説明

シリコーン樹脂組成物

【課題】透明性に優れ、高い接着性及び引張りせん断強度を有し、かつ、耐熱性に優れるシリコーン樹脂組成物及びその製造方法、ならびに、該組成物の透明感圧接着シートを提供すること。
【解決手段】微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体とを重合反応させた重合物に、式(II):


(式中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
で表される1官能性シラン誘導体を重合反応させることにより得られる、シリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、透明性に優れ、高い接着性及び引張りせん断強度を有し、かつ、耐熱性に優れるシリコーン樹脂組成物、その製造方法、及び該組成物の透明感圧接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン系感圧接着剤は、良好な耐湿性や電気絶縁性を示すことから、電子部品に汎用されている。近年の電子機器の小型化や大容量化に伴い、その製造工程が複雑になることから、シリコーン系感圧接着剤のさらなる品質向上が求められている。
【0003】
従来、シリコーン系接着剤としては、粘着性の付加架橋性のシリコーン組成物、あるいはそれから誘導されるシリコーンエラストマー等が用いられている。しかしながら、純粋シロキサンから誘導されるシリコーンは接着性が十分ではないため、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等の官能基を導入して樹脂の有機変性を行う方法や、該官能基を有する添加剤を用いたプライマー処理する方法が一般的に行われている(特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献2では、比表面積の小さいシリカ粒子を加えることにより、低熱膨張率と高粘着性を有するシリコーン組成物が開示されている。特許文献3では、可塑剤等の加工助剤を用いることにより、接着性を向上させている。
【0005】
一方、耐熱性を高めた接着剤として、上記のような有機変性を行わず、ポリオルガノシロキサン生ゴム及び架橋性のポリアルコキシシラン等から誘導されるシリコーン接着剤が提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2001−200162号公報
【特許文献2】特開2000−265150号公報
【特許文献3】特開2005−513195号公報
【特許文献4】特表2004−502021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エポキシ基、アミノ基等の官能基は基材との接着性に優れるものの、耐熱性が不十分で、150℃以上の高温に長時間曝されると接着力の低下や変色等が生じる。また、特許文献2の方法では、添加するシリカ粒子が大きく分散性も十分でないことから、透明性に劣るものが得られる。特許文献3に拠って加工助剤を使用する場合にも、接着性を向上させることは可能であるが、耐熱性が十分ではなく、高温に長時間曝されると接着力の低下や変色等が生じる。
【0007】
また、特許文献4で提案されているシリコーン接着剤は、耐熱性に優れているものの、接着強度が未だ十分ではなく、さらなる向上が求められている。
【0008】
本発明の課題は、透明性に優れ、高い接着性及び引張りせん断強度を有し、かつ、耐熱性に優れるシリコーン樹脂組成物及びその製造方法、ならびに、該組成物の透明感圧接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、フィラーとして微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、シリコーン樹脂原料中に含まれるアルコキシシリル基の一部とを反応させて架橋させることにより、該微粒子を良分散させて透明性を維持しながら、樹脂強度を高め、さらに、シリコーン樹脂原料として特定のシラン誘導体を用いることにより、該原料同士の縮重合反応によって得られるシリコーンの柔軟性が向上し、有機系の官能基を導入することなく基材との接着性を向上させ、さらには耐熱性も向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
〔1〕 微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体とを重合反応させた重合物に、式(II):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
で表される1官能性シラン誘導体を重合反応させることにより得られる、シリコーン樹脂組成物、
〔2〕 微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体とを重合反応させる工程、及び、該工程で得られた重合物に、式(II):
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
で表される1官能性シラン誘導体を重合反応させる工程を含む、前記〔1〕記載のシリコーン樹脂組成物の製造方法、ならびに
〔3〕 前記〔1〕記載のシリコーン樹脂組成物を成形させてなる、シリコーン系透明感圧接着シート
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、透明性に優れ、高い接着性及び引張りせん断強度を有し、かつ、耐熱性に優れるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体とを重合反応させた重合物に、式(II):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
で表される特定の1官能性シラン誘導体を重合反応させることに大きな特徴を有する。
【0019】
ポリメチルシルセスキオキサン誘導体は、架橋密度の高い縮合構造体となるので、大きな分子量のものを得がたい。本発明では、分子末端に反応性のアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体に、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子を重合反応させて、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体のアルコキシシリル基の一部と金属酸化物微粒子の表面官能基の一部とが共有結合、あるいは水素結合等の相互作用により架橋することにより、該金属酸化物微粒子を良分散させて透明性を維持しながら、樹脂全体として見かけ上高分子量化することから、機械的強度、強靭性、耐摩耗性、耐スクラッチ性等の特性に優れるという高強度を有することが可能となる。
【0020】
またさらに、上記ポリメチルシルセスキオキサン誘導体と金属酸化物微粒子との架橋反応後に、該ポリメチルシルセスキオキサン誘導体において未反応のアルコキシシリル基を上記特定の1官能性シラン誘導体によってブロック、即ち、架橋反応により得られた重合物と該1官能性アルコキシシランとを縮重合させることにより、樹脂の架橋度を調整することが出来ることから耐熱性も向上することが可能となり、透明性に優れ、高い強度を有し、かつ、耐熱性に優れるシリコーン樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の組成物は、室温下ではタック(粘着性)を有さないので取り扱い性に優れ、加熱することでタックが発現して高い接着性を発揮するものとなる。
【0021】
ポリメチルシルセスキオキサン誘導体は、ケイ素原子数に対する酸素原子数の比が1.5であるようなシリコーン系レジンの総称であり、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体(以下、単に、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体ともいう)としては、例えば、下記式(I):
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又は芳香族基であり、nは正の整数を示し、但し、R1 、R2 及びR4 は、共に水素原子ではなく、共に芳香族基ではなく、n個のR3 は同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物を構成単位として有する化合物が挙げられる。なお、前記構成単位は縮重合することにより、Si−O−Si骨格のランダム構造、ラダー構造、カゴ構造等を有する化合物となる。
【0024】
式(I)中のR1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又は芳香族基を示し、但し、R1 、R2 及びR4 は、共に水素原子ではなく、共に芳香族基ではなく、n個のR3 は同一でも異なっていてもよい。即ち、R1 、R2 及びR4 の少なくとも1つはアルキル基である。
【0025】
式(I)中のR1 、R2 、R3 及びR4 のアルキル基の炭素数は、微粒子表面での反応性、加水分解速度の観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等が例示される。なかでも、メチル基が好ましく、OR1 、OR2 、OR3 及びOR4 はいずれもメトキシ基であることが好ましい。なお、n個のOR3 も全てメトキシ基であることが好ましい。
【0026】
式(I)中のnは正の整数を示すが、溶媒への溶解性の観点から、好ましくは1〜3の整数である。
【0027】
かかる式(I)で表されるポリメチルシルセスキオキサン誘導体としては、Si−O−Si骨格をランダム構造に有する化合物(ランダム型)、ラダー構造に有する化合物(ラダー型)、カゴ構造に有する化合物(カゴ型)、該カゴ型が部分的に開裂した化合物(部分開裂カゴ型)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、R1 、R2 、R3 (n個のR3 全て)及びR4 がいずれもメチル基であるポリメチルシルセスキオキサン誘導体の部分加水分解縮合物が好ましい。なお、本明細書において、部分加水分解縮合物とは、各種構造を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体の混合物を加水分解して縮重合させたものであり、組成は特に限定されない。
【0028】
本発明におけるポリメチルシルセスキオキサン誘導体の分子量は、200〜5000が好ましく、400〜5000がより好ましい。なお、2種以上のポリメチルシルセスキオキサン誘導体を用いる場合には、各ポリメチルシルセスキオキサン誘導体の分子量が前記範囲内であることが望ましいが、前記範囲外のものが一部含まれていてもよく、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体全体の分子量として、加重平均分子量が前記範囲内に含まれていればよい。本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0029】
アルコキシ基の含有量は、反応性の観点から、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体1分子中、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜48重量%、さらに好ましくは24〜46重量%である。本明細書において、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体1分子中のアルコキシ基の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0030】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、加熱下でタック(粘着性)を発現させる観点から、式(II):
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
で表される1官能性シラン誘導体(以下、単に、1官能性シラン誘導体ともいう)を反応させて得られる。
【0033】
式(II)中のXはアルコキシ基又はハロゲン原子を示し、アルコキシ基におけるアルキル基の炭素数は、反応性の観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が例示され、ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等が例示される。なかでも、反応性の観点から、塩素が好ましい。
【0034】
かかる式(II)で表される1官能性シラン誘導体としては、メトキシトリメチルシラン、クロロトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明における1官能性シラン誘導体の分子量は、100〜160が好ましく、100〜140がより好ましい。
【0036】
分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体の含有量は、シリコーン樹脂組成物中、好ましくは60〜99重量%、より好ましくは70〜95重量%、さらに好ましくは80〜90重量%である。
【0037】
式(II)で表される1官能性シラン誘導体の含有量は、シリコーン樹脂組成物中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。
【0038】
また、前記ポリメチルシルセスキオキサン誘導体と式(II)で表される1官能性シラン誘導体の重量比(ポリメチルシルセスキオキサン/1官能性シラン)は、成形体としたときの強度の観点から、60/40〜99/1が好ましく、70/30〜95/5がより好ましく、80/20〜90/10がさらに好ましい。
【0039】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリメチルシルセスキオキサン誘導体及び1官能性シラン誘導体以外の他のシリコーン誘導体を含有していてもよい。他のシリコーン誘導体としては、公知のシリコーン誘導体が挙げられるが、シリコーン誘導体中の前記ポリメチルシルセスキオキサン誘導体及び1官能性シラン誘導体の総含有量は、80重量%以上が好ましく、90重量%がより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0040】
微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、チタン酸鉛、二酸化ケイ素等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、高屈折率の観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、及び二酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。なお、酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンのいずれを用いてもよい。
【0041】
金属酸化物微粒子における反応性官能基としては、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エポキシ基、ビニル型不飽和基、ハロゲン基、イソシアヌレート基などが例示される。
【0042】
金属酸化物微粒子の微粒子表面における反応性官能基の含有量は、微粒子量、微粒子の表面積、反応した表面処理剤量などから求めることができるが、本発明では、表面処理剤との反応量が微粒子重量の0.1重量%以上となる微粒子を「微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子」という。ここで、該反応量を反応性官能基の含有量とし、金属酸化物微粒子における含有量は0.1重量%以上であれば、特に限定されない。なお、本明細書において、金属酸化物微粒子表面における反応性官能基の含有量は、後述の実施例の方法により測定することができ、「反応性官能基の含有量」とは、反応性官能基の「含有量」及び/又は「存在量」のことを意味する。
【0043】
また、金属酸化物微粒子の微粒子表面における反応性官能基の含有量は、例えば、メチルトリメトキシシランを有機溶媒に溶解した溶液と微粒子を反応させることにより低減することができる。また、微粒子を高温で焼成することにより、微粒子表面の反応性官能基量を低減させることができる。
【0044】
金属酸化物微粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることできるが、なかでも、粒子の大きさの均一性や微粒子化の観点から、水熱合成法、ゾル−ゲル法、超臨界水熱合成法、共沈法、及び均一沈殿法からなる群より選ばれる少なくとも1つの製造方法により得られたものが好ましい。
【0045】
金属酸化物微粒子の平均粒子径は、組成物を成形体としたときの透明性の観点から、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、さらに好ましくは1〜20nmである。本明細書において、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法での粒子分散液の粒子径測定あるいは透過型電子顕微鏡による直接観察により測定することができる。
【0046】
なお、金属酸化物微粒子は、分散安定性の観点から、分散液中に調製されたものを用いてもよい(「金属酸化物微粒子分散液」ともいう)。分散媒としては水、アルコール、ケトン系溶媒、アセトアミド系溶媒などが挙げられ、水、メタノール、メチルブチルケトン、ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。分散液中の金属酸化物微粒子の量(固形分濃度)は、効率的に微粒子表面で反応を行う観点から、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。このような金属酸化物微粒子分散液は、酸化チタンとして触媒化成社のNEOSUNVEILあるいはQUEEN TITANICシリーズ、多木化学社のタイノック、酸化ジルコニウムとして第一希元素化学工業社のZSLシリーズ、住友大阪セメント社のNZDシリーズ、日産化学社のナノユースシリーズなどの市販のものを用いることができる。
【0047】
金属酸化物微粒子の含有量は、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体及び式(II)で表わされる1官能性シラン誘導体の総量100重量部に対して、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部、さらに好ましくは20〜60重量部である。
【0048】
本発明のシリコーン樹脂用組成物は、前記ポリメチルシルセスキオキサン誘導体、1官能性シラン誘導体及び、金属酸化物微粒子に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0049】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、例えば、前記金属酸化物微粒子分散液に、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体を含有する樹脂溶液を40〜80℃で重合反応させた重合物に、1官能性シラン誘導体を40〜80℃で重合させることにより調製することができる。
【0050】
本発明のシリコーン樹脂組成物の好ましい製造方法は、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体とを重合反応させる工程〔工程(1)〕、及び、該工程(1)で得られた重合物に、式(II)で表される1官能性シラン誘導体を重合反応させる工程〔工程(2)〕を含む方法である。
【0051】
工程(1)の具体例としては、例えば、例えば、金属酸化物微粒子分散液に、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤を添加して攪拌した液に、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体をメタノール、エタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤に好ましくは20〜50重量%の濃度になるように溶解して調製した樹脂溶液を滴下混合し、40〜80℃で1〜3時間反応させて、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体と金属酸化物微粒子との架橋構造を形成する工程等が挙げられる。得られた重合物は工程(2)に供する。
【0052】
工程(2)の具体例としては、例えば、工程(1)で得られた重合物に、1官能性シラン誘導体をメタノール、エタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤に好ましくは20〜50重量%の濃度になるように溶解して調製した樹脂溶液を滴下混合し、40〜80℃で1〜3時間反応させる工程等が挙げられる。なお、得られた反応液は、減圧下にて溶媒を留去して濃縮させる工程等に供して、濃度及び粘度を調整することができる。
【0053】
かくして得られたシリコーン樹脂組成物は、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で乾燥することによりシート状に成形することができる。なお、樹脂溶液を乾燥させる温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、透明性に優れることから光透過性が高く、例えば、10〜500μm厚のシート状に成形された場合、400〜700nmの波長を有する入射光に対する透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90〜100%である。なお、本明細書において、光透過率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0055】
本発明の別態様では、本発明のシリコーン樹脂組成物を基材の上に塗工して乾燥することにより成形する、シリコーン系感圧接着シートを提供する。
【0056】
本発明のシリコーン系感圧接着シートは、その形態及び大きさに特に限定はなく、基板の層間接着剤や耐熱性、耐光性が要求される電気、電子部品材料の接着剤等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0058】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0059】
〔シリコーン誘導体のアルコキシ基含有量〕
内部標準物質を用いた1H−NMRによる定量及び示差熱熱重量分析による重量減少の値から算出する。
【0060】
〔金属酸化物微粒子の平均粒子径〕
本明細書において、金属酸化物微粒子の平均粒子径とは一次粒子の平均粒子径を意味し、金属酸化物微粒子の粒子分散液について動的光散乱法で測定して算出される体積中位粒径(D50)のことである。
【0061】
〔金属酸化物微粒子表面における反応性官能基の含有量〕
微粒子分散液に表面処理剤としてエチルトリメトキシシランを加えて反応させ、遠心分離もしくはpH変動によって微粒子を凝集沈降させて、濾別回収、洗浄、乾燥し、示差熱熱重量分析によって重量減量を求めて含有量を算出する。
【0062】
〔シリコーン樹脂組成物の光透過性〕
分光光度計(U-4100、日立ハイテク社製)を用いて、400〜800nmの可視光領域の透過スペクトルを測定し、400nmにおける透過率を算出する。
【0063】
実施例1
攪拌機、還流冷却機、及び窒素導入管を備えた容器に、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子として、平均粒子径7nmの酸化ジルコニアの水分散液(商品名「NZD-3007」、住友大阪セメント社製、固形分濃度40重量%、反応性官能基として水酸基を含有、反応性官能基含有量1.0重量%以上)10.0g(シリコーン誘導体100重量部に対して22重量部)を入れ、さらにメタノール10.0g、2-メトキシエタノール10.0gを添加後、濃塩酸を用いて液のpHを2.5〜3.3に調整した。そこに、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体〔商品名「X-40-9225」、信越化学社製、式(I)のR、R、R及びRはメチル基、分子量2000〜3000、メトキシ含有量24重量%〕16.0gを2-プロパノール16.0gに溶解した液を、滴下ロートを用いて20分かけて滴下して60℃で1時間反応させた。その後、1官能性シラン誘導体としてメトキシトリメチルシラン〔商品名「LS-510」、信越化学社製、式(II)のXがメトキシ基、分子量104.2〕2.5g〔ポリメチルシルセスキオキサン/1官能性シラン(重量比)=86/14〕を滴下して、60℃で2時間反応後、室温(25℃)まで冷却して、実施例1のシリコーン樹脂組成物を得た。得られた組成物は、減圧下、溶媒を留去して濃縮後、シリコーン系剥離剤で剥離処理を施したPET基材上に膜厚100μmになるように塗工して、100℃で3分間加熱することにより、実施例1の組成物のシリコーン系透明感圧接着シートを調製した。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0064】
実施例2
実施例1において、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体(X-40-9225)16.0gを用いる代わりに、ポリメチルシルセスキオキサン誘導〔商品名「KR500」、信越化学社製、式(I)のR、R、R及びRはメチル基、分子量1000〜2000、メトキシ含有量28重量%〕16.0gを用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2のシリコーン樹脂組成物及びその接着シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0065】
実施例3
実施例1において、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体(X-40-9225)16.0gを用いる代わりに、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体〔商品名「KC89」、信越化学社製、式(I)のR、R、R及びRはメチル基、分子量約400、メトキシ基含有量46重量%〕16.0gを用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3のシリコーン樹脂組成物及びその接着シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0066】
実施例4
実施例1において、1官能性シラン誘導体であるメトキシトリメチルシラン(LS-510)2.5gを用いる代わりに、クロロトリメチルシラン〔商品名「KA31」、信越化学社製、式(II)のXが塩素、分子量108.6〕2.5gを用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例4のシリコーン樹脂組成物及びその接着シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0067】
実施例5
実施例1と同様の装置に、シリカの水分散液(商品名「コロイダルシリカ O」、日産化学社製、固形分濃度20重量%、反応性官能基として水酸基を含有、)25.8g(シリコーン誘導体100重量部に対して22重量部)を入れ、さらにメタノール20.0g、2-メトキシエタノール20.0gを添加後、そこに、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体(KR500)20.0gを2-プロパノール24.0gに溶解した液を、滴下ロートを用いて滴下して60℃で1時間反応させた後、さらに、メトキシトリメチルシラン(LS-510)3.0g〔ポリメチルシルセスキオキサン/1官能性シラン(重量比)=87/13〕を滴下ロートを用いて滴下して、60℃で2時間反応後、室温(25℃)まで冷却して、実施例5のシリコーン樹脂組成物を得た。得られた組成物は、実施例1と同様にして成形シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0068】
実施例6
実施例1と同様の装置に、アルミナの水分散液(商品名「アルミナゾル520」、日産化学社製、固形分濃度20重量%、反応性官能基として水酸基を含有)25.0g(シリコーン誘導体100重量部に対して22重量部)を入れ、さらにメタノール20.0g、2-メトキシエタノール20.0gを添加後、そこに、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体(X-40-9225)20.0gを2-プロパノール24.0gに溶解した液を、滴下ロートを用いて滴下して60℃で1時間反応させた後、さらに、メトキシトリメチルシラン(LS-510)2.5g〔ポリメチルシルセスキオキサン/1官能性シラン(重量比)=89/11〕を滴下ロートを用いて滴下して、60℃で2時間反応後、室温(25℃)まで冷却して、実施例6のシリコーン樹脂組成物を得た。得られた組成物は、実施例1と同様にして接着シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0069】
実施例7
実施例1において、酸化ジルコニアの水分散液(NZD-3007)を10.0g用いる代わりに15.0g(シリコーン誘導体100重量部に対して32重量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例7のシリコーン樹脂組成物及びその接着シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0070】
実施例8
実施例1において、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体(X-40-9225)16.0gを用いる代わりに、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体〔商品名「X-40-9246」、信越化学社製、2官能性アルコキシシランと3官能性アルコキシシランの部分加水分解縮合物、分子量3000〜5000、メトキシ含有量12重量%〕16.0gを用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例8のシリコーン樹脂組成物及びその接着シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下ではタックはなく、60℃に加熱することでタックが発現するものであった。
【0071】
比較例1
実施例1において、1官能性シラン誘導体を用いない以外は、実施例1と同様にして、比較例1のシリコーン樹脂組成物及びその接着シートを得た。金属酸化物微粒子の使用量はシリコーン誘導体100重量部に対して25重量部であった。なお、得られた接着シートは、室温下でタックが既にあり、60℃に加熱することでタックがより強くなるものであった。
【0072】
比較例2
実施例1において、1官能性シラン誘導体であるメトキシトリメチルシラン(LS-510)2.5gを用いる代わりに、2官能性シラン誘導体であるジメトキシジメチルシランクロロトリメチルシラン(商品名「KBM22」、信越化学社製)2.5gを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2のシリコーン樹脂組成物及びその接着シートを得た。なお、得られた接着シートは、室温下でタックが既にあり、60℃に加熱することでタックがより強くなるものであった。
【0073】
得られた接着シートの特性を以下の試験例1の方法に従って調べた。結果を表1に示す。また、組成物の光透過性(透過率%)についても併せて結果を示す。なお、参考例1:市販の粘着剤(商品名「SD4560」、東レダウコーニング社製)、参考例2:接着剤(商品名「SE9185」、東レダウコーニング社製)についても同様に特性を調べた。
【0074】
〔試験例1〕(引張りせん断強度)
まず、実施例及び比較例の接着シート(2cm×2cm)をそれぞれ、被着体としてのSUS(BA板)にラミネーターにより100℃で熱圧着し、さらに別のアルミナ基板を接着シートの上から積層しラミネーターにより100℃で熱圧着後、150℃で1時間処理して熱硬化反応を行い、引張りせん断強度測定用のサンプルを調製した。
【0075】
次に、万能引張り試験機(オートグラフ、島津製作所社製)を用いて、貼り付け面積2cm×2cmについて、引張り速度50mm/minで測定した。
【0076】
【表1】

【0077】
結果、実施例の組成物は光透過率が高く、成形体の接着シートは引張りせん断強度も高く、また室温下でのタックがないことから取り扱い性に優れると共に、加熱によりタックが発現し接着性に優れるものであることが分かる。また、実施例の組成物は何れも200℃で500時間放置しても、透過率は殆ど変化せず優れた耐熱性を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を封止するものとして好適に用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体とを重合反応させた重合物に、式(II):
【化1】

(式中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
で表される1官能性シラン誘導体を重合反応させることにより得られる、シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
金属酸化物微粒子の平均粒子径が1〜100nmである、請求項1記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
金属酸化物微粒子が、水、アルコール、又はそれらの混合物中に分散されてなる、請求項1又は2記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
アルコキシ基の含有量が、ポリメチルシルセスキオキサン誘導体1分子中、10〜50重量%である、請求項1〜3いずれか記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体とを重合反応させる工程、及び、該工程で得られた重合物に、式(II):
【化2】

(式中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
で表される1官能性シラン誘導体を重合反応させる工程を含む、請求項1〜4いずれか記載のシリコーン樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載のシリコーン樹脂組成物を成形させてなる、シリコーン系透明感圧接着シート。

【公開番号】特開2010−150341(P2010−150341A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328412(P2008−328412)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】