説明

スクラブ部材浄化方法、スクラブ部材浄化装置、スクラブ洗浄装置、ディスク材、並びに磁気ディスク

【課題】所望の時期に、スクラブ洗浄に用いられるパッド等のスクラブ部材から、付着物を除去する。
【解決手段】本発明は、被洗浄物Dのスクラブ洗浄用のスクラブ部材14を浄化するように構成されたスクラブ部材浄化装置10であって、スクラブ部材浄化用の付着物除去部材39を備え、該付着物除去部材39は、被洗浄物Dのスクラブ洗浄の際、スクラブ部材14の表面部分が被洗浄物Dから離れて再び該被洗浄物Dに接するまでに通る軌跡上に、付着物除去部材39の表面部分が位置するように、配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク用基板や磁気ディスクなどの物品の洗浄に用いられるスクラブ部材を浄化するスクラブ部材浄化方法およびその装置、該装置を含むスクラブ洗浄装置、これらによる洗浄を経たディスク材、並びに、磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブ等に用いられる磁気ディスク用基板は、特にその内のガラス基板は、例えば、次の工程を経ることで作製される。まず、ガラス材料を半溶融状態にしてプレス成形して円板状の板材(メルトプレス材)とするか、あるいはシート成形したものを規定サイズに切断することにより板材が得られる。そして、その円板状の板材の中心部に円孔をあける、あるいは中心部と外周部を丸く切り抜くことで、中心部に円孔を有する円板すなわちドーナツ状のガラスディスク材が得られる。次いで、そのドーナツ状のガラスディスク材の外周部および内周部といった周辺部の稜角部分に対して、面取り加工が施される。これらの工程を通じて、ほぼ所定の寸法を有するドーナツ状のガラスディスク材が得られるようになる。さらに、ほぼ所定の寸法を有するドーナツ状のガラスディスク材の主表面に対してラッピング加工が施される。そしてこのようにして得られたガラスディスク材に対して、その端面(外周端面および内周端面)や主表面を鏡面にするべく、研磨が行われる。その後、研磨砥粒等をガラスディスク材から除去するべく、ガラスディスク材の表面洗浄が行われ(洗浄工程)、そしてさらに、ガラスディスク材を化学強化することが行われる。
【0003】
上記洗浄工程の一例をより具体的に説明すると、その洗浄工程は、水、温水、あるいは、これらに洗剤を混合したものをガラスディスク材の主表面に流しながら、パッドまたはロール(パッド等)をその主表面に対して擦るようにして(スクラブして)、その主表面に残存している研磨砥粒等を取り除く工程(スクラブ洗浄工程)である。
【0004】
ところで、そのようなスクラブ洗浄工程において、パッド等の表面に異物等の付着物がくっつくことがある。付着物には、例えば、ディスク材に対するそれまでの加工で生じたガラス片、研磨砥粒、装置構成部材相互の摺動により生じた摩耗粉がある。このような付着物がパッド等に付着した状態でそのパッド等を用いて上記ガラスディスク材のようなディスク材を洗浄すると、スクラブ洗浄工程中に、ディスク材とパッド等との摺擦によりディスク材の表面にその付着物が噛み込んで、ディスク材の表面に傷がつく場合がある。このような傷がついたディスク材を基板として用いて磁気ディスクを製造した場合、その磁気ディスクには、一般にその傷に起因する凹凸が存在することになる。そのような凹凸の存在は、磁気ディスクにエラー領域が存在することを意味し得るので、そもそも、そのようなディスク材にはそのような傷が存在しないことが望まれる。
【0005】
特許文献1において、パッド等の表面に付着した付着物を除去するために考案されたクリーニングディスクが提案されている。特許文献1に記載のクリーニングディスクは、磁気ディスク用の円板状基板の主表面をスクラブ洗浄するスクラブ部材の表面のうち、その主表面に接触する接触面に接するクリーニング面を備え、そのクリーニング面は0.1〜500μmである複数の凹凸を備えている。そして、このクリーニングディスクは、一例として、5000枚のガラスディスク材をスクラブ洗浄する毎に、そのスクラブ洗浄に用いられたパッド等に対して1回用いられる。特許文献2の記載によれば、クリーニングディスクは、対向して回転するスクラブパッド間に、回転しながら挟持されるものであり、それによりその定盤からの付着物の除去を期待するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−67918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スクラブ洗浄で用いられるパッド等のスクラブ部材は、スクラブ洗浄に用いられていない状態で、付着物の除去が図られるのが一般的である。上記特許文献1に記載のクリーニングディスクの場合も同様に、スクラブ洗浄に用いられていないときに利用に供される。それ故、スクラブ部材のクリーニングのために、ディスク材に対するスクラブ洗浄をわざわざ休止することが必要とされる。また、上記特許文献1に記載のように、ディスク材5000枚毎に、スクラブ部材からの付着物の除去が図られる場合、ディスク材間でスクラブ洗浄による洗浄度合いが大きく異なる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、所望の時期に、スクラブ洗浄に用いられるスクラブ部材から、付着物を除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、被洗浄物のスクラブ洗浄に用いられるスクラブ部材を清浄に保つように、それの浄化を可能にする構成を備える。好ましくは、本発明は、スクラブ部材を適宜の時期に、スクラブ部材を浄化できるように、スクラブ部材浄化用の付着物除去部材を備え、該付着物除去部材は、被洗浄物のスクラブ洗浄の際、スクラブ部材の表面部分が被洗浄物から離れて再び該被洗浄物に接するまでに通る軌跡上に、付着物除去部材の表面部分が位置するように、配置される。
【0010】
この付着物除去部材を備えたスクラブ部材浄化装置は、さらに、付着物除去部材に浄化液をかける浄化液供給手段を備える。これにより、付着物除去部材を清浄な状態に保ち、スクラブ部材の浄化をより適切に行うことを可能にする。
【0011】
こうしたスクラブ部材浄化装置は、例えば、スクラブ部材を用いて被洗浄物をスクラブ洗浄しているとき、スクラブ部材の浄化を図るように用いられ、被洗浄物を離れたスクラブ部材の部分が、該スクラブ部材浄化用の付着物除去部材に接した後、被洗浄物に接する工程を含むように作動される。
【0012】
なお、本発明は、上記スクラブ部材浄化装置を備えるスクラブ洗浄装置に存する。また、上記装置や方法の適用により洗浄されたディスク材にも存する。また、本発明は、このようなディスク材である磁気ディスク用基板や磁気ディスクにも存する。なお、本発明は、このようなディスク材を磁気ディスク用基板として用いて作製された磁気ディスクにも存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所望の時期に、スクラブ洗浄に用いられるスクラブ部材から付着物を除去することができ、これにより例えば品質の優れた磁気ディスク用基板や磁気ディスクを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態を、以下、図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下、説明される実施形態は、磁気ディスクなどのディスク材のスクラブ洗浄に適用される例である。
【0015】
図1は、実施形態に係るスクラブ部材浄化装置10が適用されたスクラブ洗浄装置12の模式図である。また、図2は、図1のスクラブ洗浄装置12のスクラブ部材14周りの、構成要素間の相互関係を表すようにした、模式図である。
【0016】
スクラブ洗浄装置12は、被洗浄物をスクラブ洗浄するためのスクラブ部材14と、スクラブ部材浄化装置10とを備える。ここでは、被洗浄物は、磁気ディスク、磁気ディスク用基板などのディスク材Dである。そして、より詳細には、スクラブ洗浄装置12は、ディスク材Dの洗浄を可能にするようにそれを保持するための保持手段16と、保持手段16によって保持されたディスク材Dをその中心軸周りに回転させるための回転手段18と、ディスク材D上に洗浄液を供給するための洗浄液供給手段20と、スクラブ部材14と、スクラブ部材14をディスク材Dに対して作動させる作動手段24と、スクラブ部材14の浄化を行うためのスクラブ部材浄化装置10とを備える。
【0017】
保持手段16は、回転板26と、回転板26から突出して設けられてディスク材Dに係合する係合手段28とを有する。ディスク材Dは、回転板26上に置かれて、係合手段28と係合することで、しっかりと保持される。なお、ここでは、係合手段28は、ディスク材Dの心出し機能を有する。係合部材28は、ディスク材Dの中心軸周りの円孔(貫通孔)DHに差し込まれて、ディスク材Dがある程度以下の力では外れたり、滑ったりしないように、ディスク材Dに係合して保持する機構を有する。この機構としては、既知の種々の機構を適用することができる。なお、保持手段16は、これに加えて、あるいは係合手段28に代えて、真空ポンプなどの真空源からの真空力によってディスク材Dを回転板26上に吸引吸着させる吸着手段を備えてもよい。この場合、真空力が適切にディスク材Dに作用するように、回転板26にディスク材Dと真空源とをつなげる連通路や溝が設けられ得る。
【0018】
あるいは、図示しないが、ディスク材Dの外形部を保持することもできる。例えば3組のローラーを、例えばディスク材Dの中心軸周り120度それぞれ離れた位置に配置してディスク材Dを保持することもできる。
【0019】
回転手段18は、保持手段16によって保持されたディスク材Dをその中心軸周りに回転させるために、ここでは、回転板26を回転可能に設けられる。つまり、回転手段18は、ディスク材Dを直接的に回転させるのではなく、回転板26を回転させることによってディスク材Dを回転させる。なお、回転手段18は、例えばモータを含んで構成される。
【0020】
また、ディスク材Dの両面を同時に洗浄する場合には、被洗浄物をスクラブ洗浄するためのスクラブ部材14と、スクラブ部材浄化装置10とをディスク材Dの両側にそれぞれ配置することにより、ディスク材Dの両面を同時に洗浄することができる。この場合には、ディスク材Dをより安定に把持するために、一組のスクラブ部材14をディスク材Dを挟んで対向する位置に配置することが好ましい。
【0021】
ディスク材D上に洗浄液Wを供給するために設けられる洗浄液供給手段20に関しては、図1、2では、その一部の供給ノズル30のみが描かれている。洗浄液Wは、ここでは、水に洗剤を入れたものが用いられる。ただし、洗浄液Wは、水や温水のみから構成されてもよい。洗浄液Wは、スクラブ洗浄装置12内で循環される。一旦、ディスク材Dに対してかけられた洗浄液Wは、装置12内の底部(図示しないケース部材の底部)に集められ、ポンプによって再度、供給ノズル30に圧送される。なお、一旦、ディスク材Dに対してかけられた洗浄液Wは、フィルタ等を通された後、再度ディスク材Dに供給されるとよい。あるいは、一旦、ディスク材Dに対してかけられた洗浄液Wは、装置12内を循環されるのではなく、装置12から排出されてもよい。
【0022】
このようにして、洗浄液Wがかけられつつ回転しているディスク材Dをスクラブ洗浄するべく、作動手段24によりスクラブ部材14がディスク材Dに対して作動される。具体的には、スクラブ部材14は、ロール体32として構成される。ロール体32は、軸周りに回転可能な回転体として構成されている。ロール体32は、ディスク材Dの主表面D1の半径よりも長い長さを有する。そして、ロール体32は、ここでは、長手方向に延びる芯部32cの周りに取り付けられたスポンジ状部32sを有する。スポンジ状部32sは略筒形状を有する。
【0023】
このようなロール体32をディスク材Dに対して作動させるために作動手段24が、ロール体32に取り付けられている。なお、作動手段24に対して、ロール体32は、交換可能にされている。作動手段24は、上記のようにして回転されているディスク材Dに、所定圧力でロール体32を押し付け可能なように移動させる移動手段としての機能を有する。作動手段24は、ロール体32の芯部32cに連結され、ロール体32を、ディスク材Dから離して例えば退避位置に動かしたり、ディスク材Dに接触させて例えば押し付けたりすることを可能にする。また、作動手段24は、ロール体32を回転させる回転手段の機能を含む。つまり、作動手段24によって、より詳しくは、作動手段24に一体化された回転手段によって、ロール体32は、その芯部16cの回転中心軸周りに回転させられる。そのロール体32の回転速度、回転方向は、図示しない制御装置によって電気的に制御可能にされている。なお、作動手段24における移動手段と回転手段とは、分けられて、それらは独立にされてもよい。
【0024】
そして、スクラブ部材14の浄化を行うためのスクラブ部材浄化装置10が上記したように設けられる。スクラブ部材浄化装置10は、スクラブ部材14に付着した汚れ、異物等の付着物をそれから取り除いて、スクラブ部材14をきれいにすることを可能にする構成を備える。具体的には、スクラブ部材浄化装置10は、付着物除去部材39としての第2ロール体40を有する。第2ロール体40は、軸周りに回転可能な回転体として構成されている。第2ロール体40は、ここでは実質的に、上記ロール体32と同じ構成を有する。つまり、第2ロール体40は、長手方向に延びる芯部40cの周りに取り付けられたスポンジ状部40sを有する。スポンジ状部40sは略筒形状を有する。そして、第2ロール体40は、ロール体32よりも長手方向に長く、ロール体32の全長さに亘って、ロール体32に当接することができる。なお、第2ロール体40は、ここでは、ロール体32よりも大きな径を有する。そして、第2ロール体40をスクラブ部材14に対して作動させるための第2作動手段42を、スクラブ部材浄化装置10は有する。第2作動手段42は、上記作動手段24が含む、移動手段と回転手段との機能を有する。第2作動手段42における移動手段は、スクラブ部材14であるロール体32に対して第2ロール体40を接近させて所定圧力で押圧したり、離して退避位置に移動させたりするための構成を含む。したがって付着物除去部材としての第2ロール体40は、ディスク材Dとロール体32とが接触可能な方向とは異なる方向に配置可能になる。そして第2作動手段42における回転手段は、第2ロール体40を、その芯部40cの回転中心軸周りに回転させることを可能にする。その第2ロール体40の回転速度、回転方向は、上記制御装置によって電気的に制御可能にされている。なお、第2作動手段42における移動手段および回転手段は分けられて、独立にされてもよい。
【0025】
さらに、スクラブ部材浄化装置10は、第2ロール体40に対して浄化液Cを供給するための浄化液供給手段43を有する。浄化液供給手段43は、図1から理解できるようにシャワー状に構成される以外は、上記洗浄液供給手段20と同様の構成を備え、図1、2では、同様にその一部のノズルの如き第2供給部材44のみが描かれている。浄化液Cとしては、ここでは、水が用いられる。ただし、浄化液Cは、水、温水あるいはそれらいずれかに洗剤を入れたものであってもよい。浄化液Cは、スクラブ部材浄化10のケース部材46内で循環される。一旦、第2ロール体40に対してかけられた浄化液Cは、装置10内、つまり、そのケース部材46の底部に集められ、ポンプによって再度、第2供給部材44に圧送される。なお、一旦、第2ロール体40に対してかけられた浄化液Cは、フィルタ等を介して、不着物等が除去された後、再度第2供給部材44に供給されるとよい。あるいは、一旦、第2ロール体40に対してかけられた浄化液は、装置10内を循環されるのではなく、装置10から排出されてもよい。
【0026】
図2からより理解されるように、ロール体32に接触するとき、付着物除去部材39としての第2ロール体40は、スクラブ部材14としてのロール体32に対して、後方側に位置するように設けられる。つまり、第2ロール体40は、ディスク材Dとロール体32とが接触可能な方向とは異なる方向のうち、ディスク材Dに対するロール体32によるスクラブ洗浄をサポートする方向に位置付けられ得る。第2ロール体40がロール体32に接触することで、第2ロール体40からロール体32に力が及ぶが、その力をスクラブ洗浄に役立てるためである。
【0027】
なお、上記したように、上記制御装置により、ロール体32や第2ロール体40が制御可能にされている。そして、その制御装置により、上記種々の手段や装置等の作動は制御可能である。
【0028】
次に、上記スクラブ洗浄装置の作動に関して、図面に基づいて、特に図2に基づいて説明する。ディスク材Dが回転されてそこに洗浄液Wが供給されてかけられている状態で、ロール体32がディスク材Dに対して押し付けられる。このとき、ロール体32は、ディスク材Dの半径方向に合致するように、ディスク材Dに対して位置付けられる。そして、ロール体32は、ディスク材Dの円孔を横切らず、ディスク材の円孔を端部にそこから延びる領域に均一に接するように位置づけられる。さらに、このとき、ロール体32は、ディスク材Dとの接触部の移動方向が、ディスク材Dの移動方向と逆になるように、あるいは対向する方向になるように、回転させられる。なお、このとき、ロール体32がディスク材Dを擦る(摺擦する)速度は、ディスク材Dがロール体32を擦る(摺擦する)速度よりも早いように調節される。これにより、ディスク材D表面の汚染物はロール体32に押し潰されたり引き伸ばされたりする変形が減少し、かつ、ディスク材D表面上を移動することなく、掻き取られる。
【0029】
このようにロール体32を用いてディスク材Dがスクラブ洗浄されているとき、第2ロール体40は、ロール体32に対して、ロール体32とディスク材Dとの接触箇所とは異なる箇所に位置付けられ、ロール体32の全長さに亘ってロール体32の外周に概ね均一に押し付けられる。こうして、第2ロール体40は、ディスク材Dのスクラブ洗浄の際、ロール体32の表面部分がディスク材Dから離れて再びディスク材Dに接するまでに通る軌跡上、具体的には図2のロール体の外形輪郭上の所定の範囲領域に、第2ロール体40の表面部分が位置するように、配置される。なお、このとき、ロール体32の回転軸線と第2ロール体40の回転軸線とが概ね平行になるように、それらは相互に位置付けられる。また、このとき、第2ロール体40とロール体32との接触箇所において、第2ロール体40は、ロール体32との接触部の移動方向が、ロール体32の接触部の移動方向と逆になるように、あるいは対向する方向になるように、回転させられる。そして、このときに、第2ロール体40に対して、浄化液Cがかけられる。浄化液Cは、図1から理解できるように、第2ロール体40の長手方向において満遍なくかけられる。これは、浄化液Cの供給が、第2ロール体40の浄化を図るために行われるからである。
【0030】
このように、ディスク材Dのスクラブ洗浄の際、ディスク材Dと接触可能な位置とは異なる、スクラブ部材14としてのロール体32の外形輪郭上の位置(外形上位置)においてロール体32に接触するように、付着物除去部材39としての第2ロール体40が動かされる。その結果、第2ロール体40は、ディスク材Dのスクラブ洗浄の際、ロール体32の表面部分がディスク材Dから離れて再びディスク材Dに接するまでに通る軌跡上に、第2ロール体40の表面部分が位置するように、配置される。そして、それらは互いに対して、作動手段24、42によって相対移動させられる。したがって、スクラブ部材14としてのロール体32は、スクラブ洗浄するためにディスク材Dに接して、そしてディスク材Dを離れたロール体32の部分は、第2ロール体40に接する。こうしてロール体32の部分が第2ロール体40に接することで、ロール体32の部分は第2ロール体40の接触部と擦れ、好ましくは、ロール体32のその部分に付着した付着物は第2ロール体40に移動する。こうして、付着物が除去されたロール体32の部分は、再度、ディスク材Dに接触して、ディスク材Dのスクラブ洗浄に用いられるようになる。つまり、一度ディスク材Dの表面に接したロール体32の表面部分が次にディスク材Dに接する前に、ロール体32の表面部分から付着物が除去され得るようになる。
【0031】
他方、付着物が移動した第2ロール体40の部分には、浄化液Cがかけられることになる。これにより、第2ロール体40の部分から、付着物が洗い流され、その部分は浄化される。したがって、次に、第2ロール体40のその部分は、ロール体32に接するとき、ロール体32から付着物を取り除くように働くことができると共に、ロール体32に付着物が移動することを防ぐことを可能にする。
【0032】
ディスク材Dが磁気ディスクの場合、その表面の凹凸パターンには、略半径方向に凹部が続くサーボパターンと、円周方向に凹部が続くデータトラックとがある。上記のようにスクラブ部材の浄化を図りつつ、ディスク材の洗浄を行うことで、付着物が適切に除去されるので、そのような場合であっても、それら凹凸パターンの凹凸に付着物が入り込んで固着する可能性を低減することが可能になる。
【0033】
以上、上記したように、ディスク材Dのスクラブ洗浄を行っているときに、スクラブ部材浄化装置を作動させることで、スクラブ部材の浄化を行うことができる。したがって、所望の時期に、スクラブ洗浄に用いられるスクラブ部材から、付着物を除去することが可能である。
【0034】
以上、上記実施形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、ディスク材以外の物品のスクラブ洗浄にも適用可能であり、表面を擦り洗いして洗浄するもの(金型や、ナノインプリント用のモールドを含む)には広く適用可能である。また、そのようにスクラブ部材を押し当てて洗浄できるものであれば、被洗浄物の形状は、平面状のものに限定されず、曲面であってもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、スクラブ部材をロール体としたが、スクラブ部材は、ブラシ、パッド等であってもよく、種々の繊維状、綿状材料等から作製されてもよい。また、スクラブ部材と付着物除去部材とは、概ね同じ素材から同じような構成を有するように作られてもよいが、異なる素材から異なる構成を有するように作られてもよい。ただし、付着物除去部材は、スクラブ部材から付着物をより適切に除去可能なように構成されるとよい。
【0036】
なお、上記実施形態では、本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態が適用されたスクラブ洗浄装置の模式図である。
【図2】図1のスクラブ洗浄装置のスクラブ部材周りの模式図である。
【符号の説明】
【0038】
10 スクラブ部材浄化装置
12 スクラブ洗浄装置
14 スクラブ部材
16 保持手段
18 回転手段
20 洗浄液供給手段
24 作動手段
26 回転板
30 供給ノズル
32 ロール体
39 付着物除去部材
40 第2ロール体
42 第2作動手段
44 第2供給部材
D ディスク材
W 洗浄液
C 浄化液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラブ部材を用いて被洗浄物をスクラブ洗浄しているとき、前記スクラブ部材の浄化を図るスクラブ部材浄化方法であって、
前記被洗浄物を離れた前記スクラブ部材の部分が、スクラブ部材浄化用の付着物除去部材に接した後、前記被洗浄物に接する工程を含むことを特徴とするスクラブ部材浄化方法。
【請求項2】
被洗浄物のスクラブ洗浄用のスクラブ部材を浄化するように構成されたスクラブ部材浄化装置であって、
前記スクラブ部材浄化用の付着物除去部材を備え、
該付着物除去部材は、前記被洗浄物のスクラブ洗浄の際、前記スクラブ部材の表面部分が前記被洗浄物から離れて再び該被洗浄物に接するまでに通る軌跡上に、前記付着物除去部材の表面部分が位置するように、配置されることを特徴とするスクラブ部材浄化装置。
【請求項3】
前記付着物除去部材に浄化液をかける浄化液供給手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のスクラブ部材浄化装置。
【請求項4】
前記付着物除去部材は、軸周りに回転可能な回転体であることを特徴とする請求項2または3に記載のスクラブ部材浄化装置。
【請求項5】
前記付着物除去部材を前記軸周りに所定方向に回転させる回転手段を備え、
該回転手段は、前記スクラブ部材と前記付着物除去部材との接触部において前記付着物除去部材が前記スクラブ部材の移動方向と対向する方向に動くように、前記付着物除去部材を回転させることを特徴とする請求項4に記載のスクラブ部材浄化装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載のスクラブ部材浄化装置を備えることを特徴とするスクラブ洗浄装置。
【請求項7】
請求項1に記載のスクラブ部材浄化方法を適用しつつスクラブ洗浄された、あるいは、請求項6に記載のスクラブ洗浄装置を用いてスクラブ洗浄されたことを特徴とするディスク材。
【請求項8】
請求項7に記載のディスク材を磁気ディスク用基板として用いて作製されたことを特徴とする磁気ディスク。
【請求項9】
請求項7に記載のディスク材であることを特徴とする磁気ディスク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−99567(P2010−99567A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271991(P2008−271991)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】