説明

ストレス応答力改善剤

【課題】ストレスに対する正常な防御反応が低下または損なわれた被験者においてストレス応答力を改善する。
【解決手段】スイートオレンジオイルの香りを嗅がせることによってストレス応答力を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料成分から成るストレス応答改善剤、ならびに香料成分の香りによってストレス応答力を改善する美容方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代社会はストレス社会と言われており、厚生労働省の国民栄養調査結果によると、男性の77%、女性の84%が日常生活でストレスを感じている。我々の身体は神経系−内分泌系−免疫系の相互作用により恒常性が維持され健康が保たれている。何らかの刺激(ストレッサー)によりストレスが生じると、そのような恒常性維持機能により自律神経活動やホルモン分泌などが調整され、ストレスが身体に与える影響を最小限に止めようとする防御反応(ストレス反応)が起こる。例えば、自律神経系では交感神経活動が亢進し、身体の異化代謝を高めてストレスに対する防御力を高めようとする。また、内分泌系では視床下部−下垂体−副腎皮質系が反応し、コルチゾールなど副腎皮質からのホルモン分泌を増加させ、糖代謝などを活性化してストレスに対する防御力を高めようとする。ストレスを引き起こすストレッサーには、一般に良く知られている精神的ストレッサー(苦痛、怒り、不安、緊張など)の他に、物理的ストレッサー(寒冷、放射線、騒音など)、化学的ストレッサー(薬物、ビタミン不足、酸素欠乏など)、生物的ストレッサー(細菌・ウイルス感染など)がある。
【0003】
通常この様な防御反応により我々の身体はストレスの影響から保護されているが、ストレスが一定の限度を越えて長期に及ぶと恒常性維持機能が破綻し、ストレスに対して正常な防御反応が生じなくなることが知られている。例えば、健康な20代から40代の男性被験者を、精神的ストレスや不安度を評価する心理質問紙のひとつであるSTAIの得点で層別したときに、慢性的ストレス状態にある被験者(STAI高得点群)では、正常な被験者群(STAI低得点群)に比べて視床下部−下垂体−副腎皮質系(HPA系)のストレスに対する応答力が低下して、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌や副腎皮質からのコルチゾール分泌が有意に減少していることが報告されている(非特許文献1)。すなわち、何らかの原因により恒常性維持機能が破綻すると、身体的または精神的ストレスを受けているにも関わらず自律神経系や内分泌系がそのストレス刺激にうまく応答できなくなり、その結果、重篤な病気や疾病にまでは至らないまでも、食欲低下、過食、疲労感、不眠、抑うつ、免疫機能低下、月経周期異常、肌荒れなど、様々な心身不調が引き起こされる。この様に、ストレスに対する身体の正常な防御反応(ストレス反応)が鈍っている人は健康な人にも多く、現代社会において重大な問題となっている。
【0004】
ストレスに対する香りの効果として、例えばジメトキシメチルベンゼン(DMMB)やバレリアンオイルなどの香りがストレスを緩和することが、視床下部−下垂体−副腎皮質系のストレス反応を調べることによって報告されている。例えば特許文献1には、実験的に被験者に精神的ストレスを負荷すると、香りを嗅がない場合はコルチゾール濃度の上昇が認められるが、バレリアンオイルの香りを嗅いだ場合はコルチゾール濃度の上昇が抑えられることが示されている。
【0005】
しかしながら、これまで報告されているストレスに対する香りの効果はいずれも、正常なストレス反応を示す人を対象とした試験結果に基づくものであり、長期のストレス負荷等により正常なストレス反応が損なわれた人に対する香りの効果については全く知られていなかった。
【0006】
上述したように、本来は、神経系−内分泌系−免疫系の相互作用による恒常性維持機能によって自律神経活動やホルモン分泌などが調整されてストレスに対する防御反応が生じることによって我々の身体はストレスの影響から保護されているが、何らかの原因により恒常性維持機能が破綻してストレスに対する正常な防御反応が損なわれる(すなわちストレス応答力が低下する)と、食欲低下、過食、疲労感、不眠、抑うつ、免疫機能低下、不定愁訴、月経周期異常、肌荒れなど、様々な心身不調が引き起こされると考えられている。したがって、そのようなストレス応答力の低下または損失を原因とする様々な心身不調を予防、改善または治療するために、日常生活の中で化粧料や食品、雑貨などに適用して少ない副作用で長期間に亘りストレス応答力を改善できる新規な薬剤および方法が強く望まれていた。
【特許文献1】国際公開第01/098442号パンフレット
【非特許文献1】Jezova D et al., Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2004 Dec; 28(8):1331-6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み、安全性が高く長期間にわたり安定してストレス応答力を改善できるストレス応答力改善剤ならびに美容方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ストレス応答力が低下してストレス負荷に対する自律神経系または内分泌系等の正常なストレス反応が損なわれた被験者において、スイートオレンジオイルの香りを嗅がせることによってそのストレス反応を回復させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明のストレス応答力改善剤は、スイートオレンジオイルから成ることを特徴とする。スイートオレンジオイルの香りを嗅がせることによって、低下したストレス応答力を回復させることができる。
【0010】
オレンジはスイートオレンジとビターオレンジの2種類に大別され、またビターオレンジからは、果皮から採取されるビターオレンジオイルのみならず、花、枝、葉などそれぞれ異なる部位から、ネロリオイル、オレンジフラワーアブソリュート、プチグレンオイルなど様々な天然香料が採取されている。本発明者は、それらの各種オレンジ由来の天然香料のうち、スイートオレンジの果皮の圧搾により採取された精油であるスイートオレンジオイルが、ストレス応答力改善効果を有することを見出した。
【0011】
また、本発明のストレス応答力改善剤は、スイートオレンジオイルと、ネロリオイルおよび/またはイリスオイルとから成るものであってもよい。それら香料を組み合わせて配合することにより、より優れたストレス応答力改善効果をもたらすことができ、また香気においても好ましい。
【0012】
イリスは、アヤメ科アヤメ属に分類される植物で、その根茎部より香気成分を採取する。採取は溶剤抽出または水蒸気蒸留によって行われ、得られたイリスオイルは常温では固形である。このため他のオイルとは異なり、コンクリート・バターと称される。また、コンクリートよりミリスチン酸を除いたものはイリスアブソリュートと呼ばれ、もっとも高価な天然香料の一つである。
【0013】
本発明のストレス応答力改善用または不定愁訴改善用の組成物、雑貨類または衣類は、ストレス応答力改善剤であるスイートオレンジオイル、あるいはスイートオレンジオイルとネロリオイルおよび/またはイリスオイルとを含むことを特徴とする。本発明の組成物等は、ストレス応答力を改善することによって、不定愁訴を軽減することができる。
【0014】
本発明の美容方法は、スイートオレンジオイルの香りを嗅がせることによってストレス応答力を改善することを特徴とする。これまで、香料(精油)の香りが低下したストレス応答力に影響を及ぼすことは全く知られていなかった。上述したように、ストレス応答力の低下は様々な心身不調の原因となっており、ストレス応答力を改善することによってそれら不調を軽減等して、美肌効果をはじめとする様々な美容効果をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のストレス応答力改善剤または美容方法は、香料成分を用いるため副作用がなく、長期間に亘り安定にストレス応答力を改善することができ、したがって、ストレス応答力の低下により生じる食欲低下、過食、疲労感、不眠、抑うつ、免疫機能低下、月経周期異常、不定愁訴、肌荒れなど様々な心身不調を、安全かつ効果的に予防、改善または治療することを可能にする。さらに、副作用が少ないため化粧料や雑貨類等に適用して、日常生活の中で簡便かつ長期的にストレス応答力を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
スイートオレンジオイルは、ミカン科に属するスイートオレンジ(Citrus sinensis)の果皮より採油され、いわゆるビターオレンジオイルであるプチグレン、ネロリ、オレンジなどとは区別される。本発明で用いるスイートオレンジオイルは、任意の抽出方法や蒸留方法等によって調製することができ、また、例えばOrange oil FG N3(LGRD社)のような市販のものを用いてもよい。通常スイートオレンジオイルは100%の精油である。
【0017】
本明細書において、「ストレス応答力を改善する」とは、ストレス刺激に対する正常な防御反応が低下または損なわれた被験者においてその反応を回復させることを意味する。ストレス応答力は、例えば、カラーワードストループテストによるストレス負荷に対する副腎皮質からのコルチゾール分泌量(たとえば唾液中のコルチゾール濃度)の増加や、皮膚寒冷刺激に対する皮膚温の回復時間等を測定することによって評価することができる。
【0018】
本発明において、スイートオレンジオイルを単独で用いてもよいが、本発明の効果を損なわない限り他の任意の香料と適当な割合で調合し、好適な香となるように調香して、以下で述べるような様々な対象物や美容方法において用いてもよい。例えば化粧品では、スイートオレンジオイルを他の香料と調合してふさわしい処方としたものを使用することが好ましい。特に、イリスオイルまたはネロリオイル、あるいはその両方をスイートオレンジオイルと組み合わせて配合した場合に不定愁訴改善効果が顕著であり、また香気の観点からも好ましい。
【0019】
全香料中のスイートオレンジオイルの配合割合は、特に限定はされないが、0.01〜100質量%であり、より好ましくは0.1〜100質量%である。
【0020】
本発明のスイートオレンジオイル、あるいはスイートオレンジオイルとネロリオイルおよび/またはイリスオイルとから成るストレス応答力改善剤は、様々な対象物に含めることができ、その対象物の種類に応じて、通常その対象物に含まれる任意の構成要素をさらに含めてよい。さらに、他のストレス応答力を改善する薬剤と本発明のストレス応答力改善剤を併用してもよい。
【0021】
本発明のストレス応答力改善剤を含む対象物は、スイートオレンジオイルが気化して吸入可能な形態で配合され得るものであればどのようなものでもよく、その剤型や製品形態によって限定されるものではない。
【0022】
例えば、本発明のストレス応答力改善剤を含む組成物の製品形態として、限定はされないが、化粧料、医薬品、医薬部外品、食品、飲料等が挙げられ、またその剤形として、例えば、液剤、粉末剤、顆粒剤、エアゾール剤、固形剤、ジェル剤等が挙げられる。
【0023】
特に好適な態様の1つである化粧料として、限定はされないが、例えば、香水、オードトワレ、オーデコロン、クリーム、乳液類、化粧水、ファンデーション類、粉白粉、口紅、石鹸、シャンプー・リンス類、ボディーシャンプー、ボディーリンス、ボディーパウダー類、浴剤類等が挙げられる。
【0024】
さらに、例えば、芳香剤、消臭剤、アロマキャンドル、インセンス、文房具、財布、バッグ、靴等の任意の雑貨類や、例えば下着、洋服、帽子、ストッキング、靴下等、任意の衣類に、本発明のストレス応答力改善剤を含めることができる。本発明のストレス応答力改善剤をそれらの素材に加えても、あるいはそれらの製品に加えてもよい。
【0025】
尚、本発明のストレス応答力改善剤の様々な使用態様を例示したが、それらに限定されるものではなく、本発明の効果を達成できる限り、任意の態様で用いることができる。
【0026】
本発明の美容方法において、「香料成分の香りを嗅がせる」とは、気化した香料成分の吸入によって嗅覚を刺激することを意味し、そのやり方や手段は特に限定されず、例えば、香料成分またはそれを含有する組成物を皮膚に直接塗布したり、または直接吸入させてよく、あるいは香料成分を配合した芳香剤、消臭剤、アロマキャンドル、インセンス、文房具、財布、バッグ、靴等の任意の雑貨類や、例えば下着、洋服、帽子、ストッキング、靴下等の任意の衣類を介して、その香りを嗅がせてもよい。
【0027】
尚、本発明のストレス応答力改善剤やそれを配合した対象物、ならびに本発明の美容方法の具体的な適用は、ストレス応答力の低下に関連するものであれば特に限定されない。例えば、ストレス応答力の低下を原因とする食欲低下、過食、疲労感、不眠、抑うつ、免疫機能低下、不定愁訴、月経周期異常、肌荒れなどの様々な身体的および精神的症状の予防や改善等に適用でき、例えば、それら症状に対する他の医薬品等や美容方法の補助剤または補助的方法として用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、試験例および適用例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。尚、以下の試験例および適用例では、オレンジオイルとしてOrange oil FG N3(LGRD社)を用いた。
【0029】
試験例1.視床下部−下垂体−副腎皮質系(HPA系)のストレス応答力の改善効果の検討
状態特性不安検査(STAI)の得点による被験者の群分け
精神的ストレスや不安度を評価する心理質問紙のひとつであるSTAIの得点により、慢性的ストレス状態群と正常群の群分けを行った。すなわち、46点以上の得点を有する被験者をSTAI高得点群(慢性的ストレス状態群)とし、38点以下の得点を有する被験者をSTAI低得点群(正常群)とした。それぞれの群におけるSTAI得点の平均値は、STAI高得点群が53点であり、STAI低得点群が33点であった。
【0030】
ストレス応答力の評価
心理的ストレス負荷方法としてカラーワードストループテストを用い、唾液中コルチゾール濃度をストレス応答力の指標とした。コルチゾールは副腎皮質でつくられ、HPA系の正常なストレス反応としてストレス負荷に対して血中におけるコルチゾール濃度が高くなることが知られている。また、血中コルチゾール濃度と唾液中コルチゾール濃度は相関関係があることが分かっており、唾液中のコルチゾール濃度をRIA法やEIA法などにより測定することによって、ストレス応答力の指標とすることができる。
【0031】
被験者を30分間安静にさせた後、カラーワードストループ作業を1時間負荷し、さらにその後30分安静にさせた。実験開始時から15分間隔で唾液を採取して、Salimetrics社製 Salivary cortisol EIAキットを用いて唾液中コルチゾール濃度を測定し、安静時(30分間)、ストレス負荷時(1時間)、ストレス負荷後(30分間)について実験開始直後の値を1とした時の相対濃度についてそれぞれの平均値を算出した。
【0032】
図1に、STAI高得点群(慢性的ストレス状態群)(n=5)と、STAI低得点群(正常群)(n=5)における、ストレス負荷に対する唾液中コルチゾール濃度の変化を示す。STAI低得点群(正常群)では、ストレス負荷に対して唾液中のコルチゾール濃度が上昇し、正常なストレス応答力を有することが認められたが、一方、STAI高得点群(慢性的ストレス状態群)では、ストレス負荷に対してコルチゾール濃度の上昇は見られず、ストレスに対するHPA系の応答力が低下していることが認められた(ANOVA;p<0.05)。
【0033】
スイートオレンジオイルのストレス応答力改善効果の検討
次に、正常なストレス応答の認められない慢性的ストレス状態群に対して、30分間安静状態にさせた後、香料を含まないコットン(香料なし)または2%スイートオレンジオイル40μlをしみこませたコットンを鼻下につけて香を嗅がせながら、カラーワードストループテストを1時間負荷し、さらにその後30分安静にさせた。実験開始時から15分間隔で唾液を採取して、上記と同様に唾液中コルチゾール濃度を測定した。
【0034】
図2に、香料なしとスイートオレンジオイルの香りをかがせた場合における、ストレス負荷に対する唾液中コルチゾール濃度の変化を示す。香料なしの場合は、上記したように、ストレス負荷に伴う唾液中コルチゾール濃度の上昇が認められないのに対して、スイートオレンジオイルの香りを嗅がせることによって、ストレス負荷に伴う唾液中コルチゾール濃度の上昇が認められ、ストレスに対するHPA系の応答力が改善されたことが示された。
【0035】
上記の結果から、スイートオレンジオイルが、ストレス応答力が低下した被験者においてストレスに対するHPA系の応答力を改善できることが示された。
【0036】
試験例2.自律神経系のストレス応答力の改善効果の検討
月経随伴症状質問紙(MDQ)の得点による群分け
20代女性を被験者として、月経随伴症状や月経前症候群などの判定尺度として知られるMDQの得点により、月経前1週間のMDQ得点が43点以上の被験者から成るMDQ 高得点群(月経不定愁訴群)と、23点以下の被験者から成るMDQ低得点群(正常群)を作成した。それぞれの群におけるMDQ得点の平均値は、MDQ高得点群が53点であり、MDQ低得点群が8点であった。
【0037】
ストレス応答力の評価
皮膚自律神経機能を指標としストレス応答力を検査した。ストレスとしては、前記同様にカラーワードストループテストにより精神的ストレスを負荷した。皮膚自律神経機能は、寒冷刺激応答試験により測定した。皮膚表面血流は皮膚自律神経系の影響を受けており、皮膚血管の収縮により皮膚温は低下し、皮膚血管の拡張により皮膚温は上昇する。そこで皮膚表面の温度変化を捉えることにより、皮膚自律神経機能を簡便に検査することができる(日本産科婦人科学会鹿児島地方部会雑誌 第5巻 7-13 1997)。
【0038】
被験者を30分間安静にさせた後、前腕内側部に0℃の試験管を2分間当てて寒冷刺激を負荷した後、低下した体温の1/2値まで回復するのに要する時間を測定してストレス負荷前の回復時間とした。次に、1時間カラーワードストループ試験による精神的ストレスを負荷した後、同様に皮膚寒冷刺激試験を行い回復時間を測定し、皮膚自律神経機能を検査した。結果は、ストレス負荷前の回復時間を100%としてストレス負荷後の回復時間を相対的回復時間(%)として表わした。
【0039】
図3に、MDQ 高得点群(月経不定愁訴群)(n=5)とMDQ低得点群(正常群)(n=5)における相対的回復時間を示す。MDQ低得点群(正常群)では、相対的回復時間の平均値が約115%であり、ストレス負荷による交感神経緊張による正常なストレス応答力を有することが認められたが、MDQ高得点群(月経不定愁訴群)では、相対的回復時間の平均値が約325%と著しく遅延し、自律神経系のストレス応答力が低下していることが認められた。
【0040】
スイートオレンジオイルのストレス応答力改善効果の検討
次に、皮膚自律神経機能のストレス応答力低下が認められたMDQ高得点群においてスイートオレンジの香りをかがせることによるストレス応答力改善効果を検討した。30分間安静状態にさせた後、皮膚寒冷刺激応答試験によるストレス負荷前の回復時間を測定し、続いて、香料を含まないコットン(香料なし)または2%スイートオレンジオイル40μlをしみこませたコットンを鼻下につけて香りを嗅がせながら1時間カラーワードストループ試験を実施した後、再び皮膚寒冷刺激試験を行いストレス負荷後の回復時間を測定した。
【0041】
図4に、香料なしとスイートオレンジオイルの香りをかがせた場合における相対的回復時間(%)を示す。MDQ高得点群(月経不定愁訴群)において、スイートオレンジオイルの香りを嗅がせることによって、寒冷刺激に対する回復時間が正常レベル(107%)まで回復し、ストレスに対する自律神経系の応答力が改善されたことが示唆された。
【0042】
上記の結果から、スイートオレンジオイルが、ストレス応答力が低下した被験者においてストレスに対する自律神経系の応答力を改善できることが示された。
【0043】
試験例3.本発明のストレス応力改善剤による不定愁訴改善効果の検討
ストレス応答力改善作用を有するスイートオレンジオイルを下記の適用例33に示す処方で配合した香料組成物を用いて、不定愁訴改善効果について検討した。20代から40代の健康な女性45名を被験者とし、そのうち30名に適用例33の処方の香料組成物を下記スケジュールに従って連用させ(処置群)、残りの15名は未処置の対照群として、通常の生活をつづけさせた。試験期間中は指定の香料組成物以外の香料の使用を一切禁止した。図5(A)に試験のスケジュールを示す。香りの適用は、各被験者の黄体期後期から次の月経開始日までの生理周期にあわせて行った。適用期間は各被験者の生理周期により異なり、平均28.5日間であった。香りの適用開始前の黄体期後期(適用前)、香りの適用の開始後最初の月経が始まる2日前を目安とした黄体期後期(適用前半)、および次の月経が始まる2日前を目安とした黄体期後期(適用後半)に、月経随伴症状質問紙(MDQ)に記入させ、月経に伴う不定愁訴を評価した。結果は、各群のMDQ得点の平均値として表した。
【0044】
図5(B)に、適用前、適用前半および適用後半の各群のMDQ 得点の平均値を示す。ストレス応力改善作用を有するスイートオレンジオイルを配合した香料組成物の匂いを嗅がせることによってストレス応答力を改善して、対照群と比較して月経に伴う不定愁訴を有意に低減させることができた。
【0045】
以下に、本発明のストレス応答力改善剤としてのスイートオレンジオイル、あるいはスイートオレンジオイルとネロリオイルとイリスオイルとの10:2:0.2重量比混合物(スイートオレンジオイル+イリスオイル+ネロリオイル)を適用した例(ストレス応答力改善剤の適用例)を示す。尚、配合量は全て製品全量に対する質量%で表す。
【0046】
適用例1
化粧水(1)
(1)グリセリン 2.0
(2)ジプロピレングリコール 2.0
(3)PEG−60 水添ひまし油 0.3
(4)トリメチルグリシン 0.1
(5)防腐剤 適量
(6)キレート剤 適量
(7)染料 適量
(8)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.05
(9)精製水 残余
【0047】
適用例2
化粧水(2)
(1)アルコール 30.0
(2)ブチレングリコール 4.0
(3)グリセリン 2.0
(4)PPG−13デシルテトラデス24 0.3
(5)オクチルメトキシシンナメート 0.1
(6)メントール 0.2
(7)酢酸トコフェロール 0.1
(8)キレート剤 適量
(9)染料 適量
(10)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.01
(11)精製水 残余
【0048】
適用例3
乳液(1)
(1)ステアリン酸 2.0
(2)セチルアルコール 1.5
(3)ワセリン 4.0
(4)スクワラン 5.0
(5)グリセロールトリー2−エチルヘキサン酸エステル 2.0
(6)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2.0
(7)ジプロピレングリコール 5.0
(8)PEG1500 0.3
(9)トリエタノールアミン 0.1
(10)防腐剤 適量
(11)本発明のストレス応答力改善剤 0.2
(スイートオレンジオイル+イリスオイル+ネロリオイル)
(12)精製水 残余
【0049】
適用例4
乳液(2)
(1)エチルアルコール 10.0
(2)シクロメチコン 0.1
(3)ブチレングリコール 5.0
(4)ジメチコン 3.0
(5)グリセン 0.1
(6)メントール 1.0
(7)トリメチルシロキシケイ酸 0.1
(8)カフェイン 1.0
(9)トリメチルグリシン 1.0
(10)キサンタンガム 0.001
(11)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(12)大豆発酵エキス 1.0
(13)ラウリルベタイン 0.5
(14)カルボマー 0.2
(15)キレート剤 適量
(16)パラベン 適量
(17)安息香酸 適量
(18)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.1
(19)酸化鉄 適量
(20)苛性カリ 0.05
(21)グリチルリチン酸ジカルシウム 0.01
(22)塩酸ピリドキシン 0.01
(23)アスコルビン酸グルコシド 0.01
(24)アルブチン 3.0
(25)ユキノシタ抽出液 0.1
(26)水 残余
【0050】
適用例5
乳液(3)
(1)ブチレングリコール 4.0
(2)プロピレングリコール 4.0
(3)カルボマー 0.2
(4)苛性カリ 0.2
(5)ベヘニン酸 0.5
(6)ステアリン酸 0.5
(7)イソステアリン酸 0.5
(8)ステアリン酸グリセリル 1.0
(9)イソステアリン酸グリセリル 1.0
(10)ベヘニルアルコール 0.5
(11)スクワラン 5.0
(12)トリオクタノイン 3.0
(13)フェニルトリメチコン 2.0
(14)バチルアルコール 0.5
(15)グリチルリチン酸ジカルシウム 0.01
(16)防腐剤 適量
(17)キレート剤 適量
(18)顔料 適量
(19)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.15
(20)精製水 残余
【0051】
適用例6
乳液(4)
(1)グリセリン 3.0
(2)キシリトール 2.0
(3)カルボマー 0.1
(4)苛性カリ 0.1
(5)イソステアリン酸グリセリル 1.0
(6)ステアリン酸グリセリル 0.5
(7)ベヘニルアルコール 1.0
(8)バチルアルコール 1.0
(9)パーム硬化油 2.0
(10)ワセリン 1.0
(11)スクワラン 5.0
(12)オクタン酸エリスリチル 3.0
(13)シクロメチコン 1.0
(14)防腐剤 適量
(15)キレート剤 適量
(16)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.2
(17)精製水 残余
(18)トラネキサム酸 1.0
(19)パントテニルエチルエーテル 0.5
(20)ニコチン酸アミド 0.1
(21)トレハロース 0.1
(22)ローズマリーエキス 0.1
(23)ビタミンA 0.1
(24)アスコルビン酸グリコシド 0.001
(25)キイチゴ抽出液 1.0
(26)オウゴン抽出液 0.001
(27)オウバク抽出液 0.01
【0052】
適用例7
乳液(5)
(1)エタノール 2.0
(2)シクロメチコン 10.0
(3)グリセリン 5.0
(4)ジブチレングリコール 1.0
(5)ジメチコン 1.0
(6)コーンスターチ 4.0
(7)ミネラルオイル 2.0
(8)トリメチルシロキシケイ酸 5.0
(9)ポリエチレングリコール 3.0
(10)乳酸メンチル 0.1
(11)PEG−60水添ヒマシ油 1.0
(12)アミノプロピルジメチコン 1.0
(13)キサンタンガム 0.01
(14)酢酸トコフェロール 0.01
(15)カフェイン 0.1
(16)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
(17)大豆発酵エキス 0.01
(18)ハマメリスエキス 0.01
(19)ドクダミエキス 0.01
(20)カルボマー 0.3
(21)アクリル酸マタクリル酸アルキル共重合体 0.2
(22)HEDTA 適量
(23)防腐剤 適量
(24)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.3
(25)顔料 適量
(26)苛性カリ 0.15
(27)アミノメチルプロパノール 0.05
(28)水 残余
【0053】
適用例8
乳液(6)
(1)エタノール 15.0
(2)シクロメチコン 6.0
(3)ブチレングリコール 0.5
(4)ジメチコン 1.0
(5)グリセリン 1.0
(6)ポリエチレングリコール 1.0
(7)乳酸メンチル 1.0
(8)メントール 0.1
(9)トリメチルシロキシケイ酸 1.0
(10)カフェイン 0.5
(11)トリメチレングリシン 0.1
(12)キサンタンガム 0.1
(13)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(14)大豆発酵エキス 0.01
(15)酢酸トコフェロール 0.05
(16)ラウリルベタイン 0.01
(17)褐藻エキス 0.01
(18)ドクダミエキス 0.01
(19)紅藻エキス 0.01
(20)緑藻エキス 0.01
(21)セルロース末 1.0
(22)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
(23)イソステアリン酸 1.0
(24)カルボマー 0.1
(25)アクリル酸メタクリル酸アルキル重合体 0.1
(26)EDTA 0.1
(27)メタリン酸ナトリウム 0.1
(28)フェノキシエタノール 0.2
(29)パラベン 0.2
(30)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.45
(31)酸化鉄(赤) 0.02
(32)メンチルグリセリルエーテル 0.01
(33)水 残余
【0054】
適用例9
クリーム(1)
(1)グリセリン 10.0
(2)ブチレングリコール 5.0
(3)カルボマー 0.1
(4)苛性カリ 0.2
(5)ステアリン酸 2.0
(6)スタリン酸グリセリル 2.0
(7)イソステアリン酸グリセリル 2.0
(8)ワセリン 5.0
(9)防腐剤 適量
(10)酸化防止剤 適量
(11)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.3
(12)精製水 残余
(13)キレート剤 適量
(14)顔料 適量
(15)ステアリルアルコール 2.0
(16)ベヘニルアルコール 2.0
(17)パーム硬化油 2.0
(18)スクワラン 10.0
(19)4−メトキシサリチル酸カリウム 3.0
【0055】
適用例10
クリーム(2)
(1)グリセリン 3.0
(2)ジプロピレングリコール 7.0
(3)ポリエチレングリコール 3.0
(4)ステアリン酸グリセリル 3.0
(5)イソステアリン酸グリセリル 2.0
(6)ステアリルアルコール 2.0
(7)ベヘニルアルコール 2.0
(8)流動パラフィン 7.0
(9)シクロメチコン 3.0
(10)ジメチコン 1.0
(11)オクチルメトキシシンナメート 0.1
(12)ヒアルロン酸Na 0.05
(13)防腐剤 適量
(14)酸化防止剤 適量
(15)本発明のストレス応答力改善剤 0.4
(スイートオレンジオイル+イリスオイル+ネロリオイル)
(16)精製水 残余
(17)キレート剤 適量
(18)顔料 適量
【0056】
適用例11
ジェル
(1)エチルアルコール 10.0
(2)グリセリン 5.0
(3)ブチレングリコール 5.0
(4)カルボマー 0.5
(5)アミノメチルプロパノール 0.3
(6)PEG−60水添ヒマシ油 0.3
(7)メントール 0.02
(8)防腐剤 適量
(9)キレート剤 適量
(10)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.1
(11)精製水 残余
【0057】
適用例12
エアゾール(1)
(1)グリセリン 2.0
(2)ジプロピレングリコール 2.0
(3)PEG−60水添ヒマシ油 0.3
(4)HPPCD 1.0
(5)防腐剤 適量
(6)キレート剤 適量
(7)染料 適量
(8)本発明のストレス応答力改善剤 0.2
(スイートオレンジオイル+イリスオイル+ネロリオイル)
(9)精製水 適量
(10)LPG 残余
【0058】
適用例13
エアゾール(2)
(1)アルコール 15.0
(2)ブチレングリコール 2.0
(3)グリセリン 1.0
(4)PPG−13デシルテトラデス24 0.1
(5)銀担持ゼオライト 1.0
(6)キレート剤 適量
(7)染料 適量
(8)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.15
(9)精製水 残余
(10)LPG 40.0
【0059】
適用例14
エアゾール(3)
(1)エタノール 60.0
(2)乳酸メンチル 0.1
(3)乳酸ナトリウム 0.1
(4)酢酸トコフェロール 0.01
(5)乳酸 0.01
(6)カフェイン 0.01
(7)ウイキョウエキス 1.0
(8)ハマメリスエキス 1.0
(9)ドクダミエキス 1.0
(10)ジプロピレングリコール 1.0
(11)窒素ガス 0.9
(12)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン 1.0
デシルテトラデシルエーテル
(13)ブチレングリコール 2.0
(14)トコフェロール 0.05
(15)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.1
(16)PEG−60水添ヒマシ油 0.1
(17)水 残余
【0060】
適用例15
シャンプー
(1)ラウリルポリエキシエチレン(3)
硫酸エステルナトリウム塩(30%水溶液) 30.0
(2)ラウリル硫酸エステルナトリウム塩(30%水溶液) 10.0
(3)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
(4)グリセリン 1.0
(5)防腐剤 適量
(6)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.5
(7)色素 適量
(8)金属イオン封鎖剤、pH調整剤 適量
(9)精製水 残余
【0061】
適用例16
リンス
(1)シリコーン油 3.0
(2)流動パラフィン 1.0
(3)セチルアルコール 1.5
(4)ステアリルアルコール 1.0
(5)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.7
(6)グリセリン 3.0
(7)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.5
(8)色素、防腐剤 適量
(9)精製水 残余
【0062】
適用例17
ボディーシャンプー
(1)ラウリン酸 2.5
(2)ミリスチン酸 5.0
(3)パルミチン酸 2.5
(4)オレイン酸 2.5
(5)ココイルジエタノールアミド 1.0
(6)グリセリン 20.0
(7)苛性カリ 3.6
(8)染料 適量
(9)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.5
(10)金属イオン封鎖剤 適量
(11)精製水 残余
【0063】
適用例18
フレグランス
(1)アルコール 75.0
(2)精製水 残余
(3)ジプロピレングリコール 5.0
(4)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 10.0
(5)酸化防止剤 8.0
(6)色素 適量
(7)紫外線吸収剤 適量

ここで、「フレグランス」とは、アルコール(例えばエチルアルコール)または水性アルコールに精油を溶解したものである。フレグランスは、精油を1%〜99%質量%含有する。水とアルコールの配合比は50:50〜0:100の範囲である。フレグランスは、溶解剤、柔軟化剤、ヒューメクタン、濃化剤、静菌剤、またはそのほか通常化粧品に用いられる材料を含有することができる。
【0064】
適用例19
ルームフレグランス
(1)アルコール 80.0
(2)精製水 残余
(3)酸化防止剤 5.0
(4)本発明のストレス応答力改善剤 3.0
(スイートオレンジオイル+イリスオイル+ネロリオイル)
(5)3−メチルー3メトキシブタノール 5.0
(6)ジベンジリデンソルビトール 5.0
【0065】
適用例20
インセンス
(1)タブ粉 75.5
(2)安息香酸ナトリウム 15.5
(3)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 5.0
(4)ユーカリオイル 1.0
(5)フェンネルオイル 1.0
(6)精製水 残余
【0066】
適用例21
入浴剤
(1)硫酸ナトリウム 45.0
(2)炭酸水素ナトリウム 45.0
(3)ヒソップオイル 9.0
(4)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 1.0
【0067】
適用例22
マッサージ用ジェル
(1)エリスリトール 2.0
(2)カフェイン 5.0
(3)オウバク抽出物 3.0
(4)グリセリン 50.0
(5)カルボキシビニルポリマー 0.4
(6)ポリエチレングリコール400 30.0
(7)エデト3ナトリウム 0.1
(8)ポリオキシレン(10)メチルポリシロキサン共重合体 2.0
(9)スクワラン 1.0
(10)水酸化カリウム 0.15
(11)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 1.0
【0068】
適用例23
マッサージクリーム
(1)固形パラフィン 5.0
(2)ミツロウ 10.0
(3)ワセリン 15.0
(4)流動パラフィン 41.0
(5)1.3−ブチレングリコール 4.0
(6)モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)POE(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 2.0
(8)ホウ砂 0.2
(9)カフェイン 2.0
(10)防腐剤 適量
(11)酸化防止剤 適量
(12)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 1.0
(13)精製水 残余
【0069】
適用例24
芳香性繊維
キュプロアンモニウムセルロース溶液(セルロース濃度10重量%、アンモニウム濃度7重量%、銅濃度3.6重量%)に、スイートオレンジオイルを内包したマイクロカプセル(粒子径50μm以下、マイクロカプセルに占める精油の割合は50重量%)をセルロース重量に対して0.1〜20重量%の範囲内で添加、混和した後、通常の湿式紡糸方法に従って紡糸し、精錬工程、乾燥工程を経て、芳香性繊維を得た。
【0070】
適用例25
顆粒
(1)スクラロース 0.1
(2)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.1
(3)香味料 5.0
(4)賦形剤(セオラス) 10.0
(5)マルチトール 残余
【0071】
適用例26
錠剤(チュアブルタイプ)
(1)イノシトール 11.0
(2)マルチトール 21.0
(3)スクロース 0.5
(4)鮭白子抽出物(DNA Na) 0.1
(5)酵母抽出物 0.1
(6)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.1
(7)香味料 5.0
(8)賦形剤 残余
【0072】
適用例27
タブレット
(1)潤沢剤(ショ糖脂肪酸エステル等) 1.0
(2)アラビアガム水溶液(5%) 2.0
(3)酸味料 1.0
(4)着色料 適量
(5)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.1
(6)糖質(粉糖またはソルビトール等) 残余
【0073】
適用例28
キャンディー
(1)砂糖 50.0
(2)水飴 47.95
(3)有機酸 2.0
(4)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.05
【0074】
適用例29
ガム
(1)砂糖 43.0
(2)ガムベース 30.95
(3)グルコース 10.0
(4)水飴 16.0
(5)本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 0.05
【0075】
これら本発明のストレス応答力改善剤の適用例の各種組成物、雑貨類、衣類等は、それぞれの製品形態の典型的な使用態様における使用テストにより、ストレス応答力を改善した。
【0076】
さらに、本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイルまたはスイートオレンジオイルとネロリオイルとイリスオイルとの混合物)を他の香料と調合した香料組成物の処方例を以下に示す。
【0077】
適用例30
香料組成物(1)
本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 10.0
ベルガモットオイル 3.0
シス−3−ヘキセノール 0.03
シス−3−ヘキセニルアセテート 0.02
シス−3−ヘキセニルサリシレート 2.0
ローズベース 2.5
ゼラニウムベース 4.0
ジャスミンベース 1.5
イランイランベース 0.5
シトロネロール 4.0
ゲラニオール 3.0
フェニルエチルアルコール 10.0
ダマセノン(登録商標) 0.1
ベンジルアセテート 2.0
メチルジヒドロジャスモネート 10.0
α−ヘキシルシンナミックアルデヒド 4.0
インドール 0.05
エチルリナロール 2.0
p-tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド 6.0
β−イオノン 2.0
γ−メチルイオノン 2.0
イソイースーパー(登録商標) 2.0
アセチルセドレン 2.0
シクロペンタデカノリド 2.0
トリエチルシトレート 25.3
合計 100.0
【0078】
適用例31
香料組成物(2)
本発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイル) 10.0
レモンオイル 2.0
ベルガモットオイル 3.0
ユズベース 0.1
トリプラール(登録商標) 0.1
シス−3−ヘキセノール 0.1
シス−3−ヘキセニルサリシレート 2.0
フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール 0.3
ローズベース 7.0
ムゲベース 10.0
シトロネロール 1.0
フェニルエチルアルコール 3.0
ベンジルアセテート 2.0
メチルジヒドロジャスモネート 10.0
α−ヘキシルシンナミックアルデヒド 4.0
リナロール 1.5
ジメチルフェルエチルカルビノール 5.0
p-tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド 6.0
γ−メチルイオノン 3.0
イソイースーパー(登録商標) 2.0
アセチルセドレン 2.0
エチレンブラシレート 2.0
トリエチルシトレート 23.9
合計 100.0
【0079】
適用例33
香料組成物(3)
本発明のストレス応答力改善剤 12.2
(スイートオレンジオイル+イリスコンクリート+ネロリオイル)
ベルガモットオイル 3.0
シス−3−ヘキセノール 0.03
シス−3−ヘキセニルアセテート 0.01
シス−3−ヘキセニルサリシレート 2.0
ローズベース 2.5
ゼラニウムベース 4.0
ジャスミンベース 1.5
イランイランベース 0.5
シトロネロール 4.0
ゲラニオール 3.0
フェニルエチルアルコール 10.0
ダマセノン(登録商標) 0.1
ベンジルアセテート 2.0
メチルジヒドロジャスモネート 10.0
α−ヘキシルシンナミックアルデヒド 4.0
インドール 0.05
エチルリナロール 2.0
p-tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド 6.0
β−イオノン 2.0
ガンマメチルイオノン 2.0
イソイースーパー(登録商標) 2.0
アセチルセドレン 2.0
シクロペンタデカノリド 2.0
トリエチルシトレート 23.11
合計 100.0
【0080】
これら香料組成物をそのまま香料として用いることにより、あるいは上記適用例1から29の各処方において本願発明のストレス応答力改善剤(スイートオレンジオイルまたはスイートオレンジオイルとネロリオイルとイリスオイルとの混合物)に代えて配合することによって、ストレス応答力を改善することができた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】STAI高得点群(慢性的ストレス状態群)とSTAI低得点群(正常群)における、ストレス負荷に伴う唾液中コルチゾール濃度の変化を示すグラフ。
【図2】STAI高得点群(慢性的ストレス状態群)における、ストレス負荷に伴う唾液中コルチゾール濃度の変化に対するスイートオレンジオイルの改善効果を示すグラフ。
【図3】MDQ 高得点群(月経不定愁訴群)とMDQ低得点群(正常群)における、皮膚寒冷刺激応答試験での相対的回復時間を示すグラフ。
【図4】MDQ 高得点群(月経不定愁訴群)における、皮膚寒冷刺激応答試験での相対的回復時間に対するスイートオレンジオイルの改善効果を示すグラフ。
【図5】本発明のストレス応答力改善剤による不定愁訴改善効果の試験スケジュール(A)および結果を示すグラフ(B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイートオレンジオイルから成るストレス応答力改善剤。
【請求項2】
スイートオレンジオイルと、イリスオイルおよびネロリオイルから選ばれる1種または2種とから成るストレス応答力改善剤。
【請求項3】
請求項1または2記載のストレス応答力改善剤を含むストレス応答力改善用組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載のストレス応答力改善剤を含む不定愁訴改善用組成物。
【請求項5】
請求項1または2記載のストレス応答力改善剤を含むストレス応答力改善用の雑貨類または衣類。
【請求項6】
請求項1または2記載のストレス応答力改善剤を含む不定愁訴改善用の雑貨類または衣類。
【請求項7】
スイートオレンジオイルの香りを嗅がせることを含む、ストレス応答力を改善する美容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−247894(P2008−247894A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52840(P2008−52840)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【Fターム(参考)】