説明

クリップの保持構造

【課題】クリップ取付座の材質が硬質の樹脂であった場合にも、クリップのスライド可能な範囲を狭くすることなく、クリップを弾性的にセンタリングすることのできるクリップの保持構造を提供する。
【解決手段】クリップ63の一対のフランジ部71,72の間に設けられた首部73が、クリップ取付座23に設けられた取付孔78に対して導入溝80を介して導入されることにより、クリップ取付座23に対してクリップ63をスライド可能に保持する。クリップ63の一対のフランジ部71,72は、一方のフランジ部72が有する弾性によりクリップ取付座23を弾性的に挟持可能とされる。クリップ取付座23と第2のフランジ部72との当接面の間には、第2のフランジ部72が有する弾性を利用してクリップ63のセンタリングをなすガイド突起84が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例を説明する。図15はクリップの保持構造を示す断面図、図16はクリップ取付座を示す正面図である。
図15に示すように、自動車の内装材としての樹脂製のトリム101にクリップ取付座102が設けられている。クリップ取付座102に取付孔104が設けられている。クリップ103の一対のフランジ部111,112の間に設けられた首部105が導入溝113(図16参照)を通じて取付孔104に導入される。これにより、クリップ取付座102にクリップ103が保持される。また、クリップ103の係着部117が、自動車のボデー等の被取付部材106の係止孔107に係着されることにより、トリム101が被取付部材106に取付可能である。
【0003】
しかしながら、前記トリム101は、樹脂製であるため熱伸縮する。この熱伸縮にともなう係止孔107に対するクリップ103の位置ずれを吸収するため、取付孔104に首部105を遊嵌させることで、クリップ取付座102にクリップ103を首部105の径方向へ移動可能すなわちスライド可能としている。ところが、クリップ103をセンタリングすることができないため、被取付部材106の係止孔107に対するクリップ103の取付作業性が悪化するという問題が生じる。
【0004】
そこで、前記問題を解消するクリップ取付座が提案されている(例えば特許文献1等参照)。図17はクリップ取付座を示す斜視図である。図17に示すように、トリム101のクリップ取付座102は、取付孔104内に一対の弾性変形可能な挟持片115が一体形成されている。両挟持片115によって、クリップ103の首部105(図15参照)を弾性的に挟持することでクリップ103のセンタリングがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−60714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記クリップ取付座102(図17参照)では、クリップ103のスライド可能な範囲は、両挟持片115がクリップ103の首部105を挟持したまま無理なく弾性変形できる範囲に限定される。つまり、クリップ103のスライド可能な範囲は、挟持片115及びクリップ取付座102側の材質に依存することとなる。そのため、一般に、乗員の安全等のために、軟質の樹脂が用いられる車両内装用トリムに対し、アクリル系やポリカーボネイト系の硬質の樹脂が用いられる車両外装材、例えば樹脂ボデーや樹脂窓等では、スライド可能な範囲を実質的に広く確保できないという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、クリップ取付座の材質が硬質の樹脂であった場合にも、クリップのスライド可能な範囲を狭くすることなく、クリップを弾性的にセンタリングすることのできるクリップの保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とするクリップの保持構造により解決することができる。
すなわち、請求項1に記載されたクリップの保持構造によると、クリップの首部がクリップ取付部の取付孔に対して導入溝を介して導入されることにより、クリップ取付座に対してクリップがスライド可能に保持される。クリップの一対のフランジ部は、少なくとも一方のフランジ部が有する弾性によりクリップ取付部を弾性的に挟持する。また、クリップ取付部とフランジ部との当接面の間に設けられたガイド手段は、フランジ部が有する弾性を利用してクリップを弾性的にセンタリングする。したがって、クリップ取付座の材質が硬質の樹脂であった場合にも、クリップのスライド可能な範囲を狭くすることなく、クリップを弾性的にセンタリングすることができる。
【0008】
また、請求項2に記載されたクリップの保持構造によると、ガイド手段は、クリップの弾性を有するフランジ部が当接するクリップ取付部の当接面に設けられかつ該フランジ部の外周部が弾性的に当接するガイド突起である。したがって、クリップ取付部の当接面にガイド突起を設けるといった簡単な構成によってガイド手段を構成することができる。
【0009】
また、請求項3に記載されたクリップの保持構造によると、クリップ取付部が樹脂部品に設けられ、取付孔が樹脂部品の熱伸縮方向へ延びており、ガイド突起が樹脂部品の熱伸縮方向へのクリップのスライドを妨げないように配置されている。したがって、樹脂部品の熱伸縮方向へのクリップのスライド可能な範囲を拡大することができる。
【0010】
また、請求項4に記載されたクリップの保持構造によると、導入溝が、取付孔の長手方向の端部からその長手方向に対して交差する方向に向けて開口されている。したがって、クリップの首部が取付孔内から導入溝側へ外れることを防止することができる。
【0011】
また、請求項5に記載されたクリップの保持構造によると、クリップの弾性を有するフランジ部が当接するクリップ取付部の当接面に設けられた伸長側の規制突起に対して、樹脂部品の熱伸縮方向の伸長方向へ過度にスライドしようとするクリップのフランジ部が弾性的に当接することにより、樹脂部品の熱伸縮方向の伸長方向へのクリップの過度のスライドを防止することができる。
【0012】
また、請求項6に記載されたクリップの保持構造によると、クリップの弾性を有するフランジ部が当接するクリップ取付部の当接面に設けられた収縮側の規制突起に対して、樹脂部品の熱伸縮方向の収縮方向へ過度にスライドしようとするクリップのフランジ部が弾性的に当接することにより、樹脂部品の熱伸縮方向の収縮方向へのクリップの過度のスライドを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施例に係る樹脂パネルの取付構造を示す断面図である。
【図2】樹脂パネルを示す下面図である。
【図3】クリップの取付構造を示す断面図である。
【図4】クリップとクリップ取付座を分解して示す斜視図である。
【図5】クリップ取付座にクリップを保持した状態を示す斜視図である。
【図6】クリップ取付座を示す下面図である。
【図7】ガイド突起に係るクリップの保持構造を示す断面図である。
【図8】ガイド突起に係るクリップの保持構造を示す断面図である。
【図9】変更例1に係るクリップ取付座を示す下面図である。
【図10】変更例2に係るクリップの保持構造を示す断面図である。
【図11】変更例3に係るクリップの保持構造を示す断面図である。
【図12】変更例4に係るクリップの保持構造を示す断面図である。
【図13】変更例5に係るクリップの保持構造を示す断面図である。
【図14】ガイド溝を示す断面図である。
【図15】従来例に係るクリップの保持構造を示す断面図である。
【図16】クリップ取付座を示す正面図である。
【図17】クリップ取付座を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、車両として自動車のルーフにおけるパノラマルーフに実施したものであるから、パノラマルーフの概要を説明した後、クリップの保持構造について説明する。図1は樹脂パネルの取付構造を示す断面図、図2は樹脂パネルを示す下面図、図3はクリップの取付構造を示す断面図である。なお、図1は図2のI−I線矢視断面図に相当する。
パノラマルーフの概要を説明する。図1に示すように、車両10の天井部には、車両の骨格を形成する左右の両サイドメンバ12a、前後の両ルーフリンフォース12bによって矩形状に枠組みされたルーフレールパネル12が設けられている(図2参照)。ルーフレールパネル12内の内側部が窓開口部となっている。両サイドメンバ12a(図1では右側のサイドメンバを示す)の内側部には、内方へ突出する支持フランジ13が形成されている。また、両ルーフリンフォース12b(図1では前側のルーフリンフォースを示す)の内側部には、内方へ突出する支持フランジ14が形成されている。また、ルーフレールパネル12内には、その上方から窓開口部を閉鎖する樹脂製のルーフパネルとしての樹脂パネル15が嵌め込まれている(図1参照)。樹脂パネル15の外周部は、支持フランジ13,14上に支持されている。
【0016】
図1に示すように、前記樹脂パネル15は、パネル本体16と枠部材18とにより構成されている。パネル本体16は、透明樹脂材からなり、車両前後方向(図1において紙面表裏方向)を長くする長方形板状に形成されている(図2参照)。なお、パネル本体16をなす透明樹脂材は、本実施例では透明なポリカーボネイト材である。また、枠部材18は、パネル本体16の下面の外周部に二色成形により積層状に一体形成されている。枠部材18は、不透明樹脂材からなり、矩形板状に形成されている。枠部材18をなす不透明樹脂材は、本実施例では着色されたポリカーボネイト材である。
また、樹脂パネル15は温度変化にともない熱伸縮する。樹脂パネル15の線膨張係数は、自動車のボデーをなす鋼板の線膨張係数よりも大きいため、相対的な変位が生じる。樹脂パネル15と支持フランジ13、14との間をスライドさせることで、前述の変位を許容する場合、樹脂パネル15の外周各部で必要となる変位量(スライド量)は、スライドする方向(スライド方向)により異なる。外周各部におけるスライド量の最大値を抑えるためには、樹脂パネル15の中心部Cに対する放射方向をスライド方向とする事が有効である。よって、本実施例では、樹脂パネル15の外周各部に対し、特に中心部Cに対する放射方向のスライドを許容することとし、この放射方向を熱伸縮方向として説明を行う。なお、熱伸縮方向は、中心部Cに対する放射方向に限らず、自動車のボデーに対して、熱伸縮によって樹脂パネルが移動する方向とする。例えば、樹脂パネル15における車両前方向端部の中央を自動車のボデーによって固定した場合、熱伸縮方向は、固定部を中心とした放射方向となる。
【0017】
前記パネル本体16の外周端には、軟質樹脂材、ゴム状材等の弾性材からなるルーフモール20が装着されている(図1参照)。ルーフモール20の内周部は、前記支持フランジ13,14と前記枠部材18との間に挟持されている。また、ルーフモール20の上部には、外側へ突出するシール部21が形成されている。シール部21の外端部は、ルーフレールパネル12の内周側に弾性的に接触している。
【0018】
前記枠部材18の下面の四隅部には、クリップ取付座23が形成されている(図2参照)。クリップ取付座23は、図3に示すように、クリップ63(後述する)を保持可能に形成されている。また、クリップ取付座23に保持されたクリップ63の係着部67を、前記ルーフレールパネル12の両ルーフリンフォース12bの支持フランジ(「ルーフレールパネル12の支持フランジ」という)14に形成された係止孔24に対して弾性変形を利用して押し込んで係着させることにより、樹脂パネル15がルーフレールパネル12にクリップ止めされる。また、支持フランジ13,14と枠部材18との間には、充填材としての機能を持つウレタン接着材25が配置され、両者を変位可能に固定している(図1参照)。
【0019】
次に、クリップ63の保持構造について説明する。図4はクリップとクリップ取付座を分解して示す斜視図、図5はクリップ取付座にクリップを保持した状態を示す斜視図、図6はクリップ取付座を示す下面図、図7はガイド突起に係るクリップの保持構造を示すもので図6のVII−VII線矢視断面に相当する断面図、図8はガイド突起に係るクリップの保持構造を示すもので図6のVIII−VIII線矢視断面に相当する断面図である。なお、図4及び図5ではクリップ取付座及びクリップが裏返した状態で表されている。
【0020】
前記クリップ63を説明する。図4に示すように、クリップ63は、樹脂製で、係合頭部65と係着部67とを同軸状に有している。係着部67は、例えばアンカー型で、前記ルーフレールパネル12の支持フランジ14の係止孔24に弾性変形を利用して係着可能に形成されている(図3参照)。係着部67の基端部(図3において上端部)には、弾性を有する円形スカート状の押付フランジ部69が形成されている。押付フランジ部69は、係着部67が係止孔24に係着されたときに支持フランジ14に対して弾性的に当接する。なお、ルーフレールパネル12は本明細書でいう「被取付部材」、「金属部品」に相当する。
【0021】
前記係合頭部65は、前記樹脂パネル15のクリップ取付座23に係合されるもので、一対をなす円板状のフランジ部71,72と、その両フランジ部71,72の間に形成された丸軸状の首部73とを同軸状に備えている(図3参照)。係着部67の反対側(図3において上側)に位置するフランジ部(「第1のフランジ部」という)71は、剛性を有する円板状に形成されている。また、係着部67側(図3において下側)に位置するフランジ部(「第2のフランジ部」という)72は、弾性を有する逆スカート状に形成されている。第2のフランジ部72の外周部は山形状に形成されている。第2のフランジ部72の内周部は、前記押付フランジ部69の基端部(内周部)と連設されており、押付フランジ部69と第2のフランジ部72とが背中合わせ状をなしている。なお、第2のフランジ部72は本明細書でいう「弾性を有するフランジ部」に相当する。
【0022】
次に、前記樹脂パネル15のクリップ取付座23(図3〜図8参照)を説明する。図4に示すように、クリップ取付座23は、前記樹脂パネル15の枠部材18から垂下された側壁部75と、側壁部75の下端部に水平状に形成された座板部76とを有する中空ボックス状に形成されている(図7参照)。座板部76には、長方形状の取付孔78が形成されている(図6参照)。取付孔78の長手方向は、前記樹脂パネル15の熱伸縮方向すなわち中心部Cに対する放射方向にほぼ整合するように設定されている(図2参照)。また、座板部76には、取付孔78の長手方向の一端部からその長手方向に対して斜めに交差する方向に向けて開口された導入溝80が形成されている(図6参照)。導入溝80は、開放側の溝幅を広くし、取付孔78側の溝幅を狭くするテーパ状に形成されている。また、導入溝80における取付孔78側の溝幅は、前記クリップ63の首部73(図7参照)に所定の通過抵抗を付与する大きさに設定されている。また、クリップ取付座23の側壁部75は、導入溝80と同一方向側の側面を開口82し、その他の面を囲繞するU字状に形成されている(図4参照)。なお、座板部76における開口82側の端縁部は、開口端部に向けて厚さが薄くなるように形成されている(図8参照)。本実施例では、座板部76における開口82側の端縁部の下面に、厚さを薄くするように傾斜面76aが形成されている。なお、座板部76における開口82側の端縁部の傾斜面76aは、端縁部の下面に限らず、端縁部の上面あるいは上下両面に形成してもよい。
【0023】
本実施例では、図2に示すように、前記樹脂パネル15において、前側(図2において左側)に配置される左右の両クリップ取付座23の導入溝80は車両後方(図2において右方)に向けられており、また、後側(図2において右側)に配置される左右の両クリップ取付座23の導入溝80は車両前方(図2において右方)に向けられている。また、各クリップ取付座23は、枠部材18に対して左右対称状にかつ前後対称状に形成されている。なお、樹脂パネル15は本明細書でいう「樹脂部品」に相当する。また、クリップ取付座23は本明細書でいう「クリップ取付部」に相当する。
【0024】
次に、前記クリップ63の係合頭部65を前記クリップ取付座23に取付ける場合を説明する。図4に示す状態から、クリップ取付座23の取付孔78に対して、クリップ63の首部73(図7参照)が導入溝80を介して導入される。このとき、第1のフランジ部71が開口82からクリップ取付座23内に差し込まれる。なお、座板部76の開口82側の端縁部が開口端部に向けて厚さが薄くなるように形成されていること、及び、第2のフランジ部72の外周部が山形状に形成されていることによって、座板部76が第1のフランジ部71と第2のフランジ部72の間に導入され易くなっている。また、第2のフランジ部72が座板部76に対して弾性的に当接した状態でスライドされる。これによって、クリップ取付座23の座板部76が第1のフランジ部71と第2のフランジ部72との間に弾性的に挟持される(図5及び図7参照)。また、首部73が取付孔78内に遊嵌されることにより、クリップ63がクリップ取付座23の座板部76に対して径方向にスライド可能とされる。また、図6において、取付孔78の中心78Pに対する首部73のセンタリング位置が二点鎖線73で示されているとともに、同センタリング位置における第2のフランジ部72が二点鎖線72で示されている。また、クリップ63のスライドにともない、取付孔78内において首部73の軸心の移動範囲が線Lで示されている。したがって、首部73の移動範囲(線L参照)に対応する範囲内において、クリップ取付座23の座板部76に対してクリップ63がスライド可能となっている。また、クリップ63のスライド可能な範囲における長手方向は、取付孔78の長手方向であって、前記樹脂パネル15の熱伸縮方向すなわち中心部Cに対する放射方向にほぼ整合している(図2参照)。
【0025】
次に、前記クリップ63を弾性的にセンタリングするガイド構造について説明する。
図6に示すように、前記クリップ取付座23の座板部76において、クリップ63の第2のフランジ部72が当接する当接面である下面には、前記取付孔78の周辺部に位置する適数個(図6では6個を示す)の半球状のガイド突起84が形成されている。これらのガイド突起84は、取付孔78の中心78Pと同心をなす円周上に等間隔すなわち60°間隔で配置されている。そして、取付孔78の長手方向に位置する2個のガイド突起84を除いた残りのガイド突起84は、取付孔78と同心をなす一円周線78C上に配置されている。これらのガイド突起84の内端部に、前記センタリング位置におけるクリップ63の第2のフランジ部72の外周部が弾性的に当接又は近接可能となっている(図7参照)。また、取付孔78の長手方向に位置する2個のガイド突起84(符号、(A),(B)を付す)は、一円周線78Cから径方向外方へずれた位置に設定されている。これによって、一円周線78C上に配置された4個のガイド突起84が、樹脂パネル15の熱伸縮方向へのクリップ63の所定量のスライドを妨げないように配置されている。また、クリップ取付座23の座板部76に対するクリップ63の取付性を考慮して、クリップ63に対してスライド方向に所定以上の外力が加えられたときは、第2のフランジ部72がその弾性変形を利用して乗り越えることができるようにガイド突起84の突出高さが設定されている。なお、ガイド突起84は本明細書でいう「ガイド手段」に相当する。
【0026】
前記取付孔78の長手方向に位置する2つのガイド突起84(A),84(B)のうち、前記樹脂パネル15の熱伸縮方向の伸長側(図8において右側)に位置するガイド突起84(A)には、樹脂パネル15の熱伸縮方向の伸長方向へ過度にスライドしようとするクリップ63の第2のフランジ部72の外周部が弾性的に当接可能となっている。また、ガイド突起84(A)は、クリップ63が第2のフランジ部72の弾性反力をもってセンタリング位置へ復帰可能とする位置に設定されている。このガイド突起84(A)によって、第2のフランジ部72が、取付孔78の長手方向伸長側におけるガイド突起84を乗り越えて取付孔78の奥端に配置されることを防止する。そのため、クリップ63をクリップ取付座23に取付け時に、導入溝80をクリップ63の首部73が通過させる際、過度に力が入り、第2のフランジ部72が、取付孔78の長手方向におけるガイド突起84を乗り越えても、ガイド突起84(A)に第2のフランジ部72の外周が弾性的に当接するため、クリップ63をセンタリング位置に配置させることができる。なお、ガイド突起84(A)は本明細書でいう「伸長側の規制突起」に相当する。
【0027】
また、前記取付孔78の長手方向に位置するもう1つのガイド突起すなわち前記樹脂パネル15の熱伸縮方向の収縮側(図8において左側)に位置するガイド突起84(B)には、樹脂パネル15の熱伸縮方向の収縮方向へ過度にスライドしようとするクリップ63の第2のフランジ部72の外周部が弾性的に当接可能となっている。また、ガイド突起84(B)は、クリップ63が第2のフランジ部72の弾性反力をもってセンタリング位置へ復帰可能とする位置に設定されている。このガイド突起84(B)によって、第2のフランジ部72が、取付孔78の長手方向収縮側におけるガイド突起84を乗り越えて取付孔78の導入端に配置されることを防止する。そのため、樹脂パネル15が熱収縮し、第2のフランジ部72がガイド突起84を乗り越え首部73が導入溝80方向に近づいたとしても、ガイド突起84(B)に第2のフランジ部72の外周が弾性的に当接するため、クリップ63が導入溝80から抜け外れることを防止することができる。なお、ガイド突起84(B)は本明細書でいう「収縮側の規制突起」に相当する。
【0028】
前記したクリップ63の保持構造によると、クリップ63の首部73がクリップ取付座23の座板部76の取付孔78に対して導入溝80を介して導入されることにより、クリップ取付座23に対してクリップ63がスライド可能に保持される。クリップ63の第1のフランジ部71及び第2のフランジ部72は、第2のフランジ部72が有する弾性によりクリップ取付座23の座板部76を弾性的に挟持する。また、クリップ取付座23の座板部76の下面に設けられたガイド手段としてのガイド突起84(84(A),84(B)を含む)は、第2のフランジ部72が有する弾性を利用してクリップ63を弾性的にセンタリングする(図7参照)。したがって、クリップ取付座23の材質が硬質の樹脂であった場合にも、クリップ63のスライド可能な範囲を狭くすることなく、クリップ63を弾性的にセンタリングすることができる。
【0029】
また、ルーフレールパネル12の支持フランジ14の係止孔24に、樹脂パネル15のクリップ取付座23に設けたクリップ63を係着する際(図3参照)、係止孔24に対してクリップ63が位置ずれ状態にあっても、クリップ63の第2のフランジ部72が有する弾性を利用して、係止孔24に対するクリップ63の位置ずれを吸収することができる。これにより、樹脂パネル15をルーフレールパネル12の支持フランジ14に容易かつ確実にクリップ止めすることができる。
【0030】
また、ガイド手段としてのガイド突起84(84(A),84(B)を含む)は、クリップ63の弾性を有する第2のフランジ部72が当接するクリップ取付座23の座板部76の下面に設けられかつそのフランジ部72の外周部が弾性的に当接する。したがって、クリップ取付座23の座板部76の下面にガイド突起84を設けるといった簡単な構成によってガイド手段を構成することができる。
【0031】
また、クリップ取付座23が樹脂パネル15に設けられ、取付孔78が樹脂パネル15の熱伸縮方向へ延びており、ガイド突起84が樹脂パネル15の熱伸縮方向へのクリップ63のスライドを妨げないように配置されている(図2参照)。したがって、樹脂パネル15の熱伸縮方向へのクリップ63のスライド可能な範囲を拡大することができる。このことは、熱伸縮量が大きく、ルーフレールパネル12の支持フランジ14の係止孔24に対するクリップ63の位置ずれのばらつきが大きい樹脂パネル15におけるクリップ63の保持構造として有効である。
【0032】
また、導入溝80が、取付孔78の長手方向の端部からその長手方向に対して交差する方向に向けて開口されている(図6参照)。したがって、クリップ63の首部73が取付孔78内から導入溝80側へ外れることを防止することができる。なお、導入溝80は、取付孔78の長手方向の端部からその長手方向に沿って開口してもよいし、取付孔78の長手方向の端部又は中間部からその長手方向に沿って直交する方向に向けて開口してもよく、その開口形態は適宜変更することができる。
【0033】
また、クリップ63の弾性を有する第2のフランジ部72が当接するクリップ取付座23の座板部76の下面に、樹脂パネル15の熱伸縮方向の伸長方向へ過度にスライドしようとするクリップ63の第2のフランジ部72の外周部が弾性的に当接するガイド突起84(A)が設けられている(図6及び図8参照)。このため、樹脂パネル15の熱伸縮方向の伸長方向へのクリップ63の過度のスライドを防止することができる。
【0034】
また、クリップ63の弾性を有する第2のフランジ部72が当接するクリップ取付座23の座板部76の下面に、樹脂パネル15の熱伸縮方向の収縮方向へ過度にスライドしようとするクリップ63の第2のフランジ部72の外周部が弾性的に当接するガイド突起84(B)が設けられている(図6及び図8参照)。このため、樹脂パネル15の熱伸縮方向の収縮方向へのクリップ63の過度のスライドを防止することができる。また、ガイド突起84(B)により、クリップ63の抜け外れすなわち首部73が取付孔78から導入溝80側へ抜け外れることも防止することができる。
【0035】
前記実施例の変更例について説明する。なお、図9は変更例1に係るクリップ取付座を示す下面図、図10は変更例2に係るクリップの保持構造を示す断面図、図11は変更例3に係るクリップの保持構造を示す断面図、図12は変更例4に係るクリップの保持構造を示す断面図、図13は変更例5に係るクリップの保持構造を示す断面図、図14はガイド溝を示す断面図である。
[変更例1]
変更例1は、図9に示すように、前記実施例におけるクリップ取付座23の座板部76の取付孔78(図6参照)を円形孔からなる取付孔(符号、86を付す)に変更している。また、適数個(図9では6個を示す)のガイド突起84を取付孔86と同心をなす一円周線86C上にほぼ等間隔で配置している。
【0036】
[変更例2]
変更例2は、図10に示すように、前記実施例におけるクリップ取付座23の座板部76の取付孔78(図6参照)を円形孔からなる取付孔(符号、88を付す)に変更している。また、前記実施例におけるガイド突起84、ガイド突起84(A)及びガイド突起84(B)を省略している。その代わりに、クリップ63の第1のフランジ部71が当接する座板部76の上面に、下方に向かって孔径を小さくするテーパ状のガイド面90を取付孔88と同心状に形成したものである。ガイド面90の下端開口は、取付孔88の上端開口と連続している。また、ガイド面90の上端開口は、第1のフランジ部71の外径より大きい孔径で形成されている。したがって、クリップ取付座23の座板部76の上面に設けられたガイド面90に対して、クリップ63の第2のフランジ部72が有する弾性を利用して、第1のフランジ部71の下面の外周縁が摺動可能に当接することにより、クリップ63を弾性的にセンタリングすることができる。なお、ガイド面90は本明細書でいう「ガイド手段」に相当する。
また、前記変更例2において、取付孔88を前記実施例と同様な長方形状に形成し、ガイド面90を取付孔88の長手方向に沿って形成しても良い。この場合、クリップ63の第1のフランジ部71が当接する座板部76の上面に、下方に向かって孔径を小さくするテーパに加えて、取付孔88の長手方向において、端部から中心に向けて孔径を小さくするテーパ状に形成することで、クリップ63をセンタリングさせることができる。
【0037】
[変更例3]
変更例3は、図11に示すように、前記変更例2(図10参照)におけるガイド面90を省略している。その代わりに、クリップ63の第1のフランジ部71の下面の外周部に、テーパ状のガイド面92を同心状に形成したものである。ガイド面92の下端外径は、取付孔88の孔径より小さい外径で形成されている。したがって、クリップ取付座23の座板部76の取付孔88の上端開口に対して、クリップ63の第2のフランジ部72が有する弾性を利用して、クリップ63の第1のフランジ部71のガイド面92が摺動可能に当接することにより、クリップ63を弾性的にセンタリングすることができる。なお、ガイド面92は本明細書でいう「ガイド手段」に相当する。
【0038】
[変更例4]
変更例4は、図12に示すように、前記変更例2(図10参照)におけるガイド面90を省略している。その代わりに、クリップ63の第2のフランジ部72における山形状の外周部の頂部が当接する座板部76の下面に、上方に向かって孔径を小さくするテーパ状のガイド面94を取付孔88と同心状に形成したものである。ガイド面94の上端開口は、取付孔88の下端開口と連続している。また、ガイド面94の下端開口は、第2のフランジ部72の外径より大きい孔径で形成されている。したがって、クリップ取付座23の座板部76の下面に設けられたガイド面94に対して、クリップ63の第2のフランジ部72が有する弾性を利用して、第2のフランジ部72における山形状の外周部の頂部が摺動可能に当接することにより、クリップ63を弾性的にセンタリングすることができる。なお、ガイド面94は本明細書でいう「ガイド手段」に相当する。
また、前記変更例4において、前記変更例2と同様に、取付孔88を前記実施例と同様な長方形状に形成し、ガイド面94を取付孔88の長手方向に沿って形成しても良い。この場合、クリップ63の第2のフランジ部72における山形状の外周部の頂部が当接する座板部76の下面に、上方に向かって孔径を小さくするテーパに加えて、取付孔88の長手方向において、端部から中心に向けて孔径を小さくするテーパ状に形成することで、クリップ63をセンタリングさせることができる。
【0039】
[変更例5]
変更例5は、図13に示すように、前記変更例4(図12参照)におけるガイド面94を省略している。その代わりに、クリップ63の第2のフランジ部72における山形状の外周部の頂部が当接する座板部76の下面に、円環状のガイド溝96を取付孔88と同心状に形成したものである。ガイド溝96は、図14に示すように、断面逆V字溝状に形成されており、外周側のガイド面97と内周側のガイド面98とを有している。外周側のガイド面97は、上方に向かって溝径を小さくするテーパ状に形成されている。また、内周側のガイド面98は、上方に向かって溝径を大きくするテーパ状に形成されている。また、ガイド溝96の溝底部は、クリップ63の第2のフランジ部72における山形状の外周部の頂部とほぼ同径で形成されている(図3参照)。したがって、クリップ取付座23の座板部76の下面に設けられたガイド溝96のガイド面97又はガイド面98に対して、クリップ63の第2のフランジ部72が有する弾性を利用して、第2のフランジ部72における山形状の外周部の頂部が摺動可能に当接することにより、クリップ63を弾性的にセンタリングすることができる。なお、ガイド溝96のガイド面97,98は本明細書でいう「ガイド手段」に相当する。
【0040】
本発明は上記した実施例及び変更例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、前記実施例の樹脂パネル15の取付けに係るクリップ63の保持構造に限らず、車両のボディパネル、ドアパネル等の金属部品に対するバンパ、スポイラー、サイドモール、ドアプロテクタモール等の樹脂部品の取付けに係るクリップの保持構造にも適用することができる。また、本発明は、車両に限らず、種々のクリップの保持構造として適用することができる。また、クリップ取付座23の座板部76の取付孔78は、長方形孔に限らず、正方形孔、丸孔等でもよく、適宜変更することができる。また、クリップ63の第1のフランジ部71は、弾性を有するスカート状に形成し、クリップ取付座23の座板部76の上面に弾性的に当接する弾性を有するフランジ部に変更することもできる。また、クリップ63の第1のフランジ部71を弾性を有するフランジ部に変更した場合、第2のフランジ部72は、弾性を有するフランジ部でもよいし、剛性を有するフランジ部に変更してもよい。また、クリップ63の各フランジ部71,72は、円板状に限らず、角板状でもよい。また、クリップ63の首部73は、丸軸状に限らず、角軸状でもよい。また、クリップ63の係着部67は、被取付部材(ルーフレールパネル12の支持フランジ14)の係止孔24に係着可能であればよく、前記実施例のアンカー型に限らず、S字型、カヌー型等でもよい。また、クリップ63のガイド突起84の個数、形状、位置等は適宜変更することができる。例えば、ガイド突起84の形状は、半球状の他、柱状、錐状、円弧状、直線状等に変更することができる。導入溝80の形状、位置についても、前記実施例に限らず、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
15…樹脂パネル(樹脂部品)
23…クリップ取付座(クリップ取付部)
63…クリップ
64…保持構造
71…第1のフランジ部
72…第2のフランジ部
73…首部
78…取付孔
86…取付孔
88…取付孔
80…導入溝
84…ガイド突起(ガイド手段)
84(A)…ガイド突起(ガイド手段、伸長側の規制突起)
84(B)…ガイド突起(ガイド手段、収縮側の規制突起)
90…ガイド面(ガイド手段)
92…ガイド面(ガイド手段)
94…ガイド面(ガイド手段)
97…ガイド面(ガイド手段)
98…ガイド面(ガイド手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップの一対のフランジ部の間に設けられた首部が、クリップ取付部に設けられた取付孔に対して導入溝を介して導入されることにより、クリップ取付座に対してクリップをスライド可能に保持するクリップの保持構造であって、
前記クリップの一対のフランジ部は、少なくとも一方のフランジ部が有する弾性により前記クリップ取付部を弾性的に挟持可能とされ、
前記クリップ取付部と前記フランジ部との当接面の間には、前記フランジ部が有する弾性を利用して前記クリップのセンタリングをなすガイド手段が設けられている
ことを特徴とするクリップの保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップの保持構造であって、
前記ガイド手段は、前記クリップの弾性を有するフランジ部が当接する前記クリップ取付部の当接面に設けられかつ該フランジ部の外周部が弾性的に当接するガイド突起であることを特徴とするクリップの保持構造。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップの保持構造であって、
前記クリップ取付部が樹脂部品に設けられ、
前記取付孔が前記樹脂部品の熱伸縮方向へ延びており、
前記ガイド突起が前記樹脂部品の熱伸縮方向への前記クリップのスライドを妨げないように配置されていることを特徴とするクリップの保持構造。
【請求項4】
請求項3に記載のクリップの保持構造であって、
前記導入溝が、前記取付孔の長手方向の端部からその長手方向に対して交差する方向に向けて開口されていることを特徴とするクリップの保持構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のクリップの保持構造であって、
前記クリップの弾性を有するフランジ部が当接する前記クリップ取付部の当接面に、前記樹脂部品の熱伸縮方向の伸長方向へ過度にスライドしようとする前記クリップのフランジ部が弾性的に当接する伸長側の規制突起が設けられていることを特徴とするクリップの保持構造。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1つに記載のクリップの保持構造であって、
前記クリップの弾性を有するフランジ部が当接する前記クリップ取付部の当接面に、前記樹脂部品の熱伸縮方向の収縮方向へ過度にスライドしようとする前記クリップのフランジ部が弾性的に当接する収縮側の規制突起が設けられていることを特徴とするクリップの保持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−80534(P2011−80534A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233120(P2009−233120)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】