説明

サイドエアバッグ装置

【課題】展開膨張時のエアバッグの突出方向を開口側へ一定化でき、エアバッグの開口側への飛び出し速度を速くできるサイドエアバッグ装置の提供。
【解決手段】サイドエアバッグ装置は、膨張用ガスの流入時に展開膨張して車内側の開口Wを覆うエアバッグ41と、折り畳まれたエアバッグ41の車内側を覆って、車両のボディ1に対して、開口Wの周縁に沿って断続的に複数箇所で連結保持される合成樹脂製のエアバッグカバー11と、を備える。カバー11は、車内側から見て、開口W側の縁に、エアバッグ41の展開膨張時に押されて開く扉部12dを配設させる。また、カバー11は、折り畳まれたエアバッグ41における開口Wから離れた側に、ボディ1側に突出して、展開膨張時におけるエアバッグ41の開口W側から離れる方向への突出を規制する規制壁23を配設させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアの周囲等の開口周縁に折り畳んで収納されるエアバッグと、折り畳んで収納されたエアバッグを覆う合成樹脂製のエアバッグカバーとを備えたサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサイドエアバッグ装置では、車内側のドアや窓部の開口周縁におけるピラー部とルーフサイドレール部とにわたって、エアバッグが折り畳まれて収納され、エアバッグ内への膨張用ガスの流入時、折り畳まれたエアバッグを覆っているエアバッグカバーを開き移動させて、エアバッグが展開膨張されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、エアバッグの展開膨張時、破損を抑えてエアバッグカバーの一定の開き移動を可能とするように、エアバッグカバーの裏面側には、ボディに対する連結保持部位が、開口周縁に沿って断続的に2箇所設けられていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−315253号公報
【特許文献2】特願平9−129617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のサイドエアバッグ装置では、エアバッグの膨張初期において、エアバッグが開口側へ突出するまでの間に、エアバッグの押圧力がエアバッグカバーの裏面側の広い面積に作用することから、エアバッグの突出方向を開口側へ一定化させることに課題があり、そして、エアバッグの開口側への飛び出し速度を速める点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグの展開膨張時、エアバッグの突出方向を開口側へ一定化できて、エアバッグの開口側への飛び出し速度を速めることができるサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るサイドエアバッグ装置は、車内側の開口の上縁側の周縁に折り畳まれ、膨張用ガスの流入時に展開膨張して前記開口を覆うとともに、前記開口の上縁側の周縁の複数箇所で車両のボディに取り付けて、配設されるエアバッグと、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
折り畳まれた前記エアバッグの車内側を覆うとともに、前記エアバッグの展開膨張時、前記エアバッグを前記開口側へ突出可能に開き移動するように、車両のボディに対して、前記開口の周縁に沿って断続的に複数箇所で連結保持される合成樹脂製のエアバッグカバーと、
を備えて構成されるサイドエアバッグ装置において、
前記エアバッグカバーが、車内側から見て、
前記開口側の縁に、折り畳まれた前記エアバッグの展開膨張時に押されて開く扉部を配設させ、
折り畳まれた前記エアバッグにおける前記開口から離れた側に、前記エアバッグカバーから前記ボディ側に突出して、展開膨張時における前記エアバッグの前記開口側から離れる方向への突出を規制する規制壁を配設させて、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るサイドエアバッグ装置では、エアバッグの展開膨張時、開口側から離れるエアバッグの膨張が規制壁で規制されるため、エアバッグの突出方向が開口側へ一定化されて、エアバッグの開口側への飛び出し速度を速めることができる。
【0008】
そして、本発明に係るサイドエアバッグ装置では、エアバッグカバーの前記規制壁が、前記ボディへの前記連結保持部位の前記開口側で、前記連結保持部位を連結するように、配設されていれば、膨張初期におけるエアバッグが開口側へ突出するまでに、各連結保持部位にエアバッグの押圧力が作用しようとしても、連結保持部位の開口側に配置された規制壁により、押圧力が小さい面積にしか作用せず、各連結保持部位に作用する押圧荷重が低減される。
【0009】
そのため、各連結保持部位の肉厚を薄くすることができ、成形時に生ずるヒケを抑えることができる。
【0010】
したがって、上記構成のエアバッグカバーでは、ヒケの発生を抑えて、エアバッグ膨張時における十分な強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1・2・4〜6に示す実施形態のサイドエアバッグ装置Mは、車両の車内側のドアや窓部の開口Wの上縁側の周縁におけるフロントピラー部PFとルーフサイドレール部Rとにわたって、折り畳んだエアバッグ41を取り付けて配設させている。エアバッグ装置Mの作動時、エアバッグ41は、車両のフロントピラー部PFとルーフサイドレール部Rとから突出して、車両の前部側から後部側へ斜め上方に延びるフロントピラー部PFと、フロントピラー部の上部から後方へ延びるルーフサイドレール部Rと、の下方のドアや窓部の開口Wの車内側を覆う。
【0012】
このサイドエアバッグ装置Mは、エアバッグ41と、折り畳まれたエアバッグ41に膨張用ガスを供給するインフレーター39と、エアバッグ41とインフレーター39とを連結させるとともに、インフレーター39をボディ1のサイドパネル2に取付固定する取付ブラケット36と、折り畳まれたエアバッグ41を覆う2種類のエアバッグカバー11・31と、を備えて構成されている。エアバッグカバーは、実施形態の場合、フロントピラー部PFに配置されたガーニッシュ11と、ルーフサイドレール部Rに配置されたルーフ内装材31と、で構成されている。そして、3箇所の連結保持部位13・17・19により、ボディ1に連結保持される実施形態のエアバッグカバーは、ガーニッシュ11としている。
【0013】
また、実施形態のサイドエアバッグ装置Mは、フロントピラー部PFやルーフサイドレール部Rのボディ1に取り付けられるまでは、図10に示すように、エアバッグ組付体Aとして、取り扱われている。
【0014】
フロントピラー部PFについて説明すると、このピラー部PFは、図2〜6に示すように、折り畳まれたエアバッグ41の他、鋼板からそれぞれ形成されるリーンフォースパネル5・インナパネル7・アウタパネル6からなるボディ1側のフロントピラー本体4と、インナパネル7に取付固定されて、折り畳まれたエアバッグ41を覆うエアバッグカバーとしてのガーニッシュ11と、を備えて構成されている。
【0015】
インナパネル7の所定位置には、ガーニッシュ11を取付固定するための取付孔7a(図6参照)や、他に、係止孔7c(図4参照)、係止孔7d(図2・3参照)、及び、折り畳まれたエアバッグ41を取り付ける取付孔7g(図5参照)が形成されている。取付孔7aには、ナット7bが固着されて、ガーニッシュ11を取付固定する固着手段としての取付ボルト29が挿入され、係止孔7cには、ガーニッシュ11の係止脚部17が挿入係止される。
【0016】
また、係止孔7dには、ガーニッシュ11の金属製の係止ピン21が挿入係止される。この係止孔7dは、円形に開口した広幅部7eと、広幅部7eより開口幅を狭くして広幅部7eから延びる狭幅部7fと、を備えて構成されている。狭幅部7fの延びる方向は、エアバッグ41の展開膨張時に、係止ピン21を埋設させた後述するカバー本体12の摺動係止部19を移動させる方向であり、実施形態の場合には、フロントピラー部PFに沿って斜め上方に延びるように形成されている。
【0017】
さらに、取付孔7gは、インナパネル7の裏面側(車外側)の周縁にナット7hが固着されて構成されている。さらに、ピラー本体4の端部には、ウェザストリップSが取り付けられている。なお、図2・4〜7に示す符号Dは、ドアである。
【0018】
エアバッグカバーとしてのガーニッシュ11は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成されるカバー本体としてのガーニッシュ本体12と、ガーニッシュ本体12に配置されるキャップ25と、から構成されている。
【0019】
カバー本体としてのガーニッシュ本体12は、図2・4〜6に示すように、射出成形により形成されてフロントピラー部FPに沿って上下方向に延びる長尺状の成形部12aと、ガーニッシュ本体12の意匠面側に貼着されるファブリック等の表皮12eと、から構成され、成形部12aは、開口W側の縁に、薄肉のヒンジ部12cを介在させて、扉部12dを配設させており、エアバッグ41の展開膨張時に、成形部12aの一般部12bに対し、扉部12dを、ヒンジ部12cを回転中心として、エアバッグ本体42に押されて車内側に開かせることができるように構成されている。なお、一般部12bには、連結保持部位としての、取付ボス部13、係止脚部17、および、係止ピン21を埋め込んだ摺動係止部19、が配設されるとともに、規制壁23が配設されている。また、成形部12aの成形は、係止ピン21をインサートとしたインサート成形としている。
【0020】
そして、ガーニッシュ本体12の上部には、図1・6・8に示すように、取付ボルト29を挿通させる取付孔13aを有した取付ボス部13が形成されている。取付孔13aの内周面には、ガーニッシュ本体12をインナパネル7に取付固定する際の取付ボルト29の締付力を確保できるように、金属製のスリーブ15が嵌挿されている。また、ガーニッシュ本体12の正面側(車内側)における取付ボス部13の周囲には、キャップ25を嵌める収納凹部14が形成されている。
【0021】
このキャップ25は、取付ボルト29を隠すものであり、ポリアミド等の合成樹脂から射出成形により形成される成形部25aと、成形部25aに貼着される表皮12eと同質の表皮25cと、を備えて形成されている。成形部25aには、取付ボルト29の頭部29aに設けられた係止溝29bに係止される係止爪25bが形成されている。なお、キャップ25には、ボルト29から外れても、ガーニッシュ本体12からのキャップ25の外れを防止するために、収納凹部14に設けられた図示しない貫通孔を経て、その貫通孔周縁に係止可能な抜け止め部材が、設けられている。
【0022】
ガーニッシュ本体12の裏面側における上下方向の略中間部位には、図4に示すように、インナパネル7の係止孔7cに挿入係止される係止脚部17が形成されている。
【0023】
また、ガーニッシュ本体12の裏面側(車外側)における下部には、図2・3に示すように、係止ピン21を埋設させた摺動係止部19が形成されている。摺動係止部19の正面側(車内側)には、ヒケの影響を極力抑えるために、図2・9に示すように、多数の肉盗み孔19aが形成されている。
【0024】
係止ピン21は、真鍮等の金属製として、円柱状の軸部21bの両端に、それぞれ、半径方向に膨出する埋設用鍔部21aと係止用鍔部21cとを備えて構成されている。埋設用鍔部21aは、摺動係止部19内に埋設され、係止用鍔部21cは、軸部21bをインナパネル7の係止孔7dにおける狭幅部7fに挿通させた状態で、その狭幅部7fの周縁に係止させている。係止用鍔部21cは、狭幅部7fの開口幅より大きくして、インナパネル7の正面側(車内側)から広幅部7eへ挿入可能な寸法形状としている。
【0025】
そして、ガーニッシュ本体12の裏面側(車外側)には、図1・2・4〜6・8・9に示すように、折り畳まれたエアバッグ41の本体42における開口Wから離れた側で、かつ、展開膨張時のエアバッグ本体42における連結保持部位13・17・19への押圧荷重を低減可能に、連結保持部位としての取付ボス部13・係止脚部17・摺動係止部19における開口W側で、連結保持部位13・17・19を連結するように、ボディ1のインナパネル7側へ突出する規制壁23が形成されている。規制壁23は、成形部12aの正面側に、ヒケが生じないように、厚さt(図9参照)を1〜4mmとしている。厚さtが4mmを超えれば、ヒケが発生し易くなり、厚さtが1mm未満では、成形し難く、成形できても、所定の強度を確保し難いからである。ちなみに、実施形態の場合には、厚さtを2mmとしている。なお、連結保持部位13・17・19は、エアバッグ本体42の開口W側への突出が可能となるように、折り畳まれたエアバッグ本体42の開口Wから離れる方向の側に位置している。そのため、エアバッグ本体42は、インナパネル7の車内側で、連結保持部位13・17・19と扉部12dとの間に、配置され、そして、規制壁23は、連結保持部位13・17・19と折り畳まれたエアバッグ本体42との間に、配置されることとなる。
【0026】
つぎに、ルーフサイドレール部Rについて説明すると、このルーフサイドレール部Rは、図7に示すように、折り畳まれたエアバッグ41の他、鋼板からなるボディ1側のルーフサイドレール本体9と、ボディ1に対して図示しない所定部位で組み付けられるエアバッグカバーとしてのルーフ内装材31と、を備えて構成されている。
【0027】
ルーフサイドレール本体9には、所定位置に、折り畳まれたエアバッグ41を取り付ける取付孔9aが形成されている。取付孔9aは、ルーフサイドレール本体9の裏面側(車外側)の周縁にナット9bが固着されて構成されている。また、ルーフサイドレール本体9の端部には、ウェザストリップSが取り付けられている。
【0028】
ルーフ内装材31は、エアバッグ41の膨張時、開口W側の縁31aをエアバッグ41に押されてルーフサイドレール本体9から容易に離れるような、柔軟性を有した合成樹脂材から形成されている。
【0029】
そして、実施形態のサイドエアバッグ装置Mにおけるエアバッグ組付体Aは、図10に示すように、エアバッグ41と、インフレーター39と、エアバッグ41とインフレーター39とを連結させる取付ブラケット36と、エアバッグ41に組み付けられて、エアバッグ41をボディ1に取り付ける取付ブラケット54と、折り畳んだエアバッグ本体42をくるむテープ材57と、から構成されている。
【0030】
エアバッグ41は、図11に示すように、インフレーター39からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して、厚さを増すように膨張するエアバッグ本体42と、インフレーター39に連結される連結筒部50と、エアバッグ本体42の上縁側に設けられる複数の取付片部52と、を備えて構成されている。
【0031】
エアバッグ本体42は、ポリアミド糸等を使用した袋織りによって形成され、車内側壁部43aと車外側壁部43bとを備えた袋部43と、袋部43の周囲や中央付近で、袋部43を密封等するように密に織成された結合部44と、結合部44の周囲で、薄く板状に織成された板状部45と、を備えて形成されている。なお、エアバッグ本体42は袋織りされた後、耐熱性を高めるとともに膨張用ガスの漏れを防止するように、シリコン等を塗布したコーティング層が形成されている。
【0032】
袋部43は、膨張用ガスを流入させて厚さを増加させるように膨張する膨張部43cと、膨張部43cに膨張用ガスを流入させるガス流入部43dと、を備えて構成されている。
【0033】
結合部44は、袋部43の周囲で袋部43を密封するように密に織成された周縁結合部44aと、袋部43における膨張部43cの中央付近で、車内側壁部43aと車外側壁部43bとを結合させるように密に織成された2つの中央結合部44bと、から構成されている。中央結合部44b・44bは、袋部43の膨張時、連結筒部50からエアバッグ本体42の後上部にかけて、張力を発揮させるようにして、膨張部43cが、車外側への押圧力を受けても、車外側へ移動しないようにするために、設けられている。
【0034】
板状部45は、連結筒部50からエアバッグ本体42の後上部にかけてのエアバッグ41の全体形状を確保するとともに、袋部43の容積を小さくして、膨張完了までの時間を短くするために設定されており、ガス流入部43dと膨張部43cとを連結する前板状部45aと、膨張部43cと後部側の取付片部52Bとを連結する後板状部45bと、から構成されている。
【0035】
連結筒部50は、インフレーター39に外装されて、取付ブラケット36によって締め付けられることにより、インフレーター39に連結される部位であり、ガス流入部43dの先端に配置されている。
【0036】
そして、連結筒部50は、ガス流入部43dの内周側に、インフレーター39からの高温の膨張用ガスに対する耐熱性を確保するため、筒状の長短のインナチューブ46・47を配設させて構成されている。
【0037】
各取付片部52には、図5・7・11に示すように、ボディ1におけるピラー本体4やルーフサイドレール本体9に、取付ボルト55を利用して取り付けることができるように、取付孔52aが貫通されているとともに、取付ブラケット54が固着されている。各取付ブラケット54は、各取付片部52の車内側部位と車外側部位とに配置されて取付孔52aと連通する取付孔54cを備えた板金製の内・外プレート54a・54bから構成され、内・外プレート54a・54bの間に、各取付片部52を介在させて、部分的にかしめることにより、内・外プレート54a・54bを各取付片部52に取り付けている。
【0038】
インフレーター39は、シリンダタイプとして、膨張用ガスを所定のガス吐出口から吐出可能なインフレーター本体と、インフレーター本体に固定されて膨張用ガスを軸方向に案内するディフューザーと、を備えて構成され、端部には、膨張用ガスを吐出させるための信号を入力させるリード線39aが結線されている。
【0039】
取付ブラケット36は、板金から形成されて、インフレーター39に外装されたエアバッグ41の連結筒部50をインフレーター39と連結させ、かつ、その状態のインフレーター39を、ボディ1のサイドパネル2にボルト37止めして、取り付けることができるように構成されている。
【0040】
テープ材57は、布や紙等に粘着剤が塗布された粘着テープから形成されている。
【0041】
つぎに、サイドエアバッグ装置Mの車両への装着について説明すると、まず、予め、エアバッグ組付体Aを形成しておく。このエアバッグ組付体Aは、つぎのように行なう。
【0042】
まず、エアバッグ41を所定の折り機で折り畳み、適宜、テープ材57でくるんでおく。この折り畳み状態は、図12の二点鎖線で示す部位に、順次、山折りと谷折りとの折目Cを入れて折り畳む蛇腹折りとしている。
【0043】
その後、取付孔52a・54cを一致させつつ、各取付片部52の両側に内・外プレート54a・54bを配置させてかしめ、各取付片部52に所定の取付ブラケット54を取り付ける。なお、折り込まれた状態の取付片部52は、引っ張り出して、その部位に取付ブラケット54を取り付けることとなる。
【0044】
また、折り畳まれた連結筒部50も折りを解消させて、その連結筒部50のインナチューブ47内にインフレーター39を挿入し、さらに、取付ブラケット36を取り付けておく。
【0045】
そして、適宜、所定の取付ブラケット54に、取付ボルト55を仮組付けすれば、エアバッグ組立体Aを組み立てることができる。
【0046】
その後、エアバッグ組付体Aのボディ1への取り付けは、図1・4・7に示すように、取付ボルト37を使用して取付ブラケット36をサイドパネル2に取付固定するとともに、取付孔54c・52a・7g・9a相互を一致させるように、各取付ブラケット54をピラー本体4のインナパネル7やルーフサイドレール本体9に配置させ、それぞれ、取付ボルト55を、取付孔52a・54cを経て、ナット7h・9bに螺合させて行なう。
【0047】
そして、エアバッグ組付体Aをボディ1に取り付けた後には、リード線39aを所定のエアバッグ作動回路に接続させるとともに、図1〜7に示すように、ピラー部PFでは、インナパネル7に、ガーニッシュ本体12を取付固定し、ルーフサイドレール部Rでは、ルーフ内装材31をボディ1の所定部位に組み付けて、エアバッグ組付体Aを覆うようにする。
【0048】
ガーニッシュ本体12のインナパネル7への取付固定は、係止孔7dにおける広幅部7eから係止ピン21の係止用鍔部21cを挿入(図3の二点鎖線の21cPの位置に挿入)させた後、狭幅部7f側に係止用鍔部21cを移行(図3の実線の位置に移行)させるとともに、係止脚部17を係止孔7cに挿入係止させ、さらに、取付ボス部13の取付孔13aを経て、取付ボルト29を取付孔7aのナット7bに螺合させ、ついで、予め、ガーニッシュ本体12に連結させておいたキャップ25を、収納凹部14に嵌めつつ、係止爪25bをボルト29の係止溝29bに係止させれば、取付作業を完了させることができる。
【0049】
そして、車両にサイドエアバッグ装置Mを装着した後、インフレーター39が作動されれば、エアバッグ41のエアバッグ本体42の袋部43に膨張用ガスが流入され、袋部43のガス流入部43dと膨張部43cとが膨張してテープ材57を破断させ、また、ピラー部PFのガーニッシュ11におけるガーニッシュ本体12がエアバッグ本体42に押されて、図2・4〜6の二点鎖線で示すように、係止脚部17が係止孔7cから外れるとともに、係止ピン21の係止用鍔部21cが、図3の二点鎖線の21cBの位置に係止孔7dの狭幅部7eを摺動して、ガーニッシュ本体12は、下部をピラー部PFに沿って斜め上方に移動させるとともに、略上下方向の中間部位をインナパネル7から離れるように車内側に移動させつつ、扉部12dを開かせ、さらに、ルーフサイドレール部Rのルーフ内装材31は、エアバッグ本体42に押されて、図7の二点鎖線で示すように、ルーフ内装材31の縁31aを開かせ、その結果、図1の二点鎖線で示すように、エアバッグ本体42が、開口Wを覆うように、大きく展開膨張する。
【0050】
そして、エアバッグ本体42の展開膨張時、実施形態のエアバッグカバーとしてのガーニッシュ11には、裏面側における折り畳まれたエアバッグ本体42の開口Wから離れた側で、かつ、連結保持部位13・17・19の開口W側で、連結保持部位13・17・19を連結するように、規制壁23をボディ1のインナパネル7側へ突設させている。そのため、展開膨張時におけるエアバッグ本体42が開口W側へ突出するまでに、各連結保持部位としての取付ボス部13・係止脚部17・摺動係止部19に、エアバッグ本体42の押圧力F(図8参照)が作用しようとしても、連結保持部位13・17・19の開口W側に配置された規制壁23により、押圧力Fが小さな面積にしか作用せず、ガーニッシュ本体12の裏面側で突出している連結保持部位13・17・19に押圧力Fが集中しないため、各連結保持部位13・17・19に作用する押圧荷重が低減される。
【0051】
そのため、各連結保持部位13・17・19の肉厚を薄く、実施形態の場合には、取付ボス部13、摺動係止部19の半径方向の寸法Xや係止脚部17の肉厚寸法Yを小さくすることができ、成形時に生ずるヒケを抑えることができる。なお、実施形態の場合、ガーニッシュ本体12の成形部12aの表面側には、表皮12eを貼着させているものの、寸法X・Yがある程度小さくないと、表皮12eを貼着させても、ガーニッシュ本体12の正面側に、ヒケの影響によるくぼみが表れてしまい、好ましくない。
【0052】
したがって、実施形態のエアバッグカバーとしてのガーニッシュ11では、ヒケの発生を抑えて、エアバッグ41の膨張時における十分な強度を確保することができる。
【0053】
なお、規制壁23は、厚さtを1〜4mmの範囲としているため、成形部12aの正面側では、ヒケの発生を抑えることができる。
【0054】
そして、実施形態のサイドエアバッグ装置Mでは、エアバッグ本体42の展開膨張時、開口W側から離れるエアバッグ本体42の膨張が規制壁23で規制されるため、エアバッグ本体42の突出方向が開口W側に一定化されて、エアバッグ本体42の開口W側への飛び出し速度を速めることができる。
【0055】
さらに、実施形態では、規制壁23を、連続的に形成するように構成する場合を示したが、図13に示すように、断続的に規制壁23を形成するように構成しても良く、さらに、図14に示すように、ガーニッシュ本体11の型抜等を考慮して、個々の規制壁23を階段状に配設させても良い。
【0056】
さらにまた、実施形態では、上下方向に沿って断続的に複数配設される連結保持部位として、エアバッグカバー11の一端(上部)に配置されて、ボディ1に完全に取付固定される取付ボス部13と、エアバッグカバー11の他端(下部)に配置されて、エアバッグ本体42の展開膨張時にエアバッグカバー11の中央側にスライド可能にボディ1に連結される摺動係止部19と、エアバッグカバー11の中央付近に配置されて、エアバッグ本体42の展開膨張時に車内側に外れるようにボディ1に連結される係止脚部17と、を例示したが、エアバッグカバーが、上下方向に沿って断続的な複数箇所でボディに取り付けられるならば、全て、ボディに完全に取付固定される連結保持部位であったり、あるいは、適宜、他の連結態様で混在しても良い。
【0057】
さらに、実施形態では、エアバッグカバーとして、フロントピラー部PFに配置されるガーニッシュ11を例示したが、もちろん、これに限定されるものでなく、センターピラー部PCやリアピラー部等の車内側の開口周縁に配置されるエアバッグカバーであって、断続的な複数箇所で、ボディに連結保持されるエアバッグカバーであれば、本発明を応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る一実施形態のサイドエアバッグ装置の使用状態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II部位の拡大概略断面図である。
【図3】図2の III方向から見た係止孔周縁の図である。
【図4】図1のIV−IV部位の拡大概略断面図である。
【図5】図1のV−V部位の拡大概略断面図である。
【図6】図1のVI−VI部位の拡大概略断面図である。
【図7】図1の VII− VII部位の拡大概略断面図である。
【図8】同実施形態のガーニッシュの裏面側から見た斜視図である。
【図9】同実施形態の表皮を省略した状態のガーニッシュ本体の部分拡大正面図である。
【図10】同実施形態で使用するエアバッグ組付体を示す正面図である。
【図11】同実施形態のエアバッグの展開状態の正面図である。
【図12】同実施形態のエアバッグ本体における折り畳み時の折目を示す図である。
【図13】他の実施形態のエアバッグカバーとしてのガーニッシュを裏面側から見た図である。
【図14】さらに他の実施形態のエアバッグカバーとしてのガーニッシュを裏面側から見た図である。
【符号の説明】
【0059】
1…ボディ、
11…ガーニッシュ(エアバッグカバー)、
13…取付ボス部(連結保持部位)、
17…係止脚部(連結保持部位)、
19…摺動係止部(連結保持部位)、
23…規制壁、
41…エアバッグ、
42…エアバッグ本体、
M…サイドエアバッグ装置、
W…開口。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内側の開口の上縁側の周縁に折り畳まれ、膨張用ガスの流入時に展開膨張して前記開口を覆うとともに、前記開口の上縁側の周縁の複数箇所で車両のボディに取り付けて、配設されるエアバッグと、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
折り畳まれた前記エアバッグの車内側を覆うとともに、前記エアバッグの展開膨張時、前記エアバッグを前記開口側へ突出可能に開き移動するように、車両のボディに対して、前記開口の周縁に沿って断続的に複数箇所で連結保持される合成樹脂製のエアバッグカバーと、
を備えて構成されるサイドエアバッグ装置において、
前記エアバッグカバーが、車内側から見て、
前記開口側の縁に、折り畳まれた前記エアバッグの展開膨張時に押されて開く扉部を配設させ、
折り畳まれた前記エアバッグにおける前記開口から離れた側に、前記エアバッグカバーから前記ボディ側に突出して、展開膨張時における前記エアバッグの前記開口側から離れる方向への突出を規制する規制壁を配設させて、構成されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグカバーの前記規制壁が、前記ボディへの前記連結保持部位の前記開口側で、前記連結保持部位を連結するように、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグカバーが、射出成形により形成される成形部を備えて構成され、
該成形部が、前記扉部と、前記連結保持部位と前記規制壁とを配設させた一般部と、前記扉部と前記一般部との間に配置されるヒンジ部と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−50004(P2008−50004A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292201(P2007−292201)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【分割の表示】特願平10−129300の分割
【原出願日】平成10年5月12日(1998.5.12)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】