説明

グリッパシステム及びグリッパ、並びにマニピュレーションシステム

【課題】把持できる対象物の大きさの制限を緩和すること。
【解決手段】グリッパ1は、対象物を把持する把持手段2と、モータ4を用いて把持手段2を動作させる第1の駆動手段と、圧電素子入りサポートユニット3を用いて把持手段2を動作させる第2の駆動手段と、把持手段2が対象物を把持する際の把持力を検出する荷重センサ40及びひずみゲージ42を含む。把持手段2は、第1の把持部材2Aと、第1の把持部材2Aに対向して配置される第2の把持部材2Bとで構成されて、第1の把持部材2Aと第2の把持部材2Bとで対象物を挟持する。そして、モータ4を用いた第1の駆動手段が第2の把持部材2Bを動作させ、圧電素子入りサポートユニット3を用いた第2の駆動手段が第1の把持部材2Aを動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を把持するグリッパ及びこのグリッパを含むグリッパシステム、並びにこのグリッパシステムを有するマニピュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡の観測下で微小な機械部品や細胞等といった微小な対象物に対して操作を行うため、対象物を把持するグリッパが用いられている。例えば、特許文献1には、磁界中に配置した一対の可撓性フィンガーに、磁界内に発生するローレンツ力で可撓性フィンガーを変形させるコイル層を形成してなるマイクログリッパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3109220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1には、マイクログリッパの操作については言及されておらず、対象物を把持する際の操作性を向上させることについては改善の余地がある。また、特許文献1に開示されるマイクログリッパは、変位が±50μm程度なので、微細な対象物に対しては好適であるが、変位を超えた寸法の対象物を把持することは困難である。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、グリッパによって対象物を把持する際の操作性を向上させること、グリッパが把持できる対象物の大きさの制限を緩和することのうち少なくとも一つを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るグリッパは、対象物を把持する把持手段と、当該把持手段を動作させる駆動手段と、前記把持手段が前記対象物を把持する際の把持力を検出する把持力検出手段とを含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパにおいて、前記把持力検出手段が、予め設定された把持動作停止閾値以上の把持力を検出した場合、前記駆動手段は、前記把持手段の把持動作を停止することが好ましい。
【0007】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパにおいて、前記駆動手段は、モータを用いて前記把持手段を動作させる第1の駆動手段と、圧電素子を用いて前記把持手段を動作させる第2の駆動手段とのうち少なくとも一つで構成されることが好ましい。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパにおいて、前記第1の駆動手段は、ボールねじを用いて前記モータの回転運動を直線運動に変換することが好ましい。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパにおいて、前記把持手段は、第1の把持部材と、当該第1の把持部材に対向して配置される第2の把持部材とで構成されて、前記第1の把持部材と前記第2の把持部材とで前記対象物を挟持することが好ましい。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパにおいて、前記第1の駆動手段が前記第2の把持部材を動作させ、前記第2の駆動手段が前記第1の把持部材を動作させることが好ましい。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパにおいて、前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段が、前記第2の把持部材を動作させることが好ましい。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパにおいて、前記把持力検出手段は、ひずみゲージと荷重センサと変位計とのうち少なくとも一つであることが好ましい。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るグリッパシステムは、請求項1から8のいずれか1項に記載のグリッパと、前記把持力検出手段が検出した前記把持力に基づき、把持手段を操作する操作手段が備える操作部への入力に対して発生する操作反力を制御する操作反力調整手段と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパシステムにおいて、前記操作反力調整手段は、前記把持力検出手段が、予め設定された把持力増加開始閾値以上の把持力を検出した場合、前記把持手段を操作する操作手段が備える操作部への入力に対して発生させる操作反力を、これまでよりも増加させることが好ましい。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパシステムにおいて、前記操作反力調整手段は、前記把持力検出手段が、予め設定された把持動作停止閾値以上の把持力を検出した場合、前記把持手段を操作する操作手段が備える操作部の動作を固定することが好ましい。
【0016】
本発明の望ましい態様としては、前記グリッパシステムにおいて、前記把持力検出手段が、予め設定された把持動作停止閾値以上の把持力を検出した場合、前記駆動手段による前記把持手段の把持動作を停止させる把持制御手段を備えることが好ましい。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るマニピュレーションシステムは、前記グリッパシステムを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、グリッパによって対象物を把持する際の操作性を向上させること、グリッパが把持できる対象物の大きさの制限を緩和することのうち少なくとも一つを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態に係るグリッパが取り付けられるマニピュレーションシステムの構成図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るグリッパが取り付けられるマニピュレーションシステムの説明図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るグリッパ及びグリッパシステムの説明図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るグリッパの側面図である。
【図5】図5は、図3のA−A断面図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るグリッパシステムの制御手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施形態に係るグリッパシステムの制御における操作反力の変化を示す模式図である。
【図8】図8は、本実施形態の変形例に係るグリッパシステムの制御手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施形態の変形例に係るグリッパシステムの制御における操作反力の変化を示す模式図である。
【図10】図10は、本実施形態の第1変形例に係るグリッパの構成例を示す図である。
【図11】図11は、本実施形態の第2変形例に係るグリッパの構成例を示す図である。
【図12】図12は、本実施形態の第3変形例に係るグリッパの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の説明により本発明が限定されるものではない。また、下記の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0021】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るグリッパが取り付けられるマニピュレーションシステムの構成図である。図2は、本実施形態に係るグリッパが取り付けられるマニピュレーションシステムの説明図である。図1に示すマニピュレーションシステム100は、テーブル34に第1マニピュレータ20L及び第2マニピュレータ20Rが取り付けられる。図2に示すように、本実施形態に係るグリッパ1は、例えば、第1マニピュレータ20Lや第2マニピュレータ20Rに取り付けられて、図1に示すテーブル34に載置されるベース33内の対象物(例えば、卵子、精子、細胞、微小部品等)を把持する。
【0022】
図2に示すように、マニピュレーションシステム100は、第1マニピュレータ20L及び第2マニピュレータ20Rと、顕微鏡ユニット30と、グリッパシステム26とを含んでいる。本実施形態において、第1マニピュレータ20L及び第2マニピュレータ20Rは、直交3軸系のマニピュレータである。第1マニピュレータ20L及び第2マニピュレータ20Rは、XY軸ステージ21と、Z軸ステージ22と、X軸駆動装置23と、Y軸駆動装置24と、Z軸駆動装置25と、第1マニピュレータ20L及び第2マニピュレータ20Rにグリッパ1やインジェクションピペット等を取り付けるグリッパシステム26とを有する。グリッパシステム26は、Z軸ステージ22に取り付けられる。本実施形態では、第1マニピュレータ20Lと第2マニピュレータ20Rとの両方にグリッパ1を取り付けるが、一方にはグリッパ1とは異なる装置を取り付けてもよい。
【0023】
X軸駆動装置23及びY軸駆動装置24及びZ軸駆動装置25は、制御装置50によって制御され、グリッパシステム26に取り付けられるグリッパ1の位置が制御される。XY軸ステージ21及びZ軸ステージ22は、X軸駆動装置23及びY軸駆動装置24及びZ軸駆動装置25によって移動して、図1に示すテーブル34上の三次元空間内でグリッパ1を移動させる。なお、第1マニピュレータ20L及び第2マニピュレータ20Rは、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0024】
顕微鏡ユニット30は、カメラ31、顕微鏡32を有する。顕微鏡32は、ベース33内の対象物を拡大する。カメラ31は顕微鏡32に取り付けられており、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子で構成される。カメラ31は、顕微鏡32で拡大された対象物を撮像する。カメラ31は、制御装置50に接続されており、撮像した対象物の画像は、制御装置50に取り込まれて、グリッパ1が対象物を把持するときの制御に用いられたり、制御装置50に接続される表示装置(例えば、ディスプレイ)60に表示されたりする。
【0025】
制御装置50には、第1マニピュレータ20Lや第2マニピュレータ20Rを操作したり、グリッパ1を操作したりするためのジョイスティック61が接続されている。作業者は、ジョイスティック61を操作することで、第1マニピュレータ20Lや第2マニピュレータ20RのXY軸ステージ21やZ軸ステージ22を移動させたり、グリッパ1の把持部を動作させたりする。これによって、グリッパ1を所望の位置に移動させたり、グリッパ1で対象物を把持したり、把持した対象物を解放したりする。
【0026】
図3は、本実施形態に係るグリッパ及びグリッパシステムの説明図である。図4は、本実施形態に係るグリッパの側面図である。図5は、図3のA−A断面図である。グリッパシステム26は、グリッパ1と、制御装置50と、ジョイスティック61とを含む。グリッパ1は、対象物を把持する把持手段2と、把持手段2を動作させる駆動手段とを含む。駆動手段は、第1の駆動手段と第2の駆動手段とで構成される。第1の駆動手段は、モータ(電動機)4を用いて把持手段2を動作させるものであり、第2の駆動手段は、圧電素子入りサポートユニット3に内蔵されている圧電素子を用いて把持手段2を動作させるものである。また、グリッパ1は、把持手段2が対象物を把持する際の把持力を検出する把持力検出手段を備える。把持力検出手段は、例えば、荷重センサとひずみゲージと変位計とから少なくとも一つが用いられる。本実施形態では、把持力検出手段として荷重センサ及びひずみゲージが用いられる。
【0027】
把持手段2は、第1の把持部材2Aと、第1の把持部材2Aに対向して配置される第2の把持部材2Bとで構成されて、第1の把持部材2Aと第2の把持部材2Bとで対象物を挟持して把持する。本実施形態において、把持手段2は、第1の把持部材2Aの把持部2HAと第2の把持部材2Bの把持部2HBとで対象物が挟持される。第1の把持部材2Aの把持部2HAの反対側と、第2の把持部材2Bの把持部2HBの反対側とは、連結部2Sで連結される。このように、把持手段2は、第1の把持部材2Aと第2の把持部材2Bとを一体とした、略U字形状の部材である。把持手段2の材料はシリコン、高分子材料、金属材料等を用いることができる。特に、対象物の寸法が小さい場合、半導体製造プロセス等を利用して把持手段2を製造し、把持部2HA、2HBを細く形成して、対象物に適した形状とすることが好ましい。
【0028】
グリッパ1は、案内要素6と、それに取り付けられている支持軸受ハウジング5とを備える。案内要素6の両端部には、支持軸受ハウジング5と、圧電素子入りサポートユニット3(構造は、例えば、本願出願人の特開2006−189129号公報を参照)とが連結されている。図5に示すように、案内要素6は、長手方向に向かって案内溝6Rが形成されている。
【0029】
図3、図5に示すように、案内要素6の間には、スライダ7が配置される。スライダ7は、案内要素6の間に複数の球7Bを介して、予圧負荷された状態で配置される。スライダ7は、案内要素の案内溝6Rに沿って直線運動できるように支持される。図5に示すように、スライダ7には、案内溝7Rと並行して、ボールねじナットがスライダ7と一体になった状態で設置されており、ねじ軸9がそこに配置される。なお、本実施形態では、グリッパ1にボールねじを使用しているが、これに限定されるものではない。
【0030】
ねじ軸9の回転によりスライダ7は案内要素6によってねじ軸9の回転軸Zと平行な方向に移動する。ねじ軸9は、連結部材10を介してモータ4の出力軸4Sに連結されている。ねじ軸9の一方の端部は、連結部材10を介してモータ4の回転軸4Sと連結されており、他方の端部は、支持軸受ハウジング5に設けられた軸受によって回転可能に支持される。
【0031】
図3、図4に示すように、本実施形態において、モータ4は、案内要素6に対し、圧電素子入りサポートユニット3を介して配置される。あるいは、この1軸アクチュエータ(グリッパ1)の構成によっては、図3に示した支持軸受ハウジング5と圧電素子入りサポートユニット3との配置を入れ替えてもよい。図3に示す構成において、圧電素子入りサポートユニット3で使用する圧電素子は円筒状であり、ねじ軸9と同軸上に設置しても圧電素子とねじ軸9とが接触しないようになっている。
【0032】
図3、図4に示すように、支持軸受ハウジング5とスライダ7との間には、把持部材2が配置される。より具体的には、把持部材2の第1の把持部材2Aが支持軸受ハウジング5に取り付けられ、第2の把持部材2Aがスライダに取り付けられる。なお、第2の把持部材2Bとスライダ7との間には把持力検出手段40が配置されており、第2の把持部材2Bは、把持力検出手段40を介してスライダ7に取り付けられる。このような構成により、スライダ7が移動すると、把持部材2Bが動作する。すなわち、把持部材2の把持部2HA、2HBが開閉する。
【0033】
モータ4の回転によりねじ9が回転すると、スライダ7に形成されたボールねじナットによって、ねじ9の回転運動はスライダ7の往復運動に変換される。これによって、スライダ7はボールねじに沿って移動して、第2の把持部材2Bを動作させる。スライダ7が支持軸受ハウジング5に接近すると、把持手段2の把持部2HA、2HBが閉じて、把持部材2は、例えば対象物を把持し、スライダ7が支持軸受ハウジング5から離れると、把持手段2の把持部2HA、2HBが開いて、把持部材2は、例えば把持していた対象物を解放する。
【0034】
圧電素子入りサポートユニット3を構成する圧電素子は、与えられた電圧を力に変換するもので、本実施形態では、把持手段2の把持部2HA、2HBが接近、あるいは離れる方向に沿う力を発生する。本実施形態においては、電圧を付与すると、前記圧電素子は、ねじ軸9及びスライダ7を軸方向へ移動する。また、圧電素子入りサポートユニット3の変形量を大きくするため、これに内蔵される複数の圧電素子を積層して構成してもよい。
【0035】
モータ4の駆動を停止した状態で圧電素子入りサポートユニット3を構成する圧電素子に電圧を印加すると、前記圧電素子は、ねじ軸9及びスライダ7を軸方向へ移動させる。この移動により、支持軸受ハウジング5とスライダ7との距離が変化する。この距離の変化によって把持手段2の把持部2HA、2HBが開閉動作をする。
【0036】
モータ4及びねじ9を用いてスライダ7を移動させる場合、スライダ7の移動量が大きくとることができる。このため、モータ4を用いる場合、把持手段2を大きく開閉させる場合に好適であり、特に、対象物が比較的大きい場合に適している。一方、圧電素子入りサポートユニット3を構成する圧電素子は、変形量は小さいが高精度に変形を制御できるので、前記圧電素子によってスライダ7を移動させる場合、その移動量は小さいが高精度の位置制御が可能である。このため、圧電素子入りサポートユニット3を用いる場合、把持手段2を微少量開閉させ、かつ高精度にスライダ7の位置を制御する場合に好適であり、対象物が比較的小さい場合に適している。このように、グリッパ1は、把持手段2の粗動にモータ4を用い、把持手段2の微動に圧電素子を用いる。その結果、グリッパ1は、把持手段2の大きな開閉動作から微小な開閉動作まで実現できるので、把持手段2によって把持できる対象物の大きさの制限を緩和できる。
【0037】
本実施形態において、把持手段2の動作は、制御装置50によって制御される。制御装置50には、圧電素子ドライバ62及びモータドライバ63が接続されており、制御装置50からの指令により、圧電素子ドライバ62やモータドライバ63が圧電素子入りサポートユニット3の圧電素子やモータ4を駆動する。また、制御装置50には、グリッパ1の把持手段2の操作手段であるジョイスティック61が接続されている。
【0038】
本実施形態において、ジョイスティック61は、基板61Bと、作業者が操作する操作レバー61Rと、操作レバー61Rの移動量を検出する操作量検出センサ41と操作レバー61Rの操作に対する反力(操作反力)を操作レバー61Rに付与する操作反力付与手段61Aとを含んでいる。このような構成により、操作レバー61Rを操作すると、グリッパ1の把持手段2が動作するとともに、操作レバー61Rには、操作反力付与手段61Aによって操作反力が付与される。操作反力付与手段61Aは、ジョイスティック61にフォースフィードバック機能を付与する。本実施形態においては、図3の矢印R1方向にジョイスティック61の操作レバー61Rを動かすとグリッパ1の把持手段2が閉じ、矢印R2方向に動かすと把持手段2が開くものとする。なお、ジョイスティック61の代わりにハプティックデバイス、スイッチ、ボタン、パーソナルコンピュータのマウス、キーボード等をグリッパ1の操作手段に用いてもよい。
【0039】
制御装置50はマイクロコンピュータであり、処理部50Pと、記憶部50Mと、入出力部50IOとを含む。入出力部50IOには、圧電素子ドライバ62、モータドライバ63、把持力検出手段である荷重センサ40、操作量検出センサ41、把持力検出手段であるひずみゲージ42が接続される。ここで、ひずみゲージ42は、グリッパ1の把持手段2(より具体的には第2の把持部材2B)に取り付けられて、荷重センサ40とともに把持手段2に作用する荷重を検出する。ここで、グリッパ1には、荷重センサ40とひずみゲージ42とは、少なくとも一方を取り付ければよい。
【0040】
処理部50Pは、CPU(Central Processing Unit)と半導体メモリとを組み合わせて構成されており、グリッパシステム26やマニピュレーションシステム100に対する種々の制御を実行する。記憶部50Mは、例えば、半導体を利用した記憶素子や磁気記憶装置、あるいは光磁気記憶装置等であり、グリッパシステム26やマニピュレーションシステム100の制御に必要なコンピュータプログラムや制御データ等が保存される。
【0041】
処理部50Pは、駆動制御部51と、制御条件判定部52と、操作反力制御部53とを備える。駆動制御部51は把持制御手段であり、荷重センサ40やひずみゲージ42が検出した情報に基づき、グリッパ1の駆動手段である圧電素子入りサポートユニット3やモータ4を制御して、グリッパ1が備える把持手段2の動作を制御する。制御条件判定部52は、グリッパシステム26やマニピュレーションシステム100に対する種々の制御において、制御の条件を判定する。操作反力制御部53は操作反力調整手段であり、荷重センサ40、操作量検出センサ41、ひずみゲージ42が検出した情報に基づき、操作手段であるジョイスティック61が備える操作反力付与手段61Aが発生する操作反力の大きさを制御する。本実施形態において、駆動制御部51の機能、及び制御条件判定部52の機能、及び操作反力制御部53の機能は、処理部50Pがこれらの機能を実現するコンピュータプログラムを記憶部50Mから読み出して実行することにより実現される。
【0042】
図6は、本実施形態に係るグリッパシステムの制御手順を示すフローチャートである。図7は、本実施形態に係るグリッパシステムの制御における操作反力の変化を示す模式図である。本実施形態に係るグリッパシステムの制御は、図3に示す制御装置50が実現する。この制御は、グリッパ1が対象物を把持する際の制御である。作業者が、図3に示すジョイスティック61の操作レバー61Rを矢印R1の方向に動かすと、制御装置50の処理部50Pが備える駆動制御部51は、モータ4や圧電素子入りサポートユニット3を駆動して、グリッパ1の把持手段2を閉じる。これによって、把持手段2は、対象物を把持しようとする。このとき、制御装置50の処理部50Pが備える操作反力制御部53は、操作反力付与手段61Aに操作反力Fr1を発生させる(図7)。
【0043】
ステップS101において、制御装置50の処理部50Pが備える制御条件判定部52は、荷重センサ40やひずみゲージ42が検出した情報に基づき、把持力(把持手段2が対象物を把持する際に把持手段2が対象物に付与する力)Fhを求める。次に、ステップS102へ進み、制御条件判定部52は、予め設定された把持動作停止閾値Fhcを記憶部50Mから取得し、ステップS101で求めた把持力Fhと比較する。把持動作停止閾値Fhcは、例えば、把持手段2を構成する第1の把持部材2A及び第2の把持部材2Bが撓んで不具合が発生するするおそれのある力より小さい値(例えば、50%程度)としたり、対象物を把持手段2が把持でき、かつ対象物に不具合が発生しない程度の大きさとしたりして、制御装置50の記憶部50Mに格納しておく。後者の場合、対象物に応じて把持動査定し把持動作停止閾値Fhcを予め求める。
【0044】
ステップS102でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部52が、Fh≧Fhcであると判定した場合、ステップS103へ進む。ステップS103において、操作反力制御部53は、ジョイスティック61の操作レバー61Rを動きづらくするように、最大の操作反力を出力する。この場合、図7に示すように、操作反力Frが最大(Frmax)になる。これによって、操作レバー61Rが動きづらくなる。したがって、操作反力Frが最大にして最大反力を操作者へ伝えることで、これまで通り操作しようとしても把持操作はできなくなるので、把持手段2に不具合が生じたり、対象物に不具合が生じたりするおそれを回避できる。
【0045】
このように、本実施形態では、把持力検出手段である荷重センサ40やひずみゲージ42が検出した把持力Fhに基づいて、操作反力調整手段である操作反力制御部53が操作反力Frを発生させるので、作業者は、把持手段2が把持している対象物に作用する把持力Fhの情報を把握しながら作業できる。これによって、グリッパ1を用いて対象物を把持する際の操作性が向上する。また、把持動作停止閾値Fhc以上の把持力Fhが発生した場合には、作業者の操作に関わらずステップS103の動作をして、把持手段2に不具合が発生したり、対象物に不具合が発生したりするおそれを回避できるので、作業性が向上する。
【0046】
最大反力を出力してジョイスティック61の操作レバー61Rを動きづらくする制御と、その際に把持動作を停止させる制御とは、同時に実行してもよいし、Fh≧Fhcとなったら、即把持操作を停止させてもよい。すなわち、把持手段2の把持力にリミッタを設けることが好ましい。これによって、把持手段2に不具合が発生したり、対象物に不具合が発生したりするおそれを確実に回避できる。ステップS102でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部52が、Fh<Fhcであると判定した場合、ステップS104へ進み、駆動制御部51は、把持手段2による把持動作を継続する。この場合、操作反力制御部53は、操作反力付与手段61Aに操作反力Fr1を発生させる(図7)。
【0047】
本実施形態では、把持手段2の把持力を実測したが、例えば、カメラ31によって撮像された対象物の変形量に基づいて操作反力Frを変更したり、把持動作を停止させたりしてもよい。すなわち、対象物の変形量は、把持力Fhと相関が高いため、対象物の変形量を把持力Fhに相当するものであるとして、本実施形態に係るグリッパシステムの制御を実行する。
【0048】
この場合、例えば、把持手段2が把持する前の対象物の画像をカメラ31によって取得して、画像処理によって対象物の寸法を求めておく。把持手段2によって対象物を把持することによって対象物が変形した場合、変形した対象物の画像をカメラ31によって取得し、画像処理によって変形後における対象物の寸法を求める。そして、変形後における対象物の寸法(把持力が作用する方向の寸法)が、変形前における寸法の所定の割合(例えば80%)になった場合には、ジョイスティック61の操作レバー61Rの動きを固定したり、把持動作を停止させたりする。
【0049】
(グリッパシステムの制御の変形例)
図8は、本実施形態の変形例に係るグリッパシステムの制御手順を示すフローチャートである。図9は、本実施形態の変形例に係るグリッパシステムの制御における操作反力の変化を示す模式図である。本変形例に係るグリッパシステムの制御は、上述したグリッパシステムの制御と同様であるが、ジョイスティック61の操作レバー61Rを停止させる前に、操作反力Frを徐々に大きくする点が異なる。
【0050】
把持手段2は、対象物を把持しようとするとき、操作反力制御部53は、操作反力付与手段61Aに操作反力Fr2を発生させる(図9)。これは、操作レバー61Rが急激に動かないようにするためである。ステップS201において、制御条件判定部52は、荷重センサ40やひずみゲージ42が検出した情報に基づき、把持力Fhを求める。次に、ステップS202へ進み、制御条件判定部52は、予め設定された把持力増加開始閾値Fh_Lを記憶部50Mから取得し、ステップS201で求めた把持力Fhと比較する。把持力増加開始閾値Fh_Lは、例えば、把持手段2を構成する第1の把持部材2A及び第2の把持部材2Bが対象物を把持したときの把持力Fhとする。
【0051】
ステップS202でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部52が、Fh≧Fh_Lであると判定した場合、ステップS203へ進む。ステップS203において、制御条件判定部52は、予め設定された把持動作停止閾値Fhcを記憶部50Mから取得し、ステップS201で求めた把持力Fhと比較する。ステップS203でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部52が、Fh≧Fhcであると判定した場合、ステップS204に進む。ステップS204において、操作反力制御部53は、ジョイスティック61の操作レバー61Rを動きづらくするように、最大反力を出力させる。これによって、操作レバー61Rが動きづらくなる。したがって、駆動制御部51は、モータ4や圧電素子入りサポートユニット3の駆動を停止させ、把持手段2の把持動作を停止させる(ステップS204)。
【0052】
ステップS203でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部52が、Fh<Fhcであると判定した場合、ステップS205へ進む。ステップS205において、駆動制御部51は、把持手段2による把持動作を継続するとともに、操作反力制御部53は、操作反力Frをこれまでよりも増加させる。これによって、図9に示すように、把持力Fhが把持動作停止閾値Fhcになるまでは、把持力Fhが増加するにしたがって操作反力Frが増加していくので、作業者は、把持力Fhが把持動作停止閾値Fhcに近づくことを把握しやすくなる。その結果、把持力Fhが把持動作停止閾値Fhcになる前にジョイスティック61の操作レバー61Rの操作を停止できるので、把持手段2や対象物に過度な力が作用することを抑制できる。また、把持力Fhの増加にしたがって操作反力Frも増加するので、自然な操作フィーリングが得られる。
【0053】
ステップS202でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部52が、Fh<Fh_Lであると判定した場合、ステップS206に進む。ステップS206において、駆動制御部51は、把持手段2による把持動作を継続する。この場合、操作反力制御部53は、操作反力付与手段61Aに発生させる操作反力Fr2を発生させる(図9)。
【0054】
このように、本変形例では、把持力検出手段である荷重センサ40やひずみゲージ42が検出した把持力Fhに基づいて、操作反力調整手段である操作反力制御部53が操作反力Frを発生させるとともに、把持力Fhの増加にしたがって操作反力Frを増加させるので、作業者は、把持手段2が把持している対象物に作用する把持力Fhの情報をより把握し易くなる。これによって、グリッパ1を用いて対象物を把持する際の操作性がさらに向上する。
【0055】
また、把持力増加開始閾値Fh_L以上の把持力Fhが発生した場合に操作反力Frを増加させるので、把持力増加開始閾値Fh_Lを把持手段2が対象物を把持したときの把持力Fhとしておけば、操作反力Frの増加により、作業者は把持手段2が対象物を把持したことを把握できる。その結果、グリッパ1を用いて対象物を把持する際の操作性がさらに向上する。
【0056】
(グリッパの変形例1)
図10は、本実施形態の第1変形例に係るグリッパの構成例を示す図である。本変形例に係るグリッパ1aは、上述したグリッパ1と略同様であるが、第1の把持部材2Aaと第2の把持部材2Bbとの二つの部材で把持手段2aを構成する点が異なる。他の構成は、上述したグリッパ1と同様である。グリッパ1aは、第1の把持部材2Aaの把持側とは反対側の端部2ATが支持軸受ハウジング5に固定され、第2の把持部材2Bbの把持側とは反対側の端部2BTが、荷重センサ40を介してスライダ7に固定される。ひずみゲージ42は、第2の把持部材2Baに取り付けられる。このようにしても、上述したグリッパ1と同様の作用、効果が得られる。
【0057】
(グリッパの変形例2)
図11は、本実施形態の第2変形例に係るグリッパの構成例を示す図である。本変形例に係るグリッパ1bは、上述したグリッパ1と略同様であるが、圧電素子3bを、支持軸受ハウジング5と把持手段2を構成する第1の把持部材2Aとの間に配置する点が異なる。他の構成は、上述したグリッパ1と同様である。このようにすることで、上述したグリッパ1と同様の作用、効果が得られる他、上述したグリッパ1では動かすことができなかった把持部材2Aを微動させることができる。
【0058】
(グリッパの変形例3)
図12は、本実施形態の第3変形例に係るグリッパの構成例を示す図である。本変形例に係るグリッパ1cは、上述した第2変形例に係るグリッパ1bと略同様であるが、把持手段2に圧電素子3c1、3c2を取り付ける点が異なる。他の構成は、上述したグリッパ1と同様である。圧電素子3c1は、把持手段2を構成する第1の把持部材2Aに取り付けられ、また、圧電素子3c2は、把持手段2を構成する第2の把持部材2Bに取り付けられ、圧電バイモルフを構成する。圧電素子3c1、3c2に電圧が印加され、圧電素子3c1の面と平行な方向(図12の矢印E方向)に圧電素子3cが伸長し、圧電素子3c2の面と平行な方向(図12の矢印E方向)に圧電素子3cが縮むと、第1の把持部材2Aが第2の把持部材2Bに向かって撓む。すると、第1の把持部材2Aと第2の把持部材2Bとが対象物を挟持する。これによって、上述したグリッパ1と同様の作用、効果が得られる他、上述したグリッパ1では動かすことができなかった把持部材2Aを微動させることができる。
【0059】
以上、本実施形態及びその変形例では、把持力検出手段が検出した把持力に基づいて、操作反力調整手段が操作反力を発生させるので、作業者は、把持手段が把持している対象物に作用する把持力の情報を把握しながら作業できる。これによって、グリッパを用いて対象物を把持する際の操作性が向上する。また、本実施形態及びその変形例に係るグリッパは、把持手段の粗動にモータを用い、把持手段の微動に圧電素子を用いる。これによって、把持手段の大きな開閉動作から微小な開閉動作まで実現できるので、把持手段によって把持できる対象物の大きさの制限を緩和できる。なお、本実施形態に係るグリッパシステム及びグリッパによって把持される対象物は特に限定されるものではないが、微小な機械部品や細胞等の、顕微鏡の観測下で把持されるような微小な物体に対して本実施形態に係るグリッパシステム及びグリッパは特に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明に係るグリッパシステム及びグリッパ、並びにマニピュレーションシステムは、対象物を把持する際の操作性を向上させること、把持できる対象物の大きさの制限を緩和することに有用である。
【符号の説明】
【0061】
1、1a、1b、1c グリッパ
2、2a 把持手段
2HA、2HB 把持部
2A、2Aa 第1の把持部材
2B、2Bb 第2の把持部材
3 圧電素子入りサポートユニット
3b、3c 圧電素子
3H 貫通孔
4 モータ
4S 出力軸
5 支持軸受ハウジング
6A、6B 案内要素
6R 案内溝
7 スライダ
7R 案内溝
8 支持部材
10 連結部材
20L、20R マニピュレータ
26 グリッパシステム
30 顕微鏡ユニット
31 カメラ
32 顕微鏡
34 テーブル
40 荷重センサ
41 操作量検出センサ
42 ひずみゲージ
50 制御装置
50M 記憶部
50P 処理部
50IO 入出力部
51 駆動制御部
52 制御条件判定部
53 操作反力制御部
61 ジョイスティック
61A 操作反力付与手段
61B 基板
61R 操作レバー
100 マニピュレーションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する把持手段と、
当該把持手段を動作させる駆動手段と、
前記把持手段が前記対象物を把持する際の把持力を検出する把持力検出手段と、
を含むことを特徴とするグリッパ。
【請求項2】
前記把持力検出手段が、予め設定された把持動作停止閾値以上の把持力を検出した場合、前記駆動手段は、前記把持手段の把持動作を停止する請求項1に記載のグリッパ。
【請求項3】
前記駆動手段は、モータを用いて前記把持手段を動作させる第1の駆動手段と、圧電素子を用いて前記把持手段を動作させる第2の駆動手段とのうち少なくとも一つで構成される請求項1又は2に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記第1の駆動手段は、ボールねじを用いて前記モータの回転運動を直線運動に変換する請求項3に記載のグリッパ。
【請求項5】
前記把持手段は、第1の把持部材と、当該第1の把持部材に対向して配置される第2の把持部材とで構成されて、前記第1の把持部材と前記第2の把持部材とで前記対象物を挟持する請求項1から4のいずれか1項に記載のグリッパ。
【請求項6】
前記第1の駆動手段が前記第2の把持部材を動作させ、前記第2の駆動手段が前記第1の把持部材を動作させる請求項5に記載のグリッパ。
【請求項7】
前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段が、前記第2の把持部材を動作させる請求項5に記載のグリッパ。
【請求項8】
前記把持力検出手段は、ひずみゲージと荷重センサと変位計とのうち少なくとも一つである請求項1から7のいずれか1項に記載のグリッパ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のグリッパと、
前記把持力検出手段が検出した前記把持力に基づき、把持手段を操作する操作手段が備える操作部への入力に対して発生する操作反力を制御する操作反力調整手段と、
を含むことを特徴とするグリッパシステム。
【請求項10】
前記操作反力調整手段は、
前記把持力検出手段が、予め設定された把持力増加開始閾値以上の把持力を検出した場合、前記把持手段を操作する操作手段が備える操作部への入力に対して発生させる操作反力を、これまでよりも増加させる請求項9に記載のグリッパシステム。
【請求項11】
前記操作反力調整手段は、
前記把持力検出手段が、予め設定された把持動作停止閾値以上の把持力を検出した場合、前記把持手段を操作する操作手段が備える操作部の動作を固定する請求項9又は10に記載のグリッパシステム。
【請求項12】
前記把持力検出手段が、予め設定された把持動作停止閾値以上の把持力を検出した場合、前記駆動手段による前記把持手段の把持動作を停止させる把持制御手段を備える請求項11に記載のグリッパシステム。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載のグリッパシステムを有することを特徴とするマニピュレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−162650(P2010−162650A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7001(P2009−7001)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】