説明

スピネル物品およびその製造方法

【課題】光学的用途に適した、改良されたスピネル材料ならびにそれらの改良された製造方法を提供する。
【解決手段】融液法により形成される単結晶スピネルブールであり、そのブールは非化学量論的な組成を有し、約20%以上の収率で表される、減少した機械的応力もしくはひずみを有し、ここで収率は式Wi/(Wi+Wf)×100%であり、Wi=ブールから加工処理された無傷ウェハの数、そしてWf=ブールにおける機械的内部応力もしくはひずみによる、ブールからの破壊されたウェハの数である、単結晶スピネルブール。前記単結晶スピネル非化学量論的組成を有し、波長範囲にわたって吸光率により表される透明性窓を有し、その波長範囲は通常、約400nm〜約800nmに延び、透明性窓は波長範囲に沿って最大単一吸光率ピーク高さとして定義され、最大単一吸光率ピーク高さは0.35cm−1以下である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピネル結晶構造を有する物品に関し、ブール、ウェハ、基板およびそれらを組み込んだ能動(active)デバイスのような物品を含む。さらに、本発明はそのような物品の製造方法に関する。また、本発明は特に光学的用途に有用なスピネル材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオードのような能動光電子デバイスは、デバイスの活性層に窒化物系半導体層を用いることが多い。この点については、Ga(Al,In)N材料を広範に含む窒化ガリウム群は約2〜6eVのオーダーのかなり広い範囲にわたって実施されうるバンドギャップを有する直接遷移型半導体として利用されてきた。
【0003】
このような窒化物系半導体材料の光電子特性を利用するために、それらは単結晶として作成されるのが通常である。この点については、窒化物系半導体材料のバルク単結晶ブールを作成することは実際的ではないのが通常である。したがって、産業は適切な基板上に、たとえばエピタキシャル成長によって単結晶層として、このような材料を堆積することを求めてきた。窒化物系半導体層が堆積される基板は、堆積したままの活性層において望ましい結晶構造を示すために適合性のある結晶構造を有することが望ましい。このような窒化物系材料、たとえばGaNおよびAlNは、いくつかの異なる結晶状態で存在しうるが、望ましい結晶構造はセン亜鉛鉱よりもウルツ鉱であるのが通常である。望ましいウルツ鉱結晶構造に厳密に合わせようとする努力において、従来技術はサファイア(コランダム)の形態で単結晶アルミナを利用してきており、特に活性層がその上に堆積される、適切な結晶表面を提供するために、サファイア基板を配向させている。しかしながら、サファイアは数多くの難点を抱える。たとえば、サファイアは能動デバイスを製造するのに用いられうるへき開面を示さない。この点に関して、ウェハをスライシングもしくはソーイングによるよりもへき開により、個々のダイ(それぞれがデバイス基板を有する能動デバイスを形成する)にダイシングすることが望ましいのが通常である。なぜなら、へき開は製造コストを低減し得、しかも製造プロセスを簡単にし得るからである。
【0004】
これに対し、スピネル結晶構造を持つ材料は、適切に配向されるならば、へき開面を示し、その張り出し(projection)はウェハ表面において窒化物活性層のへき開面に平行であるのが通常であり、予測可能で信頼しうるデバイス製造を可能にする。サファイアを超えるスピネルの優秀さにもかかわらず、数多くの加工処理の障害は経済的な実行可能性を幾分制限することをもたらす。産業はいわゆる「ベルヌーイ」法である火炎溶融法として知られている方法によりスピネル基板を作り出すことを求めて来たが、このような方法は実行するのがかなり困難であり、形成されるブールにおける組成の不均一性は非常に高い処理温度に原因が帰せられている。
【0005】
さらに、産業は融液に基づく方法から単結晶スピネルブールを開発することを求めて来ており、とりわけいわゆるチョクラルスキー法のような方法を含む。このような融液に基づく方法において、化学量論的な結晶(通常MgO・AlOであり、1:1のMgO:AlO比を有する)は、固体表面の固化を含む火炎溶融よりもむしろバッチ融液から成長するのが通常である。融液に基づく方法は単結晶スピネル基板の創出に多くの見込みを示すが、その方法は制御するのが比較的困難であり、望ましくないほどの低収率、増大するコストをもたらす。さらに、延びた冷却期間とアニーリング期間がブール形成に続いてブール中に存在する機械的内部応力およびひずみを除去するために実行される。このような冷却速度は異常に低くなり得、冷却期間は著しく長く、生産量に影響し、熱的経費およびコストを増加させる。同様に、何百時間にもわたりうる、延びたアニーリング時間は加工処理コストをさらに増加させる。比較的高い加工処理コスト以外に、そして結晶中の残留機械的応力およびひずみに向かう企てられる予防的手段にもかかわらず、ブールから形成されるウェハは望ましくない破損率を度々生じやすく、20%未満の収率も多い。
【0006】
上記の点を考慮して、改良されたスピネルブール、ウェハ、基板およびそれらを組み込んだ光電子デバイス、ならびにそれらの改良された製造方法を提供することが望ましいのが通常である。
【0007】
光電子の用途に加えて、望ましい光学的性質を持つ材料が望まれている。この点に関し、アルミナ材料が光学的用途を求めて使用および/または評価されてきた。このような光学的用途は、たとえば高出力レーザー用途であり、そこでは光学的材料は窓もしくは鏡として用いられ、それにより光学レーザービームは通過もしくは反射されうる。考慮されてきたアルミナ材料は通常サファイアの形態の、単結晶アルミナを含む。他の材料は微細組織ではアルミナと区別されるが、かなりの部分のアルミナ群を含み、イットリアアルミナガーネット(YAG)ならびにスピネル(MgO・AlO)含む。サファイアおよびYAGはある水準の頑丈さを示すが、技術は優れた性能を持つ材料を継続して要求する。さらに、サファイアは光学的に等方性構造を持たないので、部材を通過する光の意図された軸を持つ微細構造を適切に調整するように、部材の製造時に注意が払われなければならない。
【0008】
スピネル系材料は高出力レーザーの軍事使用のような、光学的用途を求める使用に見込みを示してきた。しかし、このような材料は難点を持たないわけではなく、上述のような材料製造/加工処理の問題を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の点を考慮して、光学的用途に適した、改良されたスピネル材料ならびにそれらの改良された製造方法を提供することが望ましいのが通常である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、単結晶スピネルブールは融液法により形成される。そのブールは非化学量論的な組成を有し、減少した機械的応力を有する。その減少した機械的応力は比較的高い収率、通常約20%以上、により表される。収率は式Wi/(Wi+Wf)×100%で定義される。ここでWi=ブールから加工処理された無傷ウェハの数、そしてWf=ブールにおける機械的内部応力およびひずみによる、ブールからの破壊されたウェハの数である。
【0011】
本発明のもう1つの態様によれば、単結晶スピネルウェハは融液法により形成され、そのウェハは非化学量論的な組成を有し、減少した内部応力を有する。その減少した内部応力は約20%以上の収率により表される。収率は上述のように、式Wi/(Wi+Wf)×100%で定義され、Wi=ブールから加工処理された無傷ウェハの数、そしてWf=ブールにおける機械的内部応力およびひずみによる、ブールからの破壊されたウェハの数である。
【0012】
本発明のもう1つの態様によれば、光電子基板が提供され、aMgO・bAlO単結晶スピネルから本質的になり、スピネルがAlOリッチであるようにb:a比は1:1より大きく、単結晶スピネルは融液法により製造される。
【0013】
もう1つの態様によれば、デバイスが供給され、融液法により製造される非化学量論的なスピネル基板、ならびにその基板に重なる活性層を含む。
【0014】
本発明のもう1つの態様によれば、単結晶スピネルウェハの製造方法が提供され、るつぼにバッチ融液を供給すること、その融液からスピネル単結晶ブールを成長させること、アニーリングを約50時間以下の期間に制限すること、ならびにそのブールを多数のウェハにスライシングすること、を含む。
【0015】
本発明のもう1つの態様によれば、単結晶スピネルウェハの製造方法が提供され、るつぼにバッチ融液を供給すること、その融液からスピネル単結晶ブールを成長させること、ならびにそのブールを多数のウェハにスライシングすること、を含む。この態様において、ブールは約0.39より小さくないプロセスアスペクト比で成長する。ここで、プロセスアスペクト比はるつぼ内径に対する平均ブール径の比として定義される。
【0016】
本発明のもう1つの態様によれば、単結晶スピネルウェハの製造方法が提供され、るつぼにバッチ融液を供給すること、その融液からスピネル単結晶ブールを成長させること、そのブールを約50℃/時間以上の冷却速度で冷却すること、ならびにそのブールを多数のウェハにスライシングすること、を含む。
【0017】
本発明のもう1つの態様によれば、単結晶スピネルウェハの製造方法が提供され、るつぼにバッチ融液を供給すること、その融液からスピネル単結晶ブールを成長させること、そのブールを約50℃/時間以上の冷却速度で冷却すること、アニーリングを約50時間以下の期間に制限すること、ならびにそのブールを多数のウェハにスライシングすること、を含む。この成長工程において、ブールは約0.39より小さくないプロセスアスペクト比で成長する。ここで、プロセスアスペクト比はるつぼ内径に対する平均ブール径の比として定義される。
【0018】
さらにもう1つの態様によれば、単結晶スピネル材料が提供され、その材料は非化学量論的組成を有し、波長範囲にわたって吸光率により表される透明性窓を有する。その波長範囲は通常、約400nm〜約800nmに延びる。透明性窓は波長範囲に沿って最大単一吸光率ピーク高さとして定義され得、最大単一吸光率ピーク高さは0.35cm−1以下である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】MgO−AlO系の相図。
【図2】7インチ径るつぼ中で成長した小径(2インチ)ブールの正面写真。
【図3】7インチ径るつぼ中で成長した大径(4インチ)ブールの正面写真。
【図4】4インチ径るつぼ中で成長した2インチ径ブールの正面写真。
【図5】誤配向(フリッピング)結晶の正面図。
【図6】誤配向(フリッピング)結晶の側面図。
【図7】良好な[111]結晶の正面図。
【図8】良好な[111]結晶の側面図。
【図9】径dを有し、数多くのデバイス基板もしくはダイを有するウェハを示す。
【図10】本発明の1態様による典型的な光電子デバイスを示す。
【図11】本発明の1態様による工程系統図を示す。
【図12】Q−スイッチ用途において使用される、従来開発されたコバルトドープ逆スピネルの光学的透過性(吸光率)を示す。
【図13】本発明の1態様によるアルミナリッチスピネルの光学的透過性(吸光率)を示す。
【図14】図13に示される曲線の一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の1態様によれば、単結晶スピネルブールおよびそれから形成される単結晶スピネルウェハが提供される。通常、単結晶スピネルブールの加工処理は、図11の工程210として通常示されるように、るつぼ中でのバッチ融液の形成で始まる。バッチ融液は形成されたままのブール中の非化学量論的な組成を示すように供給されるのが通常である。1態様によれば、ブールはaAD・bEDの一般式を有し、ここでAはMg、Ca、Zn、Mn、Ba、Sr、Cd、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、EはAl、In、Cr、Sc、Lu、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、そしてDはO、S、Seおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、スピネルがEDリッチであるようにb:a比>1:1である。さらに詳しくは、化学量論的組成はb:a比=1:1であり、非化学量論的な組成はb:a比≠1:1である。
【0021】
ここで用いられるように、「ブール」(“boule”)という用語は、溶融処理により形成される単結晶の固まりをいい、インゴット、円筒形もしくは類似の構造を含む。
【0022】
ある態様によれば、AはMg、DはO、そしてEはAlであり、単結晶スピネルは式aMgO・bAlOを有する。ここに含まれるいくつかの開示はMgO・AlOスピネル系組成に言及するが、本発明の開示は上記のように一般式aAD・bEDを有する比較的広いグループのスピネル組成にもっと一般的に関すると理解される。MgO・AlO系に関して、2元系相図を示す図1が注目される。示されるように、aMgO・bAlOのアルミナ含量がb:a比が化学量論的MgO・AlOを示す1:1を超えて増加するにつれて、液相線温度は低下する。したがって、溶融は比較的低い温度で達成される。たとえば、アルミナリッチスピネルにおいてブール形成に用いられる溶融温度は、化学量論的スピネルのために使用可能な溶融温度より50から100度のオーダーで低い。MgO・AlO(b:a=1:1)により示される組成を有する化学量論的スピネルは、約2378Kの液相線温度を有するが、一方4:1のb:a比では液相線温度が約2264Kと著しく低い。
【0023】
EDリッチスピネルは1:1より大きいb:a比により表されるのが通常であるが、ある態様は約1.2:1より小さくない、たとえば約1.5:1より小さくない、b:a比を有する。他の態様は、ADに対してはるかに高いED割合を有し、たとえば約2.0:1より小さくなく、もしくは2.5:1より小さくない。ある態様によれば、EDの相対的含量は約4:1より大きくないb:a比を有するように限定される。具体的な態様は約3:1(たとえば2.9:1)のb:a比を有しうる。
【0024】
るつぼでのバッチ融液の形成に続いて、スピネル単結晶ブールはチョクラルスキー引上げ法のような種々の方法の1つにより形成されるのが通常である。チョクラルスキー引上げ法は、ここである態様の形成に利用されてきたが、火炎溶融法とは異なる数多くの融液系方法の1つが利用されうることが理解される。このような融液系方法は、さらにブリッジマン法、液体封止ブリッジマン法、水平勾配フリーズ法、上端規定成長法(edge-defined growth method)、シュトックバーガー法、もしくはクリオポラス法を含む。これらの融液系方法は、融液からブールを成長させる点で火炎溶融法と基本的に異なる。これに対し、火炎溶融法はブールが成長するバッチ融液を作り出さず、むしろ液体中の固体原料(たとえば粉体)の一定の流れを熱い火炎に供給し、ついで溶融された生成物は溶融生成物が固化する受け入れ表面に対して放出される。
【0025】
通常、種単結晶はバッチ融液と種結晶が互いに回転する間に、図11の工程212で融液と接触される。種結晶は化学量論的なスピネルからなり、十分に高純度と結晶均一性を有し、ブール成長に適切なテンプレートを与える。種結晶は固定されたるつぼに対して回転され得、るつぼは固定された種結晶に対して回転され得、またはるつぼおよび種結晶の両方が回転され得る。回転の間、種結晶および活発に形成するブールは図11の工程214で融液から引き上げられる。
【0026】
本発明の1態様によれば、平均ブール径およびバッチ融液を含むるつぼの内径は、あるパラメータ内に調節される。最も一般的には、単結晶ブールは約0.39より小さくないプロセスアスペクト比で成長する。ここで、プロセスアスペクト比はるつぼ径に対する平均ブール径の比として定義される。平均ブール径は、公称長さに沿ったブールの平均径であり、公称長さは下流の処理工程によりウェハの形成に用いられるブール部分を表し、通常、ネック部およびテール部(ブールの対向端の円錐形状端キャップ部)を含まない。通常、ブール径はブールの公称長さに沿って比較的一定である。最小のプロセスアスペクト比での形成は「フリッピング」(“flipping”)として知られる望ましくない結晶配向に確実に抗するのに役立つ。もっと具体的には、ブールは<110>配向(正方形もしくは六角形の形状)よりも<111>配向(三角形の形状)を有するのが望ましく、そして十分に高いアスペクト比は<111>結晶配向から<110>結晶配向へのフリッピングに抗するのを確実にしうる。
【0027】
望ましく配向された<111>ブールおよび「フリッピング」ブール両方の実際の写真、ならびに結晶配向に対するアスペクト比の関係が図2〜8および下の表1に示される。図2はプロセスアスペクト比約0.28により形成された誤配向(フリッピング)単結晶ブール(2インチブール径、7インチるつぼ径)を示し、一方図3および4はプロセスアスペクト比0.57(4インチブール径、7インチるつぼ径)および0.50(2インチブール径、4インチるつぼ径)により形成された良好な<111>単結晶ブールを示す。本発明の態様によれば、図5および6はもう1つの誤配向(フリッピング)ブールを示し、一方図7および8は良好な<111>単結晶ブールを示す。
【0028】
MgO・AlO系に関して、多数の試料が3:1(2.9:1)のb:a比に基づいて作り出されたが、関連するプロセス条件は下記の表に示される。本発明のある態様は約0.40より小さくない、約0.42より小さくない、もしくは約0.43より小さくない、いくらか高い最小プロセスアスペクト比を有する。他の態様は約0.44より小さくない、もしくはさらに大きい、なお高いプロセスアスペクト比を有する。
【0029】
【表1】

【0030】
通常、ブールおよびそれからのウェハは単一のスピネル相から本質的になり、2次的な相を含まない。もう1つの態様によれば、ブールおよびそれから加工されたウェハは、不純物およびドーパントを含まない。1つの態様によれば、ウェハは光電子用途用のデバイス基板に加工され、ウェハおよびデバイス基板はaMgO・bAlOから本質的になる組成を有し、ここでb:aの比は1:1より大きい。この点に関し、不純物およびドーパントは除外されるのが通常である。たとえば、Coは前記の態様において算入を制限され、そうでないとQスイッチ用途用のドーパントである。Qスイッチ用途と異なり、比較的純粋なスピネルが、デバイス基板の基本的で新しい特性に作用するドーパントを実質的に含まないで利用されることが望ましいのが通常である。
【0031】
本発明の1つの態様によれば、単結晶スピネルブールは望ましい特性を有するように形成される。上記の望ましい<111>配向に加えて、ブール、ウェハおよびそれから形成されるデバイス基板も、b:aの比が1:1である化学量論的製品と比べて、機械的応力および/またはひずみが減少するのが通常である。この点に関し、本発明の態様は能動デバイスの基板を形成する単結晶ウェハの形成に関して望ましくは高収率を与え、さらに以下に詳述するような改良された加工処理態様を与える。
【0032】
改良された加工処理態様に関して、図11の工程216で、ブールはたとえば約50℃/時間以上のような比較的高い冷却速度で冷却されうる。さらに高い冷却速度も本発明の態様により利用され得、たとえば約100℃/時間以上、約200℃/時間以上、そしてさらに約300℃/時間超の速度である。増加した冷却速度は単結晶ブールを形成するための作製方法の生産量を向上するのに望ましく、さらに作製全体の熱的経費を減少させ、したがってコストを削減する。従来法により形成されるブールは冷却処理中の破壊を防止するために、比較的低い冷却速度で冷却されるのが通常である。しかし、本発明の態様によれば、冷却速度は実質的に比較的高くてよく、冷却されたままの形状の無傷のブールを与える。通常、従来の冷却速度は40℃/時間以下のオーダーであり、日オーダーの冷却期間を必要とする。
【0033】
さらに、本発明のもう1つの態様によれば、冷却に続いて従来実施されている、ブールのアニーリングは、比較的短時間で限定される。通常、その時間は約50時間以下、たとえば約30時間以下、さらには約20時間以下である。ある態様によれば、アニーリングは、約10時間以下の期間に制限される。それどころか、アニーリングは実質的に完全に除去され得(図11のアニ−ル工程の欠如により示される)、それにより後熱処理なしにする。これに対し、従来のブール形成法は低いウェハ収率ならびにブール破壊をもたらす残留内部応力およびひずみを軽減しようと試みるために、かなりのアニール時間の利用を要求するのが通常である。特定の理論に拘束されるわけではないが、本発明の態様によれば、ブールにおける内部応力およびひずみの減少は柔軟な加工処理条件を可能にし、上述のように、アニーリング期間の減少もしくは完全な除去、ならびに増加した冷却速度を含む。
【0034】
もう1つの態様によれば、機械的内部応力およびひずみの減少は、図11の工程219によるように、収率、ブールのスライシングにより形成される無傷ウェハの数、により数量化される。通常、スライシングはいくつかのスライシング法のいずれかにより実施され、特にワイヤソーイングである。ここで使用されるように、収率は式Wi/(Wi+Wf)×100%で数量化される。ここでWi=ブールから加工処理された無傷ウェハの数、そしてWf=ブールにおける機械的内部応力およびひずみによる、ブールからの破壊されたウェハの数である。従来は、この収率が非常に低く、たとえば10%オーダーである。この認容し難いほど低い収率はブールにおける過度の内部応力およびひずみの現われである。これとは異なり、本発明の態様による収率は、通常約25%以上、30%以上、さらには40%以上である。他の態様は約50%以上、60%以上、さらには70%以上もの増加した高収率を示す。それどころか、ある態様は100%近い収率を示す。これは内部応力および/またはひずみを減少させるからである。このような内部応力および/またはひずみは、形成されたままのブール内に存在するばかりでなく、加工処理されたブール、ブールからスライスされたウェハ、およびウェハからへき開されたデバイス基板にも存在する。この点に関し、加工処理されたブールの前述は、図11の工程218により一般的に示されるように、グラインディング(研削)、ラッピング、ポリッシングおよび洗浄のような、冷却後の機械加工工程に供されるブールを示すのが通常である。
【0035】
スライシングに続いて、ウェハは図11の工程220の機械加工によるように、さらに加工処理されうる。ウェハは通常十分な径および関連した表面積を有し、増加したウェハサイズが半導体製造分野における半導体ダイのコストを低減させるのと同様に、能動デバイス製造者に処理コストを低減させる。したがって、ウェハは約1.75インチ(約4.4cm)以上、通常約2.0インチ(約5.1cm)以上、そしてある態様において2.5インチ(約6.3cm)以上、の公称径を有するのが好適である。能動デバイス製造におけるウェハ取り扱いのために現行加工処理道具は、2インチウェハを取り扱うように適応されており、3インチウェハを取り扱うための処理装置は現在稼動(on-line)に至っている。この点に関し、次世代ウェハもここで述べる加工処理の特徴およびウェハの特徴により、本発明の態様により支持されうる。
【0036】
図9は本発明の1態様によるウェハを示し、特にウェハ90は能動デバイスのために個別のデバイス基板を形成する多数のダイ92を有する。示されるように、ウェハはウェハ径について前述の説明のように径dを有する。通常、個別のデバイス基板もしくはダイ92はウェハ90から離れており、ウェハ加工処理に続いて、個別の能動デバイスを形成する。個別のダイが切り目線に沿うソーイングにより形成されるのが通常である、半導体製造とは異なり、個別の能動部品はウェハのへき開面および重なる活性層に沿って、ウェハからへき開され得、へき開面はウェハの面に非平行に配向されるのが通常である。通常、加工処理されるウェハの表面は望ましい結晶学的配向、すなわち<111>結晶学的配向、を有し、Ga(Al,In)N能動材料のエピタキシャル成長に適している。
【0037】
図10に転じると、能動光電子デバイスの1態様が示される。特定の光電子デバイスはLED100であり、多数の窒化物半導体層を含む。LED100は、ここでの態様により形成された単結晶スピネルデバイス基板102の上に堆積された、比較的厚いn型GAN HVPE−成長ベース層104を含む。このベース層はn型GAN層106、中間InGa)N活性層108、および上方のp型GAN層110により重ねられる。p型GAN層110はその上に形成されたp型コンタクト層112を有し、下方のn型GAN層106はデバイスの一部に沿って形成されたn型コンタクト層114を有する。n型GAN層106はデバイスの活性層を形成するのが通常である。LEDのような能動光電子デバイスの付加的な加工処理および構造詳細はこの分野で知られている。このようなデバイスについてのさらなる詳細については米国特許第6,533,874号明細書を参照されたい。前述の態様はLEDデバイスを説明するが、光、電子、もしくは光電子能動デバイスはレーザーダイオードのような種々の他の形態に適用しうることが理解されよう。
【0038】
光学的用途については、本発明の1態様によれば、単結晶スピネル材料が通常構造部材の形態で、提供される。その単結晶スピネル材料は通常、非化学量論的組成を有し、1つの態様によれば、波長範囲にわたって吸光率により表される透明性窓を有し、その波長範囲は約400nm〜約800nmに延びる。透明性窓は波長範囲に沿って最大単一吸光率ピーク高さとして定義され、最大単一吸光率ピーク高さは0.35cm−1以下である。ある態様によれば、その波長範囲はさらに延び、透明性窓が比較的広範な周波数範囲にわたって維持されることを意味する。たとえば、その波長範囲はたとえば約2000nm、3000nm、3500nmさらには4000nmまで延びうる。ある態様において、上述の最大単一吸光率ピーク高さはさらに減少され、優れた透過率特性を表し、その高さが約0.33cm−1以下、たとえば約0.30cm−1、約0.25cm−1、約0.20cm−1、約0.15cm−1、さらには約0.10cm−1である。望ましくは、透過率(吸収)は広い波長範囲にわたってかなり平坦であり、波長もしくは周波数に基づく透過率特性の依存性がないことを示す。
【0039】
実際の光学的透過率測定は種々のパラメータに依存する。通常、光学的透過率データは約5〜10mmの範囲内の厚さを持つ試料から取られ、試料は平行性、平坦さおよび表面仕上げのために機械加工される。試料は10秒もしくは0.003度未満の平行性、632.8nmHeNeで測定された開口の90%超の1/10の最大偏差起伏、ならびにMil-O-13830Aによる引っ掻き硬度規格を要求するMil規格を有し、20/10仕上げを有していた。しかし、報告された吸光率データは試料の厚さに本来的に標準化され、すなわち独立した厚さであるのが通常である。
【0040】
前記の光学的性質を明らかにするために、ここで図面に注意が払われる。図12は、b:a比が3:1で、0.01%のCo2+がドープされたMgO・AlOスピネルから取られた光学的透過率データを示す。この特定の材料はU.S.2003/0007520 として公開され、本件譲受人により共通して所有される、U.S.特許出願09/863,013に説明されている態様により製造される。この特定の材料はQスイッチ用途に用いられ、通常本発明の態様による光学的用途と区別される。示されるように、試料は約590nmで生じる最大単一吸光率ピーク高さ約0.4cm−1を有する。
【0041】
これに対し、図13および14は本発明の1態様、すなわちb:a比が3:1である未ドープaMgO・bAlOスピネル、による光学的透過率特性を示す。示されるように、試料は約400nm〜約3700nmに延びるかなり広い透明性窓を有する。その最大単一吸光率ピーク高さは0.1cm−1より小さく、約800nmで生じ、図12に示されるコバルトがドープされた試料よりももっと小さい光学的透過率損失もしくは吸収を示す。同様な吸光率ピークが約3000nmで生じる。
【0042】
スピネル材料の製造については、通常、加工処理はるつぼ中でのバッチ融液の形成で始まる。バッチ融液は形成されたままのスピネル材料で非化学量論的な組成を示すように供給されるのが通常である。通常「ブール」の形態であり、それは溶融処理により形成される単結晶の固まりを示し、インゴット、円筒体もしくは類似の構造を含む。1態様によれば、ブールはaAD・bEDの一般式を有し、ここでAはMg、Ca、Zn、Mn、Ba、Sr、Cd、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、EはAl、In、Cr、Sc、Lu、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、そしてDはO、S、Seおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、スピネルがEDリッチであるようにb:a比>1:1である。さらに詳しくは、化学量論的組成はb:a比=1:1であり、非化学量論的な組成はb:a比≠1:1である。
【0043】
ある態様によれば、AはMg、DはO、そしてEはAlであり、単結晶スピネルは式aMgO・bAlOを有する。ここに含まれるいくつかの開示はMgO・AlOスピネル系組成に言及するが、本発明の開示は上記のように一般式aAD・bEDを有する比較的広いグループのスピネル組成にもっと一般的に関すると理解される。
【0044】
EDリッチスピネルは1:1より大きいb:a比により表されるのが通常であるが、ある態様は約1.2:1より小さくない、たとえば約1.5:1より小さくない、b:a比を有する。他の態様は、ADに対してはるかに高いED割合を有し、たとえば約2.0:1より小さくなく、もしくは2.5:1より小さくない。ある態様によれば、EDの相対的含量は約4:1より大きくないb:a比を有するように限定される。具体的な態様は約3:1(たとえば2.9:1)のb:a比を有しうる。
【0045】
るつぼでのバッチ融液の形成に続いて、スピネル単結晶ブールはチョクラルスキー引上げ法のような種々の方法の1つにより形成されるのが通常である。チョクラルスキー引上げ法は、ここである態様の形成に利用されてきたが、火炎溶融法とは異なる数多くの融液系方法の1つが利用されうることが理解される。このような融液系方法は、さらにブリッジマン法、液体封止ブリッジマン法、水平勾配フリーズ法、上端規定成長法(edge-defined growth method)、シュトックバーガー法、もしくはクリオポラス法を含む。これらの融液系方法は、融液からブールを成長させる点で火炎溶融法と基本的に異なる。これに対し、火炎溶融法はブールが成長するバッチ融液を作り出さず、むしろ液体中の固体原料(たとえば粉体)の一定の流れを熱い火炎に供給し、ついで溶融された生成物は溶融生成物が固化する受け入れ表面に対して放出される。
【0046】
通常、種単結晶はバッチ融液と種結晶が互いに回転する間に、融液と接触される。種結晶は化学量論的なスピネルからなり、十分に高純度と結晶均一性を有し、ブール成長に適切なテンプレートを与えるのが通常である。種結晶は固定されたるつぼに対して回転され得、るつぼは固定された種結晶に対して回転され得、またはるつぼおよび種結晶の両方が回転され得る。回転の間、種結晶および活発に形成するブールは融液から引き上げられる。
【0047】
通常、ブールおよびそれからのウェハは単一のスピネル相から本質的になり、2次的な相を含まない。もう1つの態様によれば、ブールおよびそれから加工されたウェハは、不純物およびドーパントを含まない。たとえば、Coは前記の態様において算入を制限され、そうでないとQスイッチ用途用のドーパントである。Qスイッチ用途と異なり、比較的純粋なスピネルが、デバイス基板の基本的で新しい特性に作用するドーパントを実質的に含まないで利用されることが望ましいのが通常である。
【0048】
本発明の1つの態様によれば、単結晶スピネルブールは望ましい特性を有するように形成される。望ましい光学的性質に加えて、ブールおよびそれから形成される部材も、b:aの比が1:1である化学量論的製品と比べて、機械的応力および/またはひずみが減少するのが通常である。この点に関し、本発明の態様は比較的大規模の光学アセンブリの必須部品を形成する単結晶部材の形成に関して望ましくは高収率を与え、さらに以下に詳述するような改良された加工処理態様を与える。
【0049】
改良された加工処理態様に関して、ブールはたとえば約50℃/時間以上のような比較的高い冷却速度で冷却されうる。さらに高い冷却速度も本発明の態様により利用され得、たとえば約100℃/時間以上、約200℃/時間以上、そしてさらに約300℃/時間超の速度である。増加した冷却速度は単結晶ブールを形成するための作製方法の生産量を向上するのに望ましく、さらに作製全体の熱的経費を減少させ、したがってコストを削減する。従来法により形成されるブールは冷却処理中の破壊を防止するために、比較的低い冷却速度で冷却されるのが通常である。しかし、本発明の態様によれば、冷却速度は実質的に比較的高くてよく、冷却されたままの形状の無傷のブールを与える。通常、従来の冷却速度は40℃/時間以下のオーダーであり、日オーダーの冷却期間を必要とする。
【0050】
さらに、本発明のもう1つの態様によれば、冷却に続いて従来実施されている、ブールのアニーリングは、比較的短時間で限定される。通常、その時間は約50時間以下、たとえば約30時間以下、さらには約20時間以下である。ある態様によれば、アニーリングは、約10時間以下の期間に制限される。それどころか、アニーリングは実質的に完全に除去され得、それにより後熱処理なしにする。これに対し、従来のブール形成法は低いウェハ収率ならびにブール破壊をもたらす残留内部応力およびひずみを軽減しようと試みるために、かなりのアニール時間の利用を要求するのが通常である。特定の理論に拘束されるわけではないが、本発明の態様によれば、ブールにおける内部応力およびひずみの減少は柔軟な加工処理条件を可能にし、上述のように、アニーリング期間の減少もしくは完全な除去、ならびに増加した冷却速度を含む。
【0051】
もう1つの態様によれば、機械的内部応力およびひずみの減少は、収率、ブールのスライシングにより形成される無傷部材の数、により数量化される。通常、スライシングはいくつかのスライシング法のいずれかにより実施され、特にワイヤソーイングである。ここで使用されるように、収率は式ci/(ci+cf)×100%で数量化される。ここでci=ブールから加工処理された無傷部材の数、そしてcf=ブールにおける機械的内部応力およびひずみによる、ブールからの破壊された部材の数である。従来は、この収率が非常に低く、たとえば10%オーダーである。この認容し難いほど低い収率はブールにおける過度の内部応力およびひずみの現われである。これとは異なり、本発明の態様による収率は、通常約25%以上、30%以上、さらには40%以上である。他の態様は約50%以上、60%以上、さらには70%以上もの増加した高収率を示す。それどころか、ある態様は100%近い収率を示す。これは内部応力および/またはひずみを減少させるからである。このような内部応力および/またはひずみは、形成されたままのブール内に存在するばかりでなく、加工処理されたブール、ブールから機械加工された部材にも存在する。この点に関し、加工処理されたブールの前述は、グラインディング(研削)、ラッピング、ポリッシングおよび洗浄のような、冷却後の機械加工工程に供されるブールを示すのが通常である。
【0052】
スピネル材料の特定の物理的な現われについては、態様は種々の形状を有する。たとえば、材料は長方形もしくは正方形のような多角形の平面窓の形状でありうる。あるいは、部材は円もしくは楕円形の外周を有する平面円盤の形状でありうる。ある特定の用途は円錐もしくはドーム形状の形状のような、もっと複雑な形状を要求する。このような部材はたとえばレーザー誘導ミサイルの先導端部で適切に利用されうる。他の現われは、ファイバー光学部材に類似する光チューブを含む。特定の用途は、レーザーキャビティを特に含むレーザーデバイスのような用途において、IR光を反射/透過するように特定の角度に配向された、硬度にポリッシングされた表面を持つ鏡、を含む。
【0053】
耐久性試験については、種々の材料がレーザー損傷閾値を測定するために調節された環境で試験された。損傷試験は入射角0度で公称パルス幅(FWHM)20nを用いる、最小破壊法(least fluence failure technique)といわれる方法で実施された。試験に利用された部位の数は変動され、通常60〜90の範囲である。部位あたりのショットも変動され、通常約50〜200の範囲である。本発明の1態様によれば、材料は波長1064nmで約3.00GW/cm以上のレーザー損傷閾値を有するのが通常である。レーザー損傷閾値は、波長1064nmで約3.25、さらには3.50GW/cm以上のように、もっと高くてもよい。
【0054】
第1の組のデータが波長1064nmで得られた。スポット径(1/e)は430μmであった。80の部位が1部位あたりショット200の率で試験された。下の表2は本発明の1態様により3:1スピネルのデータをまとめたものであり、化学量論的な1:1スピネルならびにサファイアおよびYAGと比較した。
【0055】
【表2】

【0056】
示されるように、3:1スピネルはレーザー露光に優れた損傷抵抗性を示し、特に4.00GW/cmの予測外のレーザー損傷閾値を示す。
【0057】
下の表3は1540nmで種々の試料についてのデータをまとめたものである。試験は1064nmのデータと同様な方法で実施された。ここで、スポット径は115μmであった。コバルトドープ試料について、スポット径は170μmであり、1部位あたり200ショットよりも1部位あたり50ショットが利用された。
【0058】
【表3】

【0059】
さらに、532nmでの波長でレーザー損傷閾値試験が実施された。特に指摘しない限り、試験は1064nmのデータと同様な方法で実施された。ここで、スポット径は300μmが利用され、パルス幅18nであった。1部位あたり200ショットで実施されたが、部位の数は100に増加した。
【0060】
【表4】

【0061】
さらに、下の表5は2100nmでの試験をまとめたものである。試験は、パルス幅40n、スポット径140μmで実施された。50部位が200ショット/部位の密度で試験された。
【0062】
【表5】

【0063】
さらに、試験が3000nmで実施された。試験は、パルス幅10n、スポット径110μmで実施された。40部位が200ショット/部位の密度で試験された。
【0064】
【表6】

【実施例】
【0065】

るつぼ充填準備:
MgO392.1gがAlO(酸化アルミニウム)2876.5gに配合された。この原料は一緒に混合され、セラミックるつぼ中で1100℃、12時間加熱された。冷却後、混合物は径100mm、高さ150mmのイリジウムるつぼ中に移された。
結晶成長:
酸化物混合物を有するイリジウムるつぼは、標準的なチョクラルスキー結晶成長ステーションに置かれ、高周波加熱により酸化物混合物の融点まで加熱された。少量の酸素を添加した窒素からなる不活性雰囲気がるつぼの周囲に用いられた。
【0066】
混合物が液体となった後に、引き上げ棒に付着した<111>配向の少量の1:1スピネル種結晶が結晶成長を開始させるために用いられた。単結晶ブールは次の処理条件を用いて成長させた。径53mm、長さ150mm、種結晶引き上げ速度2mm/時間、種結晶回転速度4rpm、冷却時間6時間、合計時間123時間。
【0067】
冷却後に、結晶は気泡、混在物、もしくは他の目視欠陥を目視で検査された。目視検査後に、頂および底端部が除去され、結晶はX線配向検査(ラウエ回折法)に供された。全検査を通過した後に、結晶は「棒材」(“bar-stock”)調製に使用された。
【0068】
上記の説明は例証および説明のために示されたものである。徹底的なものでもなく、また開示された正確な形態もしくは態様にその範囲に限定することは意図されておらず、変更および変形も上記の教示から可能であり、または本発明の態様の実施から得られうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融液法により形成される単結晶スピネルブールであり、そのブールは非化学量論的な組成を有し、約20%以上の収率で表される、減少した機械的応力もしくはひずみを有し、ここで収率は式Wi/(Wi+Wf)×100%であり、Wi=ブールから加工処理された無傷ウェハの数、そしてWf=ブールにおける機械的内部応力もしくはひずみによる、ブールからの破壊されたウェハの数である、単結晶スピネルブール。
【請求項2】
収率が約25%以上である請求項1記載のブール。
【請求項3】
収率が約30%以上である請求項1記載のブール。
【請求項4】
収率が約40%以上である請求項1記載のブール。
【請求項5】
融液法により形成される単結晶スピネルウェハであり、そのウェハは非化学量論的な組成を有し、約20%以上の収率で表される、減少した機械的応力もしくはひずみを有し、ここで収率は式Wi/(Wi+Wf)×100%であり、Wi=ブールから加工処理された無傷ウェハの数、そしてWf=ブールにおける機械的内部応力もしくはひずみによる、ブールからの破壊されたウェハの数である、単結晶スピネルウェハ。
【請求項6】
ウェハが約1.75インチ(約4.4cm)以上の径を有する請求項5記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項7】
ウェハが約2.0インチ(約5.1cm)以上の径を有する請求項5記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項8】
ウェハが約2.5インチ(約6.3cm)以上の径を有する請求項5記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項9】
ブールは単一のスピネル相から本質的になり、2次的な相を含まない請求項5記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項10】
組成は一般式aAD・bEDで表され、ここでAはMg、Ca、Zn、Mn、Ba、Sr、Cd、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、EはAl、In、Cr、Sc、Lu、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、そしてDはO、S、Seおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、スピネルがEDリッチであるようにb:a比>1:1である請求項5記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項11】
AはMg、DはO、そしてEはAlであり、単結晶スピネルは式aMgO・bAlOを有する請求項10記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項12】
b:a比が約1.2:1以上である請求項10記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項13】
b:a比が約2.5:1以上である請求項10記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項14】
b:a比が約4:1以下である請求項10記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項15】
ウェハが化学量論的スピネルに比べて減少した機械的応力およびひずみを有する請求項10記載の単結晶スピネルウェハ。
【請求項16】
本質的にaMgO・bAlO単結晶スピネルからなり、ここでAlOリッチであるようにb:a比>1:1であり、単結晶スピネルは融液法により製造される、光電子基板。
【請求項17】
基板がウェハを含む請求項16記載の基板。
【請求項18】
基板がウェハから製造されるダイを含む請求項16記載の基板。
【請求項19】
ダイがウェハからへき開される請求項18記載の基板。
【請求項20】
基板がその上の活性層のエピタキシャル成長に適した表面を有する請求項16記載の基板。
【請求項21】
融液法により製造される非化学量論的なスピネル基板;ならびにその基板に重なる活性層を含む、デバイス。
【請求項22】
基板は一般式aAD・bEDで表され、ここでAはMg、Ca、Zn、Mn、Ba、Sr、Cd、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、EはAl、In、Cr、Sc、Lu、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、そしてDはO、S、Seおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、スピネルがEDリッチであるようにb:a比>1:1である請求項21記載のデバイス。
【請求項23】
AはMg、DはO、そしてEはAlであり、単結晶スピネルは式aMgO・bAlOを有する請求項22記載のデバイス。
【請求項24】
b:a比>1.2:1である請求項22記載のデバイス。
【請求項25】
b:a比<4:1以下である請求項22記載のデバイス。
【請求項26】
デバイスがレーザーデバイスおよびLEDデバイスよりなる群から選ばれる請求項22記載のデバイス。
【請求項27】
デバイスがLEDデバイスであり、活性層が窒化物半導体層を含む請求項26記載のデバイス。
【請求項28】
材料は非化学量論的組成を有し、波長範囲にわたって吸光率により表される透明性窓を有し、その波長範囲は通常、約400nm〜約800nmに延び、透明性窓は波長範囲に沿って最大単一吸光率ピーク高さとして定義され、最大単一吸光率ピーク高さは0.35cm−1以下である、単結晶スピネル材料。
【請求項29】
波長範囲が約2000nmまで延びる請求項28記載の材料。
【請求項30】
波長範囲が約4000nmまで延びる請求項28記載の材料。
【請求項31】
高さが0.30cm−1以下である請求項28記載の材料。
【請求項32】
高さが0.25cm−1以下である請求項28記載の材料。
【請求項33】
材料は単一のスピネル相から本質的になり、2次的な相を含まない請求項28記載の材料。
【請求項34】
材料は一般式aAD・bEDで表され、ここでAはMg、Ca、Zn、Mn、Ba、Sr、Cd、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、EはAl、In、Cr、Sc、Lu、Feおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、そしてDはO、S、Seおよびそれらの組合わせからなる群より選ばれ、スピネルがEDリッチであるようにb:a比>1:1である請求項28記載の材料。
【請求項35】
AはMg、DはO、そしてEはAlであり、単結晶スピネルは式aMgO・bAlOを有する請求項34記載の材料。
【請求項36】
b:a比が約1.2:1以上である請求項35記載の材料。
【請求項37】
b:a比が約1.5:1以上である請求項35記載の材料。
【請求項38】
b:a比が約2.0:1以上である請求項35記載の材料。
【請求項39】
b:a比が約2.5:1以上である請求項35記載の材料。
【請求項40】
b:a比が約3:1である請求項35記載の材料。
【請求項41】
b:a比が約4:1以下である請求項35記載の材料。
【請求項42】
材料が化学量論的スピネルに比べて減少した機械的応力およびひずみを有する請求項35記載の材料。
【請求項43】
材料が、波長1064nmで約3.00GW/cm以上のレーザー損傷閾値を有する請求項28記載の材料。
【請求項44】
材料が光学的窓である請求項28記載の材料。
【請求項45】
材料が光学的鏡である請求項28記載の材料。
【請求項46】
材料が光チューブである請求項28記載の材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−236123(P2011−236123A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−128276(P2011−128276)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2006−528093(P2006−528093)の分割
【原出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】