説明

グリセロールを含有する改変された絹フィルム

本発明は、非水溶性で、延性で、柔軟である絹フィブロインフィルムを調製するための組成物および方法を提供する。絹フィルムは、絹フィブロインおよび約10%〜約50%(w/w)のグリセロールを含み、かつ全体的に水性の処理により調製される。延性絹フィルムは、該フィルムからグリセロールを抽出する段階、およびこれを再乾燥する段階によりさらに処理され得る。様々な医学的用途のためにグリセロール改変絹フィルムの中に活性物質を包埋してもよいし、またはその表面に沈着させてもよい。フィルムは三次元構造で成形してもよいし、または標識もしくはコーティングとして支持表面上に配置してもよい。本発明のグリセロール改変絹フィルムは、組織工学、医療用装置またはインプラント、薬物送達、および食べられる薬品ラベルまたは食品ラベルなどの様々な用途において有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合衆国政府による支援
本発明は、米国国立衛生研究所により給付される研究助成金番号第EB002520号および米国空軍科学研究局により給付される研究助成金番号第FA9550-07-1-0079号に基づく合衆国政府の支援の下になされたものである。米国連邦政府は本発明に対する一定の権利を保有するものである。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2008年10月9日出願の米国仮特許出願第61/104,135号の恩典を主張するものである。
【0003】
発明の分野
本発明は、グリセロールを含有しかつ機械的特性の向上した絹フィブロインフィルムを調製するための組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
絹フィブロインは優れたフィルム形成能を有し、人体における使用に対する適合性も有する。絹フィブロインフィルムは主としてランダムコイルタンパク質構造からなるために、更なる操作や処理を行わなくても水に溶解する。このタンパク質の構造上の特徴は、ランダムコイルからβシート構造へと、機械的伸展、極性有機溶媒への浸漬、水蒸気中での硬化を含む幾つかの処理によって変化させることができる。この構造転移によって水への不溶性がもたらされ、したがってこの材料の使用に関する広範な生体医療用途および他の用途における選択肢が与えられる。しかしながら一部の純粋な絹フィブロインフィルムは時間が経つにつれて乾燥状態では固く脆くなる傾向があり、優れた引張強度を示すが延性は低くなる。絹フィブロインフィルムの物理的および機械的な特性を改変して機械的特性を改善することならびに生体医療用途および他の用途のためのより柔軟な絹フィブロインベースのシステムを提供することが未だ求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、グリセロールを含まない絹フィブロインフィルムと比較して独特な特性を有する、絹フィブロインおよびグリセロールを含むフィルムを提供する。より詳細には、可塑剤としてグリセロールを使用または添加することによって水に対する溶解度および生体適合性が向上する。更に、絹フィブロインを水中で処理することにより、生体適合性および、生物活性化合物をその機能を喪失させずに充填する性能の両方が向上し、これらの生体材料に「グリーンケミストリー」の価値が付与される。例えば、グリセロール濃度が30%(w/w)よりも高い絹フィブロインとグリセロールとのブレンドをフィルムにキャストすることで、絹の二次構造がランダムコイルからαヘリックス構造に転換し、水和時の絹の溶解が防止され、独特なフィルムナノ構造形態が与えられ、乾燥(キャストしたままのフィルム)環境および湿潤(グリセロールの浸出後)環境におけるフィルム柔軟性が向上し、かつ、細胞に対する生体適合性が維持された。機械的には、グリセロールは絹フィブロイン鎖水和の際に水を置換し得、これによりランダムコイルまたはβシートの構造とは対照的にヘリックス構造の初期の安定化がもたらされる。フィルムの構造、非水溶性および機能の安定化に対してグリセロールが与える影響は、グリセロール濃度が約20重量%よりも高いと生じるようである。材料の処理加工においてグリセロールを絹フィブロインと組み合わせて使用することにより、この繊維状タンパク質によって実現可能な機能的特徴の幅が広がり、生体材料および装置の用途における潜在的な有用性を有するより柔軟性の高いフィルムの形成が可能となる。
【0006】
本発明は、完全に水中でのプロセスによって調製される、絹フィブロインおよび約10%(w/w)〜約50%(w/w)のグリセロールを含む絹フィルムを提供し、該絹フィルムは、延性を有するとともに実質的に非水溶性である。本発明の絹/グリセロールブレンドフィルムの多くの態様は、必要ならばメタノール処理または水アニール後に、グリセロールを含まない絹フィルムよりも高い延性を示す。理論に束縛されずに言うならば、絹フィブロインフィルム中のグリセロールは、絹フィブロインのαヘリックス構造を安定化させると考えられる。したがって一態様では、延性を有する絹フィブロインフィルムは、絹フィルムからグリセロールを抽出し、フィルムを再乾燥することによって、αヘリックス構造からβシート構造へと転換させることができる。
【0007】
一態様では、グリセロールにより改変した絹フィルムを含む組成物は二次元または三次元の組織工学用構築物として使用することが可能であり、かつ更に少なくとも1種類の活性物質を更に含んでもよい。このような組織工学で作製される(tissue engineered)構築物は、器官修復、器官置換、または心筋もしくは角膜組織などの他の再生組織材料に使用することができる。三次元的な組織工学の一態様は、装置またはインプラント、例えば歯科用インプラントを囲むように、延性を有する絹/グリセロールフィルムを巻くか成形し、該フィルムを乾燥させることによって行われうる。絹/グリセロールブレンドを形成させるか、またはフィルムを折り畳むか成形して、スポンジもしくはブロックまたは他の三次元構造とすることができる。必要に応じ、この後、絹からグリセロールを浸出させることができる。このように、絹/グリセロール延性フィルムによって医療用装置、組織工学で作製される材料またはインプラントなどの生体医療用材料の表面をコーティングすることにより、絹フィルムをこうした構築物に対するコーティングとして使用することもできる。このような改変絹フィルムによるコーティングによって適合性が向上するとともに基材の外形との形状一致性が高くなる。
【0008】
別の態様では、グリセロール含有絹フィブロインフィルムは、絹フィブロインナノスフェアまたはマイクロスフェアなどの絹ベースの構造を含み、任意で活性物質を含有する、複合材料である。更に絹複合材料は、医療用のインプラントまたは装置の三次元構造のような絹ベースの複合支持表面を含んでもよく、その表面上に延性グリセロール/絹フィルムが成形される。
【0009】
また本発明の態様は、絹フィブロイン溶液をグリセロールとブレンドする段階であって、絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜50%(w/w)である段階;該絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および、該フィルムを乾燥する段階によって、実質的に非水溶性の絹フィルムを調製する方法も提供する。
【0010】
フィルムのキャスト及び乾燥に先立って絹フィブロイン溶液を少なくとも1種類の活性物質及びグリセロールとブレンドすることによって、延性絹フィルムに少なくとも1種類の活性物質を包埋してもよい。同様に細胞または組織を絹/グリセロールブレンドフィルム中に包埋してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ブレンドフィルムからの絹及びグリセロールの溶解についてのデータを示す。各群間の有意差(P<0.01)。データは平均±標準偏差(n=4)を表す。
【図2】図2A〜図2Cは、グリセロール含有量の異なるブレンドフィルムにおける絹二次構造のFTIRによる測定を示す。図2A:フィルムキャストの直後のブレンドフィルム。図2B:90%(v/v)のメタノールによる処理を1時間行った後のブレンドフィルム。図2C:水による処理を1時間行った場合と行わない場合の20%(w/w)グリセロールフィルム。各群間の有意差(P<0.01)。データは平均±標準偏差(n=4)を表す。
【図3】図3A〜図3Dは、グリセロール含有量の異なるブレンドフィルムの機械的特性を示す。図3A、引張強度。図3B、破断点伸び率。図3C、乾燥ブレンドフィルムの引張係数。図3D、水による処理を1時間行った後の湿潤ブレンドフィルムの引張係数。各群間の有意差(P<0.01)。データは平均±標準偏差(n=5)を表す。
【図4】図4A〜4Dは、ブレンドフィルムのSEM画像を示す。図4A、グリセロール含有量10%(w/w)。図4B、グリセロール含有量20%(w/w)。図4C、グリセロール含有量30%(w/w)で1時間の水処理。図4D、グリセロール含有量0%で1時間のメタノール処理。スケールバー=200nm。
【図5】図5A〜5Dは、30%(w/w)のグリセロールを含有する、水処理を行った絹フィルムのナノフィラメント構造を示す顕微鏡写真である。図5A及び5Dは該フィルムの異なる領域を示している。図5B、図5Aの高倍率写真。図5C、図5Aの側面図。図5E、図5Dの高倍率写真。スケールバー=200nm(図5A、5C、5D);100nm(5B、5E)。
【図6】図6A及び6Bは、異なる表面上における線維芽細胞の付着及び増殖を表す。図6Aは、30%(w/w)グリセロール/絹のフィルム、純粋な絹のフィルム、および組織培養用プラスチック(TCP)上で培養した線維芽細胞の顕微鏡画像を示す。図6Bは、異なるフィルム上における線維芽細胞の付着を示す。図6Cは、異なるフィルム上における線維芽細胞の増殖を示す。データは平均±標準偏差(n=6)を表す。バー=50μm。
【図7】グリセロールがブレンドされた絹フィルムにおける絹の構造転移を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明は、本明細書において説明される特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、およびそれ自体として変化し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明する目的のためだけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0013】
本明細書においておよび添付の特許請求の範囲において使用される際、文脈で明らかに特記されない限り、単数形は複数の言及を含み、逆もまた同様である。操作例および特記される箇所を除いて、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表すすべての数字は、あらゆる場合において「約」という用語で修飾されると理解されたい。
【0014】
特定されるすべての特許および他の刊行物は、例えば、本発明と関連して使用されたそのような刊行物において説明される専門用語を説明および開示する目的のために、参照により本明細書に明白に組み入れられる。これらの刊行物は、本願の出願日に先行する開示に関してのみ提供される。この点において、いずれも、先行発明の長所によりまたは任意の他の理由のために本発明者らがそのような開示に先行する権利を与えられないとの承認として解釈されるべきではない。これらの日付に関する記載または文書の内容に関する説明の全ては、出願人が入手可能である情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性に関するいかなる承認となるものでもない。
【0015】
特記されない限り、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者に一般に理解されるものと同一の意味を有する。任意の公知の方法、装置、および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、この点において該方法、装置、および材料が本明細書で説明される。
【0016】
絹フィブロインは、優れたフィルム形成能を有し、人体における使用にもまた適合性である。Altman et al., 24 Biomats. 401-16 (2003);Vepari & Kaplan, 32 Prog. Polym. Sci. 991-1007 (2007)。絹フィブロインフィルムはヒト皮膚と同様に、湿潤状態で良好な溶存酸素透過性を有し、このことは、創傷の包帯および人工皮膚システムにおけるこれらのフィルムの潜在的用途を示唆する。Minoura et al., 11 Biomats., 430-34 (1990);Minoura et al., 31 Polymer, 265-69 (1990a)。しかしながら、絹フィブロインから形成されたフィルムは、主としてランダムコイルタンパク質構造に占められているために、さらなる操作を行わなくても水に可溶である。このタンパク質の構造上の特徴は、加熱(Hu et al., 41 Macromolecules 3939-48 (2008))、機械的伸展(Jin & Kaplan, 424 Nature 1057-61 (2003))、極性有機溶媒への浸漬(Canetti et al., 28 Biopolymers - Peptide Sci. §1613-24 (1989))、および水蒸気中での硬化(Jin et al., 15 Adv. Funct. Mat. 1241-47 (2005))を伴う処理により、ランダムコイルからβシート型へ変換することができる。この構造転移は非水溶性をもたらし、従って、生物医学的用途およびセンサープラットフォームなどその他の用途の範囲におけるこの材料の使用についての選択肢を提供する。Zhang, 16 Biotechnol. Adv. 961-71 (1998)。しかしながら、いくつかの純粋な絹フィブロインフィルムは、時間が経つにつれて乾燥状態では硬く脆くなる傾向があり、優れた引張強度を示すが伸びには乏しい。Jin et al., 2005。従って、絹フィルムの物理的および機械的な特性を改変し、主により柔軟なシステムに向けて特性を制御することが未だ求められている。
【0017】
ポリマーを可塑剤とブレンドすることは、上記で概略を述べたような延性および引張強度に対処するための伝統的なアプローチである。例えば、いくつかの研究により、アルギネート、ポリアリルアミン、キトサン、セルロース、ポリ(カプロラクトン-コ-D,L-ラクチド)、S-カルボキシメチルケラチン、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)、およびポリ(エチレンオキシド)などの他の合成ポリマーまたは天然ポリマーと絹をブレンドすることにより絹フィルムの特性を改変できることが示唆されている。Liang & Hirabayashi, 45 J. Appl. Polymer Sci. 1937-43 (1992);Arai et al., 84 J. Appl. Polymer Sci. 1963-70 (2002);Kitagawa & Yabuki, 80 J. Appl. Polymer Sci. 928-34 (2001);Noishiki et al., 86 J. Appl. Polymer Sci. 3425-29 (2002);Kesenci et al., 12 J. Biomats. Sci. Polymer Ed. 337-51 (2001);Lee et al., 9 J. Biomats. Sci. Polymer Ed. 905-14 (1998);Tsukada et al., 32 J. Polymer Sci. B, 243-48 (1994);Gotoh et al., 38 Polymer 487-90 (1997);Jin et al., 5 Biomacromols. 711-17 (2004)を参照されたい。例えば、絹フィブロインおよびPEOのブレンドは、材料の安定化を示し(Jin et al., 2004;Jin et al., 3 Biomacromol. 1233-39 (2002))、および可塑剤としての水の使用はフィルムの特性を改善し得る(Jin et al., 2005)。
【0018】
しかしながら、多くの場合、機械的特性をもたらすようにブレンドを改善することは課題のままである。特に、他のポリマーの添加を回避しながら、長期間にわたって安定性を維持するシステムを作成することは、目標のままである。従って、本発明は、代替的な可塑剤選択肢:特にグリセロールを提供する。以前に、絹フィブロインフィルムは10%グリセリンに浸漬され(95℃で10分)、絹IからIIへの結晶変換をもたらすように高湿度乾燥機中で調節された。Kawahara et al., 291 Macromol. Mater. Eng. 458-62 (2006)。また、3%〜8%グリセリンの添加は、絹フィブロイン/PVAブレンドの相分離を減少させた。Dai et al., 86 J. Appl. Polymer Sci. 2342-47 (2002)。これらのアプローチの両方において、絹フィブロイン溶液は、CaCl2/CH3CH2OH/H2Oの3成分溶媒系中に脱ガム絹を溶解することにより生成された。
【0019】
本発明の方法においては、グリセロールを溶解した絹フィブロイン水溶液とブレンドし、その後キャストしてフィルムとした。絹フィブロインとグリセロールとの間の相互作用をよりよく理解するために、機械的特性および構造上の特徴についてこれらのフィルムを評価した。絹フィブロインとグリセロールとの間の特異的相互作用はフィルム特性への恩典を提供し、これはおそらく、他のポリマーを添加する必要なしにフィルムにおける安定化物理的架橋としてβシートの形成における絹フィブロインの結晶化挙動に影響を及ぼすことによって、成立(enact)する。
【0020】
本発明はまた、別個の水溶解特性を有する絹フィルム、および、絹フィブロイン溶液を適当な量のグリセロールとブレンドすることにより絹フィルムの該溶解特性を調整するための方法も提供する。特に、絹フィブロインはグリセロールとは異なり、280 nmの波長で吸収する有意なチロシン含量(>5モル%)を有するため、絹/グリセロールブレンドフィルム由来の絹フィブロインの水への溶解は、UV吸光度により測定した。最初の1時間における急速な初期の重量損失の後は、一定時間にわたり(over time)、残留量および溶解した絹含量についてのさらなる有意な差異は認められなかった(図1)。絹/グリセロールブレンドフィルムにおけるグリセロール含量を2%および5%(w/w)とすると、グリセロールを含有しない対照絹フィルムと同様に、フィルムは完全に水に溶解した(図1)。そのため、約5%(w/w)未満の濃度のグリセロールは、絹フィルム特性を有意に変化させないようであった。
【0021】
フィルムにおけるグリセロール含量を約10%(w/w)から20%(w/w)へ増加させると、不溶性のままであるフィルムの残留量がそれぞれ約10%から約75%へ増加した(p<0.01、図1)。グリセロールをさらに約30%(w/w)まで増加させると、20%グリセロールデータと比較した場合に統計学的に有意な結果ではなかったが、溶解性はさらに低下した。これらの結果は、20%(w/w)グリセロールが絹フィルム特性において有意な変化を誘導する濃度であり、水におけるこの材料の実質的な不溶性(すなわち、水溶液への浸漬後に保持された約75%残留量)をもたらすことを示した。グリセロール含量が有意に20%(w/w)未満である場合、グリセロール含量が増加するにつれて水に溶解する絹の量が減少した。20%(w/w)グリセロールでは、絹の総量の5%未満が水に可溶性であり、これは10%(w/w)グリセロールフィルムよりもずっと低かった(p<0.01、図1)。残留量の測定から、20%(w/w)グリセロールフィルムは水中で総量のおよそ25%を失った。従って、可溶化した材料の量、最初のグリセロール含量、およびUV吸光度を比較すると、約30%(w/w)超のグリセロールを含有するブレンドフィルムは水中でほとんどすべてのグリセロールを失ったが、恐らく、グリセロールにより誘導された絹構造変化のために、絹フィブロインタンパク質はフィルムにおいて安定なままであった。この結果は、より低いグリセロール含量では観察されなかった。
【0022】
グリセロール含量によるフィルム溶解度の変化は、グリセロールが絹フィブロインにおいて構造的変化を誘導することを示す。非水溶性繊維へと至る絹フィブロインタンパク質の自己集合過程は、βシート含量の増加、または絹II、または結晶構造を伴う。Kaplan et al., PROTEIN BASED MATS.において, 103-31(McGrath, ed., Birkhauser, Boston, MA, 1998);Motta et al., 203 Macromol. Chem. Phys. 1658-65 (2002);Chen et al., 89 Biophys. Chem. 25-34 (2001)。インビトロでは、絹II構造は、例えばメタノールおよびエタノールを用いる溶媒処理により取得することができる。水アニール(24時間にわたるキャストフィルムの水蒸気への曝露)後のキャスト絹フィルムは、II型βターンが増加した安定な絹I構造を示す。Jin et al., 2005。水アニールされたフィルムにおける絹I構造は、ひとたび形成されると、たとえメタノール処理を用いたとしても、絹II構造へは転移しない。本発明の絹フィブロイン/グリセロールフィルムにおいては、10%(w/w)超のグリセロール含量を有するブレンドフィルムにおいてαへリックス構造含量は見かけ上およそ50%まで増加するが、βターン含量は減少する(p<0.01、図2A)。これらの構造的変化は、グリセロールの非存在下で調製されてメタノール処理されたおよび水アニールされた絹フィルムにおいて観察される変化とは区別された。
【0023】
フィルムにおけるグリセロール含量を約10%から20%(w/w)に増加させた場合、二次構造含量は相対的に不変のままであった。従って、グリセロールをブレンドした材料は見かけ上、安定なαへリックス構造で占められていた。3重のへリックス結晶構造(絹III)は、ラングミュア-ブロジェット(Langmuir-Blodgett)技術を用いて気液界面での絹に関して以前に報告され、これは絹の両親媒性(amphilicity)の特徴を反映している(Valluzzi et al., 24 Int'l J. Biol. Macromol. 237-42 (1999))が、グリセロール改変絹材料においては報告されていない。圧縮力を35 mNm-1超にすれば、絹III構造をより安定な絹IIへと変換することができる。へリックスに沿ったアミノ酸側鎖の分布および該鎖の軸の向きは、これらの研究において十分に特徴決定されている。Valluzzi et al., 1999。グリセロール/フィブロインブレンド絹フィルムについては、メタノール処理後、フィルムにおけるグリセロール含量にかかわらず、βシート構造含量は約50%〜60%まで増加したが、αへリックス構造含量は約20%まで減少した(図2B)。この応答は、メタノールにより誘導される構造転移の点で、メタノール処理の際にαへリックスからβシートへの立体構造転移が起こらない、水アニールされた絹フィルムで観察されたものとは異なる。Jin et al., 2005。さらに、20%(w/w)グリセロールブレンド絹フィルムを水ですすぎ、空気中で再乾燥した後に、αへリックス構造含量は減少したがβシート構造およびβターン構造の含量はそれぞれおよそ45%および20%に増加した(p<0.01、図2C)。従って、グリセロールブレンド絹フィルムについて、グリセロールを浸出させてフィルムを再乾燥することにより、安定な絹II構造(結晶、βシート)が得られる。
【0024】
機構的に、グリセロールは絹フィブロインの分子内相互作用および分子間相互作用を変化させ、かつ、ランダムコイルから、安定なβシート構造形成に向けての不安定な中間状態と通常みなされるαへリックスへの立体構造転移をもたらすようである。しかしながら、グリセロールの存在によりαへリックス構造が安定化され、これによってβシート構造に向けてのさらなる転移が妨害されるようである。グリセロールの濃度は、この程度の構造制御を達成するための限界レベルに達し得るようである。20%および50%(w/w)のグリセロール/フィブロインブレンドフィルムについて、グリセロールと絹フィブロインとの間のモル比はそれぞれおよそ1000:1および4000:1である。水溶液へ浸漬してグリセロールが浸出した後も、ブレンドフィルムは依然としてある程度のαへリックス構造を含有し得るが、これは、残存する結合したグリセロール分子の安定化効果による可能性が最も高い。このことが、メタノール処理後のグリセロール非含有フィルムと比較した時に(水に浸漬された)湿潤フィルムが柔軟なままであった理由であり得る。αへリックスからβシートへの絹構造転移は、高い絹濃度および絹フィブロイン分子の間の分子間相互作用のために、フィルム再乾燥過程の間に起こり得る。結果として、再乾燥したフィルムは、メタノール処理された絹フィブロインフィルムと同様にいくらか脆くなる。
【0025】
本明細書において定義される「乾燥ブレンドフィルム」とは、絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液を直接キャストしてフィルムを形成させ、その後フィルムを一晩乾燥することにより調製された、絹フィルムを指す。「湿潤ブレンドフィルム」とは、同様にキャストおよび乾燥したフィルムであり、続いて、37℃で1時間、超純水に浸漬して抽出し、これによりグリセロールを溶出させ、再び空気中で乾燥させたものを指す。従って、乾燥環境とは、「キャストしたままの(as-cast)」絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムをもたらす環境を指し、湿潤環境とは、「キャストしたままの」絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムからグリセロールを取り除くための該フィルムのさらなる処理を含む段階を指す。
【0026】
本発明の絹フィブロイン/グリセリンフィルムの機械的特性もまた調査した。乾燥ブレンドフィルムの引張強度は、フィルム中のグリセロール含量の変化と共に変化した。グリセロール含量を0%から約20%(w/w)に増加させると、引張強度は約8 MPaから13 MPaへと有意に上昇した(p<0.01、図3A)。グリセロール含量を20%超まで増加させると、引張強度は有意に低下した。40%グリセロールでは、引張強度は約4 MPaであり、これは0%および20%(w/w)グリセロールフィルムのものより有意に低かった(p<0.01、図3A)。グリセロールが枯渇したフィルム(グリセロールが浸出した後のフィルム)の引張強度は、グリセロール含量を変化させても有意には変化せず、すべての試料について2 MPa未満と測定された(P>0.05、図3A)。乾燥ブレンドフィルムについては、グリセロール含量が20%(w/w)未満であった時、破断点伸び率は低いまま(3%未満)であった。グリセロール含量を30%および40%(w/w)まで増加させると、これらの値はおよそ150%まで有意に上昇した。50%(w/w)グリセロールでは、破断点伸び率の値は20%未満まで低下した。引張強度が最も高い20%(w/w)グリセロールよりむしろ30%〜40%(w/w)グリセロールにおいて最も高い破断点伸び率が得られたことを除いて、引張強度と同様の傾向がみられた。湿潤ブレンドフィルムについては、20%(w/w)グリセロールフィルムの破断点伸び率は約27%で、0%および40%グリセロールフィルムのもの(それぞれ14%および8%)より有意に高かった(p<0.01、図3B)。そのため、グリセロール非含有のメタノール処理された絹フィルムと比較して、グリセロールブレンドフィルムは乾燥状態および湿潤状態の両方において、多くの用途のために有用な特性である高い延性を有した。
【0027】
水アニールされたフィルムは約6%の破断点伸び率を示し(Jin et al., 2005)、これは本明細書において示した30%グリセロール絹フィルムの1/25であったため、グリセロール-絹フィルムの延性もまた、水アニールされた絹フィルムのものより大きかった。遊離水含量もまた絹フィルムの柔軟性に影響を及ぼし得る。Kawahara et al., 2006。グリセロールとのブレンドによって、絹フィルム内の遊離水含量が保存される可能性があり、したがって、フィルム柔軟性が向上した。絹フィブロインのへリックス含量においてグリセロールが果たす役割は、フィルムの機械的挙動においてもまた役割を有する。グリセロール含量を0%から40%(w/w)まで増加させると、引張係数は乾燥ブレンドフィルムにおいて約1/17、および湿潤ブレンドフィルムについては約1/2.5に減少した(図3Cおよび3D)。明らかに、ブレンド内のグリセロールを多くすればするほどフィルムは機械的に弱くなり、この効果は、乾燥ブレンドフィルムについてより顕著であった。乾燥絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムの引張係数は、グリセロールを浸出させた対応する湿潤ブレンドのグリセロール除去フィルムよりも、100倍超高かった。
【0028】
フィルム特性に対するグリセロールの影響をさらに評価するために、絹ブレンドフィルムにおける絹フィブロインのナノ構造を形態学的特徴決定により解析した。絹フィルムを液体窒素中で破砕し、フィルムの横断面をSEMにより調査した。グリセロール含量が10%(w/w)であった時、絹フィブロインタンパク質は直径100 nm〜200 nmの球状ナノ構造を形成していた(図4A)。しかしながら、20%(w/w)グリセロールをフィルム内でブレンドした時には、小球は観察されず:SEMで見るとブレンドフィルムは比較的平滑な形態を有していた(図4B)。これらの結果は、グリセロールの高い含量(>20% w/w)が絹フィブロインの自己集合およびナノ構造の特徴に影響を及ぼすことを示す。興味深いことに、20%(w/w)グリセロール絹フィルムを水で処理してグリセロールを浸出させ、その後空気中で再乾燥させると、絹フィブロインは自己集合して、メタノール処理された純粋な絹フィルムにおいて観察されるのと同様のナノフィラメントとなった(図4Cおよび4D)。この知見は、水処理およびメタノール処理されたグリセロール絹フィルムの両方におけるβシート構造形成を伴う二次構造転移と一致する(図2Bおよび2C)。そのため、グリセロールブレンドフィルムにおけるナノ構造の形成は、フィルムにおける構造上の特徴と相関し、かつこれはおそらく絹の二次構造変化により影響を受ける。
【0029】
水処理後の30%(w/w)グリセロールフィルムにおいて形成された絹ナノフィラメント構造をさらにSEMにより研究した(図5A、5D)。ナノフィラメント構造は、より高倍率で(図5Bおよび5E)および側面から(図5C)より明瞭に見えた。恐らく絹フィルムキャストの際の不均一な乾燥速度のために、フィルムの別の領域においてナノフィラメントの顕著な形態および構成が観察された(図5A、5Bと5D、5Eとを比較されたい)。しかしながら、ナノフィラメントのサイズは、フィルム全体で一貫して約10 nm〜20 nmであった。
【0030】
絹フィルムにおけるグリセロール含量は、絹の二次構造転移を制御するため、およびフィルムの機械的特性に影響を及ぼすために重要であり得る。グリセロールのヒドロキシル基と絹のアミド基との間の水素結合である可能性が最も高い分子間力を介して、グリセロール分子は、絹フィブロイン鎖と相互作用し得る。Dai et al., 86 J. Appl. Polymer Sci. 2342-47 (2002)。タンパク質鎖は高含量のグリシン-アラニンリピートにより疎水性タンパク質となるため、この相互作用は該タンパク質鎖の疎水性水和状態を変化させる可能性があり(Bini et al., 335 J. Mol. Biol. 27-40 (2004))、従って、最も多数を占めているランダムコイル(絹溶液状態またはキャストしたままのフィルム)からαへリックスへと絹の二次構造変化を誘導する(図7)。フィルムが水およびメタノールなどの溶媒により処理されていない限り、この相互作用によって絹のへリックス期(helical stage)が安定化され得る。溶媒処理すると、一部のグリセロール分子はフィルムから可溶化して周囲の媒質中に拡散するが、堅く結合したグリセロール分子は絹フィブロイン鎖と会合したままでいる可能性が高く、これにより、絹αへリックス構造が安定化し、フィルムの柔軟性が保存される。浸出しれたグリセロールと置き換わってフィブロイン分子とより弱い水素結合を形成する水分子もまた、絹構造および機械的特性の維持に寄与し得る。グリセロールが枯渇したこれらのフィルムを再乾燥すると、絹分子の間の強い分子間相互作用が支配的となり得、このことがαへリックスからより熱力学的に安定なβシートへの転移を促進する(図7)。そのような過程は、タンパク質鎖の疎水性水和状態における変化に基づく絹構造転移についての以前に報告された機構に類似している。Matsumoto et al., 110 J. Phys. Chem. B 21630-38 (2006)。
【0031】
絹フィルム機構におけるグリセロールの相互作用の一部が探索されている(Kawahara et al., 291 Macromol. Mater. Eng. 458-62 (2006);Dai et al., 86 J. Appl. Polymer Sci. 2342-47(2002))が、本発明におけるグリセロールの具体的な配合および重要なことにその機能は、以前に報告されたものとは異なる。例えば、絹/PVAブレンドフィルムの引張特性は、絹/PVAブレンドに最大8%のグリセロールを含めることにより改変された。該絹/PVAフィルムについての引張強度および破断点伸び率は、それぞれ約350 kg/cm3および10%であった。相分離を減少させるために5%グリセロールをPVA/絹フィルムとブレンドしたところ、得られたフィルムの引張強度および破断点伸び率は、それぞれ約426 kg/cm2および53%であった。しかしながら、グリセロールの濃度を>5%まで増加させると、絹/PVAブレンドフィルムの引張強度は有意に低下した。Dai et al., 2002。対照的に、本発明の1つの態様において、フィブロイン絹フィルムに30%グリセロールを組込むことにより、PVAの組込み無しに、引張強度(約12 MPaまで)および破断点伸び率(150%)の両方が有意に向上した。
【0032】
別の研究において、絹構造を絹Iから絹II(βシート構造)へ変換するために、純粋な絹フィルムの後処理としてグリセロール溶液が使用された。より具体的には、絹フィルムを10%グリセロール溶液に浸漬し、95℃で加熱し、50%相対湿度で乾燥した。グリセロールに浸したフィルムは浸漬処理後に自己膨張を起こしたが、その延性は評価されていない。Kawahara et al., 2006。対照的に、本発明のいくつかの態様においては、絹フィブロイン溶液をグリセロールとブレンドし、キャストして、約10%〜50%グリセロールを含有する絹フィルムの引張強度および破断点伸び率の向上により示されるような高延性のフィルムとする。
【0033】
本明細書において示されるグリセロールブレンド絹フィルムは、様々な制御可能な絹構造転移、所望の機械的特性、および製造の容易さ(さらなる処理を要さない1段階のフィルムキャスト)の独特の特徴を実証している。これらの特徴は、これらのフィルムが生物医学的用途において有用性を有することを示唆する。
【0034】
本発明は従って、引張強度および延性が増加した絹フィルムを調製する方法を提供する。本方法は、絹フィブロイン溶液をグリセロールとブレンドする段階であって、絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜50%(w/w)である段階;該絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および、該フィルムを乾燥する段階を含む。この単純な過程により、グリセロールの濃度に依存して、計画可能な(designable)引張強度および延性を有する本発明の絹フィルムが与えられ、これにより、グリセロールの非存在下で絹フィブロイン溶液より調製された絹フィルムの代替物が提供される。加えて、PVAおよびPEOなどの他のバイオポリマーを含む絹ブレンドフィルムもまた、上述と同じ過程を使用して、該絹/バイオポリマーブレンドフィルムの柔軟性または延性を増強するようにグリセロールにより改変され得る。
【0035】
さらに、薬物送達システム、組織工学で作製される材料、または他の生物医学的装置などの用途のために、本発明のグリセロール絹ブレンドを他の絹ベースの構造と組み合わせて、三次元絹骨格、絹スポンジ、または、三次元構造を有する他の絹複合体構造を形成させてもよい。例えば、活性物質の徐放を提供するために、本発明の延性絹フィルムを、該活性物質を保持する絹フィブロインのナノスフェアまたはマイクロスフェアと組み合わせてもよい。別の例として、光ファイバーまたは筋線維としての使用のための柔軟な繊維性材料を提供するために、絹フィブロイン溶液または絹ゲルでコーティングされていてもよい絹繊維を含む絹繊維ベースの複合体を、本発明の延性絹フィルムと組み合わせてもよい。絹ベースの構造の機械的特性を変化させるために、グリセロールを任意の絹複合体と容易にブレンドすることができる。または、絹ベースの複合体は、絹ベース構造の輪郭を囲むように延性絹/グリセロールフィルムで巻かれるまたは成形されてもよい。本明細書において説明される絹複合体のすべては、機能を保持しながら薬物、抗生物質、細胞応答分子、色素、酵素、ならびに他の小分子および大分子を用いて、容易に機能付与することができる。
【0036】
グリセロール改変による絹フィルムまたは絹ブレンドフィルムの柔軟性向上により、本発明の方法を用いて、血管創傷修復装置、止血包帯、スポンジ、貼付剤および接着剤を含む創傷閉鎖システム、縫合術、薬物送達(WO 2005/123114)、バイオポリマーセンサー(WO 2008/127402)などの種々の医学的用途において、ならびに、例えば、組織工学で作製される器官または人体中への他の生分解性移植(WO2004/0000915;WO2008/106485)などの組織工学用途において、様々な絹ブレンドフィルムまたはコーティングを改変することができる。機能的な包帯材料または筋肉組織のような組織材料などの一部の用途に必要とされるような生物医学的材料へ柔軟な拡張性または収縮性を提供し得るため、絹フィルムの柔軟性向上は有利である。例えば、本発明の延性絹フィルムは、構造体(例えばインプラント)を囲むように成形され得る。絹フィルムは、装置の目的を助成するように選択された追加的な活性物質、例えば歯科装置における組織促進剤または骨促進剤を含み得る。追加的に、延性フィルムが構造体へと成形されたら、本明細書において説明されるような浸出によりグリセロールを除去してもよい。
【0037】
本発明の絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムはまた、繊維芽細胞の付着および増殖のための適当なプラットフォームも提供する。これらの絹ブレンドフィルムについての潜在的に有用な改変された機械的特性のために、細胞および組織の培養におけるそのような生体材料の潜在的有用性を評価することが重要である。従って、予備的な研究において、30%(w/w)グリセロール-絹フィルム上での繊維芽細胞の付着および増殖を、メタノール処理された純粋な絹フィルムおよび対照としての組織培養プラスチック(TCP)と比較した。3種類すべての表面での初期の細胞付着(3時間)は類似しており(図6Aにおける1列目)、およびAlamar Blue染色により定量された通りであった(図6B)。しかしながら、培養14日目における細胞増殖は、それぞれの表面上で異なっていた。4日間の培養後、TCP上の繊維芽細胞は純粋な絹フィルムおよびブレンド絹フィルム上のものよりも速く増殖し、これは純粋な絹フィルムについての先行の研究と一致した知見であった。Sofia et al., 54 J. Biomed. Mater. Res. 139-48 (2001);Wang et al., 29 Biomats. 894-903 (2008)。14日間の培養後、TCP上の細胞の数は絹フィルム上のものよりも約1.8倍多く、Alamar Blue染色により測定したように、純粋な絹フィルムとブレンド絹フィルムの間に有意な差異は無かった(図6C)。30%(w/w)グリセロール絹フィルムは、繊維芽細胞増殖の点で、メタノール処理された絹フィルムと6日目〜11日目の期間においてのみ異なっており、ここで細胞は、グリセロールフィルム上よりもメタノール処理されたフィルム上でより速く増殖した(p<0.01、図6C)。RGD改変絹フィルムは、繊維芽細胞、骨芽細胞様細胞、およびヒト骨髄由来間葉系幹細胞の迅速な付着および増殖を促進する優れた表面特性を示す。Chen et al., 67 J. Biomed. Mater. Res. A, 559-70 (2003)。従って、同様の戦略を絹-グリセロールブレンドフィルムに使用することができた。
【0038】
このように本発明の態様は、これらの改変絹材料から恩恵を受け得る器官修復、器官置換、または再生の戦略のために使用することができる組織工学で作製される構築物に適し得る、絹/グリセロールフィルムを提供する。絹フィブロイン/グリセロールブレンド材料および任意で細胞などの生理活性物質を少なくとも1つ含む組織工学で作製される構築物は、脊椎円板、頭蓋組織、硬膜、神経組織、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、脾臓、心筋、骨格筋、腱、靱帯、角膜組織、および乳組織を含むがそれらに限定されない、器官修復、器官置換、または再生の戦略のために使用され得る。培養用および可能性のある移植用に組織工学で作製される構築物に、軟骨細胞、繊維芽細胞、筋肉細胞および骨細胞などの筋肉系および骨格系の細胞、肝細胞、膵臓細胞(島細胞を含む)などの実質細胞、腸管起源の細胞、ならびに神経細胞、骨髄細胞、皮膚細胞、多能性細胞および幹細胞(例えば、胚性幹、成体幹細胞、および人工多能性幹細胞を含む)などの他の細胞、ならびにこれらの組み合わせを含む、任意のタイプの細胞を、ドナーから採取した際でも、樹立細胞培養系から取得した際でも、または分子遺伝子操作の前もしくは後のいずれかでも、添加することができる。単一構造においていくつかの異なる細胞タイプを提供し得る組織の小片もまた、使用することができる。
【0039】
または、柔軟な絹/グリセロールフィルムは、医療用装置、組織工学で作製される材料、またはインプラントなどの生物医学的材料に対するコーティングとしてもまた使用され得る。上述のように、グリセロール改変絹フィルムの柔軟性向上により、機能的な包帯材料または筋肉組織のような組織などの一部の用途に必要な生物医学的材料の収縮特性と釣り合うように、柔軟な拡張性または収縮性が提供され得る。改変絹フィルムは伸長、収縮、伸展、または変形の際に破断する傾向が低いため、そのようなフィルム由来のコーティングは適合性向上を提供すると考えられ、かつ基材の輪郭に十分に適合すると考えられる。改変絹フィルムのコーティング用の基材または物品は、多くの組織、再生組織、医療用装置、医療用インプラント、獣医学用装置、または獣医学用インプラントを含み得る。例えば、延性絹/グリセロールフィルムは、脊椎ケージ、冠動脈ステント、歯科用インプラント、または股関節および膝関節の人工器官などの装置またはインプラントの周囲に巻き付けられていてもよい。
【0040】
述べたとおり、絹/グリセロールブレンドフィルムは、少なくとも1つの活性物質を含有するように改変され得る。該物質は、絹ブレンドフィルムの形成より前に絹フィブロイン溶液と混合されてもよいし、または絹ブレンドフィルムが形成された後にその中に負荷されてもよい。本発明の絹ブレンドフィルムと共に使用することができる活性物質の種類は膨大である。例えば、該活性物質は、細胞(幹細胞を含む)、タンパク質、ペプチド、核酸(DNA、RNA、siRNA)、核酸類似体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたは配列、ペプチド核酸、アプタマー、抗体、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、増殖因子または組み換え増殖因子ならびにそれらの断片および変異体、サイトカイン、または酵素、抗生物質、ウイルス、抗ウイルス薬、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬物、およびこれらの組み合わせなどの、治療物質または生物学的材料であり得る。本発明の絹ブレンドフィルムの改変に適した例示的な活性物質には、細胞(幹細胞を含む)、エリスロポエチン(EPO)、YIGSRペプチド、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒアルロン酸(HA)、インテグリン、セレクチンおよびカドヘリン;鎮痛薬および鎮痛薬の組み合わせ;ステロイド;抗生物質;インスリン;インターフェロンαおよびγ;インターロイキン;アデノシン;化学療法剤(例えば抗癌剤);腫瘍壊死因子αおよびβ;抗体;RGDもしくはインテグリンなどの細胞付着媒介物質、または、他の天然由来のもしくは遺伝子操作されたタンパク質、多糖類、糖タンパク質、細胞毒素、プロドラッグ、免疫原、またはリポタンパク質が含まれる。
【0041】
1つまたは複数の活性物質が、絹/グリセロールブレンドフィルムを改変するために使用され得る。例えば、細胞などの生物学的材料を支持するためのプラットフォームとして本発明の絹ブレンドフィルムを使用する時には、該物質の増殖を促進するため、絹ブレンドフィルムから放出された後の該物質の機能を促進するため、または処理期間の間の該物質の生存能を向上させるかもしくはその効力を保持するために、他の材料を添加することが望ましい可能性がある。細胞増殖を促進することが公知である例示的な材料は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)などの細胞増殖培地、ウシ胎児血清(FBS)、非必須アミノ酸および抗生物質、ならびに、繊維芽細胞増殖因子(例えばFGF 1〜9)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF-IおよびIGF-II)、骨形成増殖因子(例えばBMP 1〜7)、骨形成様タンパク質(例えばGFD-5、GFD-7、およびGFD-8)、トランスフォーミング増殖因子(例えばTGF-α、TGF-βI〜III)、神経成長因子、ならびに関連するタンパク質などの増殖因子および形態形成因子を含むが、それらに限定されない。増殖因子は当技術分野において公知であり、例えば、Rosen & Thies, CELLULAR & MOL. BASIS BONE FORMATION & REPAIR (R.G. Landes Co.)を参照されたい。絹/グリセロールフィルムの中に包埋される追加的な材料は、DNA、siRNA、アンチセンス、プラスミド、リポソームおよび、遺伝物質送達のための関連する系;細胞シグナルカスケードを活性化させるためのペプチドおよびタンパク質;石灰化または細胞由来の関連事象を促進するためのペプチドおよびタンパク質;フィルム-組織界面を改善するための接着ペプチドおよびタンパク質;抗菌ペプチド;ならびにタンパク質および関連化合物を含み得る。
【0042】
絹/グリセロールブレンドから産生されるフィルムの中に生理活性物質を包埋することにより、制御放出様式での活性物質の送達が可能になる。絹の中に生理活性物質を包埋する過程全体を通して該物質を活性型に維持することにより、絹フィルムからの放出時に活性であることが可能になる。活性物質の制御放出によって、活性物質を制御放出動態で、一定時間にわたり持続可能に放出させることができる。いくつかの例において、生理活性物質は、例えば数週間にわたり、処置が必要とされる部位へ連続的に送達される。一定時間にわたる、例えば数日間もしくは数週間またはそれより長くにわたる制御放出により、好ましい処置を得るための生理活性物質の連続的な送達が可能になる。制御送達ビヒクルは、例えばプロテアーゼによる、体液および組織におけるインビボでの分解から生理活性物質を保護するので有利である。
【0043】
絹フィルムからの活性物質の制御放出は、一定時間にわたり、例えば12時間または24時間にわたり行われるように設計され得る。放出の時間は、例えば、約12時間〜24時間;約12時間〜42時間;または、例えば約12〜72時間の期間にわたり行われるように選択され得る。別の態様において、放出は例えば約1日間〜15日間のオーダーで行われ得る。制御放出時間は、処置される状態に基づいて選択され得る。例えば、創傷治癒に関しては時間が長ければ長いほどより有効であり得るが、一方いくつかの心血管用途に関しては送達時間が短ければ短いほどより有用であり得る。
【0044】
インビボにおける絹フィルムからの活性物質の制御放出は、例えば約1 ng〜1 mg/日の量で行われ得る。他の態様において、制御放出は約50 ng〜500 ng/日の量で、または、別の態様において約100 ng/日の量で行われ得る。治療用途に応じて、例えば治療物質10 ng〜1 mg、または約1μg〜500μg、または例えば、約10μg〜100μgを含む、治療物質および担体を含む送達システムが処方され得る。
【0045】
本発明の絹/グリセロールブレンドから産生されるフィルムはまた、生物光学装置用途のために表面パターン形成され得る。表面パターン形成技術は当技術分野において公知であり、例えば、パターンのインクジェット印刷、ディップペンナノリソグラフィーパターン、マイクロコンタクト印刷、またはソフトリソグラフィー技術である。Wilran et al., 98 P.N.A.S. 13660-64 (2001);Bettinger et al, 19 Adv. Mat. 2847-50 (2007)を参照されたい。PCT/US/07/83620;PCT/US2008/082487もまた参照されたい。絹フィルムの表面に対する局所的パターン形成と絹フィルムの光学的に透明な清澄度との組み合わせにより、高解像度の表面機構を提供することができ、これは、光回折格子、レンズ、マイクロレン(microlen)アレイなどの生物光学装置に適しているだけでなく(WO 08/127404)、組織アラインメントおよび増殖などの細胞機能およびマトリックス沈着を方向付けできることにより、組織工学で作製される構築物にも適している(WO 08/106485)。
【0046】
従って、本明細書において説明される特定の態様は、眼の生物医学的装置および眼の組織工学に有用であるグリセロール改変絹フィルムを提供する。例えば、角膜組織工学での適用において、絹フィルムの表面は角膜繊維芽細胞の付着および増殖を支持する。改変絹フィルムの任意の表面パターン形成は、細胞アラインメントに至るさらなるガイダンスを提供する。グリセロール改変絹フィルムは、インビボ角膜組織修復のため、またはその後の移植のためのインビトロ角膜組織再生のために使用され得る。本発明の方法を用いてグリセロールにより改変された絹フィルムは、その軟性および柔軟性のため、そのような組織移植を必要とする患者に対して快適さおよび適合性の向上を提供する。眼の生物医学的装置における改変絹フィルムの追加的な例示的用途は、ソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ、緑内障濾過インプラント、人工角膜移植、強膜バックル、および粘弾性置換物質の製造を含むが、それらに限定されない。
【0047】
本発明におけるグリセロール改変絹フィルムの別の用途は、柔軟な光学装置を製造することである。述べたとおり、絹フィルム表面に高解像度機構をさらにパターン形成してもよい。本発明のグリセロール改変絹フィルムを用いて、例えば標識を必要とする製品の表面輪郭に適合するように容易に伸長、伸展、または変形される、柔軟で拡張可能なホログラフィー標識を提供することができる。例えば、絹フィルムは、ホログラフィーイメージを与えるために高解像度回折マイクロレリーフでナノパターン形成され得、従って、カプセル、錠剤、または食物製品に容易に適合する食用のホログラフィー製品同定標識を提供する。PCT/US09/47751を参照されたい。
【0048】
本明細書において述べたとおり、グリセロール改変絹フィルムは食用である。着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤および香料、保存料および抗酸化剤もまた、絹フィルムまたは絹フィルムを含む製剤に存在することができる。例えば、ビタミン、栄養補助食品、または他の薬物の風味付け絹フィルム製剤または風味付け絹フィルム被覆製剤は、小児への投与のために製造され得る。
【0049】
要約すると、グリセロール(>10% w/w)とブレンドされた絹フィルムは明らかにαへリックス構造に富み、これはさらに、メタノール処理または水処理によるグリセロールの除去およびフィルムの再乾燥の際に結晶βシート構造へと転移する。βシート構造に富む絹/グリセロールブレンドフィルムは特徴的なナノフィラメントから構成され、一方αへリックス構造に富むフィルムはこれらの形態を示さなかった。ブレンドフィルムは、キャストしたままの状態またはグリセロールが枯渇した状態のどちらにおいても、伸展による変形に対する感受性は低かったが、メタノール処理されたおよび水アニールされた純粋な絹フィブロインフィルムの両方よりも高い延性を有した。グリセロールをブレンドした(30% w/w)絹フィルムおよびメタノール処理された絹フィルムの両方とも、繊維芽細胞の付着および増殖を支持した。機構的には、グリセロールの役割とは、絹フィブロイン鎖の構造転移の制御における水の役割を模倣することであるようであり、これにより絹ベースの生体材料の構造および従って材料特性の調節における新しくかつ有用な制御点が提供される。
【0050】
従って、本発明の態様は、絹フィブロインおよび約10%(w/w)〜約50%(w/w)グリセロールを含む、絹フィルムを提供する。本絹フィルムは約20%(w/w)〜約40%(w/w)、または約30%(w/w)を含み得る。
【0051】
追加的に、絹フィルムは少なくとも1つの活性物質を含み得る。活性物質は、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは部分、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、増殖因子もしくは組み換え増殖因子ならびにそれらの断片および変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質もしくは抗菌化合物、ウイルス、抗ウイルス薬、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子もしくは薬物、またはこれらの組み合わせであり得る。特定の態様において、活性物質は細胞である。該細胞は、肝細胞、膵臓島細胞、繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、外分泌細胞、腸管由来細胞、胆管細胞、副甲状腺細胞、甲状腺細胞、副腎-視床下部-下垂体軸の細胞、心筋細胞、腎臓上皮細胞、尿細管細胞、腎基底膜細胞、神経細胞、血管細胞、骨および軟骨を形成する細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、眼細胞、外皮細胞、骨髄細胞、ケラチノサイト、多能性細胞、人工多能性幹細胞、成体幹細胞もしくは胚性幹細胞、またはこれらの組み合わせから選択され得る。
【0052】
絹フィルムはまた、絹フィルムの中に包埋された絹ミクロスフェアまたは絹ナノスフェアも含み得る。絹フィルムは、層状に積み重ねられたかまたはフォールディングされてスポンジまたはブロックとなったフィルムであり得る。絹フィルムはまた、組織工学のための構築物も提供する。特に、組織工学で作製される構築物は、細胞が角膜繊維芽細胞である角膜組織構築物であり得る。いくつかの態様において、絹フィルムは細胞増殖培地をさらに含み得る。
【0053】
本発明の絹フィルムはまた、該絹フィルム上に光学パターン、特にホログラフィー画像などのパターンを含み得る。
【0054】
本発明の態様はまた、絹フィブロイン溶液をグリセロールとブレンドする段階であって、絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜約50%(w/w)である段階;該絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および、絹フィルムを乾燥する段階を含む、絹フィルムを調製するための方法も提供する。本方法はまた追加的に、グリセロールが溶解する液体中に、絹フィルムからグリセロールを枯渇させるための期間にわたり該絹フィルムを浸漬する段階;および、グリセロールが枯渇した該フィルムを乾燥する段階も含み得る。本方法はまた、フィルムをアニールする段階、例えばメタノールまたは水蒸気でフィルムを処理する段階もさらに含み得る。
【0055】
本態様はまた、フィルム支持基材を供給する段階;および、約10%〜50%(w/w)のグリセロールを含む絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムで該フィルム支持基材を覆う段階により、該基材の表面を絹組成物で覆う方法も提供する。絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムは、少なくとも1つのバイオポリマー、例えばPVAまたはPEOをさらに含み得る。絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムは、少なくとも1つの活性物質をさらに含み得る。
【0056】
本発明の別の態様は、フィルム支持基材を供給する段階;および、約10%〜50%(w/w)のグリセロールを含む絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムで該フィルム支持基材を覆う段階により、絹組成物で基材の表面を覆う方法に従って調製された、絹フィルムで覆われた基材である。基材は、組織、再生組織、医療用装置、医療用インプラント、獣医学用装置、または獣医学用インプラント、例えば歯科インプラントであり得る。基材はまた、絹ベースの複合体でもあり得る。
【0057】
本発明の別の態様は、絹フィブロイン溶液を少なくとも1つの活性物質およびグリセロールとブレンドする段階であって、絹ブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜50%(w/w)である段階;該絹ブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および、フィルムを乾燥する段階を含む、少なくとも1つの活性物質を絹フィルムの中に包埋する方法である。本方法において、活性物質は、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは部分、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、増殖因子もしくは組み換え増殖因子ならびにそれらの断片および変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質もしくは抗菌化合物、ウイルス、抗ウイルス薬、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬物、またはこれらの組み合わせであり得る。本方法はまた、グリセロールが溶解する液体中に、絹フィルムからグリセロールを枯渇させるための期間にわたり該絹フィルムを浸漬する段階;および、グリセロールが枯渇した該フィルムを乾燥する段階もさらに含み得る。本方法はまた、フィルムをアニールするさらなる段階も含み得る。
【0058】
本発明の一部の態様は、以下の番号を付した段落のいずれかにおいて定義されうる。
1.絹フィブロイン及び約10%(w/w)〜約50%(w/w)のグリセロールを含む絹フィルム。
2.前記絹フィルムのグリセロール含有量が約20%(w/w)〜約40%(w/w)である、段落1に記載の絹フィルム。
3.前記絹フィルムのグリセロール含有量が約30%(w/w)である、段落1または2に記載の絹フィルム。
4.少なくとも1種類の活性物質を更に含む、段落1〜3のいずれか1つに記載の絹フィルム。
5.前記絹フィルムに包埋された絹マイクロスフェアまたは絹ナノスフェアをさらに含む、段落1〜4のいずれか1つに記載の絹フィルム。
6.スポンジまたはブロックに積層されたまたは折り畳まれた、段落1〜5のいずれか1つに記載の絹フィルム。
7.前記少なくとも1種類の活性物質が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは部分、ホルモン、ホルモンのアンタゴニスト、増殖因子または組換え増殖因子ならびにそれらの断片及び変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質または抗菌化合物、ウイルス、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬剤、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、段落1〜6のいずれか1つに記載の絹フィルム。
8.前記少なくとも1種類の活性物質が細胞である、段落1〜7のいずれか1つに記載の絹フィルムを含む組織工学用構築物。
9.前記細胞が、肝細胞、膵島細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、外分泌細胞、腸管由来細胞、胆管細胞、副甲状腺細胞、甲状腺細胞、副腎-視床下部-下垂体軸の細胞、心筋細胞、腎臓上皮細胞、尿細管細胞、腎基底膜細胞、神経細胞、血管細胞、骨及び軟骨を形成する細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、眼細胞、外皮細胞、骨髄細胞、ケラチノサイト、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、成体幹細胞および胚性幹細胞、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、段落8に記載の組織工学用構築物。
10.組織工学で作製される構築物が角膜組織構築物であり、前記細胞が角膜線維芽細胞である、段落9に記載の組織工学用構築物。
11.細胞増殖培地を更に含む、段落8〜10のいずれか1つに記載の組織工学用構築物。
12.前記絹フィルム上に光学パターンを更に備えた、段落1〜7のいずれか1つに記載の絹フィルム。
13.前記光学パターンがホログラフィ画像である、段落12に記載の絹フィルム。
14.以下の段階を含む、絹フィルムを調製するための方法:
絹フィブロイン溶液をグリセロールとブレンドする段階であって、該絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜約50%(w/w)である段階;
該絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および
該絹フィルムを乾燥する段階。
15.グリセロールが溶解する液体中に、前記絹フィルムからグリセロールを枯渇させるための期間にわたり該絹フィルムを浸漬する段階;および
グリセロールが枯渇した該フィルムを乾燥する段階
を更に含む、段落14に記載の方法。
16.前記フィルムをアニールする段階を更に含む、段落14または15に記載の方法。
17.基材の表面を絹組成物で覆うための方法であって、
フィルム支持基材を供給する段階;および
該フィルム支持基材を、約10%〜50%(w/w)のグリセロールを含む絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムで覆う段階
を含む方法。
18.前記絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムが少なくとも1種類の生体高分子を更に含む、段落17に記載の方法。
19.前記生体高分子がPVAまたはPEOである、段落18に記載の方法。
20.前記絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムが少なくとも1種類の活性物質を更に含む、段落19に記載の方法。
21.段落17〜20に記載の方法に基づいて調製された、絹フィルムで覆われた基材。
22.組織、再生組織、医療用装置、医療用インプラント、獣医学用装置、または獣医学用インプラントである、段落21に記載の絹フィルムで覆われた基材。
23.絹を主成分とする複合材である、段落20または22に記載の絹フィルムで覆われた基材。
24.以下の段階を含む、少なくとも1種類の活性物質を絹フィルムに包埋するための方法:
絹フィブロイン溶液を少なくとも1種類の活性物質及びグリセロールとブレンドする段階であって、絹ブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜50%(w/w)である段階;
該絹ブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および
該フィルムを乾燥する段階。
25.前記少なくとも1種類の活性物質が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは部分、ホルモン、ホルモンのアンタゴニスト、増殖因子または組換え増殖因子ならびにそれらの断片及び変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質または抗菌化合物、ウイルス、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬剤、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、段落24に記載の方法。
26.グリセロールが溶解する液体中に、前記絹フィルムからグリセロールを枯渇させるための期間にわたり該絹フィルムを浸漬する段階;および
グリセロールが枯渇した該フィルムを乾燥する段階
を更に含む、段落24または25に記載の方法。
27.前記フィルムをアニールする段階を更に含む、段落24〜26のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0059】
実施例1 絹フィブロインの精製
これまでに述べられているようにして絹フィブロインのストック水溶液を調製した(Sofia et al., 54 J. Biomed. Mater. Res. 139-48(2001))。簡単に述べると、カイコガ(Bombyx mori)の繭を0.02Mの炭酸ナトリウム水溶液中で20分間煮沸した後、純水で徹底的にすすいだ。乾燥後、抽出した絹フィブロインを9.3Mの臭化リチウム溶液に60℃で4時間溶解し、20%(w/v)溶液とした。この溶液をSLIDE-A-LYZER(登録商標)透析用カセット(3,500MWCO)(ピアース社(Pierce)イリノイ州ロックフォード)を使用して蒸留水に対して3日間透析して塩を除去した。透析後の溶液は光学的に透明であり、これを遠心分離して、繭表面に存在する環境中の汚染物質に通常由来する、上記の過程で形成された少量の絹凝集体を除去した。絹フィブロイン水溶液の最終濃度は約6%(w/v)であった。この濃度は、既知の体積の溶液の乾燥後に残留固体を計量することによって求めた。
【0060】
この6%絹フィブロイン溶液は使用時まで4℃で保存し、超純水で低濃度に希釈してもよい。高濃度の絹フィブロイン溶液を得るために、6%絹フィブロイン溶液を、ポリエチレングリコール(PEG)、アミラーゼまたはセリシンなどの吸湿性ポリマーに対して透析してもよい。例えば6%絹フィブロイン溶液を浸透圧により2〜12時間、SLIDE-A-LYZER(登録商標)3,500MWCO透析用カセットの外側で25重量%〜50重量%のPEG(分子量8,000〜10,000)溶液に曝露してもよく、絹水溶液の最終濃度は8重量%〜30重量%またはそれ以上まで濃縮された。
【0061】
実施例2 絹/グリセロールブレンドフィルムの調製
精製した絹フィブロイン溶液を0%、5%、10%、20%、30%、40%、50%(w/w)の重量比でグリセロールと混合した。混合溶液をペトリ皿に注ぎ、層流フード内で室温で終夜乾燥した。特に断らないかぎり「乾燥ブレンドフィルム」とは、この直接キャスト及び終夜乾燥によって調製したフィルムを指し、「湿潤ブレンドフィルム」とは同じくキャスト及び乾燥させたフィルムであって、そこからその後、超純水中で37℃で1時間グリセロールを抽出した後、空気中で再び乾燥させたフィルムを指す。処理群の更なる変量に関しては、メタノール処理を用い、その場合、フィルム(グリセロールを含むまたは含まない)を90%(v/v)のメタノールに1時間浸漬した後、風乾した。
【0062】
実施例3 絹/グリセロールフィルムの溶解
ブレンドフィルムを約5mm×5mmの正方形に切断し、正方形フィルムの1枚を秤量して、2mlの試験管中で1%(フィルムの重量/水の容量)の濃度となるように超純水に浸漬し、37℃で1時間または1日間維持した。インキュベーションの後、絹フィルムを溶液から取り出し、終夜風乾し、秤量し、最初のフィルムの質量と比較して残留質量(%)を求めた。残った溶液について280nmで紫外線吸光度測定を行った。様々な濃度の精製絹フィブロイン溶液を標準液として用いて、吸光度の値を水に可溶化した絹の量に変換した。次いで、溶解した絹の量をフィルム中の絹の全質量と比較して、水中で絹を溶解したフィルムのパーセンテージを求めた。
【0063】
実施例4 フーリエ変換赤外(FTIR)分光法による絹/グリセロールフィルムの分析
赤外吸収スペクトルにフーリエセルフデコンボリューション(FSD)を行うことによってランダムコイル、αヘリックス、βプリーツシート、及びターンを含む、フィルム中に存在する二次構造を評価した。処理を行った試料のFTIR分析は、重水素化硫酸トリグリシン検出器およびパイク・テック社(Pike Tech)(ウィスコンシン州マディソン)製のゲルマニウム(Ge)結晶を用いた多重反射型水平式MIRacle(登録商標)ATRアタッチメントを備えたBrukerEquinox55/S FTIR分光計(ブルカー・オプティクス社(Bruker Optics Inc.)マサチューセッツ州ビレリカ)によって行った。5mm×5mmの正方形の絹フィルムをGe結晶セル内に置き、FTIR顕微鏡の反射モードで調べた。バックグラウンドの測定値を空のセルを用いて求め、試料の指示値から差し引いた。各測定値について解像度4cm-1および400m-1〜4000cm-1の波数の範囲で64回の走査を記録した。
【0064】
アミドI領域(1595cm-1〜1705cm-1)にわたる赤外線スペクトルのFSDは以前に述べたようにOpus5.0ソフトウェア(オーパス・ソフトウェア社(Opus Software Inc.,)カリフォルニア州サンフランシスコ)によって行った(Hu et al., 39 Macromolecules, 6161-70(2006))。1616cm-1〜1637cm-1および1695cm-1〜1705cm-1の振動数範囲の吸収バンドは豊富なβシート構造を示し、1638cm-1〜1655cm-1の範囲のバンドはランダムコイル構造によるものであり、1656cm-1〜1663cm-1の範囲のバンドはαヘリックスによるものであり、1663cm-1〜1695cm-1の範囲のバンドはターンによるものであった。
【0065】
実施例5 絹/グリセロールフィルムの機械的特性
10N容量ロードセルならびに水中浸漬可能な空圧クランプおよび温度制御式液浴を含むBIOPULS(商標)試験システム(Instron(登録商標)、マサチューセッツ州ノーウッド)を備えたInstron3366試験フレームで引張試験を行った。フィルム試料をASTM規格D638-02aに基づくシリコーン鋳型にキャストし、2倍にスケールアップして、クランプによる締めつけに必要とされる大きな表面およびビデオ伸び計に必要なゲージ長さ(28mm)が得られるように全体の長さを80mmとした。乾燥環境については、フィルムを25℃および相対湿度50%の環境チャンバ内で2日間調整した。湿潤環境については、絹/グリセロールフィルム試料を0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で1時間水和させた後、試験に先立って、PBSで満たしたBIOPULS(商標)浴(37±0.3℃)中に少なくとも5分間浸漬した。純粋な絹フィブロインフィルム(0%グリセロール)は、90%(v/v)メタノールで1時間、前処理してからグリセロール試料と同じ様式で処理した。全てのフィルムは、最初のクランプ-クランプ間の長さ(公称長さ約47mm、公称伸展速度約2.82mm/分)に基づき、0.1%/秒の歪み調節速度で試験した。負荷およびビデオ伸び計による歪みデータは20Hzで得た。後者は各フィルムの最も薄い部分の表面に約1cmの公称間隔で配された2個の基準ペイントマーカーに基づいて得た。各フィルムについて5つの複製物を試験した。フィルムの厚さをSEMによって測定し、試料の幅(10mm)を乗ずることによって最初の断面積を求めた。公称応力および歪みをグラフ化し、初期の「線形弾性係数」、破断歪み(strain to failure)、および最終引張強度(UTS)を求めた。UTSは試験の間に得られた最も高い応力値として求めた。初期の「線形弾性係数」は0.1Nの負荷に相当する点とUTSの50%に相当する点の間での最小二乗法によるフィッティングを用いることによって算出した。これは、試験したすべての試料について応力/歪み曲線の直線部分を客観的に得るうえで充分と考えられる。破断伸び率(elongation to failure)は負荷減少が10%を上回る前の最後のデータ点として求めた。
【0066】
実施例6 走査型電子顕微鏡法(SEM)
絹フィルムを液体窒素中で破砕し、白金をスパッタリングした。様々な絹フィルムの断面および表面の形態をZeissSUPRA(商標)55VP SEM(カール・ツァイス社(Carl Zeiss)ドイツ、イェーナ)を用いて画像化した。
【0067】
実施例7 線維芽細胞の培養および絹フィルムへの接着
線維芽細胞を、90%DMEM、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlペニシリン、1000U/mlストレプトマイシンを含む増殖培地に広げた。細胞培養物は95%大気および5%CO2のインキュベーター中で37℃に維持した。培養物には2日毎に37℃の新鮮な培地を補充した。接着のために、24穴プレート中に予めキャストした絹フィルム上に、1mlの血清含有培地中、各ウェル当たり50,000個の細胞となるように細胞を播種した。絹を含まない組織培養用プラスチック(TCP)を入れた空のウェルを対照とした。細胞の播種から3時間後に培養培地に50μlのアラマーブルーを加え、更に6時間培養し、培地の蛍光(Ex=560nm,Em=590nm)を測定することによって、細胞の付着を評価した。培養中、細胞の増殖をアラマーブルー染色を用いて判定し、細胞の形態を位相差光学顕微鏡法によってモニターした(カール・ツァイス社(Carl Zeiss)ドイツ、イェーナ)。
【0068】
実験はすべて、各データ点について最低でもN=3で行った。一元配置分散分析(ANOVA)およびStudent-Newman-Keuls多重比較検定によって統計学的分析を行った。差はP≦0.05で有意とし、P≦0.01で極めて有意とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絹フィブロイン及び約10%(w/w)〜約50%(w/w)のグリセロールを含む絹フィルム。
【請求項2】
前記絹フィルムのグリセロール含有量が約20%(w/w)〜約40%(w/w)である、請求項1に記載の絹フィルム。
【請求項3】
前記絹フィルムのグリセロール含有量が約30%(w/w)である、請求項1または2に記載の絹フィルム。
【請求項4】
少なくとも1種類の活性物質を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の絹フィルム。
【請求項5】
前記絹フィルムに包埋された絹マイクロスフェアまたは絹ナノスフェアをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の絹フィルム。
【請求項6】
スポンジまたはブロックに積層されたまたは折り畳まれた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の絹フィルム。
【請求項7】
前記少なくとも1種類の活性物質が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは部分、ホルモン、ホルモンのアンタゴニスト、増殖因子または組換え増殖因子ならびにそれらの断片及び変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質または抗菌化合物、ウイルス、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬剤、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の絹フィルム。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の活性物質が細胞である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の絹フィルムを含む組織工学用構築物。
【請求項9】
前記細胞が、肝細胞、膵島細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、外分泌細胞、腸管由来細胞、胆管細胞、副甲状腺細胞、甲状腺細胞、副腎-視床下部-下垂体軸の細胞、心筋細胞、腎臓上皮細胞、尿細管細胞、腎基底膜細胞、神経細胞、血管細胞、骨及び軟骨を形成する細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、眼細胞、外皮細胞、骨髄細胞、ケラチノサイト、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、成体幹細胞および胚性幹細胞、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の組織工学用構築物。
【請求項10】
組織工学で作製される(tissue engineered)構築物が角膜組織構築物であり、前記細胞が角膜線維芽細胞である、請求項9に記載の組織工学用構築物。
【請求項11】
細胞増殖培地を更に含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の組織工学用構築物。
【請求項12】
前記絹フィルム上に光学パターンを更に備えた、請求項1〜7のいずれか一項に記載の絹フィルム。
【請求項13】
前記光学パターンがホログラフィ画像である、請求項12に記載の絹フィルム。
【請求項14】
以下の段階を含む、絹フィルムを調製するための方法:
絹フィブロイン溶液をグリセロールとブレンドする段階であって、絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜約50%(w/w)である段階;
該絹フィブロイン/グリセロールブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および
該絹フィルムを乾燥する段階。
【請求項15】
グリセロールが溶解する液体中に、前記絹フィルムからグリセロールを枯渇させるための期間にわたり該絹フィルムを浸漬する段階;および
グリセロールが枯渇した該フィルムを乾燥する段階
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィルムをアニールする段階を更に含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
基材の表面を絹組成物で覆うための方法であって、
フィルム支持基材を供給する段階;および
約10%〜50%(w/w)のグリセロールを含む絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムで該フィルム支持基材を覆う段階
を含む方法。
【請求項18】
前記絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムが少なくとも1種類の生体高分子を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生体高分子がPVAまたはPEOである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記絹フィブロイン/グリセロールブレンドフィルムが少なくとも1種類の活性物質を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法に基づいて調製された、絹フィルムで覆われた基材。
【請求項22】
組織、再生組織、医療用装置、医療用インプラント、獣医学用装置、または獣医学用インプラントである、請求項21に記載の絹フィルムで覆われた基材。
【請求項23】
絹を主成分とする複合材である、請求項20または22に記載の絹フィルムで覆われた基材。
【請求項24】
以下の段階を含む、少なくとも1種類の活性物質を絹フィルムに包埋するための方法:
絹フィブロイン溶液を少なくとも1種類の活性物質及びグリセロールとブレンドする段階であって、絹ブレンド溶液中のグリセロールの濃度が約10%〜50%(w/w)である段階;
該絹ブレンド溶液をフィルム支持表面上にキャストする段階;および
該フィルムを乾燥する段階。
【請求項25】
前記少なくとも1種類の活性物質が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは部分、ホルモン、ホルモンのアンタゴニスト、増殖因子または組換え増殖因子ならびにそれらの断片及び変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質または抗菌化合物、ウイルス、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬剤、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
グリセロールが溶解する液体中に、前記絹フィルムからグリセロールを枯渇させるための期間にわたり該絹フィルムを浸漬する段階;および
グリセロールが枯渇した該フィルムを乾燥する段階
を更に含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記フィルムをアニールする段階を更に含む、請求項24〜26のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−505297(P2012−505297A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531202(P2011−531202)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060135
【国際公開番号】WO2010/042798
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(510300430)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (12)
【Fターム(参考)】