説明

ゴムホースの製法

【課題】アバタ等の外観不良が生じず、マンドレルの差し込み、抜き取り,洗浄性等の作業性に優れたゴムホースの製法を提供する。
【解決手段】マンドレル1に未加硫ゴムホース3を嵌挿するに際し、マンドレルの外周面に予め下記の(X)を塗布するとともに、未加硫ゴムホースの内周面に予め下記の(Y)を塗布する工程と、上記マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿した状態で未加硫ゴムホースを加硫する工程と、上記加硫後の加硫ゴムホースからマンドレルを引き抜く工程と、上記引き抜いた後の加硫ゴムホース側に塗布された上記(Y)を水性液で洗浄する工程とを備えたゴムホースの製法である。(X)非水系の潤滑剤2。(Y)水溶性増粘剤を含有する水溶液であって、粘度が2000〜5000mPa・sの範囲に調整された水溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムホースの製法に関するものであり、詳しくはフィラーホース等に用いられるゴムホースの製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、フィラーホース等に用いられるゴムホースは、マンドレルを用いて、マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿し、これを加硫した後、上記マンドレルを引き抜くことにより作製される。この場合、マンドレルと未加硫ゴムとの固着を防ぎ、マンドレルの差し込みや抜き取りを良好にするため、マンドレルの外周面等に離型剤が塗布され、使用されている。上記離型剤としては、一般に、シリコーンエマルジョン等の水系離型剤や、シリコーンオイル等の非水系離型剤が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−56132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記水系離型剤は、ホースを加硫した後の離型剤の洗浄性の点では、シリコーンオイルよりも優れているが、ゴムの加硫時の温度が水の沸点を超えるため、ゴムの加硫中に水系離型剤中の水分が沸騰して揮発する。そのため、揮発ガスにより未加硫ゴムホース(特に内面)に凹凸のアバタ(ガス溜まり)が発生し、外観不良になるという難点がある。一般に、ゴムホースがくの字状に屈曲している部分に水分が溜まりやすく、アバタ(ガス溜まり)が生じやすくなる。フィラーホースの場合には、接合部と接触する部位にアバタが存在すると、フィラーホースと接合部との間に隙間が生じ、燃料漏れを起こす等の危険がある。
【0005】
一方、上記シリコーンオイルは、マンドレルの差し込みや抜き取りの点では、上記水系離型剤よりも優れているが、洗浄工程でシリコーンオイルを充分に除去することができず、シリコーンオイルがホース側に残存する。このように、シリコーンオイルが残存した状態のホースを、製品に組み付けた場合には、製品組み付け後にゴムホースの脱落(抜け)等が生じるおそれがある。しかも、上記シリコーンオイルは、水に溶けないため、水で洗浄することができず、有機溶媒で処理する等の必要があり、作業性が劣るという難点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、アバタ等の外観不良が生じず、マンドレルの差し込み、抜き取り,洗浄性等の作業性に優れたゴムホースの製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のゴムホースの製法は、マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿するに際し、マンドレルの外周面に予め下記の(X)を塗布するとともに、未加硫ゴムホースの内周面に予め下記の(Y)を塗布する工程と、上記マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿した状態で未加硫ゴムホースを加硫する工程と、上記加硫後の加硫ゴムホースからマンドレルを引き抜く工程と、上記引き抜いた後の加硫ゴムホース側に塗布された上記(Y)を水性液で洗浄する工程とを備えたという構成をとる。
(X)非水系の潤滑剤。
(Y)水溶性増粘剤を含有する水溶液であって、粘度が2000〜5000mPa・sの範囲に調整された水溶液。
【0008】
すなわち、本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、上記の構成により、アバタ等の外観不良が生じず、マンドレルの差し込み、抜き取り,洗浄性等の作業性に優れたゴムホースを製造することができることを見いだし、本発明に到達した。その理由について、図1に従って説明する。図1は、本発明のゴムホースの製法を示すための模式図であり、マンドレル1に未加硫ゴムホース3(加硫工程後は、加硫ゴムホースとなる)を嵌挿した状態を示す。すなわち、マンドレル1の外周面に、シリコーンオイル等の非水系の潤滑剤2を予め塗布すると、上記非水系の潤滑剤2によって、マンドレル1の差し込み性(挿入性)が向上する。また、上記未加硫ゴムホース3の内周面に、水溶性増粘剤を含有する水溶液を予め塗布すると、この粘稠な水溶液からなる保護膜4が、上記未加硫ゴムホース3の内周面に形成される。この保護膜4は、カルボキシメチルセルロース(CMC),メチルセルロース(MC)等の水溶性増粘剤を、水に添加し、水溶液の粘度を2000〜5000mPa・sの範囲に調整した、適度な「トロミ」を持つ水溶液からなる。そのため、100℃を超えても粘稠であり、加硫時の熱によって激しく沸騰することもない。したがって、上記未加硫ゴムホース3を加硫した後のゴムホースの表面に、水分の揮発によるアバタ等の発生を抑制することができる。また、上記未加硫ゴムホース3の内周面に形成される保護膜4の介在により、上記マンドレル1の外周面に塗布された非水系の潤滑剤2が、未加硫ゴムホース3と直接接触することがないため、洗浄工程後に、上記非水系の潤滑剤2が、未加硫ゴムホース3側に残存することもない。しかも、上記未加硫ゴムホース3側の保護膜4は、水溶液からなり、水等の水性液で容易に洗浄できるため、洗浄性等の作業性にも優れている。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明は、未加硫ゴムホースの内周面に、水溶性増粘剤を含有する水溶液を予め塗布しているため、この粘稠な水溶液からなる保護膜が、上記未加硫ゴムホースの内周面に形成される。この保護膜は、CMC等の水溶性増粘剤を、水に添加し、水溶液の粘度を2000〜5000mPa・sの範囲に調整した、適度な「トロミ」を持つ水溶液からなる。そのため、100℃を超えても粘稠であり、加硫時の熱によって激しく沸騰することもない。したがって、上記未加硫ゴムホースを加硫した後のゴムホースの表面に、水分の揮発によるアバタ等の発生を抑制することができる。また、上記未加硫ゴムホースの内周面に形成される保護膜の介在により、上記マンドレルの外周面に塗布された非水系の潤滑剤が、未加硫ゴムホースと直接接触することがないため、洗浄工程後に、上記非水系の潤滑剤が、未加硫ゴムホース側に残存することもない。しかも、上記未加硫ゴムホース側の保護膜は、水溶液からなり、水等の水性液で容易に洗浄できるため、洗浄性等の作業性にも優れている。このように、本発明のゴムホースの製法によると、ホース側に非水系の潤滑剤が残存することがなく、製品組み付け後に、ゴムホースの脱落(抜け)等を防止することもできるため、不良率が低減し、製品機能が向上する。
【0010】
また、上記水溶性増粘剤としてセルロース系増粘剤を用いると、未加硫ゴムホースや加硫後の製品に悪影響を与えることがなく、環境の面(COD等)でも優れている。
【0011】
また、上記非水系の潤滑剤が、シリコーンオイルであると、マンドレルの差し込み性、抜き取り性が向上する。
【0012】
そして、上記水溶液中の水溶性増粘剤の濃度が、1.1〜2.9重量%の範囲であると、マンドレルの差し込み性、抜き取り性、洗浄性のバランスが良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明のゴムホースの製法は、マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿するに際し、マンドレルの外周面に予め下記の(X)を塗布するとともに、未加硫ゴムホースの内周面に予め下記の(Y)を塗布する工程と、上記マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿した状態で未加硫ゴムホースを加硫する工程と、上記加硫後の加硫ゴムホースからマンドレルを引き抜く工程と、上記引き抜いた後の加硫ゴムホース側に塗布された上記(Y)を水性液で洗浄する工程とを備えている。
(X)非水系の潤滑剤。
(Y)水溶性増粘剤を含有する水溶液であって、粘度が2000〜5000mPa・sの範囲に調整された水溶液。
【0015】
まず、上記マンドレルの外周面に塗布する非水系の潤滑剤(X)について説明する。
【0016】
上記非水系の潤滑剤(X)としては、例えば、シリコーンオイル、グリース、グリコール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、マンドレルの差し込み性、抜き取り性の点で、シリコーンオイルが好ましい。
【0017】
上記シリコーンオイルのシリコーン成分としては、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、マンドレルの差し込み性、抜き取り性の点で、ジメチルシリコーンが好ましい。
【0018】
上記非水系の潤滑剤(X)のマンドレルへの塗布方法としては、例えば、ディッピング、刷毛塗り、スプレーコーティング等があげられる。
【0019】
なお、上記マンドレルの材質としては、例えば、金属製等のものが好ましい。
【0020】
また、上記マンドレルの直径は、マンドレルに嵌挿する未加硫ゴムホースの内径と略同様であり、通常、20〜50mm、好ましくは30〜40mmである。
【0021】
つぎに、未加硫ゴムホースの内周面に塗布する、水溶性増粘剤を含有する特定の水溶液(Y)について説明する。
【0022】
上記特定の水溶液(Y)中の水溶性増粘剤としては、例えば、セルロース系,タンパク質系,寒天,デンプン,多糖類等の天然系増粘剤や、ビニル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリエーテル系,ポリグリコール系,ポリビニルグリコール系,ポリアルキレンオキサイド系,ポリアクリル酸系等の合成系増粘剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、セルロース系増粘剤、ポリアクリル酸系増粘剤が好ましく、なかでも、未加硫ゴムホースや加硫後の製品に悪影響を与えず、環境の面(COD等)にも優れる点で、セルロース系増粘剤が特に好ましい。
【0023】
上記セルロース系増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0024】
また、上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ(ポリアクリル酸ナトリウム)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0025】
上記特定の水溶液(Y)は、粘度が2000〜5000mPa・sの範囲であり、好ましくは3000〜4000mPa・sの範囲である。すなわち、上記水溶液(Y)の粘度が下限未満であると、アバタ(ガス溜まり)が発生し、逆に上記水溶液(Y)の粘度が上限を超えると、マンドレルの差し込み性、抜き取り性、洗浄性等が悪くなるからである。
【0026】
また、上記特定の水溶液(Y)中の水溶性増粘剤の濃度は、上記水溶液(Y)の粘度が上記範囲内になるよう調整されるが、1.1〜2.9重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは1.6〜2.4重量%の範囲である。
【0027】
上記特定の水溶液(Y)の、未加硫ゴムホースへの塗布方法としては、例えば、ディッピング、スプレーコーティング、刷毛塗り等があげられる。なお、上記特定の水溶液(Y)は、未加硫ゴムホースの少なくとも内周面に塗布されていればよく、未加硫ゴムホースの内周面および外周面に塗布されていても差し支えない。
【0028】
つぎに、上記ゴムホースの形成材料(ゴムホース用材料)について説明する。上記ゴムホース用材料の主要成分であるゴム成分としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、NBRとポリ塩化ビニル(PVC)とのブレンド材料(NBR−PVC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム、天然ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらは、ゴムホースの用途に応じて適宜選択して用いられる。
【0029】
なお、上記ゴムホース用材料には、上記ゴム成分の他、ステアリン酸、MgO、DBUナフトエ酸塩、カーボンブラック、可塑剤(エーテルエステル系可塑剤等)、加硫剤(硫黄等)、加硫促進剤(チアゾール系加硫促進剤等)等を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0030】
これらゴムホース用材料は、各成分を所定の割合で配合し、バンバリーミキサー、ロール等を用いて混練することにより、調製される。そして、このゴムホース用材料を押し出し成形等により押し出し、未加硫ゴムホースを成形する。
【0031】
つぎに、上記未加硫ゴムホースを、前述の水溶性増粘剤を含有する特定の水溶液(Y)中に所定時間(通常、1分間)浸漬する。つづいて、上記水溶液(Y)に浸漬した未加硫ゴムホースを、非水系の潤滑剤(X)を予め塗布したマンドレルに嵌挿し、嵌挿した状態でスチーム加硫缶にて所定時間、加硫処理を行う。つぎに、上記加硫後の加硫ゴムホースからマンドレルを引き抜く。続いて、上記引き抜いた後の加硫ゴムホース側に塗布された上記(Y)を、お湯(40℃程度)等の水性液にて30分間程度洗浄する。このようにして、ゴムホース(加硫ゴムホース)を作製することができる。
【0032】
上記未加硫ゴムホースの加硫条件は、140〜170℃×15〜60分の範囲が好ましく、特に好ましくは150〜160℃×30〜45分の範囲である。
【0033】
このようにして得られるゴムホースは、直径が、通常、25〜55mm、好ましくは35〜45mmであり、厚みが、通常、2〜10mm、好ましくは4〜6mmである。なお、上記ゴムホースは、単層構造に限定されず、ゴムホースの外周面に補強糸等を編組して補強層を形成してもよく、2層以上の多層構造であっても差し支えない。
【0034】
上記水性液としては、例えば、水を主にし、これに必要に応じて界面活性剤、その他の薬剤、油剤等が添加されたものがあげられ、水だけの場合や、水性液を加温して湯にしたものも含む。
【0035】
なお、上記の洗浄工程は、湯洗に限らず、水洗であっても差し支えなく、また、上記水性液の温度や洗浄時間も、上記特定の水溶液(Y)の粘度等により、適宜に調整することができる。
【0036】
本発明の製法により得られるゴムホースは、例えば、フィラーホース、エバポホース、オイルホース、ターボエアホース等の自動車用ゴムホースに用いることができる。
【実施例】
【0037】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
(ホース材料の調製)
NBR−PVC〔NBR/PVC=70/30(重量比)、AN量:33.5〕(日本ゼオン社製、ニポール1203JNS)100重量部(以下「部」と略す)と、ステアリン酸(花王社製、ルナックS30)1部と、MgO(協和化学社製、協和マグ♯150)10部と、DBUナフトエ酸塩(ダイソー社製、DA−500)2部と、SRF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストS)30部と、エーテルエステル系可塑剤(旭電化社製、アデカサイザーRS107)25部と、硫黄(鶴見化学工業社製、金華印粉砕硫黄)1部と、チアゾール系加硫促進剤(OBS)としてN−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)(大内新興化学工業社製、ノクセラーMSA−G)1部とを配合し、これらをバンバリー、ロールを用いて混練することにより、ホース材料(NBR−PVC材料)を調製した。
【0039】
(水溶性増粘剤を含有する水溶液の調製)
水溶性増粘剤であるセルロース系増粘剤(CMC)(第一工業社製、セロゲン4H)1.1重量%を、水に添加し、水溶液の粘度を2000mPa・sの範囲に調整した。なお、上記水溶液の粘度は、室温(25℃)にてB型粘度計(東京計器社製、No.3)を使用して測定した。
【0040】
(ゴムホースの製法)
上記ホース材料を用い、押し出し成形により、未加硫ゴムホース(直径35mm、厚み5mm、長さ300mm)を作製した。つぎに、この未加硫ゴムホースを、上記水溶液中に1分間浸漬した。一方、マンドレル(金属製、直径35mm)を準備し、その外周面に、シリコーンオイル(信越シリコーン社製、KF−96、粘度:20mPa・s)を、ディップ法により、予め塗布した。つづいて、上記水溶液に浸漬した未加硫ゴムホースを、シリコーンオイルを予め塗布したマンドレルに挿入し、その状態でスチーム加硫缶(関西ロール社製)にて160℃×35分加硫処理を行った。つぎに、上記加硫後の加硫ゴムホースからマンドレルを引き抜いた。続いて、上記引き抜いた後の加硫ゴムホース側に塗布された特定の水溶液を、40℃のお湯にて30分間洗浄した。このようにして、ゴムホース(加硫ゴムホース)を作製した。
【0041】
〔実施例2、比較例1〜3〕
下記の表1に示すように、水溶性増粘剤の濃度、水溶液の粘度を変更する以外は、実施例1に準じて、ゴムホース(加硫ゴムホース)を作製した。なお、比較例1は、水溶性増粘剤を添加していない水を使用した。
【0042】
【表1】

【0043】
このようにして得られた実施例および比較例のゴムホースを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を上記表1に併せて示した。
【0044】
〔外観〕
各ゴムホースを切断し、外観を肉眼で観察した。評価は、アバタ(ガス溜まり)が2cm以上発生したものを×、アバタ(ガス溜まり)の発生が2cm未満のものを△、アバタが発生しなかったものを○とした。
【0045】
〔差し込み性〕
マンドレルを差し込む際に、現行法より力がいるものを×、力がいらないものを○とした。
【0046】
〔抜き取り性〕
マンドレルを抜き取る際に、現行法より力がいるものを×、力がいらないものを○とした。
【0047】
〔洗浄性〕
上述のように、40℃のお湯にてゴムホースを30分間洗浄した。その後、指先をホース内に入れて、ぬめり(セルロース系増粘剤を含有する水溶液の残存)があったものを×、ぬめりがないものを○とした。
【0048】
〔シリコーン非残留性〕
上述のように、40℃のお湯にてゴムホースを30分間洗浄した後、マンドレルの外周面に塗布したシリコーンオイルが、ホース側に残存しているか否かを触感で確認した。評価は、ホース側にシリコーンオイルが残存しているものを×、ホース側にシリコーンオイルが残存していないものを○とした。
【0049】
上記表1の結果から、実施例品はいずれも、アバタがなく外観が良好で、マンドレルの差し込み性、抜き取り性、洗浄性、シリコーン非残留性にも優れていた。
【0050】
これに対して、比較例1品は、水溶性増粘剤(CMC)を用いていないため、アバタが発生し、外観が劣るとともに、差し込み性、抜き取り性、シリコーン非残留性も劣っていた。比較例2品は、水溶液の粘度が2000mPa・s未満であるため、外観が劣るとともに、シリコーン非残留性も劣っていた。比較例3品は、水溶液の粘度が5000mPa・sを超えるため、差し込み性、抜き取り性、シリコーン非残留性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のゴムホースの製法によると、アバタ等の外観不良が生じず、マンドレルの差し込みや抜き取り、洗浄性等の作業性に優れたゴムホースを得ることができる。このように、本発明によれば、アバタ等が生じず、外観が良好な、フィラーホース,エバポホース,オイルホース,ターボエアーホース等のゴムホースを効率良く製造することができ、製品組み付け後のゴムホースの脱落(抜け)等を防止することもでき、安全性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のゴムホースの製法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 マンドレル
2 非水系の潤滑剤
3 未加硫ゴムホース
4 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿するに際し、マンドレルの外周面に予め下記の(X)を塗布するとともに、未加硫ゴムホースの内周面に予め下記の(Y)を塗布する工程と、上記マンドレルに未加硫ゴムホースを嵌挿した状態で未加硫ゴムホースを加硫する工程と、上記加後の加硫ゴムホースからマンドレルを引き抜く工程と、上記引き抜いた後の加硫ゴムホース側に塗布された上記(Y)を水性液で洗浄する工程とを備えたことを特徴とするゴムホースの製法。
(X)非水系の潤滑剤。
(Y)水溶性増粘剤を含有する水溶液であって、粘度が2000〜5000mPa・sの範囲に調整された水溶液。
【請求項2】
上記(Y)中の水溶性増粘剤が、セルロース系増粘剤である請求項1記載のゴムホースの製法。
【請求項3】
上記セルロース系増粘剤が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項2記載のゴムホースの製法。
【請求項4】
上記(X)の非水系の潤滑剤が、シリコーンオイルである請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴムホースの製法。
【請求項5】
上記(Y)の水溶液中の水溶性増粘剤の濃度が、1.1〜2.9重量%の範囲である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴムホースの製法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−69840(P2010−69840A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242850(P2008−242850)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】