説明

コンデンサ

【課題】 層間剥離を抑制できるコンデンサを提供すること。
【解決手段】 複数の誘電体層5が積層された積層体2と、誘電体層5を介して対向するように誘電体層5間に設けられた第1内部電極3aおよび第2内部電極3bと、第1内部電極3aおよび第2内部電極3bにそれぞれ電気的に接続される第1外部電極4aおよび第2外部電極4bとを備え、第1外部電極4aおよび第2外部電極4bの配列方向に垂直な断面において、第1内部電極3aおよび第2内部電極3bと、積層体2の側面との間は、空孔6が多くなっていることから、誘電体層5における積層方向に垂直な方向の残留応力が低減される。従って、コンデンサ1が外部から衝撃を受けた場合であっても、誘電体層5と内部電極3との間の層間剥離の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンデンサは、複数の誘電体層が積層された積層体と、積層体の誘電体層間に設けられた内部電極と、内部電極に接続されるように積層体の両端面に設けられた外部電極とを具備する(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなコンデンサは、誘電体層となるグリーンシートと、内部電極となる電極ペーストとを積層して成形体を得た後に、これを焼結させて作製する。しかしながら、一般的に、内部電極は誘電体層より焼結収縮が速い。よって、特許文献1に示すようなコンデンサでは、内部電極が焼結により収縮する方向に、誘電体層が引っ張られる。特に、内部電極は積層方向に垂直な方向に大きく収縮しやすい。よって、誘電体層は、内部電極によって積層方向と垂直な方向に残留応力が生じやすい。従って、このような残留応力が発生しているコンデンサに、外部から衝撃が加わると、層間剥離しやすいという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコンデンサは、複数の誘電体層が積層された積層体と、前記誘電体層を介して対向するように前記誘電体層間に設けられた第1内部電極および第2内部電極と、前記第1内部電極および前記第2内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1外部電極および第2外部電極とを備え、前記第1外部電極および前記第2外部電極の配列方向に垂直な断面において、前記第1内部電極および前記第2内部電極と、前記積層体の側面との間は、空孔が多くなっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコンデンサによれば、複数の誘電体層が積層された積層体と、誘電体層を介して対向するように誘電体層間に設けられた第1内部電極および第2内部電極と、第1内部電極および第2内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1外部電極および第2外部電極とを備え、第1外部電極および第2外部電極の配列方向に垂直な断面において、第1内部電極および第2内部電極と、積層体の側面との間は、空孔が多くなっていることから、誘電体層が内部電極の焼結収縮による引張り力を受けても、空孔がこの力を緩和する。よって、誘電体層における積層方向に垂直な方向の残留応力が低減される。従って、コンデンサが外部から衝撃を受けた場合であっても、誘電体層と内部電極との間の層間剥離の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のコンデンサの実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示すコンデンサのA−A線における断面図であり、(b)は、図1に示すコンデンサのB−B線における断面図である。
【図3】図1に示すコンデンサの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明のコンデンサの実施の形態の一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すコンデンサ1は、基本的な構成として、積層体2と、内部電極3と、外部電極4とを具備している。
【0009】
積層体2は、複数の誘電体層5が積層されて成る。この積層体2は、1層当たり例えば1〜5μmの厚みに形成された矩形状の複数の誘電体層5を、例えば20〜2000層積層して成る直方体状の誘電体ブロックである。
【0010】
また、積層体2の寸法は、積層体2の長辺の長さを、例えば0.4〜3.2mmとし、積層体2の短辺の長さを、例えば0.2〜1.6mmとする。誘電体層5の材料としては、例えば、BaTiO、CaTiO、SrTiOまたはCaZrO等が挙げられる。なお、他の例としては、BaTiO、CaTiO、SrTiOまたはCaZrOなどを主成分とし、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物等が添加されたものであってもよい。
【0011】
積層体2は、図1〜3に示すように、互いに対向する第1の主面2a(上面)及び第2の主面(下面)2bと、互いに対向する第1の側面2c及び第2の側面2dと、互いに対向する第1の端面2e及び第2の端面2fとを有する略直方体状に形成されている。
【0012】
第1外部電極4aおよび第2外部電極4bは、図3に示すように、第1内部電極3aおよび第2内部電極3bにそれぞれ接続される。この第1外部電極4aおよび第2外部電極4bは、積層体2の表面に設けられる。以下の説明では、単に「外部電極4」と表記した場合には、第1外部電極4aおよび第2外部電極4bの双方を意味するものとする。
【0013】
図3に示す例では、第1外部電極4aおよび第2外部電極4bは、積層体2の端部に設けられている。また、この外部電極4は、厚みが5〜50μmで形成されている。外部電極4は、配線基板上の電極パッドに電気的に接続されて、配線基板との電気的な導通を確保する役割を果たす。
【0014】
図3に示すように、第1外部電極4aは、第2の端面2f上に形成されている。図1に示すように、第1外部電極4aの端部は、第1及び第2の主面2a、2b並びに第1及び第2の側面2c、2dにまで至っている。図3に示すように、第1外部電極4aは、第2の端面2fに引き出される複数の第1内部電極3aのそれぞれに電気的に接続されている。
【0015】
図3に示すように、第2外部電極4bは、第1の端面2e上に形成されている。図1に示すように、第2外部電極4bの端部は、第1及び第2の主面2a、2b並びに第1及び第2の側面2c、2dにまで至っている。図3に示すように、第2外部電極4bは、第1の端面2eに引き出される複数の第2内部電極3bのそれぞれに電気的に接続されている。
【0016】
なお、外部電極4の表面には、外部電極4の保護、及び実装性の向上等のために、例えば、Niめっき膜やSnめっき膜などの1または複数のめっき膜が形成されていることが好ましい。例えば、外部電極4の表面に、Niめっき膜とSnめっき膜との積層体を形成してもよい。
【0017】
外部電極4を配線基板に接合する方法は、特に限定されない。例えば、Sn−Sb系高温半田などの高温半田、Sb−Pb共晶半田、Sn−Ag−Cu系Pbフリー半田、Sn
−Cu系Pbフリー半田、導電性微粒子を含む樹脂などの適宜の接合部材を用いて外部電極4と配線基板とを接合することができる。
【0018】
第1内部電極3aおよび第2内部電極3bは、誘電体層5を介して対向するように誘電体層5間に設けられている。以下の説明では、単に「内部電極3」と表記した場合には、第1内部電極3aおよび第2内部電極3bの双方を意味するものとする。
【0019】
図3に示す例では、積層体2内には、複数の第1内部電極3aと、複数の第2内部電極3bとが、積層方向に沿って交互に間隔をおいて配置されている。これにより、複数の第1内部電極3aと、複数の第2内部電極3bとが、相互に絶縁されている。
【0020】
図2(a)および図3に示すように、複数の第1内部電極3aの一方の端部は、第2の端面2fに引き出されている。複数の第1内部電極3aは、第1及び第2の主面2a、2bに対して平行な方向に延びるように、コンデンサ1の積層方向において等間隔に配置されている。第1内部電極3aは、第1及び第2の側面2c、2dには至っていない。
【0021】
図3に示すように、複数の第2内部電極3bの一方の端部は、第1の端面2eに引き出されている。複数の第2内部電極3bは、第1及び第2の主面2a、2bに対して平行な方向に延びるように、コンデンサ1の積層方向において等間隔に配置されている。第2内部電極3bは、第1及び第2の側面2c、2dには至っていない。
【0022】
内部電極3は、積層体2の誘電体層5間に20〜2000層形成されている。この内部電極3の材料としては、例えばNi、Cu、Ag、Pd、Au等の金属、またはこれらの金属の一種以上を含む、Ag−Pd合金などの合金などが挙げられる。全ての内部電極3は、同一の金属または合金により形成されていることが好ましい。
【0023】
内部電極3の全体の寸法は、図2(a)における積層体2の長辺方向に例えば0.39〜3.1mmであり、積層体2の短辺方向に例えば0.19〜1.5mmである。内部電極3の厚さは、特に限定されない。内部電極3の厚さは、例えば、0.3〜2μm程度であってもよい。
【0024】
図2(b)に示す例のように、第1外部電極4aおよび第2外部電極4bの配列方向に垂直な断面において、第1内部電極3aおよび第2内部電極3bと、積層体2の側面2c、2dとの間は、空孔6が多くなっている。このような構成によって、誘電体層5が内部電極3の焼結収縮による引張り力を受けても、空孔6がこの力を緩和する。よって、誘電体層5における積層方向に垂直な方向の残留応力が低減される。従って、コンデンサ1が外部から衝撃を受けた場合であっても、誘電体層5と内部電極3との間の層間剥離の発生を抑制することができる。
【0025】
ここで、「空孔6が多い」とは、外部電極4の配列方向に垂直な断面において、内部電極3と積層体2の側面2c、2dとの間の空孔率が、内部電極3と積層体2の主面2a、2bとの間の空孔率と比較して、高いことを意味する。また、空孔率とは、外部電極4の配列方向に垂直な断面において、空孔が占める面積割合を意味する。また、これらの面積の測定は、図2(b)のような断面を研磨した後に、電子顕微鏡写真(SEM)による画像を解析することにより行うことができる。
【0026】
また、内部電極3と側面2c、2dとの間の中央部の空孔率は、内部電極3の近傍の空孔率よりも高いことが好ましい。ここで、内部電極3と側面2c、2dとの間の中央部の空孔率とは、外部電極4の配列方向に垂直な断面において、内部電極3の端部から側面2c、2dまでの間隔を3分割した際の真ん中の分割領域において空孔が占める面積割合を意味する。また、内部電極3の近傍の空孔率とは、内部電極3側の分割領域において空孔
が占める面積割合を意味する。また、内部電極3の端部から側面2c、2dまでの間隔は、一般的に、30〜100μm程度である。また、空孔6の直径は、0.1〜1μm程度で
ある。
【0027】
具体的には、内部電極3と側面2c、2dとの間の中央部の空孔率は、15〜30%程度であり、内部電極3の近傍の空孔率は、1〜5%程度である。これにより、内部電極3の近傍に空孔6があまり存在しないこととなるので、内部電極3同士の絶縁性を維持することができる。
【0028】
内部電極3側の分割領域における、内部電極3の端部から所定の間隔においては、空孔率は、さらに低いことが好ましい。具体的には、0.5〜2.5%程度である。また、この所定の間隔とは、内部電極3側の分割領域の1/3〜1/2程度の間隔をいう。
【0029】
また、内部電極3と側面2c、2dとの間の中央部の空孔率は、側面2c、2dの近傍の空孔率よりも、高いことが好ましい。これにより、側面2c、2d近傍には空孔6があまり存在しないこととなる。よって、積層体2の側面2c、2dに衝撃が加わった場合に、側面2c、2d近傍の空孔6を起点としてクラックが発生することを抑制することができる。また、メッキ液等が、積層体の表面から内部に侵入するのを抑制することができる。
【0030】
ここで、側面2c、2dの近傍の空孔率とは、上述したように3分割した際の、側面2c、2d側の分割領域において空孔が占める面積割合を意味する。具体的には、内部電極3と側面2c、2dとの間の中央部の空孔率は、15〜30%程度であり、側面2c、2dの近傍の空孔率は、1〜5%程度である。
【0031】
側面2c、2d側の分割領域における、側面2c、2dから所定の間隔において、空孔率は、さらに低いことが好ましい。具体的には、0,5〜2.5%程度である。また、この所
定の間隔とは、側面2c、2d側の分割領域の1/3〜1/2程度の間隔をいう。
【0032】
以上のような構成のコンデンサ1は、以下に示すようなセラミックグリーンシート積層法によって作製される。
【0033】
具体的には、誘電体層5となる複数のグリーンシートを用意する。この工程において、セラミックグリーンシートは、セラミック原料粉末および有機バインダに適当な有機溶剤等を添加し混合することによって泥漿状のセラミックスラリーを作製し、これをドクターブレード法等によって成形することによって得られる。
【0034】
次に、グリーンシート上に、内部電極3を形成する。この工程においては、得られたセラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等によって、内部電極3のパターンとなる導体材料を形成する。なお、1枚のグリーンシートから多数個のコンデンサが得られるように、この1枚のグリーンシートに複数の内部電極3のパターンを印刷する。
【0035】
なお、内部電極3のパターン間であって、積層体2の側面2c、2dとなる分割線上に、セラミックグリーンシートより焼結助剤の量が少ないセラミックスラリーを配置しておくと良い。これにより、この部分においては、セラミックグリーンシートよりも焼結性が低下するので、誘電体材料の密度が上がらず、空孔6が生じやすくなる。また、この部分に配置するセラミックスラリーにおけるセラミック原料粉末の粒径を、セラミックグリーンシートにおけるセラミック原料粉末より大きくすることによって、焼結性を低下させてもよい。
【0036】
なお、1枚のグリーンシートに複数印刷された内部電極3パターンの端部側においても、上記と同様のセラミックスラリーを配置するものとする。
【0037】
また、ここで説明したセラミックスラリー中においても、焼結助剤の量、セラミック原料粉末の粒径を変化させることで、所望の空孔率の分布を設定することができる。
【0038】
次に、複数のセラミックグリーンシートを積層しかつプレスした後に、多数個分が一体となった生の積層体を作製する。この積層体をカットして、単体分の積層体として、コンデンサ1本体の生の状態のものを得る。
【0039】
次に、生の状態のコンデンサ1本体を焼成して積層体2を得る。この工程においては、例えば800〜1050℃で焼成することによって積層体2を得る。この工程によって、グリー
ンシートは誘電体層6となり、導体材料は、内部電極3となる。
【0040】
次に、導電ペーストを積層体2の両端部に塗布し、焼き付けることにより外部電極4を形成する。また、外部電極4は、蒸着、メッキ、スパッタリング等の薄膜形成法によって形成してもよい。
【0041】
このようにして得られる外部電極4の材料は、銅以外に銀,ニッケル,パラジウムまたはこれらの合金等の金属材料であってもよい。
【0042】
次に、得られた外部電極4の表面に、必要に応じてニッケル(Ni)メッキ層,金(Au)メッキ層,スズ(Sn)メッキ層あるいは半田メッキ層等のメッキ層を形成して、コンデンサ1を得る。
【0043】
なお、本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良等が可能である。
【0044】
例えば、積層体2に面取りを施し、丸み部を形成してもよい。この工程によって、得られた積層体2の丸み部に、マイクロクラックの除去および欠けが発生することを防止することができる。さらにバレル研磨は金属粒子の表面酸化膜を削り取り金属表面を露出させてメッキ付着性を向上させる効果がある。
【0045】
また、例えば、積層体2の主面2a、2bと側面2c、2dとの間の角部の近傍においては、内部電極3と積層体2の主面2a、2bとの間よりも、空孔6が多くなっていることが好ましい。これによって、外部からの衝撃を受け易い積層体2角部において、空孔6が衝撃緩和の役割を果たす。よって、耐衝撃性を有するコンデンサとすることができる。
【0046】
また、例えば、内部電極3と、積層体2の側面2c、2dとの間の空孔6は、外部電極4の配列方向における中央部で、多くなっていることが好ましい。中央部とは、積層体2を外部電極4の配列方向に3分割した際の真ん中の領域を意味する。積層体2への外部からの衝撃は、この領域において最も頻度が多くなりやすい。よって、この構成の場合には、空孔6によって外部からの衝撃を吸収する効果が向上しやすい。よって、耐久性の高いコンデンサ1を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:コンデンサ
2:積層体
3:内部電極
4:外部電極
5:誘電体層
6:空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層された積層体と、
前記誘電体層を介して対向するように前記誘電体層間に設けられた第1内部電極および第2内部電極と、
前記第1内部電極および前記第2内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1外部電極および第2外部電極とを備え、
前記第1外部電極および前記第2外部電極の配列方向に垂直な断面において、前記第1内部電極および前記第2内部電極と、前記積層体の側面との間は、空孔が多くなっていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記第1内部電極および前記第2内部電極と前記積層体の側面との間の中央部は、前記第1内部電極および前記第2内部電極の近傍よりも、空孔率が高いことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第1内部電極および前記第2内部電極と前記積層体の側面との間の中央部は、前記積層体の側面の近傍よりも、空孔率が高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−209506(P2012−209506A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75559(P2011−75559)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】