セラミックス回路基板及びその製造方法
【課題】回路パターン部とセラミックス基板との間に隙間が形成されており、且つ前記隙間にエッチング残渣が残るのを防止できる耐熱衝撃性に優れたセラミックス回路基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板1上に形成されたろう材パターン8,9と、前記ろう材パターン上に接合された回路パターン部と、を具備し、前記ろう材パターンは、前記回路パターン部の端部に沿ったろう材パターンを有し、前記セラミックス基板と前記回路パターン部との間には前記ろう材パターンの内側に位置する隙間が形成されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板1上に形成されたろう材パターン8,9と、前記ろう材パターン上に接合された回路パターン部と、を具備し、前記ろう材パターンは、前記回路パターン部の端部に沿ったろう材パターンを有し、前記セラミックス基板と前記回路パターン部との間には前記ろう材パターンの内側に位置する隙間が形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス回路基板及びその製造方法に係わり、特に、耐熱衝撃性に優れたセラミックス回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9〜図11は、従来のセラミックス回路基板の製造方法を示すものであり、図9は平面図であり、図10、図11は断面図である。
まず、図9に示すように、セラミックス基板1の表面上に、ろう材ペーストを円形点状に印刷した点状塗布ろう材2と、部分的にろう材を全面印刷した部分全面塗布部3を形成する。この部分全面塗布部3は半導体チップ等を搭載する半導体搭載部とされる。また、セラミックス回路基板1の裏面上に全面塗布ろう材6(図10に示す)を形成する。
【0003】
次に、図10に示すように、点状塗布ろう材2及び部分全面塗布部3の上に上部金属板4を配置すると共に、全面塗布ろう材6の上に下部金属板5を配置し、加熱炉中で830℃にて接合する。
【0004】
次いで、上部金属板4の表面及び下部金属板5それぞれの上にエッチングレジスト(図示せず)を形成し、このエッチングレジストをマスクとして上部金属板4、下部金属板5及び点状塗布ろう材2それぞれをエッチング液でエッチングする。これにより、上部金属板4、下部金属板5及び点状塗布ろう材2それぞれの不要部分を除去する。次いで、エッチングレジストを除去する。これにより、図11に示すように、セラミックス基板1上には上部金属板からなる回路パターン部7が形成され、セラミックス基板1の反対の面には放熱板等に接合(半田付け)するための下部金属板5が形成される(例えば特許文献1参照)。このような構成をとることで、従来の回路パターン部を全面接合した場合と比べ、耐熱衝撃性や通炉耐量に優れたセラミックス回路基板を得ることができる。なお、耐熱衝撃性をろう材の形状で改善しない従来のセラミックス回路基板としては、上記点状塗布ろう材2がなく全面にろう材を接合したものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−157055号公報(第16段落〜第19段落、図1〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のセラミックス回路基板の製造方法では、ろう材を全面印刷していない点状塗布ろう材2があるため、エッチングレジストをマスクとして上部金属板及び下部金属板それぞれをエッチング液でエッチングする際、前記点状塗布ろう材2の周囲における上部金属板4とセラミックス基板1との間の隙間にエッチング液が入り込み、エッチング液の残渣(エッチング残渣)が残ることがわかってきた。上部金属板とセラミックス基板との間の隙間は非常に狭いため、その隙間に入り込んだエッチング残渣を除去するのは非常に困難である。このようなエッチング残渣が残ると、回路パターン部7の絶縁性が低下して短絡の原因となったり、また回路パターン部7が腐食する原因となることがわかってきた。
なお、ろう材を全面印刷すると上記のような隙間がないためエッチング残渣は発生しないが、耐熱衝撃性が劣ることになる。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、金属板とセラミックス基板との間に隙間が形成されており、且つ前記隙間にエッチング残渣が残るのを防止できる耐熱衝撃性に優れたセラミックス回路基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記隙間が、前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれていることを特徴とする。
【0009】
上記セラミックス回路基板によれば、前記隙間が、セラミックス基板と、金属板と、ろう材パターンとで囲まれているため、エッチング液が前記隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
【0010】
本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンを有し、
前記隙間は、前記ろう材パターンの内側に位置することを特徴とする。
【0011】
上記セラミックス回路基板によれば、金属板の端部に沿ったろう材パターンを有するため、エッチング液が前記ろう材パターンの内側の金属板とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
尚、ここでいうろう材パターンは、その幅が一定でないものも含まれる。幅が一定でなくてもエッチング液が入り込むのを防止する効果が得られるからである。
【0012】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板が回路パターンであることも可能である。
【0013】
本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったラインパターンを有し、
前記セラミックス基板と前記金属板との間には前記ラインパターンの内側に位置する隙間が形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記セラミックス回路基板によれば、ろう材パターンが金属板に沿ったラインパターンを有するため、エッチング液が前記ラインパターンの内側の金属板とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
尚、ここでいうラインパターンは、その幅が一定でないものも含まれる。幅が一定でなくてもエッチング液が入り込むのを防止する効果が得られるからである。
【0015】
本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された回路パターン部と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記回路パターン部の端部に沿ったラインパターンを有し、
前記セラミックス基板と前記回路パターン部との間には前記ラインパターンの内側に位置する隙間が形成されていることを特徴とする。
【0016】
上記セラミックス回路基板によれば、ろう材パターンが回路パターン部に沿ったラインパターンを有するため、回路パターン部を形成する際に用いるエッチング液が前記ラインパターンの内側の回路パターン部とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
尚、ここでいうラインパターンは、その幅が一定でないものも含まれる。幅が一定でなくてもエッチング液が入り込むのを防止する効果が得られるからである。
【0017】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記ろう材パターンにおいて該ろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することも可能である。
【0018】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が0.05〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5mm、さらに好ましくは0.2〜1.0mmである。
【0019】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板にNi又はNi合金めっきが施されていることも可能である。
【0020】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が一定でないものを含むことも可能である。
【0021】
本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれた隙間を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなるパターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板からなるパターン部の端部に沿ったろう材パターンと該ろう材パターンの内側に位置する隙間を有することを特徴とする。
なお、上記本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、少なくとも次の二通りの製造方法を含むものである。
第1の製造方法は、セラミックス基板上に例えばスクリーン印刷によってろう材パターンを形成し、前記ろう材パターン上に金属板を接合し、前記金属板を選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成するものであり、この回路パターン部を形成した際に該回路パターン部の下以外にろう材パターンが存在しないものである。
第2の製造方法は、セラミックス基板上に例えばスクリーン印刷によってろう材パターンを形成し、前記ろう材パターン上に金属板を接合し、前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成するものであり、前記スクリーン印刷によって形成したろう材パターンは、前記セラミックス基板と前記回路パターン部との間に設ける隙間の部分のみろう材を印刷せず、それ以外は例えばセラミックス基板のほぼ全面にろう材を塗布したものである。即ち回路パターン間やその周辺にろう材を塗布し、絶縁を確保する等のために不要なろう材を除去する必要がある場合は、前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングする。
なお、第1の製造方法の場合も、例えばろう材が接合時に流れ出す(所定のろう材パターンからはみ出す)場合があるので、その場合は第2の製造方法のエッチングと同様、前記金属板とともに前記ろう材を除去することが好ましい。
【0023】
上記セラミックス回路基板の製造方法によれば、回路パターン部の端部に沿ったろう材パターンを有するため、金属板を選択的にエッチングする際に用いるエッチング液が前記ろう材パターンの内側の金属板とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
【0024】
また、本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法おいて、前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することも可能である。
【0025】
また、本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法において、前記ろう材パターンは、その幅が一定でないものを含むものである。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、金属板とセラミックス基板との間に隙間が形成されており、且つ前記隙間にエッチング残渣が残るのを防止できる耐熱衝撃性に優れたセラミックス回路基板及びその製造方法を提供することができる。さらには、端子や放熱板などを半田付けした際に、金属板の表面から金属板の側面を伝って隙間部に半田のまわりこみがないセラミックス回路基板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【0028】
まず、図1に示すように、大きさが例えば53mm×29mm×0.6mmのAlN基板からなるセラミックス基板1を準備する。尚、本実施の形態では、セラミックス基板1としてAlN基板を用いているが、これ以外の他のセラミックス基板、例えばAl2O3基板やSi3N4基板等を用いることも可能である。
また、セラミックス基板の厚さは、回路基板用として通常に使用されている0.1mm程度から3mm程度のものが利用できる。また、セラミックス基板のより好ましい厚さは、特に多く使用されている比較的安価な0.25〜1mm程度である。
【0029】
次いで、図1(A)に示すパターン形状の開口部を有する第1のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の表面上に第1のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の表面上にろう材パターン8,9が形成される。ろう材パターン8は、長方形をライン状に縁取りしたパターン形状であり、そのライン幅は例えば0.05〜2.0mmであることが好ましい。その理由は、ろう材のライン幅が0.05mmより小さいと、セラミックス基板と後工程で接合する金属板との接合強度が回路基板で必要とされるものよりも弱くなり剥がれたり、あるいは後述する金属板のエッチング工程でエッチング用レジストとろう材パターンに位置ズレが生じた場合にラインパターンが露出してしまい、端子などが金属板ではなくろう材であるラインパターンと接合した状態になる不具合が発生することがあるからである。また、2.0mmより大きいと接合強度が大きすぎ、ヒートサイクル後にセラミックス基板に大きな致命的なクラックが発生する場合があるからである。また、より好ましいライン幅は0.1〜1.5mmであり、さらに好ましいライン幅は0.2〜1.0mm、さらには0.2〜0.5mmである。なお、本実施の形態では、このようなライン状のろう材部分をラインパターンと称する。
ろう材パターン9は、部分的に全面塗布部9aを有し、他の部分は後に形成する所定の回路パターンの端部、即ちライン状に縁取りしたパターン形状からなるラインパターンである。この全面塗布部9aは例えば特に放熱を必要とする半導体チップ等を搭載する半導体搭載部とされる。また、図1(B)に示すパターン形状の開口部を有する第2のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の裏面上に第2のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の裏面上にろう材パターン10が形成される。ろう材パターン10は、セラミックス基板の裏面にほぼ全面塗布したパターン形状である。
なお、ろう材パターンは隙間部(即ち浮きパターン部)のみろう材を印刷しない以外は、セラミックス基板のほぼ全面に塗布しても良い。この場合後のエッチング工程で、金属板だけでなく、ろう材も薬液で除去して、回路パターンを形成すれば良い。
【0030】
次いで、ろう材パターン8,9を例えば100℃で30分間保持して乾燥させる。前記ろう材パターン8〜10の厚さは例えば約20μmであり、ろう材の組成は例えば72wt%Ag−26.5wt%Cu−1.5wt%Tiである。
ろう材としては、上記Ag-Cu-Ti系、Al-Si-Ti系などのセラミックスと金属の接合に使用される、いわゆる活性金属含有ろう材を用いることが好ましい。ろう材パターンの厚さは5〜30μm程度が好ましく、この厚さが後に形成されるセラミックス基板と金属回路板の隙間の大きさと略一致する。ろう材パターンの厚さが5μmより小さいとセラミックス基板と金属回路板の接合強度が弱く剥がれる恐れがあり、また30μmより大きいと接合強度が強すぎてセラミックス基板に大きな応力が発生し、耐熱衝撃性が劣化する恐れがあるからである。より好ましいろう材パターンの厚さは10〜25μmである。
【0031】
この後、図2(A),(B)に示すように、ろう材パターン8,9の上にCu板からなる上部金属板14を配置し、ろう材パターン10の上にCu板からなる下部金属板15を配置する。上部金属板14の厚さは例えば0.1〜1.0mm、好ましくは0.15〜0.5mmであり、下部金属板15の厚さは例えば0.1〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。
本願発明の回路基板の用途として、大電力素子を搭載するパワーモジュール用の回路基板が想定される。その場合、0.1mmより小さいと電力に対する容量が不足し、また1.0mmより大きいと回路基板の耐熱衝撃性が劣化する場合がある。よって、上記厚さの範囲が好ましい。
【0032】
次いで、図2に示した状態のセラミックス基板を真空加熱炉に導入し、850℃の温度で30分間保持する。これにより、上部金属板14はろう材パターン8,9に接合され、下部金属板15はろう材パターン10に接合される。即ち、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン8,9を介して上部金属板14が接合され、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン10を介して下部金属板15が接合される。
【0033】
次に、図3(A)に示すパターン形状の開口部を有する第3のスクリーン版(図示せず)を準備し、上部金属板14の表面上に第3のスクリーン版を配置し、エッチングレジスト材をスクリーン印刷する。これにより、上部金属板14の上にはエッチングレジスト11a,11bが形成される。次いで、エッチングレジスト11a,11bに紫外線を照射することにより、前記エッチングレジスト11a,11bが硬化される。このエッチングレジスト11aは、ろう材パターン8の外形とほぼ同じ形状の長方形パターンであり、ろう材パターン8上に配置されるものである。エッチングレジスト11bは、ろう材パターン9の外形とほぼ同じ形状のパターンであり、ろう材パターン9上に配置されるものである。
【0034】
また、図3(B)に示すパターン形状の開口部を有する第4のスクリーン版(図示せず)を準備し、下部金属板15の上に第4のスクリーン版を配置し、エッチングレジスト材をスクリーン印刷する。これにより、下部金属板15の上にはエッチングレジスト12が形成される。次いで、エッチングレジスト12に紫外線を照射することにより、前記エッチングレジスト12が硬化される。このエッチングレジスト12は、ろう材パターン10の外形とほぼ同じ形状のパターンであり、ろう材パターン10上に配置されるものである。
【0035】
この後、図4に示すように、エッチングレジスト11a,11b,12をマスクとして上部金属板14及び下部金属板15それぞれを例えば塩化銅と過酸化水素水の混合液からなるエッチング液又は塩化第二鉄を主成分とするエッチング液でエッチングする。これにより、上部金属板14及び下部金属板15それぞれの不要部分が溶解されて除去される。次いで、エッチングレジスト11a,11b,12を水酸化ナトリウム溶液で除去する。これにより、図4(A),(B)に示すように、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン8,9を介して上部金属板からなる回路パターン部17a,17bが形成され、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン10を介して下部金属板15が形成される。
【0036】
次に、必要に応じて回路パターン部17a,17b及び下部金属板15の表面に無電解Ni−Pメッキを施す(図示せず)。
このようにして製造されたセラミックス回路基板は、図4に示すような構造を有する。つまり、セラミックス基板1上にはろう材パターン8,9が形成されており、このろう材パターン8,9の上には回路パターン部17a,17bが接合されている。前記ろう材パターン8,9は、前記回路パターン部17a,17bの端部に沿ったラインパターン又は前記端部を縁取ったラインパターンを有している。尚、本実施の形態では、ラインパターンの幅を一定にしているが、ラインパターンの幅は必ずしも一定である必要はない。
【0037】
上記実施の形態1によれば、ろう材パターン8,9を、長方形等のパターン外形をライン状に縁取りしたパターンとしているため、エッチングレジスト11a,11bをマスクとして上部金属板14をエッチング液でエッチングした際、ろう材が存在することでろう材パターン8,9の内側に位置する回路パターン部17a,17bとセラミックス基板1との間の隙間にエッチング液が入り込むことを防止でき、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。従って、回路パターン部17a,17bの絶縁性の低下や短絡を抑制でき、また回路パターン部17a,17bの腐食を抑制できる。
【0038】
また、本実施の形態では、ろう材パターン8,9を、パターン外形を縁取りしたパターンとすることにより、回路パターン部17a,17bの内側にろう材を設けない部分(即ち浮きパターン)を形成している。このような回路パターン部とセラミックス基板との間のろう材を設けない部分があることによって、回路パターン部に熱衝撃が加えられた時にセラミックス基板に与える熱応力を小さくすることができる。従って、耐ヒートサイクル性を向上させることができる。このため、浮きパターンの回路板の表面には、端子など大きな熱応力を発生させる部材などを搭載することが好ましい。
浮きパターンの面積は4mm2以上が好ましい。4mm2より小さいと熱応力を緩和する効果が十分でないからである。さらに好ましくは9mm2以上である。
また、浮きパターン部の少なくとも1箇所はラインパターンに隣接することが好ましい。浮きパターンが直線を含む形状、たとえば略長方形の場合では、少なくとも1辺が前記ラインパターンに隣接することが好ましい。より好ましくは2辺が、さらに好ましくは3辺以上が前記ラインパターンに隣接することである。これはラインパターンに隣接することで、熱応力の緩和効果がよく得られるからである。
また、前記端子などの部材を搭載する部分である浮きパターンの回路板の表面(即ち半田付部)のみに隙間を形成しても良い。
また、セラミックス回路基板にヒートサイクルが加えられた後に、そのヒートサイクルによる破壊がセラミックス回路基板に発生したとしても、ろう材をラインパターンとし浮きパターンを形成することにより、その破壊がろう材のラインパターンとセラミックス基板との接合界面あるいはセラミックス基板のごく表層に発生するに止めることができ、セラミックス基板に致命的なクラックが入ることを抑制できる。致命的なクラックとは、セラミックス基板に表裏を貫通するものや、比較的深いクラック(板厚が0.6mmであれば、およそ0.2mm以上(板厚の約1/3以上))を示し、回路基板として基本的な特性である表裏の絶縁が破壊される、または絶縁破壊のおそれがあるものをいう。
【0039】
また、本実施の形態では、ろう材パターン8,9を、パターン外形を縁取りしたパターンとすることにより、回路パターン部17a,17bに端子を半田によって接続する際、半田が回路パターン部の下の隙間に回りこむことを防止できる。半田の回り込みにより、該端子の傾きが発生し、電子装置へのアセンブリに不具合を発生する恐れがある。
また、前記端子などの部材を半田付けする時にもその半田付け部分に対応するセラミックス基板に大きな熱応力が発生して、致命的なクラック発生の原因になるが、本実施の形態はこれも解決できる。
【0040】
(実施の形態2)
図5及び図6は、本発明の実施の形態2によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図であり、図1〜図4と同一部分には同一符号を付す。尚、本実施の形態が実施の形態1の異なる点は、ろう材パターン8,9に円形の点状パターンが付加されている点である。
【0041】
図5(A)に示すパターン形状の開口部を有する第1のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の表面上に第1のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の表面上にろう材パターン8,9が形成される。ろう材パターン8は、実施の形態1と同様の長方形をライン状に縁取りしたラインパターンに加え、そのラインパターンの内側に複数の円形の点状パターン8aを有するものである。ろう材パターン9は、実施の形態1と同様の全面塗布部9aとライン状に縁取りしたラインパターンに加え、そのラインパターンの内側に複数の円形の点状パターン9bを有するものである。前記点状パターン8a,9bの円の直径は0.1〜1mmであることが好ましい。その理由は、0.1mmより小さいと半田付け時等加熱された時に、浮きパターンがふくれる場合があり、また、1mmより大きいとヒートサイクル後にセラミックス基板に大きなクラックを発生させる恐れがあるからである。さらに好ましい円の直径は0.1〜0.5mmである。
また、前記点状パターンの間隔は、円の外周と外周の間で0.05〜1mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.65mm程度である。その理由は、0.05mmより小さいと間隔がせますぎ接合時に隣同士の円がつながる恐れがあり、またあまり円で接合された密度が大きいと隙間を設けることによる耐熱衝撃性が十分に得られない場合があるからである。また1mmより大きいと、円形接合部(即ち点状パターンと後述する金属板との接合部)の1個1個に発生する応力が大きくなり、耐熱衝撃性などが十分に得られないことがあるからである。なお、前記点状パターンの形状を円形から他の形状、例えば三角形又は四角形等に変更してもよいが、上記の円の場合の面積に相当する面積にすることが好ましい。
また、図5(B)に示すパターン形状の開口部を有する第2のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の裏面上に第2のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の裏面上にろう材パターン10が形成される。ろう材パターン10は、全面塗布したパターン形状である。
【0042】
次いで、ろう材パターン8,9を実施の形態1と同様に例えば100℃で30分間保持して乾燥させる。前記ろう材パターン8〜10の厚さ及びろう材の組成は実施の形態1と同様である。
【0043】
この後、実施の形態1と同様に、ろう材パターン8,9の上に上部金属板14を配置し、ろう材パターン10の上に下部金属板15を配置する。次いで、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板14をろう材パターン8,9に接合し、下部金属板15をろう材パターン10に接合する。
【0044】
次に、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板14及び下部金属板15それぞれをエッチングすることにより、図6(A),(B)に示すように、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン8,9を介して上部金属板からなる回路パターン部17a,17bが形成され、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン10を介して下部金属板15が形成される。
【0045】
次に、回路パターン部17a,17b及び下部金属板15の表面に無電解Ni−Pメッキを施す(図示せず)。
【0046】
上記実施の形態2においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、回路パターン部17a,17bが点状パターン8a,9bによって接合しているため、回路パターン部17a,17bに端子等を半田付けする時、半田付けの熱によって回路パターン部にふくれが発生することがわかってきたが、これを抑制できる。
ふくれの原因はわかっていないが、何らかの理由で水分あるいはろう材中の有機物などガス化するものが浮きパターン部に含有されていた、または金属板の熱膨張によるものと推測される。
【0047】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は裏面側の平面図であり、(B)は表面側の平面図であり、(C)は(A),(B)に示すC−C線に沿った断面図であり、図1〜図4と同一部分には同一符号を付す。尚、本実施の形態が実施の形態1の異なる点は、表面側及び裏面側それぞれのろう材パターンの形状である。
【0048】
図12(B)、(C)に示すろう材パターン21,22のパターン形状の開口部を有する第1のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の表面上に第1のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の表面上にろう材パターン21,22が形成される。ろう材パターン21は、全面塗布したパターン形状である。ろう材パターン22は第1及び第2の隙間部22a,22bを有しており、それ以外の部分は全面塗布したパターン形状である。
また、図12(A)、(C)に示すろう材パターンのパターン形状の開口部を有する第2のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の裏面上に第2のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の裏面上にろう材パターン23,23aが形成される。ろう材パターン23は実施の形態1と同様に長方形をライン状に縁取りしたラインパターンである。ろう材パターン23aは、ろう材パターン23の内側に全面塗布したパターン形状である。ろう材パターン23aとろう材パターン23との間には隙間部23bが設けられている。
【0049】
次いで、ろう材パターン21〜23,23aを実施の形態1と同様に例えば100℃で30分間保持して乾燥させる。前記ろう材パターン21〜23,23aの厚さ及びろう材の組成は実施の形態1と同様である。
【0050】
この後、実施の形態1と同様に、ろう材パターン21,22の上に上部金属板を配置し、ろう材パターン23,23aの上に下部金属板を配置する。次いで、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板をろう材パターン21,22に接合し、下部金属板をろう材パターン23,23aに接合する。
【0051】
次に、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板及び下部金属板それぞれをエッチングすることにより、図12(B)、(C)に示すように、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン21,22を介して上部金属板からなる回路パターン部17a,17bが形成され、図12(A)、(C)に示すように、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン23,23aを介して下部金属板15が形成される。
【0052】
次に、回路パターン部17a,17b及び下部金属板15の表面に無電解Ni−Pメッキを施す(図示せず)。
なお、前記第1及び第2の隙間部22a,22bが形成されている理由は、前記隙間部22a,22bそれぞれの上に位置する回路パターン部17bに外部と接続する端子(図示せず)を配置(半田付け)する際に耐熱衝撃性を得るためである。隙間部22aは略長方形の3辺以上、隙間部22bは略長方形の3辺がラインパターンに隣接している。
【0053】
上記実施の形態3によれば、ろう材パターン23を、長方形の下部金属板15の外形をライン状に縁取りしたパターンとしているため、上部金属板をエッチング液でエッチングした際、ろう材が存在することでろう材パターン23の内側に位置する下部金属板15とセラミックス基板1との間の隙間にエッチング液が入り込むことを防止でき、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。従って、実施の形態1,2と同様の作用で下部金属板15の腐食を抑制できる。
【0054】
また、本実施の形態では、ろう材パターン23を、下部金属板15の外形を縁取りしたパターンとすることにより、下部金属板15の内側にろう材を設けない部分(即ち隙間部23b)を形成している。このような下部金属板15とセラミックス基板1との間のろう材を設けない部分があることによって、下部金属板15に熱衝撃が加えられた時にセラミックス基板に与える熱応力を小さくすることができる。従って、耐ヒートサイクル性を向上させることができる。このため、下部金属板15の表面には、放熱板など大きな熱応力を発生させる部材などを(半田付等により)搭載したときも、耐熱衝撃特性が優れている。
【0055】
次に、表1に示すろう材印刷形状の実施例1〜15及び比較例1,4それぞれのサンプルについてのエッチング液のしみ込み、ヒートサイクル性、半田付け性に関する評価を行った。その評価方法及び評価結果について、表1、図7及び図8を参照しつつ説明する。
【0056】
【表1】
【0057】
図7は、実施例2のサンプル(セラミックス回路基板)のろう材パターンを示す平面図である。実施例2は、実施の形態2と同様の方法で、外形が32mm×18mm×0.6mmのAlN基板の表面上に、4つの角を丸く(R1)した長方形の外形を縁取るラインパターン21aと、そのラインパターンの内側に配置された複数の円形の点状パターン21bとからなるろう材パターンを形成し、このろう材パターンの上に該ろう材パターンと同様の外形を有し且つ外形が28mm×14mm×0.3mmで4つの角を丸く(R2)したCu板(図示せず)を接合したものである。前記ラインパターン21aの幅(縁取り幅)は0.5mmである。前記点状パターン21bの円の直径はφ0.6mmであり、点状パターン21bは格子状に配置されており、点状パターンの点(円)の中心と中心との間隔は0.85mmである。
なお、該AlN基板の裏面には表面と対称の位置に、外形が28mm×14mm×0.15mmで表面側のCu板と同形状のCu板が全面にろう材のある状態で接合されている(図示せず)。さらに、Cu板の上に無電界Ni−P合金めっきを3μm施した。
【0058】
実施例1は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.8mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0059】
実施例3は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.4mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0060】
図8は、実施例5のサンプル(セラミックス回路基板)のろう材パターンを示す平面図である。実施例5は、実施の形態1と同様の方法で、外形が32mm×18mm×0.6mmのAlN基板の表面上に4つの角を丸く(R1)した長方形の外形を縁取るラインパターンからなるろう材パターン21を形成し、このろう材パターン21の上に該ろう材パターンと同様の外形を有する外形が28mm×14mm×0.3mmで4つの角を丸く(R2)したCu板(図示せず)を接合したものである。前記ラインパターンの幅は、0.5mmである。
なお、該AlN基板の裏面には表面と対称の位置に、外形が28mm×14mm×0.15mmで表面側のCu板と同形状のCu板が全面にろう材のある状態で接合されている(図示せず)。さらに、Cu板の上に無電界Ni−P合金めっきを3μm施した。
【0061】
実施例4は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの幅を0.25mmとした点以外は実施例5と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0062】
実施例6は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0063】
実施例7は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.1mmとし、点状パターンの間隔を0.21mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0064】
実施例8は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとし、点状パターンの間隔を0.21mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0065】
実施例9は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.4mmとし、点状パターンの間隔を0.5mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0066】
実施例10は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.1mmとし、点状パターンの間隔を0.15mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0067】
実施例11は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとし、点状パターンの間隔を0.3mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0068】
実施例12は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.1mmとし、点状パターンの間隔を0.3mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でセラミックス回路基板を作製したものである。
【0069】
実施例13は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.5mmとし、点状パターンの間隔を0.85mmとし、縁取り幅を1.5mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
実施例14は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとし、点状パターンの間隔を0.3mmとし、縁取り幅を0.2mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
実施例15は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの内側に、ラインパターンに沿って幅2mmの(ろう材を塗布しない)隙間部を形成し、その内側の部分は全面ろう材を塗布して接合した以外は、実施例5と同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0070】
比較例1は、実施例6のサンプルにおけるラインパターンを無くし、点状パターンのみとした点以外は実施例6と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0071】
比較例2は、実施の形態1と同様の方法で、実施例5のサンプルにおけるラインパターンがなく、AlN基板の表面上に4つの角を丸くした長方形の全面塗布パターンからなるろう材パターンを形成し、このろう材パターンの上に該ろう材パターンと同様の形状のCu板(図示せず)を接合したサンプルである。
比較例3は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの幅を2.5mmとした点以外は実施例5と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
比較例4は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの幅を0.025mmとした点以外は実施例5と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0072】
(1)エッチング液のしみ込み
上記実施例1〜14及び比較例1〜4それぞれのセラミックス回路基板において、エッチング液のしみ込みの有無を調べた。その結果を下記及び表1に示す。
比較例1のセラミックス回路基板のCu板を引き剥がしてみると、Cu板の裏とAlN基板の表面に緑色の塩化銅と思われるエッチング残渣が付着しており、また、一部が銀色のNiメッキと思われるものが付着していた。このようなエッチング残渣等のコンタミはセラミックス回路基板の絶縁不良やCu板の腐食の原因となると考えられる。
実施例1〜14それぞれのセラミックス回路基板のCu板を引き剥がしたが、Cu板の裏やAlN基板の表面に上記のようなコンタミは無かった。
比較例2、3のセラミックス回路基板のCu板を引き剥がしてみたが、ろう材パターンが全面塗布パターンで浮きパターン(非接合部)が無いので、上記のようなコンタミは無かった。
比較例4においては、エッチングにおいて、ろう材パターンとレジストが少しずれたため、一部ラインパターンにも開口部が生じ、エッチング液のしみ込みがみられた。
【0073】
(2)ヒートサイクル試験及びそれによる破壊モード
上記実施例1〜14及び比較例1〜4それぞれのセラミックス回路基板に対してヒートサイクル試験を行った。1サイクルを、室温から−40℃まで冷却した後に、−40℃で30分間保持し、次に、−40℃から室温に戻した後に、室温で10分間保持し、次に室温から125℃まで加熱した後に、125℃で30分間保持し、次に、125℃から室温に戻した後に、室温で10分間保持することとした。100サイクル後、200サイクル後、300サイクル後のセラミックス回路基板の外観を目視で観察した。その結果を表1に示す。観察された破壊モードは、セラミックス破壊と接合界面(またはセラミックス基板表層部)での破壊の2種類であった。セラミックス破壊は、セラミックス基板でクラックが入ることであり、セラミックス基板表裏の絶縁破壊またはその可能性があるので好ましくない。接合界面(セラミックス基板表層部の破壊を含む)での破壊は、ろう材パターンとセラミックス基板との接合界面で剥がれが生じることであり、セラミックス基板表裏間の破壊は発生せず、機能的に問題になることはない。但し、最も好ましいのは、ヒートサイクル後の破壊が観察されないことである。
【0074】
(3)半田付け性における半田の回り込み
セラミックス回路基板のCu板の端部に、厚さ1mm、幅3mmの銅端子を半田付けし、その時の半田の回り込みを観察した。その結果を下記及び表1に示す。尚、ここで用いた半田は共晶半田箔であり、半田箔の上に銅端子を配置し230℃で1分間加熱した。
実施例1〜14及び比較例2それぞれのセラミックス回路基板はCu板の端部までろう材パターンに接合されているため、Cu板の裏側(即ちCu板とAlN基板との間の隙間)まで半田が回り込むことは無かった。比較例1のセラミックス回路基板は、Cu板とAlN基板との間の隙間に半田の回り込みが観察された。
【0075】
(4)半田付け性におけるフクレ発生
上記の半田付け時の熱処理条件をセラミックス回路基板に施した後に、Cu板がふくれているかを目視で観察した。問題となるほどのふくれは観察されなかったが、実施例4,5のセラミックス回路基板ではほんのわずかふくれているようにも見えた。
【0076】
尚、本発明は上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、ろう材の組成を種々変更することも可能である。
【0077】
また、上記実施の形態1,2では、Cu板からなる上部金属板及び下部金属板を用いているが、Cu板以外の金属板、例えばAl板、Cu合金板又はAl合金板からなる上部金属板及び下部金属板を用いることも可能である。また、ラインパターンは、その幅が一定でないものを含むものである。
【0078】
また、上記実施の形態2では、点状パターンの平面形状を円形としているが、点状パターンの平面形状を円形以外の形状、例えば楕円形、四角形、ひし形などとすることも可能である。
【0079】
また、上記実施の形態2では、ラインパターンの内側に点状パターンを配置しているが、ラインパターンの内側に点状パターン以外のパターン、例えばラインパターンを配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図7】実施例2によるセラミックス回路基板のろう材パターンを示す平面図である。
【図8】実施例5によるセラミックス回路基板のろう材パターンを示す平面図である。
【図9】従来のセラミックス回路基板の製造方法を示す平面図である。
【図10】従来のセラミックス回路基板の製造方法を示す断面図である。
【図11】従来のセラミックス回路基板の製造方法を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は裏面側の平面図であり、(B)は表面側の平面図であり、(C)は(A),(B)に示すC−C線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1…セラミックス基板
2…点状塗布ろう材
3…部分全面塗布部
4,14…上部金属板
5,15…下部金属板
6…全面塗布ろう材
7,17a,17b…回路パターン部
8,9,10…ろう材パターン
8a,9b,21b…点状パターン
9a…全面塗布部
11a,11b,12…エッチングレジスト
21…ろう材パターン
21a…ラインパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス回路基板及びその製造方法に係わり、特に、耐熱衝撃性に優れたセラミックス回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9〜図11は、従来のセラミックス回路基板の製造方法を示すものであり、図9は平面図であり、図10、図11は断面図である。
まず、図9に示すように、セラミックス基板1の表面上に、ろう材ペーストを円形点状に印刷した点状塗布ろう材2と、部分的にろう材を全面印刷した部分全面塗布部3を形成する。この部分全面塗布部3は半導体チップ等を搭載する半導体搭載部とされる。また、セラミックス回路基板1の裏面上に全面塗布ろう材6(図10に示す)を形成する。
【0003】
次に、図10に示すように、点状塗布ろう材2及び部分全面塗布部3の上に上部金属板4を配置すると共に、全面塗布ろう材6の上に下部金属板5を配置し、加熱炉中で830℃にて接合する。
【0004】
次いで、上部金属板4の表面及び下部金属板5それぞれの上にエッチングレジスト(図示せず)を形成し、このエッチングレジストをマスクとして上部金属板4、下部金属板5及び点状塗布ろう材2それぞれをエッチング液でエッチングする。これにより、上部金属板4、下部金属板5及び点状塗布ろう材2それぞれの不要部分を除去する。次いで、エッチングレジストを除去する。これにより、図11に示すように、セラミックス基板1上には上部金属板からなる回路パターン部7が形成され、セラミックス基板1の反対の面には放熱板等に接合(半田付け)するための下部金属板5が形成される(例えば特許文献1参照)。このような構成をとることで、従来の回路パターン部を全面接合した場合と比べ、耐熱衝撃性や通炉耐量に優れたセラミックス回路基板を得ることができる。なお、耐熱衝撃性をろう材の形状で改善しない従来のセラミックス回路基板としては、上記点状塗布ろう材2がなく全面にろう材を接合したものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−157055号公報(第16段落〜第19段落、図1〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のセラミックス回路基板の製造方法では、ろう材を全面印刷していない点状塗布ろう材2があるため、エッチングレジストをマスクとして上部金属板及び下部金属板それぞれをエッチング液でエッチングする際、前記点状塗布ろう材2の周囲における上部金属板4とセラミックス基板1との間の隙間にエッチング液が入り込み、エッチング液の残渣(エッチング残渣)が残ることがわかってきた。上部金属板とセラミックス基板との間の隙間は非常に狭いため、その隙間に入り込んだエッチング残渣を除去するのは非常に困難である。このようなエッチング残渣が残ると、回路パターン部7の絶縁性が低下して短絡の原因となったり、また回路パターン部7が腐食する原因となることがわかってきた。
なお、ろう材を全面印刷すると上記のような隙間がないためエッチング残渣は発生しないが、耐熱衝撃性が劣ることになる。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、金属板とセラミックス基板との間に隙間が形成されており、且つ前記隙間にエッチング残渣が残るのを防止できる耐熱衝撃性に優れたセラミックス回路基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記隙間が、前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれていることを特徴とする。
【0009】
上記セラミックス回路基板によれば、前記隙間が、セラミックス基板と、金属板と、ろう材パターンとで囲まれているため、エッチング液が前記隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
【0010】
本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンを有し、
前記隙間は、前記ろう材パターンの内側に位置することを特徴とする。
【0011】
上記セラミックス回路基板によれば、金属板の端部に沿ったろう材パターンを有するため、エッチング液が前記ろう材パターンの内側の金属板とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
尚、ここでいうろう材パターンは、その幅が一定でないものも含まれる。幅が一定でなくてもエッチング液が入り込むのを防止する効果が得られるからである。
【0012】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板が回路パターンであることも可能である。
【0013】
本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったラインパターンを有し、
前記セラミックス基板と前記金属板との間には前記ラインパターンの内側に位置する隙間が形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記セラミックス回路基板によれば、ろう材パターンが金属板に沿ったラインパターンを有するため、エッチング液が前記ラインパターンの内側の金属板とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
尚、ここでいうラインパターンは、その幅が一定でないものも含まれる。幅が一定でなくてもエッチング液が入り込むのを防止する効果が得られるからである。
【0015】
本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された回路パターン部と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記回路パターン部の端部に沿ったラインパターンを有し、
前記セラミックス基板と前記回路パターン部との間には前記ラインパターンの内側に位置する隙間が形成されていることを特徴とする。
【0016】
上記セラミックス回路基板によれば、ろう材パターンが回路パターン部に沿ったラインパターンを有するため、回路パターン部を形成する際に用いるエッチング液が前記ラインパターンの内側の回路パターン部とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
尚、ここでいうラインパターンは、その幅が一定でないものも含まれる。幅が一定でなくてもエッチング液が入り込むのを防止する効果が得られるからである。
【0017】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記ろう材パターンにおいて該ろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することも可能である。
【0018】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が0.05〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5mm、さらに好ましくは0.2〜1.0mmである。
【0019】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板にNi又はNi合金めっきが施されていることも可能である。
【0020】
また、本発明に係るセラミックス回路基板において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が一定でないものを含むことも可能である。
【0021】
本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれた隙間を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなるパターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板からなるパターン部の端部に沿ったろう材パターンと該ろう材パターンの内側に位置する隙間を有することを特徴とする。
なお、上記本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、少なくとも次の二通りの製造方法を含むものである。
第1の製造方法は、セラミックス基板上に例えばスクリーン印刷によってろう材パターンを形成し、前記ろう材パターン上に金属板を接合し、前記金属板を選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成するものであり、この回路パターン部を形成した際に該回路パターン部の下以外にろう材パターンが存在しないものである。
第2の製造方法は、セラミックス基板上に例えばスクリーン印刷によってろう材パターンを形成し、前記ろう材パターン上に金属板を接合し、前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成するものであり、前記スクリーン印刷によって形成したろう材パターンは、前記セラミックス基板と前記回路パターン部との間に設ける隙間の部分のみろう材を印刷せず、それ以外は例えばセラミックス基板のほぼ全面にろう材を塗布したものである。即ち回路パターン間やその周辺にろう材を塗布し、絶縁を確保する等のために不要なろう材を除去する必要がある場合は、前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングする。
なお、第1の製造方法の場合も、例えばろう材が接合時に流れ出す(所定のろう材パターンからはみ出す)場合があるので、その場合は第2の製造方法のエッチングと同様、前記金属板とともに前記ろう材を除去することが好ましい。
【0023】
上記セラミックス回路基板の製造方法によれば、回路パターン部の端部に沿ったろう材パターンを有するため、金属板を選択的にエッチングする際に用いるエッチング液が前記ろう材パターンの内側の金属板とセラミックス基板との間の隙間に入り込むことを防止できる。これにより、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。
【0024】
また、本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法おいて、前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することも可能である。
【0025】
また、本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法において、前記ろう材パターンは、その幅が一定でないものを含むものである。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、金属板とセラミックス基板との間に隙間が形成されており、且つ前記隙間にエッチング残渣が残るのを防止できる耐熱衝撃性に優れたセラミックス回路基板及びその製造方法を提供することができる。さらには、端子や放熱板などを半田付けした際に、金属板の表面から金属板の側面を伝って隙間部に半田のまわりこみがないセラミックス回路基板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【0028】
まず、図1に示すように、大きさが例えば53mm×29mm×0.6mmのAlN基板からなるセラミックス基板1を準備する。尚、本実施の形態では、セラミックス基板1としてAlN基板を用いているが、これ以外の他のセラミックス基板、例えばAl2O3基板やSi3N4基板等を用いることも可能である。
また、セラミックス基板の厚さは、回路基板用として通常に使用されている0.1mm程度から3mm程度のものが利用できる。また、セラミックス基板のより好ましい厚さは、特に多く使用されている比較的安価な0.25〜1mm程度である。
【0029】
次いで、図1(A)に示すパターン形状の開口部を有する第1のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の表面上に第1のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の表面上にろう材パターン8,9が形成される。ろう材パターン8は、長方形をライン状に縁取りしたパターン形状であり、そのライン幅は例えば0.05〜2.0mmであることが好ましい。その理由は、ろう材のライン幅が0.05mmより小さいと、セラミックス基板と後工程で接合する金属板との接合強度が回路基板で必要とされるものよりも弱くなり剥がれたり、あるいは後述する金属板のエッチング工程でエッチング用レジストとろう材パターンに位置ズレが生じた場合にラインパターンが露出してしまい、端子などが金属板ではなくろう材であるラインパターンと接合した状態になる不具合が発生することがあるからである。また、2.0mmより大きいと接合強度が大きすぎ、ヒートサイクル後にセラミックス基板に大きな致命的なクラックが発生する場合があるからである。また、より好ましいライン幅は0.1〜1.5mmであり、さらに好ましいライン幅は0.2〜1.0mm、さらには0.2〜0.5mmである。なお、本実施の形態では、このようなライン状のろう材部分をラインパターンと称する。
ろう材パターン9は、部分的に全面塗布部9aを有し、他の部分は後に形成する所定の回路パターンの端部、即ちライン状に縁取りしたパターン形状からなるラインパターンである。この全面塗布部9aは例えば特に放熱を必要とする半導体チップ等を搭載する半導体搭載部とされる。また、図1(B)に示すパターン形状の開口部を有する第2のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の裏面上に第2のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の裏面上にろう材パターン10が形成される。ろう材パターン10は、セラミックス基板の裏面にほぼ全面塗布したパターン形状である。
なお、ろう材パターンは隙間部(即ち浮きパターン部)のみろう材を印刷しない以外は、セラミックス基板のほぼ全面に塗布しても良い。この場合後のエッチング工程で、金属板だけでなく、ろう材も薬液で除去して、回路パターンを形成すれば良い。
【0030】
次いで、ろう材パターン8,9を例えば100℃で30分間保持して乾燥させる。前記ろう材パターン8〜10の厚さは例えば約20μmであり、ろう材の組成は例えば72wt%Ag−26.5wt%Cu−1.5wt%Tiである。
ろう材としては、上記Ag-Cu-Ti系、Al-Si-Ti系などのセラミックスと金属の接合に使用される、いわゆる活性金属含有ろう材を用いることが好ましい。ろう材パターンの厚さは5〜30μm程度が好ましく、この厚さが後に形成されるセラミックス基板と金属回路板の隙間の大きさと略一致する。ろう材パターンの厚さが5μmより小さいとセラミックス基板と金属回路板の接合強度が弱く剥がれる恐れがあり、また30μmより大きいと接合強度が強すぎてセラミックス基板に大きな応力が発生し、耐熱衝撃性が劣化する恐れがあるからである。より好ましいろう材パターンの厚さは10〜25μmである。
【0031】
この後、図2(A),(B)に示すように、ろう材パターン8,9の上にCu板からなる上部金属板14を配置し、ろう材パターン10の上にCu板からなる下部金属板15を配置する。上部金属板14の厚さは例えば0.1〜1.0mm、好ましくは0.15〜0.5mmであり、下部金属板15の厚さは例えば0.1〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmである。
本願発明の回路基板の用途として、大電力素子を搭載するパワーモジュール用の回路基板が想定される。その場合、0.1mmより小さいと電力に対する容量が不足し、また1.0mmより大きいと回路基板の耐熱衝撃性が劣化する場合がある。よって、上記厚さの範囲が好ましい。
【0032】
次いで、図2に示した状態のセラミックス基板を真空加熱炉に導入し、850℃の温度で30分間保持する。これにより、上部金属板14はろう材パターン8,9に接合され、下部金属板15はろう材パターン10に接合される。即ち、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン8,9を介して上部金属板14が接合され、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン10を介して下部金属板15が接合される。
【0033】
次に、図3(A)に示すパターン形状の開口部を有する第3のスクリーン版(図示せず)を準備し、上部金属板14の表面上に第3のスクリーン版を配置し、エッチングレジスト材をスクリーン印刷する。これにより、上部金属板14の上にはエッチングレジスト11a,11bが形成される。次いで、エッチングレジスト11a,11bに紫外線を照射することにより、前記エッチングレジスト11a,11bが硬化される。このエッチングレジスト11aは、ろう材パターン8の外形とほぼ同じ形状の長方形パターンであり、ろう材パターン8上に配置されるものである。エッチングレジスト11bは、ろう材パターン9の外形とほぼ同じ形状のパターンであり、ろう材パターン9上に配置されるものである。
【0034】
また、図3(B)に示すパターン形状の開口部を有する第4のスクリーン版(図示せず)を準備し、下部金属板15の上に第4のスクリーン版を配置し、エッチングレジスト材をスクリーン印刷する。これにより、下部金属板15の上にはエッチングレジスト12が形成される。次いで、エッチングレジスト12に紫外線を照射することにより、前記エッチングレジスト12が硬化される。このエッチングレジスト12は、ろう材パターン10の外形とほぼ同じ形状のパターンであり、ろう材パターン10上に配置されるものである。
【0035】
この後、図4に示すように、エッチングレジスト11a,11b,12をマスクとして上部金属板14及び下部金属板15それぞれを例えば塩化銅と過酸化水素水の混合液からなるエッチング液又は塩化第二鉄を主成分とするエッチング液でエッチングする。これにより、上部金属板14及び下部金属板15それぞれの不要部分が溶解されて除去される。次いで、エッチングレジスト11a,11b,12を水酸化ナトリウム溶液で除去する。これにより、図4(A),(B)に示すように、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン8,9を介して上部金属板からなる回路パターン部17a,17bが形成され、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン10を介して下部金属板15が形成される。
【0036】
次に、必要に応じて回路パターン部17a,17b及び下部金属板15の表面に無電解Ni−Pメッキを施す(図示せず)。
このようにして製造されたセラミックス回路基板は、図4に示すような構造を有する。つまり、セラミックス基板1上にはろう材パターン8,9が形成されており、このろう材パターン8,9の上には回路パターン部17a,17bが接合されている。前記ろう材パターン8,9は、前記回路パターン部17a,17bの端部に沿ったラインパターン又は前記端部を縁取ったラインパターンを有している。尚、本実施の形態では、ラインパターンの幅を一定にしているが、ラインパターンの幅は必ずしも一定である必要はない。
【0037】
上記実施の形態1によれば、ろう材パターン8,9を、長方形等のパターン外形をライン状に縁取りしたパターンとしているため、エッチングレジスト11a,11bをマスクとして上部金属板14をエッチング液でエッチングした際、ろう材が存在することでろう材パターン8,9の内側に位置する回路パターン部17a,17bとセラミックス基板1との間の隙間にエッチング液が入り込むことを防止でき、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。従って、回路パターン部17a,17bの絶縁性の低下や短絡を抑制でき、また回路パターン部17a,17bの腐食を抑制できる。
【0038】
また、本実施の形態では、ろう材パターン8,9を、パターン外形を縁取りしたパターンとすることにより、回路パターン部17a,17bの内側にろう材を設けない部分(即ち浮きパターン)を形成している。このような回路パターン部とセラミックス基板との間のろう材を設けない部分があることによって、回路パターン部に熱衝撃が加えられた時にセラミックス基板に与える熱応力を小さくすることができる。従って、耐ヒートサイクル性を向上させることができる。このため、浮きパターンの回路板の表面には、端子など大きな熱応力を発生させる部材などを搭載することが好ましい。
浮きパターンの面積は4mm2以上が好ましい。4mm2より小さいと熱応力を緩和する効果が十分でないからである。さらに好ましくは9mm2以上である。
また、浮きパターン部の少なくとも1箇所はラインパターンに隣接することが好ましい。浮きパターンが直線を含む形状、たとえば略長方形の場合では、少なくとも1辺が前記ラインパターンに隣接することが好ましい。より好ましくは2辺が、さらに好ましくは3辺以上が前記ラインパターンに隣接することである。これはラインパターンに隣接することで、熱応力の緩和効果がよく得られるからである。
また、前記端子などの部材を搭載する部分である浮きパターンの回路板の表面(即ち半田付部)のみに隙間を形成しても良い。
また、セラミックス回路基板にヒートサイクルが加えられた後に、そのヒートサイクルによる破壊がセラミックス回路基板に発生したとしても、ろう材をラインパターンとし浮きパターンを形成することにより、その破壊がろう材のラインパターンとセラミックス基板との接合界面あるいはセラミックス基板のごく表層に発生するに止めることができ、セラミックス基板に致命的なクラックが入ることを抑制できる。致命的なクラックとは、セラミックス基板に表裏を貫通するものや、比較的深いクラック(板厚が0.6mmであれば、およそ0.2mm以上(板厚の約1/3以上))を示し、回路基板として基本的な特性である表裏の絶縁が破壊される、または絶縁破壊のおそれがあるものをいう。
【0039】
また、本実施の形態では、ろう材パターン8,9を、パターン外形を縁取りしたパターンとすることにより、回路パターン部17a,17bに端子を半田によって接続する際、半田が回路パターン部の下の隙間に回りこむことを防止できる。半田の回り込みにより、該端子の傾きが発生し、電子装置へのアセンブリに不具合を発生する恐れがある。
また、前記端子などの部材を半田付けする時にもその半田付け部分に対応するセラミックス基板に大きな熱応力が発生して、致命的なクラック発生の原因になるが、本実施の形態はこれも解決できる。
【0040】
(実施の形態2)
図5及び図6は、本発明の実施の形態2によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図であり、図1〜図4と同一部分には同一符号を付す。尚、本実施の形態が実施の形態1の異なる点は、ろう材パターン8,9に円形の点状パターンが付加されている点である。
【0041】
図5(A)に示すパターン形状の開口部を有する第1のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の表面上に第1のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の表面上にろう材パターン8,9が形成される。ろう材パターン8は、実施の形態1と同様の長方形をライン状に縁取りしたラインパターンに加え、そのラインパターンの内側に複数の円形の点状パターン8aを有するものである。ろう材パターン9は、実施の形態1と同様の全面塗布部9aとライン状に縁取りしたラインパターンに加え、そのラインパターンの内側に複数の円形の点状パターン9bを有するものである。前記点状パターン8a,9bの円の直径は0.1〜1mmであることが好ましい。その理由は、0.1mmより小さいと半田付け時等加熱された時に、浮きパターンがふくれる場合があり、また、1mmより大きいとヒートサイクル後にセラミックス基板に大きなクラックを発生させる恐れがあるからである。さらに好ましい円の直径は0.1〜0.5mmである。
また、前記点状パターンの間隔は、円の外周と外周の間で0.05〜1mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.65mm程度である。その理由は、0.05mmより小さいと間隔がせますぎ接合時に隣同士の円がつながる恐れがあり、またあまり円で接合された密度が大きいと隙間を設けることによる耐熱衝撃性が十分に得られない場合があるからである。また1mmより大きいと、円形接合部(即ち点状パターンと後述する金属板との接合部)の1個1個に発生する応力が大きくなり、耐熱衝撃性などが十分に得られないことがあるからである。なお、前記点状パターンの形状を円形から他の形状、例えば三角形又は四角形等に変更してもよいが、上記の円の場合の面積に相当する面積にすることが好ましい。
また、図5(B)に示すパターン形状の開口部を有する第2のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の裏面上に第2のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の裏面上にろう材パターン10が形成される。ろう材パターン10は、全面塗布したパターン形状である。
【0042】
次いで、ろう材パターン8,9を実施の形態1と同様に例えば100℃で30分間保持して乾燥させる。前記ろう材パターン8〜10の厚さ及びろう材の組成は実施の形態1と同様である。
【0043】
この後、実施の形態1と同様に、ろう材パターン8,9の上に上部金属板14を配置し、ろう材パターン10の上に下部金属板15を配置する。次いで、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板14をろう材パターン8,9に接合し、下部金属板15をろう材パターン10に接合する。
【0044】
次に、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板14及び下部金属板15それぞれをエッチングすることにより、図6(A),(B)に示すように、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン8,9を介して上部金属板からなる回路パターン部17a,17bが形成され、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン10を介して下部金属板15が形成される。
【0045】
次に、回路パターン部17a,17b及び下部金属板15の表面に無電解Ni−Pメッキを施す(図示せず)。
【0046】
上記実施の形態2においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、回路パターン部17a,17bが点状パターン8a,9bによって接合しているため、回路パターン部17a,17bに端子等を半田付けする時、半田付けの熱によって回路パターン部にふくれが発生することがわかってきたが、これを抑制できる。
ふくれの原因はわかっていないが、何らかの理由で水分あるいはろう材中の有機物などガス化するものが浮きパターン部に含有されていた、または金属板の熱膨張によるものと推測される。
【0047】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は裏面側の平面図であり、(B)は表面側の平面図であり、(C)は(A),(B)に示すC−C線に沿った断面図であり、図1〜図4と同一部分には同一符号を付す。尚、本実施の形態が実施の形態1の異なる点は、表面側及び裏面側それぞれのろう材パターンの形状である。
【0048】
図12(B)、(C)に示すろう材パターン21,22のパターン形状の開口部を有する第1のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の表面上に第1のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の表面上にろう材パターン21,22が形成される。ろう材パターン21は、全面塗布したパターン形状である。ろう材パターン22は第1及び第2の隙間部22a,22bを有しており、それ以外の部分は全面塗布したパターン形状である。
また、図12(A)、(C)に示すろう材パターンのパターン形状の開口部を有する第2のスクリーン版(図示せず)を準備し、セラミックス基板1の裏面上に第2のスクリーン版を配置し、ペースト状のろう材をスクリーン印刷する。これにより、セラミックス基板1の裏面上にろう材パターン23,23aが形成される。ろう材パターン23は実施の形態1と同様に長方形をライン状に縁取りしたラインパターンである。ろう材パターン23aは、ろう材パターン23の内側に全面塗布したパターン形状である。ろう材パターン23aとろう材パターン23との間には隙間部23bが設けられている。
【0049】
次いで、ろう材パターン21〜23,23aを実施の形態1と同様に例えば100℃で30分間保持して乾燥させる。前記ろう材パターン21〜23,23aの厚さ及びろう材の組成は実施の形態1と同様である。
【0050】
この後、実施の形態1と同様に、ろう材パターン21,22の上に上部金属板を配置し、ろう材パターン23,23aの上に下部金属板を配置する。次いで、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板をろう材パターン21,22に接合し、下部金属板をろう材パターン23,23aに接合する。
【0051】
次に、実施の形態1と同様の方法で、上部金属板及び下部金属板それぞれをエッチングすることにより、図12(B)、(C)に示すように、セラミックス基板1の表面上にはろう材パターン21,22を介して上部金属板からなる回路パターン部17a,17bが形成され、図12(A)、(C)に示すように、セラミックス基板1の裏面上にはろう材パターン23,23aを介して下部金属板15が形成される。
【0052】
次に、回路パターン部17a,17b及び下部金属板15の表面に無電解Ni−Pメッキを施す(図示せず)。
なお、前記第1及び第2の隙間部22a,22bが形成されている理由は、前記隙間部22a,22bそれぞれの上に位置する回路パターン部17bに外部と接続する端子(図示せず)を配置(半田付け)する際に耐熱衝撃性を得るためである。隙間部22aは略長方形の3辺以上、隙間部22bは略長方形の3辺がラインパターンに隣接している。
【0053】
上記実施の形態3によれば、ろう材パターン23を、長方形の下部金属板15の外形をライン状に縁取りしたパターンとしているため、上部金属板をエッチング液でエッチングした際、ろう材が存在することでろう材パターン23の内側に位置する下部金属板15とセラミックス基板1との間の隙間にエッチング液が入り込むことを防止でき、前記隙間にエッチング残渣が残ることを防止できる。従って、実施の形態1,2と同様の作用で下部金属板15の腐食を抑制できる。
【0054】
また、本実施の形態では、ろう材パターン23を、下部金属板15の外形を縁取りしたパターンとすることにより、下部金属板15の内側にろう材を設けない部分(即ち隙間部23b)を形成している。このような下部金属板15とセラミックス基板1との間のろう材を設けない部分があることによって、下部金属板15に熱衝撃が加えられた時にセラミックス基板に与える熱応力を小さくすることができる。従って、耐ヒートサイクル性を向上させることができる。このため、下部金属板15の表面には、放熱板など大きな熱応力を発生させる部材などを(半田付等により)搭載したときも、耐熱衝撃特性が優れている。
【0055】
次に、表1に示すろう材印刷形状の実施例1〜15及び比較例1,4それぞれのサンプルについてのエッチング液のしみ込み、ヒートサイクル性、半田付け性に関する評価を行った。その評価方法及び評価結果について、表1、図7及び図8を参照しつつ説明する。
【0056】
【表1】
【0057】
図7は、実施例2のサンプル(セラミックス回路基板)のろう材パターンを示す平面図である。実施例2は、実施の形態2と同様の方法で、外形が32mm×18mm×0.6mmのAlN基板の表面上に、4つの角を丸く(R1)した長方形の外形を縁取るラインパターン21aと、そのラインパターンの内側に配置された複数の円形の点状パターン21bとからなるろう材パターンを形成し、このろう材パターンの上に該ろう材パターンと同様の外形を有し且つ外形が28mm×14mm×0.3mmで4つの角を丸く(R2)したCu板(図示せず)を接合したものである。前記ラインパターン21aの幅(縁取り幅)は0.5mmである。前記点状パターン21bの円の直径はφ0.6mmであり、点状パターン21bは格子状に配置されており、点状パターンの点(円)の中心と中心との間隔は0.85mmである。
なお、該AlN基板の裏面には表面と対称の位置に、外形が28mm×14mm×0.15mmで表面側のCu板と同形状のCu板が全面にろう材のある状態で接合されている(図示せず)。さらに、Cu板の上に無電界Ni−P合金めっきを3μm施した。
【0058】
実施例1は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.8mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0059】
実施例3は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.4mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0060】
図8は、実施例5のサンプル(セラミックス回路基板)のろう材パターンを示す平面図である。実施例5は、実施の形態1と同様の方法で、外形が32mm×18mm×0.6mmのAlN基板の表面上に4つの角を丸く(R1)した長方形の外形を縁取るラインパターンからなるろう材パターン21を形成し、このろう材パターン21の上に該ろう材パターンと同様の外形を有する外形が28mm×14mm×0.3mmで4つの角を丸く(R2)したCu板(図示せず)を接合したものである。前記ラインパターンの幅は、0.5mmである。
なお、該AlN基板の裏面には表面と対称の位置に、外形が28mm×14mm×0.15mmで表面側のCu板と同形状のCu板が全面にろう材のある状態で接合されている(図示せず)。さらに、Cu板の上に無電界Ni−P合金めっきを3μm施した。
【0061】
実施例4は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの幅を0.25mmとした点以外は実施例5と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0062】
実施例6は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0063】
実施例7は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.1mmとし、点状パターンの間隔を0.21mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0064】
実施例8は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとし、点状パターンの間隔を0.21mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0065】
実施例9は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.4mmとし、点状パターンの間隔を0.5mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0066】
実施例10は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.1mmとし、点状パターンの間隔を0.15mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0067】
実施例11は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとし、点状パターンの間隔を0.3mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0068】
実施例12は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.1mmとし、点状パターンの間隔を0.3mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でセラミックス回路基板を作製したものである。
【0069】
実施例13は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.5mmとし、点状パターンの間隔を0.85mmとし、縁取り幅を1.5mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
実施例14は、図7に示す実施例2のサンプルにおける点状パターンの円の直径をφ0.2mmとし、点状パターンの間隔を0.3mmとし、縁取り幅を0.2mmとした点以外は実施例2と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
実施例15は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの内側に、ラインパターンに沿って幅2mmの(ろう材を塗布しない)隙間部を形成し、その内側の部分は全面ろう材を塗布して接合した以外は、実施例5と同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0070】
比較例1は、実施例6のサンプルにおけるラインパターンを無くし、点状パターンのみとした点以外は実施例6と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0071】
比較例2は、実施の形態1と同様の方法で、実施例5のサンプルにおけるラインパターンがなく、AlN基板の表面上に4つの角を丸くした長方形の全面塗布パターンからなるろう材パターンを形成し、このろう材パターンの上に該ろう材パターンと同様の形状のCu板(図示せず)を接合したサンプルである。
比較例3は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの幅を2.5mmとした点以外は実施例5と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
比較例4は、図8に示す実施例5のサンプルにおけるラインパターンの幅を0.025mmとした点以外は実施例5と全く同様の方法でサンプルを作製したものである。
【0072】
(1)エッチング液のしみ込み
上記実施例1〜14及び比較例1〜4それぞれのセラミックス回路基板において、エッチング液のしみ込みの有無を調べた。その結果を下記及び表1に示す。
比較例1のセラミックス回路基板のCu板を引き剥がしてみると、Cu板の裏とAlN基板の表面に緑色の塩化銅と思われるエッチング残渣が付着しており、また、一部が銀色のNiメッキと思われるものが付着していた。このようなエッチング残渣等のコンタミはセラミックス回路基板の絶縁不良やCu板の腐食の原因となると考えられる。
実施例1〜14それぞれのセラミックス回路基板のCu板を引き剥がしたが、Cu板の裏やAlN基板の表面に上記のようなコンタミは無かった。
比較例2、3のセラミックス回路基板のCu板を引き剥がしてみたが、ろう材パターンが全面塗布パターンで浮きパターン(非接合部)が無いので、上記のようなコンタミは無かった。
比較例4においては、エッチングにおいて、ろう材パターンとレジストが少しずれたため、一部ラインパターンにも開口部が生じ、エッチング液のしみ込みがみられた。
【0073】
(2)ヒートサイクル試験及びそれによる破壊モード
上記実施例1〜14及び比較例1〜4それぞれのセラミックス回路基板に対してヒートサイクル試験を行った。1サイクルを、室温から−40℃まで冷却した後に、−40℃で30分間保持し、次に、−40℃から室温に戻した後に、室温で10分間保持し、次に室温から125℃まで加熱した後に、125℃で30分間保持し、次に、125℃から室温に戻した後に、室温で10分間保持することとした。100サイクル後、200サイクル後、300サイクル後のセラミックス回路基板の外観を目視で観察した。その結果を表1に示す。観察された破壊モードは、セラミックス破壊と接合界面(またはセラミックス基板表層部)での破壊の2種類であった。セラミックス破壊は、セラミックス基板でクラックが入ることであり、セラミックス基板表裏の絶縁破壊またはその可能性があるので好ましくない。接合界面(セラミックス基板表層部の破壊を含む)での破壊は、ろう材パターンとセラミックス基板との接合界面で剥がれが生じることであり、セラミックス基板表裏間の破壊は発生せず、機能的に問題になることはない。但し、最も好ましいのは、ヒートサイクル後の破壊が観察されないことである。
【0074】
(3)半田付け性における半田の回り込み
セラミックス回路基板のCu板の端部に、厚さ1mm、幅3mmの銅端子を半田付けし、その時の半田の回り込みを観察した。その結果を下記及び表1に示す。尚、ここで用いた半田は共晶半田箔であり、半田箔の上に銅端子を配置し230℃で1分間加熱した。
実施例1〜14及び比較例2それぞれのセラミックス回路基板はCu板の端部までろう材パターンに接合されているため、Cu板の裏側(即ちCu板とAlN基板との間の隙間)まで半田が回り込むことは無かった。比較例1のセラミックス回路基板は、Cu板とAlN基板との間の隙間に半田の回り込みが観察された。
【0075】
(4)半田付け性におけるフクレ発生
上記の半田付け時の熱処理条件をセラミックス回路基板に施した後に、Cu板がふくれているかを目視で観察した。問題となるほどのふくれは観察されなかったが、実施例4,5のセラミックス回路基板ではほんのわずかふくれているようにも見えた。
【0076】
尚、本発明は上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、ろう材の組成を種々変更することも可能である。
【0077】
また、上記実施の形態1,2では、Cu板からなる上部金属板及び下部金属板を用いているが、Cu板以外の金属板、例えばAl板、Cu合金板又はAl合金板からなる上部金属板及び下部金属板を用いることも可能である。また、ラインパターンは、その幅が一定でないものを含むものである。
【0078】
また、上記実施の形態2では、点状パターンの平面形状を円形としているが、点状パターンの平面形状を円形以外の形状、例えば楕円形、四角形、ひし形などとすることも可能である。
【0079】
また、上記実施の形態2では、ラインパターンの内側に点状パターンを配置しているが、ラインパターンの内側に点状パターン以外のパターン、例えばラインパターンを配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に示すB−B線に沿った断面図である。
【図7】実施例2によるセラミックス回路基板のろう材パターンを示す平面図である。
【図8】実施例5によるセラミックス回路基板のろう材パターンを示す平面図である。
【図9】従来のセラミックス回路基板の製造方法を示す平面図である。
【図10】従来のセラミックス回路基板の製造方法を示す断面図である。
【図11】従来のセラミックス回路基板の製造方法を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3によるセラミックス回路基板の製造方法を示す図であり、(A)は裏面側の平面図であり、(B)は表面側の平面図であり、(C)は(A),(B)に示すC−C線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1…セラミックス基板
2…点状塗布ろう材
3…部分全面塗布部
4,14…上部金属板
5,15…下部金属板
6…全面塗布ろう材
7,17a,17b…回路パターン部
8,9,10…ろう材パターン
8a,9b,21b…点状パターン
9a…全面塗布部
11a,11b,12…エッチングレジスト
21…ろう材パターン
21a…ラインパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記隙間が、前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれていることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項2】
セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンを有し、
前記隙間は、前記ろう材パターンの内側に位置することを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記金属板が回路パターンであることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記ろう材パターンにおいて該ろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が0.05〜2mmであることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が0.1〜1.5mmであることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記金属板にNi又はNi合金めっきが施されていることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が一定でないものを含むことを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項9】
セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれた隙間を有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項10】
セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記回路パターン部の端部に沿ったろう材パターンと該ろう材パターンの内側に位置する隙間を有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至11において、前記ろう材パターンは、その幅が一定でないものを含むものであることを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項1】
セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記隙間が、前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれていることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項2】
セラミックス基板上に形成されたろう材パターンと、
前記ろう材パターン上に接合された金属板と、
前記セラミックス基板と前記接合された金属板の間の隙間と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンを有し、
前記隙間は、前記ろう材パターンの内側に位置することを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記金属板が回路パターンであることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記ろう材パターンにおいて該ろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が0.05〜2mmであることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が0.1〜1.5mmであることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記金属板にNi又はNi合金めっきが施されていることを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの幅が一定でないものを含むことを特徴とするセラミックス回路基板。
【請求項9】
セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記セラミックス基板と、前記金属板と、前記ろう材パターンとで囲まれた隙間を有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項10】
セラミックス基板上にろう材パターンを形成する工程と、
前記ろう材パターン上に金属板を接合する工程と、
前記金属板、または前記金属板と前記ろう材パターンを選択的にエッチングすることにより、前記ろう材パターン上に該金属板からなる回路パターン部を形成する工程と、
を具備し、
前記ろう材パターンは、前記回路パターン部の端部に沿ったろう材パターンと該ろう材パターンの内側に位置する隙間を有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記ろう材パターンは、前記金属板の端部に沿ったろう材パターンの内側に配置された前記隙間に点状パターンを有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至11において、前記ろう材パターンは、その幅が一定でないものを含むものであることを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−279035(P2006−279035A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58589(P2006−58589)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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