説明

クロックデータ再生回路

【課題】複数のVCO間の発振周波数のばらつきを補償し、ジッタを低減する。
【解決手段】第1の発振回路および第2の発振回路はそれぞれ2つの周波数制御端子を備え、それぞれの一方の周波数制御端子に周波数制御信号Aを入力する構成であり、第2の発振回路の他方の周波数制御端子に固定の周波数制御信号Bを与え、第1の発振回路および第2の発振回路の各発振周波数を比較し、その周波数誤差に応じた周波数制御信号Cを第1の発振回路の他方の周波数制御端子に与えるばらつき補償回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力データと周波数および位相が同期したクロックを抽出し、このクロックにより入力データのリタイミングを行うクロックデータ再生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Hpme) を実現する手法として開発が進められているPON(Passive Optical Network) システムではバーストデータを扱う。したがって、PONシステムでは、非同期に受け取るバーストデータに対し瞬時に位相同期を確立してクロックを抽出し、このクロックに同期してデータをリタイミングして送り出すクロックデータ再生回路(CDR:Clock Data Recovery)が必須である。
【0003】
図4は、従来のクロックデータ再生回路の第1の構成例を示す(特許文献1,非特許文献1)。
図において、クロックデータ再生回路は、遅延回路11、フリップフロップ回路(FF)12、ゲーティング回路13、ゲート付き電圧制御発振器(G−VCO)14から構成される。G−VCO14の位相制御入力端子には、ゲーティング回路13を介してバーストオンのタイミングで入力データが入力され、G−VCO14の発振位相が入力データの位相に合うように制御される。発振位相が制御されたG−VCO14の出力は、再生クロックとして取り出されるとともに、FF12のクロック端子に入力する。FF12のデータ入力端子には遅延回路11を介して入力データが入力され、クロック端子に入力する再生クロックでリタイミングした再生データが出力される。
【0004】
図5は、従来のクロックデータ再生回路の第2の構成例を示す(特許文献1,非特許文献1)。
本構成例は、図4の回路構成に加えて、G−VCO14と同じ回路構成のサブVCO15を備える。サブVCO15の出力は周波数比較器16に入力され、入力データのデータレートと等しい周波数またはその周波数の整数分の1の周波数の参照クロックと周波数比較され、その周波数誤差に応じた周波数制御信号でサブVCO15の発振周波数を制御するPLL(Phase-Locked Loop) が構成される。この参照クロックとサブVCO15を同期させる周波数制御信号はG−VCO14の周波数制御端子にも入力され、G−VCO14とサブVCO15の発振周波数が同じになるように制御される。
【0005】
このような構成により、G−VCO14は、入力データが入力されていないときでもそのデータレートと同じ周波数で発振を継続し、入力データが入力されたときには位相のみを合せるだけで、入力データと再生クロックの位相同期を瞬時に確立させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−181000号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M.Nogawa, et al.,"A 10 Gb/s Burst-Mode CDR IC in 0.13 μm CMOS",Digest of Technical Papers, ISSCC 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図5に示す従来のクロックデータ再生回路において、G−VCO14とサブVCO15が同一チップ内、同一の回路構成であっても、実際には素子のばらつき、電流値の違い、温度の不均一等のさまざまな要因により、同じ周波数制御信号を与えても双方の発振周波数に誤差が生じる。この発振周波数の誤差により、入力データに対してG−VCO14の再生クロックの位相がずれていくとそれがジッタの原因になる。
【0009】
本発明は、複数のVCO間の発振周波数のばらつきを補償し、ジッタを低減することができるクロックデータ再生回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、データ信号と周波数および位相が同期した再生クロックを出力する第1の発振回路と、第1の発振回路と同一周波数のクロック信号を出力する第2の発振回路と、第2の発振回路が出力するクロック信号と参照クロックを周波数比較し、その周波数誤差に応じた周波数制御信号Aで第2の発振回路および第1の発振回路の発振周波数を制御するPLL手段とを備えたクロックデータ再生回路において、第1の発振回路および第2の発振回路はそれぞれ2つの周波数制御端子を備え、それぞれの一方の周波数制御端子に周波数制御信号Aを入力する構成であり、第2の発振回路の他方の周波数制御端子に固定の周波数制御信号Bを与え、第1の発振回路および第2の発振回路の各発振周波数を比較し、その周波数誤差に応じた周波数制御信号Cを第1の発振回路の他方の周波数制御端子に与えるばらつき補償回路を備える。
【0011】
本発明のクロックデータ再生回路において、ばらつき補償回路が第1の発振回路および第2の発振回路の発振周波数を制御するときに、第1の発振回路へデータ信号の入力を遮断する選択回路を備える。
【0012】
本発明のクロックデータ再生回路において、参照クロックまたは第2の発振回路から出力されるクロック信号の少なくとも一方の周波数を分周する分周器を備える。
【0013】
本発明のクロックデータ再生回路において、第1の発振回路および第2の発振回路は、奇数個のインバータをエミッタフォロワ回路を介してリング状に接続した構成であり、少なくとも2つのエミッタフォロワ回路の出力端と接地間にそれぞれ可変容量素子を接続し、第1の発振回路の可変容量素子の容量制御端子にそれぞれ周波数制御信号Aと周波数制御信号Bを入力し、第2の発振回路の可変容量素子の容量制御端子にそれぞれ周波数制御信号Aと周波数制御信号Cを入力する構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクロックデータ再生回路は、第1の発振回路と第2の発振回路の特性差による発振周波数のばらつきを自動的に補償することができる。これにより、2つの発振回路の特性のばらつきに左右されることなく、低ジッタの再生クロックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1の構成例を示す図である。
【図2】G−VCO14およびサブVCO15の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施例2の構成例を示す図である。
【図4】従来のクロックデータ再生回路の第1の構成例を示す図である。
【図5】従来のクロックデータ再生回路の第2の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1の構成例を示す。
図において、遅延回路11、フリップフロップ回路(FF)12、ゲーティング回路13、ゲート付き電圧制御発振器(G−VCO)14、サブVCO15、周波数比較器16は、図4に示す従来のクロックデータ再生回路と同様の接続構成であり、G−VCO14とサブVCO15は参照クロックに周波数同期するとともに、入力データに位相同期した再生クロックを出力する。
【0017】
本実施例のサブVCO15は、PLLを構成する周波数比較器16から出力される周波数制御信号Aと、ばらつき補償回路17から出力される固定値の周波数制御信号Bを入力する2つの周波数制御端子を備え、参照クロックに周波数同期するように発振周波数が制御される。
【0018】
本実施例のG−VCO14は、周波数比較器16から出力される周波数制御信号Aと、ばらつき補償回路17から出力される周波数制御信号Cを入力する2つの周波数制御端子を備える。ばらつき補償回路17は、G−VCO14とサブVCO15の各出力を分岐して入力し、双方の発振周波数を比較する。その発振周波数の誤差は、周波数制御信号CとしてG−VCO14に入力され、G−VCO14とサブVCO15の発振周波数が同じになるように制御される。
【0019】
また、ゲーティング回路13とG−VCO14との間に選択回路18を挿入し、ばらつき補償回路17がG−VCO14とサブVCO15の発振周波数を制御する間は、選択回路18に対してG−VCO14へのデータ入力を遮断する制御を行う。
【0020】
本実施例の動作例について説明する。ばらつき補償回路17が動作を開始すると、まずG−VCO14へのデータ入力を遮断するように選択回路18に切替信号を出力する。次に、ばらつき補償回路17はサブVCO15に固定の周波数制御信号Bを与え、サブVCO15の発振周波数が参照クロックに同期し、安定が見込めるまで待機する。サブVCO15の発振周波数が安定すると、ばらつき補償回路17はG−VCO14とサブVCO15の双方の発振周波数を比較し、その発振周波数の誤差を補償する周波数制御信号Cを生成してG−VCO14に与える。これにより、G−VCO14は、周波数比較器16から入力する周波数制御信号Aと、ばらつき補償回路17から入力する周波数制御信号Cにより、サブVCO15の発振周波数と同じになるように制御される。最後に、ばらつき補償回路17はG−VCO14へのデータ入力を行うように選択回路18に切替信号を出力する。
【0021】
図2は、G−VCO14およびサブVCO15の構成例を示す。
図において、G−VCO14およびサブVCO15は奇数個のインバータをエミッタフォロワ回路EFを介してリング状に接続したリングVCOとし、エミッタフォロワ回路EFの出力端と接地間に可変容量素子(例えばMOSバラクタ)を接続した構成である。エミッタフォロワ回路EFおよび可変容量素子は少なくとも2つあり、可変容量素子の容量可変端子に周波数制御信号Aと周波数制御信号BまたはCを接続する。これにより、複数の制御電圧を与えることができるVCOを構成することができる。また、複数の可変容量素子のサイズが異なるものを用いることにより、各制御電圧に対する発振周波数の感度を個別に設定することができる。
【実施例2】
【0022】
図3は、本発明の実施例2の構成例を示す。
本実施例の特徴は、実施例1の構成において、サブVCO15の出力を分周器21で1/nに分周し、参照クロックを分周器22で1/mに分周し、その後に周波数比較器16で周波数差を検出するところにある。nおよびmは整数である。
【0023】
サブVCO15の発振周波数が高い場合には、分周した後に参照クロックと比較することにより、周波数比較器16に要求される動作速度を緩和することができる。この場合、参照クロックの周波数は、入力データのデータレートのm/nの周波数に設定する。また、サブVCO15の発振周波数を参照クロックと異なる任意の周波数とすることができる。
【符号の説明】
【0024】
11 遅延回路
12 フリップフロップ回路(FF)
13 ゲーティング回路
14 ゲート付き電圧制御発振器(G−VCO)
15 サブVCO
16 周波数比較器
17 ばらつき補償回路
18 選択回路
21 分周器(1/n)
22 分周器(1/m)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号と周波数および位相が同期した再生クロックを出力する第1の発振回路と、
前記第1の発振回路と同一周波数のクロック信号を出力する第2の発振回路と、
前記第2の発振回路が出力するクロック信号と参照クロックを周波数比較し、その周波数誤差に応じた周波数制御信号Aで前記第2の発振回路および前記第1の発振回路の発振周波数を制御するPLL手段と
を備えたクロックデータ再生回路において、
前記第1の発振回路および前記第2の発振回路はそれぞれ2つの周波数制御端子を備え、それぞれの一方の周波数制御端子に前記周波数制御信号Aを入力する構成であり、
前記第2の発振回路の他方の周波数制御端子に固定の周波数制御信号Bを与え、前記第1の発振回路および前記第2の発振回路の各発振周波数を比較し、その周波数誤差に応じた周波数制御信号Cを前記第1の発振回路の他方の周波数制御端子に与えるばらつき補償回路を備えた
ことを特徴とするクロックデータ再生回路。
【請求項2】
請求項1に記載のクロックデータ再生回路において、
前記ばらつき補償回路が前記第1の発振回路および前記第2の発振回路の発振周波数を制御するときに、前記第1の発振回路へ前記データ信号の入力を遮断する選択回路を備えた
ことを特徴とするクロックデータ再生回路。
【請求項3】
請求項1に記載のクロックデータ再生回路において、
前記参照クロックまたは前記第2の発振回路から出力されるクロック信号の少なくとも一方の周波数を分周する分周器を備えた
ことを特徴とするクロックデータ再生回路。
【請求項4】
請求項1に記載のクロックデータ再生回路において、
前記第1の発振回路および前記第2の発振回路は、奇数個のインバータをエミッタフォロワ回路を介してリング状に接続した構成であり、少なくとも2つのエミッタフォロワ回路の出力端と接地間にそれぞれ可変容量素子を接続し、前記第1の発振回路の可変容量素子の容量制御端子にそれぞれ前記周波数制御信号Aと前記周波数制御信号Bを入力し、前記第2の発振回路の可変容量素子の容量制御端子にそれぞれ前記周波数制御信号Aと前記周波数制御信号Cを入力する構成である
ことを特徴とするクロックデータ再生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−268223(P2010−268223A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117831(P2009−117831)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】