説明

クランクケース、エンジン及びクランクケースの製造方法

【課題】オイルクーラのある機種とオイルクーラのない機種との両方に対してクランクケースを極力共用できるようにする。
【解決手段】オイルポンプ39の吐出口39bに連通させるオイル流入口45から流入したオイルが流れるオイル通路OPを備えたエンジンE1のクランクケース34であって、オイル流入口45からクランクケース34の側面開口47に向けて横方向に延設された第1オイル通路46と、クランクケース34のオイル流出口となる下面開口48から上方に向けて延設され、その仮想延長線Lが第1オイル通路46と交差する第2オイル通路49と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の乗り物に搭載され、オイルポンプから吐出されるオイルが流れるオイル通路を備えたクランクケース、エンジン及びクランクケースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等に搭載されるエンジンは、一般に、吸気ポート及び排気ポートが形成されたシリンダヘッド、ピストンが収容されるシリンダブロック、クランクシャフト等を収容するクランクケース、及び、オイルを貯留するオイルパン等を備えている。オイルパン内のオイルは、エンジンのクランクシャフトの回転に連動して駆動されるオイルポンプによって吸い上げられ、エンジン内に形成されたオイル通路を通ってクランクシャフトやトランスミッションやカムシャフト等を潤滑及び冷却する(例えば、特許文献1参照)。クランクケースの外面には、オイル通路に連通する一対の開口が設けられており、その一対の開口にオイルクーラの流入口及び流出口がそれぞれ接続されている。即ち、オイルポンプから吐出されてオイル通路を流れるオイルは、一旦オイルクーラを通過して冷却されたうえでオイル通路に戻って、エンジン各所を流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−182833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動二輪車等では、エンジンの排気量の違いによりオイルクーラが不要となる機種も存在する。そうすると、オイルクーラのある機種とオイルクーラのない機種との間でオイル通路の流通経路が異なるため、機種ごとにクランクケースを新たに製作しなければならない。その結果、クランクケースの種類が増えるとともに、クランクケースを鋳造するための鋳型等の種類も増え、コストが増加することとなる。
【0005】
そこで本発明は、オイルクーラのある機種とオイルクーラのない機種との両方に対してクランクケースを極力共用できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るクランクケースは、オイルポンプの吐出口に連通させるオイル流入口から流入したオイルが流れるオイル通路を備えたエンジンのクランクケースであって、前記オイル流入口から前記クランクケースの側面開口に向けて横方向に延設された第1オイル通路と、前記クランクケースのオイル流出口となる下面開口から上方に向けて延設され、その仮想延長線が前記第1オイル通路と交差する第2オイル通路と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、オイルクーラを使用する機種では、クランクケースの側面から第2オイル通路に接続する第3オイル通路を加工し、第1オイル通路の側面開口をオイルクーラの流入口に接続し、第3オイル通路の側面開口をオイルクーラの流出口に接続すればよい。一方、オイルクーラを使用しない場合には、第2オイル通路を上方に向けて延長して第1オイル通路と合流させるよう加工し、第1オイル通路の側面開口を封止部材で封止すればよい。よって、クランクケースを少し加工するだけで、オイルクーラを使用する場合と使用しない場合との両方に当該クランクケースを共用することができる。
【0008】
本発明に係るエンジンは、前記クランクケースを備えたエンジンであって、前記クランクケースは、前記側面開口の下方にある第2の側面開口と第2オイル通路とを接続する第3オイル通路を備え、前記第1オイル通路の前記側面開口は前記オイルクーラの流入口に接続され、前記第3オイル通路の前記第2の側面開口は前記オイルクーラの流出口に接続され、前記第2オイル通路の前記下面開口はオイルフィルタの流入口に連通していることを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、オイルポンプから吐出されたオイルは第1オイル通路を介してオイルクーラに流入し、オイルクーラから流出した冷却されたオイルは第3オイル通路及び第2オイル通路を介してオイルフィルタに導かれる。よって、前述したクランクケースをオイルクーラ付きエンジンに容易に適用することができる。
【0010】
本発明に係る別のエンジンは、前記クランクケースを備えたエンジンであって、前記第2オイル通路は、前記第1オイル通路と合流するよう上方に向けて延設されており、前記第1オイル通路の前記側面開口は封止部材で封止されており、前記第2オイル通路の前記下面開口はオイルフィルタの流入口に連通していることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、オイルポンプから吐出されたオイルは第1オイル通路及び第2オイル通路を介してオイルフィルタに導かれる。よって、前述したクランクケースをオイルクーラの無いエンジンに容易に適用することができる。
【0012】
本発明に係るクランクケースの製造方法は、オイルポンプの吐出口に連通させるオイル流入口から流入したオイルが流れるオイル通路を備えたエンジンのクランクケースの製造方法であって、側面に開口するように上下に並んで配置された上側凹部及び下側凹部を有するクランクケース母材を形成し、前記上側凹部を更に穴あけ加工することで、前記クランクケース母材の前記上側凹部から前記オイル流入口に向けて横方向に延設された第1オイル通路を形成し、前記クランクケース母材の下面のオイル流出口となる位置から上方に向けて穴あけ加工することで、その仮想延長線が前記第1オイル通路と交差する第2オイル通路を形成することを特徴とする。
【0013】
前記製法によれば、オイルクーラを使用する場合には、下側凹部を更に穴あけ加工することで、第2オイル通路に接続する第3オイル通路を形成し、第1オイル通路の側面開口をオイルクーラの流入口に接続し、第3オイル通路の側面開口をオイルクーラの流出口に接続すればよい。一方、オイルクーラを使用しない場合には、第2オイル通路の形成時に第2オイル通路を上方に向けて延長して第1オイル通路と合流させるよう穴あけ加工し、第1オイル通路の側面開口を封止部材で封止すればよい。よって、クランクケースを少し加工するだけで、オイルクーラを使用する場合と使用しない場合との両方に当該クランクケースを共用することができる。さらに、クランクケース母材には予め下側凹部が形成されているので、その下側凹部を第3オイル通路の穴あけ加工の基点として利用でき、穴あけ加工の作業性及び正確性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、クランクケースを少し加工するだけで、オイルクーラを使用する場合と使用しない場合との両方に当該クランクケースを共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の左測面図である。
【図2】図1に示すエンジン及びその近傍の一部断面化した左側面図である。
【図3】図2に示すエンジン及びその近傍の正面図である。
【図4】図2に示すエンジン及びその近傍の左断面図である。
【図5】図4に示す下側クランクケースの下方から見た斜視図である。
【図6】図2に示すエンジン及びその近傍のオイル通路を説明する模式図である。
【図7】図4に示す下側クランクケースとなる加工前の下側クランクケース母材の左断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るエンジン及びその近傍の左断面図である。
【図9】図8に示すエンジン及びその近傍のオイル通路を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車に搭乗した運転者から見た方向を基準とする。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の左測面図である。図1に示すように、自動二輪車1は前輪2と後輪3とを備え、前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク4の下端部にて回転自在に支持され、該フロントフォーク4は、その上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)と該アッパーブラケットの下方に設けられたアンダーブラケット(図示せず)とを介してステアリングシャフト(図示せず)に支持されている。該ステアリングシャフトはヘッドパイプ5によって回転自在に支持されている。該アッパーブラケットには左右へ延びるバー型のハンドル6が取り付けられている。
【0018】
ヘッドパイプ5からは左右一対のメインフレーム7が下方に傾斜しながら後方へ延びており、このメインフレーム7の後部に左右一対のピボットフレーム8が接続されている。このピボットフレーム8には略前後方向に延びるスイングアーム9の前端部が枢支されており、このスイングアーム9の後端部に駆動輪である後輪3が回転自在に軸支されている。ハンドル6の後方には燃料タンク10が設けられており、この燃料タンク10の後方に運転者騎乗用のシート11が設けられている。
【0019】
前輪2と後輪3の間では、エンジンE1がメインフレーム7及びピボットフレーム8に支持された状態で搭載されている。このエンジンE1の吸気ポート26(図2参照)にはメインフレーム7の内側に配置されたスロットルボディ12が接続されている。スロットルボディ12の上流側には燃料タンク10の下方に配置されたエアクリーナボックス13が接続されている。また、車体前部から車体両側にかけてエンジンE1などを覆うようにカウリング14が設けられている。
【0020】
図2は図1に示すエンジンE1及びその近傍の一部断面化した左側面図である。図3は図2に示すエンジンE1及びその近傍の正面図である。図2及び3に示すエンジンE1は、オイルクーラ付きエンジンである。このエンジンE1は、4サイクルレシプロエンジンであり、複数の気筒20が車幅方向に並んで配置され、且つクランクシャフト21の軸線が車幅方向に向けられる。エンジンE1は、複数のピストン22を収容するシリンダブロック23に接続されるシリンダヘッド24を備えている。シリンダヘッド24には、各ピストン22に対応して個別に設けられる燃焼室25が形成されている。燃焼室25には、後方へ延びる吸気ポート26と、前方に延びる排気ポート27とが連通しており、混合気は吸気ポート26を通じて燃焼室25内に送られる。シリンダヘッド24には、各気筒20がピストン22の4行程間に吸気、圧縮、燃焼、排気をこの順で実行すべく、各ポート26,27を適宜タイミングで開閉する吸気バルブ28及び排気バルブ29が設けられている。
【0021】
また、シリンダヘッド24の上部には、吸気バルブ28及び排気バルブ29をそれぞれ上下動させるカム30a,31aが設けられた吸気カムシャフト30及び排気カムシャフト31が配置されている。これらの吸気カムシャフト30及び排気カムシャフト31には上方からシリンダヘッドカバー32が被せられ、該シリンダヘッドカバー32はシリンダヘッド24に固定されている。従って、吸気カムシャフト30及び排気カムシャフト31は、シリンダヘッド24とシリンダヘッドカバー32との間に挟み込まれるようにして保持されている。タイミングチェーン(図示せず)等から構成される回転伝達機構により、クランクシャフト21の回転動力が吸気カムシャフト30及び排気カムシャフト31へ伝達される。
【0022】
シリンダヘッド24の下部には、ピストン22を収容するシリンダブロック23が接続され、更にシリンダブロック23の下部には、クランクシャフト21及びトランスミッション56(図6参照)を収容するクランクケース34が接続されている。即ち、本実施形態のクランクケース34は、トランスミッションケースを兼ねている。クランクケース34の後部には、トランスミッション56(図6参照)を構成するインプットシャフト(図示せず)とアウトプットシャフト38がクランクシャフト21と略平行に収容されている。クランクケース34の下部には潤滑用のオイルを溜めるオイルパン35が設けられている。
【0023】
クランクケース34の前部のオイルクーラ取付部56には、オイルパン35から吸い上げられたオイルを冷却するためのオイルクーラ36が取り付けられている。オイルクーラ36は、その中に収容されたパイプの外壁面を冷却液で冷却することで、そのパイプ内に流れるオイルを冷却するものである。つまり、オイルクーラ36の流入口36a(図4参照)は当該パイプの一端に連通し、流出口36b(図4参照)は当該パイプの他端に連通している。
【0024】
オイルパン35の前部には、そのオイルを浄化する二次オイルフィルタ37が取り付けられている。二次オイルフィルタ37は、オイルクーラ36の真下に位置するように互いに上下に並んで配置されている。クランクケース34には、トロコイドロータ式のオイルポンプ39が取り付けられている。オイルポンプ39は、インプットシャフト(図示せず)とギヤ(図示せず)を介して接続されており、クランクシャフト21の回転に連動して駆動される。そして、エンジンE1には、オイルポンプ39によりオイルパン35から吸い上げられたオイルを各所へ送るためのオイル通路OP(図4参照)が形成されている。
【0025】
図4は図2に示すエンジンE1及びその近傍の左断面図である。図5は図4に示す下側クランクケース41の下方から見た斜視図である。図4及び5に示すように、クランクケース34は上下割りになっており、上側クランクケース40と下側クランクケース41とが接続されてなる。下側クランクケース41の下部には、オイルパン35が接続されている。下側クランクケース41の下面には、オイルポンプ39の吸入口39aに連通する開口部44が設けられており、その開口部44にはオイルパン35内に向けて垂下されたオイルガイド部材42が接続されている。オイルガイド部材42の下端の流入口42aには、一次オイルフィルタ43が設けられている。
【0026】
クランクケース34のオイル通路OPは、別体パイプを設けることなく、クランクケース34の壁に孔を形成してなるものである。オイルポンプ39の吐出口39bには下側クランクケース41のオイル流入口45が接続されており、そのオイル流入口45から下側クランクケース41の前側に形成された側面開口47に向けて実質的に前方向及び横方向に第1オイル通路46が延設されている。第1オイル通路の側面開口47は、オイルクーラ36の流入口36aに接続されている。オイルクーラ36の流出口36bには下側クランクケース41の前側に形成された第2の側面開口50に接続されている。第2の側面開口50は、第1オイル通路46の側面開口47の下方に設けられている。第2の側面開口50からは実質的に後方向及び横方向に向けて第3オイル通路51が延設されている。つまり、第3オイル通路51と第1オイル通路46とは上下に並んで略平行に延びている。
【0027】
下側クランクケース41の下面には、オイル流出口となる下面開口48から上方に向けて第2オイル通路49が延設されている。第2オイル通路49は、その仮想延長線Lが第1オイル通路46と交差する向きに延設されている。第2オイル通路49の上端部は、第1オイル通路46よりも下方に位置し、第1オイル通路46とは直接接続せずに第3オイル通路51の後端部と直接接続している。
【0028】
オイルパン35には、第2オイル通路49の下面開口48に直接接続する第4オイル通路54が設けられている。第4オイル通路54は、オイルパン35の前部に取り付けられた二次オイルフィルタ37の流入口37aに接続されている。即ち、第2オイル通路49の下面開口48は二次オイルフィルタ37の流入口37aに連通している。また、オイルパン35には、二次オイルフィルタ37の流出口37bに接続される第5オイル通路55が設けられている。第5オイル通路55は、下側クランクケース41の下面開口48の直ぐ後ろに形成された第2の下面開口51に接続されている。第2の下面開口51からは上方に向けて第6オイル通路52が延設されている。第6オイル通路52の上端部は、車幅方向に向けて延設されたメインオイル通路53に接続されている。また、第1〜第6オイル通路46,51,49,54,55,52は、略同一の鉛直平面上に配置されている。
【0029】
図6は図2に示すエンジンE1及びその近傍のオイル通路OPを説明する模式図である。図4及び6に示すように、前記構成のエンジンE1では、オイルポンプ39が駆動すると、オイルパン35内のオイルは一次オイルフィルタ43を通過してオイルポンプ39へ吸い上げられ、第1オイル通路46を通じてオイルクーラ36へ導かれる。オイルクーラ36にて冷却されたオイルは、第3オイル通路51、第2オイル通路49及び第4オイル通路54を通って二次オイルフィルタ37に導かれる。二次オイルフィルタ37にて浄化されたオイルは、第5オイル通路55及び第6オイル通路52を通ってメインオイル通路53に導かれる。メインオイル通路53からは複数のオイル通路が分岐しており、それら分岐したオイル通路を通ったオイルが、トランスミッション56、クランクシャフト21、ジェネレータ57、気筒20、カムシャフト30,31等をそれぞれ潤滑及び冷却する。
【0030】
次に、下側クランクケース41の製造手順について説明する。図7は図4に示す下側クランクケース41となる加工前の下側クランクケース母材141の左断面図である。図7に示すように、まず、鋳造加工により下側クランクケース母材141を形成する。下側クランクケース母材141には、その前側の側面に開口した側面開口47,50を有する上側凹部60及び下側凹部61が鋳抜きにより上下に並んで設けられている。次いで、上側凹部60を更に穴あけ加工(例えば、ドリル加工)することで、下側クランクケース母材141に上側凹部60からオイル流入口45に向けて横方向に延設された第1オイル通路46を形成する。次いで、下側クランクケース母材141の下面のオイル流出口となる下面開口48から上方に向けて穴あけ加工することで、その仮想延長線Lが第1オイル通路46と交差する第2オイル通路49を形成する。第2オイル通路49の上端部は、第1オイル通路46よりも下方に位置している。この状態の下側クランクケース母材141(図7)が、オイルクーラ36付きのエンジンE1と後述するオイルクーラ無しのエンジンE2(第2実施形態参照)との両方に利用できる共用部品である。
【0031】
オイルクーラ付きエンジンE1では、この状態の下側クランクケース母材141に対して、第2の側面開口50を有する下側凹部61から第1オイル通路46と略平行に第3オイル通路51を穴あけ加工する(図4参照)。この際、下側クランクケース母材141には予め下側凹部61が形成されているので、その下側凹部61を第3オイル通路51の穴あけ加工の基点として利用でき、穴あけ加工の作業性及び正確性が向上するようになっている。そして、この第3オイル通路51が第2オイル通路49と接続される。即ち、共用部品である図7の下側クランクケース母材141から第3オイル通路51のための1つの加工動作を行うだけで、オイルクーラ付きエンジンE1のための下側クランクケース41を作製することができる。
【0032】
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態に係るエンジンE2及びその近傍の左断面図である。図9は図8に示すエンジンE2及びその近傍のオイル通路を説明する模式図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図8及び9に示すように、本実施形態のエンジンE2はオイルクーラ無しのエンジンであり、第1実施形態のものとは下側クランクケース241の最終形状が相違する。下側クランクケース241では、下面開口48から上方に延びる第2オイル通路249が、第1オイル通路46と合流している。第1オイル通路46の側面開口47は、上側凹部60に圧入された封止部材200で封止されている。第1実施形態の第3オイル通路51に相当する通路は、本実施形態の下側クランクケース241には形成されていない。
【0033】
前記構成のエンジンE2では、オイルポンプ39が駆動すると、オイルパン35内のオイルは一次オイルフィルタ43を通過してオイルポンプ39へ吸い上げられ、第1オイル通路46、第2オイル通路249及び第4オイル通路54を通ってオイルフィルタ37に導かれる。オイルフィルタ37にて浄化されたオイルは、第5オイル通路55及び第6オイル通路52を通ってメインオイル通路53に導かれる。
【0034】
次に、下側クランクケース241の製造手順について説明する。オイルクーラ無しのエンジンE2では、図7に示した下側クランクケース母材141に対して、第2オイル通路49を上方に向けて延長するように穴あけ加工し、第1オイル通路46と合流する第2オイル通路249を形成する。そして、第1オイル通路46の側面開口47を塞ぐように上側凹部60に封止部材200を圧入する。即ち、共用部品である図7の下側クランクケース母材141から第2オイル通路249を長くする加工を行い、封止部材200を上側凹部60に取り付けるだけで、オイルクーラ無しのエンジンE2のための下側クランクケース241を作製することができる。
【0035】
以上の説明から分かるように、クランクケース母材141を少し加工するだけで、オイルクーラを使用する場合と使用しない場合との両方に当該クランクケース母材141を共用することができる。なお、前述したエンジンは、自動二輪車だけでなく他の乗物に適用してもよい。また、前述したエンジンは、複数の気筒を有するエンジンであるが、単気筒エンジンであってもよい。また、前述したクランクケース母材は、鋳造で形成しているが、他の製法で形成してもよい。また、前述した実施形態における「横方向」は、水平方向であればよいが、水平方向から若干傾斜した方向でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明に係るクランクケース、エンジン及びクランクケースの製造方法は、クランクケースの共用化に貢献する優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できるエンジン等に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動二輪車
34 クランクケース
35 オイルパン
36 オイルクーラ
36a 流入口
36b 流出口
37 二次オイルフィルタ
37a 流入口
37b 流出口
39 オイルポンプ
39a 吸入口
39b 吐出口
40 上側クランクケース
41,241 下側クランクケース
45 オイル流入口
46 第1オイル通路
47 側面開口
48 下面開口
49,249 第2オイル通路
50 第2の側面開口
51 第3オイル通路
60 上側凹部
61 下側凹部
141 下側クランクケース母材
200 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプの吐出口に連通させるオイル流入口から流入したオイルが流れるオイル通路を備えたエンジンのクランクケースであって、
前記オイル流入口から前記クランクケースの側面開口に向けて横方向に延設された第1オイル通路と、
前記クランクケースのオイル流出口となる下面開口から上方に向けて延設され、その仮想延長線が前記第1オイル通路と交差する第2オイル通路と、を備えていることを特徴とするクランクケース。
【請求項2】
請求項1に記載のクランクケースを備えたエンジンであって、
前記クランクケースは、前記側面開口の下方にある第2の側面開口と第2オイル通路とを接続する第3オイル通路を備え、
前記第1オイル通路の前記側面開口は前記オイルクーラの流入口に接続され、
前記第3オイル通路の前記第2の側面開口は前記オイルクーラの流出口に接続され、
前記第2オイル通路の前記下面開口はオイルフィルタの流入口に連通していることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載のクランクケースを備えたエンジンであって、
前記第2オイル通路は、前記第1オイル通路と合流するよう上方に向けて延設されており、
前記第1オイル通路の前記側面開口は封止部材で封止されており、
前記第2オイル通路の前記下面開口はオイルフィルタの流入口に連通していることを特徴とするエンジン。
【請求項4】
オイルポンプの吐出口に連通させるオイル流入口から流入したオイルが流れるオイル通路を備えたエンジンのクランクケースの製造方法であって、
側面に開口するように上下に並んで配置された上側凹部及び下側凹部を有するクランクケース母材を形成し、
前記上側凹部を更に穴あけ加工することで、前記クランクケース母材の前記上側凹部から前記オイル流入口に向けて横方向に延設された第1オイル通路を形成し、
前記クランクケース母材の下面のオイル流出口となる位置から上方に向けて穴あけ加工することで、その仮想延長線が前記第1オイル通路と交差する第2オイル通路を形成することを特徴とするクランクケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−58480(P2011−58480A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212303(P2009−212303)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】