すように、1200℃の加工温度では加工率による硬さの差はほとんどない。一方で、加工温度の低下とともに加工率による硬さの差が大きくなる。かかる傾向は、所定の範囲でSi、Mn、P、S、V及びTiを少なくとも含む、質量%で0.15〜0.35%程度のCを含む鋼で見られた。これは硬さに影響を与える低温(α域)での微細なTi及びVの炭化物の析出が高温(γ域)で析出する炭化物によって抑制されるようになるからと考える。ところで、クラッキングコンロッドにおける熱間鍛造では、部分的にではあるが、好ましくは50%以上の加工率を必要とされる。よって、加工率50%で硬さの急激に下降する加工温度を遷移温度と定義し、ここでは993℃と求められた。
【0022】
従来のコンロッドで使用されているV非調質鋼では、例えば、鋼材を1200℃〜1300℃の温度範囲まで加熱し、1000℃以上の温度で熱間鍛造する。同様に熱間鍛造をする場合、製品の機械的強度の安定性の観点から、遷移温度が少なくとも1050℃程度以下、好ましくは1000℃以下とする。なお、V非調質鋼では、250HV程度(約23HRC、引張強度で800MPa相当)以上を得られるが、図3からもわかるように、本鋼では加工率0%で900℃以上の加工温度でこれを上回り、圧縮率50%であっても約960℃以上の加工温度においてこれを上回っている。
【0023】
図1のNo.2〜10及びNo.101〜105には、Si、Mn、P、S、V及びTiを少なくとも含む、質量%で0.15〜0.35%程度のCを含む鋼において、各種成分を変えたときの上記した遷移温度と、加工率50%且つ加工温度1050℃での硬さとをまとめた。
【0024】
No.2〜10に示す鋼は、いずれもフェライト・パーライト型の非調質鋼からなり、加工率50%且つ加工温度1050℃で250HV(23HRC相当)以上の硬さを有する。すなわち、No.2〜No.10に示す鋼部材は、従来のコンロッドで使用されているV非調質鋼と比較して同程度以上の優れた機械強度を有する。また、Vに加えTiを含むことで、クラッキングコンロッドとしてのクラッキングを良好に行い得ることを確認できる。
【0025】
一方、No.101〜105に示す鋼も、いずれもフェライト・パーライト型の非調質鋼からなるが、硬さが目安となる従来のコンロッドで使用されているV非調質鋼の250HV程度(約23HRC、引張強度で800MPa相当)を下回っている。なお、No.102に示す鋼のように、遷移温度が高いと熱間鍛造に供する温度を高く設定しなければならないため、好ましくない。
【0026】
各鋼をそれぞれに見ると、No.101に示す鋼では、Tiの含有量が本発明の実施例としてのNo.1〜10の鋼に比較して少なく、逆に、No.102に示す鋼では、Tiの含有量が本発明の実施例としてのNo.1〜10の鋼に比較して多い。いずれの場合にあっても、所定の硬さを得られなかった。
【0027】
No.103に示す鋼では、Vの含有量が本発明の実施例としてのNo.1〜10の鋼に比較して少ない。この場合にあっても、所定の硬さを得られなかった。
【0028】
No.104に示す鋼では、Sの含有量が本発明の実施例としてのNo.1〜10の鋼に比較して多く、この場合にあっても、所定の硬さを得られなかった。
【0029】
No.105に示す鋼では、所定の硬さを得られることを期待されたが、得られなかった。これは、炭化物析出硬化の基礎となるCの含有量が比較的少なかったためと考える。
【0030】
以上のように、No.101〜105に示す成分組成の鋼部材では、クラッキングコンロッドとして必要な機械強度を得ることはできなかった。
【0031】
なお、上記した鋼の各組成成分を与えたのは、以下の如き指針からである。まず、必須添加元素について述べる。
【0032】
Cは、クラッキングコンロッドとして必要な機械強度を得るために添加される。V及び/又はTiと炭化物を形成してフェライト相の機械強度を向上させ得る。また、クラッキングコンロッド部材として重要な大端部のクラッキングにおいて、適度な凹凸破面を得るために必要なパーライト量にも影響を与える。その一方で、過剰に添加すると、必要以上に硬くなって、コンロッドとして必要とされる被削性を得られなくなる。図1のNo105に示した鋼についても考慮し、質量%で、Cは、0.16〜0.35%の範囲内とすべきである。
【0033】
Siは、鋼の溶製時において脱酸作用を有するとともに、フェライト相に固溶してこれを強化してコンロッドとしての耐力を向上させ得る。その一方で、過剰に添加すると、必要以上に硬くなって、コンロッドとして必要とされる被削性を得られなくなる。故に、質量%で、Siは、0.1〜1.0%の範囲内とすべきである。
【0034】
Mnは、Sと結合してMnSを生成し、コンロッドとして必要とされる被削性を高める。その一方で、過剰に添加すると、ベイナイトを生成してクラッキングを困難にし、コンロッドとして必要とされる被削性も得られなくなる。故に、質量%で、Mnは、後述するSの量の範囲内で、0.3〜1.0%の範囲内とすべきである。
【0035】
Pは、クラッキングコンロッド部材の大端部のクラッキングにおいて脆性破面を与え、ロッド部とキャップ部の組み合わせ時の破面の密着性を高め得る。その一方で、過剰に添加すると、結晶粒界に偏析して熱間加工性を低下させる。故に、質量%で、Pは0.040〜0.070%の範囲内とすべきである。
【0036】
Sは、上記したようにMnと結合してMnSを生成し、コンロッドとして必要とされる被削性を高める。その一方で、過剰に添加すると、熱間加工性を低下させる。故に、質量%で、Sは0.080〜0.130%の範囲内とすべきである。
【0037】
Vは、CやNと結合して微細な炭化物及び/又は窒化物を生成してコンロッドとして必要とされる機械強度を高め得る。炭化物はフェライト相に整合析出して硬さを向上させ、クラッキングコンロッド部材の大端部のクラッキングにおいて脆性破面を与え、ロッド部とキャップ部の組み合わせ時の破面の密着性を高める。その一方で、過剰に添加すると、コンロッドとして必要とされる被削性を得られなくなる。また、高価であるためにコストを上昇させてしまう。故に、質量%で、Vは0.10〜0.35%の範囲内とすべきである。
【0038】
Tiは、Vと同様に、CやNと結合して微細な炭化物及び/又は窒化物を生成してコンロッドとして必要な機械強度を高め得る。また、硬さを高めるとともにクラッキングコンロッド部材の大端部のクラッキングにおいて脆性破面を与え、ロッド部とキャップ部の組み合わせ時の破面の密着性を高める。その一方で、過剰に添加すると、コンロッドとして必要とされる被削性を得られなくなる。故に、質量%で、Tiは0.08〜0.20%の範囲内とすべきである。
【0039】
続いて、任意に含み得る任意添加元素について述べる。任意添加元素については、上記した必須添加元素によるクラッキングコンロッドとしての特徴を損うことなく添加し得る上限値を定めている。
【0040】
Cu及びNiは、強度を高める効果を有するとされる。一方で、過剰に添加するとベイナイトの発生を誘起し、被削性を低下させてしまう。つまり、質量%で、Cuは0.30%以下、Niは0.20%以下で任意に添加し得る。
【0041】
Crは、焼入性を向上させて機械強度を高めるとされる。一方で、過剰に添加すると、ベイナイトを生成させてクラッキングを困難にしてしまうとともに、コンロッドとして必要な被削性を得られなくなる。つまり、質量%で、Crは0.20%以下で任意に添加し得る。
【0042】
Moは、強度を高めるとされる。一方で、過剰に添加すると硬さが高くなりすぎて、コンロッドとして必要な被削性を得られなくなる。つまり、質量%で、Moは0.05%以下で任意に添加し得る。
【0043】
Nは、V及び/又はTiとの窒化物を形成してフェライト相の機械強度を高め得る。一方で、過剰に添加すると窒化物により、コンロッドとして必要な被削性を得られなくなる。つまり、質量%で、Nは、0.010%以下で任意に添加し得る。
【0044】
以上、Ti及びVを含むクラッキングコンロッド用のフェライト・パーライト組織からなる非調質鋼において、室温での硬さに対する熱間鍛造の加工温度及び熱間鍛造の加工率の影響を調査した。その結果、熱間鍛造の加工率を高くするほど、また加工温度を低くするほど、得られる部材の室温における硬さが低下することを見出すとともに、特定の加工温度以下では、加工率の変化に対する硬さの変化が急に大きくなることを見出した。その上で、所定の製造方法でクラッキングコンロッドとしての機械的強度及びクラッキング性を得られる一連の成分組成の上記した実施例を発見し本発明に至った。
【0045】
上記した実施例による鋼からなるクラッキングコンロッドは、フェライト・パーライト型の非調質鋼からなり、優れた機械強度と、クラッキングコンロッドとしての優れたクラッキング性能とを具有することを確認できる。
【0046】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく変形例を示したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことが出来るであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト・パーライト組織を有する非調質鋼からなるクラッキングコンロッドの製造方法であって、
鋼材を用意するステップと、
前記鋼材を1200℃〜1300℃の温度範囲まで加熱するステップと、
1000℃以上の温度で前記鋼材の少なくとも所定部位に50%以上の加工率となるような圧縮加工を与えて粗鍛造体に熱間鍛造するステップと、
前記粗鍛造体を少なくとも5℃/s以下で冷却してフェライト・パーライト組織を与えるステップと、を含み、
必須元素として、質量%で、
0.16〜0.35%の範囲内のCと、
0.1〜1.0%の範囲内のSiと、
0.3〜1.0%の範囲内のMnと、
0.040〜0.070%の範囲内のPと、
0.080〜0.130%の範囲内のSと、
0.10〜0.35%の範囲内のVと、及び、
0.08〜0.20%の範囲内のTiと、を含み、前記所定部位において少なくとも250HV以上の硬さを有するコンロッド部材を得ることを特徴とするクラッキングコンロッドの製造方法。
【請求項2】
前記所定部位の加工率は80%よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の以上のクラッキングコンロッドの製造方法。
【請求項3】
任意添加元素として、質量%で、
0.30%以下でCuと、
0.20%以下でNiと、
0.20%以下でCrと、
0.05%以下でMoと、を含むコンロッド部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッキングコンロッドの製造方法。
【請求項4】
任意添加元素として、質量%で、0.01%以下でNを含むコンロッド部材であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載のクラッキングコンロッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−84767(P2011−84767A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237520(P2009−237520)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】