説明

クランクシャフトの製造方法及び製造装置

【課題】軸素材からクランクシャフトを製造するに当たり、偏芯据え込み鍛造に伴う軸素材の割れを抑制すること。
【解決手段】軸素材8の所定部位における半径方向への変形を特定方向以外の方向につき規制しながら軸素材8の両端部をダイ7により押圧して軸素材8に軸方向の圧縮荷重を加えることにより、軸素材8を据え込みし、所定部位を特定方向へ座屈させることによりクランクシャフトを製造する。軸素材8の端面8aを押圧するダイ7の押圧面を特定方向へ向けて、かつ、軸素材8の他端側へ向けて下降するように傾斜させておく。軸素材8の両端をダイ7により押圧するときに、軸素材8の端面8aを、傾斜させた押圧面により押圧することで、据え込みに対する座屈の先行を抑えるように軸素材8に圧縮荷重を加えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸素材からクランクシャフトを製造するためのクランクシャフトの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1には、棒材(軸素材)の中間部を軸心と直交する方向へスライドさせながら軸素材の上下両端部を押圧して、軸素材を座屈させながら据え込む、すなわち「偏芯据え込み鍛造」を行うことにより、クランクシャフトを製造する技術が記載されている。詳しくは、図58に簡略的な断面図に示すように、この製造装置は、上下動可能に設けられた上部ブロック61と、横方向移動不能に設けられた下部ブロック62と、上下両ブロック61,62の中間位置に設けられた中間ブロック63とを備える。そして、中間ブロック63により軸素材64の中間位置をグリップして、その上下位置に据え込み部を形成した上で、上部ブロック61を加圧・降下させ、その動作に関連して中間ブロック63を下降させながら横方向へスライドさせることで、上記据え込み部を座屈させる。これにより、据え込み部を上部ブロック61と中間ブロック63との間、中間ブロック63と下部ブロック62との間でそれぞれ押圧するようになっている。
【0003】
上記のような「偏芯据え込み鍛造」によりクランクシャフトの成形を冷鍛化することにより、クランクシャフトのネットシェイプ化を図ることができ、熱歪みを低減することができ、クランクシャフトの機械加工工程を削減することができ、クランクシャフトの低コスト化を期待することができる。ここで、エンジン排気量のバリエーションを増やすため、上記した「偏芯据え込み鍛造」によりクランクシャフトを製造するには、ピン部の偏芯量、すなわちクランクシャフトのジャーナル部とピン部とのオフセット量を変化させる必要がある。特に、ピン部の偏芯量を大きくすることは工法的に課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−106949号公報
【特許文献2】特開2005−009595号公報
【特許文献3】特開平7−112232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の技術では、据え込み部の座屈方向をコントローラするために、軸素材の中間部にスライドさせる力をかけながら軸素材を軸方向に圧縮する必要がある。このとき、軸素材の座屈が据え込みに対して先行し過ぎることがあり、座屈の過程で軸素材に剪断割れが発生するおそれがあった。また、エンジン排気量のバリエーション対応に伴いクランクシャフトのジャーナル部とピン部とのオフセット量を大きくすると、据え込み後半において軸素材に剪断割れが発生するおそれがあった。ここで、図59に、図58の鎖線円S9の中を拡大して断面図により示す。図59に示すように、軸素材64の上端部と、上部ブロック61の受穴61aとの間には、例えば、「5〜20μm」程度のクリアランスC1が必要になる。しかしながら、クランクシャフトの成形開始後には、図60に示すように、このクリアランスC1の分だけ軸素材64がずれて片当たりすることとなる。このため、軸素材64に上下方向の荷重を圧縮力として効率的に与えることができなくなる。この結果、軸素材64の偏芯量が増大すると、クランクシャフトのアーム部の引張応力が増し、図61に断面図に示すように、成形後に成形品65に割れ66が発生するおそれがあった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、偏芯据え込み鍛造に伴う軸素材の割れを抑制することを可能としたクランクシャフトの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軸素材の所定部位における半径方向への変形を特定方向以外の方向につき規制しながら軸素材の両端部をダイにより押圧して軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えることにより、軸素材を据え込みし、所定部位を特定方向へ座屈させることによりクランクシャフトを製造する製造方法において、軸素材の端面を押圧するダイの押圧面を特定方向へ向けて、かつ、軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜させておき、軸素材の両端をダイにより押圧するときに、軸素材の端面を、傾斜させた押圧面により押圧することで、据え込みに対する座屈の先行を抑えるように軸素材に圧縮荷重を加えることを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、軸素材の両端をダイにより押圧するときに、軸素材の端面を、傾斜させた押圧面により押圧することで、据え込みに対する座屈の先行を抑えるように軸素材に圧縮荷重を加えるので、座屈の過剰な進行が抑えられ、軸素材での過大な引張応力の発生が抑えられる。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ダイは軸素材の端部を受ける受穴を含み、受穴の底部に傾斜させた押圧面を形成し、底部の周囲に沿って周溝を形成しておき、受穴に軸素材の端部を嵌合させて軸素材の両端部をダイにより押圧するときに、軸素材の端部の肉を周溝の中へ拡張させることを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、受穴に軸素材の端部を嵌合させて軸素材の両端部をダイにより押圧するときに、軸素材の端部の肉を周溝の中へ拡張させるので、成形初期に軸素材に対する圧縮荷重が増大する。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ダイは軸素材の端部を受ける受穴を含み、受穴の開口縁を円弧状に形成しておき、受穴に軸素材の端部を嵌合させて軸素材の両端部をダイにより押圧するときに、軸素材を円弧状の開口縁に倣って変形させることを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、受穴に軸素材の端部を嵌合させて軸素材の両端部をダイにより押圧するときに、軸素材を円弧状の開口縁に倣って変形させるので、軸素材の座屈部分の外側における過大な引張応力の発生が抑えられる。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、軸素材の所定部位における半径方向への変形を特定方向以外の方向につき規制しながら軸素材の両端部をダイにより押圧して軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えることにより、軸素材を据え込みし、所定部位を特定方向へ座屈させることによりクランクシャフトを製造する製造方法において、座屈される軸素材の表面を押圧するダイの底面の少なくとも一部に特定方向へ向けて、かつ、軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜する傾斜部を設けておき、座屈される軸素材の表面をダイの底面により押圧するときに、傾斜部により押圧することで、ダイの底面と軸素材の表面との間の滑りを抑えるように軸素材に圧縮荷重を加えることを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、座屈される軸素材の表面をダイの底面により押圧するときに、傾斜部により押圧することで、ダイの底面と軸素材の表面との間の滑りを抑えるように軸素材に圧縮荷重を加えるので、軸素材の表面における引張応力及び剪断応力の発生が抑えられる。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、ダイは軸素材の端部を受ける受穴を含み、ダイの底面に受穴を中心に同心円状に面粗度増大部を設けておき、座屈される軸素材の表面をダイの底面により押圧するときに、面粗度増大部により押圧することで、座屈される軸素材の表面とダイの底面との間の滑りを抑えるように軸素材に圧縮荷重を加えることを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項4に記載の発明の作用に加え、座屈される軸素材の表面をダイの底面により押圧するときに、面粗度増大部により押圧することで、座屈される軸素材の表面とダイの底面との間の滑りを抑えるように軸素材に圧縮荷重を加えるので、軸素材の表面における局部的な引張応力及び剪断応力の発生が抑えられる。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、軸素材からクランクシャフトを製造するクランクシャフトの製造装置において、軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えるために、軸素材の一端部と他端部にそれぞれ設けられる第1のダイ及び第2のダイと、軸素材上に付けられる第3のダイと、軸素材上の所定部位にて第3のダイを保持するための保持部材と、軸素材の半径方向における保持部材の移動を第3のダイと共に特定方向以外の方向につき規制する移動規制手段と、第1のダイ及び第2のダイは、軸素材の端面を押圧する押圧面を含み、押圧面が特定方向へ向けて、かつ、軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜することとを備えたことを趣旨とする。
【0018】
上記発明の構成によれば、軸素材の両端を第1のダイ及び第2のダイにより押圧することにより、軸素材の端面が、傾斜させた押圧面により押圧され、据え込みに対する座屈の先行を抑えるように軸素材に圧縮荷重が加わり、座屈の過剰な進行が抑えられ、軸素材での過大な引張応力の発生が抑えられる。
【0019】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、第1のダイ及び第2のダイは、軸素材の端部を受ける受穴を含み、受穴の底部に傾斜させた押圧面が形成され、底部の周囲に沿って周溝が形成されることを趣旨とする。
【0020】
上記発明の構成によれば、請求項6に記載の発明の作用に加え、第1のダイ及び第2のダイの受穴に軸素材の両端部をそれぞれ嵌合させて軸素材の両端部を第1のダイ及び第2のダイにより押圧することにより、軸素材の端部の肉が受穴の中で周溝の中へ拡張され、成形初期に軸素材に対する圧縮荷重が増大する。
【0021】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、第1のダイ及び第2のダイは、軸素材の端部を受ける受穴を含み、受穴の開口縁が円弧状に形成されたことを趣旨とする。
【0022】
上記発明の構成によれば、請求項6に記載の発明の作用に加え、第1のダイ及び第2のダイの受穴に軸素材の両端部を嵌合させて軸素材の両端部を第1のダイ及び第2のダイにより押圧することにより、軸素材が受穴の円弧状の開口縁に倣って変形し、軸素材の座屈部分の外側における過大な引張応力の発生が抑えられる。
【0023】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、軸素材からクランクシャフトを製造するクランクシャフトの製造装置において、軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えるために、軸素材の一端部と他端部にそれぞれ設けられる第1のダイ及び第2のダイと、軸素材上に付けられる第3のダイと、軸素材上の所定部位にて第3のダイを保持するための保持部材と、軸素材の半径方向における保持部材の移動を第3のダイと共に特定方向以外の方向につき規制する移動規制手段と、第1のダイ及び第2のダイの底面の少なくとも一部にて特定方向へ向けて、かつ、軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜する傾斜部とを備えたことを趣旨とする。
【0024】
上記発明の構成によれば、座屈される軸素材の表面を第1のダイ及び第2のダイの底面によりそれぞれ押圧することにより、軸素材の表面が各ダイの底面の傾斜部により押圧され、各ダイの底面と軸素材の表面との間の滑りを抑えるように軸素材に圧縮荷重が加わり、軸素材の表面における引張応力及び剪断応力の発生が抑えられる。
【0025】
上記目的を達成するために、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、第1のダイ及び第2のダイは、軸素材の端部を受ける受穴を含み、第1のダイ及び第2のダイの底面に受穴を中心に同心円状に面粗度増大部が設けられたことを趣旨とする。
【0026】
上記発明の構成によれば、請求項9に記載の発明の作用に加え、座屈される軸素材の表面を第1のダイ及び第2のダイの底面により押圧することにより、軸素材の表面が面粗度増大部により押圧され、座屈される軸素材の表面と各ダイの底面との間の滑りを抑えるように軸素材に圧縮荷重が加えられ、軸素材の表面における局部的な引張応力及び剪断応力の発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、偏芯据え込み鍛造に伴う座屈による軸素材の剪断割れを抑制することができる。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、成形初期における軸素材の割れを抑制することができる。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、軸素材の座屈部分の外側における割れを抑制することができる。
【0030】
請求項4に記載の発明によれば、偏芯据え込み鍛造に伴う据え込みによる軸素材の表面の割れを抑制することができる。
【0031】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、軸素材の表面の局部的な割れを抑制することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明によれば、偏芯据え込み鍛造に伴う座屈による軸素材の剪断割れを抑制することができる。
【0033】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の効果に加え、成形初期における軸素材の割れを抑制することができる。
【0034】
請求項8に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明の効果に加え、軸素材の座屈部分の外側における割れを抑制することができる。
【0035】
請求項9に記載の発明によれば、偏芯据え込み鍛造に伴う据え込みによる軸素材の表面の割れを抑制することができる。
【0036】
請求項10に記載の発明によれば、請求項9に記載の効果に加え、軸素材の表面の局部的な割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態に係り、製造装置の基本的構成を示す縦断面図。
【図2】同じく、製造装置の基本的構成を示す図1のA−A線断面図。
【図3】同じく、フローティングダイを示す平面図。
【図4】同じく、フローティングダイを示す図3のB−B線断面図。
【図5】同じく、フローティングダイを2つの分割片に分解して示す平面図。
【図6】同じく、フローティングダイを2つの分割片に分解して示す断面図。
【図7】同じく、一方の分割片を図5の矢印C方向から見た正面図。
【図8】同じく、他方の分割片を図5の矢印D方向から見た正面図。
【図9】同じく、クランクシャフトの製造方法を示すフローチャート。
【図10】同じく、セッティング工程の製造装置を分解して示す縦断面図。
【図11】同じく、セッティング工程の製造装置を示す縦断面図。
【図12】同じく、加圧工程の製造装置を示す縦断面図。
【図13】同じく、加圧工程の製造装置を示す縦断面図。
【図14】同じく、製造後のクランクシャフトを概略的に示す正面図。
【図15】同じく、(A)〜(D)は、一連の製造方法を簡略的に示す断面図。
【図16】同じく、初期状態の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図17】同じく、図16の鎖線楕円の部分を拡大して示す断面図。
【図18】同じく、成形開始後の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図19】同じく、図18の鎖線楕円の部分を拡大して示す断面図。
【図20】比較例に係り、押しダイの一部を拡大して示す断面図。
【図21】第1実施形態に係り、図18の鎖線楕円の部分を拡大して示す断面図。
【図22】(A),(B)は、比較例の押しダイの一部を拡大して示す断面図。
【図23】同じく、成形開始後の押しダイの一部を拡大して示す断面図。
【図24】同じく、初期状態の押しダイの一部を拡大して示す断面図。
【図25】同じく、成形開始後の押しダイの一部を拡大して示す断面図。
【図26】第2実施形態に係り、初期状態の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図27】同じく、成形開始後の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図28】同じく、座屈過程の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図29】第3実施形態に係り、初期状態の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図30】同じく、成形開始後の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図31】同じく、座屈過程の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図32】第4実施形態に係り、初期状態の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図33】同じく、図32の製造装置の鎖線楕円の部分を拡大して示す断面図。
【図34】比較例に係り、座屈過程の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図35】第4実施形態に係り、初期状態の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図36】同じく、座屈過程の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図37】同じく、据え込み過程の押しダイの受穴と軸素材の関係を部分的に示す断面図。
【図38】同じく、図37の鎖線円の部分を拡大して示す断面図。
【図39】第5実施形態に係り、初期状態の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図40】同じく、図39の鎖線楕円の部分を拡大して示す断面図。
【図41】同じく、面粗度増大部分のバリエーションを示す押しダイの底面図。
【図42】同じく、面粗度増大部分のバリエーションを示す押しダイの底面図。
【図43】同じく、面粗度増大部分のバリエーションを示す押しダイの底面図。
【図44】同じく、据え込み過程後半の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図45】第6実施形態に係り、初期状態の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図46】同じく、図45の鎖線楕円の部分を拡大して示す断面図。
【図47】同じく、押しダイを示す底面図。
【図48】同じく、据え込み過程後半の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図49】同じく、傾斜部の範囲を一例として寸法規定した押しダイの一部を示す断面図。
【図50】同じく、傾斜部のバリエーションを示す図46に準ずる断面図。
【図51】同じく、傾斜部のバリエーションを示す図46に準ずる断面図。
【図52】同じく、傾斜部のバリエーションを示す図46に準ずる断面図。
【図53】同じく、偏芯据え込み過程後半の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図54】同じく、図53の鎖線円の部分を拡大して示す断面図。
【図55】同じく、押しダイを示す底面図。
【図56】第7実施形態に係り、(A)は押しダイを示す側断面図、(B)は押しダイを示す底面図。
【図57】同じく、押しダイを示す底面図。
【図58】従来例に係り、初期状態の製造装置を簡略的に示す断面図。
【図59】同じく、図58の鎖線円の中を拡大して示す断面図。
【図60】同じく、成形開始後の図59に準ずる断面図。
【図61】同じく、成形後の製造装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1実施形態]
以下、本発明におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
先ず、この実施形態におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置の基本的構成について説明する。この実施形態における構成上の特徴部分については後述する。
【0040】
図1に、クランクシャフトの製造装置1の基本的構成を縦断面図により示す。図2に、この製造装置1の基本的構成を図1のA−A線断面図(横断面図)により示す。この製造装置1は、土台となる固定治具2と、固定治具2の上に立てられた案内治具3と、案内治具3の内周に沿って上下動可能に設けられた押し治具4と、案内治具3の内側にて固定治具2と押し治具4との間に配置されるフローティング治具5とを備える。
【0041】
固定治具2は、中央に固定ダイ6を含む。固定ダイ6の上面には、受穴6aが形成される。案内治具3は円筒形をなす。押し治具4は、中央に押しダイ7を含む。押しダイ7の下面には、受穴7aが形成される。図1に示すように、この製造装置1は、軸素材8の上下両端部を固定ダイ6の受穴6aと押しダイ7の受穴7aにそれぞれ嵌め入れることで、軸素材8を固定治具2と押し治具4との間に垂直に支持するようになっている。押し治具4は、油圧シリンダを含む所定の油圧装置により上下に往復駆動されるようになっている。
【0042】
フローティング治具5は、円環状部材9と、円環状部材9の中央に位置するフローティングダイ10とを含む。フローティングダイ10は、断面が逆台形をなし、その外周がテーパ面をなしている。フローティングダイ10の中央には、軸素材8を嵌める孔10aが形成される。円環状部材9の中央には、フローティングダイ10の外周のテーパ面に整合したテーパ孔9aが形成される。図1に示すように、フローティング治具5は、軸素材8上の中間部位に保持される。ここで、フローティングダイ10を軸素材8上の中間部位に付けた状態で、円環状部材9のテーパ孔9aにフローティングダイ10の外周面を圧入するかたちでフローティングダイ10の外周に円環状部材9を圧着する。これにより、フローティングダイ10が円環状部材9により締め付けられて軸素材8上の中間部位に保持される。この実施形態では、円環状部材9が本発明の保持部材に相当し、軸素材8の中間部位が本発明の所定部位に相当する。図1に示すように、この実施形態では、軸素材8をフローティング治具5と共に製造装置1にセッティングすることで、フローティング治具5が固定治具2と押し治具4との中間位置に保持される。
【0043】
図1,2に示すように、案内治具3には、3本のボルト11A〜11Cが、軸素材8を中心に半径方向に配置され、案内治具3を貫通するように設けられる。3本のボルト11A〜11Cの先端は、フローティング治具5を構成する円環状部材9の外周に接触可能に設けられる。図2に示すように、3本のボルト11A〜11Cのうち、2本のボルト11A,11Bは、軸素材8を挟んで互いに対向する位置にて先端を軸素材8の中心へ向けて配置される。残りの1本のボルト11Cは、2本のボルト11A,11Bの間にて先端を軸素材8の中心へ向けて配置される。この実施形態で、残りの1本のボルト11Cの位置に対し軸素材8を挟んだ反対側の方向(図2の右方向)が特定方向SDとなっている。この実施形態で、案内治具3と3本のボルト11A〜11Cは、軸素材8の半径方向におけるフローティング治具5の移動を特定方向SD以外の方向につき規制する本発明の移動規制手段を構成する。
【0044】
ここで、フローティングダイ10について詳しく説明する。図3に、フローティングダイ10を平面図により示す。図4に、フローティングダイ10を図3のB−B線断面図により示す。図5に、フローティングダイ10を2つの分割片12,13に分解して平面図により示す。図6に、フローティングダイ10を2つの分割片12,13に分解して断面図により示す。図7に、一方の分割片12を図5の矢印C方向から見た正面図により示す。図8に、他方の分割片13を図5の矢印D方向から見た正面図により示す。図3〜図6に示すように、フローティングダイ10は、2つの分割片12,13により2分割可能に構成される。フローティングダイ10の上面側には、中央の孔10aを中心にU字形の凹み10bが設けられる。この凹み10bは、第1分割片12(図面左側)では、その外周縁にて開放され、第2分割片13(図面右側)では、外周縁にて開放されず、孔10aに沿った円弧状をなしている。フローティングダイ10の下面側にも上面側と同じ凹み10bが設けられる。後述するように、この凹み10bは、軸素材8が座屈されるときに、軸素材8の一部を受け入れて軸素材8を所定形状に成形するようになっている。
【0045】
ここで、上記した製造装置1を使用して行うクランクシャフトの製造方法の基本的構成について説明する。図9に、この製造方法をフローチャートにより示す。図10〜図13に、この製造方法の各工程等につき製造装置1の基本的構成を縦断面図により示す。以下に、図9のフローチャートに付された各番号に従って順次説明する。
【0046】
(1)セッティング工程では、図10に示すように、軸素材8の中間部位にフローティングダイ10を付け、そのダイ10の外周に円環状部材9を圧着する。また、軸素材8の上下両端部をそれぞれ固定ダイ6の受穴6aと押しダイ7の受穴7aに嵌め入れて組み付ける。これにより、図11に示すように、フローティング治具5を中間部位に保持した軸素材8を、固定治具2と押し治具4との間にて垂直に支持する。このセッティング完了状態では、軸素材8上の中間部位にてフローティングダイ10が保持され、軸素材8の半径方向におけるフローティングダイ10(フローティング治具5)の移動が特定方向SD以外の方向について規制される。
【0047】
(2)加圧工程では、図12に示すように、押し治具4を油圧装置により下方へ加圧する。これにより、軸素材8に軸方向の圧縮荷重を加え、図13に示すように、軸素材8を据え込みし、フローティングダイ10(フローティング治具5)の特定方向SDへの移動を許容して、軸素材8の中間部位を特定方向SDへ座屈させる。このとき、押し治具4が下降する過程で、押し治具4との干渉を避けるために各ボルト11A〜11Cを案内治具3の外方向へ後退させる。図13に示すように、最終的には、フローティング治具5は、図11,12に示す初期状態から特定方向SD(図13の右方側)へ移動し、固定治具2と押し治具4との間で押し挟まれる。このとき、軸素材8は、固定ダイ6、押しダイ7及びフローティングダイ10の間で所定形状に成形される。
【0048】
(3)離型工程では、押し治具4を上昇させ、押し治具4と固定治具2との間からクランクシャフトの成形品を取り外すと共に、その成形品からフローティング治具5を取り外す。これにより、図14に概略的に示すように、軸部14aと、ピン部14bと、アーム部14cを有するクランクシャフト14が得られる。この実施形態では、ピストンストロークを増大させるために、クランクシャフト14のピン部14bの偏芯量を増大させるためにアーム部14cを比較的長く形成するようにしている。
【0049】
ここで、上記した一連の製造方法を、図15(A)〜(D)に示す簡略的な断面図を参照して詳しく説明する。この実施形態の製造方法では、軸素材8からクランクシャフト14を製造するために、先ず図15(A)に示す「初期状態」では、軸素材8の中間部位にフローティング治具5によりフローティングダイ10を装着する。そして、軸素材8の中間部位における半径方向への変形を特定方向SD(図面右方向)以外の方向について規制しながら、押しダイ7により軸素材8に軸方向の圧縮荷重を加える。これにより、先ず、図15(B)に示す「座屈過程」では、軸素材8の中間部位を特定方向SDへ座屈を開始させ、その後、図15(C)に示す「据え込み過程」では、軸素材8を据え込むと共に、軸素材8の中間部位を更に特定方向SDへ座屈させ、図15(D)に示す「偏芯据え込み完了」では、軸素材8の座屈と据え込みを完了する。このように軸素材8を中間部位で座屈させるためには、図15(A)に示すように、軸素材8の長さを「L1」、直径を「D1」とすると、「L1/D1>2.5」という条件が必要になることが確認されている。ここで、図15(A)〜(D)に示すように、押しダイ7が下降するのに伴い、軸素材8が中間部位にて座屈し、その中間部位が偏芯することが分かる。この押しダイ7の下降量Ldは、軸素材8の圧縮量に相当し、軸素材8の偏芯量LPは、軸素材8の座屈量に相当する。
【0050】
つまり、この実施形態の製造方法の基本的構成では、軸素材8の中間部位における半径方向への変形を特定方向SD以外の方向につき規制しながら軸素材8の両端部を押しダイ7及び固定ダイ6により押圧して軸素材8に軸方向の圧縮荷重を加えることにより、軸素材8を据え込みし、中間部位を特定方向SDへ座屈させるようになっている。
【0051】
ここで、上記したクランクシャフトの製造方法及び製造装置の基本的構成に係る作用効果について説明する。すなわち、この製造方法では、セッティング工程で、軸素材8上の中間部位に保持されたフローティングダイ10の移動が、軸素材8の半径方向における特定方向SD以外の方向について規制される。この規制状態において、加圧工程で、軸素材8に軸方向の圧縮荷重を加えるだけで、軸素材8が据え込まれ、特定方向SDへのフローティングダイ10の移動が許容され、軸素材8が中間部位にて特定方向SDへ座屈されて曲げられ、フローティングダイ10により成形され、クランクシャフト14が製造される。このため、軸素材8からクランクシャフト14を製造するために、別途の曲げ加工工程を省略することができる。この結果、曲げ加工工程を省略した分だけクランクシャフト14の製造サイクルタイムを短縮することができる。
【0052】
また、この製造装置1によれば、軸素材8上にフローティングダイ10を装着し、軸素材8上の中間部位にてそのフローティングダイ10を円環状部材9により保持する。また、軸素材8の半径方向におけるフローティングダイ10及び円環状部材9の移動、すなわちフローティング治具5の移動を、特定方向SD以外の方向について3本のボルト11A〜11Cにより規制する。この規制状態で、押し治具4により軸素材8に軸方向の圧縮荷重を加えるだけで、軸素材8が据え込まれ、中間部位が特定方向SDへ座屈されて曲げられ、フローティングダイ10により軸素材8が成形され、クランクシャフト14が製造される。つまり、この製造装置1によれば、軸素材8の中間部位を特定方向SDへ曲げるために別途の曲げ加工工程の必要なくクランクシャフト14を製造することができる。このため、曲げ加工工程のためのパンチや油圧装置等を省略することができ、これによって製造装置1を簡易化及び小型化することができる。
【0053】
更に、この実施形態では、フローティング治具5は、2分割可能なフローティングダイ10と、そのフローティングダイ10の外周に圧着される円環状部材9とから構成される。そして、フローティング治具5を軸素材8上に保持するには、2分割可能なフローティングダイ10を軸素材8上に被せ付け、そのフローティングダイ10の外周に円環状部材9を圧着することで行われる。ここで、円環状部材9は、そのテーパ孔9aとフローティングダイ10の外周テーパ面との関係により容易にフローティングダイ10に装着することができる。また、フローティング治具5を軸素材8上から取り外すには、円環状部材9をフローティングダイ10から外し、フローティングダイ10を二つに分解することで行われる。ここでも、円環状部材9は、そのテーパ孔9aとフローティングダイ10の外周テーパ面との関係により容易にフローティングダイ10から外すことができる。このため、軸素材8へのフローティングダイ10の着脱を容易にすることができる。また、軸素材8の座屈方向を規制するために、案内治具3に3本のボルト11A〜11Cを設けるだけなので、比較的簡単な構成で座屈方向を規制することができる。
【0054】
次に、この実施形態の構成上の特徴部分について詳しく説明する。図16に、初期状態の製造装置1を簡略的な断面図により示す。図17に、図16の鎖線楕円S1の部分を拡大して断面図により示す。この実施形態では、図16に示すように、軸素材8の上部、中間部及び下部のそれぞれに段部21A,21B,21Cが形成される。また、軸素材8の段部21A〜21Cに整合するように、固定ダイ6の受穴6a、押しダイ7の受穴7a及びフローティングダイ10の孔10aの内面がそれぞれが所定の形状に形成される。例えば、軸素材8の上部について説明すると、図17に示すように、軸素材8の上部の段部21Aは、テーパ形状となっている。また、この段部21Aの形状に合わせて、押しダイ7の受穴7aの開口縁7bの部分がテーパ形状となっている。ここで、図17に示すように、テーパ形状のテーパ角を「θ1」とし、軸素材8の段部21Aの部分の最大径を「Dm」とし、受穴7aの開口縁7bのテーパ面と押しダイ7の底面7cとが交差する位置、すなわち開口縁7bの最大径を「Dd」とすると、「Dd>Dm」の関係が成り立つ。ここで、「Dd」と「Dm」の差を、例えば「0.5mm」とすることができる。軸素材8の下部及び中間部の段部21B,21C、並びに、固定ダイ6の受穴6a及びフローティングダイ10の孔10aについても、上記構成に準ずる。
【0055】
従って、この実施形態の特徴部分の構成によれば、軸素材8の上部、中間部及び下部をテーパ形状の段部21A〜21Cとし、それに整合するように押しダイ7の受孔7aの開口縁7b、フローティングダイ10の孔10a及び固定ダイ6の受穴6aの開口縁等の部分をテーパ形状としたので、段部21A〜21Cの部分で軸素材8と各ダイ7,10,6との密着性が増す。図18に、成形開始後の製造装置1を簡略的に断面図により示す。図19に、図18の鎖線楕円S1の部分を拡大して断面図により示す。図18,19から明らかなように、軸素材8の段部21A〜21Cでは、段部21A〜21Cのテーパ面と開口縁7bのテーパ面とが密着していることが分かる。このため、図20に比較例として断面図に示すように、軸素材8の上部等に段部を形成せず、押しダイ50の受穴50aの開口縁50bを単なる角形状とした通常の構成では、押しダイ50による下向きの押圧力FD1が軸素材8の上端面8aに加わるだけであった。これに対し、本実施形態では、例えば、図21に断面図に示すように、軸素材8の上端面8aに加え、段部21Aの部分にも下向きの押圧力FD2が加わることとなる。このため、成形初期に、製造装置1による軸素材8の圧縮力を増大させることができ、軸素材8又はその成形品の割れを抑えることができる。
【0056】
また、この実施形態の特徴部分の構成によれば、軸素材8の段部21A〜21Cと、各ダイ7,10,6の受穴7a,6a及び孔10aの開口縁7b等とをそれぞれテーパ形状としたので、軸素材8が各ダイ7,10,6の開口縁7b等の部分で過度に太鼓状に据え込まれることがない。すなわち、図22(A),(B)に比較例として押しダイ50の一部を拡大して断面図に示すように、軸素材8の上部をテーパ形状でなく単なる段差51とし、押しダイ50の受穴50aの開口縁50bを単なる角状とした場合を想定する。この場合は、初期状態から成形開始後にかけて、押しダイ50の境目で軸素材8に太鼓状の膨らみ52ができて、軸素材8の表面の引張応力FS1が増大することとなった。これに対し、本実施形態では、例えば、図23に断面図に示すように、押しダイ7との境目で軸素材8が過度に太鼓状に膨らむことがなく、据え込みによる軸素材8の表面の引張応力を緩和することができる。
【0057】
更に、この実施形態の特徴部分の構成によれば、押しダイ7の受穴7aの開口縁7bの最大径Ddが、軸素材8の段部21Aの最大径Dmより大きく設定される。このため、図24,25に押しダイ7の一部を拡大して断面図に示すように、初期状態から成形開始後にかけて、軸素材8の段部21Aが、開口縁7bの最大径Ddの大きさになるまで据え込みを先行させることができ、十分な圧縮力を軸素材8に与えることができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0060】
第1実施形態の特徴部分の構成によれば、垂直方向の荷重を軸素材8に効果的に与えることができるものの、軸素材8に予め段部21A〜21Cを形成しておく必要があり、その分だけ機械加工の工程が増えることとなる。そこで、この実施形態では、軸素材8に段部形成のための事前の機械加工を施す必要がなく、軸素材8に垂直方向の荷重を効果的に与えられるように構成した。すなわち、この実施形態では、押しダイ7及び固定ダイ6の構成の点で第1実施形態と異なる。
【0061】
図26に、第2実施形態に係り、初期状態の押しダイ7の受穴7aと軸素材8の関係を部分的に断面図により示す。図27に、第2実施形態に係り、成形開始後の押しダイ7の受穴7aと軸素材8の関係を部分的に断面図により示す。図26に示すように、この実施形態の押しダイ7には、受穴7aの内径D2を、軸素材8の直径D1に対し、片側において所定値a1(例えば、0.05〜0.1mm程度)、軸方向において所定値b1(例えば、2.0mm程度)、それぞれ拡大することで、受穴7aの底部7dの外周に周溝25が形成される。固定ダイ6の構成についても上記と同様である。
【0062】
そして、この実施形態の製造方法では、押しダイ7の受穴7a及び固定ダイ6の受穴6aに軸素材8の両端部を嵌合させて軸素材8の両端部を両ダイ7,6により押圧するときに、軸素材8の端部の肉を周溝25の中へ拡張させるようにしている。
【0063】
従って、この実施形態の特徴部分の構成によれば、図27に示すように、両ダイ7,6の受穴7a,6aに軸素材8の端部を嵌合させて軸素材8の両端部を両ダイ7,6により押圧するとき、成形開始後には、押しダイ7の受穴7aの周溝25に軸素材8の端部の肉の一部が入り込み、軸素材8の端部の肉が周溝25の分だけ半径方向へ拡張される。これにより、受穴7aの底部7dと軸素材8の端面8aとが確実に接触することとなり、成形初期に軸素材8に対する圧縮荷重が増大する。固定ダイ6についても上記作用と同様である。このため、クランクシャフト14の成形初期に、垂直方向の荷重を軸素材8に確実に与えることができ、成形初期における軸素材8の割れを抑制することができる。
【0064】
なお、図26,27では図示を省略したが、押しダイ7には、受穴7aに対応してノックアウトピンが設けられる。従って、成形完了後には、このノックアウトピンを作動させることで、軸素材8の端部を受穴7aから容易に押し出すことができる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、本発明におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0066】
第2実施形態の特徴部分の構成によれば、成形時に垂直方向の荷重を軸素材8に確実に与えることができるものの、座屈過程では以下のような問題発生のおそれがある。図28に、第2実施形態に係り、座屈過程の押しダイ7の受穴7aと軸素材8の関係を部分的に断面図により示す。すなわち、軸素材8が受穴7aの底部7dにより確実に垂直に加圧されると、「据え込み」に対し、「座屈(偏芯)」が先行し過ぎることがある。これによって軸素材8の曲がり部分に剪断割れCR1が発生するおそれがある。そこで、この実施形態では、受穴7aの底部7dの形状を改良している。
【0067】
図29に、第3実施形態に係り、初期状態の押しダイ7の受穴7aと軸素材8の関係を部分的に断面図により示す。図30に、成形開始後の押しダイ7の受穴7aと軸素材8の関係を部分的に断面図により示す。図29に示すように、この実施形態の押しダイ7には、第2実施形態の構成に加え、受穴7aの底部7dに、軸素材8の偏芯方向(座屈方向)へ向けて傾斜するように所定の傾斜角θ2が付与される。すなわち、この実施形態では、軸素材8の端面8aを押圧する押しダイ7の押圧面15を、特定方向SDへ向けて、かつ、軸素材8の他端側へ向けて下降するように傾斜させている。ここで、傾斜角θ2の目安として「3〜10°」程度が考えられる。この傾斜角θ2は、軸素材8の偏芯量や形状に合わせて適宜変更することができる。固定ダイ6の構成についても上記と同様である。
【0068】
そして、この実施形態の製造方法では、軸素材8の両端を押しダイ7及び固定ダイ6により押圧するときに、軸素材8の端面8aを、傾斜させた押圧面15により押圧することで、据え込みに対する座屈の先行を抑えるように軸素材8に圧縮荷重を加えるようにしている。
【0069】
従って、この実施形態の特徴部分の構成によれば、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。それに加え、この実施形態では、受穴7aの底部7dが偏芯方向へ向けて傾斜するので、偏芯を抑える方向へ軸素材8に圧縮力が働くこととなる。すなわち、軸素材8の端面8aを、ダイ7,6の傾斜させた押圧面15により押圧することで、据え込みに対する座屈の先行を抑えるように軸素材8に圧縮荷重を加えることとなる。これにより、座屈の過剰な進行が抑えられ、軸素材8での過大な引張応力の発生が抑えられる。このため、偏芯据え込み鍛造に伴い、座屈による軸素材8の曲がり部分の剪断割れCR1を抑制することができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、本発明におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0071】
第3実施形態の特徴部分の構成によれば、座屈過程で軸素材8の剪断割れCR1を抑制できるものの以下のような問題発生のおそれがある。図31に、第3実施形態に係り、座屈過程の押しダイ7の受穴7aと軸素材8の関係を部分的に断面図により示す。すなわち、軸素材8が座屈し始めると、フローティングダイ10が偏芯し、受穴7aの開口縁7bの座屈方向側(鎖線楕円S2で示す部分)には、圧縮力が働き、開口縁7bの反座屈方向側(鎖線楕円S3で示す部分)には、大きな引張力が働き、軸素材8に割れが発生するおそれがある。そこで、この実施形態では、受穴7aの開口縁7bの形状を改良している。
【0072】
図32に、第4実施形態に係り、初期状態の製造装置1を簡略的に断面図により示す。図33に、図32の鎖線楕円S4の部分を拡大して断面図により示す。図32,33に示すように、この実施形態の押しダイ7は、第3実施形態の構成に加え、受穴7aの開口縁7bが円弧形状に形成される。ここで、円弧形状の半径を「R」とし、軸素材8の直径を「D」とすると、以下の式(1)に示す関係を設定条件とすることができる。固定ダイ6の構成についても上記と同様である。
R≧D*0.04 ・・・(1)
【0073】
そして、この実施形態の製造方法では、両ダイ7,6の受穴7a,6aに軸素材8の端部を嵌合させて軸素材8の両端部を両ダイ7,6により押圧するときに、軸素材8を円弧状の開口縁7b,6bに倣って変形させるようにしている。
【0074】
従って、この実施形態の特徴部分の構成によれば、軸素材8の両端部を両ダイ7,6により押圧するときに、受穴7,6の開口縁7b,6bが円弧形状に形成されるので、座屈開始後には、開口縁7bの円弧に倣って軸素材8の曲がり部分(座屈部分の内側)が変形することとなり、軸素材8の座屈部分の外側における過大な引張応力の発生が抑えられる。このため、図34に部分的に断面図に示すように、第3実施形態のように、受穴7aの開口縁7bを円弧形状としない構成では、開口縁7bの反座屈方向側の歪みE1と座屈方向側の歪みE2との差の分だけ応力が大きくなる傾向があった。これに対し、本実施形態では、図35に断面図に示す初期状態から、図36に断面図に示す座屈過程へ移行すると、開口縁7bの座屈方向側の歪みE2が図34のそれよりも大きくなり、その結果、開口縁7bの反座屈方向側の歪みE1と座屈方向側の歪みE2との差が小さくなり、歪みE1と歪みE2との差が小さくなった分だけ応力が減少する。このため、座屈過程では、軸素材8の座屈部分の外側に働く応力を減少させることができ、この部分における割れを抑制することができる。
【0075】
[第5実施形態]
次に、本発明におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0076】
第4実施形態の特徴部分の構成によれば、座屈過程において軸素材8の座屈部分の外側における割れを抑制できるものの、以下のような問題発生のおそれがある。図37に、第4実施形態に係り、据え込み過程の押しダイ7の受穴7aと軸素材8の関係を部分的に断面図より示す。図38に、図37の鎖線円S5の部分を拡大して断面図により示す。すなわち、図37,38に示すように、据え込み過程では、受穴7aの開口縁7b及びそれに続く底面7cと軸素材8との接触部分で滑りが発生することがある。この滑りにより軸素材8に局部的な引張が働いて割れが発生するおそれがある。そこで、この実施形態では、主として押しダイ7の底面7cの形態を改良した。
【0077】
図39に、第5実施形態に係り、初期状態の製造装置1を簡略的に断面図により示す。図40に、図39の鎖線楕円S6の部分を拡大して断面図により示す。図39,40に示すように、この実施形態の押しダイ7には、第4実施形態の構成に加え、受穴7aの開口縁7b及びそれに続く底面7cの所定部分につき面粗度を増大させている。以下、この部分を「面粗度増大部分」26と称する。図41〜43に、面粗度増大部分26の構成のバリエーションを押しダイ7の底面図により示す。例えば、この実施形態では、図41に示すように、押しダイ7の底面7cにつき、受穴7aを中心に同心円状に旋盤で凹凸を形成することで面粗度増大部分26が形成される。図42に示すように、セラミック系のコーティングを施すことで、面粗度増大部分26を形成することもできる。また、図43に示すように、レーザなどで面を粗くすることで、面粗度増大部分26を形成することもできる。固定ダイ6の構成についても上記と同様である。
【0078】
そして、この実施形態の製造方法では、座屈される軸素材8の表面を両ダイ7,6の底面7c,6cにより押圧するときに、面粗度増大部26により押圧することで、座屈される軸素材8の表面とダイ7,6の底面7c,6cとの間の滑りを抑えるように軸素材8に圧縮荷重を加えるようにしている。
【0079】
従って、この実施形態の特徴部分の構成によれば、押しダイ7の受穴7aの開口縁7b及びそれに続く底面7cの所定部分を面粗度増大部分26としたので、据え込み過程において、受穴7aの開口縁7b及びそれに続く底面7cと軸素材8の表面との接触部分で滑りが抑えられる。すなわち、座屈される軸素材8の表面を両ダイ7,6の底面7c,6cにより押圧するときに、面粗度増大部26により押圧することで、座屈される軸素材8の表面と両ダイ7,6の底面7c,6cとの間の滑りを抑えるように軸素材8に圧縮荷重を加える。これにより、軸素材8の表面における局部的な引張応力及び剪断応力の発生が抑えられる。このため、据え込み過程において軸素材8の表面の局部的な割れを抑制することができる。
【0080】
[第6実施形態]
次に、本発明におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置を具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0081】
図44に、第5実施形態に係り、据え込み過程後半の製造装置1を簡略的に断面図により示す。第5実施形態の特徴部分の構成によれば、据え込み過程において軸素材8の表面の局部的な割れを抑制できるものの、据え込み過程後半において軸素材8の引張応力や剪断応力が増大して成形割れCR2が生じるおそれがある。そこで、この実施形態では、押しダイ7及び固定ダイ6の底面7c,6cの形態を更に改良している。
【0082】
図45に、第6実施形態に係り、初期状態の製造装置1を簡略的な断面図により示す。図46に、図45の鎖線楕円S7の部分を拡大して断面図により示す。図47に、第6実施形態に係り、押しダイ7を底面図により示す。図45〜47に示すように、この実施形態の押しダイ7には、第5実施形態の構成、すなわち、受穴7aの開口縁7b及びそれに続く底面7cに面粗度増大部分26(この実施形態では、セラミック系のコーティングを施している。)を設けたのに加え、その一部を受穴7aを中心とする同心円状に所定の傾斜角θ3で傾斜させた傾斜部27(図47にメッシュで示す部分)を設けている。この所定の傾斜角θ3は、例えば「5〜30°」とすることができる。この傾斜部27は、特定方向SDへ向けて、かつ、軸素材8の他端側へ向けて下降するように傾斜する。固定ダイ6の構成についても上記と同様である。
【0083】
図48に、第6実施形態に係り、据え込み過程後半の製造装置1を簡略的な断面図により示す。図48において、軸素材8の仮想原点P1からの偏芯量(水平方向への変位量)を「H」とし、仮想原点P1から傾斜部27の内端までの高さを「B」とすると、成形割れの起点P2が、仮想原点P1に対し、座標(H/2,B/2)で表される。そして、上記所定の傾斜角θ3の法線LHが、仮想原点P1と交差するように傾斜部27の範囲を取ることができる。図49に、第6実施形態に係り、傾斜部27の範囲を特定の寸法により規定した押しダイ7の一例を断面図により示す。
【0084】
ここで、上記したように押しダイ7の底面7cに面粗度増大部分26と傾斜部27を設けたが、傾斜部27の変形例として以下のように構成することもできる。図50〜52に、傾斜部27のバリエーションを図46に準ずる断面図により示す。例えば、図50に示すように、傾斜部27とそれの隣接面とのつなぎ目27a,27bを「R=10」程度の円弧としたり、図51に示すように、傾斜部27を微小な階段状に形成したり、図52に示すように、傾斜部27を傾斜角θ3a,θ3bが異なる多段テーパ形状に形成したりすることができる。
【0085】
そして、この実施形態の製造方法では、座屈される軸素材8の表面を両ダイ7,6の底面7c,6cにより押圧するときに、傾斜部27により押圧することで、両ダイ7,6の底面7c,6cと軸素材8の表面との間の滑りを抑えるように軸素材8に圧縮荷重を加えるようにしている。
【0086】
図53に、第6実施形態に係り、偏芯据え込み過程後半の製造装置1を簡略的な断面図により示す。図54に、図53の鎖線円S8の部分を拡大して断面図により示す。従って、この実施形態の特徴部分の構成によれば、図53,54に示すように、偏芯据え込み過程後半において、面粗度増大部分26に傾斜部27を設けているので、その傾斜部27により軸素材8の表面に圧縮荷重が発生する。すなわち、傾斜部27により押圧することで、両ダイ7,6の底面7c,6cと軸素材8の表面との間の滑りを抑えるように軸素材8に圧縮荷重が加えられる。これにより、偏芯据え込み過程後半において、軸素材8の表面での引張応力及び剪断応力の発生が抑えられる。この結果、偏芯据え込み鍛造に伴い、据え込みによる軸素材8の表面の成形割れを抑制することができる。
【0087】
[第7実施形態]
次に、本発明におけるクランクシャフトの製造方法及び製造装置を具体化した第7実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0088】
図55に、第6実施形態に係り、押しダイ7を底面図により示す。第6実施形態の特徴部分の構成によれば、押しダイ7の底面7cの面粗度増大部分26に傾斜部27を設けることで、据え込み過程後半において軸素材8の成形割れCR2を抑制できるものの、傾斜部27が受穴7aと同心円状に形成されるので、軸素材8が据え込まれる過程で受穴7aを中心に傾斜部27にて法線方向に軸素材8の肉が流動するおそれがある。これにより、図55に2点鎖線で示すように、成形されるアーム部14cの一部に括れ28ができて、この括れ28の部分から亀裂が生じるおそれがある。そこで、この実施形態では、押しダイ7の底面7cの形態を更に改良している。固定ダイ6の構成についても同様である。
【0089】
図56に、第7実施形態に係り、押しダイ7の側断面図(A)と、押しダイ7の底面図(B)をそれぞれ示す。図56(A),(B)に示すように、この実施形態の押しダイ7には、第5実施形態と同様に、受穴7aの開口縁7b及びそれに続く底面7cに面粗度増大部分26を設ける。加えて、受穴7aと同心円状に傾斜部27を設ける代わりに、押しダイ7の底面7cにおいて、軸素材8が偏芯する側にて、その偏心方向に直交する方向へ真っ直ぐに延びる帯状の傾斜部29(図56(B)にメッシュで示す。)を設けている。この傾斜部29は、所定の傾斜角θ4を有する。この傾斜角θ4は、例えば「5〜30°」とすることができる。この傾斜部29は、特定方向SDへ向けて、かつ、軸素材8の他端側へ向けて下降するように傾斜している。固定ダイ6の構成についても上記と同様である。
【0090】
ここで、傾斜部29の変形例として、図50〜52に準ずるように形成してもよい。すなわち、図50に示すと同様に、傾斜部29とその隣接面とのつなぎ目を「R=10」程度の円弧としたり、図51に示すと同様に、傾斜部29を微小な階段状に形成したり、図52に示すと同様に、傾斜部29を多段テーパ形状に形成したりしてもよい。
【0091】
そして、この実施形態の製造方法では、座屈される軸素材8の表面を両ダイ7,6の底面7c,6cにより押圧するときに、傾斜部29により押圧することで、両ダイ7,6の底面7c,6cと軸素材8の表面との間の滑りを抑えるように軸素材8に圧縮荷重を加えるようにしている。
【0092】
図57に、押しダイ7を底面図により示す。従って、この実施形態の特徴部分の構成によれば、偏芯据え込み過程後半において、面粗度増大部分26及び傾斜部29により軸素材8の肉流動が座屈(偏芯)方向と平行となり、アーム部14cに括れができなくなる。この結果、アーム部14cの成形割れを抑制することができる。
【0093】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0094】
例えば、前記各実施形態で具体化した本発明に係る保持部材及び移動規制手段の構成は、それぞれ一例であり、各実施形態の構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
この発明は、自動車等のエンジンに使用されるクランクシャフトの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 製造装置
6 固定ダイ(第1のダイ)
6a 受穴
6b 開口縁
6c 底面
7 押しダイ(第2のダイ)
7a 受穴
7b 開口縁
7c 底面
7d 底部
8 軸素材
8a 上端面
9a テーパ孔
9 円環状部材(保持部材)
10 フローティングダイ(第3のダイ)
10a 孔
11A〜C ボルト(移動規制手段)
14 クランクシャフト
25 周溝
26 面粗度増大部分
27 傾斜部
29 傾斜部
SD 特定方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記軸素材の所定部位における半径方向への変形を特定方向以外の方向につき規制しながら前記軸素材の両端部をダイにより押圧して前記軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えることにより、前記軸素材を据え込みし、前記所定部位を前記特定方向へ座屈させることによりクランクシャフトを製造する製造方法において、
前記軸素材の端面を押圧する前記ダイの押圧面を前記特定方向へ向けて、かつ、前記軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜させておき、
前記軸素材の両端を前記ダイにより押圧するときに、前記軸素材の端面を、前記傾斜させた押圧面により押圧することで、前記据え込みに対する前記座屈の先行を抑えるように前記軸素材に圧縮荷重を加えることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項2】
前記ダイは前記軸素材の端部を受ける受穴を含み、前記受穴の底部に前記傾斜させた押圧面を形成し、前記底部の周囲に沿って周溝を形成しておき、
前記受穴に前記軸素材の端部を嵌合させて前記軸素材の両端部を前記ダイにより押圧するときに、前記軸素材の端部の肉を前記周溝の中へ拡張させることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項3】
前記ダイは前記軸素材の端部を受ける受穴を含み、前記受穴の開口縁を円弧状に形成しておき、
前記受穴に前記軸素材の端部を嵌合させて前記軸素材の両端部を前記ダイにより押圧するときに、前記軸素材を前記円弧状の開口縁に倣って変形させることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項4】
前記軸素材の所定部位における半径方向への変形を特定方向以外の方向につき規制しながら前記軸素材の両端部をダイにより押圧して前記軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えることにより、前記軸素材を据え込みし、前記所定部位を前記特定方向へ座屈させることによりクランクシャフトを製造する製造方法において、
前記座屈される軸素材の表面を押圧する前記ダイの底面の少なくとも一部に前記特定方向へ向けて、かつ、前記軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜する傾斜部を設けておき、
前記座屈される前記軸素材の表面を前記ダイの底面により押圧するときに、前記傾斜部により押圧することで、前記ダイの底面と前記軸素材の表面との間の滑りを抑えるように前記軸素材に圧縮荷重を加えることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項5】
前記ダイは前記軸素材の端部を受ける受穴を含み、前記ダイの底面に前記受穴を中心に同心円状に面粗度増大部を設けておき、
前記座屈される前記軸素材の表面を前記ダイの底面により押圧するときに、前記面粗度増大部により押圧することで、前記座屈される軸素材の表面と前記ダイの底面との間の滑りを抑えるように前記軸素材に圧縮荷重を加えることを特徴とする請求項4に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項6】
軸素材からクランクシャフトを製造するクランクシャフトの製造装置において、
前記軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えるために、前記軸素材の一端部と他端部にそれぞれ設けられる第1のダイ及び第2のダイと、
前記軸素材上に付けられる第3のダイと、
前記軸素材上の所定部位にて前記第3のダイを保持するための保持部材と、
前記軸素材の半径方向における前記保持部材の移動を前記第3のダイと共に特定方向以外の方向につき規制する移動規制手段と、
前記第1のダイ及び前記第2のダイは、前記軸素材の端面を押圧する押圧面を含み、前記押圧面が前記特定方向へ向けて、かつ、前記軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜することと
を備えたことを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項7】
前記第1のダイ及び前記第2のダイは、前記軸素材の端部を受ける受穴を含み、前記受穴の底部に前記傾斜させた押圧面が形成され、前記底部の周囲に沿って周溝が形成されることを特徴とする請求項6に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項8】
前記第1のダイ及び前記第2のダイは、前記軸素材の端部を受ける受穴を含み、前記受穴の開口縁が円弧状に形成されたことを特徴とする請求項6に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項9】
軸素材からクランクシャフトを製造するクランクシャフトの製造装置において、
前記軸素材に軸方向の圧縮荷重を加えるために、前記軸素材の一端部と他端部にそれぞれ設けられる第1のダイ及び第2のダイと、
前記軸素材上に付けられる第3のダイと、
前記軸素材上の所定部位にて前記第3のダイを保持するための保持部材と、
前記軸素材の半径方向における前記保持部材の移動を前記第3のダイと共に特定方向以外の方向につき規制する移動規制手段と、
前記第1のダイ及び前記第2のダイの底面の少なくとも一部にて前記特定方向へ向けて、かつ、前記軸素材の他端側へ向けて下降するように傾斜する傾斜部と
を備えたことを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項10】
前記第1のダイ及び前記第2のダイは、前記軸素材の端部を受ける受穴を含み、前記第1のダイ及び前記第2のダイの底面に前記受穴を中心に同心円状に面粗度増大部が設けられたことを特徴とする請求項9に記載のクランクシャフトの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【公開番号】特開2010−162590(P2010−162590A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8771(P2009−8771)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(597000755)株式会社MEG (8)
【Fターム(参考)】