説明

ザッピング素子及び半導体集積回路

【課題】ザッピング素子の破壊電圧を低電圧化すると共に、その製造コストを低減する。
【解決手段】ザッピング素子100のゲート電極14の幅は部分的に狭くなるように加工されている。即ち、ゲート電極14は、その中央部に、小さい第1のゲート幅W1を持った第1のゲート電極部分14Nと、その両側に、大きい第2のゲート幅W2を持った第2のゲート電極部分14Wを有して構成されている。したがって、第1のゲート電極部分14Nに対応したチャネル領域CHの第1のチャネル長LC1は、第2のゲート電極部分14Wに対応したチャネル領域CHの第2のチャネル長LC2より短くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路定数等の変更を行うためのザッピング素子と、そのザッピング素子を内蔵した半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路の回路定数等の変更を行うためのザッピング素子として、ポリシリコン・ザッピング素子、ツェナーザッピング素子が知られている。
【0003】
ポリシリコン・ザッピング素子は、ポリシリコン配線に局所的にレーザーを照射するなどして、ポリシリコン配線を加熱、溶断してポリシリコン配線の電流経路を遮断することにより、回路定数等の変更(トリミング)を行うものである。
【0004】
一方、ツェナーザッピング素子は、ツェナーダイオードのPN接合に接合耐圧以上の破壊電圧を印加して、そのPN接合を熱破壊することにより、アノード・カソード間を短絡させる。これにより、電流経路を変更して、回路定数等を変更するというものである。
【0005】
ポリシリコン・ザッピング素子は、特許文献1に記載され、ツェナーザッピング素子は特許文献2、3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−138839号公報
【特許文献2】特開2007−194458号公報
【特許文献3】特開2000−340752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリシリコン・ザッピング素子の場合、ポリシリコン配線の溶断時に、上層絶縁膜又は下層絶縁膜にクラックが発生し、このクラックにポリシリコン破片が入り込み、この破片が一旦溶断されたポリシリコン配線を再接続してしまうおそれがあった。この再接続を回避するために、ポリシリコン配線上のパッシベーション膜に開口部を形成し、ポリシリコン破片を外部に放出することが考えられる。
【0008】
しかしながら、パッシベーション膜に開口部を形成すると、耐湿性等の信頼性の低下を招き、また、開口部形成のための工程が増えるため製造コストが高くなるという問題があった。
【0009】
一方、ツェナーザッピング素子の場合、加熱により溶解した金属片はSi−SiO2界面に入り込むので、上述のようなクラックの発生は抑えられるが、NPN−TrのEB接合などのPN接合を破壊するためには、破壊電圧をPN接合耐圧以上の高電圧にする必要がある。破壊電圧が高電圧になると、ザッピングする抵抗、トランジスタ等の他の素子も高耐圧で形成する必要が生じる。
【0010】
そこで、本発明はザッピング素子の破壊電圧を低電圧化し、しかもその製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のザッピング素子は、第1導電型の半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極の端部に整合して、前記半導体層の表面に形成された第2導電型のソース層及びドレイン層と、前記ソース層と前記ドレイン層の間の前記半導体層の表面に形成されたチャネル領域と、を備え、前記ゲート電極のソース・ドレイン方向の長さは部分的に小さくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ザッピング素子の破壊電圧を低電圧化し、しかもその製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるザッピング素子の平面図である。
【図2】本発明の実施形態によるザッピング素子の断面図である。
【図3】本発明の実施形態によるザッピング素子の破壊後の断面図である。
【図4】本発明の実施形態によるザッピング素子の断面図である。
【図5】本発明の実施形態によるザッピング素子を応用したトランジスタ回路の回路である。
【図6】本発明の実施形態によるザッピング素子を応用した抵抗回路の回路である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態によるザッピング素子100を図1乃至図4に基づいて説明する。図1はザッピング素子100の平面図である。図2(A)は図1のA−A線に沿った断面図、図2(B)は図1のB−B線に沿った断面図である。
【0015】
ザッピング素子100は、基本的にはMOSトランジスタ構造を用いたものであり、P−型の半導体基板11、LOCOS膜12、ゲート絶縁膜13、ゲート電極14、N+型のドレイン層15、N+型のソース層16、チャネル領域CH、P+型コンタクト層17、層間絶縁膜18、ドレイン電極20、ソース電極21、保護膜22を含んで構成される。
【0016】
P−型の半導体基板11(本発明の「半導体層」の一例)は、例えば、P−型シリコン基板で形成される。ゲート絶縁膜13は、半導体基板11の表面上に形成され、ゲート絶縁膜13上に、ポリシリコン等からなるゲート電極14が形成されている。ドレイン層15は、ゲート電極14の一方の端に整合して半導体基板11の表面に形成され、ソース層16は、ゲート電極14の他方の端に整合して半導体基板11の表面に形成されている。つまり、ドレイン層15及びソース層16はゲート電極14をマスクとしたイオン注入により、自己整合的(セルフアライン)に形成されている。チャネル領域CHは、ゲート電極14の下であって、ドレイン層15とソース層16の間の半導体基板11の表面に形成される。なお、LOCOS膜12は、素子分離のために、ドレイン層15及びソース層16等の活性化領域を囲んで形成される。
【0017】
ドレイン電極20は、層間絶縁膜18の中に形成されたコンタクトホールCT1,CT2,CT5等を通して、ドレイン層15に電気的に接続されている。ソース電極21は、層間絶縁膜18の中に形成されたコンタクトホールCT3,CT6等を通して、ソース層16に電気的に接続されている。ドレイン電極20、ソース電極21はアルミニウム等の金属で形成される。
【0018】
そして、ゲート電極14の幅は部分的に狭くなるように加工されている。即ち、ゲート電極14は、図1の平面図で見て、その中央部に、小さい第1のゲート幅W1を持った第1のゲート電極部分14Nと、その両側に、大きい第2のゲート幅W2を持った第2のゲート電極部分14Wを有して構成されている(W1<W2)。
【0019】
MOSトランジスタ構造においては、ドレイン層15とソース層16はゲート電極14に整合して形成されていることから、第1のゲート電極部分14Nに対応したチャネル領域CHの第1のチャネル長LC1は、第2のゲート電極部分14Wに対応したチャネル領域CHの第2のチャネル長LC2より短くなっている(LC1<LC2)。
【0020】
これにより、ドレイン電極20に破壊電圧を印加した時に、第1のチャネル長LC1のチャネル領域CHの部分にチャネル電流(ドレイン層15とソース層16の間に流れる電流)が集中し、その部分とその周辺が集中して加熱されることから、破壊電圧を下げることができる。例えば、第1のゲート幅W1を0.4μm、第2のゲート幅W2を0.4μmとすると、破壊電圧は10V程度になる。この破壊電圧は、通常のツェナーザッピング素子の破壊電圧20V程度のおよそ半分である。
【0021】
図3は、図2(A)に対応する図であり、ドレイン電極20に破壊電圧を印加して、PN接合を破壊した状態の一例を示している。図示のように、破壊電圧に伴うチャネル電流により発生した熱により、ドレイン電極20又はソース電極21からアルミニウム等の電極材料が溶出し、その溶出した電極材料形成によって、チャネル領域CHを覆う短絡金属層19が形成されている。これにより、ドレイン層15とソース層16は、短絡金属層19を介して恒久的に電気的に短絡されている。
【0022】
なお、図1の構造では、小さい第1のゲート幅W1を持った第1のゲート電極部分14Nをゲート電極14の中央部に形成しているが、第1のゲート電極部分14Nは、ゲート電極14の任意の箇所に形成することができる。
【0023】
このように、ザッピング素子100によれば、通常のツェナーザッピング素子に比して破壊電圧を低減できる。これにより、他の素子を高耐圧構造で形成する必要がなくなる。また、ザッピング素子100の構造はMOSトランジスタの工程で形成することができるので、MOSトランジスタを含むICでは製造工程の増加はなく、製造コストを抑えることができる。また、微細化MOSプロセスを用いれば、ゲート電極14の幅は高精度に加工することができる。
【0024】
上述のように、ゲート電極14にゲート幅が小さい第1のゲート電極部分14Nを部分的に形成することにより、破壊電圧を低減することができるが、それと同時に、破壊前のオフ状態において、ソース・ドレイン間のリーク電流を小さくすることもできる。この理由は以下の通りである。
【0025】
即ち、ゲート電極14は、比較的大きい第2のゲート幅W2の第2のゲート電極部分14Wを有しており、この第2のゲート電極部分14Wにおいては、第2のチャネル長LC2が比較的長いため、前記リーク電流は小さくなる。従って、この場合のザッピング素子100の全体のリーク電流は、ゲート電極14の全体のゲート幅を小さくする場合と比較すると低減される。
【0026】
また、P+型コンタクト層17にソース電極21を接続することにより、半導体基板11をソース層16に電気的に接続することが好ましい。これは以下の理由による。即ち、破壊電圧をドレイン電極20に印加してチャネル電流を流す時、チャネル電流には寄生バイポーラトランジスタ30の電流が相当寄与している。
【0027】
この場合、寄生バイポーラトランジスタ30は、図3に示すように、ドレイン層15をエミッタとし、半導体基板11の表面をベースとし、ソース層16をコレクタとしている。そこで、ベースである半導体基板11をソース層16に電気的に接続することにより、半導体基板11の電位をコレクタであるソース電位に固定し、寄生バイポーラトランジスタ30の電流を安定に流すことができる。
【0028】
また、図1に示すように、ゲート電極14はソース電極21を介して、ソース層16と電気的に接続されていることが好ましい。この場合、ソース電極21はゲート電極14上の層間絶縁膜18に形成されたコンタクトホールCT8、CT9を介してゲート電極14に接続される。これは、PN接合の破壊前においてザッピング素子100をオフ状態に設定するためである。
【0029】
また、図4に示すように、ザッピング素子100を構成しているゲート電極14、ドレイン層15、ソース層16、ドレイン電極20、ソース電極21等を覆ってクラック防御用の金属層24を形成することが好ましい。
【0030】
この場合、ドレイン電極20及びソース電極21を覆って層間絶縁膜23が形成され、この層間絶縁膜23上に金属層24が形成される。さらに、金属層24を覆ってシリコン窒化膜等からなる保護膜25が形成される。
【0031】
ザッピング素子100においては、破壊電圧の印加による発熱によって層間絶縁膜18,23等にクラックが発生する可能性は小さいが、金属層24を形成することにより、層間絶縁膜18、23等にクラックが発生したとしても、金属層24により、そのクラックを止め、クラックが金属層24の上方に広がることを防止することができる。この場合、金属層24は、他の素子に電気的に接続されていないダミーパターンであることが好ましい。
【0032】
なお、本実施形態において、P−型の半導体基板11の代わりに、N−型の半導体基板11を用い、その表面にP−型半導体層又はP−型ウエルを形成し、このP−型半導体層等の表面に、上述のザッピング素子100の構造を形成しても良い。
【0033】
以下に、ザッピング素子100の応用例を図5及び図6を参照して説明する。図5は、上述のザッピング素子100を応用したトランジスタ回路200の回路図である。このトランジスタ回路200は、端子P1、抵抗R1,R2、NPN型トランジスタTR1及びザッピング素子100を含んで構成される。トランジスタ回路200は、半導体集積回路の一部を構成しており、ザッピング素子100も当該半導体集積回路に内蔵されている。
【0034】
ザッピング素子100のドレイン電極20は端子P1に接続され、ソース電極21は接地される。端子P1と電源電位Vccの間に抵抗R1が接続されている。NPN型トランジスタTR1のベースは抵抗R2を介して端子P1に接続され、エミッタは接地されている。
【0035】
破壊前のザッピング素子100はオフ状態なので、NPN型トランジスタTR1のベースには、抵抗R1,R2を介して電源電位Vccが印加される。これにより、NPN型トランジスタTR1はオンする。端子P1に破壊電圧が印加され、ザッピング素子100が前述のように破壊されると、ザッピング素子100は導通状態になるので、NPN型トランジスタTR1のベースは、ザッピング素子100を介して接地される。これにより、NPN型トランジスタTR1はオフする。即ち、ザッピング素子100はNPN型トランジスタのオンオフの状態をザッピングすることができる。
【0036】
図6は、上述のザッピング素子100を応用した抵抗回路300の回路図である。この抵抗回路300は、端子P3〜P6、抵抗R3,R4及びザッピング素子100A,100Bを含んで構成される。ザッピング素子100A,100Bは、上述のザッピング素子100と同じ構成を有している。抵抗回路300は、半導体集積回路の一部を構成しており、ザッピング素子100も当該半導体集積回路に内蔵されている。
【0037】
破壊前のザッピング素子100A,100Bはオフ状態なので、端子P5、P6の間の抵抗値は、抵抗R3,R4の抵抗値の和である。今、端子P2,P3間に破壊電圧を印加して、ザッピング素子100Aを破壊した場合、端子P5からザッピング素子100Aを経由して抵抗R4に至る電流経路が形成されるので、短絡されたザッピング素子100Aの抵抗値が無視できるほど小さければ、端子P5、P6の間の抵抗値はR4の抵抗値となる。
【0038】
同様に、端子P3,P4間に破壊電圧を印加して、ザッピング素子100Bを破壊した場合、端子P6からザッピング素子100Bを経由して抵抗R3に至る電流経路が形成されるので、短絡されたザッピング素子100Bの抵抗値が無視できるほど小さければ、端子P5、P6の間の抵抗値はR3の抵抗値となる。即ち、ザッピング素子100A,100Bにより、抵抗回路300の抵抗値をトリミングすることができる。
【0039】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で変更が可能なことは言うまでもない。例えば、上述の実施形態のザッピング素子100は、Nチャネル型MOSトランジスタに基づいているが、Pチャネル型MOSトランジスタに基づいて構成することもできる。
【符号の説明】
【0040】
11 半導体基板 12 LOCOS膜 13 ゲート絶縁膜
14 ゲート電極 15 ドレイン層 16 ソース層
17 P+型コンタクト層 18 層間絶縁膜 19 短絡金属層
20 ドレイン電極 21 ソース電極 23 層間絶縁膜
24 金属層 25 保護膜
30 寄生バイポーラトランジスタ
100,100A,100B ザッピング素子 CH チャネル領域
CT1〜CT9 コンタクトホール R1〜R4 抵抗
P1〜P6 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極の端部に整合して、前記半導体層の表面に形成された第2導電型のソース層及びドレイン層と、前記ソース層と前記ドレイン層の間の前記半導体層の表面に形成されたチャネル領域と、を備え、前記ゲート電極のソース・ドレイン方向の長さは部分的に小さくなっていることを特徴とするザッピング素子。
【請求項2】
前記ドレイン層に電圧を印加することにより、前記チャネル領域に破壊電流を流して前記ソース層と前記ドレイン層との間を恒久的に短絡させることを特徴とする請求項1に記載のザッピング素子。
【請求項3】
前記半導体層は前記ソース層に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のザッピング素子。
【請求項4】
前記ゲート電極は前記ソース層と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のザッピング素子。
【請求項5】
前記ゲート電極、前記ソース層、前記ドレイン層を覆う金属層を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のザッピング素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のザッピング素子を備えることを特徴とする半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−175992(P2011−175992A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36877(P2010−36877)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】