説明

スタビリンクおよびその製造方法

【課題】軽量化を図ることができるのはもちろんのこと、成形型を変更することなく、ハウジングの位相角およびハウジング同士の間隔を調整することができるスタビリンクおよびその製造方を提供する。
【解決手段】軽金属あるいは繊維強化プラスチックからなる中実棒、または、中空棒をサポートバー60として用いている。サポートバー60の一端部61を中子として成形型に挿入し、射出成形によりサポートバー60の一端部61にハウジング50を成形することができるとともに、サポートバー60の他端部61を中子として成形型に挿入し、射出成形によりサポートバー60の他端部にハウジング50を成形することができる。この場合、樹脂は成形収縮するから、ハウジング50のボス部52は、サポートバー60の端部61の全周を覆うようにして密着する。したがって、ボス部52による両端部61への締付力は強い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に設けられるスタビリンクに係り、特に、スタビリンクのハウジングおよびサポートバーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
スタビリンクは、サスペンション装置とスタビライザ装置とを連結するスタビリンク部品である。図1は、車両の前車輪側の概略構成を表す斜視図である。サスペンション装置10は、左右のタイヤ30に設けられ、アーム11とシリンダ12を備えている。アーム11の下端部はタイヤ30の軸を支持する軸受部に固定され、シリンダ12はアーム11に対して弾性変位が可能である。アーム11には、スタビリンク200が取り付けられるブラケット13が設けられている。サスペンション装置10は、タイヤ30に加えられる車体の重量を支えている。スタビライザ装置20は、略コ字形状を有するバー21を備え、ブッシュ22を介して車体に取り付けられている。スタビライザ装置20は、車両のロール剛性を確保する。
【0003】
図2は、スタビリンク200の一部の構成の具体例を表す側断面図である。スタビリンク200は、スタッドボール201、ボールシート301、ハウジング302、および、ダストカバー401を備えている。スタッドボール201は、一体成形されたスタッド部210およびボール部220を有している。
【0004】
スタッド部210は、テーパ部211、直線部212、および、ねじ部213を有している。テーパ部211は、ボール部220の上端部に形成されている。直線部212の上端部および下端部には、鍔部214および凸部215が形成されている。直線部212における鍔部214および凸部215との間にはダストカバー401の上端部のリップ部411が当接して固定されている。サスペンション装置10側のスタビリンク200のねじ部213は、アーム11のブラケット13にねじ締結により固定され、スタビライザ装置20側のスタビリンク200のねじ部213は、バー21にねじ締結により固定されている。
【0005】
ボールシート301およびハウジング302は、スタッドボール201をユニバーサルに軸支する軸支部材を構成している。ボールシート301には、スタッドボール201のボール部220が圧入されている。ボールシート301の底面部には、熱かしめ部323が形成されている。ハウジング302は、ボールシート301を収容している。熱かしめ部323は、ハウジング302の底部の孔部302Aを通じて突出し、その先端部がハウジング302の下面部に係合することにより、ボールシート301がハウジング302に固定されている。ダストカバー401の下端部の固定部412は、ボールシート301およびハウジング302のフランジ部321,311どうしの間に狭持されている(たとえば特許文献1,2)。
【0006】
ところで、スタビリンクでは、従来、ハウジングとサポートバーの材料として鉄が用いられていたが、近年、軽量化を図るため、たとえばアルミニウム(たとえば特許文献3,4)や樹脂(たとえば特許文献5)を用いることが提案されている。具体的には、特許文献3,4では、スタッドボールのボール部およびボールシートからなるサブ組立体を中子として成形型に挿入し、成形型にアルミ合金を注入することによりアルミ合金からなるハウジングとサポートバーを一体成形している。特許文献5では、樹脂を成形型に注入することにより樹脂からなるハウジングとサポートバーを一体成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−117429号公報
【特許文献2】特開平7−54835号公報
【特許文献3】特開2004−316771号公報
【特許文献4】特開2005−265134号公報
【特許文献5】特開2009−257507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3〜5に示すようにハウジングとサポートバーを一体成形する場合、一方のハウジングに対する他方のハウジングの位相角やハウジング同士の間の間隔を変更する場合、各位相角および各間隔に対応した成形型を準備する必要があった。
【0009】
したがって、本発明は、軽量化を図ることができるのはもちろんのこと、成形型を変更することなく、ハウジングの位相角およびハウジング同士の間隔を調整することができるスタビリンクおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスタビリンクの製造方法は、軽金属あるいは繊維強化プラスチックからなる中実のサポートバー、または、中空のサポートバーを準備し、サポートバーの端部を中子として成形型に挿入し、成形型内に樹脂を注入して射出成形を行うことによりハウジングを成形し、ハウジングの成形では、ハウジングをサポートバーの端部に固定することを特徴とする。
【0011】
本発明のスタビリンクの製造方法では、軽金属あるいは繊維強化プラスチックからなる中実のサポートバー、または、中空のサポートバーを用いている。そのようなサポートバーの一端部を中子として成形型に挿入し、射出成形によりサポートバーの一端部にハウジングを成形することができるとともに、サポートバーの他端部を中子として成形型に挿入し、射出成形によりサポートバーの他端部にハウジングを成形することができる。
【0012】
このようなハウジングの成形では、射出成形で注入された樹脂は成形収縮するから、サポートバーの両端部のハウジングへの固定は強固となる。この場合、2つの成形型を用い、サポートバーの一端部および他端部にハウジングを同時成形することができるのはもちろんのこと、一つの成形型を用い、サポートバーの一端部および他端部にハウジングを順次成形することができる。
【0013】
以上のようなハウジングの成形では、軽金属あるいは繊維強化プラスチックからなる中実のサポートバー、または、中空のサポートバーを用い、ハウジングの材料として樹脂を用いるから、軽量化を図ることができる。しかも、サポートバーとハウジングを一体成形する従来技術とは異なり、サポートバーの両端部での成形用の成形型同士が一体化されていないから、ハウジングの位相角を調整することができる。また、サポートバーの長さを変更することができるから、ハウジング同士の間隔を調整することができる。したがって、ハウジングの位相角およびハウジング同士の間隔の変更に応じて成形型を変更することが不要となる。
【0014】
本発明のスタビリンクの製造方法は、種々の構成を用いることができる。たとえば、サポートバーの形成では、サポートバーの少なくとも端部にエッチング処理あるいはブラスト処理を行う態様を用いることができる。この態様では、サポートバーの端部の表面粗度を高めることができるから、アンカー効果により、サポートバーの端部のハウジングへの固定強度の向上を図ることができる。したがって、サポートバーからのハウジングの離脱やサポートバーに対するハウジングの回転をさらに防止することができる。サポートバーの端部の表面粗度Raを0.03〜5.0μmの範囲内に設定することが好適である。
【0015】
たとえばサポートバーの形成では、サポートバーの端部に凹凸部を形成する態様を用いることができる。この態様では、サポートバーの端部の凹凸部はハウジングにおける対向部位と嵌合することができるから、サポートバーの端部のハウジングへの固定強度の向上をさらに図ることができる。したがって、サポートバーからのハウジングの離脱やサポートバーに対するハウジングの回転をさらに防止することができる。
【0016】
たとえば中空のサポートバーを用いる場合、サポートバーの端部を閉塞する態様を用いることができる。具体的には、サポートバーの端部に蓋部を設けることができる。また、サポートバーの端部を扁平状に加工して閉塞することができる。上記態様では、ハウジングの成形時、中空棒内部への樹脂の流入を防止することができる。
【0017】
たとえばボールシートの形成では、ボールシートの底部にピン部を形成し、ハウジングの成形では、ハウジングの底部に孔部を形成し、ハウジングのボールシートへの組付では、ボールシートのピン部をハウジングの孔部から外部へ突出させ、ピン部に熱かしめを行う態様を用いることができる。
【0018】
たとえばスタッドボールのボール部をボールシートに挿入することにより、スタッドボールとボールシートからなるサブ組立体を形成し、ハウジングの成形では、サブ組立体およびサポートバーを中子として成形型内に挿入し、成形型内に樹脂を注入して射出成形を行い、ハウジングの成形では、ハウジングはボールシートの外周部を覆う態様を用いることができる。たとえばボールシートの形成では、ボールシートの外周部に凹部を形成し、ハウジングの成形では、サポートバーの成形型への挿入時、サポートバーの端部をボールシートの凹部に嵌合させることができる。この態様では、ボールシートのハウジングからの離脱を防止することができるとともに、ボールシートのハウジングに対する相対的回転を防止することができる。この場合、サポートバーの端部とボールシートの凹部との嵌合部の断面形状を真円形状以外の形状に設定することが好適である。この態様では、ボールシートに対するサポートバーの相対的回転を効果的に防止することができるから、ハウジングに対するサポートバーの相対的回転を効果的に防止することができる。
【0019】
本発明のスタビリンクは、本発明のスタビリンクの製造方法により得られることを特徴とし、本発明のスタビリンクの製造方法と同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスタビリンクあるいはその製造方法によれば、軽量化を図ることができるのはもちろんのこと、成形型を変更することなく、ハウジングの位相角およびハウジング同士の間隔を調整することができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両の前車輪側の概略構成を表す斜視図である。
【図2】従来のスタビリンクの構成を表す側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスタビリンクの一部の構成を表し、(A)は、サポートバーとして中実棒を用いた形態のハウジングおよびサポートバーの左側部分の概略構成を表す斜視図、(B)は、サポートバーとして中空棒を用いた形態のハウジングおよびサポートバーの左側部分の概略構成を表す斜視図である。
【図4】(A),(B)は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクのサポートバーの具体例の構成を表し、サポートバーの斜視図である。
【図5】(A)〜(F)は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクのサポートバーの他の具体例の構成を表し、サポートバーの左側部分の斜視図である。
【図6】(A),(B)は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクのサポートバーの他の具体例の構成を表し、サポートバーの左側部分の軸線方向断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るスタビリンクのサポートバーの他の具体例の構成を表し、サポートバーの左側部分の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るスタビリンクのサポートバーの他の具体例の構成を表し、(A)はサポートバーの左側部分の軸線方向断面図、(B)はサポートバーの左側部分の上面図である。
【図9】(A)〜(E)は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクの製造方法の具体例の各工程を表す一部構成の側断面図である。
【図10】(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクの製造方法の他の具体例の各工程を表す一部構成の側断面図である。
【図11】(A)〜(D)は、図10に示す他の具体例の変形例の各工程を表す一部構成の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクの一部の構成を表し、(A),(B)はハウジングおよびサポートバーの概略構成を表す斜視図である。なお、図3では、ハウジングの形状を簡略化して図示している。
【0023】
ハウジング50は、ボールシートが圧入される開口部51を有している。ハウジング50の側面部にはボス部52が形成されている。ハウジング50は、たとえば樹脂からなる。樹脂としては、PA(ナイロン)、POM(ポリアセタール)や、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等のエンジニアリングプラスチックを用いることができる。この場合、強度を確保するために、エンジニアリングプラスチックにグラスファイバを含有させることが好適である。
【0024】
サポートバー60の両端部61にはハウジング50が固定されている。この場合、端部61は、ボス部52の孔部内で固定されている。サポートバー60としては、図3(A)に示すように、中実棒を用いてもよいし、図3(B)に示すように、更なる軽量化のために中空部62を有する中空棒を用いてもよい。サポートバー60は、たとえば軽金属あるいはFRP(繊維強化プラスチック)からなる。軽金属としては、アルミニウム、あるいは、マグネシウムやチタン等の非鉄軽金属を用いることができる。中空棒を用いる場合、その材料に関係なく、軽量化を図ることができるから、中空棒の材料としては、上記材料に限定されるものではなく、鋼材等を用いてもよい。
【0025】
本実施形態では、サポートバー60を準備する。この場合、サポートバー60の長さは適宜設定することができる。次いで、サポートバー60の端部61を中子として成形型に挿入し、成形型内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、ハウジング50を成形する。この場合、樹脂は成形収縮するから、ハウジング50のボス部52は、サポートバー60の端部61の全周を覆うようにして密着する。したがって、ボス部52による両端部61への締付力は強い。
【0026】
ここで、樹脂の特性値はその材質により異なるが、成形収縮率は1.5〜2.0%程度、線膨張係数は3〜9×10−5/℃程度である。通常、スタビリンクの最高使用温度は80℃程度であるから、常温を23℃とした場合、80℃での樹脂の膨張率は0.17〜0.69%である。したがって、使用環境の温度が80℃に到達した時でも、その時の膨張率は、1.5〜2.0%程度の成形収縮率に対して十分小さいから、樹脂の熱膨張によってボス部52の締付力は弱くならない。
【0027】
サポートバー60からのハウジング50の離脱防止やハウジング50に対するサポートバー60の回転防止は、ハウジング50およびサポートバー60の両方の摩擦係数による摩擦力と樹脂の成形収縮率による締付力によって実現されている。このような離脱防止および回転防止を効果的に実現するためには、サポートバー60は種々の構成を用いることができる。
【0028】
たとえば、サポートバー60の端部61を覆うハウジング50の部位の軸線方向長を大きく設定することにより、摩擦力を増大することができる。また、ハウジング50のボス部52の肉厚を大きく設定することにより、成形収縮率による締め付け力を上げることもできる。この場合、射出成形時のボイド等の欠陥発生を防止するために、ボス部52の肉厚を4mm以下に設定することが好適である。
【0029】
たとえば図4(A),(B)に示すように、サポートバー60の両端部61あるいは全体にエッチング処理あるいはブラスト処理を行うことができる。これにより、たとえば表面に酸化被膜が形成される等して微細な凹凸を形成することができるから、サポートバー60の両端部61あるいは全体の表面粗度を高めることができる。この場合、アンカー効果による機械的力が生じるとともに摩擦力が増大する。表面粗度Raは、0.03〜5.0μmの範囲内に設定することが好適である。
【0030】
たとえば転造によってサポートバー60の端部61にローレット目等の凹凸部を形成することができる。たとえば図5(A)に示す態様では、周方向に延在する周方向溝部63を、凹部として端部61に形成している。この態様では、ハウジング50の離脱を効果的に防止することができる。たとえば図5(B)に示す態様では、軸線方向に延在する軸線方向溝部64を、凹部として端部61に形成している。この態様では、ハウジング50の回転を効果的に防止することができる。
【0031】
たとえば図5(C)に示す態様では、軸線方向から所定角度傾斜して延在する傾斜方向溝部65を、凹部として端部61に形成している。たとえば図5(D)に示す態様では、図5(A)に示す周方向溝部63と、図5(B)に示す軸線方向溝部64とを組み合わせている。たとえば図5(E)に示す態様では、円形状凹部66を、凹部として端部61に形成している。この場合、凹部の形状は円形状に限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。たとえば図5(F)に示す態様では、軸線方向から傾斜して延在する傾斜方向溝部を交差させたクロス溝部67を、凹部として形成している。図5(C)〜5(F)に示す態様では、ハウジング50の離脱および回転を効果的に防止することができる。
【0032】
上記態様では、溝部等の凹部の個数は適宜設定することができる。また、上記態様では溝部等の凹部を用いたが、凹部の代わりに凸部を用いてもよい。上記態様の溝部内部の側面は、テーパ状をなすことが好適である。たとえば図6(A)に示すテーパ溝部68A内部の側面は、軸線方向断面において端部61から中央部に向かって縮径するように傾斜している。たとえば図6(B)に示す曲線状溝部68B内部の側面は、軸線方向断面において曲線形状のテーパ状をなしている。上記態様では、射出成形時、溝部の底部側角部までの樹脂の充填を十分に行うことができる。また、サポートバー60の端部61の断面形状を真円形状以外の形状(たとえば多角形状や、星形状、楕円形状等)に設定してもよい。上記各種態様は、サポートバー60の両端部61に適用してもよいし、必要に応じてサポートバー60の一端部61あるいは他端部61のみに適用してもよい。上記各種態様は適宜組み合わせて用いてもよい。
【0033】
サポートバー60として図3(B)に示す中空棒を用いる場合、射出成形時に
サポートバー60の中空部62への樹脂流入を防止するために種々の構成を用いることができる。たとえば図7に示す態様では、サポートバー60の端部61に蓋部69を設けている。蓋部69の材料としては、ハウジング50に用いる上記樹脂のなかから選択することができる。この場合、ハウジング50と同質の樹脂を用いることが好適である。この態様では、射出成形時にハウジング50との界面で融解が起こり、ハウジング50と蓋部69の密着性の向上を図ることができる。また、図8に示すように、サポートバー60の端部61の先端を加工によって扁平状とすることにより、サポートバー60の開口部を閉塞してもよい。
【0034】
本実施形態では、軽金属あるいはFRPからなる中実棒、または、中空棒をサポートバー60として用いている。そのようなサポートバー60の一端部61を中子として成形型に挿入し、射出成形によりサポートバー60の一端部61にハウジング50を成形することができるとともに、サポートバー60の他端部61を中子として成形型に挿入し、射出成形によりサポートバー60の他端部にハウジング50を成形することができる。このようなハウジング50の成形では、射出成形で注入された樹脂は成形収縮するから、サポートバー60の両端部のハウジング50への固定は強固となる。
【0035】
ハウジング50の成形では、2つの成形型を用い、サポートバー60の一端部61および他端部61にハウジング50を同時成形することができる。この場合、サポートバー60の両端部61での成形型同士が一体化されていないから、サポートバー60の軸線回り方向に対して各成形型の位置決めを行うことができ、これにより成形型の位相角を調整することができる。また、サポートバー60の長さの変更に対応することができる。
【0036】
一方、たとえばサポートバー60の両端部61のハウジング50の形状を同一とする場合、一つの成形型を用い、サポートバー60の一端部61および他端部61にハウジング50を順次成形することができる。具体的には、一端部61側のハウジング50の成形後、他端部61側のハウジング50の成形時、サポートバー60の軸線回り方向に対して他端部61側の成形型の位置決めを行うことができ、これにより成形型の位相角を調整することができる。また、サポートバー60の長さの変更に対応することができる。
【0037】
以上のようにハウジング50の成形では、軽金属あるいはFRPからなる中実棒、または、中空棒をサポートバー60として用い、ハウジング50の材料として樹脂を用いるから、軽量化を図ることができる。しかも、ハウジング50の位相角を調整することができるとともに、ハウジング50同士の間隔を調整することができる。したがって、ハウジング50の位相角およびハウジング50同士の間隔の変更に応じて成形型を変更することが不要となる。
【0038】
本実施形態のハウジング50の成形手法は、種々のスタビリンクの製造方法に適用することができる。
【0039】
図9(A)〜(E)は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクの製造方法の具体例の各工程を表す一部構成の側断面図である。この製造方法で得られるスタビリンク1は、ハウジングおよびサポートバーが異なる以外は図2に示すスタビリンク200と同様な構成であるから、本実施形態では、図2と同様な構成要素には同符号を付し、その説明は省略している。なお、図9(A)〜9(E)では、ねじ部213の図示は省略している。
【0040】
まず、図9(A)に示すように、ダストカバー401のリップ部411をスタッドボール201の直線部212に密着させるようにして鍔部214と凸部215との間に挿入し、その間で保持する。次いで、図9(B)に示すように、スタッドボール201のボール部220をボールシート301に圧入する。この場合、ダストカバー401の固定部412をボールシート301のフランジ部321の外周面側(図9の上面側)に配置する。なお、符号322は、ボールシート301の一面(ボール部220が圧入される面とは反対側の面)に形成されたピン部である。
【0041】
続いて、図9(C)に示すように、サポートバー60を有するハウジング50をボールシート301に組み付ける。この場合、ダストカバー401の固定部412は、ボールシート301のフランジ部321およびハウジング50のフランジ部53の間に狭持され、ピン部322は、ハウジング50の孔部50Aから外部へ突出する形態となる。なお、ハウジング50は、上記のようにサポートバー60の端部61を中子として成形型に挿入し、成形型内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより得られたものを用いる。次に、図9(D)に示すように、熱かしめ機601を用い、ボールシート301のピン部322を加熱により変形させて熱かしめ部323とする。これにより、ボールシート301がハウジング50に固定されることにより、図9(E)に示すようにスタビリンク1が得られる。
【0042】
上記製造方法では、ピン部322が熱かしめされるボールシート301の材質としてたとえばPOMを用いる場合、POMの融点は約165℃であるから、ハウジングの50の樹脂としては、POMの融点以上の融点を有するPAや、PPS、PBT等を用いることが好適である。
【0043】
図10(A)〜10(D)は、本発明の一実施形態に係るスタビリンクの製造方法の他の具体例の各工程を表す一部構成の側断面図である。なお、図10(A)〜10(D)では、ねじ部213の図示は省略している。この製造方法は、ハウジング50をインサート成形による樹脂の射出成形で得ることが図9に示す製造方法とは大きく異なり、それに伴い、ボールシートの構成およびスタッドボールのボール部の形状等を変更しており、それ以外は同様な構成である。
【0044】
まず、図10(A),10(B)に示すように、図9(A),9(B)に示す製造工程と同様な手法により、スタッドボール101、ボールシート120、および、ダストカバー401からなるサブ組立体2Aが得られる。この製造方法では、ボールシート120の外周部の側面部に突起部122および溝部123の少なくとも一方が、周方向に沿って形成されていることが好適である。スタッドボール101について、たとえばボール部110として略球状をなす鋼球を用い、ボール部110をスタッド部210に溶接することにより形成することが好適である。
【0045】
続いて、図10(C)に示すように、サブ組立体2Aおよびサポートバー60の端部61を中子として成形型602内に挿入してキャビティ700を形成し、そのキャビティ700内に樹脂を注入して射出成形を行う。このようなインサート成形によってハウジング50を成形する。インサート成形について、具体的には、サブ組立体2Aの成形型602内への挿入では、成形型602の内面とボールシート120の外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、成形型602の端部602Aをダストカバー401の固定部412の外周部に当接させる。これにより、成形型602の端部602Aとボールシート120のフランジ部121の外周部側とでダストカバー401の固定部412を狭持する。このようにして成形型602の内面、ボールシート120の外周部、および、ダストカバー401の固定部412の外周部側によりキャビティ700が形成される。
【0046】
このようなインサート成形によって樹脂をキャビティ700に充填することにより、図10(D)に示すように、ハウジング50が成形され、スタビリンク2が得られる。この場合、ハウジング50は、サポートバー60の端部61に固定され、ボールシート120の外周部を覆うような形状をなしている。
【0047】
上記製造方法では、熱かしめを行わないから、ボールシート120の材料としてPOMを用いる場合、ハウジング50の樹脂の融点は、POMの融点以上でもよく、PAや、PBT、PPS、POM等のエンジニアリングプラスチックにグラスファイバを含有させてもよい。また、ハウジング50の溝部54とボールシート120の突起部122、および、ハウジング50の突起部55とボールシート120の溝部123は、周方向に分割された形状をなすように形成されること好適である。これにより、図9(D),9(E)に示す熱かしめ部323と同様、ボールシート120のハウジング50からの離脱を防止することができるとともに、ボールシート120のハウジング50に対する相対的回転を防止することができる。
【0048】
図11(A)〜(D)は、図10に示す製造方法の変形例の各工程を表す一部構成の側断面図である。図11(A),11(B)に示す工程は、図10(A),10(B)に示す製造工程と同様である。図11(C)に示す工程では、ボールシート120の外周部にサポートバー用凹部124を形成し、ハウジング50の成形では、サポートバー60の成形型602への挿入時、サポートバー60の端部61をサポートバー用凹部124に嵌合させることができる。この態様では、図9(D),9(E)に示す熱かしめ部323と同様な効果を得ることができる。この場合、サポートバー60の端部61とボールシート120のサポートバー用凹部124との嵌合部の断面形状を真円以外の形状(たとえば多角形状や、星形状、楕円形状等)に設定することにより、ボールシート120に対するサポートバー60の相対的回転を効果的に防止することができるから、ハウジング50に対するサポートバー60の相対的回転を効果的に防止することができる。また、図8に示すように端部61の先端が扁平状をなすサポートバー60を用いることにより、上記効果を得ることができる。
【0049】
上記製造方法は、本出願人が提案している方法の改良(たとえば特願2010−120380および特願2010−186080参照)であって、その提案の方法の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,2…スタビリンク、2A…サブ組立体、50…ハウジング、50A…孔部、52…ボス部、60…サポートバー、61…端部、62…中空部、63…周方向溝部(凹凸部の凹部)、64…軸線方向溝部(凹凸部の凹部)、65…傾斜方向溝部(凹凸部の凹部)、66…円形状凹部(凹凸部の凹部)、67…クロス溝部(凹凸部の凹部)、68A…テーパ溝部(凹凸部の凹部)、68B…曲線状溝部(凹凸部の凹部)、69…蓋部、101,201…スタッドボール、110,220…ボール部、120,301…ボールシート、122…突起部、123…溝部、124…サポートバー用凹部(凹部)、322…ピン部、323…熱かしめ部、602…成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽金属あるいは繊維強化プラスチックからなる中実のサポートバー、または、中空のサポートバーを準備し、
前記サポートバーの端部を中子として成形型に挿入し、
前記成形型内に樹脂を注入して射出成形を行うことによりハウジングを成形し、
前記ハウジングの成形では、前記ハウジングをサポートバーの端部に固定することを特徴とするスタビリンクの製造方法。
【請求項2】
前記サポートバーの形成では、前記サポートバーの少なくとも端部にエッチング処理あるいはブラスト処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項3】
前記サポートバーの前記端部の表面粗度Raを0.03〜5.0μmの範囲内に設定することを特徴とする請求項1または2に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項4】
前記サポートバーの形成では、前記サポートバーの端部に凹凸部を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項5】
前記中空のサポートバーを用いる場合、前記サポートバーの端部に蓋部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項6】
前記中空のサポートバーを用いる場合、前記サポートバーの端部を扁平状に加工して閉塞することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項7】
ボールシートの形成では、ボールシートの底部にピン部を形成し、
前記ハウジングの成形では、前記ハウジングの底部に孔部を形成し、
前記ハウジングの前記ボールシートへの組付では、前記ボールシートのピン部を前記ハウジングの孔部から外部へ突出させ、前記ピン部に熱かしめを行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項8】
スタッドボールのボール部をボールシートに挿入することにより、前記スタッドボールと前記ボールシートからなるサブ組立体を形成し、
前記ハウジングの成形では、前記サブ組立体および前記サポートバーを中子として前記成形型内に挿入し、前記成形型内に前記樹脂を注入して射出成形を行い、
前記ハウジングの成形では、前記ハウジングは前記ボールシートの外周部を覆うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項9】
前記ボールシートの形成では、前記ボールシートの外周部に凹部を形成し、
前記ハウジングの成形では、前記サポートバーの前記成形型への挿入時、前記サポートバーの端部を前記ボールシートの凹部に嵌合させることを特徴とする請求項8に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項10】
前記サポートバーの端部と前記ボールシートの凹部との嵌合部の断面形状を真円形状以外の形状に設定することを特徴とする請求項9に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法により得られることを特徴とするスタビリンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−218707(P2012−218707A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90025(P2011−90025)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】