説明

サスペンション装置用のバウンドストッパ

【課題】ストッパ作用に時おいてスプリングシートに対する擦れに起因した不快な異音の発生を防止することのできるサスペンション装置用の発泡ポリウレタン製のバウンドストッパを提供する。
【解決手段】バウンド時にシリンダに弾性当接してショックアブソーバの過度の収縮変位を規制する発泡ポリウレタン製のバウンドストッパ46において、上端部の大径の嵌合部60と軸方向の圧縮変形能を与えるための環状の括れ部48との間の部分、且つ車両のバウンド時における圧縮変形状態の下でスプリングシート42の凹嵌合部44内に挿入状態となる挿入部80の外周面に、上方に向って外径が次第に小径となる略逆テーパ状の、圧縮変形に伴う縮径変形を誘導する縮径誘導部82を設けるとともに、少なくとも挿入部80において中心孔47の内周面72とピストンロッドとの間に縮径変形のための環状の隙間を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショックアブソーバとコイルスプリングとを構成要素として備えた車両のサスペンション装置に用いられる筒状の発泡ポリウレタン製のバウンドストッパに関し、特に異音防止のための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ショックアブソーバとコイルスプリングとを構成要素として備えた車両のサスペンション装置において、車両のバウンド時にショックアブソーバのシリンダに当接して、ショックアブソーバの過度の収縮変位を規制するバウンドストッパが用いられている。
【0003】
例えば下記特許文献1にこの種のバウンドストッパが開示されている。
このバウンドストッパにはゴム製のものと発泡ポリウレタン製のものとがあり、特に後者の発泡ポリウレタン製のバウンドストッパの場合、ゴム製のものに較べて圧縮変形能が高く、ストッパ作用時の初期の当りを軟らかくすることができる特長を有する。
【0004】
このバウンドストッパは、全体として筒状を成していて、通常軸方向、即ち高さ方向の複数個所にバウンドストッパ全体に対して圧縮変形能高めるための環状の深い括れ部が形成される。
そしてこのバウンドストッパは、その中心孔にショックアブソーバのピストンロッドが挿通されるとともに、上端部の大径の嵌合部が、通常はピストンロッドを車体に弾性的に連結するストラットマウントに備えた金具の逆カップ状の凹嵌合部に内嵌する状態に嵌合組付けされる。
【0005】
ここでストラットマウントの金具は、一般に表面処理として洗浄及び化成被膜処理が施されており、車両のバウンド時にバウンドストッパが圧縮変形してかかる金具に対しバウンドストッパが擦れを生じても、問題となるような大きな異音は発生し難い。
【0006】
これに対して、近年コイルスプリングの上端を受けるばね受としてのスプリングシートに逆カップ状の凹嵌合部を設けて、そこにバウンドストッパの上端部の大径の嵌合部を内嵌状態に嵌合組付けすることが考えられている。
このスプリングシートは車両において重要保安部品となっており、その防錆要求から表面にカチオン塗装が施されて、表面が「ツルツル」の平滑表面をなしており、これに起因してバウンドストッパがストッパ作用時に圧縮変形したとき、スプリングシートに対して、詳しくは逆カップ状の凹嵌合部の内周面に対して擦れを生じて、そこでスティックスリップ音からなる異音を発生し易いといった問題が生ずる。
詳しくは、バウンドストッパの大径の嵌合部の下側の部分であって、バウンド時の圧縮変形状態の下でスプリングシートの凹嵌合部内に挿入状態となる部分(挿入部)の外周面が径方向外方に膨出変形を起して、凹嵌合部内周面に対し擦れを生じ、その擦れに起因して不快な異音であるスティックスリップ音を生じてしまう。
【0007】
【特許文献1】特開平8−42624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情を背景とし、ストッパ作用時においてスプリングシートに対する擦れに起因した不快な異音の発生を防止することのできるサスペンション装置用の発泡ポリウレタン製のバウンドストッパを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して請求項1のものは、ショックアブソーバとコイルスプリングとを構成要素として備えた車両のサスペンション装置に用いられ、全体として筒状を成して中心孔に該ショックアブソーバのピストンロッドが挿通されるとともに、上端部の大径の嵌合部が前記コイルスプリングの上端を受けるスプリングシートに形成された逆カップ状の凹嵌合部に内嵌する状態に嵌合組み付けされ、車両のバウンド時に該ショックアブソーバのシリンダに弾性当接して該ショックアブソーバの過度の収縮変位を規制する発泡ポリウレタン製のバウンドストッパであって、前記上端部の大径の嵌合部と該バウンドストッパに軸方向の圧縮変形能を与えるための直下の環状の括れ部との間の部分、且つ車両のバウンド時における圧縮変形状態の下で前記スプリングシートの凹嵌合部内に挿入状態となる挿入部の外周面に、上方に向って外径が次第に小径となる略逆テーパ状の、前記圧縮変形に伴う縮径変形を誘導する縮径誘導部を設けるとともに、少なくとも前記挿入部において前記中心孔の内周面と前記ピストンロッドとの間に前記縮径変形のための環状の隙間を形成してあることを特徴とする。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、前記括れ部の径方向の深さが3〜10mmであり、前記略逆テーパ状の縮径誘導部における最小径部と下端の最大径部との外径差が0.2〜3.0であることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記中心孔の内周面が全高に亘り前記ピストンロッドとの間に環状の隙間を形成していることを特徴とする。
【0012】
請求項4のものは、請求項3において、前記サスペンション装置は、前記ピストンロッドが前記スプリングシートに対して該ピストンロッドの軸心周りに相対回転する形式のものであることを特徴とする。
【0013】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記スプリングシートが表面にカチオン塗装が施されて表面平滑なものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0014】
以上のように本発明は、バウンドストッパの圧縮変形状態の下でスプリングシートの凹嵌合部内に挿入状態となる挿入部の外周面に略逆テーパ状の縮径誘導部を設けるとともに、少なくともその挿入部において、中心孔の内周面とピストンロッドとの間に縮径変形のための環状の隙間を形成したものである。
本発明のバウンドストッパの場合、ストッパ作用時にバウンドストッパが圧縮変形するとき、縮径誘導部の作用でスプリングシートの凹嵌合部内に挿入状態となる挿入部、特に最小径部が中心孔側に縮径変形し、これによって挿入部の外周面が径方向外方に膨出変形するのが抑制される。
【0015】
この結果、ストッパ作用時にバウンドストッパが圧縮変形しても、上記挿入部の外周面がスプリングシートの凹嵌合部の内周面に対して擦れを生じず、これによりその擦れに起因した不快な異音の発生が良好に防止される。
【0016】
本発明においては、少なくてもその挿入部において中心孔の内周面とピストンロッドとの間に縮径変形のための環状の隙間が形成してあるため、バウンドストッパの圧縮変形時に縮径誘導部が良好に本来の働きを発揮することができる。
従来にあっては、バウンドストッパの中心孔の内周面がピストンロッドに対して接触状態に嵌合しており、この場合、上記のような縮径誘導部を設けても、バウンドストッパの圧縮変形時にその縮径誘導部が良好に縮径方向に変形することができない。
しかるに本発明では上記の環状の隙間がピストンロッドとの間に形成してあるため縮径誘導部、特に最小径部が良好に中心孔側に縮径変形することができる。
【0017】
本発明においては、バウンドストッパ全体に圧縮方向の変形能を与えるための括れ部の径方向深さ3〜10mmに対し、上記の略逆テーパ状の縮径誘導部における最小径部と下端の最大径部との外径差を0.2〜3.0の範囲内となしておくことが好適である(請求項2)。
【0018】
またバウンドストッパの中心孔は、その内周面が全高に亘りピストンロッドとの間に環状の隙間を形成するものとなしておくことができる(請求項3)。
【0019】
この請求項3のものは、特にピストンロッドがスプリングシートに対してピストンロッドの軸心周りに相対回転する形式のサスペンション装置のためのバウンドストッパとして特に好適なものである(請求項4)。
【0020】
中心孔の内周面が全高に亘ってピストンロッドとの間に環状の隙間を形成するものとなしておくことで、請求項4のサスペンション装置にこれを適用した場合において、回転するピストンロッドに対しバウンドストッパの内周面が擦れを生じて、そこでその擦れに起因する異音の発生を良好に防止することができる。
【0021】
また上記の説明から明らかなように、本発明はスプリングシートが表面にカチオン塗装が施されて表面平滑なものである場合に適用して特に好適なものである(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は車両のサスペンション装置、ここではストラット式のサスペンション装置の主要素をなすショックアブソーバで、12はシリンダ,14はシリンダ12から上向きに突き出したピストンロッドである。
ここでピストンロッド14は、上端部がベアリング15及びストラットマウント16を介して車体パネル18に、その軸心周りに回転可能に弾性的に連結されている。
【0023】
一方シリンダ12の下端部は、図示を省略するステアリングナックルに固定されている。
従ってシリンダ12の下端部は、操舵時においてステアリングナックルとロアアームとを連結するボールジョイントとピストンロッドの上端部、詳しくはベアリング15の中心とを結ぶ線の周りに車輪と一体に回動運動して位置移動する。
即ちショックアブソーバ10は、ピストンロッド14の上端部が位置固定で、下端部が操舵時における車輪の回動中心周りに車輪と一体に回動運動して位置を変化させる。
【0024】
上記ストラットマウント16は、ピストンロッド14と車体パネル18との間で振動絶縁するもので、テーパ形状のアウタ金具20と、対応した略テーパ形状のインナ金具22と、それらを連結するゴム弾性体24とを有している。
ここでゴム弾性体24は、アウタ金具20及びインナ金具22に対し一体に加硫接着されている。
またこのストラットマウント16において、アウタ金具20及びインナ金具22は、それぞれゴム弾性体24内部に埋込み状態で設けられている。
このストラットマウント16は、ボルトにて車体パネル18に締結されないボルトレスタイプのものであって、車体パネル18に形成された凹所26に対し下方から上向きに嵌め込まれて、かかる車体パネル18に組み付けられている。
【0025】
28はリバウンドストッパで、ストッパ金具30と、これに一体に加硫接着されたゴムストッパ部32とから成っており、そのストッパ金具30においてナット34-1,34-2によりピストンロッド14の上端部の雄ねじに締結固定されている。
【0026】
上記ベアリング15は内輪(上軌道輪)36と、外輪(下軌道輪)38と、それらの間の転動球40とを有しており、その内輪36がピストンロッド14に固定されてこれと一体に回転し、また外輪38がスプリングシート42に固定されてこれと一体に回転するようになっている。
即ちこの実施形態では、ピストンロッド14とスプリングシート42とが、互いに独立してそれぞれに対し相対回転可能となっている。
ここでスプリングシート42は、ショックアブソーバ10の外周側に介装される、図示を省略するコイルスプリングの上端を受けるばね受けとしてのもので凹嵌合部44を有しており、そこにバウンドストッパ46が嵌合され保持されている。
ここで金属製のスプリングシート42は、防錆のためのカチオン塗装が施されていてその表面がツルツルの平滑な面をなしている。
【0027】
バウンドストッパ46は、車両のバウンド時にその下端部52をシリンダ12の上面に当接させて圧縮弾性変形し、ショックアブソーバ10の過度の収縮変位を規制するもので、ここではバウンドストッパ46は発泡ポリウレタン製とされている。
【0028】
このバウンドストッパ46は、全体として筒状を成していて中心孔47を有しており、その中心孔47にピストンロッド14が挿通されている。
このバウンドストッパ46の外周面には、上下にバウンドストッパ46に圧縮変形能を与えるための括れ部48,50がそれぞれ環状に形成されている。
ここで上側の括れ部48は、図3に示しているようにその括れの深さαが3〜10mmの範囲内の深さとされている。
尚、下側の括れ部50もまた括れの深さが略同等の深さとされている。
【0029】
この下側の括れ部50よりも下側の部分は、ストッパ作用の初期にキャップ53を介してシリンダ12に当接して圧縮弾性変形する下端部52とされていて、その下端部52の内周側に括れ部50とは逆向きの別の括れ部54が環状に形成されている。
ここでキャップ53にはメッキが施されており、その表面がツルツルの平滑な面をなしている。
この下端部52はまた、その外径が括れ部50よりも上側の部分に対し小径とされていて、下端部52全体が変形し易いものとされている。
【0030】
バウンドストッパ46は、上側の括れ部48と下側の括れ部50との間の中間部の外周面に環状凹部56が形成されていて、そこに剛性の樹脂から成る拘束リング58が嵌着されている。
【0031】
図3に示しているように、バウンドストッパ46の上端部は大径の嵌合部60とされていて、その大径の嵌合部60がスプリングシート42の上記の凹嵌合部44に下方から上向きに嵌め込まれ、そこに内嵌状態に保持されている。
具体的にはここでは大径の嵌合部60の外周面62及び上端面64が、それぞれ凹嵌合部44の内周面及び上底面に接触する状態で凹嵌合部44に嵌合部60が内嵌されている。
【0032】
図2及び図3に示しているようにこの嵌合部60には、バウンドの際のストッパ作用時、更にはそのストッパ作用を解除する際にバウンドストッパ46の内部と外部との間で空気を通すための空気通路66が放射状に複数個所(ここでは3個所)設けられている。
【0033】
本実施形態において、バウンドストッパ46はその内径即ち中心孔47の径が、ピストンロッド14の外径よりも大径とされており、通常時においてその上端から下端に到る全長に亘ってピストンロッド14との間に環状の隙間を形成する形状とされている。
またこの中心孔47は、図4に示すように上端から下端に向って進むにつれて拡径する角度θのテーパ形状とされている。
但しこの中心孔47は、上端から下端に向って連続的に拡径する形状であっても良いし、或いはまた段階的に拡径する形状であっても良い。更に厳密なテーパ形状でなく、全体的に若しくは軸方向において部分的に湾曲形状をなしていても良い。
【0034】
このバウンドストッパ46はまた、嵌合部60の外周面62と上端面64、更に下端部52における下端面65及び外周面70、更に中心孔47の内周面72が、全面的に微細な凹凸群から成るシボ成形面68とされている。
このシボ成形面68は、ポリウレタン製のバウンドストッパ46を金型にて型成形する際、その金型の対応する個所に予め形成してあるシボ加工面にて型成形された面であって、多数のシボ突起74とそれらの間のシボ谷部76とから成っている。
本実施形態では、シボ深さ即ちシボ突起74の高さないしはシボ谷部76の深さが250±50μmの範囲内とされている。また1cm当りのシボ突起74の個数は5個以上の高密度とされている。
【0035】
本実施形態のバウンドストッパ46は、車両のバウンド時に主としてその下端部52がショックアブソーバ10のシリンダ12の上面、詳しくはここではキャップ53の上面に当接して圧縮弾性変形し、ショックアブソーバ10の過大な収縮方向の変位を規制する。
その際、下端部52は下端面65がキャップ53を介してシリンダ12に当接するのみならず、軸方向の圧縮変形によって、その外周面70もまたキャップ53を介してシリンダ12の上面に当接し、その際に下端部52の下端面65及び外周面70がシリンダ12に対して相対的に擦れを生じる。
【0036】
また嵌合部60においても外周面62及び上端面64が、スプリングシート42の凹嵌合部44の内周面及び上底面に対し圧縮変形に伴って擦れを生じる。
また特に操舵時においてピストンロッド14がバウンドストッパ46に対し図4に示すようなこじり方向の運動を相対的に生じ、その際に或いはまた更に荷重の入力によってコイルスプリングの上端部とともにスプリングシート42が相対回転したとき、バウンドストッパ46の中心孔47の内周面72にピストンロッド14が接触し、或いは接触しながら相対回転することがある。このときバウンドストッパ46の内周面72がピストンロッド14に対し擦れを生じる。
【0037】
ここにおいて本実施形態ではそれら擦れを生じる面が全てシボ成形面68とされているため、そのような擦れによって異音が発生するのが良好に防止される。
【0038】
本実施形態において、バウンドストッパ46における上端部の大径の嵌合部60と上側の環状の括れ部48、即ち嵌合部60の直下の括れ部48との間の部分は、ストッパ作用の際にバウンドストッパ46が圧縮弾性変形したとき、図5に示すようにスプリングシート42の凹嵌合部44内にそのほぼ全体が挿入状態となる部分であって、図3に示すようにこの挿入部80の外周面全面が、上方に進むにつれて外径が漸次小径となる逆テーパ形状(角度θ)の縮径誘導部82とされている。
【0039】
ここで逆テーパ形状の下端の最大径部84は、その外径が括れ部48と50との間の中間部86の外径と同等径とされている。従って縮径誘導部82における上端の最小径部88は、中間部86の外径よりも小径をなしている。但しこの最小径部88の外径は括れ部48の外径よりも大径をなしている。
【0040】
ここで最小径部88の外径は、中間部86の外径φ53mmに対しφ52mmとされている。即ち縮径誘導部82における最小径部88の外径は、最大径部84の外径に対し1mm小径をなしている。
尚括れ部48の外径はφ40mmであり、従ってその括れの深さαは具体的にはここでは6.5mmである。
【0041】
この縮径誘導部82は、ストッパ作用時にバウンドストッパ46が圧縮変形したとき、ピストンロッド14と中心孔47の内周面72との間の環状の隙間によって挿入部80、特に最小径部88を縮径方向に変形誘導するもので、本実施形態ではこの結果バウンドストッパ46の圧縮変形の際、挿入部80が径方向外方に膨出変形するのが効果的に抑制される。
【0042】
図5はこれを表したもので、同図に示しているように挿入部80は、バウンドストッパ46の圧縮変形状態の下で特に径方向外方に膨出変形することがなく、従ってその膨出変形により挿入部80がスプリングシート42の凹嵌合部44の内周面に対し擦れを生じるのが防止される。
因みに図6は挿入部80Aにそのような縮径誘導部を形成しない場合を比較例として表したもので、この比較例におけるバウンドストッパ46Aの挿入部80Aの外周面には逆テーパ形状の縮径誘導部は形成されておらず、その外周面は軸方向のストレート面をなしている。
【0043】
またバウンドストッパ46Aは、図6(A)に示すようにその上部の内周面72がピストンロッド14に対し接触状態に嵌合している。
その結果として、この比較例の図6に示すバウンドストッパ46Aの場合、ストッパ作用時においてバウンドストッパ46Aが軸方向に圧縮弾性変形したとき、挿入部80Aが径方向外方に膨出して、スプリングシート42の凹嵌合部44の内周面に接触し、その接触に基づいて擦れを生じて、その擦れに起因した異音を発生する問題が発生する。
【0044】
然るに本実施形態では、図5に示しているように挿入部80が膨出変形せず、従ってスプリングシート42の凹嵌合部44の内周面に対し擦れを生じないため、その擦れに起因した不快な異音を発生させることがない。
【0045】
本実施形態においては中心孔47の内周面72とピストンロッド14との間に縮径変形のための環状の隙間が形成してあるため、バウンドストッパ46の圧縮変形時に縮径誘導部82が良好に本来の働きを発揮することができる。
【0046】
また本実施形態では中心孔47の内周面72が全高に亘ってピストンロッド14との間に環状の隙間を形成するものと成してあるため、ピストンロッド14の円滑な回転運動が確保されるとともにその回転に際しバウンドストッパ46の内周面72の擦れが抑制される。
【0047】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば挿入部の外周面の縮径誘導部は厳密な逆テーパ形状でなくてもよく、概略テーパ形状をなすものであっても良い。詳しくは上方に進むにつれて小径となる形状であれば厳密な逆テーパ形状でなくても良い。
その他本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態のバウンドストッパをサスペンション装置への装着状態で示す図である。
【図2】図1におけるバウンドストッパの斜視図である。
【図3】同バウンドストッパにおける(A)縦断面図,(B)平面図,(C)C−C断面図である。
【図4】同バウンドストッパの作用説明図である。
【図5】同バウンドストッパの図4とは異なる作用説明図である。
【図6】本発明の比較例図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ショックアブソーバ
12 シリンダ
14 ピストンロッド
42 スプリングシート
44 凹嵌合部
46 バウンドストッパ
47 中心孔
48,50,54 括れ部
60 嵌合部
72 内周面
80 挿入部
82 縮径誘導部
84 最大径部
88 最小径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバとコイルスプリングとを構成要素として備えた車両のサスペンション装置に用いられ、全体として筒状を成して中心孔に該ショックアブソーバのピストンロッドが挿通されるとともに、上端部の大径の嵌合部が前記コイルスプリングの上端を受けるスプリングシートに形成された逆カップ状の凹嵌合部に内嵌する状態に嵌合組み付けされ、車両のバウンド時に該ショックアブソーバのシリンダに弾性当接して該ショックアブソーバの過度の収縮変位を規制する発泡ポリウレタン製のバウンドストッパであって
前記上端部の大径の嵌合部と該バウンドストッパに軸方向の圧縮変形能を与えるための直下の環状の括れ部との間の部分、且つ車両のバウンド時における圧縮変形状態の下で前記スプリングシートの凹嵌合部内に挿入状態となる挿入部の外周面に、上方に向って外径が次第に小径となる略逆テーパ状の、前記圧縮変形に伴う縮径変形を誘導する縮径誘導部を設けるとともに、少なくとも前記挿入部において前記中心孔の内周面と前記ピストンロッドとの間に前記縮径変形のための環状の隙間を形成してあることを特徴とするサスペンション装置用のバウンドストッパ。
【請求項2】
請求項1において、前記括れ部の径方向の深さが3〜10mmであり、前記略逆テーパ状の縮径誘導部における最小径部と下端の最大径部との外径差が0.2〜3.0であることを特徴とするサスペンション装置用のバウンドストッパ。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記中心孔の内周面が全高に亘り前記ピストンロッドとの間に環状の隙間を形成していることを特徴とするサスペンション装置用のバウンドストッパ。
【請求項4】
請求項3において、前記サスペンション装置は、前記ピストンロッドが前記スプリングシートに対して該ピストンロッドの軸心周りに相対回転する形式のものであることを特徴とするサスペンション装置用のバウンドストッパ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記スプリングシートが表面にカチオン塗装が施されて表面平滑なものであることを特徴とするサスペンション装置用のバウンドストッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−170386(P2006−170386A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366710(P2004−366710)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】