説明

ジアミン、ポリアミド酸及びポリイミド

【課題】テトラカルボン酸二無水物と収率良く開環重付加反応させることが可能な生分解性を有するジアミン、該ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加反応させて得られるポリアミド酸及び該ポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られるポリイミドの提供。また、生分解性を有すると共に、表面自由エネルギーを変化させる際に照射する紫外線を少なくすることが可能な濡れ性変化層が形成されている積層構造体並びに該積層構造体を有する電子素子アレイ、画像表示媒体及び画像表示装置の提供。
【解決手段】ジアミンは、一般式


(式中、Xは、エステル結合であり、m及びnは、自然数であり、p及びrは、0又は1であり、qは0以上の整数であり、m、n及びqの和が20以下)で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアミン、ポリアミド酸、ポリイミド、組成物、積層構造体、電子素子アレイ、画像表示媒体及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生分解性プラスチックとしては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等が知られているが、生分解性を有するポリアミド酸及びポリイミドは知られていない。ポリアミド酸及びポリイミドは、一般に、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加反応させて得られる。
【0003】
このとき、生分解性を有するジアミンとしては、グリシン又はフェニルアラニンを2−アミノエタノールと脱水反応させて得られる脂肪族ジアミンが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このような脂肪族ジアミンは、アミノ基の塩基性が強いため、テトラカルボン酸二無水物と収率良く開環重付加反応させることが困難であるという問題がある。
【0005】
一方、近年、有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタが精力的に研究されている。有機半導体材料を用いる利点として、フレキシビリティが高いこと、大面積化できること、製造プロセスが単純化できること、製造装置が安価であること等が挙げられる。
【0006】
有機薄膜トランジスタの特性を示すパラメータとして、電流のオンオフ比が用いられている。有機薄膜トランジスタにおいて、飽和領域でのソース・ドレイン電極間に流れるオン電流Idsは、式
ds=μCinW(V−VTH/2L
(式中、μは、電界効果移動度であり、Cinは、ゲート絶縁膜の単位面積当たりのキャパシタンスであり、式
in=εε/d
(式中、εは、ゲート絶縁膜の比誘電率であり、εは、真空の誘電率であり、dは、ゲート絶縁膜の厚さである。)
で表され、Wは、チャネル幅であり、Lは、チャネル長であり、Vは、ゲート電圧であり、VTHは、閾値電圧である。)
で表される。この式から、オン電流を大きくするためには、μを大きくすること、Lを小さくすること、Wを大きくすることが有効であることがわかる。このとき、μは、有機半導体材料の特性によるところが大きい。一方、L及びWは、有機薄膜トランジスタの構造に由来する。なお、一般に、Lを小さくするために、ソース・ドレイン電極間の距離を小さくするが、有機薄膜トランジスタは、μが小さいため、Lは、10μm以下、好ましくは、5μm以下が求められている。
【0007】
このようなソース・ドレイン電極のパターンは、インクジェット印刷法を用いて形成することが望まれている。インクジェット印刷法を用いると、パターンを直接描画することができるため、材料使用効率が高くなり、製造プロセスの簡略化及び低コスト化を実現することができる。しかしながら、インクジェット印刷法は、吐出量の少量化が困難であること、機械的な誤差等による着弾精度を考慮すると、30μm以下のパターンを形成することが困難である。
【0008】
そこで、紫外線を照射することにより表面自由エネルギーが変化する材料を含む濡れ性変化層に紫外線を照射して表面自由エネルギーを変化させた後、インクジェット印刷法を用いて、濡れ性変化層にソース・ドレイン電極のパターンを形成する方法が知られている。しかしながら、高出力の紫外線ランプを用いても長い照射時間が必要であり、結果として、タクトタイムが長くなり、製造プロセスの簡略化や低コスト化が望めないという問題があった。また、表面自由エネルギーを変化させる際に照射する紫外線により、濡れ性変化層の絶縁性が低下するという問題があった。
【0009】
このため、特許文献2では、紫外線を吸収すると結合が開裂する部位を2個以上有する側鎖を有する可溶性ポリイミドを含有する濡れ性変化層と、濡れ性変化層にパターン形成された導電層を有する積層構造体が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、テトラカルボン酸二無水物と収率良く開環重付加反応させることが可能な生分解性を有するジアミン、該ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加反応させて得られるポリアミド酸及び該ポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られるポリイミドを提供することを目的とする。また、本発明は、生分解性を有すると共に、表面自由エネルギーを変化させる際に照射する紫外線を少なくすることが可能な濡れ性変化層が形成されている積層構造体並びに該積層構造体を有する電子素子アレイ、画像表示媒体及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、ジアミンにおいて、一般式
【0012】
【化1】

(式中、Xは、エステル結合であり、m及びnは、それぞれ独立に、自然数であり、p及びrは、それぞれ独立に、0又は1であり、qは0以上の整数であり、m、n及びqの和が20以下である。ただし、qが0である場合、pは1であり、rは0である。)
で表されることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ポリアミド酸において、請求項1に記載のジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを開環重付加反応させて得られることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、第一のジアミン及び第二のジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを開環重付加反応させて得られるポリアミド酸であって、前記第一のジアミンは、請求項1に記載のジアミンであり、前記第二のジアミンは、一般式
【0015】
【化2】

(式中、sは、5以上13以下の整数である。)
で表されるジアミンであり、前記テトラカルボン酸二無水物は、一般式
【0016】
【化3】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フルオロ基又は炭素数が1以上4以下であるアルキル基である。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物又は化学式
【0017】
【化4】

で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のポリアミド酸において、前記ジアミンの総量に対する、前記第一のジアミンのモル比が20%以上99%以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のポリアミド酸において、数平均分子量が3×10以上5×10以下であることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、ポリイミドにおいて、請求項2乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、積層構造体において、基板上に、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られるポリイミドを含む濡れ性変化層の紫外線が照射された領域に導電体層が形成されている積層構造を有することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、電子素子アレイにおいて、請求項7に記載の積層構造体を有することを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明は、画像表示媒体において、請求項8に記載の電子素子アレイを有することを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明は、画像表示装置において、請求項9に記載の画像表示媒体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、テトラカルボン酸二無水物と収率良く開環重付加反応させることが可能な生分解性を有するジアミン、該ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を開環重付加反応させて得られるポリアミド酸及び該ポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られるポリイミドを提供することができる。また、本発明によれば、生分解性を有すると共に、表面自由エネルギーを変化させる際に照射する紫外線を少なくすることが可能な濡れ性変化層が形成されている積層構造体並びに該積層構造体を有する電子素子アレイ、画像表示媒体及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の積層構造体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子素子アレイの一例を示す図である。
【図3】本発明の画像表示媒体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の画像表示装置の一例を示す斜視図である。
【図5】実施例のジアミンのH−NMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例及び比較例のフィルムのコンボスト中で放置した時間に対する重量の変化を示す図である。
【図7】コンボスト中で放置する前及びコンボスト中で30日間放置した後の実施例1及び比較例2のフィルムを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0028】
本発明のジアミンは、一般式
【0029】
【化5】

(式中、Xは、エステル結合であり、m及びnは、それぞれ独立に、自然数であり、p及びrは、それぞれ独立に、0又は1であり、qは0以上の整数であり、m、n及びqの和は、20以下であり、10以下が好ましい。ただし、qが0である場合、pは1であり、rは0である。)
で表される。このため、本発明のジアミンは、テトラカルボン酸二無水物と収率良く開環重付加反応させることができ、生分解性を有する。このとき、一般式(A−1)において、m、n及びqの和が20を超えるジアミンは、非プロトン性極性溶媒に対する溶解性が低下する。非プロトン性有機溶媒としては、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0030】
以下、一般式(A−1)で表されるジアミンの合成方法について説明する。
【0031】
一般式(A−1)において、mが1であり、qが2であり、p及びrが0である、化学式
【0032】
【化6】

で表されるジアミン(アミノフェネチルアミノフェノキシアセテート)の合成方法について説明する。まず、化学式
【0033】
【化7】

で表される4−ニトロフェノキシ酢酸と、化学式
【0034】
【化8】

で表される2−(4−ニトロフェニル)エタノールを脱水反応させ、化学式
【0035】
【化9】

で表されるジニトロ体を得る。次に、ジニトロ体を還元反応させ、アミノフェネチルアミノフェノキシアセテートを得る。
【0036】
次に、一般式(A−1)において、m、p、q及びrが1であり、nが2である、化学式
【0037】
【化10】

で表わされるジアミンの合成方法について説明する。まず、4−ニトロフェノキシ酢酸と、化学式
【0038】
【化11】

で表わされる4−ニトロフェノキシ−2−ヒドロキシ酢酸エチルエステルを脱水反応させ、化学式
【0039】
【化12】

で表わされるジニトロ体を得る。次に、ジニトロ体を還元反応させ、ジアミンを得る。
【0040】
同様に、3−(4−ニトロフェノキシ)プロピオン酸と、1,4−ブタンジオール−1−(4−ニトロベンゾエート)を用いて、一般式(A−1)において、mが2であり、nが4であり、pが1であり、q及びrが0であるジアミンが得られる。
【0041】
また、同様に、4−ニトロフェノキシ酢酸と、ヒドロキシ酢酸4−ニトロフェニルを用いて、m、n及びpが1であり、q及びrが0であるジアミンが得られる。
【0042】
本発明のポリアミド酸は、一般式(A−1)で表されるジアミン及び一般式
【0043】
【化13】

(式中、sは、5〜13の整数である。)
で表されるジアミンを含むジアミンと、一般式
【0044】
【化14】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フルオロ基又は炭素数が1以上4以下であるアルキル基である。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物又は化学式
【0045】
【化15】

で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とを、公知の方法を用いて、開環重付加反応させて得られる。このため、本発明のポリアミド酸は、生分解性を有する。
【0046】
また、本発明のポリイミドは、本発明のポリアミド酸を、公知の方法を用いて、脱水閉環反応させて得られ、アミド結合の一部が残留しているものを含む。このため、生分解性を有する。また、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層は、表面自由エネルギーを変化させる際に照射する紫外線を少なくすることができる。
【0047】
このとき、sが5未満であると、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層に紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が不十分となり、13を超えると、本発明のポリイミドの非プロトン性極性溶媒に対する溶解性が不十分となる。また、R、R、R及びRにおける炭素数が1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0048】
なお、テトラカルボン酸二無水物と開環重付加反応させるジアミンは、二種以上の一般式(A−1)で表されるジアミン及び/又は一般式(A−2)〜(A−5)で表されるジアミンを含んでもよい。また、ジアミンと開環重付加反応させるテトラカルボン酸二無水物は、二種以上の一般式(B−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び/又は化学式(B−2)〜(B−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0049】
本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層は、一般式(A−2)〜(A−5)で表されるジアミン由来のアルキル基を側鎖に有するため、表面自由エネルギーを小さくする、即ち、撥水性にすることができる。
【0050】
一方、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層に紫外線を照射すると、一般式(A−2)〜(A−5)で表されるジアミン由来の側鎖のエステル結合又はアミド結合が開裂するため、表面自由エネルギーを大きくする、即ち、親水性にすることができる。なお、側鎖のエステル結合又はアミド結合が開裂すると、ラジカルが生成し、生成したラジカルは、直ちに、雰囲気に含まれる水分と反応し、カルボキシル基と、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基とが生成する。このとき、本発明のポリイミドは、主鎖にも一般式(1)で表されるジアミン由来のエステル結合を有するが、ベンゼン環と共役していないため、紫外線を照射しても主鎖は開裂されにくい。このため、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層は、紫外線を照射しても絶縁性を確保することができる。
【0051】
また、本発明のポリイミドの溶解性や成膜性を調整するために、一般式(A−1)〜(A−5)で表されるジアミン以外の芳香族ジアミンをさらに添加して、開環重付加反応させてもよい。このような芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、p−フェニレンジアミン、4,4−メチレンジアミン、4,4'−オキシジアニリン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0052】
本発明において、テトラカルボン酸二無水物と開環重付加反応させるジアミン中の一般式(1)で表されるジアミンの含有量は、20〜99mol%であることが好ましく、20〜60mol%がさらに好ましい。この含有量が20mol%未満であると、本発明のポリイミドの生分解性及び非プロトン性極性溶媒に対する溶解性が不十分となることがあり、99mol%を超えると、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層に紫外線を照射することによる表面自由エネルギーの変化が不十分となることがある。
【0053】
また、一般式(B−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び化学式(B−2)〜(B−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物が疎水性基を有するため、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層は、耐溶剤性に優れる。さらに、一般式(B−1)、化学式(B−2)〜(B−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物のカルボニル基がベンゼン環等と共役していないため、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層は、絶縁性に優れる。
【0054】
本発明のポリアミド酸は、非プロトン性極性溶媒に可溶であることが好ましい。これにより、本発明のポリアミド酸の溶液を基板に塗布した後、脱水閉環反応させることにより、濡れ性変化層を形成することができる。このとき、本発明のポリアミド酸の溶液は、本発明のポリイミドをさらに含んでいてもよい。また、本発明のポリアミド酸及び/又は本発明のポリイミドを二種以上併用してもよい。
【0055】
非プロトン性極性溶媒としては、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0056】
本発明のポリアミド酸の溶液を基板に塗布する方法としては、特に限定されないが、ディップコート法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、刷毛塗り法等が挙げられる。
【0057】
本発明のポリアミド酸は、数平均分子量が3×10〜5×10であることが好ましい。これにより、本発明のポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られる本発明のポリイミドのガラス転移点を200〜400℃とすることができる。なお、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0058】
ポリアミド酸の脱水閉環反応の反応率は、90〜100%であることが好ましく、95〜100%がさらに好ましい。反応率が90%未満であると、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層を有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として用いる場合に、濡れ性変化層が有機半導体層と良好な界面を形成できないことがある。その結果、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の変動が大きくなる。なお、ポリアミド酸の脱水閉環反応の反応率は、ジメチルスルホキシド(DMSO)−dに溶解させて、ポリイミドのH−NMRを測定し、残留したアミド結合の比率をピークの面積比から算出することにより測定することができる。
【0059】
本発明のポリイミドは、非プロトン性極性溶媒に可溶であることが好ましい。これにより、本発明のポリイミドを非プロトン性極性溶媒に溶解させた溶液を基板に塗布することにより、濡れ性変化層を形成することができる。このとき、本発明のポリイミドを二種以上併用してもよい。
【0060】
非プロトン性極性溶媒としては、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0061】
本発明のポリイミドの溶液を基板に塗布する方法としては、特に限定されないが、ディップコート法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、刷毛塗り法等が挙げられる。
【0062】
図1に、本発明の積層構造体の一例を示す。積層構造体10は、基板11上に、本発明のポリイミドを含む濡れ性変化層12が形成されている。このとき、濡れ性変化層12は、紫外線が照射されて、表面自由エネルギーが大きくなった紫外線照射領域12aと、紫外線が照射されていない紫外線非照射領域12bからなる。なお、紫外線照射領域12aの間には、幅が1〜5μmである紫外線非照射領域12bが形成されている。また、濡れ性変化層12の紫外線照射領域12a上には、導電体層13が形成されており、積層構造を有する。これにより、微細なパターンを有する導電体層13を簡便に形成することができる。
【0063】
基板11を構成する材料としては、特に限定されないが、ガラス;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂;SUS等の金属等が挙げられ、フレキシビリティが要求される場合には、樹脂が好ましい。
【0064】
なお、本発明のポリアミド酸及び本発明のポリイミドの成膜性が不十分である場合は、成膜性に優れる材料を本発明のポリアミド酸又は本発明のポリイミドの溶液に添加してもよい。
【0065】
濡れ性変化層12の厚さは、通常、30nm〜3μmであり、50nm〜1μmが好ましい。濡れ性変化層12の厚さが30nm未満であると、均一に形成することが困難になることがあり、3μmを超えると、表面の形状が悪化することがある。
【0066】
また、導電体層13は、導電性材料を含む塗布液を塗布した後、加熱したり、紫外線を照射したりすることにより形成することができる。
【0067】
導電性材料としては、特に限定されないが、金、銀、銅、アルミニウム、カルシウム等の金属;カーボンブラック、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフルオレン及びこれらの誘導体等の有機π共役ポリマー等が挙げられ、二種以上併用してもよい。また、ゲート電極及びソース・ドレイン電極を形成する際に、それぞれ異なる導電性材料を用いてもよい。
【0068】
導電性材料を含む塗布液としては、特に限定されないが、導電性材料を溶媒に溶解させた溶液、導電性材料の前駆体を溶媒に溶解させた溶液、導電性材料を溶媒に分散させた分散液、導電性材料の前駆体を溶媒に分散させた分散液等が挙げられる。
【0069】
溶媒としては、特に限定されないが、濡れ性変化層12のダメージが小さいことから、水、各種アルコール類等が挙げられる。また、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、n−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素等の溶媒も、濡れ性変化層12のダメージが小さい範囲において、用いることができる。
【0070】
導電性材料を含む塗布液としては、銀、金、ニッケル、銅等の金属粒子を有機溶媒や水に分散させた分散液、ドープドPANI(ポリアニリン)や、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等が挙げられる。
【0071】
導電性材料を含む塗布液を塗布する方法としては、特に限定されないが、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法等が挙げられる。中でも、濡れ性変化層12の表面自由エネルギーの影響を受けやすいことから、小さい液滴を吐出することが可能なインクジェット法が好ましい。プリンタに使用されるレベルの通常のヘッドを用いた場合、インクジェット法の解像度が30μm、位置合わせ精度が±15μm程度であるが、濡れ性変化層12における表面自由エネルギーの差を利用することにより、微細なパターンを有する導電体層13を形成することができる。
【0072】
本発明の積層構造体は、有機薄膜トランジスタのゲート電極及びその配線、ソース・ドレイン電極及びその配線等に適用することができる。
【0073】
図2に、本発明の電子素子アレイの一例として、薄膜トランジスタアレイを示す。薄膜トランジスタアレイ30は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ20を複数有する。なお、図2(a)及び(b)は、それぞれ断面図及び上面図である。また、図2において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
薄膜トランジスタ20は、基板11上に、ゲート電極21が形成されている。また、ゲート電極21が形成された基板11上に、ゲート絶縁膜として、濡れ性変化層12が形成されており、濡れ性変化層12の紫外線照射領域に、ソース・ドレイン電極として、導電層13が形成されている。さらに、ソース・ドレイン電極間のチャネル領域に半導体層22が形成されている。これにより、微細なパターンを有するゲート電極及びソース・ドレイン電極を簡便に形成することができる。
【0075】
半導体層22は、無機半導体層及び有機半導体層のいずれであってもよいが、薄膜トランジスタの製造プロセスを簡略化、低コスト化できることから、有機半導体層が好ましい。
【0076】
無機半導体層を構成する材料としては、特に限定されないが、CdSe、CdTe、Si等が挙げられる。
【0077】
無機半導体層を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ等の真空プロセスを用いる方法、ゾル・ゲル法等が挙げられる。
【0078】
有機半導体層を構成する材料としては、特に限定されないが、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子;ポリアセチレン系導電性高分子;ポリ(p−フェニレン)及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子;ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子;ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等が挙げられる。
【0079】
有機半導体層を形成する方法としては、特に限定されないが、スピンコート法、スプレーコート法、印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
【0080】
なお、ゲート電極21を形成する代わりに、基板11上に、濡れ性変化層12を形成し、濡れ性変化層12の紫外線照射領域に、ゲート電極として、導電層13を形成してもよい。
【0081】
このとき、二つの濡れ性変化層12に含まれる本発明のポリイミドは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、二つの導電体層13に含まれる導電性材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0082】
また、濡れ性変化層12の体積抵抗率が小さい場合は、濡れ性変化層12よりも体積抵抗率が大きい絶縁体層及び濡れ性変化層12を順次積層することにより、ゲート絶縁膜を形成してもよい。このようなゲート絶縁膜に紫外線を照射すると、濡れ性変化層12が紫外線を吸収するため、絶縁体層の絶縁性の低下を抑制することができる。
【0083】
絶縁体層を構成する材料としては、特に限定されないが、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリ(p−キシリレン)等が挙げられる。
【0084】
絶縁体層を形成する方法としては、特に限定されないが、転写印刷法、スピンコート法、ディップコート法等が挙げられる。
【0085】
図3に、本発明の画像表示媒体の一例として、電気泳動パネルを示す。電気泳動パネル40は、透明な基板41上に透明な電極42が形成されており、電極42上に、電気泳動素子としてのマイクロカプセル43aと、バインダー43bからなる画像表示層43が形成されている。このとき、マイクロカプセル43aは、例えば、白色の酸化チタン粒子及びオイルブルーで着色されたアイソパーL(エクソンモービル化学社製)を内包する。さらに、画像表示層43と、アクティブマトリックス基板としての薄膜トランジスタアレイ30が接合されている。
【0086】
なお、本発明の画像表示媒体は、電気泳動パネルに限定されず、アクティブマトリックス基板と、液晶素子、有機EL素子等の画像表示素子を組み合わせた、液晶パネル、有機ELパネル等であってもよい。また、本発明の画像表示媒体は、電子ペーパーとして用いることができる。
【0087】
図4に、本発明の画像表示装置の一例として、ポケットPCを示す。ポケットPC50は、フラット画面として、電気泳動パネル40を有し、入力部51から画像情報を入力することにより、画像が表示される。
【0088】
本発明の画像表示媒体は、この他に、複写機に適用することもできるし、自動車、飛行機等の移動交通媒体のシート部、フロントガラス面等に埋め込むこともできる。
【0089】
また、本発明の電子素子アレイは、画像表示媒体以外に、太陽電池、RFIDタグ等に適用することができる。
【0090】
以上、本発明の積層構造体に適用することが可能なポリアミド酸及びポリイミドについて説明したが、本発明のポリアミド酸は、このようなポリアミド酸に限定されず、一般式(A−1)で表されるジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを開環重付加反応させて得られるポリアミド酸であればよい。また、本発明のポリイミドは、このようにして得られるポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られるポリイミドであればよい。
【0091】
このとき、一般式(A−1)で表されるジアミン以外のジアミンとしては、テトラカルボン酸二無水物と開環重付加反応させることが可能であれば、特に限定されないが、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0092】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、ジアミンと開環重付加反応させることが可能であれば、特に限定されないが、ベンゾフェノン−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフォン−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【実施例】
【0093】
[ジアミンの合成]
4−ニトロフェノキシ酢酸0.8g(4.12mmol)、2−(4−ニトロフェニル)エタノール2.04g(12.2mmol)及び塩基触媒である4−ジメチルアミノピリジン0.40gを混合した後、テトラヒドロフラン6.5mlを添加し、溶解させた。次に、0℃に冷却し、脱水触媒であるジシクロヘキシルカルボジイミド0.92gを添加した後、50℃で24時間攪拌した。さらに、生成したジシクロヘキシル尿素を減圧濾過で濾別した後、エバポレーターを用いて、テトラヒドロフランを留去した。得られた固形分が5質量%になるようにジクロロメタンに溶解させた後、エバポレーターを用いて、ジクロロメタンを留去し、ジニトロ体を得た。
【0094】
得られたジニトロ体、エタノール20ml及びテトラヒドロフラン3mlを混合した後、触媒であるパラジウム炭素0.104gを添加し、0.3MPaで接触水素化反応させた。次に、二重濾紙を用いて濾過し、パラジウム炭素を除去した後、エバポレーターを用いて、テトラヒドロフラン及びエタノールを留去した。さらに、減圧濾過した後、室温で真空乾燥し、アミノフェネチルアミノフェノキシアセテートを得た。
【0095】
得られたアミノフェネチルアミノフェノキシアセテートのH−NMRスペクトルを図6に示す。
【0096】
[実施例1]
アミノフェネチルアミノフェノキシアセテート、化学式
【0097】
【化16】

で表されるジアミン及び化学式
【0098】
【化17】

で表されるテトラカルボン酸二無水物の混合物(モル比1:1:2)に、固形分濃度が20質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンを加え、アルゴン雰囲気下、室温で24時間開環重付加反応させて、化学式
【0099】
【化18】

で表されるポリアミド酸を得た。得られたポリアミド酸の数平均分子量を、GPCを用いて測定したところ、2×10であった。
【0100】
次に、ポリアミド酸の固形分濃度が10質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンをさらに加え、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の総量に対して、5倍当量のピリジン及び4倍当量の無水酢酸を添加し、アルゴン雰囲気下、120℃で4時間脱水閉環反応させた。得られた反応液を、攪拌しているメタノール中に投入して沈殿させた後、減圧濾過した。さらに、メタノールで洗浄した後、80℃で真空乾燥し、化学式
【0101】
【化19】

で表されるポリイミドを得た。
【0102】
[実施例2]
アミノフェネチルアミノフェノキシアセテート及び化学式
【0103】
【化20】

で表わされるテトラカルボン酸二無水物の混合物(モル比1:1)に、固形分濃度が20質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンを加え、室温で24時間開環重付加反応させて、化学式
【0104】
【化21】

で表されるポリアミド酸を得た。得られたポリアミド酸の数平均分子量を、GPCを用いて測定したところ、2×10であった。
【0105】
次に、ポリアミド酸の固形分濃度が10質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンをさらに加え、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の総量に対して、5倍当量のピリジン及び4倍当量の無水酢酸を添加し、アルゴン雰囲気下、120℃で4時間脱水閉環反応させた。得られた反応液を、攪拌しているメタノール中に投入して沈殿させた後、減圧濾過した。さらに、メタノールで洗浄した後、80℃で真空乾燥し、化学式
【0106】
【化22】

で表されるポリイミドを得た。
【0107】
[比較例1]
アミノフェネチルアミノフェノキシアセテートの代わりに、化学式
【0108】
【化23】

で表されるジアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして、化学式
【0109】
【化24】

で表されるポリイミドを得た。なお、ポリアミド酸の数平均分子量は1.2×10であった。
【0110】
[比較例2]
ジアミンとして、化学式
【0111】
【化25】

で表されるジアミンを用い、テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物を用いた以外は、実施例2と同様にして、化学式
【0112】
【化26】

で表されるポリイミドを得た。なお、ポリアミド酸の数平均分子量は5.4×10であった。
【0113】
[生分解性]
スピンコート法を用いて、実施例及び比較例のポリイミドをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液を、ガラス基板上に塗布した後、ホットプレートを用いて、加熱し、一辺が1.5cmの正方形状のフィルムを得た。
【0114】
実施例及び比較例のフィルムを、コンポスト(剪定枝、牛糞、雑草由来)4kg中で放置した。
【0115】
図6に、実施例及び比較例のフィルムのコンボスト中で放置した時間に対する重量の変化を示す。図6から、実施例1のフィルムは、生分解性を有するため、重量が減少しているが、比較例のフィルムは、重量がほとんど減少していないことがわかる。
【0116】
図7(a)及び(b)に、それぞれコンボスト中で放置する前及びコンボスト中で30日間放置した後の実施例1及び比較例2のフィルムを示す。図7から、実施例1のフィルムは、生分解性を有するため、形状が変化しているが、比較例2のフィルムは、形状がほとんど変化していないことがわかる。
【0117】
次に、実施例1のフィルムを、コンポスト(剪定枝、牛糞、雑草由来)4kg中及び55℃の好気条件で放置し、20日後と45日後におけるフィルムの数平均分子量を、GPCを用いて測定した。その結果、55℃の好気条件で放置した場合には、数平均分子量がほとんど変化しなかったのに対し、コンポスト中で放置した場合には、数平均分子量が低下した。
【0118】
[接触角]
スピンコート法を用いて、実施例及び比較例のポリイミドをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液を、ガラス製の基板11上に塗布した後、ホットプレートを用いて、加熱し、濡れ性変化層12を形成した。
【0119】
次に、高圧水銀ランプを用いて、所定量(表1参照)の紫外線を濡れ性変化層12に照射した後、銀ナノ粒子を水系溶媒に分散させた分散液(以下、銀ナノインクという)の接触角を、液滴法を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0120】
表1から、実施例1及び比較例1の濡れ性変化層12は、ジアミン由来のアルキル基を側鎖に有するポリイミドを含むため、表面が撥水性であり、銀ナノインクの接触角が30°以上であることがわかる。これに対して、比較例2の濡れ性変化層12は、ジアミン由来のアルキル基を側鎖に有さないポリイミドを含むため、表面が親水性であり、銀ナノインクがほとんど濡れ広がる。一方、実施例1及び比較例1の濡れ性変化層12は、紫外線を照射すると、濡れ性変化層12に含まれるポリイミドが有するジアミン由来の側鎖のエステル結合又はアミド結合が開裂するため、表面が親水性となり、銀ナノインクが濡れ広がる。
【0121】
[パターニング性]
スピンコート法を用いて、実施例及び比較例のポリイミドをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液を、ガラス製の基板11上に塗布した後、ホットプレートを用いて、加熱し、濡れ性変化層12を形成した。
【0122】
次に、高圧水銀ランプを用いて、5μm間隔のライン形状のフォトマスク越しに、所定量(表1参照)の紫外線を濡れ性変化層12に照射した。さらに、インクジェット法を用いて、紫外線照射領域に銀ナノインクを塗布した後、オーブンを用いて、200℃で焼成することにより、導電体層13を形成し、積層構造体10を得た(図1参照)。
【0123】
次に、金属顕微鏡を用いて、導電体層13を観察し、パターニング性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、5μm間隔のライン形状の導電体層13が全て形成されているものを◎、ほとんど形成されているものを○、一つも形成されていないものを×として、判定した。
【0124】
表1から、パターニング性の評価結果は、接触角の変化の評価結果と相関していることがわかる。即ち、実施例1及び比較例1の濡れ性変化層12は、紫外線の照射量が15J/cm以下であっても、紫外線照射領域12aと紫外線非照射領域12bとの表面自由エネルギーの差が大きいため、5μm間隔のライン形状の導電体層13が形成される。これに対して、比較例2の濡れ性変化層12は、紫外線の照射量が15J/cm以下であると、紫外線照射領域12aと紫外線非照射領域12bとの表面自由エネルギーの差が不十分であるため、5μm間隔のライン形状の導電体層13が形成されない。
【0125】
【表1】

[薄膜トランジスタアレイの作製]
メタルマスクを用いて、真空下でアルミニウムを蒸着することにより、ポリエチレンナフタレート製の基板11上に、厚さが50nmのゲート電極21を形成した。次に、スピンコート法を用いて、ゲート電極21が形成された基板11上に、実施例1又は比較例1、2のポリイミドと、実施例2のポリイミドの質量比が1:2の混合物をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液を塗布し、170℃で焼成し、厚さが600nmの濡れ性変化層12(ゲート絶縁膜)を形成した。さらに、高圧水銀ランプを用いて、フォトマスク越しに10J/cmの紫外線をゲート絶縁膜に照射した。次に、インクジェット法を用いて、紫外線照射領域に銀ナノインクを塗布した後、オーブンを用いて、170℃で焼成することにより、導電体層13(チャネル長が5μmのソース電極・ドレイン電極)を形成した。さらに、インクジェット法を用いて、ソース・ドレイン電極間のチャネル領域に、化学式
【0126】
【化27】

で表される化合物のキシレン溶液を塗布した後、オーブンを用いて、120℃で加熱することにより、厚さが30nmの半導体層22を形成し、薄膜トランジスタアレイ30を得た(図2参照)。
【0127】
表2に、得られた薄膜トランジスタアレイ30のトランジスタ特性の評価結果を示す。
【0128】
【表2】

表2から、実施例1又は比較例1のポリイミドを用いて作製した薄膜トランジスタアレイ30は、電界効果移動度が大きいことに加え、ゲートリーク電流が小さく、オンオフ比が大きい。これは、テトラカルボン酸二無水物由来の構成単位の絶縁性が大きいことに加え、濡れ性変化層12の表面平滑性が大きいためであると考えられる。このとき、実施例1のポリイミドを用いた場合、比較例1のポリイミドを用いた場合よりも、薄膜トランジスタアレイ30の電界効果移動度が大きい。これは、実施例1のポリイミドが、比較例1のポリイミドよりも、実施例2のポリイミドとの相溶性が大きく、濡れ性変化層12の表面平滑性が大きいためであると考えられる。一方、比較例2のポリイミドを用いて作製した薄膜トランジスタアレイ30は、濡れ性変化層12が白濁しており、トランジスタ特性を示さなかった。これは、濡れ性変化層12の表面平滑性が小さいことに加え、テトラカルボン酸二無水物由来の構成単位の絶縁性が小さいためであると考えられる。
【0129】
[電気泳動パネルの作製]
実施例1のポリイミドを用いて作製した薄膜トランジスタアレイ30を用いて、電気泳動パネル40(図3参照)を作製した。具体的には、酸化チタン粒子とオイルブルーで着色したアイソパーを内包するマイクロカプセル43aと、ポリビニルアルコール43bの水溶液を混合した塗布液を、ポリカーボネート製の透明基板41上に形成されたITO製の透明電極42上に塗布して、マイクロカプセル43aとポリビニルアルコール43bからなる画像表示層43を形成した。さらに、画像表示層43と、薄膜トランジスタアレイ30を、基板11及び透明基板41が最外面となるように接着させ、電気泳動パネル40を得た。
【0130】
電気泳動パネル40のゲート電極21に繋がるバスラインに走査信号用のドライバーICを接続し、ソース電極に繋がるバスラインにデータ信号用のドライバーICを接続し、0.5秒毎に画面の切り替えを行ったところ、良好な静止画像を表示することができた。
【符号の説明】
【0131】
10 積層構造体
11 基板
12 濡れ性変化層
12a 紫外線照射領域
12b 紫外線非照射領域
13 導電体層
20 薄膜トランジスタ
21 ゲート電極
22 半導体層
30 薄膜トランジスタアレイ
40 電気泳動パネル
50 ポケットPC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0132】
【特許文献1】国際公開第99/11703号パンフレット
【特許文献2】特開2008−227294号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

(式中、Xは、エステル結合であり、m及びnは、それぞれ独立に、自然数であり、p及びrは、それぞれ独立に、0又は1であり、qは0以上の整数であり、m、n及びqの和が20以下である。ただし、qが0である場合、pは1であり、rは0である。)
で表されることを特徴とするジアミン。
【請求項2】
請求項1に記載のジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを開環重付加反応させて得られることを特徴とするポリアミド酸。
【請求項3】
第一のジアミン及び第二のジアミンを含むジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを開環重付加反応させて得られるポリアミド酸であって、
前記第一のジアミンは、請求項1に記載のジアミンであり、
前記第二のジアミンは、一般式
【化2】

(式中、sは、5以上13以下の整数である。)
で表されるジアミンであり、
前記テトラカルボン酸二無水物は、一般式
【化3】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フルオロ基又は炭素数が1以上4以下であるアルキル基である。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物又は化学式
【化4】

で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とするポリアミド酸。
【請求項4】
前記ジアミンの総量に対する、前記第一のジアミンのモル比が20%以上99%以下であることを特徴とする請求項3に記載のポリアミド酸。
【請求項5】
数平均分子量が3×10以上5×10以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載のポリアミド酸。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られることを特徴とするポリイミド。
【請求項7】
基板上に、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られるポリイミドを含む濡れ性変化層の紫外線が照射された領域に導電体層が形成されている積層構造を有することを特徴とする積層構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層構造体を有することを特徴とする電子素子アレイ。
【請求項9】
請求項8に記載の電子素子アレイを有することを特徴とする画像表示媒体。
【請求項10】
請求項9に記載の画像表示媒体を有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−270283(P2010−270283A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125634(P2009−125634)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】