説明

サポートプレートの洗浄方法

【課題】サポートプレートの洗浄後に廃溶液を発生させること無く、且つ安価に処理することが可能なサポートプレートの洗浄方法を実現する。
【解決手段】サポートプレート7にドライアイス粒子4を接触させて、サポートプレート7に付着した有機物および金属を除去する二酸化炭素ブラスト処理工程を含み、サポートプレート7は、基板が剥離された後のサポートプレートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄化される基板に貼り合せることによって当該基板を支持するためのサポートプレートの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に搭載される半導体チップの小型化、薄型化および高集積化への要求が高まっている。このため、半導体チップの基礎となる基板を研削して、薄板化する必要がある。しかし、研削することによって基板の強度は弱くなる。その結果、基板にクラックおよび反りが生じやすくなる。また、薄板化された基板は、搬送を自動化することができないため、人手によって行なわなければならず、その取り扱いが煩雑であった。
【0003】
そのため、研削する基板をガラス製のサポートプレートに接着剤を用いて貼り合せることによって、基板の強度を保持し、クラックの発生および基板に反りが生じることを防止する方法が開発されている(特許文献1の記載を参照)。
【0004】
特許文献1に記載の方法では、サポートプレートに有機物等の付着物が付着していると、基板とサポートプレートとの間に僅かな隙間が生じ、基板が欠損してしまう。このため、基板が貼着される前の前処理として、サポートプレートを洗浄する必要がある。
【0005】
また、通常、サポートプレートの表面積は、基板の表面積と同一以上の大きさを有している。このため、サポートプレートに支持された状態の基板に配線を形成すると、サポートプレートの周縁部における基板に覆われていない露出部分にも金属が付着してしまう。さらに、基板を剥離した後のサポートプレートには、接着剤が残存してしまう。このため、サポートプレートを再利用するためには、基板を剥離した後のサポートプレートから金属や有機物等の付着物を完全に除去する必要がある。
【0006】
一般に、サポートプレートに付着した金属や有機物は、酸、アルカリ、有機溶剤等の薬液を用いて除去することができる。例えば、金属は王水を用いて除去することができる。また、有機物は有機溶剤または酸を用いて除去することができる。
【0007】
また、ガラス基板の洗浄方法として、特許文献2には、加熱した硫酸と過酸化水素水との混合液でガラス基板を処理することにより、ガラス基板に付着した金属や有機物を除去する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、ガラス基板を酸で洗浄することにより、ガラス基板に付着した付着物を除去する方法が開示されている。
【0009】
また、金属膜の除去方法として、特許文献4には、回路基板に形成された金属膜にレーザ光を照射して金属膜を溶融除去する際に、レーザ光の熱によって回路基板が熱損しないように、レーザ光を照射する部分をレーザ光が通過する液体で覆う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−191550号公報(平成17年7月14日公開)
【特許文献2】特開平9−227170号公報(1997年9月2日公開)
【特許文献3】特開昭62−235236号公報(1987年10月15日公開)
【特許文献4】特開昭63−180393号公報(1988年7月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜4に開示された従来技術では、サポートプレートに付着した有機物および金属膜を除去することはできるものの、サポートプレートの洗浄後に廃溶液が発生するので、廃溶液を処理する手間とコストが掛かるという問題を有している。また、洗浄に酸、過酸化水素水、有機溶剤等の薬剤を用いる場合は、洗浄に掛かるコストが高くなるという問題を有している。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、サポートプレートの洗浄後に廃溶液を発生させること無く、且つ安価に処理することが可能なサポートプレートの洗浄方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係るサポートプレートの洗浄方法は、薄化される基板に貼り合せることによって当該基板を支持するためのサポートプレートを洗浄する方法であって、上記サポートプレートにドライアイス粒子を接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物および金属を除去する二酸化炭素ブラスト処理工程を含み、上記サポートプレートは、上記基板が剥離された後のサポートプレートであることを特徴としている。
【0014】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法では、液化炭酸ガスをマイクロドライアイス化することによって生成したドライアイスの微粒子をサポートプレートに接触させることによって、サポートプレートに付着した有機物および金属を除去する。サポートプレートに接触したドライアイスの微粒子は昇華するので、洗浄後に廃溶液等の処理をする必要がない。それゆえ、本発明に係るサポートプレートの洗浄方法によれば、サポートプレートの洗浄後に廃溶液を発生させること無く、且つ安価にサポートプレートを洗浄することができる。
【0015】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法では、上記サポートプレートに酸素プラズマを接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物を除去する酸素プラズマ処理工程をさらに含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法では、上記酸素プラズマ処理工程の後に上記二酸化炭素ブラスト処理工程を行なうことが好ましい。
【0017】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法では、上記サポートプレートを加熱しながら、当該サポートプレートに上記ドライアイス粒子を接触させることが好ましい。
【0018】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法では、上記サポートプレートにレーザ光を照射して、当該サポートプレートに付着した金属を除去するレーザ処理工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法は、薄化される基板に貼り合せることによって当該基板を支持するためのサポートプレートを洗浄する方法であって、上記サポートプレートにドライアイス粒子を接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物および金属を除去する二酸化炭素ブラスト処理工程を含み、上記サポートプレートは、上記基板が剥離された後のサポートプレートである構成である。
【0020】
それゆえ、本発明に係るサポートプレートの洗浄方法によれば、サポートプレートの洗浄後に廃溶液を発生させること無く、且つ安価にサポートプレートを洗浄することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】COブラスト装置の概略の構成を示す図である。
【図2】本発明の処理対象となるサポートプレートの一例を表す図であり、孔あきサポートプレートを模式的に示す図である。
【図3】積層体の構成の一例を模式的に表す図である。
【図4】本実施形態に係るサポートプレート洗浄装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。尚、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0023】
〔1.サポートプレートの洗浄方法〕
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法について以下に説明する。本発明に係るサポートプレートの洗浄方法は、薄化される基板に貼り合せることによって当該基板を支持するためのサポートプレートを洗浄する方法であって、上記サポートプレートにドライアイス粒子を接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物および金属を除去する二酸化炭素ブラスト処理工程を含む。本発明に係るサポートプレートの洗浄方法において、処理対象となるサポートプレートは、基板が剥離された後のサポートプレートである。
【0024】
尚、本発明に係るサポートプレートの洗浄方法は、薄化される基板に貼り合せることによって当該基板を支持するための、あらゆるサポートプレートを処理対象としている。従って、サポートプレートの材質は、貼り合せられる基板を保持できる強度を有するものであればよく、例えば、ガラス製、金属製、セラミック製、またはシリコン製のサポートプレートが意図される。
【0025】
ここで、本発明の処理対象となるサポートプレートの一例を、図2に基づいて説明する。図2は、孔あきサポートプレートを模式的に示す図である。
【0026】
図2に示されるように、孔あきサポートプレートとは、サポートプレートの厚さ方向に貫通する貫通孔が複数設けられているサポートプレートである。具体的には、直径0.3mm〜0.5mmの貫通孔が、0.5mm〜1.0mmのピッチで形成されている。かかる貫通孔は、サポートプレートから基板を剥離する際に、サポートプレートと基板との間の接着剤層を溶解させるための溶剤を供給するための穴である。
【0027】
また、基板が貼り付けられたサポートプレート(以下「積層体」と称する)の構成の一例を図3に基づいて説明する。図3は、積層体18の構成の一例を模式的に表す図である。積層体18においては、サポートプレート7に接着剤を用いて基板15が貼り付けられ、基板15にはダイシングテープ16がさらに貼着されている。ダイシングテープ16は、弛みを防止するためのダイシングフレーム17によって保持されている。基板15のサポートプレート7に貼着される面には、必要に応じて回路等が形成されている。
【0028】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法は、上記二酸化炭素ブラスト処理工程に加えて、上記サポートプレートに酸素プラズマを接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物を除去する酸素プラズマ処理工程をさらに包含していてもよい。酸素プラズマ処理工程では、サポートプレートに酸素プラズマを接触させることによって、サポートプレートに付着した有機物を除去することができる。このため、二酸化炭素ブラスト処理工程と酸素プラズマ処理工程とを組み合わせることによって、サポートプレートに付着した有機物をより効率よく除去することができる。
【0029】
また、本発明に係るサポートプレートの洗浄方法は、サポートプレートにレーザ光を照射して、当該サポートプレートに付着した金属を除去するレーザ処理工程をさらに包含していてもよい。レーザ処理工程をさらに組み合わせることによって、サポートプレートに付着した金属をより効率よく除去することができる。
【0030】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法において、上記「二酸化炭素ブラスト処理工程」と上記「酸素プラズマ処理工程」とを組み合わせる場合は、どちらの工程を先に行ってもよいが、上記「酸素プラズマ処理工程」の後に上記「二酸化炭素ブラスト処理工程」を行なうことが好ましい。具体的に説明すると、二酸化炭素ブラスト処理工程では、サポートプレートの貫通孔(図2を参照)に付着した有機物の除去に時間を要する。これに対し、酸素プラズマ処理工程では、サポートプレートの孔に付着した有機物を効率よく除去することができる。それゆえ、まず酸素プラズマ処理工程を行ない、サポートプレートの孔および表面に付着している有機物を除去し、その後、二酸化炭素ブラスト処理工程をさらに行ないサポートプレートに残存している有機物および金属を除去することが好ましい。
【0031】
また、上記「二酸化炭素ブラスト処理工程」と、上記「酸素プラズマ処理工程」と、上記「レーザ処理工程」とを組み合わせる場合は、例えば、「酸素プラズマ処理工程」、「二酸化炭素ブラスト処理工程」、「レーザ処理工程」の順に行ってもよいし、「二酸化炭素ブラスト処理工程」、「酸素プラズマ処理工程」、「レーザ処理工程」の順に行ってもよいし、「レーザ処理工程」を最初に行ってもよい。
【0032】
ここで、上記「二酸化炭素ブラスト処理工程」、上記「酸素プラズマ処理工程」、上記「レーザ処理工程」について、以下に説明する。
【0033】
(1−1.二酸化炭素ブラスト処理工程)
二酸化炭素ブラスト処理工程(以下、「COブラスト処理工程」ともいう)は、基板が剥離された後のサポートプレートにドライアイス粒子を接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物および金属を除去する工程である。
【0034】
ここで、上記「ドライアイス粒子」とは、その平均粒径が、0.5mm以下のドライアイスの粒子が意図される。上記「有機物」には、例えば、サポートプレートと基板とを貼り合わせるために用いられた接着剤(仮止剤)の残渣が含まれる。具体的には、上記「有機物」には、アクリル系接着剤、マレイミド系接着剤、炭化水素系接着剤等の残渣が含まれる。アクリル系接着剤とは、例えば、特開2008−63464号、特開2008−133405号に記載されたアクリル系樹脂を用いた接着剤が挙げられ、マレイミド系接着剤としては、例えば、特開2010−24435号に記載されたマレイミド骨格を主鎖に有する樹脂を用いた接着剤等が挙げられる。炭化水素系接着剤としては、例えば、特開平9−176398号に記載された、環状オレフィン系樹脂を主鎖に含む樹脂を用いた接着剤が挙げられる。また、上記「金属」としては、一般に基板に回路を形成するために用いられる金属が意図される。例えば、Al、Ti、Zr、Cd、Au、Ag、Pt、Pd、Zn、Ni、Cu、Sn等を挙げることができる。
【0035】
二酸化炭素ブラスト処理工程において、サポートプレートにドライアイス粒子を接触させる手段としては、従来公知の二酸化炭素ブラスト装置(COブラスト装置)を用いることができる。COブラスト装置としては、枚葉式であってもよくバッチ式であってもよい。
【0036】
ここで、COブラスト装置の構成の一例を、図1に基づき説明する。図1は、COブラスト装置10の概略の構成を示す図である。図1において、符号4は、点で表した個々のドライアイス粒子の集合を指している。符号6が指す矢印は、キャリアエアの噴射方向を表している。
【0037】
図1に示すように、COブラスト装置10においては、液化炭酸ガスボンベ1に加圧されて貯留されている液化炭酸ガスが固化ノズル2から噴射されると、液化炭酸ガスの体積が膨張し、温度が急激に低下する。その結果、液化炭酸ガスはドライアイス粒子4となる。このようにして生成されたドライアイス粒子4は、コンプレッサ5において加圧された高圧のキャリアエアと共に、噴射ノズル3からサポートプレート7に対して噴射される。
【0038】
ここで、ドライアイス粒子と共に噴射されるキャリアエアの圧力は、通常、0.5〜30MPaであり、0.8〜1.2MPaであることが好ましい。キャリアエアの圧力が上記範囲であれば、噴射ノズルから噴射されるドライアイス粒子の流速を向上させ、サポートプレートを洗浄するに十分な投射圧力をドライアイス粒子に付与することができる。尚、上記「キャリアエアの圧力」とは、キャリアエアを加圧するコンプレッサの表示を読み取った値である。上記「キャリアエア」としては、例えば、エア(空気)、N等を用いることができる。
【0039】
また、噴射ノズル3とサポートプレート7との距離(以下、「ノズル距離」ともいう)は、通常、10〜100mmであり、20〜50mmであることが好ましい。尚、上記「ノズル距離」とは、噴射ノズル3の噴射口からサポートプレート7の上面までの距離を指している。
【0040】
また、噴射ノズル3の外径(以下、「噴射ノズル外径」ともいう)は、その直径が、通常、1〜20mmであり、5〜10mmであることが好ましい。尚、上記「噴射ノズル外径」とは、噴射ノズル3の噴射口の外径を指している。
【0041】
尚、サポートプレートに対してドライアイス粒子を連続して接触させ続けると、サポートプレートが冷却され過ぎてサポートプレートに結露が生じ易くなる。サポートプレートに生じた結露は、ドライアイス粒子によって冷却されて凍結する。凍結した結露はサポートプレートに付着している付着物を覆うので、付着物の除去効率が低下する。このため、サポートプレートの同じ領域に対してドライアイス粒子を連続して接触させ続ける時間(接触時間)がなるべく短くなるようにして、サポートプレートが冷却され過ぎないようにすることが好ましい。
【0042】
具体的には、上記「接触時間」を、1〜60秒間とすることが好ましく、1〜20秒間とすることがより好ましい。
【0043】
二酸化炭素ブラスト処理工程では、上述した範囲の接触時間においてドライアイス粒子を連続して接触させ続ける処理(ドライアイス接触処理)を、サポートプレートの同じ領域に対して複数回繰り返すことによって、サポートプレートに付着した付着物を除去することができる。この場合は、ドライアイス接触処理とドライアイス接触処理との間に同領域に対してドライアイス粒子を接触させない休止期間を数秒間〜数分間ずつ設けることが好ましい。これによって、サポートプレートにおける結露が発生しにくい条件で、サポートプレートに付着した付着物を除去することができる。尚、ドライアイス接触処理を繰り返す回数(処理回数)については、サポートプレートにおける付着物の付着の程度に応じて適宜設定することができる。つまり、サポートプレートに付着物が軽度に付着している場合は、少ない処理回数であっても十分に付着物を除去し得るし、サポートプレートに付着物が重度に付着している場合は、付着物の除去の程度に応じて処理回数を増やせばよい。
【0044】
噴射ノズル外径やノズル距離等によるが、噴射ノズルおよびサポートプレートの位置を固定した状態でドライアイス粒子を接触させることができる範囲は限られている。このため、例えば、上述した接触時間となるような速度でサポートプレートに対して噴射ノズルを移動させる、または噴射ノズルに対してサポートプレートを回転させて、サポートプレートにおけるドライアイス粒子が接触する位置を移動させることによって、サポートプレートの全面に付着している付着物を除去することができる。
【0045】
また、二酸化炭素ブラスト処理工程では、サポートプレートの温度が室温以上になるように加熱しながら、サポートプレートにドライアイス粒子を接触させることによって、サポートプレートに結露が発生し難くなるため好ましい。上記「サポートプレートの温度」が室温〜100℃の範囲であれば、サポートプレートにおける結露が発生しにくい条件で、サポートプレートに付着した付着物を効率よく除去することができる。尚、上記「室温」とは、23℃〜25℃が意図される。
【0046】
一実施形態において、枚葉式のCOブラスト装置を用いた場合の処理条件は、例えば、キャリアエアの圧力は1.0MPa、処理時間は、(接触2秒間+休止2秒間)×50回、ノズル距離は30mm、噴射ノズル外径はφ7mmである。
【0047】
二酸化炭素ブラスト処理工程において、ドライアイス粒子をサポートプレートに接触させる方法としては、有機物および金属を除去できる条件であればよく、例えば、枚葉式であってもよいし、バッチ式であってもよい。また、二酸化炭素ブラスト処理工程では、サポートプレートの両面にドライアイス粒子を接触させてもよいし、サポートプレートの片面だけにドライアイス粒子を接触させてもよい。二酸化炭素ブラスト処理工程を枚葉式で行ない、サポートプレートの両面にドライアイス粒子を接触させる場合には、サポートプレートをピンアップすることが好ましい。
【0048】
(1−2.酸素プラズマ処理工程)
酸素プラズマ処理工程は、サポートプレートに酸素プラズマを接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物を除去する工程である。上記「有機物」には、例えば、サポートプレートと基板とを貼り合わせるために用いられた接着剤(仮止剤)の残渣が含まれる。具体的には、上記「有機物」には、アクリル系接着剤、マレイミド系接着剤、炭化水素系接着剤等の残渣が含まれる。
【0049】
上記酸素プラズマ処理工程においてサポートプレートに酸素プラズマを接触させる手段としては、従来公知の酸素プラズマ発生装置を用いることができる。酸素プラズマ発生装置の代表的な方式として、枚葉式とバッチ式とがあるが、本発明はこれに限定されない。
【0050】
酸素プラズマの処理条件としては、サポートプレートに付着している有機物を除去できる条件であればよい。例えば、サポートプレートに接触させる酸素プラズマの出力は、バッチ式の場合、通常、500〜2000Wであり、800〜1500Wであることが好ましい。また、枚葉式の場合、サポートプレートに接触させる酸素プラズマの出力は、通常、1000〜3000Wであり、1500〜2500Wであることが好ましい。
【0051】
サポートプレートに接触させる酸素プラズマの圧力は、通常、40〜266Paであり、67〜200Paであることが好ましい。
【0052】
サポートプレートに接触させる酸素プラズマの酸素流量は、バッチ式の場合、通常、100〜1000sccmであり、200〜800sccmであることが好ましい。また、枚葉式の場合、サポートプレートに接触させる酸素プラズマの酸素流量は、通常、1000〜5000sccmであり、2000〜4000sccmであることが好ましい。尚、上記単位「sccm」とは、「standard cc/min」の略であり、1atm(大気圧1,013hPa)、一定温度において規格化された酸素流量を表している。
【0053】
サポートプレートに接触させる酸素プラズマの処理時間は、バッチ式の場合、通常、20〜90分であり、30〜60分であることが好ましい。また、枚葉式の場合、サポートプレートに接触させる酸素プラズマの処理時間は、通常、5〜30分であり、10〜20分であることが好ましい。
【0054】
一実施形態において、酸素プラズマ発生装置としてバッチ式を用いた場合の処理条件は、例えば、出力900W、圧力133Pa(1Torr)、酸素流量350sccm、処理時間60分である。
【0055】
別の一実施形態において、酸素プラズマ発生装置として枚葉式を用いた場合の処理条件は、例えば、出力2000W、圧力67Pa(0.5Torr)、酸素流量3000sccm、処理時間10分、ステージ温度240℃である。
【0056】
酸素プラズマ処理工程において、酸素プラズマの処理方法としては、有機物を除去できる条件であればよく、例えば、枚葉式であってもよいし、バッチ式であってもよい。また、酸素プラズマ処理工程では、サポートプレートの両面に酸素プラズマを接触させてもよいし、サポートプレートの片面だけに酸素プラズマを接触させてもよい。酸素プラズマ処理工程を枚葉式で行ない、サポートプレートの両面に酸素プラズマを接触させる場合には、サポートプレートをピンアップすることが好ましい。
【0057】
(1−3.レーザ処理工程)
レーザ処理工程は、サポートプレートにレーザ光を照射して、当該サポートプレートに付着した金属を除去する工程である。上記レーザ処理工程で除去される金属としては、一般に基板に回路を形成するために用いられる金属が意図される。例えば、Al、Ti、Zr、Cd、Au、Ag、Pt、Pd、Zn、Ni、Cu、Sn等を挙げることができる。
【0058】
上記レーザ処理工程において照射されるレーザ光としては、ピークパワーが高い発振波長のレーザ光であればよい。
【0059】
レーザ光の照射条件としては、金属を除去できる条件であればよく、サポートプレートに照射されるレーザ光の周波数は、レーザ波長が1000nm前後の場合、10kHz〜100kHzであることが好ましい。また、レーザ波長が500nm前後の場合、サポートプレートに照射されるレーザ光の周波数は、通常1Hz〜60Hzであり、20Hz〜40Hzであることが好ましい。
【0060】
サポートプレートに照射されるレーザ光の照射出力は、レーザ波長が1000nm前後の場合、10〜200mJであることが好ましい。また、レーザ波長が500nm前後の場合、サポートプレートに照射されるレーザ光の照射出力は、通常10〜100mJであり、20〜30mJであることが好ましい。
【0061】
一実施形態において、レーザ照射装置として、レーザ波長1000nmのレーザを用いた場合の処理条件は、レーザ出力160mJ、周波数50kHzである。
【0062】
別の一実施形態において、レーザ照射装置として、レーザ波長500nmのレーザを用いた場合の処理条件は、レーザ出力25mJ、周波数30Hzである。
【0063】
レーザ処理工程において、レーザ光の照射方法としては、サポートプレートに付着した金属を除去できる条件であればよい。但し、除去された金属が別の場所に付着することを防ぐ観点から、上記サポートプレートにおける金属が付着している面の背面側から、当該サポートプレートにレーザ光を照射することがより好ましい。また、レーザ光の照射方法としては、枚葉法であってもよいし、バッチ法であってもよい。
【0064】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法によって、サポートプレートから有機物および金属が除去されたことは、顕微鏡下において目視でサポートプレートを観察し、付着物の有無を確認することによって評価することができる。また、目視での確認以外に、例えば、サポートプレートの付着物を組成分析する方法、サポートプレートを電子線解析する方法、エネルギー分散X線分光法(energy dispersive X-ray spectrometry:EDX)等によってもサポートプレートから有機物および金属が除去されたことを評価することができる。
【0065】
〔2.サポートプレート洗浄装置〕
本発明の実施形態であるサポートプレート洗浄装置の構成の一例を、図4に基づいて説明する。図4は、本実施形態に係るサポートプレート洗浄装置100の構成の一例を示す図である。サポートプレート洗浄装置100は、基板が剥離された後のサポートプレートを洗浄するために用いられる。
【0066】
サポートプレート洗浄装置100は、酸素プラズマ処理ユニット61、二酸化炭素ブラスト処理ユニット62、搬送ロボット42、およびカセットステーション30を備えている。カセットステーション30には、カセット31および32が格納されている。尚、本明細書において、上記「カセット」には、洗浄処理前または洗浄処理後のサポートプレート7が格納されている。
【0067】
基板が剥離された後のサポートプレート7は、酸素プラズマ処理ユニット61によってサポートプレート7に付着している有機物が除去され、二酸化炭素ブラスト処理ユニット62によってサポートプレート7に付着している有機物および金属が除去される。
【0068】
二酸化炭素ブラスト処理ユニット62は、サポートプレート7にドライアイス粒子を接触させることができるように構成されている。これにより、サポートプレート7にドライアイス粒子を接触させ、サポートプレート7に付着した有機物および金属を除去することができる。二酸化炭素ブラスト処理ユニット62としては、従来公知のCOブラスト装置を用いることができる。COブラスト装置は、バッチ式、枚葉式等を用いることができる。
【0069】
また、二酸化炭素ブラスト処理ユニット62には、サポートプレート7を加熱するための加熱装置(図示しない)と、サポートプレート7を回転させるための回転ステージ(図示しない)とがさらに備えられていることが好ましい。これにより、サポートプレートを加熱しながらドライアイス粒子をサポートプレート7に接触させることができ、サポートプレート7に結露が生じにくくすることができる。また、サポートプレート7を回転させながらドライアイス粒子を接触させることができるので、ドライアイス粒子の噴射ノズルの大きさを変えることなく、サポートプレート7の全面にドライアイス粒子を照射することができる。
【0070】
酸素プラズマ処理ユニット61は、サポートプレート7に酸素プラズマを接触させることができるように構成されている。これにより、サポートプレート7に酸素プラズマを接触させ、サポートプレート7に付着した有機物を除去することができる。酸素プラズマ処理ユニット61としては、従来公知の酸素プラズマ発生装置を用いることができる。酸素プラズマ発生装置は、バッチ式、枚葉式等を用いることができる。
【0071】
また、酸素プラズマ処理ユニット61には、枚葉式の場合、ピンアップ装置(図示しない)がさらに備えられていることが好ましい。これにより、サポートプレート7をピンアップした状態で酸素プラズマを接触させることができる。このため、サポートプレート7の両面に酸素プラズマを接触させることができ、有機物を効率よく除去することができる。
【0072】
酸素プラズマ処理ユニット61から二酸化炭素ブラスト処理ユニット62へのサポートプレート7の搬送は、搬送ロボット42によって行われる。搬送ロボット42は、搬送ロボット42の軸を中心として回転可能であり、2つの連結アーム44aおよびハンド44bを有する。連結アーム44aは、関節での回転動作により伸縮動作をする。ハンド44bは、連結アーム44aの先端に設けられ、カセット31・32またはサポートプレート7を保持する役割を果たす。搬送ロボット42は、連結アーム44aの伸縮動作と軸42aを中心とした回転動作とにより、水平面内でのカセット31・32またはサポートプレート7の移動を可能にする。
【0073】
本実施形態のサポートプレート洗浄装置100では、酸素プラズマ処理ユニット61においてサポートプレート7に付着している有機物が除去された後に、二酸化炭素ブラスト処理ユニット62においてサポートプレート7に付着している有機物および金属がさらに除去されるように酸素プラズマ処理ユニット61と二酸化炭素ブラスト処理ユニット62とが配置されていることが好ましい。
【0074】
本実施形態のサポートプレート洗浄装置100は、レーザ処理ユニット(図示しない)をさらに備えていてもよい。レーザ処理ユニットをさらに備えることによって、二酸化炭素ブラスト処理ユニット62における処理後にサポートプレート7に残存している金属をさらに除去することができる。
【0075】
レーザ処理ユニットは、サポートプレートにレーザ光を照射することができるように構成されている。これにより、サポートプレートにレーザ光を照射し、サポートプレートに付着した金属を除去することができる。レーザ処理ユニットとしては、従来公知のレーザ照射装置を用いることができる。
【0076】
尚、本実施形態のサポートプレート洗浄装置100は、サポートプレートから基板を剥離するための剥離装置、および剥離装置において剥離された基板を洗浄するための基板洗浄装置と組み合わせることができる。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0079】
〔実施例1〕
(評価用サポートプレート)
本実施例では、半導体製造工程で使用されたサポートプレートから基板を剥離後、乾燥させたものを評価用サポートプレートとして用いた。評価用サポートプレートには、有機物としてアクリル系接着剤が、金属としてアルミニウム、銅、金、ニッケル等が付着している。評価用サポートプレートは、無アルカリガラス製であり、サイズは8インチである。
【0080】
(処理フロー)
実施例1では、二酸化炭素ブラスト処理工程のみを行なった。
【0081】
(評価方法)
有機物および金属の除去は、顕微鏡下においてサポートプレートを目視によって確認した。
【0082】
(二酸化炭素ブラスト処理工程)
COブラスト装置を用い、処理方法としては、枚葉式で行った。具体的には、サポートプレートの付着物が付着している面にドライアイス粒子を2秒間接触させた後に、ドライアイス粒子の接触を2秒間休止する操作を1サイクルとし、これを50回繰り返した。その他の処理条件は以下に示すとおりである.
キャリアエアの圧力:1.0MPa
噴射ノズル外径:φ7mm
ノズル距離:30mm。
【0083】
(結果)
二酸化炭素ブラスト処理工程後に、有機物および金属の除去を顕微鏡下で目視によって確認した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1の丸印は、顕微鏡下で目視によりサポートプレートを観察し、サポートプレートに有機物および金属の付着が認められないことを表している。
【0086】
表1に示すように、ドライアイス粒子を接触させることによってサポートプレートに付着した有機物および金属を除去し得ることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係るサポートプレートの洗浄方法によれば、サポートプレートの洗浄後に廃溶液を発生させること無く、且つ安価にサポートプレートを洗浄することができる。本発明に係るサポートプレートの洗浄方法は、サポートプレートを用いる全ての電子機器産業において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 液化炭酸ガスボンベ
2 固化ノズル
3 噴射ノズル
4 ドライアイス粒子
5 コンプレッサ
7 サポートプレート
10 COブラスト装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄化される基板に貼り合せることによって当該基板を支持するためのサポートプレートを洗浄する方法であって、
上記サポートプレートにドライアイス粒子を接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物および金属を除去する二酸化炭素ブラスト処理工程を含み、
上記サポートプレートは、上記基板が剥離された後のサポートプレートであることを特徴とするサポートプレートの洗浄方法。
【請求項2】
上記サポートプレートに酸素プラズマを接触させて、当該サポートプレートに付着した有機物を除去する酸素プラズマ処理工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のサポートプレートの洗浄方法。
【請求項3】
上記酸素プラズマ処理工程の後に上記二酸化炭素ブラスト処理工程を行なうことを特徴とする請求項2に記載のサポートプレートの洗浄方法。
【請求項4】
上記サポートプレートを加熱しながら、当該サポートプレートに上記ドライアイス粒子を接触させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のサポートプレートの洗浄方法。
【請求項5】
上記サポートプレートにレーザ光を照射して、当該サポートプレートに付着した金属を除去するレーザ処理工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のサポートプレートの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230084(P2011−230084A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104522(P2010−104522)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】