説明

スポンジローラーブラシ

【課題】本発明は、接着剤を用いずに筒状スポンジ部材を支軸に取付け固定して、洗浄液に対する影響を無くし、高純度で高品質の基板洗浄を可能としたスポンジローラーブラシを提供する。
【解決手段】被洗浄体と中心軸を平行にして回転駆動され、洗浄液が供給される被洗浄体に摺接して、被洗浄体を洗浄するスポンジローラーブラシであり、断面円形状をなし軸方向に所定長さを有する剛体からなる支軸10と、内径を強制的に拡大するよう弾性変形した状態で支軸の外周面に嵌め合わされ、それ自体の弾性力によって支軸外周面に圧着固定する筒状スポンジ部材11とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄体として、たとえば平面型表示装置を構成するガラス基板や半導体ウエハを洗浄する基板洗浄装置に用いられるスポンジローラーブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に代って、液晶ディスプレイ(LCD)や、プラズマディスプレイ(PDP)が大量に供給されている。このような平面型表示装置を構成するガラス基板や半導体ウエハ(以下、総称して「基板」と呼ぶ)の製造工程において、種々の原因から基板の表面に汚れが発生することがある。
【0003】
一般に、数μm程度の大きさの異物をパーティクルと呼んでいて、このパーティクルが基板表面に付着することによる汚れである。そのため、それぞれの工程で回路パターンを形成する際には、基板表面にパーティクルが付着しない清浄な状態となるよう、基板を洗浄する。
【0004】
基板洗浄装置において、基板を1枚ずつ洗浄する枚葉洗浄方式では、ディスク状もしくはロール状のブラシが用いられ、ブラシを基板に摺接させ、基板を物理的に“こする“ことで洗浄を行っている。たとえば、[特許文献1]には、平板印刷版処理装置に用いられるものであるが、ブラシロールが記載されている。
【0005】
しかるに、基板の主面上には種々の被膜、たとえばITOやCrなどの金属膜や、カラーフィルタ用の有機膜などの柔らかい膜が形成されている。これらの柔らかい被膜面をブラシロールが“こする”ことにより、傷付くことがある。
【0006】
【特許文献1】特開平6−148900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、柔らかい被膜面を洗浄対象とする場合は、剛体である支軸に、弾性を有する筒状スポンジ部材を取付けた、スポンジローラーブラシが多用される傾向にある。上記スポンジの素材としては、たとえばPVA(ポリビニールアミール)や、PVF(ポリビニールフェミニン)等の高分子合成樹脂材、あるいはポリウレタンが用いられる。
【0008】
この種のスポンジローラーブラシを製造するにあたって、予め支軸の外周面に接着剤を塗布する。そして、支軸外周面に筒状スポンジ部材の内径部を挿入し、位置決めをなして仮固定し所定時間放置すれば、筒状スポンジ部材を支軸に接着固定できる。接着剤は、筒状スポンジ部材を支軸に確実に取付けるために、充分な量が塗布される。
【0009】
通常は、筒状スポンジ部材の側端部から接着剤がはみ出た状態となることが多く、接着剤は洗浄液(薬品)によって濡れ易い。条件によっては、接着剤を構成する成分が洗浄液に溶出し、洗浄液の組成を変えてしまう。
さらに、洗浄中は洗浄液が筒状スポンジ部材全体に含浸して最深部まで浸透し、支軸に塗布される接着剤を濡らす。たとえ接着剤が筒状スポンジ部材からはみ出ないとしても、結局は、洗浄液は接着剤に接触することとなり、接着剤が洗浄液に溶出する現象を防止できない。
【0010】
本発明は上記事情にもとづきなされたものであり、その目的とするところは、接着剤を用いずに筒状スポンジ部材を支軸に取付け固定して、洗浄液に対する影響を無くし、高純度で高品質の基板洗浄を可能としたスポンジローラーブラシを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を満足するため本発明は、被洗浄体と中心軸を平行にして回転駆動され、洗浄液が供給される被洗浄体に摺接して、被洗浄体を洗浄するスポンジローラーブラシであり、断面円形状をなし軸方向に所定長さを有する剛体からなる支軸と、内径を強制的に拡大するよう弾性変形した状態で支軸の外周面に嵌め合わされ、それ自体の弾性力によって支軸外周面に圧着固定する筒状スポンジ部材とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接着剤を用いずにスポンジ部材を支軸に取付け固定して、接着剤による影響をなくし、高純度で高品質の洗浄をなすという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて説明する。
図1(A)は第1の実施の形態でのスポンジローラーブラシR1の透視した斜視図、図1(B)は同スポンジローラーブラシR1の製造工程を説明する図、図1(C)は完成した同スポンジローラーブラシR1の側面図である。
【0014】
図1(A)に示すようにスポンジローラーブラシR1は、中空筒体(中実であってもよい)からなり、剛体である支軸10と、この支軸10外周面に圧着固定される、弾性を有する筒状スポンジ部材11とから構成される。
【0015】
筒状スポンジ部材11の両側端面から支軸10の両端部が突出するよう、支軸10の軸方向全長に対して筒状スポンジ部材11の軸方向全長は短く形成される。支軸10の筒状スポンジ部材11から突出する両端部は駆動部に支持され、スポンジローラーブラシR1は被洗浄体である基板と中心軸を平行にして回転駆動されるようになっている。
【0016】
上記筒状スポンジ部材11の素材は、従来と同様、PVAや、PVF等の高分子合成樹脂材、あるいはポリウレタンが用いられる。上記支軸10は、PVCやABS等の接着剤を使用できる合成樹脂材や、UPE(超高分子ポリエチレン)、PE、もしくはPP等の接着剤を使用できない合成樹脂材を用いることができる。
【0017】
従来、支軸に筒状スポンジ部材を取付けるのに接着剤を用いていたため、支軸の素材はPVCやABS等に限定されていたが、ここでは後述するように、接着剤を用いることなく支軸10に筒状スポンジ部材11を取付け固定するので、接着剤を使用できる合成樹脂材ばかりでなく、接着剤を使用できない合成樹脂材からも幅広く選択できる。
【0018】
また、これら合成樹脂材からなる支軸10を備えたスポンジローラーブラシR1は、金属反応を起すことが判明している洗浄液を用いる基板洗浄装置に使用される場合がある。洗浄液が金属反応を起すと、洗浄対象物である液晶ガラス基板に形成される被膜等に悪影響を及ぼす。
【0019】
金属反応を起さないことが判明している洗浄液を用いる、基板洗浄装置に使用される場合もある。この条件では、スポンジローラーブラシR1の支軸10はステンレス鋼(SUS)材が用いられ、完成したスポンジローラーブラシR1を基板洗浄装置に取付けるのに、ステンレス製のフランジやビス、ねじ類が用いられる。
【0020】
図1(B)に示すように、支軸10の一方の側端部には、この端面から外周面に亘って断面直径が漸次大となるテーパーガイド部10aが設けられる。上記テーパーガイド部10aは、パイプ状をなす支軸10の内径部から外周面にかけて斜めに切欠加工される。
上記筒状スポンジ部材11は、図1(B)に破線で示し、図1(C)に二点鎖線で示すように、支軸10に嵌め込まれる以前の状態として、この内径は支軸10の直径(外径)よりも小さく形成されている。
【0021】
上記筒状スポンジ部材11を支軸10外周面に取付け固定してスポンジローラーブラシR1を製造するには、以下の方法による。
支軸10のテーパーガイド部10aに、上記筒状スポンジ部材11の一方の側端部に開口する開口部を当てる。このとき、支軸10の軸芯と筒状スポンジ部材11の軸芯を正しく合わせる必要がある。
【0022】
そして、筒状スポンジ部材11の上記側端部を支軸10の軸方向に沿って強制的に押し込む。テーパーガイド部10aに対して筒状スポンジ部材11の開口部が滑り、この内径が強制的に弾性変形され拡大する。さらに筒状スポンジ部材11を押し込むことで、この側端部はテーパーガイド部10aから筒状スポンジ部材11外周面へ移動する。
【0023】
筒状スポンジ部材11の押し込みを継続し、側端部を支軸10の端部外周面から軸方向に沿って強制的に移動する。ついには、図1(A)に示すように、筒状スポンジ部材11は支軸10外周面の略全長に亘って被う。筒状スポンジ部材11は、それ自体の弾性力で支軸10外周面に圧着固定し、スポンジローラーブラシR1が完成する。
【0024】
特に、スポンジローラーブラシR1における外径精度が要求される仕様においては、スポンジローラーブラシR1の周面を研磨加工して仕様に合わせる。
結局、接着剤を何ら用いることなく、支軸10に筒状スポンジ部材11を確実に取付け固定できる。完成したスポンジローラーブラシR1を基板洗浄装置に取付けて基板洗浄作用をなしても、洗浄液に対し何らの影響も与えずに、高純度で高品質の洗浄が行われる。
【0025】
なお、筒状スポンジ部材11の支軸10に対する嵌め合いの最適な設定は、以下の通りである。
たとえば、支軸10の外径がφ50mmである場合は、筒状スポンジ部材11の内径がφ45mmのものを用いる。スポンジローラーブラシRとして完成した状態で、筒状スポンジローラーブラシRは支軸10に対して最適状態で圧着固定する。
【0026】
支軸10外径と筒状スポンジ部材11内径との差に対する支軸10外径の割合を、「嵌め合い率」と呼ぶとすると、上記した支軸10外径がφ50mm、筒状スポンジ部材11内径がφ45mmでの嵌め合い率は、「10%」となる。支軸10の外径の大小に応じて筒状スポンジ部材11の内径を調整し、嵌め合い率を適宜選択する必要がある。
【0027】
支軸10外径が小径のものは、嵌め合い率を3〜10%の範囲で調整する。支軸10外径がφ75〜100mm程度の大径の場合は、嵌め合い率を10〜20%程度とする。このように支軸10直径が大になるにしたがって、嵌め合い率も大になる。
また、スポンジローラーブラシR1として、実際に洗浄作用をなす筒状スポンジ部材11は、被洗浄体である基板に応じて、硬度を上げる場合と、硬度を下げる場合がある。筒状スポンジ部材11の硬度を上げるには嵌め合い率を大に設定し、硬度を下げるには嵌め合い率を小に設定する。
【0028】
筒状スポンジ部材11の内径と、スポンジローラーブラシR1として完成した状態での筒状スポンジ部材11の硬度との関係は、基板を洗浄する際において筒状スポンジ部材11が受ける“圧力”と関連がある。
基板の洗浄時に、筒状スポンジ部材11に強い圧力が加わる場合は、嵌め合い率を大きく設定して硬度を上げる。筒状スポンジ部材11に弱い圧力のみが加わる場合は、嵌め合い率を小さく設定して硬度を下げる。全て、被洗浄体に対する洗浄状況に応じて適宜調整する必要がある。
【0029】
図2(A)は、第2の実施の形態に係るスポンジローラーブラシR2の透視斜視図、図2(B)はスポンジローラーブラシR2を構成する支軸10の断面図である。
図2(A)に示すように、このスポンジローラーブラシR2は、支軸10と、支軸10の外周面に圧着固定される筒状スポンジ部材11とから構成される。支軸10と筒状スポンジ部材11の構成は、先に説明したものと全く同一であり、ここでは新たな説明は省略する。
【0030】
上記支軸10の外周面に沿って互いに所定間隔を存するとともに、それぞれが支軸10の軸方向に亘って複数(8本)の回り止め用突条12が設けられる。たとえば、支軸10の外径がφ50mmである場合、回り止め用突条12の断面寸法は、縦横5mmのものを用いるとよい。
【0031】
回り止め用突条12の全長は筒状スポンジ部材11の全長(軸方向長さ)よりも小さく形成される。したがって、後述するように支軸10に筒状スポンジ部材11が嵌め込まれた状態で、上記回り止め用突条12は筒状スポンジ部材11で覆われ、この端面から突出することはない。
【0032】
上記支軸10が合成樹脂材で形成される場合は、回り止め用突条12を支軸10と一体に成形する。もしくは、支軸10が合成樹脂材のうちで特にPVC材が選択された場合は、PVC材からなる回り止め用突条12を支軸10とは別個に製作し、追って部分溶接等の手段で固着する。
上記支軸10がステンレス鋼材で形成される場合は、同一素材からなる回り止め用突条12を支軸10とは別個に製作し、追って支軸10および回り止め用突条12と同一素材で成形されるビスなどの固定具を用いて取付け固定する。
【0033】
このように、支軸10の素材として合成樹脂材もしくはステンレス鋼材のいずれかを選択しても、回り止め用突条12を支軸10に対して取付け固定するにあたって、接着剤を使用しないことは、勿論である。
図3は、回り止め用突条12を備えた支軸10に、筒状スポンジ部材11を嵌め合せる工程の一部を示す斜視図である。
【0034】
支軸10における図示しない一方の側端部には、上記テーパーガイド部10aが設けられている。筒状スポンジ部材11内径は支軸10外径よりも小さく、筒状スポンジ部材11の一端開口部をテーパーガイド部10aに当てて、強制的に押し込む。筒状スポンジ部材11の内径は弾性変形して拡大し、この端部は支軸10外周面に嵌め込まれる。
【0035】
さらに筒状スポンジ部材11を支軸10の軸方向に沿って強制的に押し込むと、図3に示すように回り止め用突条12が筒状スポンジ部材11に嵌め込まれる。筒状スポンジ部材11に対する作用を継続すれば、ついには再び図2(A)に示すように、筒状スポンジ部材11が、それ自体の弾性力で支軸10外周面に圧着固定する。
【0036】
筒状スポンジ部材11は所定の肉厚と硬度があり、回り止め用突条12を嵌め込んでいながら外周面は真円状をなす。換言すれば、回り止め用突条12を備えた支軸10に筒状スポンジ部材11を嵌め合せても、筒状スポンジ部材11の真円度が損なわれないよう、回り止め用突条12の断面寸法が設定され、筒状スポンジ部材11の硬度が選択される。
【0037】
筒状スポンジ部材11の真円度が確保されているから、実際に基板洗浄をなすにあたって、筒状スポンジ部材11の基板に対する接触圧は全周に亘って均等であり、よって高純度で高品質の洗浄が行われる。
支軸10周面に複数の回り止め用突条12を設けたから、たとえ基板に対する接触圧を高めた洗浄を行っても、筒状スポンジ部材11が支軸10の周方向に位置ずれするようなことがなく、より高純度で高品質の洗浄が行われる。
【0038】
図4(A)は異なる構造の回り止め用突条12Aを備えた支軸10の一部斜視図、図4(B)は支軸10の断面図である。
回り止め用突条12Aの本数、全長、および支軸10に対する取付け構造は、先に説明したものと同一でよい。ここで回り止め用突条12Aの突出側の先端が三角状に形成され、支軸10の軸方向に対して略螺旋状に捩った状態で取付けられる。
【0039】
上記支軸10が合成樹脂材で成形される場合は、これら回り止め用突条12Aは、支軸10外周面に一体に成形される、もしくは、同一素材で製作されたあと、部分溶接など、接着剤や金属製固定具を用いることない手段で取付け固定される。
支軸10がステンレス鋼材で成形される場合は、回り止め用突条12Aもステンレス鋼材で成形され、ステンレス製の固定具で取付け固定される。この場合も、回り止め用突条12Aは接着剤を用いることはない手段で取付け固定される。
【0040】
回り止め用突条12Aが支軸10に略螺旋状に捩って取付けられているので、筒状スポンジ部材11を支軸10に対して捩りながら嵌め込む。したがって、筒状スポンジ部材11を支軸10外周面に円滑に取付けられるとともに、回り止め用突条12Aの三角状先端が筒状スポンジ部材11の内周面に食い込む。
実際に洗浄作用を行っている状態で、スポンジローラーブラシRが軸方向とは直交する周方向に圧力を受けても、上記回り止め用突条12Aを備えたことで、筒状スポンジ部材11の位置ずれがなく、より高純度で、より高精度の洗浄が可能となる。
【0041】
図5(A)は、さらに異なる構造の回り止め用突条12Bを備えた支軸10の一部斜視図、図5(B)は支軸10の断面図である。
回り止め用突条12Bは、支軸10の外周面に沿って互いに所定間隔を存するとともに、それぞれが支軸10の軸方向に亘って複数本設けられる。そして、各回り止め用突条12Bは、支軸10の軸方向に複数に分割されていて、分割部分は間隙を存して取付けられる。
【0042】
上記支軸10が合成樹脂材で成形される場合は、これら回り止め用突条12Bは支軸10周面に一体に成形される、もしくは、同一素材で支軸10とは別個に製作されたあと、部分溶接など、接着剤や金属製固定具を用いることない手段で取付け固定される。
支軸10がステンレス鋼材で成形される場合は、回り止め用突条12Bはステンレス鋼材で成形され、ステンレス製の固定具(ビス類)で取付け固定される。この場合も、接着剤を用いることのない手段で取付け固定される。
【0043】
以上説明した回り止め用突条12,12A,12Bを備えた支軸10は、一方の側端部にテーパーガイド部10aが設けられるが、これら回り止め用突条自体にも筒状スポンジ部材11の嵌め合い時の作業効率の向上化を得る手段が備えられる。
図6は、支軸10に筒状スポンジ部材11を嵌め込む作業を説明する図である。
上記支軸10における一方の側端部は、端面から外周面に向って断面直径が漸次大となるテーパーガイド部10aが設けられる。上記回り止め用突条12B(12,12Aであってもよい)の側端部にも、テーパーガイド部10aと略同一の傾斜角度で切欠される切欠ガイド部13が設けられている。
【0044】
このことから、スポンジローラーブラシR3を製造するには、支軸10のテーパーガイド部10aに筒状スポンジ部材11の一方の側端部に開口する開口部を当て、筒状スポンジ部材11の上記側端部を支軸10の軸方向に沿って強制的に押し込む。
上記テーパーガイド部10aにより筒状スポンジ部材11の内径が弾性変形して拡大するので、筒状スポンジ部材11の側端部をテーパーガイド部10aから支軸10の外周面へ移動する。
【0045】
さらに、筒状スポンジ部材11の側端部を支軸10の側端部外周面から軸方向に沿って強制的に移動し、回り止め用突条12Bの切欠ガイド部13に嵌め込む。そして、筒状スポンジ部材11の側端部を強制的に移動し、ついには支軸10外周面の略全長に亘って筒状スポンジ部材11が圧着固定する。
したがって、スポンジローラーブラシR3を製造する作業効率の向上を得られる。
【0046】
なお、以上は支軸10に筒状スポンジ部材11を嵌め込むのに、支軸10にテーパーガイド部10aを設けて直接的に行う。しかしながら、これに限定されるものではなく、補助具(治具)を使用してもよい。
図7(A)は第3の実施の形態に係る、補助具であるガイド部材15の側面図、図7(B)はガイド部材15の正面図、図7(C)はガイド部材15を用いて支軸10に筒状スポンジ部材11を嵌め込む作業を説明する図である。
【0047】
上記ガイド部材15は、断面が円形状をなし、先端が尖鋭状に形成される円錐部16となっている。この先端円錐部16の基端から所定距離だけ、支軸10の外径よりも小さく、かつ同一直径の第1の同径部17が形成される。
さらに、第1の同径部17の基端から軸方向に沿って漸次直径が拡大されるテーパーガイド部18が設けられていて、このテーパーガイド部18における基端の直径は支軸10の外径よりも大に形成される。
【0048】
テーパーガイド部18の基端からは、所定距離だけ同一直径に形成される第2の同径部19となっている。この第2の同径部19の端面に支軸10の外径と同一であり、よって支軸10端部が着脱自在な嵌合穴20が設けられる。
嵌合穴20の深さ寸法は、支軸10の端面から回り止め用突条12の端面までの距離と同等に設定される。この寸法設定であれば、回り止め用突条12が設けられる支軸10と、回り止め用突条12が設けられない支軸10との両方に、上記ガイド部材15を用いることができる。
【0049】
つぎに、上記ガイド部材15を用いたスポンジローラーブラシRの製造方法について説明する。
ここでは、回り止め用突条12が設けられる支軸10を適用するが、他の構造の回り止め用突条12A,12Bが設けられる支軸10であってもよく、回り止め用突条が設けられない支軸10であってもよい。いずれにしても、支軸10の側端部にテーパーガイド部10aを設ける必要はなく、回り止め用突条12Bの側端部に切欠ガイド部13を設ける必要もない。
【0050】
はじめに、支軸10の端部に、ガイド部材15の第2の同径部19端面に設けられる嵌合穴20を嵌着して、支軸10とガイド部材15を同一の軸線上に連結する。筒状スポンジ部材11の一方の側端部に開口する開口部を、ガイド部材15の先端円錐部16に嵌合する。
【0051】
このとき、ガイド部材15の軸芯位置に対して筒状スポンジ部材11の軸芯位置が多少のずれがあっても、筒状スポンジ部材11の開口部がガイド部材15の先端円錐部16に倣って必然的に互いの軸芯位置が合致する。
【0052】
そして、筒状スポンジ部材11の側端部をガイド部材15の軸方向に沿って押し込み、筒状スポンジ部材11側端部をガイド部材円錐部から第1の同径部17を介してテーパーガイド部18に強制的に移動する。筒状スポンジ部材11は内径が徐々に弾性変形して拡大し、第2の同径部19に移動する。
【0053】
さらに、筒状スポンジ部材11側端部を支軸10の軸方向に沿って強制的に移動すれば、筒状スポンジ部材11は回り止め用突条12を覆う。ついには、支軸10の軸方向略全長に亘って筒状スポンジ部材11が嵌め合わされ、筒状スポンジ部材11はそれ自体の弾性力で支軸10外周面に圧着固定する。
【0054】
すなわち、ガイド部材15を用いることにより、筒状スポンジ部材11を支軸10に嵌め合せる作業が、より容易化して作業性の向上を図れる。支軸10端部に上記テーパーガイド部10aを設ける必要がなく、回り止め用突条12を備えても、上記切欠ガイド部13を設ける必要はない。
【0055】
いずれにしても、スポンジローラーブラシRを製造するにあたって加工手間の軽減化を得られ、工数の低減に寄与する。上記ガイド部材15は繰り返して用いることができ、コストに影響を与えずにすむ。
以上述べたように、スポンジローラーブラシRを構成する筒状スポンジ部材11は支軸10に対して接着剤を用いない、“無接着”で取付けている。そのため、支軸10の素材が合成樹脂材であれ、ステンレス鋼材であれ、いずれも、スポンジローラーブラシRとしての使用限度が過ぎた場合は、筒状スポンジ部材11を支軸10から引き抜き、もしくは剥ぎ取る作業が比較的容易に行える。
【0056】
そして、残った支軸10に対して新品の筒状スポンジ部材11を無接着で取付ければ、新品のスポンジローラーブラシRとして実用化できる。支軸10は何回でも繰り返して使用できるので、リサイクル資源の観点から極めて有効である。勿論、支軸10の再利用の際は、支軸10に破損がないことを充分に検査確認し、先に使用されていた汚染物の除去を確実に行って、新品同様な状態としなければならない。
【0057】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、実施段階では要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。そして、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係る、スポンジローラーブラシの斜視図と、製造途中を説明する図と、スポンジローラーブラシの側面図。
【図2】本発明における第2の実施の形態に係る、スポンジローラーブラシの斜視図と、支軸の断面図。
【図3】同実施の形態に係る、スポンジローラーブラシの製造途中を説明する図。
【図4】同実施の形態に係る、異なる構造の回り止め用突条を備えた支軸の一部斜視図と、支軸の断面図。
【図5】同実施の形態に係る、支軸の一部斜視図と、支軸の断面図。
【図6】同実施の形態に係る、さらに異なる構造の回り止め用突条を備えたスポンジローラーブラシの製造途中を説明する図。
【図7】本発明における第3の実施の形態に係る、ガイド部材の正面図と、側面図と、スポンジローラーブラシの製造途中を説明する図。
【符号の説明】
【0059】
R…スポンジローラーブラシ、10…支軸、11…筒状スポンジ部材、10a…テーパーガイド部、12…回り止め用突条。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄体と中心軸を平行にして回転駆動され、洗浄液が供給される被洗浄体に摺接して、被洗浄体を洗浄するスポンジローラーブラシであり、
断面円形状をなし、軸方向に所定長さを有する、剛体からなる支軸と、
内径を強制的に拡大するよう弾性変形した状態で上記支軸の外周面に嵌め合わされ、それ自体の弾性力によって支軸外周面に圧着固定する筒状スポンジ部材と
を具備することを特徴とするスポンジローラーブラシ。
【請求項2】
上記支軸における一方の側端部に、この端面から外周面に亘って断面直径が漸次大となるテーパーガイド部が設けられることを特徴とする請求項1記載のスポンジローラーブラシ。
【請求項3】
上記支軸の外周面に沿って互いに所定間隔を存するとともに、それぞれが支軸の軸方向に亘って複数の回り止め用突条が設けられ、
これら回り止め用突条は、支軸外周面に一体に成形される、もしくは、部分溶接、ビス止め等の接着剤を用いることない手段で取付け固定されることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれかに記載のスポンジローラーブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−101253(P2009−101253A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273002(P2007−273002)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(505140661)株式会社 リンダース・ロージクト (2)
【Fターム(参考)】