説明

スタビライザブッシュ

【課題】スタビライザバーに接着することなく良好な線形ねじり特性を得ることができ、且つ、部品点数の低減およびスタビライザバーへの組み付け性を良好とすることができるスタビライザブッシュを提供する。
【解決手段】スタビライザバー20の外周面は平坦面状に形成された第一の平坦部21を備える。筒状のゴム弾性体本体12の内周側のうち周方向の一部のみに、ゴム弾性体本体12の内周側に露出された状態またはゴム膜13により被覆された状態で、金具11を配置する。この金具11は、ゴム弾性体本体12の内周側に位置する面を平坦面状に形成し、スタビライザバー20の第一の平坦部21に対向して配置される平坦金具11aを備える。さらに、ゴム弾性体本体12の周方向において金具11が配置されていない位置に、ゴム弾性体本体12の内周面から外周面に亘って且つ軸方向の全長に亘って切断された切割部12gを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状からなり、車両のスタビライザバーを挿通保持するゴム弾性体本体を備えるスタビライザブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタビライザブッシュの内周断面が円形であって、スタビライザバーの外周断面が円形である場合には、相対回転角度が小さい場合にはスタビライザブッシュがねじり変形してスタビライザバーに追随するが、相対回転角度が大きくなると、追随しきれず、両者の間で滑りが発生する。この滑りにより、操舵時の車体ロールが大きくなったり、振動が発生し、車両の乗り心地に悪影響を及ぼしたり、異音が発生したりして、快適性を損なう。
【0003】
ここで、スタビライザブッシュをスタビライザバーに加硫接着することも考えられるが、大きな部材であるスタビライザバーに加硫接着をするためには、大きな設備が必要となり、高コスト化を招来する。
【0004】
そこで、特開平11−141588号公報(特許文献1)に記載されているように、スタビライザバーの外周断面を円形以外の形状とし、スタビライザブッシュの内周断面をスタビライザバーの外周断面に対応するように円形以外の形状とすることが記載されている。これにより、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの相対回転角度が大きくなったとしても、スタビライザブッシュがスタビライザバーの移動に追随して、両者の間に滑りが発生することを抑制できるとされている。つまり、スタビライザブッシュが線形のねじり特性を有することができる。このようにすることで、車体ロールの増大や振動および異音の発生を防止できる。
【0005】
また、特開2006−189062号公報(特許文献2)には、筒状のゴム弾性体本体を2分割し、それぞれの内周側に半割形状の金属製の内筒を加硫接着している。この内筒は、それぞれ、平面部を有している。そして、分割されている両者により平面部を有するスタビライザバーを挟みこむように取り付けることで、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの間に滑りが発生することを防止している。
【特許文献1】特開平11−141588号公報
【特許文献2】特開2006−189062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のスタビライザブッシュにおいては、ゴム弾性体のみからなるため、ゴムの変形の容易性を考えると、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの間に滑りが発生するおそれがある。また、特許文献2に記載のスタビライザブッシュにおいては、金属製の内筒を有することで、特許文献1のスタビライザブッシュに比べて、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの間に滑りが発生する可能性は抑制できる。しかし、特許文献2に記載のスタビライザブッシュは、2分割されており、部品点数の増加、および、スタビライザバーへの組み付け性が良好とは言えない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スタビライザバーに接着することなく良好な線形ねじり特性を得ることができ、且つ、部品点数の低減およびスタビライザバーへの組み付け性を良好とすることができるスタビライザブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスタビライザブッシュは、
筒状からなり車両のスタビライザバーを挿通保持するゴム弾性体本体を備えるスタビライザブッシュにおいて、
前記スタビライザバーの外周面は、平坦面状に形成された第一の平坦部を備え、
前記スタビライザブッシュは、
前記ゴム弾性体本体の内周側のうち周方向の一部のみに配置され、前記ゴム弾性体本体の内周側に露出またはゴム膜により被覆されて配置された金具と、
前記ゴム弾性体本体の周方向において前記金具が配置されていない位置に、前記ゴム弾性体本体の内周面から外周面に亘って且つ軸方向の全長に亘って切断された切割部と、
を備え、
前記金具は、前記ゴム弾性体本体の内周側に位置する面を平坦面状に形成し、前記スタビライザバーの前記第一の平坦部に対向して配置される平坦金具を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、平坦金具がゴム弾性体本体の内周側に露出している場合には、当該平坦金具はスタビライザバーの第一の平坦部に直接当接する状態となる。一方、平坦金具がゴム弾性体本体の内周側にゴム膜により被覆されて配置されている場合には、当該平坦金具とスタビライザバーの第一の平坦部との間には、ゴム膜が介在している。このゴム膜とは、ねじり特性に影響を及ぼさない程度の厚みとしている。
【0010】
そして、前者後者の何れの場合であっても、スタビライザバーが回転する場合に、平坦金具とスタビライザバーの第一の平坦部とが回転方向に係合することで、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの間に滑りが発生することを防止できる。このように、平坦金具を備えることで、特許文献1のようなゴム単体の場合に比べて、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの間に滑りが発生することをより防止できる。従って、良好な線形のねじり特性を得ることができる。
【0011】
ところで、平坦金具が露出している場合には、当該平坦金具がスタビライザバーの第一の平坦部に確実に当接している状態であれば、スタビライザバーが回転する際に滑りが発生することをより確実に防止できる。一方、ゴム膜を介在する場合には、金属同士の接触を防止できることにより、両者の接触音が発生することを防止できる。
【0012】
さらに、本発明によれば、金具をゴム弾性体本体の周方向の一部のみに配置し、且つ、金具以外の部位に切割部を形成している。つまり、スタビライザブッシュとしては、一部品として構成される。そして、スタビライザバーへの組み付けは、切割部を開いた状態でスタビライザバーに挿入することで行われる。つまり、特許文献2のように、2部品に分割されている場合に比べて、部品点数の低減を図るとともに、スタビライザバーへの組み付け性を良好とすることができる。
【0013】
この一部品化は、金具をゴム弾性体本体の周方向の一部のみに配置することに着目したことにより達成できたものである。ただし、金具を周方向の一部のみとすることで、全周を金具により囲む特許文献2に比べて、滑りの発生の可能性は高くなる可能性がある。しかし、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの間に滑りが発生することを防止できるために必要の金具の形状を工夫することで解決している。
【0014】
好ましくは、前記平坦金具の前記平坦面状の面は、車両上下方向に平行となるように配置されているとよい。ここで、スタビライザバーは、車両振動により、車両上下方向の振動が入力される。つまり、車両上下方向の振動が入力した場合には、スタビライザバーとスタビライザブッシュが車両上下方向に相対移動することになる。このとき、平坦金具の平坦面状の面が車両上下方向に平行となるように配置されているため、スタビライザバーが車両上下方向に相対移動した場合であっても、スタビライザバーの第一の平坦部と平坦金具との対向距離は変化しない。従って、車両上下方向の振動が入力した場合であっても、スタビライザバーの第一の平坦部と平坦金具との周方向の係合状態は維持できるため、両者の滑りの発生を防止できる。従って、良好な線形のねじり特性を得ることができる。
【0015】
また、好ましくは、前記スタビライザバーの外周面は、前記第一の平坦部の周方向両側に隣接する位置に、相互に平行な平坦面状に形成された一対の第二の平坦部を備え、
前記金具は、前記平坦金具の周方向両端から立設し、車両上下方向に対向するように配置され、前記平坦金具とともにコの字型形状をなすとともに、前記一対の第二の平坦部にそれぞれ対向して配置される一対の対向金具を備えるとよい。
【0016】
つまり、スタビライザバーは、一対の対向金具により車両上下方向に挟まれるように配置されている。従って、車両上下方向の振動が入力した場合に、スタビライザバーの一対の第二の平坦部が一対の対向金具から離れないような位置関係となる。これにより、車両上下方向の振動が入力した場合であっても、スタビライザバーの第一の平坦部と平坦金具との周方向の係合状態が維持されるため、両者の滑りの発生を防止できる。さらに、一対の対向金具と一対の第二の平坦部とにおいても、周方向に係合する状態となる。このことによっても、車両上下方向の振動が入力した場合であっても、さらに、スタビライザバーとスタビライザブッシュとの間に滑りが発生することを防止できる。特に、上述した、平坦金具の平坦面状の面を車両上下方向に平行となるように配置することと組み合わせることで、車両上下方向の振動が入力した場合に、より確実に滑りの発生を防止できる。従って、良好な線形のねじり特性を得ることができる。
【0017】
また、好ましくは、前記スタビライザバーの外周面は、前記第一の平坦部と異なる位置に、平坦面状に形成された第三の平坦部を備え、
前記ゴム弾性体本体の内周面は、平坦面状に形成され、前記スタビライザバーの前記第三の平坦部に対向して配置されるゴム平坦部を備えるとよい。
【0018】
上述したように、金具はゴム弾性体本体の周方向の一部のみに配置されている。従って、ゴム弾性体本体の内周側においては、金具のない角度範囲が存在する。このような角度範囲のゴム弾性体本体の内周面においてゴム平坦部を備えるようにし、スタビライザバーの第三の平坦部に対向して配置させることで、上述した金具による滑り防止効果に加えて、ゴム弾性体本体のゴム平坦部による滑り防止効果を発揮することができる。従って、良好な線形のねじり特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第一実施形態>
次に、第一実施形態のスタビライザブッシュ10について、図1および図2を参照して説明する。図1は、第一実施形態のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。なお、図1および図2における上下方向は、車両の上下方向である。
【0020】
スタビライザブッシュ10は、筒状からなり、内部にスタビライザバー20を挿通保持している。ここで、スタビライザバー20は、鋼材からなり、車両上方から見た場合にコの字型からなる。そして、スタビライザバー20のコの字型の両端が、それぞれ左右の車輪(図示せず)を支持するサスペンションアーム(図示せず)に連結されている。このスタビライザバー20のうち、スタビライザブッシュ10に挿通保持される範囲以外の外周面は、同径の円柱形状からなる。
【0021】
一方、スタビライザバー20のうちスタビライザブッシュ10に挿通保持される範囲の外周面は、U字型状からなる。具体的には、当該範囲の外周面は、第一の平坦部21と、一対の第二の平坦部22、23と、円弧凸状部24とから形成される。第一の平坦部21は、平坦面状に形成されており、組み付け状態において車両上下方向に平行となる位置に形成されている。一対の第二の平坦部22、23は、第一の平坦部21の周方向両側(図2の上下端)に隣接する位置に、相互に平行で、且つ、第一の平坦部21に直交するような平坦面状に形成されている。円弧凸状部24は、一対の第二の平坦部22、23のそれぞれの端部を連結するように、円弧凸状に形成されている。
【0022】
また、スタビライザブッシュ10は、その外周面が締結部材30により押圧されて、車両ボディ40(サスペンションメンバ)に固定されている。ここで、図2に示すように、締結部材30は、金属製からなり、U字型形状部31と、フランジ部32とを備えている。U字型形状部31は、スタビライザブッシュ10の外周面を押圧するU字型形状からなる。このU字型形状部31の押圧面(U字型の内側面)の軸方向断面形状は、中心軸に平行な直線状をなしている。フランジ部32は、U字型形状部31の開口両端から外側へ向かって延びるようにそれぞれ設けられ、ボルト(図示せず)により車両ボディ40に取付けるための部分である。
【0023】
そして、スタビライザブッシュ10は、金具11と、ゴム弾性体本体12とを備えている。金具11は、同じ板厚の平板を屈曲形成して、軸方向断面がコの字型形状となるように形成している。具体的には、金具11は、平坦金具11aと、一対の対向金具11b、11cとから構成される。平坦金具11aは、コの字型の中央連結部分に相当する。そして、平坦金具11aのうち一対の対向金具11b、11c間の幅(図2の上下方向幅)は、スタビライザバー20の第一の平坦部21の周方向幅と同一からなる。また、平坦金具11aの当該幅に直交する方向の幅(図1の左右方向幅)は、スタビライザバー20の第一の平坦部21の軸方向長さとほぼ同一である。一対の対向金具11b、11cは、平坦金具11aの図2の上下両端から立設し、相互に平行に且つ対向するように形成されている。
【0024】
ゴム弾性体本体12は、筒状のゴム弾性体からなる。このゴム弾性体本体12のゴム材料としては、摺動性の良好な自己潤滑ゴム等が好適に用いられる。そして、金具11が、ゴム弾性体本体12の内周側のうち周方向の一部のみに、ゴム弾性体本体12の内周側に露出するように加硫接着により一体成形されている。具体的には、金具11のコの字型の凹状部分が内側に露出するように成形されている。さらに、平坦金具11aの露出面が、車両上下方向に平行となるように、且つ、一対の対向金具11b、11cの露出面が、車両上下方向に対向するように配置されている。
【0025】
このゴム弾性体本体12の外周面には、外周平坦部12aと、U字型凹状部12bと、一対のU字型フランジ部12c、12dとが形成されている。外周平坦部12aは、図1および図2の上面であり、平坦面状に形成されている。この外周平坦部12aは、車両ボディ40に当接する部位である。
【0026】
U字型凹状部12bは、軸方向中央部であって、径方向断面形状がU字型形状となるように形成されている。そして、U字型凹状部12bは、U字型の開口側が外周平坦部12aの部位となるように形成されている。このU字型凹状部12bは、締結部材30に押圧される部位である。
【0027】
一対のU字型フランジ部12c、12dは、U字型凹状部12bの軸方向両端にU字型凹状部12bよりも径方向外方に突出するように、且つ、径方向断面形状がU字型形状となるように形成されている。つまり、一対のU字型フランジ部12c、12dがU字型凹状部12bに対して径方向外方に突出するように形成することで、U字型凹状部12bが径方向に凹むように形成されることになる。
【0028】
ゴム弾性体本体12の内周面には、金具11に加硫接着される加硫接着面12eと、円弧凹状部12fとから形成されている。加硫接着面12eは、金具11のコの字型の外側凸状部分に一致した形状からなる。つまり、加硫接着面12eは、コの字型凹状からなる。円弧凹状部12fは、金具11のコの字型の凹状部分の開口に連続するように、ほぼ円弧凹状に形成されている。つまり、金具11のコの字型の凹状部分とゴム弾性体本体12の円弧凹状部12fとにより、スタビライザブッシュ10の内周面を形成している。そして、このスタビライザブッシュ10の内周面は、スタビライザバー20のU字型状部分21〜24に対応する形状からなる。
【0029】
そして、金具11の平坦金具11aが、スタビライザバー20の第一の平坦部21に対向して、且つ、当接するように配置されている。また、金具11の一対の対向金具11b、11cが、スタビライザバー20の一対の第二の平坦部22、23に対向して、且つ、当接するように配置されている。さらに、ゴム弾性体本体12の円弧凹状部12fが、円弧凸状部24に対向して、且つ、押圧するように配置されている。
【0030】
さらに、ゴム弾性体本体12は、周方向において金具11が配置されていない位置に、ゴム弾性体本体12の内周面から外周面に亘って、且つ、軸方向の全長に亘って切断された切割部12gを有している。本実施形態においては、切割部12gは、円弧凹状部12fのうち金具11から最も離れた位置から、車両前後方向に向かって切断されている。
【0031】
上述した構成により、操舵によりスタビライザバー20がねじり回転する場合に、平坦金具11aとスタビライザバー20の第一の平坦部21とが回転方向に係合することで、スタビライザバー20とスタビライザブッシュ10との間に滑りが発生することを防止できる。従って、良好な線形のねじり特性を得ることができる。
【0032】
さらに、スタビライザバー20が、一対の対向金具11b、11cにより車両上下方向に挟まれるように配置されている。ここで、車両走行中においては、スタビライザバー20が車両ボディ40に対して車両上下方向に相対移動する。このように車両上下方向の振動がスタビライザバー20に入力した場合に、スタビライザバー20の一対の第二の平坦部22、23が一対の対向金具11b、11cから離れないような位置関係となる。さらに加えて、平坦金具11aの平坦面状の面は、車両上下方向に平行となるように配置されている。つまり、車両上下方向の振動がスタビライザバー20に入力した場合に、スタビライザバー20とスタビライザブッシュ10が車両上下方向に相対移動しようとしたとしても、スタビライザバー20の第一の平坦部21と平坦金具11aとの対向距離は変化せず、両者が当接した状態を維持できる。従って、平坦金具11aおよび一対の対向金具11b、11cにより、車両上下方向の振動が入力した場合であっても、スタビライザバー20の第一の平坦部21と平坦金具11aとの周方向の係合状態は維持できるため、両者の滑りの発生を防止できる。さらに、一対の対向金具11b、11cと一対の第二の平坦部22、23とにおいても、周方向に係合する状態となる。このことによっても、車両上下方向の振動が入力した場合に、スタビライザバー20とスタビライザブッシュ10との間に滑りが発生することを防止できる。従って、より良好な線形のねじり特性を得ることができる。
【0033】
さらに、本実施形態のスタビライザブッシュ10は、金具11をゴム弾性体本体12の周方向の一部のみに配置し、且つ、金具11以外の部位に切割部12gを形成している。つまり、スタビライザブッシュ10としては、一部品として構成される。スタビライザバー20への組み付けは、切割部12gを開いた状態でスタビライザバー20に挿入することで行われる。
【0034】
さらに、金具11は、ゴム弾性体本体の内周側に露出している。従って、金具11がスタビライザバー20に直接当接する状態となる。そして、金具11がスタビライザバー20に確実に当接している状態を維持しているため、スタビライザバー20が回転する際に、スタビライザバー20とスタビライザブッシュ10との間に滑りが発生することをより確実に防止できる。従って、さらに良好な線形のねじり特性を得ることができる。
【0035】
<第一実施形態の変形態様>
第一実施形態のスタビライザブッシュ10の第一の変形態様について、図3を参照して説明する。図3は、第一実施形態の第一の変形態様のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。図3に示すように、当該変形態様においては、金具11が、ゴム弾性体本体12の内周側に露出せずに、ゴム膜13により被覆されている。つまり、スタビライザバー20の第一の平坦部21と金具11の第一の平坦金具11aとの間、および、一対の第二の平坦部22、23と一対の対向金具11b、11cとの間には、ゴム膜13が介在している。このゴム膜13は、スタビライザブッシュ10としてのねじり特性に影響を及ぼさない程度に薄肉に形成されている。このように、ゴム膜13を介在する場合には、金具11とスタビライザバー20の金属同士の接触を防止できることにより、両者の接触音が発生することを防止できる。
【0036】
また、第一実施形態の第二の変形態様について、図4を参照して説明する。図4は、第一実施形態の第二の変形態様のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。なお、図4における上下方向は、車両の上下方向であり、図4における左右方向は、車両の前後方向である。図4に示すように、当該変形態様においては、スタビライザブッシュ10の外周平坦部12aおよび車両ボディ40の取付面が、車両前後方向に直交するように設けられている。
【0037】
この場合、実質的には、上述した第一実施形態に対して、スタビライザブッシュ10の外周面を内周面に対して90度旋回させた形状となる。このような取付態様においても、同様の効果を奏する。
【0038】
また、第一実施形態の第三の変形態様について、図5を参照して説明する。図5は、第一実施形態の第三の変形態様のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。図5に示すように、当該変形態様においては、第一実施形態に対して、スタビライザブッシュ10の内周面を外周面に対して90度旋回させた形状となり、且つ、スタビライザバー20のうちスタビライザブッシュ10に挿通保持されるU字型状の部分を同じ90度旋回させた形状となる。具体的には、平坦金具11aが車両上下方向に直交する方向に配置され、一対の対向金具11b、11cが車両前後方向に対向するように配置されている。また、スタビライザバー20の第一の平坦部21が車両上方に位置する。
【0039】
この場合、第一実施形態に比べて、車両上下方向の振動を入力した場合、スタビライザバー20が平坦金具11aから離れるように相対移動するおそれがあると共に、この場合のスタビライザバー20と金具11との接触面積が小さくなることから、スタビライザバー20とスタビライザブッシュ10との間の滑り発生の防止効果としては劣る。ただし、この構成であっても、車両上下方向の振動が入力されたとしても、スタビライザバー20の外周面とスタビライザブッシュ10の内周面とが当接した状態を維持できるように、ゴム弾性体本体の締め付け力が十分に作用しているのであれば、十分な滑り防止効果を発揮する。
【0040】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態のスタビライザブッシュ100について、図6を参照して説明する。図6は、第二実施形態のスタビライザブッシュ100を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。第二実施形態のスタビライザブッシュ100において、上述した第一実施形態のスタビライザブッシュ10と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、スタビライザブッシュ100は、第一実施形態のスタビライザブッシュ10に対して、実質的に金具111のみ相違する。以下、金具111のみについて説明する。第一実施形態の金具11は、コの字型形状をなしていたが、金具111は、平板状をなしている。つまり、当該金具111は、第一実施形態の金具11の平坦金具11a部分のみからなる。そして、当該金具111は、平坦金具11aと同様の位置に配置されている。すなわち、金具111は、ゴム弾性体本体12の内周側に車両上下方向に平行となるように露出し、ゴム弾性体本体12に加硫接着されている。
【0042】
つまり、金具111は、第一実施形態における一対の対向金具11b、11cを有しないため、この一対の対向金具11b、11cによる効果を奏しない。つまり、第二実施形態のスタビライザブッシュ100を用いた場合、車両上下方向の振動が入力した場合、スタビライザバー20がスタビライザブッシュ100に対して車両上下方向に相対移動する可能性がある。しかし、この場合であっても、金具111が車両上下方向に平行となるように配置しているため、スタビライザバー20の第一の平坦部21が金具111から離れることはない。従って、スタビライザバー20が回転しようとした場合に、金具111と第一の平坦部21とにより、スタビライザバー20とスタビライザブッシュ10との間に滑りが発生することを防止できる。
【0043】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態のスタビライザブッシュ200について、図7を参照して説明する。図7は、第三実施形態のスタビライザブッシュ200を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。第三実施形態のスタビライザブッシュ200において、上述した第一実施形態のスタビライザブッシュ10と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、スタビライザブッシュ200は、第一実施形態のスタビライザブッシュ10に対して、ゴム弾性体本体212の内周面形状が異なる。さらに、スタビライザバー220のうちスタビライザブッシュ200に挿通保持される範囲の外周面形状が異なる。
【0045】
スタビライザバー220のうちスタビライザブッシュ200に挿通保持される範囲の外周面は、角部にR面取りを施された矩形状からなる。つまり、当該範囲の外周面は、第一の平坦部221と、第一の平坦部221の裏面側である裏面側平坦部222と、これらに直交する一対の平坦部223、224とを備える。ここで、裏面側平坦部222および一対の平坦部223、224が、本発明の「第三の平坦部」に相当する。
【0046】
そして、スタビライザブッシュ200の内周面において、金具11のコの字型形状を含めて、スタビライザバー220の外周面に対応する矩形状をなしている。すなわち、スタビライザブッシュ200の内周面は、金具11のコの字型の凹状部分と、ゴム弾性体本体212のコの字型形状部212a、212b、212cとにより形成されている。ここで、ゴム弾性体本体212のコの字型形状部212a、212b、212cの3面が、それぞれ、本発明の「ゴム平坦部」に相当する。
【0047】
そして、金具11の平坦金具11aが、スタビライザバー220の第一の平坦部221に対向して、且つ、当接するように配置されている。また、金具11の一対の対向金具11b、11cおよびゴム弾性体本体212のコの字型形状部212b、212c(対向部分)が、スタビライザバー220の一対の平坦部223、224に対向して、且つ、当接するように配置されている。さらに、ゴム弾性体212のコの字型形状部212a(底部分)が、スタビライザバー220の裏面側平坦部222に対向して、且つ、当接するように配置されている。
【0048】
この場合、第一実施形態における効果に加えて、ゴム弾性体本体212のコの字型形状部212aとスタビライザバー220の平坦部222〜224とにより、さらなる両者の滑り防止効果を発揮する。
【0049】
なお、第二実施形態および第三実施形態のスタビライザブッシュ100、200において、上述した第一実施形態の変形態様に記載の態様は、同様に適用することができる。この場合の効果は、上述したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第一実施形態のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の軸方向断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第一実施形態の第一の変形態様のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。
【図4】第一実施形態の第二の変形態様のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。
【図5】第一実施形態の第三の変形態様のスタビライザブッシュ10を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。
【図6】第二実施形態のスタビライザブッシュ100を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。
【図7】第三実施形態のスタビライザブッシュ200を車両に組み付けた状態の径方向断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10、100、200:スタビライザブッシュ
11、111:金具、 11a:平坦金具、 11b、11c:一対の対向金具
12、212:ゴム弾性体本体
12a:外周平坦部、 12b:U字型凹状部
12c、12d:一対のU字型フランジ部、 12e:加硫接着面
12f:円弧凹状部、 12g:切割部
13:ゴム膜
212a:コの字型形状部
20、220:スタビライザバー
21、221:第一の平坦部、 22、23:第二の平坦部、 24:円弧凸状部
222:裏面側平坦部、 223、224:一対の平坦部
30:締結部材、 31:U字型形状部、 32:フランジ部
40:車両ボディ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状からなり車両のスタビライザバーを挿通保持するゴム弾性体本体を備えるスタビライザブッシュにおいて、
前記スタビライザバーの外周面は、平坦面状に形成された第一の平坦部を備え、
前記スタビライザブッシュは、
前記ゴム弾性体本体の内周側のうち周方向の一部のみに配置され、前記ゴム弾性体本体の内周側に露出またはゴム膜により被覆されて配置された金具と、
前記ゴム弾性体本体の周方向において前記金具が配置されていない位置に、前記ゴム弾性体本体の内周面から外周面に亘って且つ軸方向の全長に亘って切断された切割部と、
を備え、
前記金具は、前記ゴム弾性体本体の内周側に位置する面を平坦面状に形成し、前記スタビライザバーの前記第一の平坦部に対向して配置される平坦金具を備えることを特徴とするスタビライザブッシュ。
【請求項2】
前記平坦金具の前記平坦面状の面は、車両上下方向に平行となるように配置されている請求項1に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項3】
前記スタビライザバーの外周面は、前記第一の平坦部の周方向両側に隣接する位置に、相互に平行な平坦面状に形成された一対の第二の平坦部を備え、
前記金具は、前記平坦金具の周方向両端から立設し、車両上下方向に対向するように配置され、前記平坦金具とともにコの字型形状をなすとともに、前記一対の第二の平坦部にそれぞれ対向して配置される一対の対向金具を備える請求項1または2に記載のスタビライザブッシュ。
【請求項4】
前記スタビライザバーの外周面は、前記第一の平坦部と異なる位置に、平坦面状に形成された第三の平坦部を備え、
前記ゴム弾性体本体の内周面は、平坦面状に形成され、前記スタビライザバーの前記第三の平坦部に対向して配置されるゴム平坦部を備える請求項1〜3の何れか一項に記載のスタビライザブッシュ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−78780(P2009−78780A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251224(P2007−251224)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】