説明

スイッチ

【課題】主に自動車のストップランプの点消灯制御などに用いられる車両用スイッチに関するものであり、LED等の低電流の光源に対しても安定した電気的接続が得られるスイッチ構造を提供する。
【解決手段】ケース1内に植設された固定接点4と、前記ケース1内に上下動可能に収納された作動体2と、前記固定接点4に対向し前記作動体2の上下動に伴い固定接点4と接離する可動接点5とを備えたスイッチであって、前記固定接点4と可動接点5が互いに異なる硬度の接点からなるとともに、高い硬度の前記接点表面に複数の凸部4A,5Aを設けたスイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のブレーキペダル操作時にストップランプの消灯点灯制御などに用いられる車両用などのスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車用スイッチ、特にストップランプ用プッシュスイッチは、図4に示すような構成を有していた。
【0003】
同図において、9は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、10は同じく絶縁樹脂製の作動体で、ケース9には底面から端子部11に連通した複数の固定接点12が植設されている。そして、13は導電金属製の可動接点で、この可動接点13がケース9の底面との間にやや撓んだ状態で装着された接圧ばね14によって、複数の固定接点12に下方から弾性的に接触し、複数の固定接点12が可動接点13を介して電気的に接続されて、スイッチ接点が形成されている。
【0004】
このように構成された車両用プッシュスイッチは、一般に自動車のブレーキペダルの手前に、アームなどによって作動体10の操作軸10Aが押圧された状態で装着されるとともに、固定接点12の端子部11がコネクタなどによってストップランプに接続される。したがって、ブレーキペダルの操作により可動接点13と固定接点12が弾接して接触、乖離することによりストップランプを点灯、消灯させブレーキの操作状況を表示する。
【0005】
ストップランプはブレーキの操作状況を表示するため、車両用スイッチの中でも最も接点の接触、乖離の頻度が高くなる。そのため固定接点12および可動接点13の表面には酸化皮膜が発生しやすく、電気的接続が不安定になりやすいため、接点間に生じるアークなどを利用して接点表面に凹凸を形成し酸化皮膜を突き破ることで安定した電気的接続を得ていた。
【0006】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−222754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の構成では、接点の接触・乖離時に生じる接点間のアークを利用して固定接点12および可動接点13の表面に凹凸を形成するため、大電流を通電する電球などを用いたストップランプに限定されることになる。そのため最近普及してきたLED等の比較的小電流を通電するストップランプでは、接点間にアークは発生させることができないため、接点表面に凹凸を形成することができず、したがって酸化皮膜を突き破ることができなくなるため電気的接続が不安定となる課題を有していた。
【0008】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するもので、安定した電気的接続を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、ケース内に植設された固定接点と、前記ケース内に上下動可能に収納された作動体と、前記固定接点に対向し前記作動体の上下動に伴い固定接点と接離する可動接点とを備えたスイッチであって、前記固定接点と可動接点が互いに異なる硬度の接点からなるとともに、高い硬度の前記接点表面に複数の凸部を設けたスイッチであって、高硬度の凸部を低硬度の接点表面に押圧することにより、低硬度の接点を塑性変形させて酸化皮膜を突き破ることができるため安定した電気的接続が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスイッチは、電気的接続を行う固定接点と可動接点の接点に互いに硬度が異なる材料とし、かつ高硬度側の接点にのみ複数の凸部を設けることで、接点の押圧時に高い硬度の凸部により低い硬度の接点表面を塑性変形させることで接点表面の酸化皮膜を突き破ることができるため、安定した電気的接続が得られるという効果を奏するものである。さらに固定接点と作動接点の組合せを複数設け、さらに凸部を設けた高い硬度の接点を前記複数の固定接点と可動接点に交互に設けることにより、一部の接点で不良が発生してもスイッチ全体として安定した電気的接続が得られるという効果を同時に奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態における車両用スイッチについて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施の形態における車両用スイッチの断面図である。
【0013】
図1において、1は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、2は略円柱状で同じく絶縁樹脂製の作動体であり、ケース1には底面から端子部3に連通する複数の固定接点4が植設されている。
【0014】
また、5は導電金属製の可動接点で、この可動接点5がケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着された接圧ばね6によって、複数の固定接点4に下方から弾接し、複数の固定接点4が可動接点5を介して電気的に接続されることでスイッチ接点が形成されている。
【0015】
また、7はコイル状の戻りばね、8はケース1上面の開口部を覆うカバーで、戻りばね7が作動体2下面とケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体2を上方に付勢している。
【0016】
さらにカバー8には上方へ突出する中空筒部8Aが設けられ、この中空筒部8A内に作動体2の操作軸2Aが上下動可能に挿通するとともに、操作軸2A上端が中空筒部8Aから上方へ突出して、車両用スイッチが構成されている。
【0017】
図2、図3は図1に示した断面図の接点部における一部拡大図を示している。4は略ドーム形状の固定接点、5は略ドーム形状の可動接点であり、固定接点4と可動接点5とで一対の接点を構成している。図2では固定接点4の表面に複数の凸部4Aが形成されており、図3では可動接点5の表面に複数の凸部5Aが形成されている。複数の凸部4A,5Aは、その高さが10〜数100ミクロンの先端が鋭利な凸部からなる。固定接点4および可動接点5からなる接点部分は、どちらか一方のみに上記の複数の凸部を設けている。
【0018】
ここで、複数の凸部4A,5Aを形成した接点の硬度をHv2とし、それに相対する凸部4A,5Aを形成しない略ドーム形状の接点の硬度をHv1とすると、常にHv2>Hv1の関係となるように接点の材料を選択して構成する。相対する固定接点4および可動接点5の接点を、互いに異なる硬度の材料とし、高い硬度の接点表面に複数の凸部4A,5Aを形成することにより、接圧ばね6を介して可動接点5を固定接点4に弾接させたとき、固定接点4もしくは可動接点5の一方の表面に形成した複数の凸部4A,5Aの先端に接圧ばね6からの圧力が集中し、他方の接点表面を塑性変形させることにより、見かけ上凸部4A,5Aの先端が他方の接点へ突刺さる状態となる。
【0019】
図2は固定接点4の接点の硬度を可動接点5の接点よりも高くした一例であり、固定接点4の表面には複数の凸部4Aを設けている。図3は図2と逆に可動接点5の硬度を固定接点4の硬度よりも高くした例であり、可動接点5の表面には複数の凸部5Aを設けている。図1に図示していない固定接点4と可動接点5からなる他の接点部分も、上記のように、互いに硬度の異なる材料でかつ高い硬度の接点の表面に複数の凸部4A,5Aを設けており、凸部4A,5Aを備える接点を、固定接点4、可動接点5と交互に設けるように配置する。
【0020】
こうすることで複数の凸部4A,5Aを設ける接点を、固定接点4側あるいは可動接点5側のどちらか一方のみに設けるのではなく、両接点等分に設けることにより一部の接点部分で凸部4A,5Aが破損した場合でも車両用スイッチとしては安定な電気的接続を維持することが可能となる。ただし、固定接点4と可動接点5の組合せが奇数個の場合は、凸部4A,5Aを設けた固定接点4と可動接点5の数は均等とはならないが、隣あう接点どうしで凸部4A,5Aを設けた接点を、固定接点4と可動接点5とに交互に設けることで、上記と同様の効果が得られるものである。
【0021】
次に、凸部4A,5Aの形成方法について説明する。凸部4A,5Aの形成方法としては、エッチングや鍍金などの化学的な手法、サンドブラストや切削、所望の形状をその表面に形成したパンチあるいはポンチを用いた成形加工などの機械的手法などがある。
【0022】
接点としては、凸部4A,5Aを設ける高硬度な接点として銅−タングステン系材料や、銀−タングステン系材料、銀−酸化錫系材料を、低硬度な接点としては銀−銅−ニッケル系材料、銀−銅−インジウム系などが良い。インジウム、ニッケル、金などを銀−銅系材料に鍍金により形成してもよい。また、同じ材料系であっても、その組成の重量比率を変えることで硬度を制御することが可能である。
【0023】
例えば、銀−酸化カドミウム系材料では、酸化カドミウムの重量比率を大きくするほど材料硬度は大きくなる。酸化カドミウムの重量比率を6wt%から16wt%とすることで、材料硬度(ヴィッカース硬度Hv)を40から80へ高くすることができる。このように、同系の接点であっても、重量比率を互いに変えることで固定接点4および可動接点5の両方の接点として使用可能である。
【0024】
さらに、硬度が同じ接点を用いた場合でも凸部4A,5Aの形成過程で材料硬度を変えることも可能である。凸部4A,5Aの形成方法としてパンチおよびポンチを用いた成形加工を用いた場合、その成形過程で生じる塑性変形により加工硬化が起き、成形前の材料よりも成形後の材料のほうがその硬度は高くなる。したがって、同じ硬度の接点を用いても成形加工により凸部4A,5Aを形成することで、凸部4A,5Aを形成する接点の硬度を他方の凸部4A,5Aを形成しない接点の硬度よりも高くすることが可能となる。
【0025】
上記のように互いに異なる硬度の接点により接点部を構成し、高硬度の接点の表面に複数の凸部4A,5Aを形成することにより、酸化皮膜を容易に破ることができ、その結果安定した電気的接続を維持できる車両用スイッチを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るスイッチは、電気的接続を行う固定接点と可動接点の接点に互いに硬度が異なる材料とし、かつ高硬度側の接点にのみ複数の凸部を設けることで、接点の押圧時に高い硬度の凸部により低い硬度の接点表面を塑性変形させることで接点表面の酸化皮膜を突き破ることができるため、安定した電気的接続が得られるという効果を奏するものである。さらに固定接点と作動接点の組合せを複数設け、さらに凸部を設けた高い硬度の接点を前記複数の固定接点と可動接点に交互に設けることにより、一部の接点で不良が発生してもスイッチ全体として安定した電気的接続が得られるという効果を同時に奏するものであり、主に自動車のブレーキペダル操作時のストップランプの消灯点灯制御などに用いられる車両用プッシュスイッチとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態における車両用スイッチの断面図
【図2】同実施の形態における接点部分の一部拡大断面図
【図3】同実施の形態における接点部分の一部拡大断面図
【図4】従来の車両用スイッチの断面図
【符号の説明】
【0028】
1 ケース
2 作動体
4 固定接点
4A 固定表面に設けた複数の凸部
5 可動接点
5A 可動接点表面に設けた複数の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に植設された固定接点と、前記ケース内に上下動可能に収納された作動体と、前記固定接点に対向し前記作動体の上下動に伴い固定接点と接離する可動接点とを備えたスイッチであって、前記固定接点と可動接点が互いに異なる硬度の接点からなるとともに、高い硬度の前記接点表面に複数の凸部を設けたスイッチ。
【請求項2】
固定接点と可動接点を複数備え、前記固定接点と可動接点の接点表面に、交互に複数の凸部を設けた請求項1に記載のスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−311278(P2007−311278A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141171(P2006−141171)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】