説明

コードレス電話システム及び電話帳転送方法

【課題】 親機と子機あるいは複数の子機の間で電話帳データの転送を可能としたコードレス電話システムにおいて、送信元と転送先との共通項目のデータについては、記録上限数に差異があっても、超過分を削除することなく、転送登録することを可能としたコードレス電話システムを提供する。
【解決手段】所定の項目(例えば項目名:電話番号)についての記録上限数が子機30b(送信元)より子機30a(転送先)の方が少ないような場合には、同一個人を対象とした個人データを子機30aに必要数追加して、子機30bの複数の電話番号を分割してこれら個人データに振り分けて登録する。これにより、当該子機30bで保存されている1の個人データ内に記録されている複数の電話番号情報をいずれも欠落させることなく子機30aに登録することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親機と子機あるいは複数の子機の間で電話帳データの転送を可能としたコードレス電話システムに関し、特に、送信元と転送先とで電話帳データ形式に相違があるために、個人データの共通項目(例えば項目名:電話番号)についての情報記録上限数が転送先の方が少ないような場合にも、当該共通項目についての複数情報を欠落させることなく転送先に登録可能としたコードレス電話システム及び電話帳転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオフィスや家庭においては、公衆回線網に接続される加入電話のような固定電話装置を親機として、この親機と無線通信機能により結ばれる1台又は複数台の子機からなるコードレス電話システムが普及している。近年では親機にファクシミリ機能やインターネット閲覧機能を備えたコードレス電話システムも普及している。
【0003】
これらコードレス電話システムには、電話装置毎に独立した電話帳機能(電話帳データ登録機能)を有したものが多く、親機、子機それぞれに個別に同一個人(自然人、法人、社団等々)についての個人データ(個人名称、電話番号、メールアドレス、住所等々の情報の集合)を登録する手間を省く趣旨から、電話帳データを簡易な操作で相互に転送する電話帳転送機能が付加されているものが提案されている。
【0004】
しかしながら、1のコードレス電話システムを構成する電話装置相互間には、表示装置(ディスプレイパネル)の表示機能の差異(表示スペースの大小や表示可能文字の差異等)がある場合や、或いは、新モデルの子機の追加が行われたりしたような場合には、それぞれの電話帳データの形式が完全に一致しないケースが発生する。尚、ここで言う電話帳データ形式とは、電話帳データを構成する個人データの記録項目(例えば、個人名称、電話番号、住所、メールアドレス、生年月日等々)の種類や、各項目における情報記録上限数(例えば、1件の個人データに電話番号情報を何件まで登録できるか)等の内容を意味している。
【0005】
このような場合には、送信元から転送先へと同一内容の電話帳データをそっくりそのまま転送することはできないため、電話帳データの転送機能が利用不可能となる。そこで、下記特許文献1(特開2002−101184)に示されるコードレス電話システムでは、送信元が保存している電話帳データの形式と転送先のデータ形式との比較参照を行い、両者の形式に相違がある場合には、まず、送信元の電話帳データに転送先で取り扱えるデータ形式への編集(もっぱら、転送先で不採用とされている項目データの削除、転送先での記録上限数を超過する分のデータの削除)を行って転送先のデータ形式に合致させた後、転送を実行するといった技術が提案されている。
【特許文献1】特開2002−101184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようなデータ編集を行うと、転送先のデータ形式に拘束されて、削除されるデータが発生することを免れえない。特に、この種の電話帳データでは最も重視される電話番号情報については、例えば、送信元では各個人毎に複数件記録が可能であるが送信先では1件しか記録できないような場合が有り、この場合には必然的にいくつかの電話番号情報が削除(喪失)される結果となり、電話帳データ転送機能の本質を滅却してしまい兼ねず、かかる問題点の解消が課題とされている。
【0007】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、送信元と転送先とで電話帳データ形式に相違があるために、所定の項目(例えば項目名:電話番号)についての記録上限数が送信元より転送先の方が少ないような場合には、同一個人を対象とした個人データを転送先のデータ形式に従って必要数追加作成して、送信元の所定項目についての複数情報を分割してこれら複数の新規作成個人データに振り分けて転送先に登録すれば、送信元の複数情報のいずれも欠落させることなく転送することができ、前述の問題点を解消し得ることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、上記の目的を解消することを目的とし、親機と子機あるいは複数の子機の間で電話帳データの転送を可能としたコードレス電話システムにおいて、送信元と転送先との共通項目の情報については、記録上限数に差異があっても、超過分を削除することなく、転送することを可能としたコードレス電話システム及び電話帳転送方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、電話回線に接続された親機と、当該親機と無線接続可能な1又は複数台の子機を有し、これら電話装置の間で電話帳データを転送可能なコードレス電話システムにおいて、前記親機又は子機には、電話帳データ転送要求があったときには、転送元の個人データに含まれる所定項目の情報記録数と、転送先の前記所定項目と同項目の情報記録上限数と、を比較する比較機能と、情報記録上限数を超過する数の所定項目情報を有する個人データがあるときには、転送先の電話帳データ形式に合致した同一個人についての個人データを追加作成する個人データ追加作成機能と、当該追加作成された個人データに前記超過分の所定項目情報を含ませて転送する分割転送機能と、を実現するための制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるコードレス電話システムにおいて、親機又は子機には、送信元の個人データに含まれる所定項目の情報記録数と、転送先の前記所定項目と同項目の情報記録上限数とに基づいて、追加作成すべき個人データの件数を算出する個人データ追加作成数算出機能、を実現するための制御手段が更に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2にかかる発明において、 親機又は子機には、分割転送の実行有無を、電話装置に設けられた液晶ディスプレイ等の表示装置への通知表示、および入力手段への入力操作を介して確認する分割転送実行有無確認機能と、分割転送の実行拒否が受け付けられた場合には、転送元の個人データに含まれる所定項目の複数情報の中から、情報記録上限数を超過する数の情報を削除することにより、転送先の電話帳データ形式に合致した電話帳データ転送を実行する通常転送機能と、 を実現するための制御手段が更に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項4にかかる発明は、電話回線に接続された親機と、当該親機と無線接続可能な1又は複数台の子機を有し、これら電話装置の間で電話帳データを転送可能なコードレス電話システムにおける電話帳転送方法であって、電話帳データ転送要求があったときには、転送元の個人データに含まれる所定項目の情報記録数と、転送先の前記所定項目と同項目の情報記録上限数と、を比較するステップと、情報記録上限数を超過する数の所定項目情報を有する個人データがあるときには、転送先の電話帳データ形式に合致した同一個人についての個人データを追加作成するステップと、当該追加作成された個人データに前記超過分の所定項目情報を含ませて転送するステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び請求項4にかかる発明においては、転送先での情報記録上限数を超過する数の所定項目情報を有する個人データがあるときには、この個人データが対象とする主体(名称等)が実質同一である追加の個人データが1つまたは2以上作成され、この追加個人データに超過分の所定項目情報が記録されることとなる。そして、この追加個人データそれ自体も、転送先の電話帳データ形式に適合するものであるため、情報記録上限数を超えることがない。したがって、送信元で保存された所定項目情報をいずれも欠落させることなく個人データを転送可能となる。
【0014】
請求項2にかかる発明によれば、送信元の所定項目の情報記録数、および送信先での同項目の情報記録上限数がいかように設定されていても、その都度適当な数の追加個人データを作成することができる。したがって、電話装置間の所定項目情報記録数を想定した上で追加個人データの作成数を予め決めておくといった必要もなく、送信元で保存された所定項目の複数データをいずれも欠落させることなく転送することが可能となる。
【0015】
従来のコードレス電話システムにおいては、転送先の空きメモリ容量(個人データ登録可能件数の残数)が少ないような場合には、結果的に、送信元で登録された所定項目の複数情報をすべて登録することが不可能な場合が生じる。このような場合にも、無条件に分割転送を実行するとなると、登録件数が増加する結果、いくつかの個人データが丸ごと欠落することとなる。これに対し、請求項3にかかる発明によれば、事前に分割転送の実行確認を行うことができるから、転送先のデータ記録上限数を超える記録情報を有する個人データについては、全ての記録情報を登録することを断念する代わりに、主要記録情報(例えば通常使用番号としてユーザ指定されたメインの電話番号情報)のみを転送するように構成することができ、結果、より多くの個人データの転送を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するためのコードレス電話システム及び電話帳転送方法を例示するものであって、本発明をこのコードレス電話システムに特定することを意図するものではなく、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例にかかるコードレス電話システム10の全体構成を示す図である。本実施例のコードレス電話システム10は、電話回線に接続された電話装置の親機20と、無線通信機能を介してこの親機20と接続される2台の子機30a,30bとを有してなる。更に、子機30aと30bとは、親機20を介在して無線接続される。尚、このコードレス電話システム10の通信方式は、アナログ、デジタルのいずれであってもよい。
【0018】
そして、本実施例では、これら電話装置のそれぞれには、装置毎に規定件数の個人データを登録可能な電話帳データ登録機能と、それら電話装置間で当該電話帳データを相互に転送可能とする電話帳転送機能を有している。
【0019】
本実施例における電話装置の電話帳データは、個人名称情報と電話番号情報とで構成されており、より具体的には、親機20は、個人データとして、個人名称(カナのみ)と、電話番号を2件まで登録可能とされている。また、子機30aは、個人データとして、個人名称(漢字と読みガナ)と電話番号を2件登録可能とされている。また、子機30bは、個人データとして、個人名称(漢字と読みガナ)と電話番号を3件まで登録可能とされている。
【0020】
次に、本発明の実施例にかかるコードレス電話システム10の回路構成を説明する。図2は、本発明の実施例にかかる親機20の構成を示すブロック図である。親機20は、制御部21、着信検出部22、回線接続部23、表示部24、操作部25、メモリ部26、ACアダプタ27、電源部28、送信部30、受信部31、周波数シンセサイザー32、送受信アンテナ33、受話器34などを備えて構成されている。
【0021】
制御部21は、マイクロプロセッサを中心に構成され、一般的なコンピュータ装置と同様にROM、RAMなどのメモリを備えており、ROMに格納されている各種制御プログラムを読み出してRAMに展開し、制御プログラムに従った親機20の各種制御処理を担う。ROMに格納されている制御プログラムには、本発明の要部となる「比較機能」、「個人データ追加作成機能」、「分割転送機能」、「個人データ追加作成数算出機能」、「分割転送実行有無確認機能」、「通常転送機能」を実現するための電話帳データ転送用プログラムが含まれる。本実施例では、後述するように、同様のプログラムが各子機30a,30bにも格納されている。尚、当該プログラムで実現される機能及び動作の内容については後にフローチャート等を用いて詳細に説明する。
【0022】
回線接続部23は、電話回線と接続されて回線の解放・閉結を行ったり、親機の電話帳データに記憶されている電話番号情報に基づいて、或いは子機からの発信の際に当該子機から送出される電話番号情報に基づいて電話回線を通じた発呼処理を行う。
【0023】
着信検出部22は、回路接続部23からの着信信号を受けて着信を検出すると共に、当該着信信号をパルス信号に波形整形して制御部21に出力する。
【0024】
表示部24は、液晶パネル等から構成される表示ユニットであり、制御部21からの制御信号に応じて、電話帳データから読み出した電話番号、発信先の名称の他、通話時間や、通話料金などのテキストデータ、画像データ等の適宜の表示を行う。また、本実施例では、後述するように、親機20から子機30へと電話帳データの転送を行う際、分割転送を実行するか否かの確認をユーザに促すための所定の文字表示もこの表示部24を利用して行われる。
【0025】
操作部25は、数字や文字の入力などを行うテンキー、発呼および通話の開始などを操作する通話キー、通話の終了などを操作する終話キー、電話帳の検索・登録を行うための電話帳キー、その他の各種モードを設定するための操作を行うモード設定キー等から構成される。
【0026】
メモリ部26は、RAMによって構成され、本発明の要部となる電話帳データや、その他機能を実行するのに利用されるユーザ入力データが記憶されている。尚、この親機の電話帳には、先述したように、個人データとして、個人名称(カナのみ)と、電話番号を2件まで記憶可能とされている。
【0027】
電源部28は、ACアダプタ27から所定の直流電圧を受けて、各回路構成要素に電源を供給する。
【0028】
送信部30と受信部31は、送受信アンテナ33を介して子機30との間に無線通信による通話リンクを確立させて、信号の送受信を行う。また、周波数シンセサイザー32は、当該子機との無線通信のための信号発振を担い、制御部21からの制御信号によって、送信部30と受信部31の送受信周波数を適宜切り換える。
【0029】
受話器34は、通話用のスピーカ(SP)とマイク(MIC)とで構成される。スピーカ(SP)は、図示しない制御部21内の音声信号処理部で生成された電気信号を増幅して音声として出力する。マイク(MIC)は、音声を電気信号に増幅変換して制御部21内の音声信号処理部に出力する。
【0030】
次に、図3を参照しつつ、本発明の実施例にかかる子機30の構成を説明する。尚、本実施例における子機30aと30bとの違いは、電話帳データ形式のみであり、基本的な回路構成は同様のものが採用されている。
【0031】
コードレス電話装置の子機30は、制御部41、表示部42、操作部43、メモリ部44、電源部45、充電部46、ACアダプタ47、送信部48、受信部49、周波数シンセサイザー50、送受信アンテナ51、レシーバ52などを備えて構成されている。
【0032】
制御部41は、マイクロプロセッサを中心に構成され、一般的なコンピュータ装置と同様にROM、RAMなどのメモリを備えており、ROMに格納されている各種制御プログラムを読み出してRAMに展開し、制御プログラムに従った子機30の各種制御処理を担う。先述したように、このROMに格納されている制御プログラムには、本発明の要部となる「比較機能」、「個人データ追加作成機能」、「分割転送機能」、「個人データ追加作成数算出機能」、「分割転送実行有無確認機能」、「通常転送機能」を実現するための電話帳データ転送用プログラムが含まれる。当該プログラムで実現される機能及び動作の内容については後にフローチャート等を用いて詳細に説明する。
【0033】
表示部42は、液晶パネル等から構成される表示ユニットであり、制御部41からの制御信号に応じて、電話帳データから読み出した電話番号、発信先の名称の他、通話時間や通話料金等のテキストデータ、画像データ等の適宜の表示を行う。また、本実施例では、後述するように、子機30から親機20或いは一方の子機30から他方の子機30へと電話帳データの転送を行う際、分割転送を実行するか否かの確認をユーザに促すための所定の文字表示もこの表示部42を利用して行われる。
【0034】
操作部43は、数字や文字の入力などを行うテンキー、発呼および通話の開始などを操作する通話キー、通話の終了などを操作する終話キー、電話帳の検索・登録を行うための電話帳キー、その他の各種モードを設定するための操作を行うモード設定キー等から構成される。
【0035】
メモリ部44は、RAMによって構成され、本発明の要部となる電話帳データや、その他機能を実行するのに利用されるユーザ入力データが記憶されている。尚、子機30aの電話帳には、先述したように、個人データとして、個人名称(漢字と読みガナ)と、電話番号を2件まで登録可能とされている。また、子機30bの電話帳には、個人データとして、個人名称(漢字とカナ)、電話番号を3件まで登録可能とされている。
電源部45は、充電式のバッテリーを内蔵し、子機30の各回路構成要素に電源を供給する。充電部46は、子機30が充電台(図示せず)に載置されている間、ACアダプタ47から与えられる直流電圧により電源部45のバッテリーの充電を行う。
【0036】
送信部48と受信部49は、送受信アンテナ51を介して親機20との間に無線通信による通話リンクを確立させて、信号の送受信を行う。また、周波数シンセサイザー50は、当該親機20との無線通信のための信号発振を担い、制御部41からの制御信号によって、送信部48と受信部49の送受信周波数を切り換える。
【0037】
レシーバ42は、通話用のスピーカ(SP)とマイク(MIC)とで構成される。スピーカ(SP)は、図示しない制御部41内の音声信号処理部で生成された電気信号を増幅して音声として出力する。マイク(MIC)は、音声を電気信号に増幅変換して制御部41内の音声信号処理部に出力する。
【0038】
上述のような構成を有する本実施例のコードレス電話システムにおける電話帳データ転送処理の動作内容を図4乃至6のフローチャートおよび図7、図8のシーケンス図を参照しつつ以下詳細に説明する。
【0039】
図4は本実施例のコードレス電話システムにおける電話帳データ転送処理の内容の概略を示すフローチャートである。
【0040】
電話帳データ転送処理では、まず、転送処理のための事前通信が行われる(ステップ101)。事前通信では、具体的には、以下の3種のデータ送受信が送信元と転送先との間で行われる(図7、図8参照)。すなわち、(1)送信元から転送先への電話帳データ転送要求とそれに対する転送先から送信元のACK(確認応答)、(2)送信元の電話帳データ形式情報の転送先への送信と、ACK(確認応答)としての転送先の電話帳データ形式情報の送信元への送信、(3)送信元から転送先への個人データ転送件数情報の送信とそれに対する転送先から送信元へのACK(確認応答)、である。
【0041】
尚、上記(2)における電話帳データ形式情報は、送信元の電話装置において個人名称の形式(漢字、カナ)、電話番号情報の記録上限数(規定数)の比較を行い、転送先のデータ形式に合致した追加個人データの作成および転送を行うためのものであり、詳細は後述する。
【0042】
続くステップ102では、上記(2)で送受信された電話帳データ形式情報に基づいて、送信元において、1件の個人データにおける電話番号(所定項目)の情報記録上限数の比較(送信元vs転送先)が行われる。ここで、送信元における情報記録上限数が転送先の情報記録上限数以下の場合には、本発明要部となる『分割転送処理』を実行する必要性がないので(ステップ102NO)、通常転送処理(ステップ103)が実行されることとなる。
【0043】
一方、送信元における情報記録上限数が転送先の情報記録上限数を超えている場合には(ステップ102YES)、送信元の電話装置の表示部に分割転送を実行するか否かの確認をユーザに促すための所定の文章(例えば「電話番号を2件に分割して登録しますか?」)の表示がなされる(ステップ104)。ここで、ユーザが操作部を操作して分割転送の実行拒否を選択した場合には(ステップ105NO)、通常転送処理(ステップ103)へと移行することとなる。一方、ユーザが操作部を操作して分割転送の実行承認を選択した場合には(ステップ105YES)、分割転送処理(ステップ106)へと移行することとなる。
【0044】
次に、分割転送処理を必要としないケースである通常転送処理の内容についての詳細を説明する。図5は通常転送処理の詳細内容を示すフローチャートである。このケースは、本実施例においては、送信元が子機30a(個人名称(漢字とカナ)、電話番号2件登録可)で、転送先が親機20(個人名称(カナのみ)、電話番号2件登録可)である場合に実行されることとなる処理である。尚、図7は、当該子機30aと親機20との間で送受信されるデータ内容を示すシーケンス図である。以下、図5と図7を同時参照しつつ、通常転送処理の内容を説明する。
【0045】
通常転送処理の実行に先立っては、先述したが、図7のシーケンス図に示されるように、(1)子機30a(送信元)から親機20(転送先)への電話帳データ転送要求とそれに対する親機20から子機30aへのACK、(2)子機30aの電話帳データ形式情報の親機20への送信と、ACKとしての親機20の電話帳データ形式情報の子機30aへの送信、(3)子機30aから親機20への個人データ転送件数情報の送信とそれに対する親機20から子機30aへのACKが実行される。
【0046】
尚、親機20は、子機30aからの信号が受信されるたびに、当該子機30aに対して既知の手法によりACK(確認応答)を行うのであるが、同シーケンス図では理解を容易とするため、ACK(確認応答)については敢えて図示を省略している。
【0047】
また、本実施例においては、上記(1)に示した電話帳データ転送要求(コマンド)の送信およびそれに対するACK(確認応答)は、制御チャネルを用いて行われ、これにより親機20と子機30aとの間の通話チャネルが決定され、以後の通信は決定された通話チャネルを用いて行われる。すなわち、図示は省略するが、子機30aと親機20との間では、制御チャネルを用いて、制御チャネルから通話チャネルへ移行するための移行データの送受信が実行され通話に用いるチャネルが決定される。これにより、上記(2)以降のデータ送受信は、複数用意された通話チャネルのうち、決定された通話チャネルを用いて実行されることとなる。このような構成とすることで、通常1チャネルしか用意されていない制御チャネルの独占を回避し、当該転送処理期間中であっても、同制御チャネルを通じた他の子機との通信(着信時呼び出し処理等)を実行することが可能とされている。
【0048】
次いで、上記事前通信が終了すると、親機20の制御部21のROM内、及び子機30aの制御部41のROM内に格納された電話帳データ転送用プログラムに従って、通常転送処理(図5)が実行される。すなわち、通常転送処理が開始されると、まず、子機30aの制御部41が有するカウンタnに“0”が設定される(ステップ201)。次いで、カウンタnが“1”歩進されるごとに(ステップ202)、子機30aでは、1つずつ個人データが読み出され、先に受信された親機の電話帳データ形式情報を参照して、各個人データに含まれる情報の中から、当該電話帳データ形式に適合する項目情報のみを抽出した個人データを作成してこれら情報を親機20へ送信する。親機20は受信された個人データを1件ごとに電話帳データとしてメモリ部26に順次登録する(ステップ203)。
【0049】
ステップ203で行われる処理は、より具体的には、親機20では取り扱われていない漢字情報(名称)を無視して、カナ(読み)のみが有効データとして送受信されることにより行われる。これにより、子機30aから転送されてくる個人データが、親機20の電話帳データ形式に適合するものとなる。尚、子機30aにおいても親機20においても、電話番号の記録上限数は同一なので、この例では、子機30aにおける個人データ内容のまま(電話番号が1件であれば1件(電話番号1)、2件であれば2件(電話番号1,2))で親機20に登録されることとなる。
【0050】
ステップ203の通常登録処理は、カウンタnがm(個人データ転送件数)と等しくなるまで(ステップ204YES)、すなわち、子機30aから転送されてくる全ての個人データについて等しく実行されることとなる(ステップ204NO、ステップ202、ステップ203)。
【0051】
次に、分割転送処理の内容についての詳細を説明する。図6は分割転送処理の詳細内容を示すフローチャートである。このケースは、本実施例においては、送信元が子機30b(個人名称(漢字とカナ)、電話番号3件登録可)で、転送先が子機30a(個人名称(漢字とカナ)、電話番号2件登録可)である場合に実行されることとなる処理である。尚、図8は、当該子機30bと子機30aとの間で親機20を介して送受信されるデータ内容を示すシーケンス図である。以下、図6と図8を同時参照しつつ、分割転送処理の内容を説明する。
【0052】
分割転送処理の実行に先立っては、先述したが、図8のシーケンス図に示されるように、(1)子機30b(送信元)から子機30a(転送先)への電話帳データ転送要求とそれに対する子機30aから子機30bへのACK、(2)子機30bの電話帳データ形式情報の子機30aへの送信と、ACKとしての子機30aの電話帳データ形式情報の子機30bへの送信、(3)子機30bから子機30aへの個人データ転送件数情報の送信とそれに対する子機30aから子機30aへのACKが実行される。
【0053】
尚、同シーケンス図に示されるように、この例では子機間通信は、親機20を介在して行われている。また、子機30bは、子機30aからの信号が受信されるたびに、当該子機30aに対して既知の手法によりACKを行うのであるが、同シーケンス図では理解を容易とするため、ACKについては敢えて図示を省略している。更に、子機間での転送処理にあっても、先に図7で示した子機30aと親機20との転送処理と同様に、上記(2)以降のデータ送受信は通話チャネルを用いて行われる。
これら事前通信が終了すると、次いで、子機30の制御部41のROM内にそれぞれ格納された電話帳データ転送用プログラムに従って、分割転送処理(図6)が実行される。分割転送処理が開始されると、まず、子機30bの制御部41のカウンタnに“0”が設定される(ステップ301)。次いで、カウンタnが“1”歩進されるごとに(ステップ302)、子機30bでは、1つずつ個人データが読み出され、先に受信された子機30aの電話帳データ形式情報を参照して、当該個人データに記録された電話番号情報の記録数と子機30aにおける当該電話番号の記録上限数との比較が行われる(ステップ303)。
【0054】
電話機30bの個人データに記録された電話番号の記録数が子機30aにおける当該電話番号の記録上限数以下の場合には(ステップ303NO)、通常登録処理(ステップ304)が行われる。具体的には、この例では個人名称は子機30b,30a共に漢字とカナを有しているので、個人名称については子機30bにおける個人データのまま(漢字のみ又はカナのみで登録されているときはそれら一方のみのまま)、また電話番号については電話番号が1件であれば1件(電話番号1)、2件であれば2件(電話番号1,2)のまま、それら情報が子機30bから子機30aに送信され、それらに基づく個人情報が子機30aに登録されることとなる。
【0055】
一方、子機30bの個人データに記録された電話番号の記録数(例えば3件)が子機30aにおける当該電話番号の記録上限数(2件)を超える個人データが検出された場合には(ステップ303YES)、子機30bの当該個人データの3件の電話番号をすべて子機30aに転送するのに必要な同一個人を対象とする個人データ(例えば三洋電機、三洋電機2、…)の作成数を算出する(ステップ305)。
【0056】
具体的には、子機30bが有する当該個人データの3件の電話番号を、子機30aにおける記録上限数2件の制限下で登録するためには、2件の同一個人を対象とする個人データを子機30bにおいて作成し転送する必要が生じる。1件は通常登録処理でも必然的に作成される通常個人データ(例えば「三洋電機」)であり、もう1件は、分割登録処理に起因して必要となる追加個人データ(例えば「三洋電機2」)である。
【0057】
すなわち、ステップ305では2件の個人データ作成(三洋電機,三洋電機2)が必要であることが算出されることとなる。算出方法は『送信元電話番号記録数(この例では“3”)÷『転送先記録上限数(この例では“2”)』を算出し、更に、小数点以下を繰り上げることにより求められる。
【0058】
そして、子機30bは、3件の電話番号情報を、同一個人を対象とする2件分の個人データに分割して、子機30aに送信し(図8参照)、子機30aでは、それら個人データを電話帳データとして子機30aのメモリ部44に登録することとなる(ステップ306)。具体的には、1件目の通常個人データ(名称:三洋電機1)には電話番号1と電話番号2を、2件目の追加個人データ(名称:三洋電機2)には電話番号3を、それぞれ電話番号情報として含ませて登録する(ステップ306)。
【0059】
ステップ302〜306の処理は、カウンタnがm(個人データ転送件数)と等しくなるまで(ステップ307YES)、すなわち、子機30bが有するすべての個人データについて等しく実行されることとなる(ステップ307NO、ステップ302〜ステップ306)。
【0060】
尚、分割転送処理による登録件数増大の結果、転送先の個人データ登録可能件数との関係で転送不可能な個人データが発生する場合がある。このような状況下では、分割転送の実行有無に拘わらずどのみちいずれかの情報の欠落が生じてしまうのであるから、転送先の登録可能件数と転送件数とを比較して、欠落が生じることが予め予見される場合には、予めその旨を送信元において表示装置を介して通知した上で、(1)転送有無の決定をさせる、或いは(2)個人データに含まれる複数電話番号の中から任意のものを選択させる等の機能構成を持たせることが可能である。
【0061】
また、理解を容易とするため、電話帳データの個人データの内容(項目)を個人名称と電話番号のみとしたが、更に、住所やメールアドレスを追加してもよく、更には、これらを分割転送対象項目として、上述した電話番号と同様に本発明思想を適用して同時に又は並行して分割転送するように構成できることは言うまでもない。
更に、親機20としては、通話機能を有しないものを採用することもできる。例えば、電話回線と接続されているが送受話器がなく、子機との無線通信を介して、子機でのみ通話が可能なターミナルタイプのコードレス電話システムにも本発明が適用できる。
【0062】
更に、親機20には、FAX機能、インターネット機能等、現在一般的に普及されている各種の機能を有する電話装置を採用することができる。
【0063】
更に、上記実施例では、電話装置毎に電話帳データ転送用プログラムを設けて、主として送信元の電話装置の機能を利用して分割転送処理を実現するようにしたが、分割登録のための主要機能を別途設置される専用装置に集中させて、電話帳データ転送はこの専用装置を介在させて行うようにすることによっても、本発明思想を具現化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例にかかるコードレス電話システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例にかかる親機の概略回路構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例にかかる子機の概略回路構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例にかかる電話帳データ転送処理の内容を示すゼネラルフローチャートである。
【図5】本発明の実施例にかかる通常転送処理の詳細内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例にかかる分割転送処理の詳細内容を示すフローチャートである。る。
【図7】子機30aと親機20との間での通信内容を示すシーケンス図である。
【図8】子機30bと子機30aとの間での通信内容を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0065】
10・・・・コードレス電話システム
20・・・・親機
21・・・・制御部
22・・・・着信検出部
23・・・・回線接続部
24・・・・表示部
25・・・・操作部
26・・・・メモリ部
27・・・・メモリ
27・・・・ACアダプタ
28・・・・電源部
29・・・・録音・再生ユニット
30・・・・送信部
30a,30b 無線子機
31・・・・受信部
32・・・・周波数シンセサイザー
33・・・・無線通信アンテナ
34・・・・受話器
41・・・・制御部
42・・・・表示部
43・・・・操作部
44・・・・メモリ部
45・・・・電源部
46・・・・充電部
47・・・・ACアダプタ
48・・・・送信部
49・・・・受信部
50・・・・周波数シンセサイザ
51・・・・無線通信アンテナ
52・・・・レシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話回線に接続された親機と、当該親機と無線接続可能な1又は複数台の子機を有し、これら電話装置の間で電話帳データを転送可能なコードレス電話システムであって、
前記親機又は子機には、電話帳データ転送要求があったときには、転送元の個人データに含まれる所定項目の情報記録数と、転送先の前記所定項目と同項目の情報記録上限数と、を比較する比較機能と、
情報記録上限数を超過する数の所定項目情報を有する個人データがあるときには、転送先の電話帳データ形式に合致した同一個人についての個人データを追加作成する個人データ追加作成機能と、
当該追加作成された個人データに前記超過分の所定項目情報を含ませて転送する分割転送機能と、を実現するための制御手段が設けられていることを特徴とするコードレス電話システム。
【請求項2】
親機又は子機には、送信元の個人データに含まれる所定項目の情報記録数と、転送先の前記所定項目と同項目の情報記録上限数とに基づいて、追加作成すべき個人データの件数を算出する個人データ追加作成数算出機能、を実現するための制御手段が更に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコードレス電話システム。
【請求項3】
親機又は子機には、分割転送の実行有無を、電話装置に設けられた液晶ディスプレイ等の表示装置への通知表示、および入力手段への入力操作を介して確認する分割転送実行有無確認機能と、分割転送の実行拒否が受け付けられた場合には、転送元の個人データに含まれる所定項目の複数情報の中から、情報記録上限数を超過する数の情報を削除することにより、転送先の電話帳データ形式に合致した電話帳データ転送を実行する通常転送機能と、を実現するための制御手段が更に設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のコードレス電話システム。
【請求項4】
電話回線に接続された親機と、当該親機と無線接続可能な1又は複数台の子機を有し、これら電話装置の間で電話帳データを転送可能なコードレス電話システムにおける電話帳転送方法であって、電話帳データ転送要求があったときには、転送元の個人データに含まれる所定項目の情報記録数と、転送先の前記所定項目と同項目の情報記録上限数と、を比較するステップと、
情報記録上限数を超過する数の所定項目情報を有する個人データがあるときには、転送先の電話帳データ形式に合致した同一個人についての個人データを追加作成するステップと、
当該追加作成された個人データに前記超過分の所定項目情報を含ませて転送するステップと、を具備することを特徴とする電話帳転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−98435(P2010−98435A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266381(P2008−266381)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】