説明

スプリット弁

【課題】信頼性の高いスプリット弁を提供することを目的とする。
【解決手段】容器1に収容された粉粒体を受入容器2に移すにあたって容器1の排出口1aと受入容器2の受入口2aとを連通させるスプリット弁100であって、排出口1aを閉塞可能であり開閉ハンドル12によって直接開閉動作されるアクティブ弁3と、受入口2aを閉塞可能であるパッシブ弁4と、アクティブ弁3を磁化可能なアクティブ弁用電磁石14と、パッシブ弁4を磁化可能であり磁力によってパッシブ弁4の弁体を閉弁方向に引き付けるパッシブ弁用電磁石27とを備え、アクティブ弁3を磁化させると共にパッシブ弁用電磁石27による磁場を取り除くことによって、パッシブ弁4の弁体を磁力にてアクティブ弁3の弁体に密着させ双方の弁体を一体動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容された粉粒体を他の容器に移す際に用いられるスプリット弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬品産業の分野において、錠剤を製造するにあたって容器に収容された粉粒体を打錠機に供給する工程がある。
【0003】
この工程において、容器内の粉粒体を打錠機等の受入容器に供給する際における粉粒体の飛散、及び外部からの異物の侵入防止のために、二つに分割されたスプリット弁を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
この方法は、分割されたスプリット弁の一方の弁を粉粒体が収容された容器の開口部に設けると共に、スプリット弁の他方の弁を受入容器の開口部に設ける。容器中の粉粒体を受入容器に移すには、双方の開口部を一致させると共に、分割されたスプリット弁の弁体端面同士を押し付けることによってスプリット弁を一体化させる。そして、一体化したスプリット弁を回転機構によって回転させて、双方の開口部を連通させ容器内の粉粒体を受入容器内に自然落下させる。
【0005】
回転機構は、分割されたスプリット弁のいずれか一方の弁に連結されており、他方の弁は一方に従属して回転する。
【特許文献1】特開平8−2510号公報
【特許文献2】特開2003−267480
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記方法では、分割されたスプリット弁は押し付け力によって一体化しているだけであるため、双方の弁体端面同士は完全には密着した状態とはならない。したがって、一体化したスプリット弁を開弁した際に、双方の弁体端面間に粉粒体が入り込むおそれがある。
【0007】
双方の弁体端面間に粉粒体が入り込んだ場合には、粉粒体を受入容器に移し終え、一体化したスプリット弁を閉弁し、容器と受入容器とを離しスプリット弁を分離した際に、弁体の間に入り込んだ粉粒体が外部に飛散してしまう。
【0008】
また、スプリット弁のうち他方の弁は回転機構に連結された一方の弁に従属して動作するものであるため、一体化したスプリット弁を閉弁する際、従属側の弁は完全に閉とならないおそれがある。その場合には、隙間から異物が混入してしまう。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、信頼性の高いスプリット弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、容器に収容された粉粒体を受入容器に移すにあたって前記容器の排出口と前記受入容器の受入口とを連通させるスプリット弁であって、前記排出口を閉塞可能であり回転駆動手段によって直接開閉動作されるアクティブ弁と、前記受入口を閉塞可能であるパッシブ弁と、前記アクティブ弁を磁化可能なアクティブ弁磁化手段と、前記パッシブ弁を磁化可能であり、磁力によって前記パッシブ弁の弁体を閉弁方向に引き付けるパッシブ弁磁化手段とを備え、容器に収容された粉粒体を受入容器に移す際には、前記アクティブ弁と前記パッシブ弁とを対峙させた状態にて、前記アクティブ弁を磁化すると共に前記パッシブ弁磁化手段による磁場を取り除くことによって前記パッシブ弁の弁体を磁力にて前記アクティブ弁の弁体に密着させ、双方の弁体を一体動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るパッシブ弁は、閉弁状態ではパッシブ弁磁化手段の作用によって受入容器の受入口を閉塞し、開閉動作時にはアクティブ弁磁化手段の作用によってアクティブ弁に密着して一体動作する。したがって、本発明によれば、容器に収容された粉粒体を受入容器に移す際における粉粒体の飛散及び外部からの異物侵入を防止することができる信頼性の高いスプリット弁を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1〜図6を参照して本発明の実施の形態に係るスプリット弁100について説明する。図1はスプリット弁100が適用される装置全体を示す図であり、図2はアクティブ弁の底面図(図1におけるA矢視図)であり、図3は図2におけるB−B断面を示す断面図であり、図4は図2におけるC−C断面を示す断面図であり、図5はアクティブ弁の分解断面図であり、図6はパッシブ弁の分解断面図である。
【0014】
図1に示す装置5は、容器1に収容された粉粒体を受入容器2に移し替える装置である。例えば、錠剤を製造するにあたって、容器内の顆粒を打錠機の臼に移し替える装置である。
【0015】
本発明における粉粒体とは、粉、粒等が集まった集合体を指す。
【0016】
容器1は漏斗状形状であり、下部には粉粒体を排出する筒状の排出口1aが形成されている。
【0017】
受入容器2には、粉粒体を受け入れる筒状の受入口2aが形成されている。排出口1aと受入口2aとの開口部形状は略同一である。
【0018】
スプリット弁100は、図1に示すように、容器1に収容された粉粒体を受入容器2に移すにあたって、容器1の排出口1aと受入容器2の受入口2aとを連通させるものであり、容器1の排出口1aを閉塞可能であるアクティブ弁3と、受入容器2の受入口2aを閉塞可能であるパッシブ弁4とに分割されている。
【0019】
容器1に収容された粉粒体を受入容器2に移すには、容器1の排出口1aをアクティブ弁3、及び受入容器2の受入口2aをパッシブ弁4にてそれぞれ閉じた状態にて、容器1をコンベア等によって受入容器2の上方まで移送する。そして、容器1の排出口1aを受入容器2の受入口2aに接続し、スプリット弁100を開弁動作することによって、排出口1aと受入口2aとを連通させる。これにより、容器1内の粉粒体は、受入容器2内に自然落下する。
【0020】
なお、受入口2aは、伸縮自在の蛇腹2bを介して受入容器2に連結されている。これにより、受入口2aへの排出口1aの接続をスムーズに行うことができる。
【0021】
以下に、図2〜図6を参照して、スプリット弁100について詳細に説明する。
【0022】
まず、アクティブ弁3について説明する。
【0023】
アクティブ弁3は、図3,図4に示すように、容器1の排出口1aの鍔部1bに取り付けられた略円筒状の胴体部7と、胴体部7の内周に設けられ弾性を有する略リング状のシール部材9と、胴体部7に軸受11を介して回転可能に支持された一対の回転軸8a,8bと、外周がシール部材9の内周と嵌合することによって排出口1aを閉塞する弁体としてのアクティブディスク10とを備える。
【0024】
回転軸8aと回転軸8bは、軸受11によって同軸上でかつ回転自在に支持され、胴体部7及びシール部材9を挿通している。
【0025】
図5に示すように、軸受11は、胴体部7に形成された開口7aに嵌合して配置される。胴体部7と軸受11が一体となった円筒体の両端面には環状の切り欠き部7bが形成される。その切り欠き部7bにシール部材9に形成された爪部9aが係合し、胴体部7、軸受11、及びシール部材9が一体となる。
【0026】
回転軸8a,8bの外周には環状溝が形成され、その環状溝にはOリング15が圧入される。Oリング15は、回転軸8a,8bの外周面とシール部材9における回転軸8a,8bが挿通する穴9bの内周面との間をシールする。
【0027】
このように、胴体部7、軸受11、及びシール部材9を構成することによって、胴体部7とシール部材9との間に粉粒体が入り込むことが防止される。
【0028】
胴体部7、シール部材9、軸受11は、それぞれSUS304、シリコンゴム、樹脂にて構成される。
【0029】
アクティブディスク10は、回転軸8a,8bに支持部10aを介して支持されている。回転軸8aの端部には、回転駆動手段としての開閉ハンドル12が連結されており、開閉ハンドル12を手動で回動することによって、アクティブディスク10は回転軸8a,8bを中心に回転する。このように、アクティブディスク10は開閉ハンドル12によって直接開閉動作される。
【0030】
なお、回転軸8a,8bは、図4に示すように、アクティブディスク10の中心から偏心した位置にて、アクティブディスク10を支持している。つまり、アクティブディスク10は、偏心して設けられた回転軸8a,8bを介して開閉動作する。これにより、アクティブディスク10が開弁状態から閉弁動作する際に、アクティブディスク10は、自重によって閉方向に動作し易くなるため、アクティブディスク10とシール部材9との隙間の発生を防止することができる。
【0031】
回転軸8b及びアクティブディスク10の内部には、磁性体13が埋め込まれている。磁性体13は、回転軸8b内部の磁性体部13aと、アクティブディスク10内部の円板状の磁性体部13bと、双方の磁性体部13a,13bを連結する磁性体部13cとかなる。
【0032】
磁性体13は、外部から磁場を受けている間のみ磁化する性質を有するものであり、強磁性体であるのが望ましい。
【0033】
回転軸8bの近傍には、アクティブ弁磁化手段としてのアクティブ弁用電磁石14が、エアシリンダ30(図7に図示)等の駆動手段の動作によって回転軸8bと接離可能に配置されている。
【0034】
アクティブ弁用電磁石14は、磁性材料のまわりに巻かれたコイル(図示せず)に通電している間だけ磁場を発生する。
【0035】
アクティブ弁用電磁石14を回転軸8b端部に接触させ、コイルに通電することによって、回転軸8b内部の磁性体部13aは、アクティブ弁用電磁石14から磁場を受けて磁化する。これにより、磁性体部13cを介してアクティブディスク10内部の磁性体部13bも磁化する。
【0036】
回転軸8b及びアクティブディスク10は、SUS304にて構成された本体内部に、SS400にて構成された磁性体部13a,13b,13cを埋め込んだものである。
【0037】
次に、パッシブ弁4について説明する。
【0038】
パッシブ弁4は、図3,図4、及び図6に示すように、受入容器2の受入口2aの鍔部2bに取り付けられた略円筒状の胴体部21と、胴体部21の内周に設けられ弾性を有する略リング状のシール部材22と、外周がシール部材22の内周と嵌合することによって受入口2aを閉塞する弁体としてのパッシブディスク20とを備える。
【0039】
パッシブディスク20は、胴体部21に対して非拘束であり、外周のテーパ部20aがシール部材22内周に形成されたテーパ部22aに弾性的に嵌合している。つまり、パッシブディスク20は、単独での開閉動作は不可能であり、後述するようにアクティブ弁3のアクティブディスク10に伴って開閉動作する。
【0040】
パッシブディスク20の内部には、磁性体26が埋め込まれている。磁性体26は、外部から磁場を受けている間のみ磁化する性質を有するものであり、強磁性体であるのが望ましい。
【0041】
パッシブディスク20端面の外縁には、パッシブディスク20とアクティブディスク10とが磁力によって密着した際に、双方の間にて圧縮される環状のOリング31が圧入されている。
【0042】
胴体部21には、外周と内周を貫通する貫通孔23が形成され、その貫通孔23には磁性材料にて構成されたシャフト24が挿通している。
【0043】
シャフト24は、胴体部21とシール部材22との間に配置された環状の磁性体リング25に結合されている。シャフト24及び磁性体リング25は、強磁性体であるのが望ましい。
【0044】
胴体部21及び磁性体リング25は、シール部材22によって受入容器2内と完全に隔てられており、これにより、受入容器2内の粉状体が胴体部21と磁性体リング25との間等に入り込むのが防止される。
【0045】
磁性体リング25とパッシブディスク20とは、シール部材22の厚さ分だけ隔てられている。
【0046】
胴体部21、シール部材22は、それぞれSUS304、シリコンゴムにて構成される。
【0047】
シャフト24の端部には、パッシブ弁磁化手段としてのパッシブ弁用電磁石27が接触して配置される。
【0048】
パッシブ弁用電磁石27は、アクティブ弁用電磁石14と同様に、磁性材料のまわりに巻かれたコイル(図示せず)に通電している間だけ磁場を発生するものである。
【0049】
パッシブ弁用電磁石27のコイルに通電することによって、シャフト24は磁場を受けて磁化し、磁性体リング25を介してパッシブディスク20内部の磁性体26も磁化する。
【0050】
これにより、パッシブディスク20は、磁性体リング25に引き付けられ、シール部材22に吸着する。つまり、パッシブ弁用電磁石27のコイルに通電することによって、パッシブディスク20は、閉弁方向に引き付けられる。
【0051】
パッシブディスク20は、SUS304にて構成された本体内部に、SS400にて構成された磁性体26を埋め込んだものである。また、シャフト24及び磁性体リング25は、SS400にて構成される。
【0052】
容器1に収容された粉粒体を受入容器2に移すには、容器1を受入容器2に対して位置決めすることによって、アクティブ弁3をパッシブ弁4に対して位置決めし、双方の弁を対峙させる必要がある。
【0053】
アクティブ弁3をパッシブ弁4に対して位置決めし易くするための構造として、パッシブ弁4の胴体部21の端面外周縁には、アクティブ弁3の胴体部7が嵌合する環状の突起部21aが形成されている。また、パッシブ弁4の胴体部21には位置決めピン28が設けられ、この位置決めピン28はアクティブ弁3の胴体部7の位置決め穴28aに嵌合する(図4参照)。
【0054】
さらに、アクティブ弁3をパッシブ弁4に対して位置決めし易くするための構造として、アクティブ弁3のアクティブディスク10の端面には、外周がテーパ状に形成された円形の凸部10bが形成されると共に、パッシブ弁4のパッシブディスク20の端面には、凸部10bが嵌合する円形の凹部20bが形成されている。なお、円形の凸部10b及び凹部20bに代えて、球状の凸部及び凹部としてもよい。
【0055】
次に、図7を参照してスプリット弁100の動作について説明する。図7は、スプリット弁100の動作の手順を示す図である。
【0056】
図7(a)は、粉粒体を収容した容器1を、受入容器2に対して位置決めする前の状態である。この状態において、アクティブ弁3は、容器1の排出口1aを閉塞し、開閉ハンドル12によって閉塞状態が維持されている。このとき、アクティブ弁用電磁石14は非通電の状態であり、磁場を発生していない。
【0057】
これに対して、パッシブ弁用電磁石27は通電状態であり、パッシブディスク20は閉弁方向に引き付けられシール部材22に吸着し、受入容器2の受入口2aを閉塞している。
【0058】
容器1に収容された粉粒体を受入容器2に移すには、図7(b)に示すように、パッシブ弁4の胴体部21における突起部21a内周にアクティブ弁3の胴体部7を嵌合させると共に、パッシブ弁4の位置決めピン28をアクティブ弁3の位置決め穴28aに嵌合させることによって、容器1を受入容器2に対して位置決めし、アクティブ弁3をパッシブ弁4に対峙させる。これにより、アクティブディスク10の凸部10bとパッシブディスク20の凹部20bとが嵌合し、アクティブディスク10の端面とパッシブディスク20の端面とが接触する。
【0059】
この状態において、エアシリンダ30を用いてアクティブ弁用電磁石14を移動させ、回転軸8b端部に当接させる。そして、アクティブ弁用電磁石14へ通電し、アクティブディスク10内部の磁性体部13bを磁化する。また、パッシブ弁用電磁石27を非通電に切り換えることによって、パッシブ弁用電磁石27が発生する磁場を取り除く。
【0060】
これにより、パッシブディスク20の磁性体26は、磁性体リング25からの磁場は受けず、アクティブディスク10内部の磁性体部13bからの磁場を受けて磁化するため、パッシブディスク20はアクティブディスク10と磁力にて密着し一体となる。
【0061】
このとき、パッシブディスク20端面の外縁に圧入されている環状のOリング31は、パッシブディスク20とアクティブディスク10との間にて圧縮される。これにより、スプリット弁100の開閉時に、パッシブディスク20とアクティブディスク10との間に粉粒体が入り込むことが防止される。
【0062】
なお、アクティブ弁3をパッシブ弁4に対峙させる前に、アクティブディスク10とパッシブディスク20との間に向かってエアーを噴き付け、アクティブディスク10及びパッシブディスク20の両端面に付着している異物等を予め取り除くことが望ましい。
【0063】
次に、図7(c)に示すように、開閉ハンドル12を回転させる。これにより、パッシブディスク20は、アクティブディスク10の回転に伴って、アクティブディスク10と一体に回転する。このようにしてスプリット弁100は開弁動作し、容器1の排出口1aと受入容器2の受入口2aとが連通し、容器1内の粉粒体は受入容器2内に自然落下する。
【0064】
スプリット弁100の開弁時には、容器1内から自然落下する粉粒体がアクティブディスク10及びパッシブディスク20に接触する。しかし、アクティブディスク10とパッシブディスク20とは磁力によって密着し、かつアクティブディスク10とパッシブディスク20との間にはOリング31が圧縮して配置されているため、アクティブディスク10とパッシブディスク20との間に粉粒体が入り込むことは無い。
【0065】
粉粒体を受入容器2内に移し終えた後、図7(d)に示すように、開閉ハンドル12を元の位置に回転させることによって、スプリット弁100を閉弁動作させる。
【0066】
次に、容器1と受入容器2を分離する際のスプリット弁100の動作について説明する。
【0067】
アクティブ弁用電磁石14を非通電に切り換えると共に、パッシブ弁用電磁石27へ通電する。
【0068】
これにより、アクティブ弁用電磁石14が発生する磁場が取り除かれると共に、パッシブデ弁用電磁石27が発生する磁場によって磁性体リング25が磁化されるため、パッシブディスク20は閉弁方向に引き付けられる。
【0069】
エアシリンダ30を用いてアクティブ弁用電磁石14を回転軸8bから離し、容器1を上昇させ受入容器2と分離する。パッシブディスク20は閉弁方向に引き付けられているため、アクティブ弁3とパッシブ弁4も分離する。
【0070】
パッシブディスク20は磁力によってシール部材22に吸着し、受入口2aを閉塞しているため、受入容器2内に収容された粉粒体2が外部に飛散することはない。
【0071】
また、パッシブディスク20とアクティブディスク10との間には粉粒体が存在しないため、アクティブ弁3とパッシブ弁4を分離しても双方の間から粉粒体が飛散することはない。
【0072】
以上のようにして、スプリット弁100を動作させることによって、容器1に収容された粉粒体を受入容器2に移すことができる。
【0073】
以上の本実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0074】
アクティブ弁100は、開閉ハンドル12によって直接動作するアクティブ弁3と、そのアクティブ弁3の動作に伴って動作するパッシブ弁4とからなり、パッシブ弁4は、閉弁状態ではパッシブ弁用電磁石27の作用によって受入容器2の受入口2aをしっかりと閉塞する。したがって、外部から受入容器2内に異物が混入することが防止される。
【0075】
また、アクティブ弁100の開閉動作時には、パッシブ弁4は、アクティブ弁用電磁石14の作用によってアクティブ弁3に密着して一体動作するため、開閉動作時にアクティブ弁3とパッシブ弁4との間に粉粒体が入り込むことが無い。したがって、容器1と受入容器2とを分離した際に、粉粒体が外部に飛散することを防止することができる。
【0076】
さらに、アクティブ弁用電磁石14及びパッシブ弁用電磁石27のコイルに通電する電流を制御することによって、アクティブディスク10内部の磁性体部13b及びパッシブディスク20内部の磁性体26の磁力を変化させることができる。これにより、アクティブディスク10とパッシブディスク20との磁力による密着力を、例えば、粉粒体の粒度等に応じて適切に調整することが可能となる。
【0077】
このように、本実施の形態によれば、粉粒体の飛散、及び外部からの異物の混入を防止することができ、信頼性の高いスプリット弁を得ることができる。
【0078】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0079】
例えば、開閉ハンドル12に代わり、スプリット弁100の開閉をアクチュエータ等を用いて自動制御するように構成してもよい。
【0080】
また、アクティブ弁用電磁石14及びパッシブ弁用電磁石27に代わり、永久磁石を用いるようにしてもよい。この場合には、アクティブ弁3、パッシブ弁4に対して磁場を発生させたい時にだけ永久磁石を近づけることができるような永久磁石の移動機構を設けるとよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、回転軸8a,8b、アクティブディスク10、及びパッシブディスク20は、SUS304の内部に強磁性体であるSS400を埋め込む構成としたが、全体を強磁性体、例えばSUS420J2にて構成するようにしても良い。SUS420J2を用いる場合には、腐食防止のために表面にハードクロムめっきを施すことが有効である。
【0082】
さらに、上記実施の形態では、アクティブ弁3の外部にアクティブ弁用電磁石14を設け、そのアクティブ弁用電磁石14によって磁場を発生させ、アクティブディスク10内部の磁性体部13bを磁化する場合について示した。しかし、磁性体部13b内にコイルを埋め込み、そのコイルに通電することによって磁性体部13bを直接磁化させるようにしてもよい。また、アクティブディスク10全体を上記のようにSUS420J2等の強磁性体にて構成し、その内部にコイルを埋め込み、そのコイルに通電することによってアクティブディスク10全体を直接磁化するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のスプリット弁は、薬品産業の分野において、錠剤を製造するにあたって容器に収容された粉粒体を他の容器に供給する工程に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態に係るスプリット弁100が適用される装置全体を示す図である。
【図2】スプリット弁100の一方であるアクティブ弁の底面図である。
【図3】図2におけるA−A断面を示す断面図である。
【図4】図2におけるB−B断面を示す断面図である。
【図5】スプリット弁100の一方であるアクティブ弁の分解断面図である。
【図6】スプリット弁100の他方であるパッシブ弁の分解断面図である。
【図7】スプリット弁100の動作の手順を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
100 スプリット弁
1 容器
1a 排出口
2 受入容器
2a 受入口
3 アクティブ弁
4 パッシブ弁
7,21 胴体部
8a,8b 回転軸
9,22 シール部材
10 アクティブディスク
11 軸受
12 開閉ハンドル
13,26 磁性体
14 アクティブ弁用電磁石
20 パッシブディスク
24 シャフト
25 磁性体リング
27 パッシブ弁用電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された粉粒体を受入容器に移すにあたって前記容器の排出口と前記受入容器の受入口とを連通させるスプリット弁であって、
前記排出口を閉塞可能であり回転駆動手段によって直接開閉動作されるアクティブ弁と、
前記受入口を閉塞可能であるパッシブ弁と、
前記アクティブ弁を磁化可能なアクティブ弁磁化手段と、
前記パッシブ弁を磁化可能であり、磁力によって前記パッシブ弁の弁体を閉弁方向に引き付けるパッシブ弁磁化手段と、を備え、
容器に収容された粉粒体を受入容器に移す際には、前記アクティブ弁と前記パッシブ弁とを対峙させた状態にて、前記アクティブ弁を磁化すると共に前記パッシブ弁磁化手段による磁場を取り除くことによって前記パッシブ弁の弁体を磁力にて前記アクティブ弁の弁体に密着させ、双方の弁体を一体動作させる
ことを特徴とするスプリット弁。
【請求項2】
前記アクティブ弁磁化手段は、前記アクティブ弁の磁性体部に対して磁場を発生可能な電磁石であり、
前記パッシブ弁磁化手段は、前記パッシブ弁の磁性体部に対して磁場を発生可能な電磁石であり、
パッシブ弁用電磁石への通電と共にアクティブ弁用電磁石への非通電によって、前記パッシブ弁の弁体は閉弁方向に引き付けられ前記受入口を閉塞し、
一方、アクティブ弁用電磁石への通電と共にパッシブ弁用電磁石への非通電によって、前記パッシブ弁の弁体は前記アクティブ弁の弁体に磁力にて密着する
ことを特徴とする請求項1に記載のスプリット弁。
【請求項3】
前記アクティブ弁磁化手段は、前記アクティブ弁の弁体における磁性体部に埋め込まれたコイルに通電することによって当該磁性体部を磁化することを特徴とする請求項1に記載のスプリット弁。
【請求項4】
前記アクティブ弁の弁体は、アクティブ弁胴体部に支持された回転軸を介して開閉可能であり、
前記パッシブ弁の弁体は、パッシブ弁胴体部に対して非拘束の状態にて前記受入口を閉塞可能である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスプリット弁。
【請求項5】
前記パッシブ弁の弁体は、
前記パッシブ弁胴体部内周のシール部材に弾性的に嵌合することによって前記受入口を閉塞し、前記パッシブ弁磁化手段の磁力によって前記シール部材に対して吸着する
ことを特徴とする請求項4に記載のスプリット弁。
【請求項6】
前記アクティブ弁の弁体は、偏心して設けられた回転軸を介して開閉動作することを特徴とする請求項4に記載のスプリット弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−25798(P2008−25798A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202054(P2006−202054)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(591055632)株式会社キット (7)
【Fターム(参考)】