説明

サスペンション装置

【課題】実用性の高いサスペンション装置を提供する。
【解決手段】サスペンション装置10は、基端部が車体に回転可能に連結されるとともに、先端部がステアリングナックル18に回転可能に連結された回動アーム50と、基端部が車体に回転可能に連結された第1ロッド66と、回動アームと並ぶようにしてかつその回動アームの延びる方向における変位が許容された状態で、回動アームに支持され、基端部が第1ロッドの先端部と回転可能に連結された第2ロッドと、基端部が中間ロッドの先端部に回動可能に連結され、先端部がステアリングナックル18に回転可能に連結された第3ロッドとを備え、回動アームと第2ロッドとの上下方向における間隔が、回動アームの基端部と第1ロッドの基端部との上下方向の間隔および回動アームの先端部と第3ロッドの先端部との上下方向の間隔よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サスペンション装置には、例えば、下記特許文献1で紹介されているような、複数のアームを備えたダブルウィッシュボーン式が存在する。ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置は、車輪のアライメントを殆ど変化させずに、車体と車輪との上下方向の相対変位を許容することができるというメリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−215610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ダブルウィッシュボーン式のサスペンション装置では、一般的に、複数のアームが、上下方向において異なる位置で、キャリアや車体にそれぞれ連結されている。つまり、ダブルウィッシュボーン式のような、複数のアームを有するサスペンション装置では、自身の設置のために、上下方向に比較的大きなスペースが必要になるという問題がある。この問題を始めとして、複数のアームを利用したサスペンション装置には、いくつかの問題があり、改良の余地が多分に残されている。したがって、種々の改良を施すことによって、そのようなサスペンション装置の実用性が向上すると考えられる。本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いサスペンション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のサスペンション装置は、基端部が車体に回転可能に連結されるとともに、先端部がキャリアに回転可能に連結されたアームと、アームと並ぶようにしてかつそのアームの延びる方向における変位が許容された状態で、アームに支持された中間ロッドと、基端部が車体に回転可能に連結され、先端部が中間ロッドの基端部と回転可能に連結された車体側ロッドと、基端部が中間ロッドの先端部に回動可能に連結され、先端部がキャリアに回転可能に連結されたキャリア側ロッドとを備え、アームと中間ロッドとの上下方向における間隔が、アームの基端部と車体側ロッドの基端部との上下方向の間隔およびアームの先端部とキャリア側ロッドの先端部との上下方向の間隔よりも小さくされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のサスペンション装置では、互いに連結された車体側ロッド,中間ロッド,キャリア側ロッドによって、第2のアームが構成されていると考えることができる。そのように考えた場合、本サスペンション装置では、第2のアームとアームとの上下方向の間隔が、中間ロッドの部分において比較的小さくされている。したがって、本サスペンション装置は、自身の設置に必要な上下方向のスペースが比較的小さいため、自身の車両への搭載においては、比較的大きなスペースを必要としない。その意味においては、本発明のサスペンション装置は、実用性の高いものとなる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(5)項が請求項5に、(6)項が請求項6に、(7)項が請求項7に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)基端部が、車体に回転可能に連結されるとともに、先端部が、車輪を回転可能に保持するキャリアに回転可能に連結されて、そのキャリアの車体に対する上下方向の揺動を許容するためのアームと、
そのアームと並ぶようにしてかつそのアームの延びる方向における変位が許容された状態で、そのアームに支持された中間ロッドと、
基端部が、前記アームの基端部と上下方向に間隔を隔てた位置において車体に回転可能に連結され、先端部が、前記中間ロッドの基端部と回転可能に連結された車体側ロッドと、
基端部が、前記中間ロッドの先端部に回動可能に連結され、先端部が、前記アームの先端部と上下方向に間隔を隔てた位置において前記キャリアに回転可能に連結されたキャリア側ロッドと
を備え、
前記アームと前記中間ロッドとの上下方向における間隔が、前記アームの基端部と前記車体側ロッドの基端部との間隔および前記アームの先端部と前記キャリア側ロッドの先端部との間隔よりも小さくされたサスペンション装置。
【0010】
本サスペンション装置では、上記アームを第1のアームと考えた場合、互いに連結された車体側ロッド,中間ロッド,キャリア側ロッドによって、第2のアームが構成されていると考えることができる。このように考えた場合には、本サスペンション装置を、2つのアームによって構成されるダブルウィッシュボーン式サスペンション装置の改良と考えることができる。
【0011】
車体と車輪との上下方向の相対変位に伴って、アームは、基端部を中心に回動するとともに、車体側ロッド,中間ロッド,キャリア側ロッドの3つは、中間ロッドのアームの延びる方向の変位が許容されつつ、それら3つが一体となって、車体側ロッドの基端部を中心に回動する。その際、アームの先端部およびキャリア側ロッドの先端部に連結されたキャリアは、ダブルウィッシュボーン式のサスペンション装置に連結されたキャリアと同様に、バウンド,リバウンドにおける車輪のアライメント変化を小さく抑えることができる。また、本サスペンション装置は、通常のダブルウィッシュボーン式サスペンション装置と比較して、2つのアームの上下方向の間隔、詳しくは、上記アームと上記中間ロッドとの間隔が小さいため、自身の設置に必要なスペースが、上下方向において、比較的小さくなっている。したがって、本サスペンション装置を搭載した車両では、サスペンション装置の設置以外の目的の為に、比較的大きなスペースを利用することが可能となる。したがって、本発明のサスペンション装置は、実用性の高いものとなる。
【0012】
本項の態様における「キャリア」は、車輪を回転可能に保持する部品であり、車輪が転舵輪である場合には、ステアリングナックルを含む概念である。「アーム」,「中間ロッド」,「車体側ロッド」,「キャリア側ロッド」は、車体に対する車輪の上下動の軌跡を決定するサスペンションリンクを構成するものである。サスペンションリンクの機能に鑑みれば、車両が水平面上にあると考えた場合に、アームは、概ね水平な軸線(以下、「アーム回動軸線」という場合がある)回りにのみ回動するように、基端部が車体に連結されることが望ましい。一方、車体と車体側ロッドの基端部、キャリアとアームの先端部、キャリアとキャリア側ロッドの先端部、キャリア側ロッドの基端部と中間ロッドの先端部、車体側ロッドの先端部と中間ロッドの基端部とは、それぞれ、許容される相対回転方向が一方向に限定される状態で互いに連結されていなくてもよく、上記サスペンションリンクとしての機能を実現可能に連結されていればよい。なお、キャリアがステアリングナックルの場合には、後に説明するように、キャリアとアームの先端部との連結箇所、および、キャリアとキャリア側ロッドの先端部との連結箇所によって、キングピン軸が画定されるように、アームの先端部およびキャリア側ロッドの先端部が、それぞれキャリアに連結されていてもよい。
【0013】
「アームの延びる方向(以下、「アーム軸方向」という場合がある)」は、特に限定されない。前後方向でも、左右方向でも、また、それらの方向の中間の方向、つまり、斜め方向であってもよい。アームの平面視における形状も特に限定されない。いわゆるA型アームのように、基端部がある程度幅広とされた形状であってもよく、単なる棒のような形状であってもよい。なお、アーム軸方向は、例えば、基端部の回転軸線に直角、つまり、上記アーム回動軸線に直角であり、かつ、先端部を通る直線(以下、「アーム軸線」という場合がある)の延びる方向と考えることができる。
【0014】
「中間ロッドがアームと並ぶ」とは、必ずしも、中間ロッドの延びる方向(以下「中間ロッド軸方向」という場合がある)とアーム軸方向とが平行であることを意味するのではなく、それら2つの方向が多少傾いた状態をも含む概念である。また、「アームの延びる方向における変位が許容された」とは、中間ロッドがアーム軸方向のみの変位を許容された状態だけを意味するのではない。その変位に加えて、アーム軸方向と交差する方向に多少の変位が許容される状態をも意味する。具体的に言えば、例えば、中間ロッドが、アーム軸方向若しくはその方向に対して多少傾いた方向にスライド可能に、アームに保持されていてもよく、また、アームの第1の箇所と中間ロッドの第1の箇所との間、および、アームの第2の箇所と中間ロッドの第2の箇所との間を、それぞれリンクロッドによって連結し、中間ロッドとアームとそれら2つのリンクロッドによって四辺形リンクが構成されるように、中間ロッドがアームに保持されていてもよいのである。
【0015】
中間ロッドとアームのとの位置関係について、「アームと中間ロッドとの上下方向における間隔」とは、アーム軸線と、中間ロッドの先端部と基端部とを結ぶ線(以下、「中間ロッド軸線」という場合がある)との、横から見た場合における間隔を意味する。同様に、「アームの基端部と車体側ロッドの基端部との上下方向における間隔(以下、「基端部間隔」という場合がある)」,「アームの先端部とキャリア側ロッドの先端部との上下方向における間隔(以下、「先端部間隔」という場合がある)」も、横から見た場合における間隔を意味する。なお、アームと中間ロッドとの上下方向における間隔は、殆ど0であってもよい。具体的に言えば、例えば、アームが棒状のものとされ、アームと中間ロッドとが殆ど横に並ぶような状態で、中間ロッドがアームに保持されていてもよいのである。
【0016】
「アームと中間ロッドとの上下方向における間隔が、基端部間隔および先端部間隔より小さい」とは、少なくとも、中間ロッドの基端部とアームとの間隔が上記基端部間隔より小さく、かつ、中間ロッドの先端部とアームとの間隔が上記先端部間隔より小さければよい。なお、アームと中間ロッドとの間隔を可及的に小さくするという観点からすれば、中間ロッドの基端部とアームとの間隔が、基端部間隔よりもまた先端部間隔よりも小さく、かつ、中間ロッドの先端部とアームとの間隔が、上記基端部間隔よりもまた上記先端部間隔よりも小さいことが望ましい。さらには、中間ロッドの基端部とアームとの間隔と、中間ロッドの先端部とアームとの間隔との大きい方が、基端部間隔と先端部間隔との小さい方の1/2以下であることが望ましく、1/3以下,1/4以下であることがより望ましい。
【0017】
(2)前記中間ロッドの前記アームに対する当該アームの延びる方向の変位に対して弾性反力を付与するスプリングを、さらに備えた(1)項に記載のサスペンション装置。
【0018】
本サスペンション装置では、車輪と車体との上下方向における相対変位によってアームが回動すると、アームと中間ロッドとは、アームの延びる方向に相対変位することとなる。本サスペンション装置は、そのアームと中間ロッドとの相対変位に対して弾性反力を付与することで、車輪と車体との上下方向における相対変位に対して弾性反力を付与することが可能となっている。
【0019】
したがって、車輪と車体とが接近する方向の相対変位に対して弾性反力を付与するようにサスペンション装置を構成すれば、そのサスペンション装置は、車体の荷重を分担するための弾性反力を発生させることになる。例えば、アームの先端部よりもキャリア側ロッドの先端部の方が上方に位置し、かつ、アームの基端部よりも車体側ロッドの先端部の方が上方に位置する場合には、中間ロッドがアームの基端部に向かって変位する方向の弾性反力を付与すればよい。また、アームの先端部よりもキャリア側ロッドの先端部のほうが下方に位置し、かつ、アームの基端部よりも車体側ロッドの先端部のほうが下方に位置する場合には、中間ロッドがアームの先端部に向かって変位する方向に弾性反力を付与すればよい。なお、当該スプリングが、車輪が担うべき車体分担荷重のすべてを担うことができれば、本サスペンション装置は、他のサスペンションスプリングを必要とせず、そのことは本装置の利点となる。
【0020】
(3)前記スプリングが、前記中間ロッドの一部分と、前記アームの一部分との間に配設された(2)項に記載のサスペンション装置。
【0021】
本サスペンション装置では、アームと中間ロッドとの間にスプリングが配設されるため、サスペンション装置を比較的コンパクトにすることができる。具体的には、例えば、中間ロッドの特定箇所にスプリングを支持するためのブラケット(以下、「支持ブラケット」という場合がある)を設け、かつ、アームの特定箇所に支持ブラケットを設け、それら2つのブラケットの間に、圧縮若しくは引張スプリングを配設すればよい。
【0022】
(4)前記中間ロッドの前記アームに対する当該アームの延びる方向の変位に対して減衰力を付与するダンパを、さらに備えた(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のサスペンション装置。
【0023】
本サスペンション装置は、アームと中間ロッドとの相対変位に対して減衰力を付与することで、車輪と車体との上下方向における相対変位に対して減衰力を付与することができる。つまり、当該ダンパを、いわゆるショックアブソーバとして機能させることができる。なお、本サスペンション装置が、当該ダンパとともに上記スプリングを備えれば、サスペンション装置としての機能が充実する。
【0024】
(5)前記ダンパが、前記中間ロッドの一部分と、前記アームの一部分との間に配設された(4)項に記載のサスペンション装置。
【0025】
本サスペンション装置では、アームと中間ロッドとの間にダンパが配設されるため、サスペンション装置を比較的コンパクトにすることができる。具体的には、上記スプリングと同様に、例えば、中間ロッドの特定箇所およびアームの特定箇所の各々に支持ブラケットを設け、それら2つの支持ブラケットの間に、シリンダ形状のダンパを配設すればよい。スプリングとともにダンパを設ける場合には、それらブラケットを、スプリングと共用し、ダンパとスプリングとを同軸的に配設すれば、構造が簡便であり、充分にコンパクトなサスペンション装置となる。
【0026】
(6)車体に設けられ、前記アームと前記車体側ロッドとの一方をその一方の基端部回りに回動させるための力である回動力を付与する回動力付与装置を、さらに備えた(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のサスペンション装置。
【0027】
本サスペンション装置は、回動力を付与することによって、キャリアを車体に対して積極的に上下に変位させることが可能となっている。つまり、本サスペンション装置を備えた車両では、車体と車輪との上下方向における相対位置を調整することができる。そのため、このような車両では、例えば、車体のロール抑制,ピッチ抑制、リーン(傾斜)、意図的なスクワット,ノーズダイブ、車高調整等が可能となる。「回動力付与装置」の具体的な構成は、特に限定されず、例えば、モータ等を主体とするものであってもよい。なお、回動力付与装置は、外部入力による車輪の上下動をできるだけ妨げずに、回動力を付与可能な構造であることが望ましい。具体的には、逆効率の低い構造を有していることが望ましい。
【0028】
(7)当該サスペンション装置が、前記回動力付与装置を制御する制御装置をさらに備え、
その制御装置が、車両の前方衝突が予測される場合に、車体の前方側の部分が後方側の部分に対して持ち上がる向きの前記回動力を付与するように、前記回動力付与装置を制御するように構成された(6)項に記載のサスペンション装置。
【0029】
本サスペンション装置によれば、車両前方衝突が予測される場合に、車体がスクワットさせられる。それに伴って、乗員が着座するシートも後傾するため、車両前方衝突の際の乗員の前方への飛び出しが抑制される。車体をスクワットさせるには、例えば、当該サスペンション装置が前輪に対して設けられている場合には、車輪と車体との間隔が増加するように、すなわち、リバウンドするように、車輪と車体とを上下方向に相対変位させればよい。当該サスペンション装置が後輪に対して設けられている場合には、車輪と車体との間隔が減少するように、すなわち、バウンドするように、車輪と車体とを上下方向に相対変位させればよい。「車両の前方衝突の予測」は、いわゆるプリクラッシュセイフティ機能を実現するためのシステム等、車両に搭載されている装置によって行われればよく、その装置からの信号に基づいて回動力付与装置を制御するように、制御装置が構成されればよい。
【0030】
(8)前記アームの先端部と前記キャリア側ロッドの先端部とが連結された前記キャリアが、ステアリングナックルとして機能する(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のサスペンション装置。
【0031】
本サスペンション装置によれば、例えば、アームの先端部とキャリア側ロッドの先端部との各々がキャリアに連結される箇所によって、ステアリングナックルのキングピン軸を画定させることができる。なお、本サスペンション装置は、前述の理由から、バウンド,リバウンドにおいて、車輪と車体とが相対変位する際に、路面に対するキングピン軸の角度があまり変化しない。
【0032】
(9)前記アームが、前後方向に延びるリーディングアームとして機能する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のサスペンション装置。
【0033】
本サスペンション装置では、上記アームは、前後方向に延びているため、アームを比較的長くすることができる。比較的長いアームを採用することで、車輪と車体との相対移動量が比較的大きくても、アームの回動量を比較的小さくすることができる。そのため、例えば、上記回動力付与装置を備えたサスペンション装置の場合には、回動力付与装置の作動量が比較的小さくても、キャリアを車体に対して比較的大きく変位させることができる。つまり、キャリアを車体に対して積極的に変位させる場合に、比較的素早く変位させることができる。
【0034】
(10)当該サスペンション装置が、前輪に対する装置とされた(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のサスペンション装置。
【0035】
本サスペンション装置は、アームが上記リーディングアームとされている場合に好適である。つまり、アームがリーディングアームとされた場合、アームの先端部が基端部の前方に位置することになるため、アームが前輪から後方に向かって延びるように配置されることになる。したがって、アームを前輪と後輪との間に配置することができる。
【0036】
(11)左右1対の車輪と、
それら車輪に対応して設けられ、それぞれが(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の前記サスペンション装置である1対のサスペンション装置と
を備えた車両。
【0037】
本項の態様の車両は、左右1対の車輪において、上記各態様のサスペンション装置について説明した種々の利点を有することになる。
【0038】
(12)前記1対の車輪が1対の前輪であり、
前記1対のサスペンション装置の各々の前記アームが、
当該車両の側面視において、乗員座席の下方において前後方向に延びるように配設されたリーディングアームとされた(11)項に記載の車両。
【0039】
本項の態様の車両では、アームが乗員座席の下方において前後方向に延びているため、乗員座席下方の空間を利用して、アームを比較的長くすることができる。また、乗員座席の下方にアームが配設されるにも拘らず、本サスペンション装置によれば、乗員の足元には、比較的大きなスペースを設けることができる。例えば、乗員の足元に中間ロッドが位置するように、サスペンション装置を車両に配置すれば、本サスペンション装置ではアームと中間ロッドとの間隔が比較的小さいため、乗員の足元には比較的大きなスペースを設けることができる。あるいは、乗員がアームを越えて乗降するようにサスペンション装置が配置されている車両では、中間ロッドが位置する場所において乗降するようにサスペンション装置を車両に配置すれば、乗員は比較的容易に乗降できる。
【0040】
(13)当該車両が、
車幅方向において前記1対の前輪の中間に位置しかつ前記1対の前輪の後方に位置する単一の後輪を有する(12)項に記載の車両。
【0041】
本車両は、後述する1人乗りの車両のような比較的小型の車両に適している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】請求可能発明の実施例であるサスペンション装置が搭載された車両を側方から見た図である。
【図2】図1に示す車両を上方から見た図である。
【図3】図1に示す車両に搭載されたサスペンション装置において、2つのロッドが互いに連結された部分を示す図である。
【図4】図1に示す車両に搭載されたサスペンション装置のスプリングとダンパとを示す図である。
【図5】図4におけるD−D視の断面の図である
【図6】図1に示す車両に搭載されたサスペンション装置の、車輪と車体との相対変動に伴う変化を説明するための図である。
【図7】図1に示す車両が前方衝突しそうな場合の車体および乗員の挙動を説明するための図である。
【図8】請求可能発明の変形例であるサスペンション装置において、スプリングとダンパとが位置する部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0044】
≪サスペンション装置搭載車両の構成≫
図1,2に、実施例のサスペンション装置10が1対搭載された車両を模式的に示す。本車両は、1人乗りの車両となっており、乗員座席12が車両の略中央に1つだけ設けられている。本車両では、前輪として、1対の車輪14が、車両の前方部で、車幅方向左右それぞれに配置されている。また、後輪として、単一の車輪16が、車両の後方部で、車幅方向中央に配置されている。つまり、本車両は3輪で走行する車両となっている。
【0045】
前輪14は、それぞれ、ステアリングナックル18に回転可能に保持されている。そのステアリングナックル18は、それぞれ、前輪14の向きを変えるための転舵装置20に連結されている。また、転舵装置20は、運転者によって操作される操作装置22に連結されている。操作装置22は、運転者によって操作されるステアリングホイール24と、その操作によって回転する操作シャフト26とを含んで構成されている。また、転舵装置20は、車体に固定されたハウジング27と、ハウジング27に回転可能に保持されたピニオン軸28と、車幅方向への移動が許容された状態でハウジング27に保持された転舵ロッド30と、一端が転舵ロッド30に連結され、他端がボールジョイント31を介してステアリングナックル18に連結される1対のリンクロッド32とを有している。ピニオン軸28は、ハウジング27の内部に位置する一端に、ピニオンが形成されており、また、転舵ロッド30には、そのピニオンと噛み合うラックが形成されている。また、ピニオン軸28の他端には、複数のジョイントと複数のシャフトとを介して、操作装置22の操作シャフト26が連結されている。そのため、ステアリングホイール24が運転者によって操作されると、転舵ロッド30が左右に移動させられ、前輪14が転向させられる。つまり、前輪14は、本車両における転舵輪とされている。
【0046】
後輪16は、車体に回動可能に保持された後輪支持材34によって、回転可能に保持されている。本車両は、駆動源としての電磁式のモータ36を有しており、そのモータ36のモータシャフトには、駆動スプロケット38が固定されている。また、後輪16には、従動スプロケット40が固定されており、従動スプロケット40は、後輪16とともに回転可能となっている。駆動スプロケット38と従動スプロケット40とには、環状のチェーン42が架け渡されている。そのため、モータ36の作動によって駆動スプロケット38が回転させられると、チェーン42を介して、従動スプロケット40とともに後輪16が回転させられる。つまり、後輪16は、本車両における駆動輪とされている。なお、詳しい説明は省略するが、後輪支持材34と車体との間には、スプリングとダンパとが設けられている。後輪16と車体との相対変位に対して、スプリングは弾性力付与し、ダンパは減衰力を付与することが可能とされている。また、前輪14,後輪16には、それぞれ、ブレーキ装置が設けられており、運転者のブレーキ操作に応じて、各車輪の回転は制動させられる。
【0047】
≪サスペンション装置の構成≫
上記1対のサスペンション装置10は、それらの一方の構造と、他方の構造とが左右対称となっている。そのため、サスペンション装置10,前輪14等の構成要素は、それぞれ左右を区別しない共通名称で表されている。以下の説明においては、それらを始めとする各構成要素を左右別々に表す場合には、左側に位置するものには「L」、右側に位置するものには「R」の符号をそれぞれ付することとする。
【0048】
サスペンション装置10は、基端部において車体に回転可能に保持された回動アーム50と、同じく、基端部において車体に回転可能に保持されたロッドAssy52と、回動アーム50を回動させるための力を発生させるアクチュエータ54とを含んで構成される。なお、ロッドAssy52と回動アーム50とは、上下方向に並んで配置されている。そのため、図2では、回動アーム50の構造とロッドAssy52の構造とをそれぞれ詳細に描くために、左側に位置するサスペンション装置10Lは、主に、ロッドAssy52を上方から見た状態(図1におけるA−A視の状態)で描かれており、右側に位置するサスペンション装置10Rは、主に、回動アーム50を上方から見た状態(図1におけるB−B視の状態)で描かれている。回動アーム50は、前後方向に延びるアーム本体部60と、回動アーム50の基端部であって、アーム本体部60に直交するようにして固定されたシャフト部62とから主に構成されている。シャフト部62は、それの一端部が、車体に固定された保持器64によって回転可能に保持され、他端部が、車体に固定されたアクチュエータ54に連結されている。つまり、シャフト部62は、保持器64およびアクチュエータ54によって、車体に対して回転可能となっており、また、アーム本体部60は、そのシャフト部62の軸線を回動軸線として、車体に対して回動可能となっている。アーム本体部60は、それの先端部が車体外側に曲がっており、その先端部は、ステアリングナックル18の下方部に、ボールジョイント66を介して、連結されている。
【0049】
ロッドAssy52は、大まかには、3つのロッドを含んで構成されている。詳しくいうと、基端部が車体に連結された第1ロッド66と、その第1ロッド66の先端部に自身の基端部が連結される第2ロッド68と、その第2ロッド68の先端部に自身の基端部が連結され、先端部がステアリングナックル18に回転可能に連結された第3ロッド70とを含んで構成されている。第1ロッド66と第2ロッド68との間には、ジョイント72が設けられており、そのジョイント72を介して、第1ロッド66と第2ロッド68とは互いに連結されている。また、第2ロッド68と第3ロッド70との間にも、ジョイント72が設けられており、そのジョイント72を介して、第2ロッド68と第3ロッド70とは互いに連結されている。また、第1ロッド66は、前後方向に延びるロッド本体部74と、第1ロッド66の基端部において、ロッド本体部74に直交するようにして固定され、車幅方向に水平に延びるシャフト部76とから主に構成されている。シャフト部76は、それの両端部が、それぞれ、車体に固定された保持器78によって回転可能に保持されている。つまり、シャフト部76は、保持器78によって、車体に対して回転可能となっており、ロッド本体部74は、そのシャフト部76を回動軸として、車体に対して回動可能となっている。また、第3ロッド70は、それの先端部が車体外側に曲がっている。その先端部は、ステアリングナックル18の上方部に、ボールジョイント80を介して、連結されている。
【0050】
図3(a)は、第1ロッド66と第2ロッド68とを連結するジョイント72の平面図であり、また、図3(b)は、図3(a)のC−C視における断面図である。第1ロッド66の先端部には、円筒形状のブッシュ82が固定されており、一方、第2ロッド68の基端部には、ブッシュ82の両端部を挟む形状とされたヨーク84が固定されている。ブッシュ82は、第2ロッド68に固定される円筒形状の外筒86と、その外筒86の内部に、外筒86と同軸的に配設された内筒88と、それら外筒86と内筒88との間に配設された、ゴム製の弾性部材90とを有している。これらブッシュ82,ヨーク84には、ブッシュ82の軸線に沿って軸92が挿通されている。軸92の先端部にはねじ山が形成されており、軸92は、ナット94によってヨーク84にねじ留めされている。このように構成されたジョイント72によって、第1ロッド66と第2ロッド68とは、軸92の軸線を中心として、互いに回動することが可能となっている。なお、第2ロッド68と第3ロッド70とを連結するジョイント72も、同じ構造とされており、第2ロッド68と第3ロッド70とは、軸86の軸線を中心として、互いに回動することが可能となっている。
【0051】
図4に示すように、サスペンション装置10は、回動アーム50が第2ロッド68を支持するための、2つのロッドサポート100を有している。2つのロッドサポート100は、間隔を空けて、回動アーム50にそれぞれ固定されており、上方に第2ロッド68を保持している。図5は、図4のD−D視における、ロッドサポート100の断面図である。ロッドサポート100の各々は、2つの孔102,104が設けられたプレート106を有している。孔102には、回動アーム50のアーム本体部60が挿通されており、ロッドサポート100は、それぞれ、図4に示す位置において、アーム本体部60に溶接によって固定されている。孔104の内径は、孔102の内径よりも大きくされており、その孔104には、第2ロッド68が挿通されている。孔104の内周面と第2ロッド68の外周面との間には、円筒形状とされたゴム製の弾性部材108と、鋼管製のスリーブ110とが配設されている。このように構成された2つのロッドサポート100によって、第2ロッド68は、スリーブ110の内周面に摺動しつつ、第2ロッド68の延びる方向、つまり、回動アーム50のアーム本体部60の延びる方向に変位することが可能となっている。
【0052】
さらに、サスペンション装置10は、第2ロッド68の位置する箇所において、弾性反力を発生するスプリング120と、減衰力を発生するシリンダ型のダンパ122とを有している。ダンパ122は、棒状のロッド124と、ロッド124と同軸的に設けられ、ロッド124が出入可能とされたシリンダ126とを含んで構成されている。詳細な説明は省略するが、ダンパ122は、ロッド124のシリンダ126への出入に対して減衰力を発生する。そのダンパ122の両端には、圧縮コイルばねであるスプリング120を圧縮した状態で保持するためのサポータ128,130がそれぞれ固定されている。ダンパ122は、ロッド124に固定されたサポータ128が、第2ロッド68に設けられたブラケット132に回転可能に連結され、シリンダ126に固定されたサポータ130が、回動アーム50のアーム本体部60に設けられたブラケット134に回転可能に連結された状態で、配設されている。
【0053】
回動アーム50のシャフト部62に連結されたアクチュエータ54についての詳しい説明は省略するが、アクチュエータ54は、モータを主体として構成されており、回動アーム50のシャフト部62を回転可能に保持しつつ、モータの発生する力によって、シャフト部62を回転させることが可能となっている。また、アクチュエータ54の逆効率は、比較的小さくなっている。そのため、モータに電力が供給されていない状態で、シャフト部62に外力が作用し、シャフト部62が回転させられようとする場合には、アクチュエータ54では、その回転に抗して発生する抵抗力が、比較的小さくなっている。
【0054】
ところで、本車両は、車両前方の障害物や他の車両との衝突を回避するための車両衝突予知機能、いわゆる、プリクラッシュセイフティ機能を有している。この機能によって、前方衝突の危険性のある場合には、乗員への警告,シートベルトの巻き取り,ブレーキ装置の作動等の予防対策が実行される。そのため、本車両には、車両の速度を検出するための速度センサ140と、車両前方の障害物や他の車両との距離を検出するミリ波レーダ142とが設けられている。また、これら速度センサ140,ミリ波レーダ142の各々は、プリクラッシュセイフティ機能の各予防対策を実行するための各種制御を司るプリクラッシュセーフティ電子制御ユニット(プリクラッシュセーフティECU)144に接続されている。プリクラッシュセーフティECU144は、車両の速度と、衝突する可能性のある障害物や車両への距離とに基づいて、衝突の危険性を予測することが可能となっている。また、プリクラッシュセーフティECU144は、アクチュエータ54の作動の制御を司るアクチュエータ電子制御ユニット(アクチュエータECU)146に接続されており、プリクラッシュセーフティECU144は、アクチュエータ54を作動させるための信号を、アクチュエータECU146に出力可能となっている。
【0055】
≪サスペンション装置の動作≫
上記構成とされたサスペンション装置10では、回動アーム50は、シャフト部62の軸線をアーム回動軸線として、回動することができる。その回動アーム50は、アーム軸線、つまり、基端部にあるシャフト部62の回転軸線に直角であり、先端部を通る直線が、車両前後方向に延びている。換言すれば、アーム軸線の延びる方向であるアーム軸方向が前後方向となっている。そのため、回動アーム50は、リーディングアームとして機能すると考えることができる。また、第2ロッド68は、そのアーム軸方向における変位が許容された中間ロッドと、その中間ロッドに連結された第1ロッド66は、基端部が車体に回転可能に連結された車体側ロッドと考えることができる。また、ステアリングナックル18をキャリアと考えれば、中間ロッドに連結された第3ロッド70は、先端部がステアリングナックル18に連結されたキャリア側ロッドと考えることができる。また、ステアリングナックル18では、回動アーム50の先端部のボールジョイント66と、第3ロッド70の先端部のボールジョイント80とによって、前輪14の転向におけるキングピン軸が画定される。したがって、ステアリングホイール24が操作されて転舵ロッド32が左右に移動すると、前輪14は、そのキングピン軸を回転軸として転向することになる。また、このようにして車体に支持されるステアリングナックル18は、ロッドAssy52を第2のアームと考えることができる。したがって、本サスペンション装置10は、2つのアーム、つまり、回動アーム50とロッドAssy52によって構成されるダブルウィッシュボーン式サスペンション装置の改良と考えることができる。
【0056】
また、サスペンション装置10の回動アーム50およびロッドAssy52において、第2ロッド68の基端部と回動アーム50との上下方向における間隔は、基端部間隔、つまり、回動アーム50基端部と第1ロッド66の基端部との上下方向における間隔より小さくなっている。また、第2ロッド68の先端部と回動アーム50との上下方向における間隔は、先端部間隔、つまり、回動アーム50先端部と第3ロッド70の先端部との上下方向における間隔より小さくなっている。また、第2ロッド68の基端部と回動アーム50との上下方向における間隔は、上記先端部間隔よりも小さく、かつ、第2ロッド68の先端部と回動アーム50との上下方向における間隔は、上記基端部間隔よりも小さくなっている。つまり、ロッドAssy52は、図1に示すように、第2ロッド68において、自身と回動アーム50との上下方向の間隔が比較的小さくなっている。ちなみに、基端部間隔と先端部間隔とは、ほぼ同じ大きさとなっており、それらの間隔に対して、第2ロッド68の基端部と回動アーム50との間隔、または、第2ロッド68の先端部と回動アーム50との間隔は、1/2以下となっている。
【0057】
このサスペンション装置10が車両に搭載されている状態で、回動アーム50およびロッドAssy52は、図2に示すように、それぞれ、乗員座席12の下方の左右において、前後方向に延びている。そのため、乗員は、それら回動アーム50およびロッドAssy52を跨いで車両の乗降しなければならない。本車両では、そのように乗員が乗降する箇所に、第2ロッド68が位置しており、また、第2ロッド68と回動アーム50との上下方向の間隔が、比較的小さくなっている。そのため、乗員は、比較的容易に、回動アーム50およびロッドAssy52を跨いで車両に乗降することができる。
【0058】
また、前輪14に外力が作用する場合には、前輪14が、ステアリングナックル18とともに車体に対して変位するように、回動アーム50が回動する。また、その回動に伴って、ロッドAssy52では、第1ロッド66と第2ロッド68との角度、および、第2ロッド68と第3ロッド70との角度が、それぞれ、変化することとなる。図7は、回動アーム50の回動に伴う、前輪14と車体との相対位置、および、ロッド同士の角度の変化を示している。図7(a)に示す状態から、前輪14と車体との相対位置がバウンド方向に変化すると、図7(b)に示すように、回動アーム50は上方に向かって回動することとなる。この際、第2ロッド68は、回動アーム50のアーム軸方向において、先端部の方へと変位することになる。また、図7(a)に示す状態から、前輪14と車体との相対位置がリバウンド方向に変化すると、図7(c)に示すように、回動アーム50は下方に向かって回動することとなる。この際、第2ロッド68は、回動ロッド50のアーム軸方向において、基端部の方へと変位することになる。
【0059】
上記のように、第2ロッド68はアーム軸方向に変位するため、回動アーム50に固定されたブラケット132と、第2ロッド68に固定されたブラケット134との間隔をLとすれば、その間隔Lは、回動アーム50の回動に伴って変化することになる。したがって、回動アーム50の回動に伴って、スプリング120の長さは変化することになり、スプリング120の発生する弾性反力が変化する。また、ダンパ122の長さも変化することになるため、ロッド124がシリンダ126に出入し、ダンパ122では減衰力が発生することになる。したがって、サスペンションスプリングとしてのスプリング120は、前輪14と車体との相対位置に応じた大きさの弾性反力を発生させ、また、ショックアブソーバとしてのダンパ122は、前輪14と車体との相対位置の変化速度に応じた減衰力を発生させる。なお、前述のように、アクチュエータ54は、逆効率が比較的小さくなっているため、前輪14に作用する外力によって回動アーム50を回動させる力が発生する場合でも、アクチュエータ54で発生する、その回動を妨げる抵抗力は比較的小さい。そのため、アクチュエータ54に電力が供給されていない状態では、前輪14に作用する外力に対して、回動アーム50は比較的スムースに回動することができる。なお、電力の供給によってアクチュエータ54が力を発生させ、回動アーム50が積極的に回動させられれば、車体のロール抑制,ピッチ抑制、リーン(傾斜)、意図的なスクワット,ノーズダイブ、車高調整等を行うことができる。つまり、サスペンション装置10において、アクチュエータ54は、回動アーム50に回動力を付与する回動力付与装置となっている。
【0060】
本サスペンション装置10が上記のように作動する場合においても、図7に一点鎖線で示すように、ステアリングナックル18におけるキングピン軸の路面に対する角度は、殆ど変化しない。つまり、本車両では、ロッドAssy52の各ロッドの相対位置が変化することによって、キングピン軸の角度を殆ど変化させずに、前輪14と車体とが上下方向に相対変動できるのである。
【0061】
≪衝突危険性発生時の動作≫
本サスペンション装置10では、プリクラッシュセーフティECU144において、衝突の危険性があると予知された場合に、プリクラッシュセーフティECU144からアクチュエータECU146に信号が出力される。アクチュエータECU146は、その信号が入力されると、アクチュエータ54に、回動アーム50を下方へ最大の力で回動させるための信号を出力する。したがって、車体は、図8の(a)に示す状態から(b)に示す状態へと変化させられる。つまり、車体はスクワットさせられ、乗員座席12の座面の前方が持ち上げられる。そのため、乗員の姿勢は、後方へ倒れるようにして変化させられる。本サスペンション装置10は、衝突の危険性がある場合に、このように乗員の姿勢を変化させるように作動することで、運転者によるブレーキ操作、または、プリクラッシュセイフティ機能によるブレーキ装置の作動に伴って、比較的大きな制動力が発生しても、乗員の前方への飛び出しを抑制することが可能となっている。
【変形例】
【0062】
図8は、変形例のサスペンション装置200Lの一部を示す図である。サスペンション装置200は、大まかには、実施例のサスペンション装置10と同じ構成とされているため、サスペンション装置10と異なる箇所を除いて、説明を省略する。図8(a)は、サスペンション装置200Lの側面図であり、図8(b)は、サスペンション装置200Lの平面図である。これらの図が示すように、サスペンション装置200では、第2ロッド68と回動アーム50とが、車幅方向に並んで配置されている。つまり、第2ロッド68の基端部と回動アーム50との上下方向における間隔、および、第2ロッド68の先端部と回動アーム50との上下方向における間隔は、ともに0となっている。また、回動アーム50には、スプリング120およびダンパ122の前後に、2つのブラケット202が、それぞれ、固定されている。また、第2ロッド68にも、回動アーム50に固定されたブラケット202と向かい合うようにして、2つのブラケット202が、それぞれ、固定されている。向かい合った2つのブラケット202には、棒状のリンクロッド204の端部が、それぞれ、回転可能に連結されている。したがって、サスペンション装置200では、2つのリンクロッド204と、回動アーム50と第2ロッド68とによって、四辺形リンクが構成されている。
【0063】
このように構成されたサスペンション装置200によって、実施例のサスペンション装置10と同様に、第2ロッド68のアーム軸方向への変位を伴いながら、前輪14と車体とは上下方向に相対変動することができる。また、本サスペンション装置200は、第2ロッド68と回動アーム50との上下方向の間隔が0である。そのため、実施例のサスペンション装置10を搭載した車両と比較した場合、サスペンション装置200は、上下方向における大きさがさらにコンパクトになっている。
【符号の説明】
【0064】
10:サスペンション装置 14:前輪 16:後輪 18:ステアリングナックル 50:回動アーム(アーム) 54:アクチュエータ(回動力付与装置) 66:第1ロッド(車体側ロッド) 68:第2ロッド(中間ロッド) 70:第3ロッド(キャリア側ロッド) 200:サスペンション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部が、車体に回転可能に連結されるとともに、先端部が、車輪を回転可能に保持するキャリアに回転可能に連結されて、そのキャリアの車体に対する上下方向の揺動を許容するためのアームと、
そのアームと並ぶようにしてかつそのアームの延びる方向における変位が許容された状態で、そのアームに支持された中間ロッドと、
基端部が、前記アームの基端部と上下方向に間隔を隔てた位置において車体に回転可能に連結され、先端部が、前記中間ロッドの基端部と回転可能に連結された車体側ロッドと、
基端部が、前記中間ロッドの先端部に回動可能に連結され、先端部が、前記アームの先端部と上下方向に間隔を隔てた位置において前記キャリアに回転可能に連結されたキャリア側ロッドと
を備え、
前記アームと前記中間ロッドとの上下方向における間隔が、前記アームの基端部と前記車体側ロッドの基端部との間隔および前記アームの先端部と前記キャリア側ロッドの先端部との間隔よりも小さくされたサスペンション装置。
【請求項2】
前記中間ロッドの前記アームに対する当該アームの延びる方向の変位に対して弾性反力を付与するスプリングを、さらに備えた請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
前記スプリングが、前記中間ロッドの一部分と、前記アームの一部分との間に配設された請求項2に記載のサスペンション装置。
【請求項4】
前記中間ロッドの前記アームに対する当該アームの延びる方向の変位に対して減衰力を付与するダンパを、さらに備えた請求項1ないし請求項3に記載のサスペンション装置。
【請求項5】
前記ダンパが、前記中間ロッドの一部分と、前記アームの一部分との間に配設された請求項4に記載のサスペンション装置。
【請求項6】
車体に設けられ、前記アームと前記車体側ロッドとの一方の基端部周りに回動させるための力である回動力を付与する回動力付与装置を、さらに備えた請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載のサスペンション装置。
【請求項7】
当該サスペンション装置が、前記回動力付与装置を制御する制御装置をさらに備え、
その制御装置が、車両の前方衝突が予測される場合に、車体の前方側の部分が後方側の部分に対して持ち上がる向きの前記回動力を付与するように、前記回動力付与装置を制御するように構成された請求項6に記載のサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111305(P2012−111305A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260768(P2010−260768)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】