説明

コンクリートスラッジ微粉末回収用の破砕・乾燥装置

【課題】 塊状あるいは粒状の脱水ケーキが排出されるのを確実に防止して脱水ケーキを破砕・乾燥してコンクリートスラッジ微粉末を得る破砕・乾燥装置を提供する。
【解決手段】
破砕・乾燥装置(1)を、横型の回転ドラム(2)と、熱風炉(27)と、前記回転ドラム(2)の排出側の端部に設けられているトロンメル(31)とから構成する。回転ドラム(2)の内部に、所定の回転軸で駆動される破砕攪拌翼(12)を設け、その内周壁に、脱水ケーキを所定高さまで掬い上げて落下させるリフター(17)を設ける。その排出側の端部に、中心にくり抜きが明けられたトロンメル取付板(50)を固定し、これにトロンメル(31)を固着する。トロンメル(31)は、軸方向に向かってテーパ状に縮径した網体であり、その小径部には、内側に向かって立ち上がった出口側堰(38)を形成する。またトロンメル(31)には、トロンメル振動機構(42)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残コンクリートまたは戻りコンクリートに水を加えて処理したスラリー、あるいはセメント分を含んだ洗浄廃水から砂利、砂、微砂分を除去して脱水し、脱水ケーキを得、得られた脱水ケーキを破砕しながら乾燥してコンクリートスラッジ微粉末を回収する方法において、脱水ケーキを破砕・乾燥するのに使用される破砕・乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント、砂、砂利等からなるコンクリート、セメントと砂とからなるモルタル等は、レディミクストコンクリート工場により製造され、ミキサ車によってコンクリートの打設現場まで輸送され、現場で使用される。しかしながら使用されなかったコンクリートはレディミクストコンクリート工場に戻される。これらの、いわゆる残コンクリートあるいは戻りコンクリートは、従来産業廃棄物として処理されており、材料が無駄になってしまうだけでなく環境への負担が大きく問題になっている。またミキサ車のドラムを洗浄したり、レディミクストコンクリート工場のコンクリート混練用のミキサを洗浄するとセメント分を含んだ洗浄廃水が発生するが、洗浄廃水も洗浄廃水処理施設に排出して処理する必要があり、コストが嵩んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4472776号公報
【特許文献2】特開2008−105005号公報
【0004】
本出願人は特許文献1において、残コンクリートまたは戻りコンクリート、あるいはセメント分を含んだ洗浄廃水から、コンクリートスラッジ微粉末を回収する回収方法を提案している。回収方法は次のようになっている。
(A)残コンクリートまたは戻りコンクリートに水を加えて得られるスラリー、あるいはセメント分を含んだ洗浄廃水から、含砂率が10質量%以下になるように砂利と砂を分離してスラッジ水を得る。
(B)スラッジ水を湿式サイクロンで処理して微砂分を分離・除去して、濃縮スラッジ水を得る。
(C)濃縮スラッジ水をフィルタプレスにかけて含水率が25〜45質量%の脱水ケーキを得る。
(D)脱水ケーキを所定の破砕・乾燥装置によって破砕すると共に同時に乾燥して、他方の端部から連続的にコンクリートスラッジ微粉末を得る。
このようにして回収されたコンクリートスラッジ微粉末は品質が高いので、例えば土壌改良剤として利用することができる。
【0005】
このような回収方法の(D)工程において使用される破砕・乾燥装置は次のように構成されている。すなわち破砕・乾燥装置は、軸方向に所定の長さの横型の回転ドラムと、この回転ドラムに熱風を吹き込む熱風炉とから構成されている。そしてこの回転ドラムの内部空間には、軸心方向の回転軸に取り付けられている複数個の破砕攪拌翼が設けられていると共に、その内周壁には供給される脱水ケーキを所定高さまで掬い上げ、そして落下させるリフターが設けられている。従って、回転ドラムと回転軸とを駆動して、回転ドラムの一方の端部から脱水ケーキを供給すると共に熱風炉からの熱風を吹き込むと、脱水ケーキは破砕・乾燥され他方の端部からコンクリートスラッジ微粉末が回収されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の破砕・乾燥装置によっても十分に高い品質のコンクリートスラッジ微粉末が得られる。従って土壌改良剤として利用する場合には格別に問題はない。しかしながら、この装置においては、コンクリートスラッジ微粉末と一緒に、破砕されていない塊状の脱水ケーキも回転ドラムから排出されて混入する可能性もある。この装置には塊状の脱水ケーキがドラム外に排出しないようにする機構が格別に設けられていないからである。回転ドラム内で確実に微粉末にされると乾燥が早いので、水和反応が進んでいないセメント分が多く残留することになるが、塊状の脱水ケーキが回転ドラムから排出されると水分を含んでいる可能性が高い。そうすると、それ自身の水和反応が進むだけでなく十分に乾燥されたコンクリートスラッジ微粉末も湿らせて劣化させてしまうことになる。つまりコンクリート材料として使用することができる水準の、高い品質を備えたコンクリートスラッジ微粉末を確実に得られる保証はない。実際にはJISの規定によって回収されたコンクリートスラッジ微粉末をコンクリート材料として利用することはできないが、均一な微粉末にされたコンクリートスラッジ微粉末は普通ポルトランドセメントと遜色のない品質を備えているので、土壌改良剤以外にも利用分野が広がる可能性が高い。そうするとコンクリートスラッジ微粉末の経済的価値は高まる。このように経済的価値を高めるために、回収されるコンクリートスラッジ微粉末には、塊状、あるいは粒状の脱水ケーキが混入しないようにする必要がある。
【0007】
特許文献2には、コンクリートスラッジ微粉末の回収用の破砕・乾燥装置ではないが、被攪拌原料を持ち上げて落下させるリフターと、被攪拌原料を攪拌するスクリュー羽根を備えた横型の回転ドラムからなる、回転攪拌装置が記載されている。横型の回転ドラムにおいて、混合攪拌される原料が排出される一方の端部には、回転ドラムを延長するように篩円筒体、すなわち円筒状トロンメルが設けられている。この円筒状トロンメルは回転ドラムと実質的に同じ内径で、多数の孔が明けられて篩の作用を奏するようになっており、回転ドラムに延在するように設けられている。この円筒状トロンメルによって、微細な粒径の原料だけが回転ドラムから排出されるようになっている。従って特許文献1に記載の破砕・乾燥装置に、特許文献2に記載の篩円筒体を設けるようにすると、粒状の脱水ケーキが回転ドラムから排出されるのを防止できそうである。しかしながら、高品質のコンクリートスラッジ微粉末を得るには、篩の目の大きさを、例えば5mm、もしくはそれ以下にする必要があるが、このように目が細かい篩円筒体は目詰まりし易い。そして篩円筒体の内部にコンクリートスラッジ微粉末が厚く体積してしまうとさらに目詰まりのし易くなる。このような目詰まりに対して格別に対策が採られていないと円筒状トロンメルを採用することはできない。また、円筒状トロンメルにはコンクリートスラッジ微粉末だけでなく塊状、あるいは粒状の脱水ケーキが供給されることが予想されるが、このような脱水ケーキが妨げになってコンクリートスラッジ微粉末が篩の目を通過することができなくなることも予想される。従って単純に許文献2に記載の円筒状トロンメルを特許文献1に記載の破砕・乾燥装置に採用することはできない。
【0008】
したがって本発明は、脱水ケーキを破砕・乾燥するとき、塊状あるいは粒状の脱水ケーキが排出されるのを確実に防止することができ、脱水ケーキを効率よく破砕すると共に素早く乾燥してコンクリートスラッジ微粉末だけを排出することができる破砕・乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、破砕・乾燥装置を、横型の回転ドラムと、該回転ドラムに熱風を吹き込む熱風炉と、前記回転ドラムの排出側の端部に設けられているトロンメルとから構成する。回転ドラムには、その内部に、軸心方向の回転軸に取り付けられている複数個の破砕攪拌翼を設け、その内周壁に、供給される脱水ケーキを所定高さまで掬い上げて落下させるリフターを設け、その排出側の端部に、中心にくり抜きが形成されているトロンメル取付板を固定する。トロンメルは、軸方向に向かってテーパ状に縮径した円錐台状を呈する網体として構成し、その大径部は回転ドラムの内径よりも小さくなるようにする。そしてその小径部には、内側に向かって立ち上がっている所定の高さの出口側堰を形成する。このトロンメルを、その大径部において、くり抜きに整合するようにトロンメル取付板に固着する。またトロンメルの小径部には、トロンメル振動機構を設ける。トロンメル振動機構は、トロンメルの小径部に互いに離間して固定されている一対の台座と、この一対の台座のそれぞれに両端が固定されているガイドバーと、このガイドバーにガイドされてスライドする錘体とから構成する。回転ドラムが回転すると錘体は重力によってガイドバーをスライドして、台座の一方に衝突し、それによってトロンメルに振動を与えることができる。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、残コンクリートまたは戻りコンクリートに水を加えて処理したスラリー、あるいはセメント分を含んだ洗浄廃水から砂利、砂、微砂分を除去して脱水し、脱水ケーキを得、得られた脱水ケーキを破砕しながら乾燥してコンクリートスラッジ微粉末を回収する方法において、脱水ケーキを破砕・乾燥するのに使用される破砕・乾燥装置であって、前記破砕・乾燥装置は、一方の端部から脱水ケーキが連続的に供給されるようになっていると共に他方の端部からコンクリートスラッジ微粉末が排出されるようになっている横型の回転ドラムと、該回転ドラムに熱風を吹き込む熱風炉と、前記回転ドラムの排出側の端部に設けられているトロンメルとからなり、前記回転ドラムは、その内部に、軸心方向の回転軸に取り付けられている複数個の破砕攪拌翼が設けられ、その内周壁に、供給される脱水ケーキを所定高さまで掬い上げて落下させるリフターが設けられ、その排出側の端部に、中心にくり抜きが形成されているトロンメル取付板が固着され、前記トロンメルは、軸方向に向かってテーパ状に縮径した円錐台状を呈する網体からなり、その大径部は前記回転ドラムの内径よりも小さく、その小径部には、内側に向かって立ち上がっている所定の高さの出口側堰が形成されており、前記大径部において、前記くり抜きに整合するように前記トロンメル取付板に固着されていることを特徴とする破砕・乾燥装置として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の破砕・乾燥装置において、前記トロンメルの大径部には、内側に向かって立ち上がっている所定の高さの入口側堰が形成されるように構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の破砕・乾燥装置において、前記トロンメルの小径部には、互いに離間して前記小径部に固定されている一対の台座と、前記一対の台座のそれぞれに両端が固定されているガイドバーと、該ガイドバーにガイドされてスライドする錘体とからなる、トロンメル振動機構が設けられ、前記回転ドラムが回転すると前記錘体は重力によって前記ガイドバーをスライドして前記台座に衝突し、それによって前記トロンメルを振動させるように構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の破砕・乾燥装置において、前記回転ドラムの排出側の端部には、円筒状の網体からなる補助トロンメルが前記トロンメルを外側から覆うように設けられるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によると、残コンクリートまたは戻りコンクリート、あるいはセメント分を含んだ洗浄廃水から所定の工程によって得られた脱水ケーキを破砕しながら乾燥してコンクリートスラッジ微粉末を得る破砕・乾燥装置として構成される。そして破砕・乾燥装置は、横型の回転ドラムと、該回転ドラムに熱風を吹き込む熱風炉と、前記回転ドラムの排出側の端部に設けられているトロンメルとから構成される。従って塊状、あるいは粒状の脱水ケーキはトロンメルを通過して排出されず、コンクリートスラッジ微粉末だけが回収されることが保障される。そして本発明によると回転ドラムは、その内部に、軸心方向の回転軸に取り付けられている複数個の破砕攪拌翼が設けられ、その内周壁に、供給される脱水ケーキを所定高さまで掬い上げて落下させるリフターが設けられているので、脱水ケーキは回転ドラム内で効率よく破砕されることになり、このとき熱風によって短時間で乾燥することになる。本発明によるとトロンメルは、軸方向に向かってテーパ状に縮径した円錐台状を呈する網体からなる。従って破砕されていない塊状の脱水ケーキが網体に載ったとしても、トロンメルの回転に伴って脱水ケーキは落下して回転ドラム内に戻されることになる。そうすると脱水ケーキが、コンクリートスラッジ微粉末が篩い落とされるのを妨げることはない。また脱水ケーキは回転ドラムに戻されて破砕・乾燥されることが保障される。さらにテーパ状に縮径しているので、コンクリートスラッジ微粉末はトロンメルの上に適切な量だけ載せられて余剰分は落下するので、コンクリートスラッジ微粉末の厚さは薄くなってトロンメルの目詰まりは防止される。そして本発明によるとトロンメルは、その大径部が前記回転ドラムの内径よりも小さい。そしてトロンメルは、回転ドラムの排出側の端部に固着されている、中心にくり抜きが形成されたトロンメル取付板に、その大径部がくり抜きに整合するように固着されている。つまり回転ドラムの内周面とトロンメルの間には、トロンメル取付板からなる堰、あるいは段部が設けられることになる。回転ドラム内の脱水ケーキはこの段部を乗り越えなければならないので、十分に破砕され微粉末にされたコンクリートスラッジ微粉末が優先的にトロンメルに供給されることになる。すなわちコンクリートスラッジ微粉末を効率よく回収できることになる。このとき、塊状の脱水ケーキは回転ドラム内に留まり易いので、効率よく破砕されることになる。さらに本発明によると、トロンメルの小径部には内側に向かって立ち上がっている所定の高さの出口側堰が形成されている。従って、粒状の脱水ケーキが誤って小径部の開口部から落下して、製品としてのコンクリートスラッジ微粉末に混入することは確実に防止されている。
【0012】
また他の発明によると、トロンメルの大径部には、内側に向かって立ち上がっている所定の高さの入口側堰が形成されている。トロンメルは前記したように円錐台状を呈した網体からなるので、トロンメルが回転すると塊状の脱水ケーキだけでなく所定量のコンクリートスラッジ微粉末も落下して回転ドラムに戻される。この発明によると入口側堰が設けられているので、適量のコンクリートスラッジ微粉末がトロンメル内に留まることになり、効率的に篩い落とすことができる。さらに他の発明によると、トロンメルの小径部には、互いに離間して小径部に固定されている一対の台座と、一対の台座のそれぞれに両端が固定されているガイドバーと、該ガイドバーにガイドされてスライドする錘体とからなる、トロンメル振動機構が設けられ、回転ドラムが回転すると錘体は重力によってガイドバーをスライドして、台座に衝突し、それによって前記トロンメルに振動を与えるように構成されている。従ってトロンメルの目詰まりは確実に防止され、万一目詰まりしてしまっても振動によって目詰まりは解消されることになる。そして他の発明によると、回転ドラムの排出側の端部には、円筒状の網体からなる補助トロンメルが前記トロンメルを外側から覆うように設けられている。つまりトロンメルは二重に設けられることになり、さらに確実に粒状の脱水ケーキが排出されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る、破砕・乾燥装置を示す図で、その(ア)は回転ドラム内を断面にして全体を示す側面図、その(イ)は(ア)において矢印A−A方向に見た断面図、その(ウ)は破砕攪拌翼の一部を拡大して示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る、破砕・乾燥装置の回転ドラムの一部とトロンメルを示す図で、その(ア)、(イ)、(ウ)はそれぞれ回転ドラムの一部とトロンメルを示す斜視図、側面図、および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る破砕・乾燥装置1は、図1の(ア)に示されているように、軸方向に所定の長さの横型の回転ドラム2からなる。この回転ドラム2は、図1の(ア)において左側が脱水ケーキの供給側、右側がコンクリートスラッジ微粉末の回収側、あるいは排出側になっており、後で詳しく説明するように回収側の端部に本発明に特有の装置、すなわちトロンメルが設けられている。回転ドラム2は2カ所で支持されて回転駆動されるようになっている。すなわち、回転ドラム2の一方の端部近傍の外周部にはリング状のレール4が設けられ、このレール4が複数個のローラ5により回転自在に支持されている。他方の端部よりの外周部には、リング状あるいはラック状の歯車7が取り付けられている。この歯車7には、モータ8で駆動されるピニオン10が噛み合っている。したがって回転ドラム2はモータ8により所定方向に回転駆動されることになるが、本実施の形態においては回転ドラム2は、3〜30秒で1回転するように駆動され、好ましくは10〜20秒で1回転する。
【0015】
回転ドラム2の内部には、図1の(イ)に示されているように、軸心Gから片寄った位置に、比較的高速で駆動される回転軸11が軸心方向に設けられている。そして、この回転軸11に複数個の破砕攪拌翼12、12、…が取り付けられている。破砕攪拌翼12は、図1の(ウ)に拡大して示されているように、回転軸11から半径外方に延びているアーム14と、このアーム14に、半径方向に所定の間隔をおいて取り付けられている複数本の棒状の翼15、15、…とからなっている。このような破砕攪拌翼12が回転軸11の周り所定の角度、例えば120度の間隔をおいて、軸方向には所定の距離をおいて複数個取り付けられている。
【0016】
また、回転ドラム2の内周面には、複数枚の掻き上げ翼すなわちリフター17、17、…が設けられている。これらのリフター17、17、…は、回転中心部を指向している垂直部17aと、この垂直部17aから回転ドラム2の回転方向に屈曲している傾斜部17bとからなっている。したがって、回転ドラム2を図1の(イ)において矢印A方向に駆動すると、脱水ケーキKは掬い上げられ、そして途中で落とされることになる。このような垂直部17aと傾斜部17bは板状部材から一体的に形成され、図1(ア)に示されているように、回転ドラム2の全長にわたって設けられている。
【0017】
上記のように構成されている回転ドラム2の供給側には、ホッパ20が設けられている。このホッパ20の下部には機械式の定量供給機21が設けられているので、ホッパ20に運び込まれた脱水ケーキは、定量供給機21により回転ドラム2に定量宛連続的に供給される。定量供給機21は、従来周知のロータリーフィーダあるいはスクリュフィーダからなる。ロータリーフィーダは、複数枚の羽根が一定間隔で取り付けられている回転軸を有する。したがって、回転軸を所定の速度で回転駆動すると、羽根と羽根の間に挟み込まれる脱水ケーキは、回転軸の回転速度に比例して回転ドラム2に供給される。スクリュフィーダも、脱水ケーキはスクリュのフライト間に挟まれて送られるようになっているので、スクリュ軸を所定速度で駆動すると、脱水ケーキは定量宛回転ドラム2に供給される。これらの機械式の定量供給機21により、塊状の脱水ケーキは、捻り潰されながら回転ドラム2内に供給されることになる。なお、定量供給機21のシュート22が、回転ドラム2の内部へ突き出る形で臨んでいる。シュート22の先端部は、図1の(イ)に現れている。
【0018】
回転ドラム2の供給側には、給油タンク24から供給される重油を燃焼するバーナー25も設けられている。このバーナー25の燃焼熱により加熱される空気と燃焼排ガスは、熱風炉27から回転ドラム2に連続的に供給されるようになっている。
【0019】
コンクリートスラッジ微粉末を回収する回収側、すなわち回転ドラム2の回収側には次に説明するトロンメル31と、回収側全体を覆っている排気フード29が設けられている。排気フード29の上方部分の断面積は充分広くなっている。したがって、回転ドラム2から排気フード29に送られるガスの速度は、排気フード29内で充分遅くなる。これにより、排気ガス中にコンクリートスラッジ微粉末が混入してもコンクリートスラッジ微粉末は重力によって沈降する。排気ガスは所定のバグフィルタを介して吸引され、その一部は熱風炉27に戻されるようになっている。図1にはバグフィルタや、排気ガスを熱風炉27に戻すダクトは示されていない。
【0020】
本実施の形態に係る破砕・乾燥装置1には、図2に示されているように本発明に特有のトロンメル、すなわち本実施の形態に係るトロンメル31が設けられている。トロンメル31は、鋼鉄製の枠体32と、この枠体に張られている鋼鉄製の網33、33、…とからなる網体であり、軸方向に向かってテーパ状に縮径した円錐台状を呈している。すなわち円錐を、その底面近傍を残して中央から頂点にかけての部分を切り落としたような形状を呈している。枠体32は、トロンメル31の大径部を構成している大リング35と、小径部を構成している小リング36と、これらを接続する複数本の梁37、37、…とから構成されている。大リング35の径は、回転ドラム2の内径よりも小さく、後で説明するトロンメル取付板のくり抜きの内径と実質的に同じになっている。このような枠体32に、網33、33、…が張られ、網33、33、…によってテーパ状に縮径した円錐台の側面部が形成されている。本実施の形態において網33、33、…は、5mmの目の大きさのものが採用されているが、他の大きさでも同様に実施することができ、例えば目の大きさが3〜8mmの網を採用することもできる。
【0021】
ところで小リング36は所定の幅の鋼材から形成されているので、網33、33、…から形成されているトロンメル31の内周面よりも、小リング36は所定の高さだけ内側に立ち上がっている。本実施の形態においてはこの高さは約50mmになっている。トロンメル31の小径部は開口しているが、この内側に立ち上がっている小リング36によって塊状の脱水ケーキが開口部から排出されることが防止されている。すなわちこの小リングの内側に立ち上がっている部分は、出口側堰38になっており、脱水ケーキが乗り越えるのを防止する乗り越え防止板になっている。同様に大リング35も、網33、33、…から形成されているトロンメル31の内周面よりも、所定の高さだけ、例えば50mmだけ内側に立ち上がっている。これによって入口側堰40が形成され、トロンメル31内に適切な量のコンクリートスラッジ微粉末が留まることになり、コンクリートスラッジ微粉末は効率よく網33、33、…で篩い落とされることになる。
【0022】
本実施の形態に係るトロンメル31には、その小径部に2個のトロンメル振動機構42、42が設けられている。2個のトロンメル振動機構42、42は、それぞれ同じ構造からなり、小リング36の内側に固定されている一対の台座44、44と、この台座44、44に両端が固着されている鉄棒すなわちガイドバー45と、ガイド孔46によって滑らかにこのガイドバー45にガイドされる錘体47とから構成されている。従って回転ドラム2と共にトロンメル31が回転すると、錘体47はガイドバー45にガイドされながら重力によって落下し、一方の台座44に衝撃的にぶつかる。そうするとトロンメル31に振動を与えることができ、網33、33、…の目詰まりを防止することができる。
【0023】
このようなトロンメル31は、次のようにして回転ドラム2に設けられている。まず回転ドラム2の端面に、中心に円形のくり抜き49が明けられているトロンメル取付板50が回転ドラム2の端面を塞ぐように固定されている。このくり抜き49は、トロンメル31の大リング35と略同径になっている。このくり抜き49に大リング35が整合するように、かつトロンメル31の小径部が回転ドラム2より外方に突き出すように、トロンメル取付板50にトロンメル31が固着されている。従ってトロンメル31は回転ドラム2と一体的に回転するようになっている。このようにトロンメル31はトロンメル取付板50を介して回転ドラム2に設けられているので、トロンメル取付板50は段部、あるいは堰になっている。この段部によって回転ドラム2内の塊状の脱水ケーキはトロンメル31内に送られ難くなっている。つまりトロンメル取付板50は、塊状の脱水ケーキの移動を抑制しつつ破砕されたコンクリート微粉末を優先的に乗り越えさせる、乗り越え板ということもできる。
【0024】
本実施の形態においては、トロンメル31を外方から覆うように円筒状を呈する補助トロンメル52が設けられている。補助トロンメル52も所定の網53から構成されているが、網53の目の大きさは比較的大きく、例えば10mm程度になっている。補助トロンメル52は回転ドラム2を延長するように回転ドラム2に固定され、回転ドラム2と一体的に回転するようになっている。トロンメル31から塊状の脱水ケーキが排出されたとしても、補助トロンメル52によって捕捉されることが保障される。捕捉された脱水ケーキは、補助トロンメル52の回転によって微粉末にされることになる。
【0025】
排気フード29の下端部、すなわちトロンメル31、補助トロンメル52の下方には、スクリュコンベヤ55が設けられており、スクリュコンベヤ55はコンクリートスラッジ微粉末貯蔵ビンに連なっている。図2にはコンクリートスラッジ微粉末貯蔵ビンは示されていない。
【0026】
本実施の形態に係る破砕・乾燥装置1の作用を説明する。本実施の形態に係る破砕・乾燥装置1に供給される脱水ケーキは次のようにして生成される。戻りコンクリートあるいは残コンクリートに所定の水を加えてスラリーにする。このスラリー、あるいはセメント分を含んだ洗浄廃水を篩にかけて砂利と砂を分離して、スラッジ水を得る。このスラッジ水を湿式サイクロンで処理して微砂分を分離・除去して、濃縮スラッジ水を得る。得られた濃縮スラッジ水をフィルタプレスにかける。そうすると破砕・乾燥装置1に供給される脱水ケーキを得ることができる。
【0027】
本実施の形態に係る破砕・乾燥装置1において、回転ドラム2を回転させ、そして回転軸11を駆動して破砕攪拌翼12、12、…を回転させる。また燃焼炉27から熱風を回転ドラム2内に供給する。熱風の温度は、80〜150℃、より好ましくは100〜140℃、さらに好ましくは110〜140℃である。上記のようにして得られた脱水ケーキKをホッパ20に供給する。脱水ケーキKは、機械式の定量供給機21により連続的に所定量宛回転ドラム2に供給される。そうすると、定量供給機21により多捻り潰されて投入された脱水ケーキKは、リフター17、17、…により持ち上げられ、そして落下する。脱水ケーキKは、主として落下するとき高速で回転駆動されている破砕攪拌翼12、12、…により破砕され、そして熱風と接触する。このような作用が回転ドラム2の供給側から排出側まで続く。塊状の脱水ケーキKは、供給側から排出側へ送られる過程で徐々に粉砕され、そして乾燥される。
【0028】
回転ドラム2の排出端部において、破砕され乾燥されたコンクリートスラッジ微粉末はトロンメル取付板50の段部を乗り越えてトロンメル31内に供給される。トロンメル31はテーパ状に縮径しているので、適量のコンクリートスラッジ微粉末が供給され、余剰分は入口側堰40を越えて回転ドラム2内に戻る。また塊状の脱水ケーキがトロンメル31内に入っても回転ドラム2内に戻る。コンクリートスラッジ微粉末は効率よく篩い落とされてスクリュコンベヤ55によって送られ、コンクリートスラッジ微粉末貯蔵ビンに回収される。なお、塊状の脱水ケーキKは出口側堰38を越えられないので、トロンメル31外には排出されない。万一排出されたとしても補助トロンメル52によって捕捉され、やがて微粉末にされる。トロンメル31が回転すると、前記したように錘体47がスライドして台座44にぶつかり、網33、33、…は振動する。そうすると網33、33、…の目詰まりを防止することができる。
【0029】
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば本実施の形態においては補助トロンメル52が設けられているが、補助トロンメル52は必須ではない。また、本実施の形態においては大リング35は網33、33、…よりも内側に立ち上がっており、それによって出口側堰38が形成されているように説明したが、出口側堰38が形成されていなくてもよい。そうするとトロンメル31に塊状の脱水ケーキが供給されても、速やかに回転ドラム2内に戻されることになる。
【符号の説明】
【0030】
1 破砕・乾燥装置 5 回転ドラム
11 回転軸 12 破砕攪拌翼
17 リフター 21 定量供給機
25 バーナー 27 熱風炉
29 排気フード 31 トロンメル
32 枠体 33 網
35 大リング 36 小リング
38 出口側堰 40 入口側堰40
42 トロンメル振動機構 44 台座
45 ガイドバー 47 錘体
49 くり抜き 50 トロンメル取付板50
52 補助トロンメル 53 網
55 スクリュコンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残コンクリートまたは戻りコンクリートに水を加えて処理したスラリー、あるいはセメント分を含んだ洗浄廃水から砂利、砂、微砂分を除去して脱水し、脱水ケーキを得、得られた脱水ケーキを破砕しながら乾燥してコンクリートスラッジ微粉末を回収する方法において、脱水ケーキを破砕・乾燥するのに使用される破砕・乾燥装置であって、
前記破砕・乾燥装置は、一方の端部から脱水ケーキが連続的に供給されるようになっていると共に他方の端部からコンクリートスラッジ微粉末が排出されるようになっている横型の回転ドラムと、該回転ドラムに熱風を吹き込む熱風炉と、前記回転ドラムの排出側の端部に設けられているトロンメルとからなり、
前記回転ドラムは、その内部に、軸心方向の回転軸に取り付けられている複数個の破砕攪拌翼が設けられ、その内周壁に、供給される脱水ケーキを所定高さまで掬い上げて落下させるリフターが設けられ、その排出側の端部に、中心にくり抜きが形成されているトロンメル取付板が固着され、
前記トロンメルは、軸方向に向かってテーパ状に縮径した円錐台状を呈する網体からなり、その大径部は前記回転ドラムの内径よりも小さく、その小径部には、内側に向かって立ち上がっている所定の高さの出口側堰が形成されており、前記大径部において、前記くり抜きに整合するように前記トロンメル取付板に固着されていることを特徴とする破砕・乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕・乾燥装置において、前記トロンメルの大径部には、内側に向かって立ち上がっている所定の高さの入口側堰が形成されていることを特徴とする破砕・乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の破砕・乾燥装置において、前記トロンメルの小径部には、互いに離間して前記小径部に固定されている一対の台座と、前記一対の台座のそれぞれに両端が固定されているガイドバーと、該ガイドバーにガイドされてスライドする錘体とからなる、トロンメル振動機構が設けられ、前記回転ドラムが回転すると前記錘体は重力によって前記ガイドバーをスライドして前記台座に衝突し、それによって前記トロンメルを振動させることを特徴とする破砕・乾燥装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の破砕・乾燥装置において、前記回転ドラムの排出側の端部には、円筒状の網体からなる補助トロンメルが前記トロンメルを外側から覆うように設けられていることを特徴とする破砕・乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−86184(P2012−86184A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236484(P2010−236484)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【特許番号】特許第4653257号(P4653257)
【特許公報発行日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(509042389)三和石産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】