説明

コードレス電話の親機、コードレス電話の子機、コードレス電話システム

【課題】通話開始から通話終了までの通話品質を確保する。
【解決手段】いずれかの子機から発呼要求指示信号を受信すると、接続相手を識別し、識別した接続相手に基いて、予測通話時間を予測し、予測した通話時間に基いて、通話時間全体における子機ごとの通話品質を推定する。発呼要求があった子機の通話品質が良いと推定された場合は、その子機を外部回線に接続するよう制御する。一方、発呼要求があった子機の通話品質が良くないと推定された場合は、その旨を発呼要求があった子機に報知すると共に、通話品質が良いと推定された子機に対し、リンギングを指示する信号を報知する。これにより、ユーザは、通話品質が高いと予測される子機を用いて通話することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測した通話時間を利用して類似した周波数帯を利用する他の機器からの電波干渉を低減するコードレス電話の親機、コードレス電話の子機、及び、コードレス電話システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コードレス電話機においては、2.4GHz帯や、他の周波数帯の無線通信を用いて親機、子機間の通話を行う。そのため、コードレス電話機の周辺で、2.4GHz帯と類似した周波数帯の無線LAN(例えば、IEEE802.11b)や電子レンジが使用されると、電波干渉によって通話品質が低下する。この問題を解決するために、従来、コードレス電話機における電波干渉等のノイズを低減するための手法が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1においては、子機での通話中に、通話者が、ノイズが大きく通話状態が良くないと判断すると、通話者は、ノイズが大きいことを示すスイッチを押下する。該スイッチが押下されると、親機はノイズが小さいチャンネルを選択して該チャンネルに切り替える。このとき、通話時間帯で分類された各チャンネルのノイズレベルデータが用いられる。
【0004】
【特許文献1】特開平5−153034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、通話者は、ノイズが大きいと感じるたびに所定のスイッチを押下する必要があるため、チャンネル切り替えのための操作は面倒である。また、上記特許文献1では、押下された時点においてノイズが小さいと考えられるチャンネルを選択するものであり、通話時間中の状態を何ら考慮しているものではないから、通話を開始した時点から終了までの通話品質を保つものではない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、予測した通話時間を利用して通話中の電波干渉の影響を低減することできるコードレスの親機、子機等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面である請求項1に係る発明は、複数の子機とコードレス通信が可能なコードレス電話の親機であって、発呼要求を行った子機を識別する子機識別手段と、前記発呼要求の時刻を取得する発呼要求時刻取得手段と、前記発呼要求の接続相手を識別する接続相手識別手段と、前記識別した接続相手との通話時間を予測する通話時間予測手段と、前記複数の子機それぞれについて、時間帯ごとの電波状況が記憶されている電波状況テーブルと、前記取得した発呼要求時刻、前記予測した通話時間、前記電波状況テーブルに基いて、前記複数の子機のうち、前記予測した通話時間中の電波状況が良い子機を推定する子機推定手段と、前記識別した子機と前記推定した子機とが一致するか否かを判断する判断手段と、一致している場合に、前記識別した子機の外部回線接続を行う接続開始手段と、一致していない場合に、前記識別した子機に対し、所定の通知信号を送信する通知信号送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記親機によれば、発呼要求を行った子機を識別し、発呼要求の時刻を取得し、発呼要求の接続相手を識別し、該接続相手との通話時間を予測し、該開始の時刻及び該予測通話時間と子機それぞれの時間帯ごとの電波状況が記憶されている電波状況テーブルとに基いて、該予測した通話時間中の電波状況がよい子機を推定し、前記識別した子機と前記推定した子機とが一致している場合は、該識別した子機の外部回線接続を行い、一致していない場合は、該識別した子機に対し、所定の通知信号(例えば、通信品質がよい子機ではないことを示す信号)を通知する。これにより、通話開始時から通話終了時までの通話品質がよいとはいえないと推定される子機を用いて通話を行おうとしているユーザに対し、外部回線接続前にその旨を通知することができ、利用者は通話に用いる子機を変更することができる。
【0009】
本発明の一側面である請求項2に係る発明は、請求項1の親機であって、前記推定した子機に対し、リンギング指示信号を送信するリンギング信号送信手段をさらに有することを特徴とする。
【0010】
上記親機によれば、通話開始時から通話終了時までの通話品質がよいと推定した子機に対し、リンギングを指示するためのリンギング指示信号を送信する。これにより、利用者は、外部回線接続前に、通話品質がよいと考えられる子機を容易に識別することができる。
【0011】
本発明の一側面である請求項3に係る発明は、請求項2の親機であって、前記接続開始手段は、前記通知信号を送信した後において、前記識別した子機から発呼確定指示があった場合は、該識別した子機の外部回線接続を行い、前記推定した子機から発呼確定指示があった場合は、該推定した子機の外部回線接続を行うことを特徴とする。
【0012】
上記親機によれば、前記通知信号を送信した後で、前記識別した子機から発呼確定指示があった場合は、該識別した子機の外部回線接続を行い、前記推定した子機から発呼確定指示があった場合は、該推定した子機の外部回線接続を行う。これにより、ユーザが子機を変更しなかった場合、及び、子機を変更した場合のいずれにおいても、ユーザによる発呼確定指示がなされた子機を外部回線に接続させることができる。
【0013】
本発明の一側面である請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3いずれかの親機であって、前記子機推定手段は、前記接続相手先識別手段が前記発呼要求の接続相手を識別できない場合に、前記発呼要求の時刻及び前記電波状況テーブルに基いて子機を推定することを特徴とする。
【0014】
上記親機によれば、接続相手が識別できない場合であっても、該接続の開始時刻及び前記電波状況テーブルに基いて子機を選択するので、発呼要求時点で通話品質が高いと考えられる子機を推定することができる。
【0015】
本発明の一側面である請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4いずれかの親機であって、接続相手ごとの平均通話時間を記憶する通話履歴テーブルと、前記接続の終了を検出したときに該接続の通話時間を取得する通話時間取得手段と、前記接続の接続相手、前記接続の通話時間に基いて、前記通話履歴テーブルを更新する通話履歴テーブル更新手段と、を備え、前記通話時間予測手段は、前記通話履歴テーブルを用いて、前記識別した接続相手との通話時間を予測することを特徴とする。
【0016】
上記親機によれば、接続相手ごとの平均通話時間を記憶する通話履歴テーブルを有し、接続の通話時間及び該接続の接続相手に基いて、該通話履歴テーブルを更新する。また、前記通話履歴テーブルを用いて、識別した接続相手との通話時間を予測する。これにより、識別した接続相手との通話時間の予測精度を高めることができる。
【0017】
本発明の一側面である請求項6に係る発明は、親機とコードレス通信可能なコードレス電話の子機であって、所定の接続相手との発呼指示を受け付ける発呼指示受付手段と、受け付けた発呼指示に基づく発呼指示信号を前記親機に送信する発呼指示信号送信手段と、前記親機から所定の通知信号を受信した場合に、所定の報知を行う報知手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
上記子機によれば、発呼指示信号を親機に送信した後で、前記親機から所定の通知信号(例えば、通信品質がよい子機ではないことを示す信号)を受信した場合に、所定の報知(例えば、使用予定の子機における通話品質が高くないことを示す報知)を行う。これにより、外部回線接続前に、通話を行おうとしている子機の通話品質が高くないことを把握できるので、利用者は通話に用いる子機を変更することができる。
【0019】
本発明の一側面である請求項7に係る発明は、請求項6の親機であって、前記所定の報知を行った後において、前記所定の接続相手との発呼確定指示を受け付ける発呼確定指示受付手段と、受け付けた発呼確定指示に基づく発呼確定指示信号を前記親機に送信する発呼確定指示信号送信手段とをさらに有することを特徴とする。
【0020】
上記子機によれば、上記報知を行った後において、前記所定の接続相手との発呼確定指示を受け付け、受け付けた発呼確定指示に基づく発呼確定指示信号を前記親機に送信する。これにより、通話を行おうとしている子機の通話品質が高くないことを報知した後に該子機の発呼確定指示を受け付けると、該子機で通話を行うことができる。
【0021】
本発明の一側面である請求項8に係る発明は、請求項6または請求項7に記載の子機であって、時間帯ごとの自機の電波状況が記憶されている電波状況テーブルと、通話時において、前記電波状況テーブルに基いて電波状況が悪いと判断された時間帯では、マルチスロット方式で前記親機と通信を行う通信制御手段とをさらに有することを特徴とする。
【0022】
上記子機によれば、時間帯ごとの自機の電波状況が記憶されている電波状況テーブルに基いて、通話時において、電波状況が悪いと判断された時間帯ではマルチスロットモードで親機と通信を行う。これにより、電波状況が悪くなる前に、マルチスロットモードで通信を行うことができ、通話品質を向上させることができる。
【0023】
本発明の一側面である請求項9に係る発明は、コードレス電話システムであって、請求項1乃至請求項5のいずれかの親機と、請求項6乃至請求項8のいずれかの子機とからなることを特徴とする。
【0024】
上記コードレス電話システムによれば、上述した効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、予測した通話時間に基いて電波状況がよいと想定される子機を用いて親機との通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[システム構成]
本発明の一実施形態であるコードレス電話システムについて以下説明する。図1は、本実施形態のコードレス電話システムにおける構成の一例である。図1に示すように、本実施形態のコードレス電話システムは、親機1と複数の子機2とから構成される。また、親機1及び子機2は、家庭内で用いる場合は、それぞれキッチン、子供部屋等に設置される。また、オフィス内で用いる場合においても、所望の場所にそれぞれ設置される。また、親機1−子機2間の通信は、デジタル通信、アナログ通信のいずれでもよい。また、用いる周波数の帯域は適宜設定可能である。
【0027】
デジタル通信を用いる場合は、マルチスロット方式を採用することができる。ここで、マルチスロット方式とは、親機と子機間の通信データを例えばフレーム単位とし、1つのフレームデータを複数のタイムスロットを使用して同一の通信データを送信するマルチスロットモードと、1つのタイムスロットを使用して通信するシングルスロットモードを有する通信方式である。
【0028】
例えば、音声データ(V)の通信を、通常時はシングルスロットモードで行い、また、親機や子機の電波状況が悪いことを検出したときにはマルチスロットモード(例えば、複数を2回と設定する)で行うように制御する。この場合、音声データ(V)は、シングルスロットモードでは1回のみ送信され、マルチスロットモードでは、音声データ(V)は2回送信されることとなるので、電波状況が悪いときにマルチスロットモードになると、音声データが1回誤っても同じデータが送付されるので、音声が遮断される可能性が低減することになる。
【0029】
また、アナログ通信であれば、例えば、電波状況テーブル(後述)を用いてFM通信の送信側周波数偏移や受信側帯域フィルタを広狭と切換えることで、電波干渉する可能性を低くさせることとなる。
【0030】
親機1には、図示しないプロセッサ(CPU)、ROM、RAM、通信装置が備えられている。プロセッサは本発明の実現に必要なプログラムを含む種々のプログラムを実行する。ROMは、本発明の実現に必要なデータを含む種々のデータを記憶する。RAMは、本発明の実現に必要なデータを含む種々のデータを一時的に記憶する。通信装置は、外部通信回線による通信制御及び子機2との通信制御を行う。また、種々の操作を行うためのインタフェース(ボタン等)が親機1に備えられていることはいうまでもない。
【0031】
子機2には、図示しないプロセッサ(CPU)、ROM、RAM、通信装置が備えられている。プロセッサは本発明の実現に必要なプログラムを含む種々のプログラムを実行する。ROMは、本発明の実現に必要なデータを含む種々のデータを記憶する。RAMは、本発明の実現に必要なデータを含む種々のデータを一時的に記憶する。通信装置は、親機1との通信制御を行う。また、種々の操作を行うためのインタフェース(ボタン等)が子機2に備えられていることがいうまでもない。また、種々の情報を表示するためのディスプレイ21を備えている。
【0032】
また、子機2を用いて外部通信回線に接続する場合は、例えば、電話番号を入力した後に発呼要求を指示するためのボタンを押下する。なお、子機2のRAM等に電話帳を記憶しておき、電話帳から接続相手(通話先)を選択するように構成してもよい。
【0033】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。
まず、子機2を用いた外部通信回線との接続において、親機1と子機2との間で送受信される情報について説明する。図2は、親機1と子機2との間で送受信される情報の一例について示した図である。なお、図2に示す例においては、親機1に、2台の子機2(子機A及び子機B)が無線接続されているものとする。また、子機Aを用いて外部通信回線への発呼要求指示が行われたものとする。
【0034】
子機Aは、発呼要求指示を受け付けると(1)、親機1に対し、外部通信回線への接続を指示する発呼要求指示信号を送信する(2)。発呼要求指示信号には、子機自身を識別するための識別信号、及び、接続相手先を特定するための情報が含まれている。
【0035】
親機1は、上記発呼要求指示信号を受信すると、子機ごとの通信品質を推定する(3)。推定される通信品質は、予測される通信時間全体(すなわち、通話開始時から通話終了時まで)の通信品質である。このとき、複数の子機に対して通信品質が良いと推定されることもある。子機ごとの通信品質を推定するための具体的な処理については後述する。なお、図2においては、子機Bは「通信品質が良い」と推定され、また、子機Aは「通信品質が良くない」と推定されたものとする。
【0036】
親機1は、子機Aに対し、所定の報知を指示するための報知指示信号を送信する(4)。このとき、報知内容及び報知継続時間等、報知に関する種々の設定情報を併せて送信するように構成してもよい。
また、親機1は、子機B(通信品質が良いと判断された子機)に対し、リンギング(鳴動動作)を指示するためのリンギング指示信号を送信する(5)。このとき、リンギング音の種類等のリンギングに関する種々の設定情報を併せて送信するように構成してもよい。
【0037】
子機Aは、報知指示信号を受信すると、該報知指示信号に基いた報知を行う(6)。例えば、子機Aのディスプレイ21上に、通信品質が良くないと推定されたことを示す内容、及び、発呼の確定または子機Aの使用中止(子機交換)の指示を促す内容が表示される。また、音声によって報知するよう構成してもよい。報知指示信号を受信した後、子機Aは、発呼確定の指示及び使用中止(子機交換)の指示が受付可能な状態で待機する。
【0038】
子機Bは、リンギング指示信号を受信すると、該リンギング指示信号に基いたリンギングを行う(7)。このとき、リンギング音の種類を通常の着呼時と異なるように構成してもよい。また、「この子機の方が通信品質は良いです」等のメッセージを音声合成してもよい。リンギング指示信号を受信した後、子機Bは、発呼確定の指示が受付可能な状態で待機する。
【0039】
親機1は、報知指示信号及びリンギング指示信号を送信した後、いずれかの子機(子機Aまたは子機B)から発呼確定指示信号が来るまで待機する。
【0040】
子機Aは、発呼確定の指示を受け付けると、親機1に対して、発呼確定指示信号を送信する(8)。発呼確定指示信号には、送信した子機自身を識別するための識別信号(この場合、子機Aを示すための信号)が含まれている。
親機1は、子機Aからの発呼確定指示信号を受信すると、子機Aを外部通信回線に接続する(9)。このとき、子機Bに対し、リンギングを終了させるためのリンギング終了指示信号を送信する(不図示)。これにより、子機Aを用いて接続相手先との通話が可能となる。
【0041】
一方、子機Bは、発呼確定の指示を受け付けると、親機1に対して、発呼確定指示信号を送信する(10)。発呼確定指示信号には、送信した子機自身を識別するための識別信号(この場合、子機Bを示すための信号)が含まれている。
親機Aは、子機Bからの発呼確定指示信号を受信すると、子機Bを外部通信回線に接続する(11)。これにより、子機Bを用いて接続相手先との通話が可能となる。
【0042】
上述した処理によって、ユーザは、通信品質が良好でない子機を用いて発呼を行う場合に、外部通信回線への接続の前に、通信品質が良好でない可能性があることを把握することができるので、通話に用いる子機を変更でき、また、通話を開始した時点から終了までの通話品質が良好であると推定された子機2を用いて通話を行うことができる。
【0043】
(親機側の処理)
次に、第1実施形態において親機1で実行される処理について説明する。図3は、親機側で実行される処理のフローチャートである。この処理を実行するためのプログラムは、親機1がいずれかの子機から発呼要求指示信号を受信した際に、親機1が有するプロセッサによって実行される。
【0044】
まず、S1において、発呼要求があった子機及び接続相手を識別し、また、発呼要求があった時刻を検出する。発呼要求があった子機及び接続相手の識別は、受信した発呼要求信号に含まれる情報に基いて行う。発呼要求があった時刻は、親機1に備えられているタイマ(不図示)を用いて検出してもよい。また、発呼要求指示信号に、発呼要求があった時刻を含ませるように構成してもよい。
【0045】
S2において、S1で識別した接続相手が、通話履歴テーブル(後述)に登録されているか否かを判断する。S2において、S1で識別した接続相手が通話履歴テーブルに登録されていると判断した場合は(S2:YES)、S3に移行する。
【0046】
S3において、子機ごとの通信品質を推定する。子機ごとの通信品質は、通話履歴テーブル及び電波状況テーブルを参照して推定される。通話履歴テーブル及び電波状況テーブルは、親機1のRAMに記憶されている。
【0047】
図5は、通話履歴テーブルのデータ構造の一例を示した図である。図5に示すように、通話履歴テーブルには、通話相手ごとに平均通話時間が記憶されている。なお、記憶される平均通話時間の最小単位は、「分」としてもよく、また、「秒」、「5分」にしてもよい。また、通話履歴テーブルは、通話が終了するたびに更新される。
【0048】
図6は、電波状況テーブルのデータ構造の一例を示した図である。図6に示すように、電波状況テーブルには、親機1に接続される子機2(図6においては、子機A〜子機D)ごとに、それぞれの通話時間帯における電波状況が記憶されている。図6に示す電波状況テーブルにおいては、「○」は電波状況が良好であることを示し、また、「×」は電波状況が良好ではないことを示している。
【0049】
通話履歴テーブル及び電波状況テーブルを用いて通話品質の推定の具体的な処理については後述する。
【0050】
説明を図3に戻す。S4において、子機の交換が必要か否かを判断する。この判断は、S3で推定した子機ごとの通話品質に基いて行われる。すなわち、発呼要求があった子機が「通信品質が良い」と推定されたか否かに基いて行われる。発呼要求があった子機が「通話品質が良い」と推定された場合は、S4における条件判断は「YES」となる。また、発呼要求があった子機が「通話品質が良くない」と推定された場合は、S4における条件判断は「NO」となる。
【0051】
S4において、子機の交換が必要ではないと判断した場合は(S4:NO)、S5に移行する。
S5において、発呼要求があった子機がS1で識別した接続相手と通話可能となるように外部通信回線に接続する。
【0052】
一方、S4において、子機の交換が必要であると判断した場合は(S4:YES)、S6に移行する。
S6において、発呼要求があった子機に対し、通信品質が良くないと推定されたことを示す内容の報知を指示する報知指示信号を送信する。その後、S7に移行する。
【0053】
S7において、S3で通信状態が良いと推定した子機に対し、リンギングを指示するリンギング指示信号を送信する。このとき、S3で複数の子機が「通信品質が良い」と推定された場合は、該複数の子機すべてに対してリンギング指示信号を送信してもよく、また、該複数の子機のうち、所定の子機のみに対してリンギング指示信号を送信してもよい。
【0054】
S7の処理が終了した後、親機1は、子機2から発呼確定指示信号を受信する待機状態となる。なお、S6及びS7の処理は並列して実行されるように構成してもよい。また、S6とS7の処理の順序を逆にしてもよい。
【0055】
いずれかの子機から発呼確定指示信号を受信すると、S8に移行する。
S8において、該発呼確定信号を送信した子機を特定し、該子機がS1で識別した接続相手と通話可能となるように外部回線に接続する。
【0056】
その後、通話が終了するまで、S9で待機する。通話が終了したと判断した場合は(S9:YES)、S10に移行する。
S10において、通話履歴テーブルを更新する。具体的には、今回の通話時間を取得し、通話履歴テーブル中の当該通話相手の平均通話時間を更新する。このとき、平均通話時間を算出するために、通話相手ごとの通話回数等が記憶されていることはいうまでもない。
【0057】
一方、S2において、「NO」と判断された場合は、S11(図4)に移行する。
S11において、子機ごとの通信品質を推定する。例えば、発呼要求時刻及び電波状況テーブルを用いて、子機ごとの通信品質を推定することができる。これにより、発呼要求時刻の時点での子機ごとの通信品質を推定することができる。
【0058】
また、通話履歴テーブル(図5)を用いて子機ごとの通信品質を推定してもよい。以下、通話履歴テーブルを用いた推定方法について説明する。
まず、通話履歴テーブルを用いて通話時間を予測する。例えば、通話履歴テーブルに登録されている平均通話時間の平均値を、予測通話時間とする。図5に示す通話履歴テーブルにおいては、「42分」が予測通話時間となる。なお、予測通話時間、発呼要求時刻、電波状況テーブルに基いた子機ごとの通話品質推定処理は、上述したS3(図3)の処理と同じであるので省略する。
【0059】
通話時間の長さは、通話相手のみに基いて決まるものではなく、ユーザ自身の性格等も反映されるものである。例えば、同じ通話相手であっても、長電話が好きなユーザであるか否かによって、通話履歴テーブルの内容は異なる。そのため、通話相手が通話履歴テーブルに登録されていない人であっても、自機(親機1)の通話履歴テーブルを参照することにより、当該通話相手との予測通話時間の精度を高めることができる。これにより、通話時間全体の通話品質を向上させることができる。
【0060】
図4に説明を戻す。S12〜S17の処理は、上述したS4〜S8の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
通話が終了すると(S17:YES)、S18に移行する。
S18において、今回の通話相手(接続相手)を通話履歴テーブルに登録する。通話履歴テーブルへの登録処理は、親機1側で行われるが、子機からの遠隔操作で行うよう構成してもよい。
【0062】
なお、複数の子機に対してリンギング指示信号を送信した場合は、S8及びS16で子機を外部通信回線に接続するときに、外部通信回線に接続しない子機(すなわち、発呼確定指示がなかった子機)に対して、リンギング終了を指示するリンギング終了指示信号を送信する。
【0063】
(子機側の処理)
次に、第1実施形態における子機側の処理について説明する。子機側の処理は、発呼要求指示を受け付けた場合の処理と、リンギング指示信号を受け付けた場合の処理、に大きく分けることができる。
【0064】
(発呼要求指示を受け付けた子機の処理)
親機1より発呼要求指示を受け付けた場合における子機の処理について説明する。
図7は、発呼要求指示を受け付けた子機で実行される処理のフローチャートである。この処理は、子機2が有するプロセッサによって実行される。
【0065】
S21において、ユーザによる発呼要求指示を受け付ける。ユーザは、発呼要求を指示するために、例えば、接続相手先の電話番号を入力した後に発呼要求を指示するためのボタンを押下する。なお、子機2のRAM等に電話帳を記憶しておき、電話帳から接続先を選択するように構成してもよい。
【0066】
S22において、親機1に対し、発呼要求指示信号を送信する。発呼要求指示信号には、接続相手先を特定するための情報(例えば、接続相手先の電話番号)及び自機の識別番号(すなわち、発呼要求を行った子機の識別番号)が含まれている。
【0067】
S23において、親機1から送信される報知指示信号を受信したか否かを判断する。報知指示信号を受信した場合は(S23:YES)、S24に移行する。
また、報知指示信号を受信していない場合は(S23)、S27に移行する。なお、報知指示信号を受信していない間は、S23で待機し、所定時間中に報知指示信号を受信しなかった場合にS27に移行するよう構成してもよい。
【0068】
S24において、報知処理を行う。例えば、ディスプレイ21に、子機の通話品質が良くない可能性があることを示す内容を表示する。このとき、発呼の確定、子機の交換を指示するためのボタン領域を併せて表示する。図8は、ディスプレイ21に表示される内容の一例を示したものである。図8に示すように、子機の通話品質が良くない可能性があることを示す内容とともに、選択領域31及び選択領域32を表示されている。
【0069】
図8に示す内容が表示されている間は、発呼確定または子機交換の指示を受付可能な状態となっている。ユーザは、発呼確定を指示する場合は選択領域31を選択し、子機交換を指示する場合は選択領域32を選択する。選択動作には、例えば、子機が有するボタン等が用いられる。また、ディスプレイ21をタッチパネルで構成し、ディスプレイ21を直接タッチして選択できるように構成してもよい。また、音声認識技術を用いて選択できるよう構成してもよい。
【0070】
S25において、発呼確定指示があったか否かを判断する。すなわち、選択領域31が選択されたか否かを判断する。発呼確定指示がないと判断した場合は(S25:NO)、S28に移行する。
S28において、子機変更指示があったか否かを判断する。すなわち、選択領域32が選択されたか否かを判断する。子機変更指示がないと判断した場合は(S28:NO)、S25に戻る。すなわち、選択領域31または選択領域32が選択されるまでの間、S25及びS28の条件判断処理が繰り返されることになる。
【0071】
S25において、発呼確定指示があったと判断した場合は(S25:YES)、S26に移行する。
S26において、親機1に対し、発呼確定指示信号を送信する。発呼確定指示信号には、送信した子機自身を識別するための識別信号が含まれている。
その後、子機は外部通信回線との接続が開始され、S21で受け付けた接続相手との通話が可能となる。
通話されている間は、処理はS27で待機する。
通話が終了したと判断した場合は(S27:YES)、子機側の処理を終了する。
【0072】
一方、S28において、子機変更指示があったと判断した場合は(S28:YES)、S29に移行する。
S29において、親機との接続を切断し、子機側の処理を終了する。
【0073】
なお、図7に示すフローチャートの処理の実行中に、他の子機から発呼確定指示があった場合は、その旨を示す信号が親機1から通知され、子機の処理は終了することになる。
【0074】
上述した子機の処理によって、発呼後、外部通信回線との接続前に、通話品質が良好でない旨が報知されるので、良好な通話品質で通話を行いたいユーザは、子機を交換することができる。
【0075】
(リンギング指示を受け付けた子機の処理)
次に、親機1よりリンギング指示を受け付けた場合における子機の処理について説明する。
図9は、リンギング指示を受け付けた子機で実行される処理のフローチャートである。この処理は、親機1からリンギング指示信号を受信したときに、子機2が有するプロセッサによって実行される。
【0076】
S31において、リンギング(鳴動動作)を行う。このとき、リンギングの音の種類を、通常の着信時と異ならせるように構成してもよい。また、接続相手ごとに変化させるよう構成してもよい。また、受信したリンギング指示信号に含まれる電話番号(すなわち、別の子機で発呼要求があった接続相手の電話番号)を表示する。これにより、ユーザはどの電話番号に発呼しようとしているのかを把握することができる。また、電話番号ではなく、接続相手の氏名等を表示するように構成してもよい。
その後、S32に移行する。
【0077】
S32において、発呼確定指示があったか否かを判断する。この判断は、例えば、子機2の所定のボタンが押下されたか否かに基いて行うことができる。
発呼確定指示がないと判断した場合は(S32:NO)、S35に移行する。
S35において、リンギング終了指示信号を受信したか否かが判断される。リンギング終了指示信号を受信していないと判断した場合は(S35:NO)、S32に戻る。すなわち、発呼確定の指示がなく、かつ、リンギング終了指示信号を受信していない状態においては、S32及びS35の条件判断が繰り返されることになる。
【0078】
S32において、発呼確定指示があったと判断した場合は(S32:YES)、S33に移行する。
S33において、親機1に対し、発呼確定指示信号を送信する。発呼確定指示信号には、送信した子機自身を識別するための識別信号が含まれている。
【0079】
その後、子機は外部通信回線との接続が開始され、受信したリンギング指示信号に含まれる接続相手との通話が可能となる。
通話されている間は、処理はS34で待機する。
通話が終了したと判断した場合は(S34:YES)、子機側の処理を終了する。
【0080】
一方、S35において、リンギング終了指示信号を受信したと判断した場合は(S35:YES)、S36に移行する。リンギング終了指示信号は、他の子機から親機1に対して発呼確定指示信号が送信されたときに、親機1から送信される。
S36において、リンギングを終了する。
【0081】
以上の処理によって、ユーザは、通話を開始した時点から終了までの通話品質が良好であると推定された子機2を用いて通話を行うことができる。また、リンギングされている子機で接続を開始する場合には、リンギング指示信号に接続相手先の情報が含まれているので、改めて接続相手先(電話番号等)を入力する必要がない。
【0082】
ここで、一例として、子機Cを用いて、「1時5分」に「Fさん」へ電話を掛ける(発呼指示を行う)場合の処理について説明する。
通話履歴テーブル(図5)を参照することにより、「Fさん」の平均通話時間は「30分」であることがわかる。これにより、着呼があった「1時5分」から「1時35分」まで通話が行われるものと予測される。そして、電波状況テーブル(図5)を参照し、「1時5分」〜「1時35分」は、通話時間帯(1)に属するので、「子機C」は「電波状況が良好ではない」と判断される。また、通話時間帯(1)において電波状況が「○」となっている「子機A」が、「電波状況が良い」子機として選択される。ここで、「電波状況が良い」ことは、「通信品質が高い」ことを意味する。
【0083】
このため、子機Cのディスプレイには、「通信品質が良くない」ことを示すための報知が行われる。また、子機Aはリンギングを開始する。このとき、子機Cの所定のボタン(発呼を確定するためのボタン)を押下することにより、子機Cが外部通信回線に接続される。このとき、子機Aのリンギングは停止するよう制御される。
一方、子機Aの所定のボタン(発呼を確定するためのボタン)を押下することにより、子機Aが外部通信回線に接続される。また、子機Cは親機との接続が切断されるよう制御される。
【0084】
次に、一例として、子機Bを用いて、「2時55分」に「Aさん」へ電話を掛ける(発呼指示を行う)場合の処理について説明する。
通話履歴テーブル(図5)を参照することにより、「Aさん」の平均通話時間は「2時間」であることがわかる。これにより、着呼があった「2時55分」から「4時55分」まで通話が行われるものと予測される。そして、電波状況テーブル(図6)を参照することにより、
「2時55分」〜「3時00分」では、「子機A」及び「子機C」の電波状況が良好
「3時00分」〜「4時00分」では、「子機B」及び「子機D」の電波状況が良好
「4時00分」〜「4時55分」では、「子機B」及び「子機C」の電波状況が良好
であることがわかる。
そして、子機A〜子機Dのうち、上記予測される通話時間において最も電波状況が良好である時間が長い「子機B」であると判断される。これにより、発呼要求を指示した子機Bが外部通信回線に接続される。
【0085】
なお、図6に示した電波状況テーブルにおいては、1時間刻みで電波状況を記憶していたが、例えば、10分刻みで電波状況を記憶するように構成してもよい。また、電波状況についても、「○」・「×」ではなく、複数段階(例えば、5段階)で電波状況を示すように記憶してもよい。
【0086】
また、図5に示した通話履歴テーブルにおいては、通話相手ごとに1つの平均通話時間を記憶していたが、時間帯等で分けて(例えば、午前・午後、平日・祝日ごとに)平均通話時間を記憶するようにしてもよい。
【0087】
以上説明した第1実施形態によれば、ユーザは、通信品質が良好でない子機を用いて発呼を行う場合に、外部通信回線への接続の前に、通信品質が良好でない可能性があることを把握することができるので、通話に用いる子機を変更でき、また、通話を開始した時点から終了までの通話品質が良好であると推定された子機2を用いて通話を行うことができる。
【0088】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態においては、発呼要求があった子機の通信品質が良くないと推定した場合に、その旨を該子機に送信すると同時に、通信品質が良いと推定した子機に対しリンギング指示信号を送信するものである。通信品質に関わらず、発呼要求指示を行った子機での通話を意図するユーザにとっては、他の子機のリンギング音を煩わしく感じることがある。また、リンギングは所定の電力を伴うため、不必要なリンギングは、不必要に電池を消耗させることにもなる。
第2実施形態は、発呼要求があった子機から子機交換の指示があった後で、通信品質が良いと推定した子機に対しリンギング指示信号を送信するものである。
【0089】
まず、子機2を用いた外部通信回線との接続において、親機1と子機2との間で送受信される情報について説明する。図10は、親機1と子機2との間で送受信される情報の一例について示した図である。なお、図10に示す例においては、親機1に、2台の子機2(子機A及び子機B)が無線接続されているものとする。また、子機Aを用いて外部通信回線との発呼要求指示が行われたものとする。
【0090】
子機Aは、発呼要求指示を受け付けると(1)、親機1に対し、外部通信回線への接続を指示する発呼要求指示信号を送信する(2)。このとき、該発呼要求指示信号には、子機自身を識別するための識別信号、及び、接続相手先を特定するための情報が含まれている。
【0091】
親機1は、上記発呼要求指示信号を受信すると、子機ごとの通信品質を推定する(3)。推定される通信品質は、予測される通信時間を通した通信品質である。このとき、複数の子機に対して通信品質が良いと推定されることもある。子機ごとの通信品質を推定するための具体的な処理についは、上述した第1実施形態における処理と同様である。なお、図10においては、子機Bは「通信品質が良い」と推定され、また、子機Aは「通信品質が良くない」と推定されたものとする。
【0092】
親機1は、子機Aに対し、所定の報知を指示するための報知指示信号を送信する(4)。このとき、報知内容及び報知時間等、報知に関する種々の設定情報を送信するように構成してもよい。
【0093】
子機Aは、報知指示信号を受信すると、該報知指示信号に基いた報知を行う(5)。例えば、子機Aのディスプレイ21上に、通信品質が良くないと推定されたことを示す内容、及び、発呼の確定または子機Aの使用中止(子機交換)の指示を促す内容が表示される。また、音声によって報知するよう構成してもよい。報知指示信号を受信した後、子機Aは、発呼確定の指示及び使用中止(子機交換)の指示が受付可能な状態で待機する。
このとき、子機交換の指示を受け付けると、親機1に対し、子機交換通知信号を送信する(6)。
【0094】
親機1は、子機交換通知信号を受信すると、子機B(通信品質が良いと判断された子機)に対し、リンギング(鳴動動作)を指示するためのリンギング指示信号を送信する(7)。このとき、リンギング音の種類等のリンギングに関する種々の設定情報を併せて送信するように構成してもよい。
【0095】
子機Bは、リンギング指示信号を受信すると、該リンギング指示信号に基いたリンギングを行う(8)。このとき、リンギング音の種類を通常の着呼時と異なるように構成してもよい。また、「この子機の方が通信品質は良いです」等のメッセージを音声合成してもよい。リンギング指示信号を受信した後、子機Bは、発呼確定の指示が受付可能な状態で待機する。
【0096】
親機1は、リンギング指示信号を送信した後、子機Bから発呼確定指示信号が来るまで待機する。
【0097】
子機Bは、発呼確定の指示を受け付けると、親機1に対して、発呼確定指示信号を送信する(9)。発呼確定指示信号には、送信した子機自身を識別するための識別信号(この場合、子機Bを示すための信号)が含まれている。親機Aは、子機Bからの発呼確定指示信号を受信すると、子機Bを外部通信回線に接続する(10)。これにより、子機Bを用いて接続相手先との通話が可能となる。
【0098】
上述した処理によって、ユーザは、通話を開始した時点から終了までの通話品質が最も良好であると推定された子機2を用いて通話を行うことができる。さらに、不必要なリンギングの発生を防ぐことができる。
【0099】
(親機側の処理)
次に、第2実施形態において親機1で実行される処理について説明する。図11は、親機側で実行される処理のフローチャートである。この処理を実行するためのプログラムは、親機1がいずれかの子機から発呼要求信号を受信した際に、親機1が有するプロセッサによって実行される。
【0100】
図11におけるS41〜S46及びS50〜S52の処理は、それぞれ、上述した図3(第1実施形態)のS1〜S6及びS8〜S10の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0101】
S47において、発呼要求があった子機から送信された発呼確定指示信号を受信したか否かを判断する。発呼確定指示信号を受信したと判断した場合は(S47:YES)、S50に移行する。S47の条件判断において「YES」となった場合は、発呼要求のあった子機が外部通信回線に接続されることになる。
【0102】
発呼確定指示信号を受信していないと判断した場合は(S47:NO)、S48に移行する。
S48において、S43で通信状態が良いと推定した子機に対し、リンギングを指示するリンギング指示信号を送信する。このとき、S43で複数の子機が「通信品質が良い」と推定された場合は、該複数の子機すべてに対してリンギング指示信号を送信してもよく、また、該複数の子機のうち、所定の子機のみに対してリンギング指示信号を送信してもよい。
【0103】
S48の処理が終了した後、親機1は、リンギング指示信号を送信した子機2から発呼確定指示信号を受信する待機状態となる。また、発呼確定指示信号は、S49で受信されるものとする。
【0104】
一方、S42において、「NO」と判断された場合は、S54(図12)に移行する。
S54の処理は、上述した図4(第1実施形態)のS11と同様であるので、説明を省略する。
また、S55〜S62の処理は、上述したS44〜S51の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0105】
通話が終了すると(S62:YES)、S63に移行する。
S63において、今回の通話相手(接続相手)を通話履歴テーブルに登録する。通話履歴テーブルへの登録処理は、親機1側で行われるが、子機2からの遠隔操作で行うよう構成してもよい。
【0106】
なお、複数の子機2に対してリンギング指示信号を送信した場合は、S50及びS61で子機を外部回線に接続するときに、リンギング指示信号を送信し、かつ、外部通信回線に接続しない子機(すなわち、発呼確定指示がなかった子機)に対して、リンギング終了を指示するリンギング終了指示信号を送信する。
【0107】
なお、第2実施形態における子機側の処理は、上述した第1実施形態の処理と同じであるので説明を省略する。
【0108】
以上説明した第2実施形態によれば、ユーザは、通話を開始した時点から終了までの通話品質が最も良好であると推定された子機2を用いて通話を行うことができる。さらに、不必要なリンギングの発生を防ぐことができる。
【0109】
(電波状況テーブルの更新)
次に、電波状況テーブル(図6)の更新について説明する。なお、以下に説明する電波状況テーブル更新処理は、上述した第1実施形態及び第2実施形態のいずれの実施形態に対しても適用可能である。
図13は、電波状況テーブル更新処理において親機1と子機2との間で送受信される情報について示した図である。なお、図13に示す例においては、親機1に、2台の子機2(子機A及び子機B)が無線接続されているものとする。
【0110】
子機Aは、所定のタイミングで電波状況を検知する(1)。このとき、外来波の受信電解強度、親機1とのBER等に基いて、電波状況を検知することができる。
検知した電波状況に基いて、子機Aが記憶している電波状況テーブルを更新する(2)。子機Aが有する電波状況テーブルの内容は、図6の電波状況テーブルのうち、子機Aに関する部分のみである。
子機Aは、親機1に対し、検知した電波状況を示す検知信号を送信する(3)。親機1は、当該検知信号を受信すると、親機1が有する電波状況テーブルを更新する(4)。
【0111】
また、子機Bは、所定のタイミングで電波状況を検知する(5)。このとき、外来波の受信電解強度、親機1とのBER等に基いて、電波状況を検知することができる。
検知した電波状況に基いて、子機Bが記憶している電波状況テーブルを更新する(6)。子機Bが有する電波状況テーブルの内容は、図6の電波状況テーブルのうち、子機Bに関する部分のみである。
子機Bは、親機1に対し、検知した電波状況を示す検知信号を送信する(7)。親機1は、当該検知信号を受信すると、親機1が有する電波状況テーブルを更新する(8)。
【0112】
なお、子機A及び子機Bにおける電波状況の検知は、それぞれ独立したタイミングで行われる。また、該所定のタイミングは、適宜設定可能である。
【0113】
図14は、子機における電波状況テーブル更新処理のフローチャートである。電波状況テーブル更新処理を実行するためのプログラムは、所定のタイミングで、子機2が有するプロセッサによって実行される。
【0114】
まず、S71において、電波状況を検知する。電波状況は、上述したとおり、外来波の受信電解強度、親機1とのBER等に基いて認識することができる。
S72において、検知した電波状況に基いて、自機(子機2)が有する電波状況テーブルを更新する。
S73において、親機1に対し、検知した電波状況を示す検知信号を送信する。なお、該検知信号には、どの子機2から送信されたかを示す子機識別情報が含まれているものとする。
【0115】
図15は、親機における電波状況テーブル更新処理のフローチャートである。電波状況テーブル更新処理を実行するためのプログラムは、親機1が起動されている間、所定間隔(例えば、100ミリ秒)で、親機1のプロセッサによって繰り返し実行される。
【0116】
まず、S81において、無線接続されているいずれかの子機2から送信された検知信号を受信したか否かが判断される。
検知信号を受信していないと判断した場合は(S81:NO)、電波状況テーブル更新処理を終了する。
一方、検知信号を受信したと判断した場合は(S81:YES)、S82に移行する。
【0117】
S82において、電波状況テーブルを更新する。具体的には、受信した検知信号に含まれる子機識別信号に基いて、電波状況テーブルの内容のうち、送信元の子機2に対応する部分を更新する。
【0118】
以上説明した電波状況テーブル更新処理によって、子機2の電波状況は常に更新されるから、通話時間全体の電波状況の予測精度を高めることができる。
【0119】
(マルチスロットモードへの切り替えタイミング)
子機は、親機との通信状態が悪くなった場合、マルチスロットモードに切り替えて通信を行うことができる。これにより、電波状況が悪化した場合でも通信品質を高めることができる。すなわち、同じデータを複数回繰り返し送信することにより、通話品質の劣化を防ぐことができる。
【0120】
しかしながら、電波状況が悪化したことを検知したタイミングでマルチスロットモードに切り替えるよう構成した場合、切り替える直前において通話品質は劣化している。一方、通話中のすべての時間帯をマルチスロットモードで送信することは、電池の消耗等に観点から好ましいものではない。
【0121】
以下、上述した電波状況テーブルを用いたマルチスロットモードへの切り替えタイミング決定処理について説明する。なお、以下に説明する切り替えタイミングの決定処理は、上述した第1実施形態及び第2実施形態のいずれの実施形態に対しても適用可能である。
【0122】
ここで、一例として、「子機A」を用いて「2時50分」から通話が行われている場合における、マルチスロットモードへの切り替えタイミングの決定処理について説明する。
まず、発話開始時刻である「2時50分」〜「3時00分」までの時間帯は、電波状況が「○」であるから、通常の通信方式によって親機1に対し、ユーザの音声信号が送信される。そして、「3時00分」〜「4時00分」の時間帯は、電波状況が「×」であるから、不図示のタイマが、「3時00分」になったことを検知したタイミングで、マルチスロットモードに切り替えられ、それ以降は、マルチスロットモードによって親機1に対し、ユーザの音声信号が送信される。
【0123】
以上説明したマルチスロットモードへの切り替えタイミングの決定処理によれば、電波状況が悪化することを事前に予測してマルチスロットモードに切り替えるので、高い通話品質を保つことができる。なお、電波状況テーブルにおいて通話状況が良好であると示されている場合であっても、実際の電波状況が悪化した場合には、マルチスロットモードに切り替えてもよいことはもちろんである。
【0124】
以上説明したとおり、本発明によれば、いずれかの子機から発呼要求指示信号を受信すると、接続相手を識別し、識別した接続相手に基いて、予測通話時間を予測し、予測した通話時間に基いて、通話時間全体における子機ごとの通話品質を推定する。発呼要求があった子機の通話品質が良いと推定された場合は、その子機を外部回線に接続するよう制御する。一方、発呼要求があった子機の通話品質が良くないと推定された場合は、その旨を発呼要求があった子機に報知すると共に、通話品質が良いと推定された子機に対し、リンギングを指示する信号を報知する。これにより、ユーザは、通話品質が高いと予測される子機を用いて通話することが可能となる。さらに、リンギング指示のタイミングを制御することにより、不必要なリンギングの発生を防ぐことができる。また、電波状況テーブルを適宜なタイミングで更新することにより、通話時間の予測精度を高めることができる。また、電波状況が悪化すると予測された時間帯においては、マルチスロットモードに切り替えるので、高い通話品質を保つことができる。
【0125】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上述した第1実施形態及び第2実施形態の両方の機能を有するように構成し、ユーザにより、いずれかの機能を利用するか選択できるよう構成してもよい。さらに、いずれの機能も利用しない形態を選択できるよう構成してもよい。
【0126】
また、いずれの子機においても電波状況が良好ではないと判断した場合は、報知処理を行うことなく、発呼要求があった子機を外部回線に接続するよう構成してもよい。
【0127】
また、上述した各フローチャートは単なる一例であり、該各フローチャートの処理と同等の結果を得ることできるものであれば、他のフローチャートによって処理を実現してもよい。
【0128】
また、上述した親機及び/または子機における処理方法、該処理を実現するためのプログラム、該プログラムが記録された記録媒体としても本発明は実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】コードレス電話システムにおける構成の一例を示した図である。
【図2】第1実施形態における親機と子機との間で送受信される情報について示した図である。
【図3】第1実施形態における親機側の処理のフローチャートである。
【図4】第1実施形態における親機側の処理のフローチャートである。
【図5】通話履歴テーブルのデータ構造の一例を示した図である。
【図6】電波状況テーブルのデータ構造の一例を示した図である。
【図7】発呼要求を受け付けた子機のフローチャートである。
【図8】ディスプレイの表示例である。
【図9】リンギング指示を受け付けた子機のフローチャートである。
【図10】第2実施形態における親機と子機との間で送受信される情報について示した図である。
【図11】第2実施形態における親機側の処理のフローチャートである。
【図12】第2実施形態における親機側の処理のフローチャートである。
【図13】電波状況テーブル更新処理において親機と子機との間で送受信される情報について示した図である。
【図14】子機側の電波状況テーブル更新処理のフローチャートである。
【図15】親機側の電波状況テーブル更新処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0130】
1 親機
2 子機
21 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の子機とコードレス通信が可能なコードレス電話の親機であって、
発呼要求を行った子機を識別する子機識別手段と、
前記発呼要求の時刻を取得する発呼要求時刻取得手段と、
前記発呼要求の接続相手を識別する接続相手識別手段と、
前記識別した接続相手との通話時間を予測する通話時間予測手段と、
前記複数の子機それぞれについて、時間帯ごとの電波状況が記憶されている電波状況テーブルと、
前記取得した発呼要求時刻、前記予測した通話時間、前記電波状況テーブルに基いて、前記複数の子機のうち、前記予測した通話時間中の電波状況が良い子機を推定する子機推定手段と、
前記識別した子機と前記推定した子機とが一致するか否かを判断する判断手段と、
一致している場合に、前記識別した子機の外部回線接続を行う接続開始手段と、
一致していない場合に、前記識別した子機に対し、所定の通知信号を送信する通知信号送信手段と、
を備えることを特徴とする親機。
【請求項2】
前記推定した子機に対し、リンギング指示信号を送信するリンギング信号送信手段、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の親機。
【請求項3】
前記接続開始手段は、前記通知信号を送信した後において、
前記識別した子機から発呼確定指示があった場合は、該識別した子機の外部回線接続を行い、
前記推定した子機から発呼確定指示があった場合は、該推定した子機の外部回線接続を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の親機。
【請求項4】
前記子機推定手段は、前記接続相手先識別手段が前記発呼要求の接続相手を識別できない場合に、前記発呼要求の時刻及び前記電波状況テーブルに基いて子機を推定する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の親機。
【請求項5】
接続相手ごとの平均通話時間を記憶する通話履歴テーブルと、
前記接続の終了を検出したときに該接続の通話時間を取得する通話時間取得手段と、
前記接続の接続相手、前記接続の通話時間に基いて、前記通話履歴テーブルを更新する通話履歴テーブル更新手段と、
を備え、
前記通話時間予測手段は、前記通話履歴テーブルを用いて、前記識別した接続相手との通話時間を予測する、
ことを特徴とする請求項1乃至4に記載の親機。
【請求項6】
親機とコードレス通信可能なコードレス電話の子機であって、
所定の接続相手との発呼指示を受け付ける発呼指示受付手段と、
受け付けた発呼指示に基づく発呼指示信号を前記親機に送信する発呼指示信号送信手段と、
前記親機から所定の通知信号を受信した場合に、所定の報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする子機。
【請求項7】
前記所定の報知を行った後において、前記所定の接続相手との発呼確定指示を受け付ける発呼確定指示受付手段と、
受け付けた発呼確定指示に基づく発呼確定指示信号を前記親機に送信する発呼確定指示信号送信手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の子機。
【請求項8】
時間帯ごとの自機の電波状況が記憶されている電波状況テーブルと、
通話時において、前記電波状況テーブルに基いて電波状況が悪いと判断された時間帯では、マルチスロット方式で前記親機と通信を行う通信制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の子機。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれかの親機と、請求項6乃至請求項8のいずれかの子機とからなるコードレス電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−177549(P2009−177549A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14412(P2008−14412)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】