説明

シリコーン樹脂組成物、半導体装置の封止材、及び半導体装置

【課題】成形性、硬化性、貯蔵安定性、特に長期耐熱性に優れ、良好な耐クラック性を有する硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が1,000〜20,000の熱硬化性オルガノポリシロキサン70〜99質量部、(CH3aSi(OR1b(OH)c(4-a-b-c)/2(1)(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、a、b、cは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)(B)下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサン1〜30質量部、


(C)無機充填剤50〜900質量部、(D)硬化促進剤0.3〜8.0質量部を必須成分としてなるシリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性、硬化性、長期高温保管時の耐熱性に優れ、半導体装置の封止材として好適なシリコーン樹脂組成物及びこのシリコーン樹脂組成物で封止した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体業界にてジャンクション温度が高くなる傾向の故に、半導体封止樹脂の長期高温保管時の耐熱性への要求が高まってきている。しかし、従来半導体の封止材料として使用されてきたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、高温での長期保管の間に寸法変化や質量変化等が起こり、クラックが入るという欠点があった。
一方、生産性、コストの面からウエハーの状態で樹脂封止を行うウエハーレベルチップサイズパッケージが注目されている。
ウエハーレベルチップサイズパッケージにおいて、ウエハー上に樹脂を一括成形するため、ウエハーが反りやすく、その後のダイシング工程において不具合が生じてしまう。このような課題によりウエハーレベルチップサイズパッケージ用の封止樹脂としては、成形後及びリフロー工程後の反り特性が良好であるものが望ましい。
【0003】
リフロー工程において良好な反り特性を保持させるためには室温からリフロー温度までの膨張量が小さいものが望ましい。従来、半導体装置の封止樹脂としてはエポキシ樹脂が使用されてきたが、エポキシ樹脂は高温でガラス転移点を持ち、ガラス転移点よりも高い温度になった場合、膨張量は大きくなってしまう。また、ガラス転移温度がリフロー温度以上のものも知られているが、耐熱性が悪いといった課題があった。
【0004】
膨張量に関しては、硬化促進剤として金属鉛を構成成分とする室温からリフロー温度までの膨張量が小さく、耐熱性が良好な半導体封止用シリコーン樹脂組成物が知られている。しかし、該組成物は欧州での規制により使用が制限されている。また、金属鉛以外の硬化促進剤として金属亜鉛等を用いた際には硬化性が悪いという問題があった。
【0005】
また、硬化促進剤としてDBU等のアミン系化合物を用いたシリコーン樹脂組成物も知られているが、このようなシリコーン樹脂組成物は貯蔵安定性が悪く、満足のいく封止体が得られない。
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−299246号公報
【特許文献2】特開2006−257240号公報
【特許文献3】特開2008−111111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、貯蔵安定性、充填性に優れ、硬化性が良好で、長期耐熱性に優れた硬化物を与え、半導体装置の封止材として有効なシリコーン樹脂組成物及びこのシリコーン樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のマイクロカプセル型硬化促進剤、所定の直鎖状ジオルガノポリシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサン、及び分岐を有する熱硬化性オルガノポリシロキサンを組み合わせることにより、貯蔵安定性に優れたシリコーン樹脂組成物を与え、該シリコーン樹脂組成物が硬化性及び成形性を有する硬化物を与えることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記のシリコーン樹脂組成物、半導体装置の封止材、及び半導体装置を提供する。
請求項1:
(A)下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が1,000〜20,000の熱硬化性オルガノポリシロキサン 70〜99質量部、
(CH3aSi(OR1b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、a、b、cは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
(B)下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサン 1〜30質量部、
(但し、(A)、(B)成分の合計量は100質量部である。)
【化1】


(R2は、互いに独立に、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基及びアリル基から選ばれる基であり、mは5〜100の整数である。)
(C)無機充填剤 50〜900質量部、
(D)硬化促進剤 0.3〜8.0質量部
を必須成分としてなることを特徴とするシリコーン樹脂組成物。
請求項2:
(B)成分が、上記式(2)の単位を含むD単位、M単位、T単位、Q単位の割合がモル比として5〜70:0〜10:10〜90:0〜5であるオルガノポリシロキサンであり、上記D単位中に含まれる式(2)の単位の割合が30モル%以上である請求項1記載のシリコーン樹脂組成物。
請求項3:
(D)成分の硬化促進剤がマイクロカプセル型である請求項1又は2記載のシリコーン樹脂組成物。
請求項4:
(D)成分のマイクロカプセル型硬化促進剤の粒子径が0.05〜32μmである請求項3記載のシリコーン樹脂組成物。
請求項5:
(D)成分のマイクロカプセル型硬化促進剤に含まれる触媒がアミン系硬化促進剤である請求項3又は4記載のシリコーン樹脂組成物。
請求項6:
(D)成分のマイクロカプセル型硬化促進剤に含まれる触媒がイミダゾールである請求項3又は4記載のシリコーン樹脂組成物。
請求項7:
更に、(E)ウェッターを配合した請求項1〜6のいずれか1項記載のシリコーン樹脂組成物。
請求項8:
請求項1〜7のいずれか1項記載のシリコーン樹脂組成物からなることを特徴とする半導体装置の封止材。
請求項9:
請求項8記載の封止材の硬化物で封止されたことを特徴とする半導体装置。
請求項10:
請求項8記載の封止材の硬化物で封止された半導体装置であって、SiC半導体素子又はGaN半導体素子を搭載することを特徴とする半導体装置。
請求項11:
請求項8記載の封止材の硬化物で封止された半導体装置であって、ウエハーレベル用チップサイズパッケージであることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、成形性、硬化性、貯蔵安定性、特に長期耐熱性に優れ、良好な耐クラック性を有する硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン、
(B)直鎖状ジオルガノポリシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサン、
(C)無機充填剤、
(D)硬化促進剤
を必須成分とする。
【0012】
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で表されるもので、シラノール基を備え、(D)硬化促進剤の存在下で架橋構造を形成する。
(CH3aSi(OR1b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
上記平均組成式(1)において、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。a、b、cは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。
【0013】
CH3の含有量を示すaが上記下限値未満のオルガノポリシロキサンを含む組成物は、その硬化物が硬過ぎて、クラック等を生じ得るので好ましくなく、上記上限値を超える樹脂は固形化しない。好ましくは0.9≦a≦1.2、より好ましくは0.9≦a≦1.1である。
【0014】
OR1の含有量bが0.3を超えると、分子量が小さくなり、クラック防止性能が十分ではなくなる場合がある。好ましくは0.001≦b≦0.2であり、より好ましくは0.01≦b≦0.1である。なお、OR1の含有量は、赤外吸収スペクトル(IR)、アルカリクラッキングによるアルコール定量法等で定量可能である。
【0015】
Si原子結合OH基の含有量cが上記上限値を超えたオルガノポリシロキサンは、加熱硬化時の縮合反応、及び/又は、(B)成分との縮合反応により、高硬度ではあるが、耐クラック性に乏しい硬化物を与える。cが上記下限値未満のオルガノポリシロキサンは、融点が高くなる傾向があり、作業性に問題が生じる場合がある。また、結合生成が全くなくなると、硬化物内に固定化されない結果、硬化物の硬度が低く、耐溶剤性が悪い傾向がある。好ましくは0.01≦c≦0.3であり、より好ましくは0.05≦b≦0.2である。cを制御する条件としては、原料のアルコシキ基の完全縮合率を86〜96%にすることが好ましく、86%未満では、融点が低くなり、96%を超えると融点が高くなりすぎる傾向となる。
以上のことから、好ましくは、0.911≦a+b+c≦1.8であり、より好ましくは1.0≦a+b+c≦1.5である。
【0016】
なお、上記平均組成式(1)中、R1は互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキル基又は、ビニル基、アリル基等のアルケニル基が挙げられ、原料の入手が容易である点で、メチル基及びイソプロピル基が好ましい。
【0017】
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサンは、GPCにより測定したポリスチレン標準で換算した重量平均分子量が500〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。分子量が前記下限値未満では固形化し難く、分子量が上記上限値超では粘度が高くなり流動性が低下することがある。
【0018】
(A)成分は、一般にQ単位(SiO4/2)、T単位(R0SiO3/2)、及びD単位(R02SiO2/2)(ここでR0は有機基であり、(A)成分の場合CH3である)の組み合わせで表現することができる。(A)成分をこの表記法で表した時、全シロキサン単位の総モル数に対し、T単位の含有モル数の比率が70モル%以上、望ましくは75モル%以上、特に80モル%以上であることが好ましい。該T単位が70モル%未満では、硬度、密着性、概観等の総合的なバランスが崩れる場合がある。なお、残部は、D,Q単位でよく、これらが30モル%以下であることが好ましい。D,Q単位が多くなるほどオルガノポリシロキサンの融点が高くなる傾向がある。
【0019】
(A)成分は、下記一般式で示されるオルガノシランの加水分解縮合物として得ることができる。
(CH3nSiX4-n
式中、Xは塩素等のハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、nは1、2又は0である。中でも、Xは、固体状のオルガノポリシロキサンを得る点から、ハロゲン原子、特に塩素原子であることが好ましい。
【0020】
該オルガノシランとしては、例えば、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシラン、テトラエトキシラン等が挙げられる。
【0021】
上記オルガノシランの加水分解及び縮合は、通常の方法で行えばよいが、例えば酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ触媒の存在下で行うことが好ましい。例えば加水分解性基としてクロル基を含有するシランを使用する場合は、水添加によって発生する塩酸を触媒として、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0022】
加水分解及び縮合の際に添加される水の量は、上記オルガノシラン中の加水分解性基(例えばクロル基の場合)の合計量1モル当り、通常、0.9〜1.6モルであり、好ましくは1.0〜1.3モルである。この添加量が0.9〜1.6モルの範囲を満たすと、後述の組成物は作業性が優れ、その硬化物は強靭性が優れたものとなる。
【0023】
上記オルガノシランは、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤中で加水分解して使用することが好ましい。具体的には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、芳香族化合物としてトルエン、キシレンが好ましく、組成物の硬化性及び硬化物の強靭性が優れたものとなるので、イソプロピルアルコール、トルエン併用系がより好ましい。
【0024】
この場合、加水分解及び縮合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜100℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化することなく、次の工程に使用可能な固体の加水分解縮合物が得られる。
【0025】
原料にメチルトリクロロシランを用いる場合、トルエンに溶解したメチルトリクロロシランに、水及びイソプロピルアルコールを添加して部分加水分解(反応温度−5〜100℃)し、その後残存するクロル基の全量が加水分解される量の水を添加して、反応させることにより、下記平均組成式で示される融点76℃の熱硬化性オルガノポリシロキサンが得られる。
(CH3aSi(OC37b(OH)c(4-a-b-c)/2
(式中、a、b、cは上述のとおり。)
【0026】
上記平均組成式で示される熱硬化性オルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記式で示される化合物が挙げられる。
(CH31.0Si(OC370.07(OH)0.131.4
(CH31.1Si(OC370.06(OH)0.121.3
【0027】
(B)オルガノポリシロキサン
(B)成分は下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする。
【化2】

【0028】
ここで、R2は、互いに独立に、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基及びアリル基から選ばれる基であり、好ましくはメチル基及びフェニル基である。mは5〜100、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30、更に好ましくは10〜20の整数である。mが前記下限値未満では、硬化物の可撓性(耐クラック性)に乏しく、装置の反りを起こし得る。一方、前記上限値を超えては、機械的強度が不足する傾向がある。
【0029】
(B)成分は、上記式(2)で示されるR22SiO1単位に加えて、mが5〜100の範囲外であるD単位(R2SiO1)、M単位(R3SiO1/2)、T単位(RSiO3/2)(ここで、Rは水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビニル基又はアリル基を示す。)、及びQ単位(SiO2)を含んでいてよい。これらのモル比はD:M:T:Q=5〜70:0〜10:10〜90:0〜5、特に10〜50:0〜5:50〜90:0〜5(但し、合計で100)であることが、得られる硬化物の硬化物特性の点から好ましい。
【0030】
(B)成分中のD単位全体の少なくとも一部、好ましくは30モル%以上(30〜100モル%)、より好ましくは50モル%以上(50〜100モル%)、特に好ましくは80モル%以上(80〜100モル%)が、上記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン構造を形成していることが好ましい。
【0031】
(B)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000であることが好ましく、より好ましくは4,000〜100,000、更に好ましくは4,000〜10,000である。この範囲にあると、該ポリマーは固体もしくは半固体状であり、作業性、硬化性等から好適である。
【0032】
(B)成分は、上記各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で所要のモル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で加水分解して縮合を行うことによって合成することができる。
【0033】
ここで、T単位(RSiO3/2)の原料としては、MeSiCl3、EtSiCl3、PhSiCl3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のクロロシラン類、これらそれぞれのクロロシラン類に対応するメトキシシラン類等のアルコキシシラン類などを例示できる(なお、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を示す)。
【0034】
上記式(2)のR22SiO1単位の原料としては、
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

(ここで、m=3〜48の整数(平均値)、n=0〜48の整数(平均値)、かつm+nが3〜48の整数(平均値)。)
等を例示することができる。
【0037】
また、D単位(R2SiO1)、M単位(R3SiO1/2)の原料としては、Me2PhSiCl、Me2ViSiCl、MePhSiCl2、MeViSiCl2、Ph2MeSiCl、Ph2ViSiCl、PhViSiCl2等のクロロシラン類、これらのクロロシランのそれぞれに対応するメトキシシラン類等のアルコキシシラン類などを例示することができる。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0038】
これらの原料となる化合物を、所定のモル比で組み合わせて、例えば以下の反応で得ることができる。フェニルメチルジクロロシラン100質量部、フェニルトリクロロシラン2,100質量部、Si数21個の両末端クロルジメチルシリコーンオイル2,400質量部、トルエン3,000質量部を投入混合し、水11,000質量部中に混合シランを滴下し30〜50℃で1時間共加水分解する。その後、50℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをする。
【0039】
なお、上記共加水分解及び縮合により製造する際に、シラノール基を有するシロキサン単位が含まれ得る。(B)成分のオルガノポリシロキサンは、通常、全シロキサン単位の総モル数に対し、シラノール基含有シロキサン単位の含有モル数の比率が0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%含有することが好ましい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R(HO)SiO単位、R(HO)2SiO1/2単位、R2(HO)SiO1/2単位が挙げられる(Rは水酸基ではない)。シラノール基を0モル%を超えて含有した場合、(A)成分の熱硬化性オルガノポリシロキサンと反応するので好ましい。
【0040】
上記(A)成分と(B)成分は、(A)成分70〜99質量部、好ましくは85〜95質量部、(B)成分1〜30質量部、好ましくは5〜15質量部で、(A),(B)成分の合計100質量部となる割合で使用する。
【0041】
(C)無機充填剤
無機充填剤としては、公知各種の無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、マグネシウムシリケート、アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。中でも溶融シリカ、結晶シリカ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ又は酸化チタンより選ばれる少なくとも1種であることがよい。特に、溶融シリカ、結晶シリカ又はアルミナが組成物の低粘度化の点から好ましい。
【0042】
これら無機充填剤の平均粒径や形状は特に限定されないが、平均粒径は0.1〜80μm、好ましくは0.2〜50μmである。なお、本発明において、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。特に、溶融シリカ、溶融球状シリカが好ましく、成形性、流動性からみて、0.1〜50μm、好ましくは平均粒径が0.2〜50μmである。
【0043】
無機充填剤は、樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。あるいは、(A),(B)成分と無機充填剤との混合時にシランカップリング剤を添加して無機充填剤を表面処理するようにしてもよい。このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。中でも、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランであることがよい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0044】
無機充填剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対し、50〜900質量部、特に100〜700質量部が好ましい。上記下限値未満では、強度を得ることができないおそれがあり、900質量部を超えると、増粘によるモールドの未充填不良や柔軟性が失われることで、半導体素子の剥離等の不良が発生する場合がある。
【0045】
(D)硬化促進剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、硬化促進剤を配合する。硬化促進剤としては、平均粒径が0.05〜32μmであるマイクロカプセル型硬化促進剤を配合することが好ましい。このマイクロカプセル型硬化促進剤において、マイクロカプセル内の硬化促進剤としては、従来から公知のシリコーン樹脂の硬化促進剤であればいかなるものでも使用可能であるが、中でもイミダゾール化合物や有機リン化合物が好適に使用される。
【0046】
ここで、イミダゾール化合物としては、下記一般式(i)で示されるものを使用することができる。
【化6】


(式中、R3及びR4は水素原子、又はメチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、フェニル基等のアルキル基、置換アルキル基、アリール基等の炭素数1〜12、好ましくは1〜6の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、R5はメチル基、エチル基、フェニル基、アリル基等のアルキル基、アルケニル基、アリール基等の炭素数1〜12、好ましくは1〜6の非置換もしくは置換の1価炭化水素基を示し、R6は水素原子、メチル基、エチル基、シアノエチル基、ベンジル基等のアルキル基、置換アルキル基、アラルキル基等の炭素数1〜12、好ましくは1〜6の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又は下記式(ii)で示される基である。なお、置換1価炭化水素基としては、ヒドロキシ置換、シアノ置換等のものを挙げることができる。)
【0047】
【化7】

【0048】
具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0049】
有機リン系化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、ジフェニルトリルホスフィン等のトリオルガノホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等のトリオルガノホスフィンとトリオルガノボランとの塩、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラオルガノホスホニウムとテトラオルガノボレートとの塩等のオルガノホスフィン類が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0050】
このマイクロカプセル型硬化促進剤は、(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル等の炭素数1〜8のアルキルエルテルやこのアルキルエステルのアルキル基の水素原子の一部又は全部がアリル基等で置換されたもの、また、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等の単官能性単量体、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能単量体等の各種単量体のポリマー中に、前述のイミダゾール化合物、有機リン化合物等の硬化促進剤(硬化促進触媒)を内包するものが挙げられるが、このポリマーとしては、特に(メタ)アクリレート単量体のポリマーが好ましい。
【0051】
本発明のマイクロカプセル型硬化促進剤の製造方法としては、様々な方法が挙げられ、従来公知の方法で製造することができるが、生産性及び球状度が高いマイクロカプセル型硬化促進剤を製造するためには、通常懸濁重合法又は乳化重合法等が好ましく用いられる。例えばエポキシ樹脂硬化剤用アミン類を主成分とする固体状芯物質を、重合性二重結合を有する有機酸を含有するラジカル重合性モノマーでマイクロカプセル化する方法が特開平5−247179号公報に開示されている。
【0052】
この場合、一般的に使用されている硬化促進触媒の分子構造から、高濃度のマイクロカプセル型硬化促進剤を得るためには、硬化促進触媒10質量部に対して使用する上記単量体の総量は、望ましくは10〜200質量部、特に望ましくは10〜100質量部、更に望ましくは20〜50質量部である。10質量部未満では、マイクロカプセルが硬化促進触媒の潜在性に十分に寄与することが困難になることがあり、200質量部を超えると触媒の比率が低くなり、十分な硬化性を得るためには多量に使用しなければならなくなり、経済的に不利となる場合がある。即ち、マイクロカプセル中に含有される硬化促進剤の濃度としては、約5〜50質量%、好ましくは約10〜50質量%程度のものを使用することができる。
【0053】
例えば、イミダゾール化合物のようなアミン類を主成分とする固体状の芯物質、及び重合性二重結合を有する有機酸を含むラジカル重合性単量体の重合体を被覆層とするエポキシ樹脂マイクロカプセルが挙げられる。このマイクロカプセルを製造するには、アミン類を主成分とする固体状の芯物質を、これを溶解しない有機溶媒中に分散させ、この分散液中で重合性二重結合を有する有機酸を含むラジカル重合性単量体モノマーをラジカル重合せしめ、芯物質の表面に重合体を被覆層を形成させることを特徴とするエポキシ樹脂マイクロカプセルを得ることができる。
【0054】
(D)成分のマイクロカプセル型硬化促進剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対し0.3〜8.0質量部とすることが好ましい。前記下限値未満では、硬化反応が遅くなり、生産性が低下する可能性が高く、前記上限値超では硬化反応が早すぎてワイヤー流れ、未充填など成形不良を引き起こす可能性が高い。
【0055】
本発明には、上記(A)〜(D)成分に加え、(E)ウェッターを配合することが好ましい。
【0056】
(E)ウェッター
ウェッターは無機充填剤の濡れ性を向上させ、シリコーン組成物に無機充填剤を高充填することを可能にする。該ウエッターを含むシリコーン樹脂組成物は、粘度の上昇が抑えられ流動性が保たれるため、無機充填剤の充填性が向上する。また、該流動性はシリコーン樹脂組成物を高温で長時間にわたり加熱した後でも保たれるため、高温条件下でも流動性を長時間にわたり維持することができるシリコーン樹脂組成物を得ることができる。
【0057】
ウェッターとしては、下記式で表される有機ケイ素化合物が使用できる。
【化8】

【0058】
式中、R7は、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、又はアシル基であり、中でもアルキル基であることが好ましく、特に、メチル基、エチル基であることが好ましい。R8は、互いに独立の1価炭化水素基であり、炭素数1〜3のものが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。R9は酸素原子又は2価炭化水素基であり、2価炭化水素基としては、好ましくは2〜6のものであり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基が挙げられ、好ましくはエチレン基、プロピレン基である。また、式中、aは1〜3の整数であり、好ましくは3である。pは5〜100、好ましくは10〜60の整数である。
【0059】
中でも、下記式(3)で示される片末端3官能のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【化9】


(式中、R10は炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基であり、R11は互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、スチリル基等のアリール基が挙げられ、中でも、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。pは上述の通りである。)
【0060】
具体的には、以下の化合物が挙げられる。
【化10】

【0061】
また、ウエッターとして、特開2007−332104号公報に記載の下記有機ケイ素化合物を使用することもできる。
【化11】

【0062】
式中、R12は、水素原子、又は非置換もしくは置換の、炭素数6〜30、好ましくは8〜20、より好ましくは10〜16の1価炭化水素基である。R13は、互いに独立に、非置換もしくは置換の、炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3の1価炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基及びエチル基である。R14は互いに独立に、水素原子、又は非置換もしくは置換の、炭素数1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2の1価炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子である。R15は互いに独立に、非置換もしくは置換の、炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の1価炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基及びエチル基である。
【0063】
式中、mは0〜4、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2の整数であるが、該有機ケイ素化合物の合成のしやすさ及び経済性の観点から、更により好ましくは0〜1の整数である。また、nは、2〜20の整数であり、該有機ケイ素化合物の合成のしやすさ及び経済性の観点から、好ましくは2である。
【0064】
このような有機ケイ素化合物としては、具体的に下記の化合物が挙げられる。
【化12】

【0065】
ウェッターの配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2.5質量部である。添加量が少ないと成形性の向上効果が少ない。また、添加量が多いと成形物にフローマークが生じる可能性がある。
【0066】
その他の添加剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、イオン性不純物による不良の低減としてイオントラップ材、樹脂の性質を改善する目的でγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のカップリング材、ウィスカー、シリコーンパウダー、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム等の添加材、脂肪酸エステル,グリセリン酸エステル,ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、フェノール系、リン系、もしくは硫黄系酸化防止剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。但し、本発明の組成物は、酸化防止剤を含有せずとも、従来の熱硬化性エポキシ樹脂組成物に比べて、熱による劣化が少ない。
【0067】
本発明の組成物の製造方法としては、(A)〜(D)成分、及び、必要に応じてその他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕してシリコーン樹脂組成物の成形材料とすることができる。
【0068】
該シリコーン樹脂組成物の最も一般的な成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm2、120〜190℃で30〜500秒、特に150〜185℃で30〜180秒で行うことが好ましい。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で30〜720秒、特に130〜160℃で120〜600秒で行うことが好ましい。更に、いずれの成形法においても、2次硬化を150〜220℃で2〜20時間行ってもよい。
【0069】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、半導体装置の封止材として好適に用いられる。この場合、半導体装置としては、特に制限されないが、SiC半導体素子、GaN半導体素子を搭載した半導体装置の封止に耐クラック性、長期保管後の耐熱性維持の点から有効である。また、ウエハーレベル用チップサイズパッケージの封止にも有効で、これに適用することで、成形時の充填性に優れ、ボイド等の欠陥のない成形物を得ることができ、また反りの少ない成形物を得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例、比較例で使用した原料を以下に示す。
【0071】
[合成例1]
(A−1)熱硬化性オルガノポリシロキサンの合成
メチルトリクロロシラン100質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で水8質量部、イソプロピルアルコール60質量部の混合液を液中滴下した。内温は−5〜0℃で5〜20時間かけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間撹拌した。更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。その後水200質量部を入れて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、下記式(4)で示される無色透明の固体(融点76℃)の熱硬化性オルガノポリシロキサン(A−1)36.0質量部を得た(重量平均分子量3,500)。
(CH31.0Si(OC370.07(OH)0.101.4 (4)
【0072】
[合成例2]
(B)オルガノポリシロキサンの合成
フェニルメチルジクロロシラン100質量部、フェニルトリクロロシラン2,100質量部、Si数21個の両末端クロルジメチルシリコーンオイル2,400質量部、トルエン3,000質量部を混合し、水11,000質量部中に混合した上記シランを滴下し30〜50℃で1時間共加水分解した。その後、50℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、150℃での溶融粘度5Pa・s、無色透明のオルガノポリシロキサン(B)を得た(重量平均分子量45,000)。
【0073】
(C)無機充填剤
球状シリカ:平均粒径0.5μm、SO−25R((株)アドマテックス製)
【0074】
(D)硬化促進剤
・マイクロカプセル型硬化促進剤:平均粒径0.1μm、シェル層 MMA、内包硬化促進剤 2−エチル−4−メチルイミダゾール(含有率20質量%)
・2−エチル−4−メチルイミダゾール
・トリフェニルホスフィン
・安息香酸亜鉛
【0075】
(E)ウェッター
下記式で示されるオルガノシロキサン
【化13】

【0076】
添加剤
シランカップリング剤:KBM803(信越化学工業(株)製)
【0077】
[実施例1〜4、比較例4〜6]
表1,2に示す配合で、(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン、(B)オルガノポリシロキサン、(C)無機充填剤、(D−1)マイクロカプセル型硬化促進剤、(E)ウェッター、その他添加剤を配合し、ロール混合にて製造し、冷却、粉砕して樹脂組成物を得た。
【0078】
[比較例1〜3]
本発明に係る(D−1)の硬化促進剤に代えて下記硬化促進剤を使用し、表2に示す配合で実施例と同様の方法で樹脂組成物を得た。
(D−2)2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製)
(D−3)トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)
(D−4)安息香酸亜鉛(和光純薬工業(株)製)
【0079】
これらの組成物につき、以下の諸特性を測定した。結果を表2に示す。なお、成形は全てトランスファー成形機で、150℃×360秒で行った。
【0080】
8inchウエハーへの充填性
750μm厚の8inchウエハー上に10gの試料をコンプレッション成形にて150℃,成形時間360秒の条件で成形し、充填性の観察を行った。
【0081】
8inchウエハーの反り
上記ウエハーへの充填性に記載の成形品の反り量をノギスで計測した。
【0082】
8inchウエハーのクラック性
上記ウエハーへの充填性に記載の成形品の成形後のクラック観察を行った。
【0083】
熱時硬度
150℃、6.9N/mm2、成形時間360秒の条件で成形し、10秒以内に成形物をバーコール硬度計935タイプで硬度を測定した。
【0084】
保存性
各樹脂組成物を25℃で24時間保管し、保管後にEMMI規格に準じた金型を使用して、150℃,6.9N/mm2、成形時間360秒の条件でスパイラルフロー値を測定し、初期値からの低下率を算出した。
【0085】
長期高温保管後の質量変化率
150℃、6.9N/mm2、成形時間360秒の条件で10×10×100mmの棒状の成形物を成形し、200℃で4時間の2次硬化後、250℃で1,000時間保管し、初期値と保管後の質量を測定して変化率を算出した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表1,2に示すように、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール,トリフェニルホスフィンを用いたシリコーン樹脂組成物は保存性が悪く(比較例1,2)、安息香酸亜鉛を用いたシリコーン樹脂組成物は8inchウエハーモールド成形時の充填性が悪かった(比較例3)。また、マイクロカプセル型硬化促進剤の量が少ないものは硬化性が悪く、クラックが生じ、量が多いものは充填性が悪かった。それに対し、本発明のシリコーン樹脂組成物よりなる硬化物は、充填性、硬化性、保存性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のシリコーン樹脂組成物はウエハーモールド成形時の充填性に優れ、長期耐熱性に優れた硬化物を提供することができ、同時に硬化性、貯蔵安定性に優れていることから、半導体素子の封止樹脂として好適に使用することができる。中でも、ウエハーレベル用チップサイズパッケージ封止用樹脂として最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が1,000〜20,000の熱硬化性オルガノポリシロキサン 70〜99質量部、
(CH3aSi(OR1b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、a、b、cは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
(B)下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサン 1〜30質量部、
(但し、(A)、(B)成分の合計量は100質量部である。)
【化1】


(R2は、互いに独立に、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基及びアリル基から選ばれる基であり、mは5〜100の整数である。)
(C)無機充填剤 50〜900質量部、
(D)硬化促進剤 0.3〜8.0質量部
を必須成分としてなることを特徴とするシリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分が、上記式(2)の単位を含むD単位、M単位、T単位、Q単位の割合がモル比として5〜70:0〜10:10〜90:0〜5であるオルガノポリシロキサンであり、上記D単位中に含まれる式(2)の単位の割合が30モル%以上である請求項1記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分の硬化促進剤がマイクロカプセル型である請求項1又は2記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
(D)成分のマイクロカプセル型硬化促進剤の粒子径が0.05〜32μmである請求項3記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
(D)成分のマイクロカプセル型硬化促進剤に含まれる触媒がアミン系硬化促進剤である請求項3又は4記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
(D)成分のマイクロカプセル型硬化促進剤に含まれる触媒がイミダゾールである請求項3又は4記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(E)ウェッターを配合した請求項1〜6のいずれか1項記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のシリコーン樹脂組成物からなることを特徴とする半導体装置の封止材。
【請求項9】
請求項8記載の封止材の硬化物で封止されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項8記載の封止材の硬化物で封止された半導体装置であって、SiC半導体素子又はGaN半導体素子を搭載することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項8記載の封止材の硬化物で封止された半導体装置であって、ウエハーレベル用チップサイズパッケージであることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2012−57000(P2012−57000A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199474(P2010−199474)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】