説明

スパイラルコイルの配線構造および集積回路装置

【課題】 第1インダクターおよび第2インダクターを有する3ポートのスパイラルコイルにおける特性の対称性を確保し、かつ、3つのポートを、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として同じ側に配置すること。
【解決手段】 第1ポートと第3ポートとの間に設けられる第1インダクターと、第2ポートと前記第3ポートとの間に設けられる第2インダクターとを含むスパイラルコイルの配線構造であって、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび第2ポートは同じ側に配置され、第1ポートから引き出される第1配線と、第2ポートから引き出される第2配線とが、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、第1ポートおよび第2ポートの側において交差することによって第1交差部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラルコイルの配線構造および集積回路装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術を用いて基板上に形成されるオンチップインダクターとしての、多層配線構造を利用したスパイラルコイルは、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7420452号明細書(例えば、図1,図2)
【特許文献2】特開2005−5685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図1Aに記載されるスパイラルコイルは、スパイラル(渦巻き)配線によって形成された2つのインダクター(第1インダクターと第2インダクター)を有している。各インダクターが、例えば差動回路の負荷として使用されたときには、各インダクターからは差動信号が取り出されることから、各インダクターは、差動インダクターと呼ばれることがある。
【0005】
特許文献1の図1Aに記載されるスパイラルコイルでは、ポート107aとポート107bとの間に第1インダクターが形成され、ポート109aとポート109bとの間に第2インダクターが形成されている。ポート107bとポート109bは中間タップであり、同じポートとみることができることから、特許文献1の図1Aに示されるスパイラルコイルは、3ポートのインダクター(差動インダクター)ということができる。
【0006】
特許文献1の図1Aに記載されるスパイラルコイルは、奇数巻き(具体的には、巻き回数をnとしたとき、n=3に設定されている)であり、また、配線同士が交差する際の迂回配線が設けられる回数に関しては、第1インダクターと第2インダクターには差がない(各々のインダクターについての交差迂回の回数は1回である)。
【0007】
配線の交差部を設ける場合、交差する2本の配線のうちの一本について、スルーホールを経由した迂回配線を設ける必要がある。スルーホーホール部のコンタクト抵抗、迂回配線の配線抵抗等によって、2本の配線の各々の交差部おけるインピーダンスに差が生じることから、第1インダクターと第2インダクターの各々について、交差迂回の回数が同じであることが望ましい。この点に関しては、特許文献1の図1Aに記載されるスパイラルコイルは、第1インダクターおよび第2インダクターの各々を構成する各配線に関して、交差迂回の回数は同じである。
【0008】
しかし、特許文献1の図1Aに記載されるスパイラルコイルでは、中間タップ(ポート107bと109b)は、スパイラル中心を基準として、ポート107a,107bの反対側に位置している。よって、例えば、中間タップ(ポート107bと109b)に接続される配線を、ポート107a,107bの近傍付近まで引き出す(延在させる)必要がある場合に、その引き出し配線の配線長が長くなり、配線抵抗による抵抗値の増大が無視できなくなる場合があり得る。
【0009】
つまり、中間タップ(ポート107bと109b)に接続される引き出し配線は、磁束が集中するスパイラルコイルの内部を横断して直線的に延在させるのは好ましくない(磁界の影響を受けて誘導電流が生じる可能性があるため)。よって、中間タップ(ポート107bと109b)の引き出し配線のパターンは、例えば、一旦、コイルの外側に引き出した後、コイルの外周に沿って配線を引き回した後、ポート107bおよび109b側に、配線を引き出すというようなパターンとせざるを得ない。
【0010】
また、特許文献1の図2Aに記載されるスパイラルコイルは、偶数巻き(具体的には、巻き回数をnとしたとき、n=4に設定されている)であり、また、配線同士が交差する場合の交差迂回の回数に関して、第1インダクターの場合は1回であり、第2インダクターの場合は2回であり、交差迂回の回数に差が生じている。この例の場合、中間タップ(ポート107bと109b)は、スパイラル中心を基準として、ポート107bおよび109bと同じ側に設けられていることから、図1Aの例に比べて、中間タップ(ポート107bと109b)の取り出しは容易であると言える。しかし、第1インダクターと第2インダクターとの間で、配線の交差迂回の回数に差があることから、第1インダクターについての寄生インピーダンスと第1インダクターについての寄生インピーダンスとに差が生じ、差動インダクターの対称性が確保されない。
【0011】
なお、特許文献1の図1B,図1C,図2B,図2C,図2D等には、配線を構成する導体層の数(層数)を増やすことが開示されている。例えば、この層数の増減によって、配線の交差回数の相違に起因する寄生インピーダンスの差を吸収しようする場合、今度は、配線と基板との間の寄生容量の問題が顕在化するという新たな課題が生じる(つまり、導体層の層数を増やせば、最下層の導体層と基板表面との距離が縮小し、配線と基板との間の寄生容量の容量値が大きくなってしまう)。
【0012】
このように、特許文献1の図1および図2に記載される技術では、3ポートのインダクター(差動インダクター)の中間タップの引き出し配線(引き出し方向を含む)については何ら考慮されていない。よって、中間タップを、他の2つのタップが設けられている側に引き出すことの重要性や、その場合の配線レイアウトの好ましい形態や、インダクターを構成する配線の交差迂回の回数などを総合的に考慮した、好ましいスパイラル配線の構造(レイアウトを含む)の検討はなされていない。
【0013】
また、特許文献2の例えば図6には、2回巻き、かつ配線の交差回数が2回のスパイラルコイルが示されているが、このスパイラルコイルは、ポート31とポート32の間に形成される一つのコイルであり、3ポートのインダクター(差動インダクター)ではない。したがって、当然のことながら、特許文献2の技術では、中間タップを、他の2つのタップが設けられている側に引き出すことの重要性や、その場合の配線レイアウトの好ましい形態や、インダクターを構成する配線の交差迂回の回数などを総合的に考慮した、好ましいスパイラル配線の構造(レイアウトを含む)の検討はなされていない。
【0014】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、第1インダクターおよび第2インダクターを有する3ポートのスパイラルコイルにおける特性の対称性を確保し、かつ、3つのポートを、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として同じ側に配置することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明のスパイラルコイルの配線構造の一態様は、第1ポートと第3ポートとの間に設けられる第1インダクターと、第2ポートと前記第3ポートとの間に設けられる第2インダクターとを含むスパイラルコイルの配線構造であって、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートは同じ側に配置されており、前記第1インダクターを構成する配線についての、配線交差における迂回の回数と、第2インダクターを構成する配線についての、配線交差における迂回の回数と、が同じであり、前記第1ポートから引き出される第1配線と、前記第2ポートから引き出される第2配線とが、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび第2ポートの側において交差することによって第1交差部が設けられ、前記第1交差部における前記第1配線に接続される第3配線と、前記第1交差部における前記第2配線に接続される第4配線とが交差することによって第2交差部が設けられ、前記第3ポートが、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの側に設けられる。
【0016】
本態様では、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、第1ポートおよび第2ポートの側に、第1交差部(第1ポートから引き出される第1配線と第2ポートから引き出される第2配線とが交差する領域)が設けられる。従来技術には例のない、この第1交差部を設けることによって、3ポートであり、インダクターを構成する配線の交差迂回の回数が2つのインダクターの各々に関して同じであり、かつ3つのポート(第1ポート、第2ポートおよび第3ポート)の各々が、スパイラル中心を基準として同じ側に設けられるインダクターを実現することができる。
【0017】
(2)本発明のスパイラルコイルの配線構造の他の態様では、前記第2交差部が、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートとは反対側に設けられる。
【0018】
本態様では、第2交差部は、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、第1ポートおよび第2ポートとは反対側に設けられる点を明確化した。これによって、バランスのとれたスパイラル(渦巻き)配線を形成することが容易となり、第1インダクターと第2インダクターの各特性の対称性(各特性のバランスがとれていること)を確保することが容易となる。
【0019】
(3)本発明のスパイラルコイルの配線構造の他の態様では、前記スパイラルコイルは、n回巻き(nは2以上の偶数)のスパイラルコイルであり、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの側には、(n/2)個の第p交差部(pは、1≦p≦(n−1)を満足する奇数)が設けられ、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの反対側には、(n/2)個の第m交差部(mは、2≦m≦nを満足する偶数)が設けられる。
【0020】
本態様では、スパイラルコイルがn回巻き(nは2以上の偶数)である場合に、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、第1ポートおよび第2ポートと同じ側および反対側の各々に、(n/2)個の交差部が設けられる。つまり、第1ポートおよび第2ポートの側には、第p交差部(pは、1≦p≦(n−1)を満足する奇数)が設けられ、第1ポートおよび第2ポートの反対側には、(n/2)個の第m交差部(mは、2≦m≦nを満足する偶数)が設けられる。
【0021】
例えば、n=6であるとき、第1ポートおよび第2ポートの側には、第1、第3、第5の交差部が設けられ、第1ポートおよび第2ポートの反対側には、第2、第4、第6の交差部が設けられる。そして、例えば、第1交差部において、第1インダクターを構成する配線が迂回経路を構成するのであれば、例えば第2交差部においては、第2インダクターを構成する配線が迂回経路を構成するようにして、以下同様の構成として、スパイラル全体としては、第1インダクターを構成する配線の交差迂回の回数と、第2インダクターを構成する配線の交差迂回の回数とが同じになるようにする。このような構成によれば、例えば、3ポートであり、偶数巻きであり、配線の交差迂回の回数が2つのインダクターの各々に関して同じであり、かつ3つのポートの各々が、スパイラル中心を基準として同じ側に設けられるインダクターを実現することができる。
【0022】
(4)本発明のスパイラルコイルの配線構造の他の態様では、スパイラルコイルは、集積回路装置の基板上に形成される多層配線構造を用いて形成され、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポート、前記第2ポートおよび前記第3ポートの側に、能動素子を含む回路が配置される。
【0023】
本態様では、スパイラルコイルは、多層配線構造を用いて形成されるオンチップインダクターである点を明確化し、また、スパイラルコイルの中心を位置判定の基準としたときに、能動素子を含む回路が第1ポート〜第3ポート側に配置される点を明確化した。
【0024】
すなわち、本態様のスパイラルコイルでは、第3ポートは、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、第1ポートおよび第2ポートと同じ側にあり、また、能動素子を含む回路は、第1ポート、第2ポートおよび第3ポートと同じ側にある。よって、能動素子を含む回路、あるいは、その能動素子を含む回路に電源電圧や基準電圧を供給する配線等と、スパイラルコイルの各ポートとの接続は容易であり、スパイラルコイルと能動素子を含む回路とを結ぶ配線の配線長は短くてすむ。また、コンパクトなレイアウトを実現することができる。よって、回路の性能の低下が抑制され、また、回路や配線のレイアウトの負担が軽減される。
【0025】
(5)本発明のスパイラルコイルの配線構造の他の態様では、前記第1ポートから得られる信号および前記第2ポートから得られる信号は差動信号であり、かつ、前記第3ポートにはバイアス電圧またはバイアス電流が供給される。
【0026】
本態様では、第3ポート(差動インダクターの中間タップ)には、バイアス電圧またはバイアス電流が供給される点を明確化した。「バイアス電圧」は、電源電圧(例えば高レベル電源電圧VDD、低レベル電源電圧GND)や基準電圧(参照電圧)等を含む直流電圧であり、電圧値が可変である場合を含めて最も広義に解釈するものとする。バイアス電流についても同様である。つまり、「バイアス電流」は、例えば電流源により生成される直流バイアス電流であり、回路を動作させる電流、あるいは回路の動作点を決めるための電流等を広く含むものとし、電流値が可変である場合を含めて最も広義に解釈するものとする。なお、「第3ポートにバイアス電圧またはバイアス電流が供給される」という表現は、「第3ポートがACグランド(交流信号に対する接地)として機能する」と言い換えることができる。
【0027】
(6)スパイラルコイルの配線構造の他の態様では、前記スパイラルコイルの前記第1インダクターおよび前記第2インダクターは各々、差動増幅回路の負荷となるLC共振回路を構成し、前記第1ポートには、交流信号を受ける差動トランジスターのうちの一方のトランジスターである第1トランジスターとカスケード接続された第2トランジスターの一端が接続され、前記第2ポートには、前記交流信号を受ける差動トランジスターのうちの他方のトランジスターである第3トランジスターとカスケード接続された第4トランジスターの一端が接続され、前記第3ポートにはバイアス電圧またはバイアス電流が供給される。
【0028】
本態様では、能動素子を含む回路が、LC共振回路を負荷とする差動増幅回路の、カスケード接続されたトランジスター部分を含むことを明確化した。この差動増幅回路は、例えば、高周波無線機の受信アナログフロントエンドに用いられるローノイズアンプ(LNA)として使用することができる。
【0029】
LNAでは、交流の入力信号を受ける差動トランジスター(差動対をなす一対のトランジスター)におけるミラー効果(トランジスターの相互インダクタンスgmとすると、寄生容量の容量値がgm倍に見える効果)を低減するために、差動トランジスターの各々とカスケード接続されるゲート接地(ベース接地)のトランジスターを設け、このゲート接地(ベース接地)のトランジスターにLC負荷を接続する構成が採用される。例えば、スパイラルコイルの第3ポート(差動インダクターの中間タップ)にVDD(高レベル電源電圧)が供給され、ゲート接地(ベース接地)のトランジスターのゲート(ベース)にもVDDが与えられるとすると(この例は一例であり、この例に限定されるものではない)、LNAの近傍にVDD配線を設ける必要がある。
【0030】
仮にスパイラルコイルの第3ポートが、第1ポートおよび第2ポートと反対側から位置すると、LNAのカスケード接続されているトランジスターのゲート(ベース)に電源電圧を供給し、かつ、スパイラルコイルの第3ポートにも電源電圧を供給するために、VDD配線は、スパイラルコイルの外周に沿って設ける必要が生じ、VDD配線のレイアウトが複雑化し、回路の特性にも好ましくない影響を及ぼす場合がある。例えば、スパイラルコイルの外周に沿ってVDD配線が引き回されれば、VDD配線の配線長が必然的に長くなり、その分、配線インピーダンスが増大し、その配線インピーダンスによって電圧降下が生じることになり好ましくない。
【0031】
本態様では、第3ポートが、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として第1ポートおよび第2ポートと同じ側に設けられていることから、例えば、電源配線を、LNAの近傍に設けるだけで、所定の回路に必要な電源を供給することが可能であり、VDD配線(VDD配線と第3ポートを結ぶ配線部分)の配線長を短くし、コンパクトなレイアウトを実現することができる。
【0032】
(7)本発明のスパイラルコイルの配線構造の他の態様では、前記スパイラルコイルの前記第1インダクターおよび前記第2インダクターは各々、差動増幅回路の負荷として使用され、前記第1ポートには、交流信号を受ける差動トランジスターのうちの一方のトランジスターである第1トランジスターの一端が接続され、前記第2ポートには、前記交流信号を受ける差動トランジスターのうちの他方のトランジスターである第2トランジスターの一端が接続され、前記第3ポートには、バイアス電圧またはバイアス電流が供給される。
【0033】
本態様では、能動素子を含む回路が、負荷としてのL(インダクター)を含む差動増幅回路の差動トランジスター部分の回路であることを明確化した。上述の(6),(7)の態様と同様に、本態様においても、回路や配線のレイアウトの負担が軽減され、コンパクトなレイアウト設計が可能となる。
【0034】
(8)本発明の集積回路装置の一態様は、負荷としてLC共振回路を用いる差動増幅回路および負荷としてインダクターを用いる差動増幅回路の少なくとも一方を含む回路が集積された集積回路装置であって、前記LC共振回路を構成するインダクター、前記差動増幅回路における前記負荷としてインダクターおよび前記LC発振回路を構成するインダクターの各々は、前記集積回路装置の基板上の多層配線構造を用いて形成されたスパイラルコイルであり、前記スパイラルコイルは、第1ポートと第3ポートとの間に設けられる第1インダクターと、第2ポートと前記第3ポートとの間に設けられる第2インダクターとを含み、前記第1ポートおよび第2ポートは、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、同じ側に配置されており、前記スパイラルコイルは、第n交差部(nは2以上の偶数)と、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートと同じ側に設けられる第(n−1)交差部と、を有する、偶数巻きスパイラルコイルであり、前記第1ポートから得られる信号および前記第2ポートから得られる信号は差動信号であり、前記第3ポートにはバイアス電圧またはバイアス電流が供給され、前記3ポートにバイアス電圧または前記バイアス電流を供給する素子または配線は、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの側に設けられる。
【0035】
本態様では、集積回路装置がオンチップインダクターとしてのスパイラルコイルを含む。集積回路装置には、負荷としてLC共振回路を用いる差動増幅回路、負荷としてインダクターを用いる差動増幅回路およびLC発振回路の少なくとも一つを含む回路(例えば、通信回路:送信回路および受信回路の少なくとも一方)を設けることができる。
【0036】
スパイラルコイルの専有面積はかなり大きくなるのが通常であることから、回路レイアウトの自由度は、かなり制限される。スパイラルコイルが、例えば、無線受信機のローノイズアンプ(LNA)の負荷として使用される場合を想定する。LNAが、チップ上において、例えば、スパイラルコイルの第1方向側にある、スパイラルコイルの近くにある空き領域に配置されるとする。LNAは、例えば差動対をなす一対のトランジスターを含む回路であり、能動素子(トランジスター)を含む回路である。また、電源配線(例えばVDD配線やGND配線)、あるいは基準電圧配線等の各種配線はLNAを動作させるために必要な配線であるため、それらの配線の主要部もまた、LNAが配置される領域(あるいは、その近傍の領域)に設けられることが多い。したがって、例えば、スパイラルコイル(3ポートの差動インダクター)の第3ポートが、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、第2ポートや第3ポートとは反対の側に設けられるとすると、第3ポートと、第3ポートに接続される配線や素子(いずれもLNA側に配置されている)とを結ぶ配線は、スパイラルコイルの外周に沿って配線される部分を含むことになり、必然的に配線長が長くなり、その分、配線インピーダンスが増大する。例えば、第3ポートが電源電圧の供給端子であれば、その配線インピーダンスによって、電圧降下が生じることになり好ましくない。本態様では、このような不都合が生じない。
【0037】
複数のスパイラルコイルが用いられる場合においても、各スパイラルコイルの第1ポート〜第3ポートの各々は、能動素子を含む回路が配置されている側に位置していることから、接続が容易であり、結果的に、回路の性能の低下が抑制され、レイアウト上の負担が軽減され、かつコンパクトな集積回路装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】集積回路装置の回路構成例を示す図
【図2】図2(A)〜図2(E)は、スパイラルコイルを用いたオンチップ差動インダクターにおける、好ましいポート位置について説明するための図
【図3】好ましいスパイラルコイルの配線構造の一例を示す図
【図4】図4(A)および図4(B)は、図3に示されるスパイラルコイルの配線構造のX−X線に沿う断面図およびY−Y線に沿う断面図
【図5】図3に示されるスパイラルコイルの配線構造を、能動素子を含む回路と接続した状態を示す図
【図6】4回巻きのスパイラルコイルの配線構造を、能動素子を含む回路と接続した状態を示す図
【図7】図7(A)および図7(B)は、スパイラルコイルをLC発振回路の構成要素として使用した例を示す図
【図8】図8(A)および図8(B)は、スパイラルコイルを、差動増幅回路の負荷として使用した例を示す図
【図9】負荷としてLC共振回路を用いる差動増幅回路、負荷としてインダクターを用いる差動増幅回路およびLC発振回路の少なくとも一つを含む回路が集積された集積回路装置のレイアウト例を示す図
【図10】スパイラルコイルの変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0040】
(第1実施形態)
まず、スパイラルコイル(スパイラルインダクター)を用いて構成されるオンチップインダクターならびに能動素子(トランジスター)を含む回路が集積された集積回路装置(例えばシリコン基板上に多層配線構造が形成されているIC)の全体構成について説明する。
【0041】
(集積回路装置の全体構成の例)
図1は、集積回路装置の回路構成例を示す図である。集積回路装置には無線通信回路が集積されている。すなわち、集積回路装置は、アンテナAN1と、入力側整合回路10と、ローノイズアンプ(LNA)20と、直交するローカル信号LO(I)とLO(Q)の各々を、LNA20から出力される高周波入力信号にミキシングする第1ミキサー30aおよび第2ミキサー30bと、局部発振回路40(VCO43を含む)と、複素バンドパスフィルター(複素BPF)50と、リミッタ付アンプ60と、復調部70と、変調部80と、周波数変換部(周波数アップコンバータ)90と、高周波パワーアンプ(PA)100と、出力側整合回路110と、ベースバンド制御部(BB)120と、を有する。
【0042】
ローノイズアンプ(LNA)20は、定電流源I1と、ゲートにカップリングコンデンサーCP1,CP2を介して交流信号が入力される差動トランジスターM1,M2と、差動トランジスターM1とカスケード接続(縦列接続)されているトランジスターM3と、差動トランジスターM2とカスケード接続(縦列接続)されているトランジスターM4と、スパイラルコイルを用いて構成される、オンチップインダクターである第1インダクターL1とオンチップ容量C1とにより構成される共振回路(差動増幅回路の負荷)と、スパイラルコイルを用いて構成される、オンチップインダクターである第2インダクターL2とオンチップ容量C2とにより構成される共振回路(差動増幅回路の負荷)と、によって構成される。
【0043】
オンチップインダクターL1とL2は、例えば、多層配線構造を用いて基板上に形成される、渦巻き状(スパイラル状)の導体配線によって構成される、3ポートの差動インダクターである。つまり、第1インダクターL1の、トランジスターM3のドレインと接続されるポートが第1ポートP1であり、第2インダクターL2の、トランジスターM4のドレインと接続されるポートが第2ポートP2であり、第1インダクターと第2インダクターの共通接続点(中間タップ(CT))が、第3ポートP3となる。
【0044】
オンリップインダクターは、電圧制御発振器(VCO)43(例えばLC発振回路)や、高周波パワーアンプ(PA)100(例えば、L負荷の差動増幅回路)においても使用することができる。集積回路装置の全体のレイアウト例については後述する。
【0045】
(オンチップ差動インダクターのポート位置についての考察)
図2(A)〜図2(E)は、スパイラルコイルを用いたオンチップ差動インダクターにおける、好ましいポート位置について説明するための図である。図2(A)は、図1に示されるLNA20の要部構成を抜き出して示す図である。先に説明したように、第1インダクターL1および第2インダクターL2は、例えば、多層配線構造を用いて基板上に形成される、渦巻き状(スパイラル状)の導体配線によって構成される、3ポートの差動インダクターである。つまり、第1インダクターL1の、トランジスターM2のドレインと接続されるポートが第1ポートP1であり、第2インダクターL2の、トランジスターM4のドレインと接続されるポートが第2ポートP2であり、第1インダクターと第2インダクターの共通接続点(中間タップ(CT))が、第3ポートP3となる。図2(A)の例では、第3ポートP3には、広義のバイアス電圧としての電源電圧VDDが供給されている。
【0046】
図2(B)は、好ましくないスパイラルコイルの第1例の平面形状を示している。図2(B)に示されるスパイラルコイルは、2回巻きのコイルである。巻き数は、スパイラルコイルの中心SPCから、第1インダクター側あるいは第2インダクター側に線分を引き出したときに、その線分と交わる配線の数に相当する。なお、「スパイラルコイルの中心」は、特に定義があるわけではないが、例えば、スパイラルコイルの形状に注目して定めることができる。例えば、スパイラルコイルの最も外周の配線によって決まる、閉じた図形を想定し、その図形の、縦方向の高さを2等分する水平方向の線分と、横方向の幅を2等分する垂直方向の線分とが交わる点を、便宜上、スパイラルコイルの中心SPCとすることができる。
【0047】
図2(B)において、中間タップCTが第3ポートP3として機能する。第3ポートP3に接続される引き出し配線LKの端部に位置するポートを、引き出し後の第3ポートP3’とする(このことは、後述する他の例においても同様である)。第3ポートP3および引き出し後の第3ポートP3’は、共に、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線(図中、一点鎖線で示されている)を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2側に位置している。
【0048】
なお、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線としては、例えば、図2(D)の左側に示されるような4方向(DR1〜DR4)を想定する場合におぃて、DR3方向(DR4方向)に沿って延在する直線を用いることができる。ここで、DR1方向(第1方向とする)は、スパイラルコイルの中心SPCを基準として(つまり、スパイラルコイルの中心SPCからみて)、第1ポートP1(あるいは第2ポートP2)が配置される方向であり、DR2方向(第2方向とする)は、DR1方向(第1方向)とは反対の方向である。DR3方向(第3方向とする)は、DR1方向(第1方向)およびDR2方向(第2方向)に垂直な方向であり、DR4方向(第4方向とする)は、DR3方向(第3方向)とは反対の方向である。
【0049】
図2(B)の例では、第3ポート(中間タップCT)が、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、ポートP1およびポートP2側にあるため、第3ポートから、引き出し配線LK1をポートP1およびポートP2側に引き出すのは容易である。しかし、配線同士が交差する領域において、第1インダクターL1を構成する配線が、迂回経路(交差迂回経路)を構成することから(図中、点線で示される経路が迂回経路である:他の図面でも同様)、第1インダクターL1の等価インピーダンスが、第2インダクターの等価インピーダンスよりも大きくなる。
【0050】
つまり、第1インダクターL1を構成する配線における迂回経路(交差迂回経路)においては、スルーホール(コンタクトホール)を経由するコンタクト部CN1,CN2(以下、スルーホールコンタクトということがあり、また、この部分は、具体的にはコンタクトプラグに相当する)において接触抵抗等が存在し、また、迂回経路全体の配線長は、第2インダクターL2の交差部分の配線長よりも長いことから、その分だけ、第1インダクターL1の等価インピーダンスが、第2インダクターの等価インピーダンスよりも増大する。
【0051】
図2(C)は、交差迂回による配線のインピーダンスの増大を考慮した場合の等価回路を示している。抵抗R1が、交差迂回による配線のインピーダンスの増大分を示している。図2(C)の回路は、差動インダクターである第1インダクターL1および第2インダクターL2の特性の対称性が確保されておらず、このことは、例えば、共振回路のQ値が低下する一因となる。
【0052】
図2(D)では、4回巻きのスパイラルコイルを採用し、第1交差部CRX1と第2交差部CRX2を設けている。この例では、第1インダクターL1についての、交差迂回の回数と、第2インダクターL2についての、交差迂回の回数が各1回であることから、図2(E)に示すように、抵抗値が同じである抵抗R1と抵抗R2が、差動信号を取り扱う2つの信号経路の各々に挿入されることになって、差動経路のバランスが確保される。すなわち、スパイラルコイルの特性の対称性が確保されたことになる。但し、図2(D)の例では、第3ポートP3(中間タップCT)が、スパイラル中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2の反対側にある。例えば、図2(D)の左側に示されるとおり方向を定義する。スパイラル中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2は、第1方向(DR1)側にある。第3ポートP3は、第1方向(DR1)方向とは逆向きの第2方向(DR2)側にある。したがって、第3ポートP3に接続される引き出し配線LKの配置に関して、不都合が生じる。
【0053】
つまり、図2(D)に示されるように、インダクター領域に隣接してトランジスター領域が設けられており、VDD配線(VQ1とする)は、トランジスター領域に設けられていることから、第3ポートP3に電源電圧VDDを供給するためには、第3ポートP3から、配線を第1ポートP1および第2ポートP2側に引き出す必要がある。
【0054】
このとき、第3ポートP3(中間タップCT)に接続される引き出し配線LKは、磁束が集中するスパイラルコイルの内部を横断して直線的に延在させるのは好ましくない(磁界の影響を受けて誘導電流が生じる可能性があるため)。よって、第3ポートP3(中間タップCT)に接続される引き出し配線のパターンは、例えば、図2(D)に示されるような、スパイラルコイルの外周に沿って延在する配線パターンとせざるを得ない。図2(D)の例では、引き出し配線LKは、スパイラルコイルの中心(スパイラル中心)SPCを通る直線を基準として、第3方向(DR3)側に設けられている。引き出し配線LKは、スパイラルコイルの中心(スパイラル中心)SPCを基準として、第3方向とは反対方向の第4方向(DR4)側に設けることもできる。
【0055】
なお、図2(D)において、P3a’およびP3b’は各々、第1回目の引き出し後の第3ポート、第2回目の引き出し後の第3ポートを示している。このような、曲折する経路をもつ引き出し配線パターンが採用されると、配線長が長くなる分、不要な配線インピーダンスが増大し、その部分における電圧降下が増大することから好ましくない。なお、以上の考察は、本発明前に、本発明の発明者によってなされたものであり、従来技術ではない。
【0056】
(好ましいスパイラルコイルの配線構造の一例)
図3は、好ましいスパイラルコイルの配線構造の一例を示す図である。図3のスパイラルコイルは、図示されるように、第1ポートP1と第3ポートP3(中間タップCT)との間に設けられる第1インダクターL1と、第2ポートP2と第3ポートP3との間に設けられる第2インダクターL2とを含む。また、第1交差部CRX1と第2交差部CR2が設けられており、よって、第1インダクターL1に関する交差迂回の回数と、第2インダクターに関する交差迂回の回数は共に1回であり、巻き数は“2”である。
【0057】
また、第3ポートP3は、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2と同じ側に設けられている。また、第3ポートP3に接続される引き出し配線LK1は、第1ポートP1および第2ポートP2の方向に延在する直線状の配線であり、コンパクトなレイアウトが実現されている(但し、この例は一例である。引き出し配線LK1は、実際の設計の実情に対応して、種々のパターンを採り得る)。また、引き出し配線LK1の端部に位置するポートを、引き出し後の第3ポートP3’とする。
【0058】
なお、図3においては、第1インダクターL1を構成する配線(導体層)には、間隔が粗い斜線を施してあり、第2インダクターL2を構成する配線(導体層)には、斜線が施していない。また、第3ポートP3に接続される引き出し配線LK1には、間隔が密な斜線を施してある。
【0059】
図3において、第1ポートP1から引き出される第1配線(A)と、第2ポートP2から引き出される第2配線(B)とが、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2の側において交差すること(第1回目の交差)によって第1交差部CRX1が設けられており、さらに、第1交差部CRX1における第1配線(A)から引き出される(つまり、第1配線に接続される)第3配線(C)と、第1交差部CRX1における第2配線(B)から引き出される(つまり、第2配線に接続される)第4配線(D)とが交差することによって第2交差部(CRX2)が設けられている。第2交差部CRX2における第3配線(C)から引き出される第5配線(E)は、第3ポートP3(中間タップCT)に到達し、第2交差部CRX2における第4配線(D)から引き出される第6配線(F)も同様に、第3ポートP3(中間タップCT)に到達する。第3ポートP3(中間タップCT)には、他端が第3ポートP3に接続される引き出し配線(G:つまり、引き出し配線LK1)の一端が接続される。第3ポートP3に接続される引き出し配線(G:つまり引き出し配線LK1)は、第1ポートP1および第2ポートP2の方向に直線状に延在している。
【0060】
また、図3において、CN10〜CN14の各々は、交差の迂回経路におけるスルーホールコンタクト部分(具体的には、スルーホールを経由するコンタクトプラグ)である。図3において、第3ポートP3に接続される引き出し配線LK1は、例えば、多層配線構造における第3層目配線であり、第1交差部CRX1および第2交差部CRX2における迂回配線は、例えば第4層目配線であり、第1インダクターL1および第2インダクターL2の各々を構成する配線のうちの、第1交差部CRX1および第2交差部CRX2における迂回領域以外の領域の配線は、例えば第5層配線を用いて構成することができる。
【0061】
図4(A)および図4(B)は、図3に示されるスパイラルコイルの配線構造のX−X線に沿う断面図およびY−Y線に沿う断面図である。図4(A)および図4(B)に示されるように、基板(例えばシリコン基板)BS上に多層配線構造体が形成されている。多層配線構造体には、積層された、複数の絶縁層IS1〜IS5が含まれており、また、階層が異なる、複数の導体層(例えば、ALやCu等の金属層、また、シリサイドやポリサイド(重ね膜)であってもよい)が含まれている。図4(A)および図4(B)中の導体層に付された符号A〜Gの各々は、図3のスパイラルコイルの配線構造に付されている符号に対応する。同一階層の導体層については、基板BSとの間の距離が一定であり、基板BSと導体層との間の寄生容量の容量値は揃っている。よって、差動インダクターの特性の対称性は確保される。
【0062】
図3に戻って説明を続ける。本実施形態では、図3に示されるように、従来技術には例のない、第1交差部CRX1を設けることによって、3ポートであり、インダクターを構成する配線の交差迂回の回数が2つのインダクターL1,L2の各々に関して同じであり、かつ3つのポート(第1ポートP1、第2ポートP2および第3ポートP3)の各々が、スパイラル中心SPCを通る直線を基準として同じ側に設けられる、オンチップ差動インダクターを実現することができる。第1交差部CRX1は、このようなスパイラルコイルを実現するために意図的に設けられる交差部であり、ダミー交差部ということができる。
【0063】
また、図3の例では、第2交差部CRX2は、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2とは反対側に設けられている。これによって、バランスのとれたスパイラル(渦巻き)配線を形成することが容易となり、第1インダクターL1と第2インダクターL2の各特性の対称性(各特性のバランスがとれていること)を確保することが容易となる。なお、第2交差部CRX2が、第1交差部CRX1と同じ側に配置される変形例もあり得る(この変形例については、図10を用いて後述する)。
【0064】
図3の例では、スパイラルコイルの巻き数は“2”であるが、巻き数は、任意の偶数とすることができる。つまり、より一般的には、スパイラルコイルがn回巻き(nは2以上の偶数)のスパイラルコイルである場合に、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2の側には、(n/2)個の第p交差部(pは、1≦p≦(n−1)を満足する奇数)が設けられ、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2の反対側には、(n/2)個の第m交差部(mは、2≦m≦nを満足する偶数)が設けられる、と表現することができる。
【0065】
つまり、スパイラルコイルがn回巻き(nは2以上の偶数)である場合に、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2と同じ側および反対側の各々に、(n/2)個の交差部が設けられる。つまり、第1ポートP1および第2ポートP2の側には、第p交差部(pは、1≦p≦(n−1)を満足する奇数)が設けられ、第1ポートP1および第2ポートP2の反対側には、(n/2)個の第m交差部(mは、2≦m≦nを満足する偶数)が設けられる。
【0066】
例えば、n=6であるとき、第1ポートおよび第2ポートの側には、第1、第3、第5の交差部が設けられ、第1ポートおよび第2ポートの反対側には、第2、第4、第6の交差部が設けられる。そして、例えば、第1交差部CRX1において、第1インダクターL1を構成する配線が迂回経路を構成するのであれば、次の第2交差部CRX2においては、第2インダクターL2を構成する配線が迂回経路を構成するようにして、以下同様の構成として、スパイラル全体としては、第1インダクターL1を構成する配線の交差迂回の回数と、第2インダクターL2を構成する配線の交差迂回の回数とが同じになるようにする。このような構成によれば、例えば、3ポートであり、偶数巻きであり、配線の交差迂回の回数が2つのインダクターL1,L2の各々に関して同じであり、かつ3つのポート(第1ポートP1、第2ポートP2および第3ポートP3(ならびに引き出し後のポートP3’)の各々が、スパイラル中心SPCを通る直線を基準として同じ側に設けられるオンチップ差動インダクターを実現することができる。このオンチップ差動インダクターは、効率的なレイアウトを可能とする、新規かつ有用なインダクターである。
【0067】
図5は、図3に示されるスパイラルコイルの配線構造を、能動素子を含む回路と接続した状態を示す図である。先に説明したように、スパイラルコイルは、集積回路装置の基板上に形成される多層配線構造を用いて形成される。図5の例では、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1と、第2ポートP2および第3ポートP3(引き出し後の第3ポートP3’)の側に、能動素子(トランジスター)を含む回路500が配置される。
【0068】
この回路500は、図1に示されるローノイズアンプ(LNA)における、差動トランジスター(M1,M2)およびゲート接地トランジスター(M3、M4)を含む回路部分である。この回路500に電源電圧を供給するためのVDD配線(VQ1)も、回路500の付近(つまり、スパイラル中心SPCを通る直線を基準として、回路500が配置されている側)に配置されている。
【0069】
すなわち、図5に示されるスパイラルコイルの配線構造では、第3ポートP3は、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2と同じ側にあり、また、能動素子を含む回路500は、第1ポートP1、第2ポートP2および第3ポートP3(およびP3’)と同じ側にある。よって、能動素子を含む回路500、あるいは、その能動素子を含む回路に電源電圧や基準電圧を供給する配線等(ここでは、VDD配線VQ1であり、このVDD配線)と、スパイラルコイルの各ポート(第1ポートP1,第2ポートP2,第3ポートP3(引き出し後の第3ポートP3’)との接続は容易であり、スパイラルコイルと能動素子を含む回路500とを結ぶ配線111,112,113の配線長は短くてすむ。また、コンパクトなレイアウトを実現することができる。よって、回路の性能の低下が抑制され、また、回路や配線のレイアウトの負担が軽減される。
【0070】
図6は、4回巻きのスパイラルコイルの配線構造を、能動素子を含む回路と接続した状態を示す図である。図6では、先に示した図と共通する部分には共通の符号を付している(このことは、他の図面においても同様である)。図6の例では、スパイラルコイルは4回巻きであり、4つの交差部(第1交差部CRX1、第2交差部CRX2、第3交差部CRX3、第4交差部CRX4)が設けられている。なお、CN20〜CN28は、スルーホールコンタクト(具体的には、スルーホールを経由するコンタクトプラグ)である。
【0071】
(第2の実施形態)
図7(A)および図7(B)は、スパイラルコイルをLC発振回路の構成要素として使用した例を示す図である。
【0072】
図7(A)に示されるように、スパイラルコイルは、LC発振回路の構成要素として使用されている。LC発振回路は、フリップフロップを構成するゲート接地トランジスターM10(第1インバーター)およびM20(第2インバーター)と、可変容量ダイオードCA1およびCA2と、第1インダクターL1および第2インダクターL2と、カレントミラーを構成するトランジスターM50およびM60と、カレントミラーの入力側電流を供給するための電流源I10と、出力段トランジスターM30およびM40と、出力段回路の負荷となる抵抗R10および抵抗R20と、を有する。可変容量ダイオードCA1,CA2の容量値は、制御電圧VCTLによって制御される。
【0073】
スパイラルコイルがフリップフロップの負荷として使用される場合、例えば、図7(A)に示されるように、第1ポートP1および第2ポートP2の各々には、第1インバーター(トランジスターM10)の出力ノードNAおよび第2インバーター(トランジスタM20)の出力ノードNBの各々が接続され、かつ、第3ポートP3(引き出し後の第3ポートP3’)には、電流源としてのカレントミラーからバイアス電流が供給される。
【0074】
図7(B)は、スパイラルコイルと能動素子を含む回路(フリップフロップ部分)との接続を示す図である。第3ポートP3が、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として第1ポートP1および第2ポートP2と同じ側に設けられていることから、スパイラルコイルとフリップフロップ部分の回路600とを接続することが容易であり、図7(A)に示される回路を効率的に構成することができる。VDD配線VQ2等は、トランジスターの形成領域付近に設けられる。また、電流源としてのカレントミラーを構成する能動素子(M50,M60)等も、回路600の近傍に設けられる。よって、スパイラルコイルの第3ポートP3に関する配線を、コンパクトに配置することができる。よって、例えば、発振回路に動作電流を供給する配線12の配線長を短くすることができ、レイアウト上、有利である。
【0075】
図5の例、図6の例、図7(B)の例からわかるように、スパイラルコイルの第3ポートP3には、電源電圧のようなバイアス電圧または動作電流のようなバイアス電流が供給される。「バイアス電圧」は、電源電圧(例えば高レベル電源電圧VDD、低レベル電源電圧GND)や基準電圧(参照電圧)等を含む直流電圧であり、電圧値が可変である場合を含めて最も広義に解釈するものとする。バイアス電流についても同様である。つまり、「バイアス電流」は、例えば電流源により生成される直流バイアス電流であり、回路を動作させる電流、あるいは回路の動作点を決めるための電流等を広く含むものとし、電流値が可変である場合を含めて最も広義に解釈するものとする。なお、「第3ポートにバイアス電圧またはバイアス電流が供給される」という表現は、「第3ポートがACグランド(交流信号に対する接地)である」と言い換えることができる。
【0076】
(第3の実施形態)
図8(A)および図8(B)は、スパイラルコイルを、差動増幅回路の負荷として使用した例を示す図である。
【0077】
図8(A)に示されるように、スパイラルコイルは、差動増幅回路の負荷(インダクター負荷)として使用されており、スパイラルコイルには、差動トランジスターを含む回路700が接続される。図8(A)の差動増幅回路は、例えば、図1に示される高周波パワーアンプ(PA)100として使用される。スパイラルコイルの第1ポートP1には、交流信号Vin(入力端子Pin1およびPin2を経由して入力される差動信号Vin)を受ける差動トランジスターのうちの一方のトランジスターである第1トランジスターM100の一端(ドレイン)が接続され、第2ポートP2には、交流信号Vinを受ける差動トランジスターのうちの他方のトランジスターである第2トランジスターM200の一端(ドレイン)が接続され、第3ポートP3(P3’)には、高レベル電源電圧VDD(広義にはバイアス電圧またはバイアス電流)が供給される。
【0078】
図8(B)に示されるように、第3ポートP3(および引き出し後の第3ポートP3’)が、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として第1ポートP1および第2ポートP2と同じ側に設けられていることから、スパイラルコイルと差動トランジスター部分の回路700とを接続することが容易であり、図8(A)に示される回路を効率的に構成することができる。VDD配線VQ3等は、トランジスターの形成領域付近に設けられる。よって、スパイラルコイルの第3ポートP3に関する配線131の配線長を短くすることができる。回路や配線のレイアウトの負担が軽減され、コンパクトなレイアウト設計が可能となる。
【0079】
(第4の実施形態)
図9は、負荷としてLC共振回路を用いる差動増幅回路、負荷としてインダクターを用いる差動増幅回路およびLC発振回路の少なくとも一つを含む回路が集積された集積回路装置のレイアウト例を示す図である。具体的には、図9は、図1に示される無線通信機(例えば、RF段からIF段、ベースバンド制御部に至るまでの回路を、外付け部品を用いることなくワンチップ化したオンチップ通信機)のレイアウト例を示す。図9において、図1と共通する部分には同じ参照符号を付してある。
【0080】
図9中のLNA用スパイラルコイルLXは、LC共振回路(あるいはL負荷であってもよい)を構成する、3ポートの差動インダクターである。VCO用スパイラルコイルLYは、LC発振回路(広義にはインダクターを用いた発振回路)を構成する、3ポートの差動インダクターである。パワーアンプ用スパイラルコイルLZは、差動増幅回路における負荷となるインダクターである。各スパイラルコイルは、集積回路装置の基板BS上の多層配線構造を用いて形成された、渦巻き形状の導体配線をもつ平面型コイルである。
【0081】
先に説明したように(例えば、図3や図5を参照)、スパイラルコイルは、第1ポートP1と第3ポートP3との間に設けられる第1インダクターL1と、第2ポートP2と第3ポートP3との間に設けられる第2インダクターL2とを含み、第1ポートP1および第2ポートP2は、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、同じ側に配置されている。また、スパイラルコイルは、例えば、第n交差部(nは2以上の偶数)と、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として第1ポートP1および第2ポートP2と同じ側に設けられる第(n−1)交差部と、を有する、偶数巻きのスパイラルコイルである。第n交差部(nは2以上の偶数)は、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2とは反対側に設けられるのが好ましい(バランスのとれたスパイラルを形成し易いため)。
【0082】
また、第1ポートP1から得られる信号(つまり第1ポートP1の電圧信号または電流信号)および第2ポートから得られる信号(つまり、第2ポートの電圧信号または電流信号)は差動信号であり、また、第3ポートP3には、例えばバイアス電圧(電源電圧を含む)またはバイアス電流(動作電流、動作点を決定するための電流を含む)が供給される。つまり、第3ポートP3は、ACグランド(交流信号に対する接地ノード)として機能する。また、第3ポートP3にバイアス電圧またはバイアス電流を供給する素子または配線は、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第1ポートP1および第2ポートP2の側に設けられる。
【0083】
図9のレイアウト例からわかるように、スパイラルコイルの専有面積はかなり大きくなるのが通常である。したがって、回路レイアウトの自由度は、かなり制限される。つまり、スパイラルコイルをチップ上の任意の位置に配置し、一つのスパイラルコイルの周囲において自由に、回路素子や配線を設けるということは実際には困難である。したがって、図9のレイアウト例では、大きなスパイラルコイルLX,LYをチップの片側に寄せて配置し、同様に、スパイラルコイルLZは、LX,LYとは反対側に配置し、そして、各スパイラルコイルの、所定方向側の空き領域(図9の例では、スパイラルコイルLXおよびLYと、スパイラルコイルLZとに挟まれる中央の領域)において、受信処理部RX1,送信処理部TX1を設けている(但し、このレイアウト例は一例であり、これに限定されるものではない)。なお、復調部70、変調部80ならびにベースバンド制御部(BB)120の各々の占有面積もかなり大きくなる。
【0084】
受信処理部RX1および送信処理部TX1は、多数の能動素子(トランジスター)および受動素子(抵抗やダイオード等)を含み、また、電源配線(例えばVDD配線やGND配線)、あるいは基準電圧配線等の各種配線は、トランジスター回路を動作させるために必要な配線であるため、それらの配線の主要部もまた、受信処理部RX1および送信処理部TX1に設けられる(あるいは、その付近)に配置される場合が多い。したがって、例えば、スパイラルコイル(3ポートの差動インダクター)の第3ポートP3が、スパイラルコイルの中心SPCを通る直線を基準として、第2ポートP2や第3ポートP3とは反対の側に設けられるとすると、第3ポートP3と、第3ポートP3に接続される配線や素子(いずれも受信処理部RX1および送信処理部TX1に設けられる)とを結ぶ配線は、スパイラルコイルの外周に沿って配線される部分を含むことになり、必然的に配線長が長くなり、その分、配線インピーダンスが増大する。例えば、第3ポートP3(引き出された端子であるP3’を含むものとする)が電源電圧VDDの供給端子であれば、その配線インピーダンスによって、電圧降下が生じることになり好ましくない。図9のレイアウトでは、そのような不都合が生じない。
【0085】
つまり、複数のスパイラルコイルが用いられる場合においても、各スパイラルコイルの第1ポートP1〜第3ポートP3(引き出された端子であるP3’を含むものとする)は、能動素子を含む回路が配置されている側に位置していることから、接続が容易であり、結果的に、回路の性能の低下が抑制され、レイアウト上の負担が軽減され、かつコンパクトな集積回路装置のレイアウトが実現される。
【0086】
(第5の実施形態)
図10は、スパイラルコイルの変形例を示す図である。図10のスパイラルコイルは、前掲の実施形態におけるスパイラルコイルと同様に、3ポートで偶数巻き、かつ、第1ポートP1〜第3ポートP3(ならびに引き出された第3ポートP3’)が、スパイラル中心SPCを通る直線を基準として、同じ側に配置されており、第1インダクターL1についての交差迂回の回数と第2インダクターL2についての交差迂回の回数とが同じである。
【0087】
但し、図10の例では、第2交差部CRX20が、第1交差部CRX10と同じ側に配置されている。第3ポートP3(中間タップCT)は、図10では、第2ポートP2よりも右側に位置している。なお、CN30,CN31,CN40,CN41は、スルーホールコンタクト(具体的にはコンタクトプラグ)である。
【0088】
このように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、第1インダクターおよび第2インダクターを有する3ポートのスパイラルコイルにおける特性の対称性を確保し、かつ、3つのポートを、スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として同じ側に配置することが可能となる。すなわち、例えば、3ポートであり、インダクターを構成する配線の交差迂回の回数が2つのインダクターの各々に関して同じであり、かつ3つのポートの各々が、スパイラル中心を基準として同じ側に設けられるインダクターを実現することができる。
【0089】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0090】
AN1 無線アンテナ、20 ローノイズアンプ(LNA)、
30a、30b 第1ミキサーおよび第2ミキサー、40 局部発振回路、
43 VCO(電圧制御発振器)、60 リミッタ付きアンプ、70 復調部、
80 変調部、90 周波数変換部、100 高周波パワーアンプ、
110 出力側整合回路、120 ベースバンド制御部(BB)、
L1 第1インダクター、L2 第2インダクター、P1 第1ポート、
P2 第2ポート、P3 第3ポート、CT 差動インダクターの中間タップ、
SPC スパイラルコイルの中心、CRX(CRX1,CRX2等) 配線交差部、
CN(CN10〜CN14等) スルーホールコンタクト(コンタクトプラグ)、
VQ1〜VQ3 電源配線(バイアス電圧供給配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートと第3ポートとの間に設けられる第1インダクターと、第2ポートと前記第3ポートとの間に設けられる第2インダクターとを含むスパイラルコイルの配線構造であって、
前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートは同じ側に配置されており、
前記第1インダクターを構成する配線についての、配線交差における迂回の回数と、第2インダクターを構成する配線についての、配線交差における迂回の回数と、が同じであり、
前記第1ポートから引き出される第1配線と、前記第2ポートから引き出される第2配線とが、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび第2ポートの側において交差することによって第1交差部が設けられ、
前記第1交差部における前記第1配線に接続される第3配線と、前記第1交差部における前記第2配線に接続される第4配線とが交差することによって第2交差部が設けられ、
前記第3ポートが、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの側に設けられる、
ことを特徴とするスパイラルコイルの配線構造。
【請求項2】
請求項1記載のスパイラルコイルの配線構造であって、
前記第4配線の各々が交差する第2交差部が、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートとは反対側に設けられることを特徴とするスパイラルコイルの配線構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のスパイラルコイルの配線構造であって、
前記スパイラルコイルは、n回巻き(nは2以上の偶数)のスパイラルコイルであり、
前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの側には、(n/2)個の第p交差部(pは、1≦p≦(n−1)を満足する奇数)が設けられ、
前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの反対側には、(n/2)個の第m交差部(mは、2≦m≦nを満足する偶数)が設けられる、ことを特徴とするスパイラルコイルの配線構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスパイラルコイルの配線構造であって、
前記スパイラルコイルは、集積回路装置の基板上に形成される多層配線構造を用いて形成され、
前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポート、前記第2ポートおよび前記第3ポートの側に、能動素子を含む回路が配置される、
ことを特徴とするスパイラルコイルの配線構造。
【請求項5】
請求項4記載のスパイラルコイルの配線構造であって、
前記第1ポートから得られる信号および前記第2ポートから得られる信号は差動信号であり、かつ、前記第3ポートにはバイアス電圧またはバイアス電流が供給される、ことを特徴とするスパイラルコイルの配線構造。
【請求項6】
請求項5記載のスパイラルコイルの配線構造であって、
前記スパイラルコイルの前記第1インダクターおよび前記第2インダクターは各々、差動増幅回路の負荷となるLC共振回路を構成し、
前記第1ポートには、交流信号を受ける差動トランジスターのうちの一方のトランジスターである第1トランジスターとカスケード接続された第2トランジスターの一端が接続され、
前記第2ポートには、前記交流信号を受ける差動トランジスターのうちの他方のトランジスターである第3トランジスターとカスケード接続された第4トランジスターの一端が接続され、
前記第3ポートには、バイアス電圧またはバイアス電流が供給される、
ことを特徴とするスパイラルコイルの配線構造。
【請求項7】
請求項5記載のスパイラルコイルの配線構造であって、
前記スパイラルコイルの前記第1インダクターおよび前記第2インダクターは各々、差動増幅回路の負荷として使用され、
前記第1ポートには、交流信号を受ける差動トランジスターのうちの一方のトランジスターである第1トランジスターの一端が接続され、
前記第2ポートには、前記交流信号を受ける差動トランジスターのうちの他方のトランジスターである第2トランジスターの一端が接続され、
前記第3ポートには、バイアス電圧またはバイアス電流が供給される、
ことを特徴とするスパイラルコイルの配線構造。
【請求項8】
負荷としてLC共振回路を用いる差動増幅回路および負荷としてインダクターを用いる差動増幅回路の少なくとも一方を含む回路が集積された集積回路装置であって、
前記LC共振回路を構成するインダクター、前記差動増幅回路における前記負荷としてインダクターの各々は、前記集積回路装置の基板上の多層配線構造を用いて形成されたスパイラルコイルであり、
前記スパイラルコイルは、第1ポートと第3ポートとの間に設けられる第1インダクターと、第2ポートと前記第3ポートとの間に設けられる第2インダクターとを含み、
前記第1ポートおよび第2ポートは、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、同じ側に配置されており、
前記スパイラルコイルは、第n交差部(nは2以上の偶数)と、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートと同じ側に設けられる第(n−1)交差部と、を有する、偶数巻きスパイラルコイルであり、
前記第1ポートから得られる信号および前記第2ポートから得られる信号は差動信号であり、
前記第3ポートにはバイアス電圧またはバイアス電流が供給され、
前記3ポートにバイアス電圧または前記バイアス電流を供給する素子または配線は、前記スパイラルコイルの中心を通る直線を基準として、前記第1ポートおよび前記第2ポートの側に設けられる、
ことを特徴とする集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−96778(P2011−96778A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247781(P2009−247781)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】