説明

ズームレンズ及びそれを有する撮像装置

【課題】 全体が小型で広画角、高ズーム比でありながら全ズーム範囲にわたり高い光学性能が得られるズームレンズを得ること。
【解決手段】 物体側より像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群より構成され、ズーミングに際して前記第2レンズ群と前記第4レンズ群が移動するズームレンズであって、
前記第3レンズ群と前記第5レンズ群の焦点距離f3、f5、広角端における全系の焦点距離fw、広角端における空気換算値でのバックフォーカスbfを各々適切に設定すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はズームレンズ及びそれを有する撮像装置に関し、例えばビデオカメラ、電子スチルカメラ、放送用カメラ、監視カメラ等のように固体撮像素子を用いた撮像装置、或いは銀塩フィルムを用いたカメラ等の撮像装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子を用いた撮像装置に用いられる撮影光学系には、高ズーム比(高変倍比)で、しかもFナンバーが小さく明るい、小型のズームレンズであることが要望されている。さらに、固体撮像素子の高精細化に対応できる高い光学性能を有したズームレンズであることが要望されている。
【0003】
これらの要求に応えるズームレンズとして、物体側に正の屈折力のレンズ群を配置したポジティブリード型のズームレンズが知られている。ポジティブリード型のズームレンズとして、物体側から像側へ順に、正、負、正、正、正の屈折力の第1乃至第5レンズ群よりなる5群構成のズームレンズが知られている(特許文献1乃至3)。また全系の小型化を図る手段として、物体側の第1レンズ群以外のレンズ群を移動させてフォーカス(焦点合わせ)を行う、所謂リアフォーカス式の5群ズームレンズが知られている(特許文献4)。
【0004】
特許文献1では第2レンズ群を移動して変倍させ、第4レンズ群を移動させて変倍に伴う像面変動の補正およびフォーカシングを行う5群ズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−98963号公報
【特許文献2】特開2007−322804号公報
【特許文献3】特開平3−200113号公報
【特許文献4】特開平08−005913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、撮像装置は小型化され、またそれに用いる撮像素子は高画素化されており、それに用いるズームレンズは小型でしかも高解像力であることが要望されている。この他、広画角で高ズーム比であること等が要望されている。前述したポジティブリードタイプのリアフォーカス式の5群ズームレンズは、全系の小型化を図りつつ、広画角化及び高ズーム比化が比較的容易である。
【0007】
しかしながら、この5群ズームレンズにおいて、広画角化及び高ズーム比化を図りつつ、色収差や像面湾曲を良好に補正し、高い光学性能を得るには各レンズ群のレンズ構成を適切に設定することが重要になってくる。特に第3、第5レンズ群の屈折力が適切でないと、広画角で高ズーム比で全ズーム範囲で高い光学性能を得るのが大変困難になってくる。この他、フォーカス用の第4レンズ群の屈折力や第1、第5レンズ群のレンズ構成を適切に設定しないと、広画角化、高ズーム比化を得るのが大変困難になってくる。
【0008】
本発明は、全体が小型で広画角、高ズーム比でありながら全ズーム範囲にわたり高い光学性能が得られるズームレンズの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のズームレンズは、物体側より像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群より構成され、ズーミングに際して前記第2レンズ群と前記第4レンズ群が移動するズームレンズであって、
前記第3レンズ群と前記第5レンズ群の焦点距離を各々f3、f5、広角端における全系の焦点距離をfw、広角端における空気換算値でのバックフォーカスをbfとするとき、
5.0<f3/fw<18
0.0010<fw/f5<0.0155
1.2 <bf/fw<3.5
なる条件式を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全体が小型で広画角、高ズーム比でありながら全ズーム範囲にわたり高い光学性能が得られるズームレンズが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の広角端におけるレンズ断面図
【図2】(A)、(B)、(C)本発明の実施例1のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図
【図3】本発明の実施例2の広角端におけるレンズ断面図
【図4】(A)、(B)、(C)本発明の実施例2のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図
【図5】本発明の実施例3の広角端におけるレンズ断面図
【図6】(A)、(B)、(C)本発明の実施例3のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図
【図7】本発明の実施例4の広角端におけるレンズ断面図
【図8】(A)、(B)、(C)本発明の実施例4のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図
【図9】本発明の撮像装置の要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群からなっている。ズーミングに際して第2レンズ群と第4レンズ群が移動する。また第4レンズ群でフォーカシングを行っている。
【0013】
図1は、本発明の実施例1のズームレンズの広角端(短焦点距離端)におけるレンズ断面図である。図2(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例1のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端(長焦点距離端)における収差図である。実施例1はズーム比39.52、開口比(Fナンバー)1.66〜5.07のズームレンズである。
【0014】
図3は、本発明の実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。図4(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例2のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。実施例2はズーム比31.94、開口比1.47〜3.54のズームレンズである。
【0015】
図5は、本発明の実施例3のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。図6(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例3のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。実施例3はズーム比60.1、開口比1.99〜4.20のズームレンズである。
【0016】
図7は、本発明の実施例4のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。図8(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例4のズームレンズの広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。実施例4はズーム比69.91、開口比1.98〜4.82のズームレンズである。図9は本発明の撮像装置の要部概略図である。
【0017】
本発明のズームレンズは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置に用いられるものである。レンズ断面図において左方が前方(物体側、拡大側)で右方が後方(像側、縮小側)である。各実施例のズームレンズをプロジェクター等の投射レンズとして用いるときは、左方がスクリーン、右方が被投射画像となる。レンズ断面図において、iは物体側から像側への各レンズ群の順序を示し、Liは第iレンズ群である。
【0018】
次に各実施例のズームレンズの特徴について説明する。各実施例のレンズ断面図において、L1は正の屈折力(光学的パワー=焦点距離の逆数)の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群、L5は正の屈折力の第5レンズ群である。SPは開放Fナンバー(Fno)光束を決定(制限)する開口絞りの作用をするFナンバー決定部材(以下「開口絞り」ともいう。)であり、第3レンズ群L3の物体側に位置している。
【0019】
Gは光学フィルター、フェースプレート、水晶ローパスフィルター、赤外カットフィルター等に相当する光学ブロックである。IPは像面であり、ビデオカメラやデジタルスチルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)の撮像面が置かれる。又、銀塩フィルム用カメラの撮影光学系として使用する際にはフィルム面に相当する感光面が置かれている。
【0020】
収差図のうち球面収差図においてdはd線、gはg線である。非点収差図においてΔMはメリディオナル像面、ΔSはサジタル像面である。倍率色収差はg線によって表している。FnoはFナンバー、ωは半画角である。レンズ断面図において矢印は広角端から望遠端へのズーミングに際しての各レンズ群の移動軌跡を示している。ズーミングに際しては第2レンズ群L2と第4レンズ群L4が移動する。第1レンズ群L1、第3レンズ群L3、第5レンズ群L5はズーミングのためには不動である。
【0021】
以下の各実施例において広角端と望遠端は変倍レンズ群が機構上光軸上移動可能な範囲の両端に位置したときのズーム位置をいう。各実施例では、広角端から望遠端へのズーミングに際して矢印のように、第2レンズ群L2を像側に移動することによって変倍を行う。また、第4レンズ群L4を物体側に凸状の軌跡で移動させることで変倍に伴う像面変動を補正している。
【0022】
また、第4レンズ群L4を光軸上移動させてフォーカシングを行うリアフォーカス式を採用している。第4レンズ群L4に関する実線の曲線4aと点線の曲線4bは、各々無限遠物体と近距離物体にフォーカスしているときの変倍に伴う像面変動を補正するための移動軌跡である。このように第4レンズ群L4を物体側へ凸状の軌跡とすることで第3レンズ群L3と第4レンズ群L4間の空間の有効利用を図り、レンズ全長(第1レンズ面から像面までの距離)の短縮化を効果的に達成している。
【0023】
又、望遠端において無限遠物体から近距離物体へフォーカスを行う場合には、矢印4cに示すように第4レンズ群L4を前方に繰り出すことで行っている。開口絞りSPはズーミングに際して不動である。
【0024】
本発明は、高ズーム比を確保するために、物体側から像側へ順に、正、負、正、正、正の屈折力の第1乃至第5レンズ群L1〜L5で構成している。そしてズーミングに際して第2、第4レンズ群L2、L4を移動させている。これにより高ズーム比で全系が小型のズームレンズを達成している。
【0025】
ズーミングに際して第1、第3、第5レンズ群L1、L3、L5を不動とすることにより、レンズ鏡筒の構成上における制御やアクチュエータの追加などの負荷をかけずに、収差補正を良好に行っている。
【0026】
また第3レンズ群L3と第5レンズ群L5の焦点距離を各々f3、f5とする。広角端における全系の焦点距離をfwとする。広角端における空気換算値でのバックフォーカスをbfとする。このとき、
5.0<f3/fw<18 ・・・(1)
0.0010<fw/f5<0.0155 ・・・(2)
1.2 <bf/fw<3.5 ・・・(3)
なる条件式を満足している。
【0027】
条件式(1)乃至(3)は広画角・高ズーム比でありながらズーム全域において良好な光学性能を得るためのものである。条件式(1)は、第3レンズ群L3のパワー(屈折力)を適切に設定している。条件式(1)の上限を超えて第3レンズ群L3の焦点距離が長くなると、第3レンズ群L3の正の屈折力の負荷が軽くなり収差補正上は好ましい。しかしながら、全長(第1レンズ面から像面までの長さ)を抑えるために第4レンズ群L4のパワーを大きくする必要が生じ、この結果、ズーム全域において収差変動を抑えることが困難になってしまう。
【0028】
さらに第4、第5レンズ群L4、L5のレンズ径が増大して、全系の小型化が困難になる。更に第4レンズ群L4でフォーカスする際のアクチュエータの重量負荷が大きくなってくるので好ましくない。
【0029】
また、条件式(1)の下限を超えて第3レンズ群L3の焦点距離が短くなると、パワー(屈折力)が強くなりすぎてしまい、特に広角端において球面収差が増加してくる。また、ズーム全域において収差をバランス良く補正するのが難しくなってくる。さらに第4レンズ群L4の光軸方向の位置の変化に伴う射出瞳位置の変動が大きくなってくるので好ましくない。
【0030】
条件式(2)は、第5レンズ群L5のパワー配分を適切に設定している。条件式(2)の上限を超えると第5レンズ群L5のパワーが強すぎて、諸収差をバランス良く補正するのが困難となってくる。また、条件式(2)の下限を超えると第5レンズ群L5のパワーが弱くなりすぎて、諸収差をバランス良く補正するのが困難になってくる。
【0031】
条件式(3)は、バックフォーカス(ガラスブロックGを空気換算長としたときの最終レンズ面から像面までの空気換算距離)を適切に設定するためのものである。条件式(3)の上限を超えると、バックフォーカスが長くなりすぎてしまい、第1レンズ群L1から像面までの距離が拡大して第1レンズ群L1の有効径が増大し、全系の小型化が困難になる。
【0032】
さらには、第3レンズ群L3から第4レンズ群L4への光束の発散が大きくなり、第4レンズ群L4が大型化し、像面補正や合焦を行うときのアクチュエータの負荷が大きくなってくるので良くない。また、条件式(3)の下限を超えるとバックフォーカスが短くなりすぎて、光学フィルター等を入れるための空間が少なくなってくるので良くない。更に好ましくは条件式(1)乃至(3)の数値範囲をそれぞれ以下の如く設定するのが良い。
【0033】
6.5<f3/fw<15.5 ・・・(1a)
0.0030<fw/f5<0.0150 ・・・(2a)
1.4<bf/fw<3.2 ・・・(3a)
各実施例においては、以上のように各要素を設定することにより、広画角・高ズーム比でしかもズーム全域で諸収差を良好に補正されたズームレンズを得ている。さらに広角端における全系のFナンバーが小さいズームレンズを実現している。
【0034】
本発明の目的とするズームレンズは、以上のような構成を満足することにより実現されるが、更に高ズーム比を維持しつつ、光学性能を得るには、以下の特徴のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。第1レンズ群L1と第4レンズ群L4の焦点距離を各々f1、f4とする。望遠端における全系の焦点距離をftとする。
【0035】
第1レンズ群L1は正レンズを有し、正レンズの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdp、θgFpとする。このとき、次の諸条件のうち1以上を満足するのが良い。
【0036】
8.0<f1/fw<30.0 ・・・(4)
0.4<f4/√(fw・ft)<1.5 ・・・(5)
70<νdp ・・・(6)
0.004<θgFp−(0.644−0.00168・νdp)<0.055
・・・(7)
ここで波長436nm(g線)、波長486nm(F線)、波長588nm(d線)、波長656nm(C線)のそれぞれに対する材料の屈折率を、それぞれng,nF,nd,nCとするとき、アッベ数νdと部分分散比θgFは次のとおりである。
【0037】
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θgF=(ng−nF)/(nF−nC)
条件式(4)は、第1レンズ群L1のパワー(屈折力)を適切に設定するためのものである。条件式(4)の上限を超えると、前玉有効径が大きくなりカメラが大型化してくる。また下限を超えると、望遠端において球面収差をはじめとする諸収差の補正が困難になってくる。
【0038】
条件式(5)はズーミング及びフォーカシングに際して移動する第4レンズ群L4のパワーを適切に設定するためのものである。条件式(5)の上限を超えると第4レンズ群L4のパワーが弱まり、ズーミングおよびフォーカスの際の移動量が多くなり全系の小型化が困難になる。また、下限を超えると第4レンズ群L4のパワーが強くなり過ぎてしまい、諸収差の補正が困難となる。
【0039】
条件式(6)、(7)は色収差、特に、望遠領域における軸上色収差を良好におこなうためのものである。条件式(6)、(7)を同時に満たす低分散(もしくは超低分散)の材料を用いると、色収差を良好に補正することが容易になる。条件式(6)、(7)の範囲を外れると、色収差の補正が不足となり、像に色にじみが目立ってくるので良くない。
【0040】
各実施例において更に好ましくは条件式(4)乃至(7)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
【0041】
9.5<f1/fw<26.0 ・・・(4a)
0.6<f4/√(fw・ft)<1.3 ・・・(5a)
75<νdp ・・・(6a)
0.020<θgFp−(0.644−0.00168・νdp)<0.055
・・・(7a)
各実施例では以上のように構成することにより、広画角、高ズーム比で全ズーム範囲にわたり高い光学性能が得られる小型のズームレンズが得られる。
【0042】
次に各実施例において好ましい形態について説明する。第5レンズ群L5は1つの正レンズと1つの負レンズを含むのが良い。これによれば、諸収差の補正を良好に行うのが容易になる。特にズーム全域において球面収差をはじめとする諸収差を良好に補正することが容易になる。また第5レンズ群L5を正レンズと負レンズとを接合した接合レンズを有するのが良い。これによれば、色収差の補正を良好に行うのが容易になる。特にズーム全域において倍率色収差を効果的に補正することが容易になる。
【0043】
本発明のズームレンズは、形成された像を受光する固体撮像素子を有した撮像装置に用いるのが良い。近年はデジタル的に像を処理するためにCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などがおもに使用されている。本発明のズームレンズもこれに相当する固体撮像素子を有した撮像装置に用いるのが良い。
【0044】
本発明のズームレンズは、諸収差を電気的に補正する補正手段を有する撮像装置に用いても良い。銀塩フィルムとは異なりデジタルカメラなどの撮像装置では画像をデジタルデータとして取得できる。この特性を利用し、ズームレンズから得られた画像に対して画像変換処理を施し諸収差を低減させると良好なる画像が容易に得られる。
【0045】
例えば、歪曲収差や色収差を電気的に補正すれば、諸収差が補正された画像を得ることができる。また、非球面や異常分散ガラスをあまり使用せずに良好なる画像が容易に得られる。
【0046】
次に各実施例のレンズ構成を説明する。以下、レンズ構成は特に断りがない限り、物体側から像側へ順に配置されているとする。
【0047】
第1レンズ群L1は、物体側のレンズ面が凸でメニスカス形状の負レンズG11、両凸形状の正レンズG12、物体側のレンズ面が凸でメニスカス形状の正レンズG13より成っている。正レンズG12は、色収差の補正に効果を持たせるためにアッベ数の大きい(低分散特性を有する)材料を使用している。
【0048】
第2レンズ群L2は、物体側のレンズ面が凸でメニスカス形状の負レンズG21、両凹形状の負レンズG22、両凸形状の正レンズG23と両凹形状の負レンズG24とを接合した接合レンズにより成っている。
【0049】
第3レンズ群L3は、両凸形状の正レンズG31、物体側のレンズ面が凸でメニスカス形状の負レンズG32により成っている。このとき正レンズG31の片面もしくは両面は非球面形状であり、これにより広角端において球面収差をはじめズーム全域における諸収差を効果的に補正している。また第2レンズ群L2からの発散光束径を大きく広げることなく(第4レンズ群L4が大型化しないように)射出している。
【0050】
第4レンズ群L4は、両凸形状の正レンズG41と像面側のレンズ面が凸でメニスカス形状の負レンズG42を接合した接合レンズにより成っている。また接合レンズとすることによりズーム全域において軸上色収差および倍率色収差を良好に補正している。尚、正レンズG41の物体側のレンズ面を非球面形状とするのが良い。
【0051】
これによれば像面湾曲の補正およびフォーカシングに際して第4レンズ群L4から発生する諸収差の補正が容易になる。特に、広角端から望遠端における全ズーム範囲および無限遠物体から至近距離物体にフォーカスしたときの収差を、レンズ枚数を増やすことなく良好に補正するのが容易になる。
【0052】
第5レンズL5は、実施例1においては像側のレンズ面が凸でメニスカス形状の正レンズG51と像側のレンズ面が凸でメニスカス形状の負レンズG52とを接合した接合レンズより成っている。実施例2においては、像側のレンズ面が凸でメニスカス形状の正レンズG51と像側のレンズ面が凸でメニスカス形状の負レンズG52の独立した2つのレンズよりなっている。
【0053】
実施例3においては両凸形状の正レンズG51と両凹形状の負レンズG52とを接合した接合レンズより成っている。実施例4においては両凸形状の正レンズG51と像側のレンズ面が凸でメニスカス形状の負レンズG52とを接合した接合レンズより成っている。
【0054】
なお、実施例1乃至4において、正レンズG12の材料に、商品名S−FPL51((株)OHARA製)を用いることを想定している。この他、商品名FCD10(HOYA(株)製)やS−FPL53((株)OHARA製)などの超低分散ガラスを使用しても良い。
【0055】
以上のように、各実施例によれば広画角かつ高ズーム比で、全ズーム範囲にわたり高い光学性能の小型のズームレンズが得られる。
【0056】
開口絞りSPを第3レンズ群L3の物体側に設定する代わりに第3レンズ群L3の中や像面側に配置しても良い。またズーミングに際して他のレンズ群と一体的に、又は独立に移動させても良い。
【0057】
非球面レンズの材料はガラス材料に限らず、球面レンズ面上に樹脂材料で非球面形状を形成した(非球面成分を乗せた)ハイブリッドタイプの非球面レンズや、プラスチック材料より成る非球面レンズを用いても良い。レンズ群の全部又は一部を光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動させ、像位置を光軸に対し垂直方向に変移させて手ぶれ等の振動に伴う像ブレを補正しても良い。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0059】
次に、本発明の撮像装置の一例としてデジタルスチルカメラを用いたときの実施例を図9を用いて説明する。図9において20はカメラ本体、21は本発明に係るズームレンズによって構成された撮影光学系である。22はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。
【0060】
23は撮像素子22によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリである。24は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、固体撮像素子22上に形成された被写体像を観察するためのファインダーである。このように本発明によれば、小型で高い光学性能を有する撮像装置が得られる。
【0061】
次に本発明の実施例1乃至4に対応する数値実施例1乃至4を示す。数値実施例においてiは物体からの面の順番を示す。riは物体側より順に第i番目の面の曲率半径、diは物体側より順に第i番目と第i+1番目間のレンズ厚及び空気間隔、ndiとνdiは各々物体側より順に第i番目の光学部材の材質の屈折率とアッベ数である。また最も像側の2つの面はフェースプレート等のガラス材である。
【0062】
非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にH軸、光の進行方向を正としRを近軸曲率半径、Kを円錐定数、A4,A6,A8,A10を各々非球面係数としたとき
【0063】
【数1】

【0064】
なる式で表している。*は非球面形状を有する面を意味している。「e−x」は10-x
意味している。BFはバックフォーカスであり、最終レンズ面から像面までの空気変換長
で表している。前述の各条件式と各数値実施例との関係を表1に示す。
【0065】
[数値実施例1]
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 35.856 1.75 1.84666 23.8 31.58
2 24.001 6.40 1.49700 81.5 29.08
3 -434.601 0.15 28.24
4 24.668 3.00 1.69680 55.5 24.45
5 59.248 (可変) 23.49
6 37.647 0.70 1.88300 40.8 10.71
7 4.832 2.73 7.79
8 -13.001 0.60 1.80400 46.6 7.73
9 35.881 0.15 7.83
10 11.147 2.45 1.84666 23.8 8.05
11 -11.195 0.45 1.83400 37.2 7.86
12 34.021 (可変) 7.60
13(絞り) ∞ 0.43 11.03
14* 14.004 3.35 1.69350 53.2 11.50
15* -28.332 0.55 11.23
16 103.394 0.65 1.84666 23.8 10.62
17 17.252 (可変) 10.20
18* 20.823 3.21 1.58313 59.4 9.43
19 -10.581 0.55 1.84666 23.8 9.11
20 -14.416 (可変) 9.09
21 -12.918 1.20 1.80610 40.9 6.01
22 -8.501 0.55 1.84666 23.8 6.08
23 -13.073 2.00 6.15
24 ∞ 1.85 1.51633 64.2 15.00
25 ∞

【0066】
非球面データ
第14面
K =-6.55292e-002 A 4=-3.24389e-005 A 6=-1.27555e-006 A 8= 3.26000e-009 A10= 3.01487e-010

第15面
K = 4.62098e-001 A 4= 9.76324e-005 A 6=-2.23413e-006 A 8= 3.44469e-008

第18面
K = 5.05978e-001 A 4=-9.09213e-005 A 6=-1.00695e-006 A 8= 2.15066e-008 A10=-1.90676e-010

各種データ
ズーム比 39.52

広角 中間 望遠
焦点距離 3.40 36.58 134.36
Fナンバー 1.66 2.57 5.07
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 80.04 80.04 80.04
BF 6.56 6.56 6.56

間隔 広角 中間 望遠
d 5 0.54 21.33 26.52
d12 27.63 6.85 1.65
d17 10.22 2.23 15.36
d20 6.23 14.21 1.09

【0067】
[数値実施例2]
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 61.872 1.75 1.84666 23.8 36.47
2 32.340 6.47 1.69680 55.5 34.03
3 17256.115 0.15 33.11
4 31.135 2.98 1.69680 55.5 29.39
5 64.685 (可変) 28.53
6 32.801 0.70 1.88300 40.8 13.28
7 6.041 3.72 9.92
8 -16.059 0.60 1.80400 46.6 9.80
9 55.836 0.15 9.98
10 14.091 2.45 1.84666 23.8 10.29
11 -36.506 0.50 1.69680 55.5 10.09
12 35.626 (可変) 9.83
13(絞り) ∞ 0.22 12.34
14* 13.249 3.35 1.69350 53.2 12.80
15* -54.025 0.71 12.37
16 26.028 0.70 1.84666 23.8 11.49
17 12.822 (可変) 10.85
18* 19.096 3.20 1.58313 59.4 9.55
19 -10.714 0.55 1.84666 23.8 9.11
20 -16.671 (可変) 9.03
21 -25.385 1.26 1.74950 35.3 6.27
22 -9.697 0.39 6.24
23 -8.698 0.65 1.84666 23.8 6.01
24 -16.909 2.00 6.04
25 ∞ 1.85 1.51633 64.2 15.00
26 ∞

【0068】
非球面データ
第14面
K = 7.95595e-002 A 4=-2.38825e-005 A 6=-1.00862e-006 A 8= 4.27075e-009 A10= 2.68533e-010

第15面
K =-3.39598e-001 A 4= 9.57444e-005 A 6=-2.15178e-006 A 8= 3.81906e-008

第18面
K = 5.05978e-001 A 4=-4.84073e-005 A 6=-1.07918e-006 A 8= 1.87954e-008 A10=-7.16980e-011

各種データ
ズーム比 31.94

広角 中間 望遠
焦点距離 3.49 33.99 111.45
Fナンバー 1.47 2.14 3.54
像高 2.25 2.25 2.25
レンズ全長 86.36 86.36 86.36
BF 5.89 5.89 5.89

間隔 広角 中間 望遠
d 5 0.61 28.05 34.91
d12 35.95 8.51 1.65
d17 8.72 2.48 12.13
d20 4.69 10.94 1.28

【0069】
[数値実施例3]
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 49.474 1.75 1.84666 23.8 31.02
2 29.086 6.20 1.49700 81.5 29.07
3 -583.424 0.15 28.04
4 28.432 2.99 1.78800 47.4 25.62
5 70.888 (可変) 24.79
6 16.908 0.70 1.90366 31.3 9.20
7 4.051 2.70 6.71
8 -9.567 0.60 1.80610 40.9 6.59
9 35.491 0.15 6.76
10 11.129 2.45 1.84666 23.8 6.98
11 -7.872 0.45 1.72342 38.0 6.89
12 41.474 (可変) 6.71
13(絞り) ∞ 2.21 6.68
14* 15.558 2.60 1.69350 53.2 7.06
15 -24.524 0.15 6.90
16 70.404 0.65 1.90366 31.3 6.74
17 18.124 (可変) 6.54
18* 19.246 2.87 1.58313 59.4 5.83
19 -7.197 0.55 1.84666 23.8 5.47
20 -11.485 (可変) 5.45
21 53.823 1.09 1.69680 55.5 4.08
22 -30.739 0.55 1.84666 23.8 3.90
23 1718.628 2.00 3.81
24 ∞ 1.80 1.51633 64.1 15.00
25 ∞

【0070】
非球面データ
第14面
K =-1.58996e+000 A 4=-9.67515e-005 A 6=-1.77710e-007 A 8=-3.35358e-009

第18面
K = 1.57454e+000 A 4=-9.42316e-005 A 6= 6.31252e-007 A 8= 1.37233e-008

各種データ
ズーム比 60.10

広角 中間 望遠
焦点距離 1.88 21.45 113.00
Fナンバー 1.99 2.90 4.20
像高 1.15 1.15 1.15
レンズ全長 81.38 81.38 81.38
BF 5.45 5.45 5.45

間隔 広角 中間 望遠
d 5 0.58 27.37 34.07
d12 35.13 8.35 1.65
d17 7.37 2.05 10.26
d20 4.04 9.36 1.15

【0071】
[数値実施例4]
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 53.504 1.75 1.84666 23.8 32.42
2 31.689 6.60 1.49700 81.5 30.54
3 -270.091 0.15 29.49
4 28.991 3.00 1.78800 47.4 26.73
5 62.228 (可変) 25.82
6 17.728 0.70 2.00069 25.5 8.76
7 4.250 2.92 6.62
8 -12.786 0.60 1.80610 40.9 6.32
9 27.093 0.55 6.46
10 11.129 2.45 1.84666 23.8 6.83
11 -8.784 0.45 1.69680 55.5 6.73
12 21.712 (可変) 6.51
13(絞り) ∞ 0.66 7.61
14* 18.859 3.00 1.69350 53.2 7.78
15* -22.431 0.75 7.65
16 20.099 0.65 1.84666 23.8 7.17
17 11.498 (可変) 6.87
18 18.290 2.75 1.61772 49.8 6.96
19 -7.944 0.55 1.92286 18.9 6.77
20 -12.727 (可変) 6.82
21 601.671 1.05 1.63980 34.5 5.12
22 -25.243 0.55 1.92286 18.9 4.88
23 -67.987 2.01 4.76
24 ∞ 1.80 1.51633 64.1 15.00
25 ∞

【0072】
非球面データ
第14面
K =-2.42964e+000 A 4=-6.45533e-005 A 6= 1.07667e-007 A 8=-1.69512e-008 A10= 1.27801e-010

第15面
K =-6.92139e-001 A 4= 1.91361e-005 A 6=-5.61584e-007

各種データ
ズーム比 69.91

広角 中間 望遠
焦点距離 1.94 22.20 135.62
Fナンバー 1.98 2.44 4.82
像高 1.15 1.15 1.15
レンズ全長 86.38 86.38 86.38
BF 5.46 5.46 5.46

間隔 広角 中間 望遠
d 5 1.11 29.51 36.61
d12 37.18 8.78 1.68
d17 10.05 3.84 12.36
d20 3.46 9.67 1.15

【0073】
【表1】

【符号の説明】
【0074】
L1…第1レンズ群 L2…第2レンズ群 L3…第3レンズ群
L4…第4レンズ群 L5…第5レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群より構成され、ズーミングに際して前記第2レンズ群と前記第4レンズ群が移動するズームレンズであって、
前記第3レンズ群と前記第5レンズ群の焦点距離を各々f3、f5、広角端における全系の焦点距離をfw、広角端における空気換算値でのバックフォーカスをbfとするとき、
5.0<f3/fw<18
0.0010<fw/f5<0.0155
1.2 <bf/fw<3.5
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
8.0<f1/fw<30.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第4レンズ群の焦点距離をf4、望遠端における全系の焦点距離をftとするとき、
0.4<f4/√(fw・ft)<1.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第5レンズ群は正レンズおよび負レンズを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第5レンズ群は正レンズと負レンズとを接合した接合レンズを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第1レンズ群は正レンズを有し、該正レンズの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdp、θgFpとするとき、
70<νdp
0.004<θgFp−(0.644−0.00168・νdp)<0.055
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のズームレンズと、該ズームレンズによって形成された像を受光する固体撮像素子を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
収差を電気的に補正する補正手段を有することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37063(P2013−37063A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170955(P2011−170955)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】