説明

セラミック基板の製造方法

【課題】焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成することができる、セラミック基板の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)未焼成セラミック基板本体の少なくとも一方主面に、基板本体の焼成温度では実質的に焼結しない基材中に基板本体の焼成温度以下で焼結する主成分金属材料及び基板本体の焼成中に酸化・膨張する添加金属材料を含んだ未焼成突起電極用パターンを有する拘束層を密着してなる未焼成複合積層体を形成し、(2)拘束層の基材は実質的に焼結せず、基板本体及び主成分金属材料を焼結させ、添加金属材料を酸化・膨張させ得る温度・雰囲気のもとで、未焼成複合積層体を焼成し、(3)拘束層の基材を除去して、焼結済みセラミック基板本体16の一方主面に主成分金属材料の焼結体中に添加金属材料の酸化物18xを含有する突起電極18を有するセラミック基板15を取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の製造方法に関し、詳しくは、一方主面に突起電極をするセラミック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層セラミック基板をより多機能化、高密度化、高性能化するためには、多層セラミック基板において高密度に配線を形成することが有効である。しかしながら、多層セラミック基板を得るための焼成工程では、多層セラミック基板の収縮を伴う上、収縮のばらつきも避け難い。そのため、収縮、特に平面方向での収縮及びそのばらつきは、多層セラミック基板における配線の高密度化を阻害する要因となっている。このような背景の下、多層セラミック基板を得るための焼成工程において、平面方向での収縮を抑制できる、いわゆる無収縮プロセスが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
無収縮プロセスでは、セラミック材料を含む複数の基板用セラミックグリーンシートが用意されるとともに、基板用セラミックグリーンシートの焼成温度では焼結しないセラミックを含む収縮抑制用セラミックグリーンシートが用意される。そして、複数の基板用セラミックグリーンシートを積層してなる未焼成の基板用積層体を例えば挟むように、収縮抑制用セラミックグリーンシートが配置された、複合積層体が作製され、この複合積層体に対して焼成工程が適用される。
【0004】
この焼成工程においては、基板用積層体を多層セラミック基板とするように、基板用積層体のみが焼結され、収縮抑制用セラミックグリーンシートは未焼結の状態で収縮抑制用支持体として存在し、これによる基板用積層体の焼成収縮を抑制する力、すなわち拘束力を基板用積層体に作用させることによって、基板用積層体の平面方向での収縮が抑制される。
【0005】
このように、無収縮プロセスによれば、基板用積層体の平面方向での収縮が生じにくいため、得られた多層セラミック基板の平面方向での寸法精度を高めることができ、したがって、多層セラミック基板における配線を有利に高密度化することが可能になる。
【0006】
このような多層セラミック基板の両主面にコンデンサ、抵抗、IC等の部品を実装し、それをプリント配線基板に実装すれば、高密度化が容易となる。このとき、多層セラミック基板とプリント配線基板との間に所定の間隔を確保して、多層セラミック基板のプリント配線基板に対向する側の主面に実装した部品がプリント配線基板と干渉しないようにするため、多層セラミック基板のプリント配線基板側の主面に、柱状の突起電極を設けることが考えられる。
【0007】
例えば、収縮抑制用セラミックグリーンシートの特定のものに穴を設け、該穴にAgを主成分とした導電性ペーストを充填する。導体パターン及びビアを有した基板用セラミックグリーンシートを積層して、多層セラミック基板となるべき未焼成の基板用積層体を用意する。この未焼成の基板用積層体の一方の主面上に、穴に導電性ペーストを充填した収縮抑制用セラミックグリーンシートを積層し、さらに他方の主面に、穴のない収縮抑制用セラミックグリーンシートを積層して、複合積層体を作製する。この複合積層体を焼成することで、特定の収縮抑制用セラミックグリーンシートの穴に充填された導電性ペーストを焼結させた突起電極を、多層セラミック基板の一方主面に設けることができる(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−111223号公報
【特許文献2】特開平7−202422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようにして多層セラミック基板に突起電極を設けると、収縮を拘束する収縮抑制用セラミックグリーンシートが焼成中に収縮しないのに対して、突起電極を形成するAg等の焼結による収縮率が80〜95%と比較的大きいことから、突起電極形成中の焼結に伴う収縮抑制用セラミックグリーンシートの基材と突起電極との収縮率の相違に起因して突起電極内部に大きな空隙、亀裂が生じ、その結果、突起電極と基板本体のビア等を良好に接続させておくことができなくなるばかりか、焼成後に収縮抑制用セラミックグリーンシートの基材を除去するときに、突起電極がウェットブラスト等による外力で容易に折れてしまうことがある。
【0009】
また、多層セラミック基板の一方主面に突起電極を設けるために特定の収縮抑制用セラミックグリーンシートの穴に充填される導電性ペーストは、複合積層体の焼成時に焼結して収縮するため、突起電極には、先端に凹み(ひけ)が生じたり、特定の収縮抑制用セラミックグリーンシートの各層の界面において隙間が形成され、いわゆる口開きが生じたりすることがある。
【0010】
すなわち、図12(a)に示すように、基板用セラミックグリーンシートを積層した未焼成の基板用積層体110の両主面に未焼成の収縮抑制用セラミックグリーンシートの拘束層120,122を有する複合積層体100において、一方の拘束層122が、穴に導電性ペーストを充填して突起電極となる部分130が形成された未焼成の収縮抑制用セラミックグリーンシート121と穴のない未焼成の収縮抑制用セラミックグリーンシート123とからなる場合、この複合積層体100を焼成すると、突起電極となる部分130は、その側面132と先端面134とが拘束された状態で焼成収縮するので、焼成後には、図12(b)に示すように、突起電極となる部分130を形成した収縮抑制用セラミックグリーンシートの界面で、いわゆる口開き136が生じることがある。
【0011】
また、図13(a)に示すように、基板用セラミックグリーンシートを積層した未焼成の基板用積層体110の両主面に未焼成の収縮抑制用セラミックグリーンシートの拘束層120,124を有する複合積層体102において、一方の拘束層124が、穴に導電性ペーストを充填して突起電極となる部分130が形成された未焼成の収縮抑制用セラミックグリーンシート121のみからなる場合、この複合積層体102を焼成すると、突起電極となる部分130は、その側面132のみが拘束された状態で焼成収縮するので、焼成後には、図13(b)に示すように、突起電極となる部分130の先端に、いわゆる凹み(ひけ)138が生じることがある。
【0012】
突起電極の先端の凹みや中間位置での口開きは、多層セラミック基板をプリント配線基板に実装する際に、接続不良等の不具合の原因となる。
【0013】
本発明は、かかる実情に鑑み、焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成することができる、セラミック基板の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したセラミック基板の製造方法を提供する。
【0015】
セラミック基板の製造方法は、第1、第2及び第3の工程を備える。前記第1の工程において、未焼成セラミック基板本体の少なくとも一方主面に、前記未焼成セラミック基板本体の焼成温度では実質的に焼結しない基材中に前記未焼成セラミック基板本体の焼成温度以下の温度で焼結する主成分金属材料及び前記未焼成セラミック基板本体の焼成中に酸化・膨張する副成分金属材料(以下、「添加金属材料」という。)を含んだ未焼成突起電極用パターンを有する拘束層を密着してなる未焼成複合積層体を形成する。前記第2の工程において、前記拘束層の前記基材は実質的に焼結せず、前記未焼成セラミック基板本体及び前記未焼成突起電極用パターンに含まれる前記主成分金属材料を焼結させ、前記添加金属材料を酸化・膨張させ得る温度・雰囲気のもとで、前記未焼成複合積層体を焼成する。前記第3の工程において、前記拘束層の前記基材を除去して、前記未焼成セラミック基板本体の焼成により形成された焼結済みセラミック基板本体の前記一方主面に、前記主成分金属材料の焼結体中に前記添加金属材料の酸化物を含有する焼成後の突起電極を有するセラミック基板を取り出す。
【0016】
上記方法によれば、第2の工程において、未焼成突起電極用パターンは、その中に含まれる主成分金属が焼成の際に収縮しても、添加金属材料が酸化・膨張する。したがって、焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成することができる。
【0017】
なお、突起電極は、略円柱や略角柱などの柱状であることが好ましいが、頭を切った略円錐や略角錐(略円錐台や略角錐台)、略半球などの形状とすることも可能である。
【0018】
好ましくは、前記添加金属材料は、前記焼成後の前記突起電極のうち前記添加金属材料の前記酸化物が0.05〜20体積%を占めるようになる割合で、前記第1の工程において前記未焼成突起電極用パターンに含まれている。
【0019】
この場合、突起電極に含まれる添加金属材料の酸化物の割合を適切にすることができる。すなわち、突起電極中において添加金属材料の酸化物の含有率が0.05体積%未満であると、焼成の際に拘束層の基材と未焼成突起電極用パターンとの収縮量の相違が大きくなり、突起電極の内部に大きな空隙や、亀裂が生じることがある。突起電極中において添加金属材料の酸化物の含有率が20体積%を越えると、突起電極の焼結が極端に抑制されるため、突起電極が脆くなり、拘束層の基材除去のブラスト洗浄時に突起電極が折れてしまうばかりか、突起電極の導通抵抗が極端に大きくなる。突起電極中において添加金属材料の酸化物の含有率が0.05〜20体積%であれば、このような問題が生じない。
【0020】
好ましくは、前記第1の工程において、前記添加金属材料の平均粒径が0.1〜5.0μmφである。
【0021】
この場合、突起電極に含まれる添加金属材料の粒径を適切にすることができる。すなわち、添加金属材料の平均粒径が0.1μmφ未満であると、添加金属材料の粉末の比表面積が大きくなりすぎるため、ごく低温(たとえば200℃以下)で酸化・膨張してしまい、突起電極が膨張し、周囲の拘束層にクラックが入ってしまう可能性がある。拘束層にクラックが入ってしまうと、十分に拘束力が作用しなくなってしまう。添加金属材料の平均粒子径が5.0μmφを越えると、添加金属材料の粉末がその内部まで十分に酸化しにくくなり、酸化膨張による効果が得られにくくなってしまう。添加金属材料の平均粒径が0.1〜5.0μmφであれば、上記のような問題が生じない。
【0022】
好ましくは、前記主成分金属材料は銀である。前記添加金属材料は、タングステン、マンガン、鉄、ニッケル及びクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種類である。
【0023】
タングステン、マンガン、鉄、ニッケル及びクロムは、銀の体積減少が始まるのと略同じ温度で、顕著に酸化・膨張し始める。したがって、これらの金属材料は、焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成するのに好適である。
【0024】
好ましくは、前記主成分金属材料は、前記未焼成突起電極用パターンのうち80〜98重量%を占めている。
【0025】
この場合、突起電極に含まれる主成分金属材料の割合を適切にすることができる。すなわち、主成分金属材料が未焼成突起電極用パターンのうち80重量%未満の場合、未焼成突起用パターン中の主成分金属材料の含有量が少なくなるため、拘束層の基材による拘束力の影響で突起電極の内部に大きな空隙が生成してしまい、導通抵抗が大きくなるばかりか、せん断応力に対して弱くなり、最悪、突起電極が折れてしまうことがある。主成分金属材料が未焼成突起電極用パターンのうち98重量%より多くなると、突起電極用パターン中の主成分金属の含有量が多くなるため、主成分金属とセラミック基板本体との熱膨張差の影響を受け易く、焼成後の冷却に伴う突起電極とセラミック基板本体との収縮量の相違に起因して、突起電極に大きな熱応力が印加されるとともに、この熱応力によって、セラミック基板本体の表面と突起電極18との間に大きな亀裂が生じ、その結果、突起電極とセラミック基板本体の導体パターンやビアとを良好に電気的に接続させておくことができなくなることがある。主成分金属材料が未焼成突起電極用パターンのうち80〜98%であれば、上記のような問題が生じない。
【0026】
好ましくは、前記第1の工程において、複数の前記拘束層の前記基材にそれぞれ設けられた前記未焼成突起電極用パターンを連接するとともに、前記複数の拘束層のうち少なくとも2つの拘束層における前記未焼成突起電極用パターン中の前記添加金属材料の含有量を互いに異ならせる。前記焼成後の前記突起電極は、連接された前記未焼成突起電極用パターンの焼成により形成される。
【0027】
この場合、拘束層によって添加金属材料の酸化物形成材料の割合を変えることで、突起電極の金属酸化物を所望の分布とすることができる。
【0028】
好ましい一態様としては、前記第1の工程において複数の前記拘束層の前記未焼成突起電極用パターン中に含まれる前記添加金属材料の前記含有量は、前記未焼成セラミック基板本体に近い側において前記添加金属材料の割合が多くなるように選択されている。
【0029】
この場合、突起電極の基端側において、焼成時の収縮を抑制することができる。
【0030】
好ましい他の態様としては、前記第1の工程において複数の前記拘束層の前記未焼成突起電極用パターン中に含まれる前記添加金属材料の前記含有量は、前記未焼成セラミック基板本体から遠い側において前記添加金属材料の割合が多くなるように選択されている。
【0031】
この場合、突起電極の先端側において、焼成時の収縮を抑制することができる。
【0032】
好ましく、前記第3の工程において、前記焼成後の前記突起電極は前記焼結済みセラミック基板本体の前記一方主面の周縁に沿って配置されている。突起付き電極の製造方法は、前記焼結済みセラミック基板本体の前記一方主面において前記焼成後の前記突起電極に囲まれた領域に、第1の実装部品を搭載する第4の工程をさらに備える。
【0033】
この場合、セラミック基板をプリント配線基板に実装したときに、突起電極によってプリント配線基板との間に間隔を設けるようにして、セラミック基板に搭載された第1の実装部品をセラミック基板とプリント配線基板との間に配置し、保護することができる。
【0034】
より好ましくは、前記第4の工程は、前記焼結済みセラミック基板本体の他方主面に第2の実装部品を搭載する工程を含む。
【0035】
この場合、セラミック基板には、より高密度に実装部品を搭載することができる。
【0036】
好ましくは、前記未焼成セラミック基板本体は、積層された複数の未焼成セラミック層を含む。前記未焼成セラミック基板本体の内部に、層間接続電極用パターン及び面内電極用パターンを有する。
【0037】
この場合、基板本体の内部に電気回路を形成して、実装密度を高めることができる。
【0038】
好ましくは、前記添加金属材料の表面は、前記添加金属材料とは異なる金属材料、非金属無機材料あるいは有機材料のコーティング材料でコーティングされている。
【0039】
添加金属材料の表面を上記のようなコーティング材料でコーティングすることにより、第2の工程において、主成分金属材料の体積減少に合わせて、添加金属材料の酸化・膨張の開始のタイミング等を調節でき、焼成時の収縮を精度よく抑制しながら突起電極を形成することができる。
【0040】
より好ましくは、前記コーティング材料は、前記主成分金属材料と同一の材料である。
【0041】
この場合、焼成後の突起電極中において、主成分金属材料及び添加金属材料以外の材料、すなわち、主成分金属材料の焼結を促進したり、阻害するような他の材料が介在しないので、突起電極の焼結の均一性を犠牲にすることなく、焼成時の収縮を精度よく抑制しながら、強度の高い突起電極を形成することができる。
【0042】
また、本発明は、以下のように構成したセラミック基板を提供する。
【0043】
セラミック基板は、セラミック基板本体の少なくとも一方主面に突起電極を有する。前記突起電極は、前記セラミック基板本体と同時焼成によって形成され、主成分金属材料の焼結体中に、焼成の際に酸化・膨張した添加金属材料の酸化物を含有する。
【0044】
上記構成によれば、突起電極中に含まれる主成分金属が焼成の際に収縮しても、添加金属材料が酸化・膨張するので、焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成することができる。
【0045】
なお、突起電極は、略円柱や略角柱などの柱状であることが好ましいが、頭を切った略円錐や略角錐(略円錐台や略角錐台)、略半球などの形状とすることも可能である。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成することができる。これによって、強度や電気特性などの点で良好は突起電極を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図11を参照しながら説明する。
【0048】
(実施例1) 図1〜図5、図11を参照しながら、セラミック基板の製造方法について、説明する。
【0049】
まず、図1に示すように、基材層10用のセラミックグリーンシート11a〜11dと、拘束層20,22用のセラミックグリーンシート21a〜21d;23a〜23dを用意する。
【0050】
基材層10用のセラミックグリーンシート11a〜11dは、セラミック材料を用いて作製する。具体的には、CaO(10〜55重量%)、SiO(45〜70重量%)、Al(0〜30重量%)、不純物(0〜l0重量%)、B(5〜20重量%)からなる組成のガラス粉末50〜64重量%と、不純物が0〜10重量%のAl粉末35〜50重量%からなる混合物を、有機溶剤、可塑剤等からなる有機ビヒクル中に分散させ、スラリーを調製する。次いで、得られたスラリーをドクターブレード法やキャスティング法でシート状に成形し、未焼結ガラスセラミックのセラミックグリーンシートを作製する。
【0051】
なお、基材層10は、複数のセラミックグリーンシートを積層する代わりに、1枚のセラミックグリーンシートのみで構成してもよい。
【0052】
また、基材層10には、上述したシート成形法により形成した未焼結ガラスセラミックのセラミックグリーンシートを用いることが好ましいが、厚膜印刷法により形成した未焼結の厚膜印刷層を用いてもよい。
【0053】
また、セラミック粉末は上述した絶縁体材料のほか、フェライト等の磁性体材料、チタン酸バリウム等の誘電体材料を使用することもできるが、基材層10用のセラミックグリーンシートとしては1050℃以下の温度で焼結する低温焼結セラミックグリーンシートが好ましく、このため、上述したガラス粉末は750℃以下の軟化点を有するものであることが好ましい。
【0054】
次いで、未焼結ガラスセラミックのセラミックグリーンシートに、層間接続電極用パターン(ビア導体、スルーホール導体)となるビアパターン13a〜13dと、表面の導体パターンとなる導体パターン12aや、面内電極用パターンとなる導体パターン12b〜12dを形成する。ビアパターン13a〜13dは、未焼結ガラスセラミックグリーンシートにパンチング加工やレーザー加工等により加工した貫通孔に、導体材料粉末を有機バインダや溶剤とともに混練してペースト化した導電性ペーストを、例えば印刷により埋め込む。導体パターン12a〜12dは、導体材料粉末を有機バインダや溶剤とともに混練してペースト化した導電性ペーストを、例えばスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷するか、あるいは所定パターン形状の金属箔を転写する等の方法で形成する。導電性ペーストの材料については、後述する。
【0055】
なお、表面の導体パターンには、上下の層間の導体パターン同士を接続するためのビア導体やスルーホール導体等の貫通導体が表面に露出した部分も含まれる。
【0056】
拘束層20,22用のセラミックグリーンシート21a〜21d;23a〜23dは、基材層10用のセラミックグリーンシート11a〜11dの焼成温度では実質的に焼結しないアルミナ等のセラミック粉末を基材に用い、有機バインダ、有機溶剤、可塑剤等からなる有機ビヒクル中に基材を分散させてスラリーを調製し、得られたスラリーをドクターブレード法やキャスティング法等に基づいてシート状に成形することにより作製する。拘束層20,22用のセラミックグリーンシート21a〜21d;23a〜23dの焼結温度は、例えば1400〜1600℃であり、基材層10用の未焼結ガラスセラミックグリーンシートの焼結温度では実質的に焼結しない。
【0057】
後述する突起電極18を形成する目的で、パンチング加工やレーザー加工等により拘束層22用のセラミックグリーンシートに形成した貫通孔に、後述する導電性ペーストを印刷等により埋め込むことによって、未焼成の突起電極用パターン25a〜25cを有する拘束層22用のセラミックグリーンシート23a〜23cを形成する。
【0058】
なお、拘束層20,22も、1枚のセラミックグリーンシートのみで構成してもよい。
【0059】
ここで、拘束層20,22に用いるセラミック粉末の平均粒径は0.1〜5.0μmが好ましい。セラミック粉末の平均粒径が0.1μm未満であると未焼結ガラスセラミックシートの表層近傍に含有しているガラスと焼成中に激しく反応して、焼成後にセラミック層と拘束層が強固に密着して拘束層の除去が困難になったり、小粒径のために拘束層用セラミックグリーンシートはもちろん、未焼結ガラスセラミックグリーンシート中のバインダ等有機成分が焼成中に分解飛散しにくくなり、基板中にデラミネーションが発生したりすることがある。他方、5.0μmを超えると焼成収縮の抑制力が小さくなって基板が必要以上に平面方向に収縮したりうねったりする傾向にある。
【0060】
また、拘束層20,22を構成するセラミック粉末は、基材層10のセラミックグリーンシート11a〜11dの焼成温度では実質的に焼結しないセラミック粉末であればよく、アルミナのほか、ジルコニアやマグネシア等のセラミック粉末も使用できる。
【0061】
拘束層20,22の拘束力を基材層10に十分作用させるためには、基材層10の表層領域にガラスを多く存在させることが好ましい。そのためには、基材層10の表層と拘束層20,22との接触している境界で、表層のガラスが拘束層20,22に対して好適に濡れる必要があるので、拘束層20,22を構成するセラミック粉末は、基材層10を構成するセラミック粉末と同種のセラミック粉末であることが好ましい。
【0062】
基材層10の導体パターン12a〜12dやビアパターン13a〜13d、拘束層22の突起電極用パターン25a〜25cに用いる導電性ペーストは、ペースト中の導体材料としては、低抵抗で難酸化性材料であるAgを主成分としたものが好ましい。
【0063】
拘束層22の突起電極用パターン25a〜25cに用いる導電性ペーストには、焼成後に、図6(B)に示すように突起電極18中に金属酸化物18xを内在させるため、主成分金属材料のAg以外に、W、Mn、Fe、Ni、Cr等の副成分金属材料(以下、「添加金属材料」という。)を少なくとも1種類以上添加する。
【0064】
ペースト中の主成分金属材料Agの体積減少(ネッキング開始)は、大体500℃から始まるが、添加金属材料のW、Mn、Fe、Ni、Crは、大体500℃から顕著に酸化・膨張し始めるものであり、Agを主とする突起電極が焼結する際の体積減少を、添加金属材料の酸化膨張により、タイミング良く、カバーすることができる。その結果、その焼成中の体積変化を極めて小さくできる。
【0065】
ところで、FeやNiは、室温でも、空気中に放置しておくと酸化する。しかし、この酸化は極めて遅く、実質的には表面しか酸化されない。つまり、表面が多少酸化されたとしても、焼成時の酸化膨張は十分に起こる。すなわち、添加金属材料は、焼成温度では、表面のみならず、内部まで酸化される。
【0066】
具体的には、添加金属材料の結晶中に酸素が入ることにより、その結晶構造が変化して、格子定数も変化し、その結果、体積が大きくなる。
【0067】
ちなみに、タングステン(W)は体心立方格子構造をとるものであり、格子定数は3.156Åである。粉末では、おおよそ300℃で酸化が始まり、おおよそ500℃で急激に反応して、酸化タングステンになる。酸化タングステンは、歪んだ酸化レニウム型構造(Wを中心として6つのOを頂点とする正八面体型構造)をとり、その格子定数は5.560Åである。その酸化物は、WOと書く場合もあり、WOと書く場合もある。
【0068】
マンガン(Mn)は立方晶系構造をとるものであり、格子定数は8.894Åである。空気中で酸化されやすく、酸化すると酸化マンガン(Mn)となる。酸化マンガンも立方晶系構造をとるが、その格子定数は9.408Åである。
【0069】
鉄(Fe)は、体心立方格子構造をとるものであり、格子定数は2.8665Åである。酸素と親和力が強く、酸化すると酸化鉄(Fe)をつくる。酸化鉄(Fe)は逆スピネル型構造をとり、格子定数は8.391Åである。
【0070】
ニッケル(Ni)は面心立方格子構造をとり、格子定数は3.5241Åである。酸化すると酸化ニッケル(NiO)となり、これは立方晶系食塩型構造である。格子定数は4.1946Åである。
【0071】
なお、主成分金属材料Agの焼成温度以上で酸化が始まる金属(例えば、パラジウム)や、焼成温度以下の融点を持つ金属(例えば、アルミニウム)は、添加金属材料としては使用が困難である。
【0072】
添加金属材料の平均粒径は、0.1〜5.0μmφが好適である。より好ましくは、0.5〜2.0μmφである。添加金属材料の粒径が0.1μmφ未満であると、金属粉末の比表面積が大きくなりすぎるため、ごく低温(たとえば200℃以下)で酸化・膨張してしまい、突起電極が膨張し、周囲の拘束層にクラックが入ってしまう可能性がある。拘束層にクラックが入ってしまうと、十分に拘束力が作用しなくなってしまう。また、その粒径が5.0μmφを超えると、金属粉末がその内部まで十分に酸化しにくくなり、酸化膨張による効果が得られにくくなってしまう。
【0073】
酸化膨張のタイミングを好適にコントロールするために、タングステン、マンガン、鉄、ニッケル等の添加金属の表面をコーティングしておくことが好ましい。突起電極の主成分金属材料の体積減少が始まる以前の温度(主成分金属材料がAgの場合、500℃以下の低温)で酸化膨張し始めてしまうと、その酸化膨張により拘束層が基材層にきちんと密着しなくなってしまい、拘束力が十分に作用しなくなるおそれがあるからである。なお、添加金属材料をコーティングするための材料としては、金属材料、非金属無機材料、有機材料など、様々な材料を利用することができるが、特に、導電性ペーストの主成分金属材料(ここではAg)と同じ材料をコーティング材料として利用することが有利である。焼結を促進したり、阻害するような他の成分が存在しない方が、突起電極の焼結の均一性が向上するからである。
【0074】
添加金属材料の添加量は、焼成後の突起電極に占める割合が0.05体積%〜20.0体積%であることが好ましい。Wなどの添加金属材料は突起電極形成中に酸化して体積膨張するために、突起電極の焼結による収縮を好適に抑制することができるが、0.05体積%未満の場合、突起電極用パターン25a〜25cの焼成により形成された突起電極18の単位体積に対して金属酸化物18xの含有率が0.05体積%未満となり、突起電極形成中の焼結による収縮を好適に抑制することができないため、突起電極形成中の焼結に伴う拘束層と突起導体との収縮量の相違に起因して、突起電極内部に空隙、亀裂が生じることがある。また、Wなどの添加金属材料の添加量が20.0体積%より多くなると、突起電極18の単位体積に対して金属酸化物18xの含有率が20.0体積%より多くなり、突起電極の焼結が極端に抑制されるため、突起電極が脆くなり、拘束層除去のブラスト洗浄時に突起電極が折れてしまうばかりか、導電抵抗が大きくなるので、突起電極18に通電した際、この部分で失われる電力が極めて大となる不都合を生じることがある。
【0075】
導電性ペーストは、上記の主成分粉末に対して、所定の割合で有機バインダ、溶剤等の有機ビヒクルを所定量加え、攪拌、混練することにより作製することができる。ただし、主成分粉末、添加成分粉末、有機ビヒクルなどの配合の順序には特に制約はない。
【0076】
なお、導電性ペースト中に含まれるAgの含有量は、80重量%〜98重量%が好ましい。
【0077】
80重量%未満の場合、拘束層22用のセラミックグリーンシートに形成した貫通孔へのAgの充填量が少なくなるため、相対的に有機成分の割合が多くなり、拘束層22用のセラミックグリーンシートによる拘束力の影響により、突起電極18の内部に大きな空隙が生成してしまい、突起電極18は、導通抵抗が大きくなるばかりか、せん断応力に対して弱くなり、最悪、突起電極18が折れてしまうことがある。
【0078】
一方、98重量%より多くなると、拘束層22用のセラミックグリーンシート23a〜23cの突起電極用パターン25a〜25c中のAg含有量が多くなるため、Agとセラミックグリーンシートの基材(セラミック)との熱膨張差の影響を受け易く、前述の厚膜手法によって形成すると、突起電極形成後の冷却に伴う基材層10と突起電極18との収縮量の相違に起因して、突起電極18に大きな熱応力が印加されるとともに、この熱応力によって、基材層10の表面と突起電極18との間に亀裂が生じ、その結果、突起電極18と基材層10の導体パターンやビアとを良好に接続させておくことが難しくなる可能性がある。
【0079】
よって、導電性ペースト中に含まれるAgの含有量は80重量%〜98重量%が好ましく、望ましくは85重量%〜95重量%の範囲にあるのがより好ましい。
【0080】
なお、主成分粉末であるAg粉末は、粗大粉末や極端な凝集粉末がなく、導電性ペーストとした後の最大粗粒の粒径が50μm以下になるようにすることが望ましい。
【0081】
また、有機ビヒクルはバインダ樹脂と溶剤を混合したものであり、バインダ樹脂としては、例えばエチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂などを使用することが可能である。
【0082】
また、溶剤としては、例えばターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、アルコール類などを使用することが可能である。
【0083】
また、必要に応じて、各種の分散剤、可塑剤、活性剤などを添加してもよい。
【0084】
また、導電性ペーストの粘度は、印刷性を考慮して、50〜700Pa・sとすることが望ましい。
【0085】
基材層10の導体パターン12a〜12dやビアパターン13a〜13dには、W等の金属が添加されている突起電極用パターン25a〜25cに用いる導電性ペーストと同じものを使用することができるが、W等の金属が添加されていないものを使用しても構わない。
【0086】
次いで、図2に示すように、セラミックグリーンシート11a〜11dを有する基材層10の一方主面に、拘束層22用のセラミックグリーンシート23a〜23dを重ね合わせ、また他方主面においては、突起電極用パターンのない拘束層20用のセラミックグリーンシート21a〜21dを重ね合わせ、例えば5〜200MPaの圧力下にて、静水圧プレス等に基づき、圧着する。これによって、基材層10の両主面に拘束層20,22を有する複合積層体14を作製する。
【0087】
なお、基材層10の一方主面に、突起電極用パターン25a〜25cを有する拘束層22用のセラミックグリーンシート23a〜23cのみを重ね合わせ、突起電極用パターンのない拘束層22用のセラミックグリーンシート23dをなくしてもよい。逆に、基材層10の一方主面に、突起電極用パターン25a〜25cを有する拘束層22用のセラミックグリーンシート23a〜23cを重ね合わせ、さらに2枚以上の突起電極用パターンのない拘束層22用のセラミックグリーンシート23dを重ね合わせてもよい。
【0088】
拘束層20,22の厚みは、それぞれ、25〜1000μmが好ましい。拘束層20,22の厚みが25μm未満であると、焼成収縮の抑制力が小さくなって基材層10が必要以上に平面方向に収縮したりうねったりすることがあり、他方、1000μmを超えると、基材層10のセラミックグリーンシート11a〜11d中のバインダ等の有機成分が焼成中に分解飛散しにくく、基材層10中にデラミネーションが発生する傾向にある。
【0089】
次いで、図3に示すように、複合積層体14を、周知のベルト炉やバッチ炉で、基材層10のセラミックグリーンシート11a〜11dの焼成温度、例えば800〜1050℃で焼成して、基材層10のセラミックグリーンシート11a〜11dを焼結させる。焼成雰囲気は、大気もしくは必要に応じて窒素、水素及び水等を焼成中に導入しても構わない。焼成時の雰囲気は、全焼成工程において酸化性雰囲気(代表的には空気)とするのが一般的であるが、例えば700〜800℃くらいまでを酸化性雰囲気で行い、それ以上の温度域を非酸化性雰囲気としても構わない。
【0090】
次いで、焼成後の複合積層体14から拘束層20,22の基材を除去することによって、図4に示すように、焼成済みの基材層10すなわち基板本体16の一方主面に、突起電極用パターン25a〜25cの焼成により形成された突起電極18が設けられたセラミック基板15を取り出す。
【0091】
なお、焼成後の複合積層体14において、拘束層20,22は、突起電極18を除き、実質的に焼結しておらず、また、焼成前に含まれていた有機成分が飛散し、多孔質の状態になっているため、サンドブラスト法、ウェットブラスト法、超音波振動法等により容易に除去することができる。
【0092】
このようにして得られたセラミック基板は、突起電極に金属酸化物が内在することで、突起電極中に存在する金属酸化物が突起電極形成中に焼結による収縮を抑制するため、拘束層と突起導体との収縮量の相違が少なくなるため、突起電極内部に空隙、亀裂が生じなくなり、その結果、突起電極とビアを良好に接続させておくことが可能となり、拘束層除去時のウェットブラスト等による外力においても容易に突起電極が折れてしまうようなことがなくなる。
【0093】
次いで、図5に示すように、セラミック基板15の基板本体16の両主面の表面電極17a,17bに、積層セラミックコンデンサ等の受動部品30をはんだ31で実装し、バンプ電極を有するIC32をはんだボール33を介してフリップチップボンディングし、ボンディングワイヤー35によりIC34をワイヤーボンディングしたりして、複合セラミック基板40を形成する。
【0094】
なお、IC34は、図11に示すように、セラミック基板15の基板本体16の一方主面において、周縁に沿って形成されている突起電極18で囲まれた領域19内に搭載する。IC34は、必要に応じて、樹脂で封止してもよい。
【0095】
複合セラミック基板40は、図6(A)に示すように、プリント配線基板50のパッド電極52に、突起電極18の先端18s側をはんだ54で接続する。
【0096】
図6(B)の拡大図に模式的に示したように、突起電極18の内部には、金属の焼結体の中に金属酸化物18xが所定の割合で分散している。
【0097】
突起電極18に金属酸化物18xが内在することで、焼成後の冷却時に拘束層20,22の基材と突起電極用パターン25a〜25cとの収縮量の相違に起因して突起電極18中に大きな亀裂(いわゆる口開き、あるいは凹み)が発生するのを抑制し、その結果、突起電極18の強度向上、耐めっき性向上、導通抵抗低減が可能となる。
【0098】
(変形例) 図7〜図10を参照しながら、突起電極中に含まれる金属酸化物の割合(含有率)に傾斜を持たせる変形例について説明する。
【0099】
W等の添加金属材料の混合量が異なる導電性ペーストを夫々の貫通孔に充填した突起電極用パターンを有する未焼成の拘束層用セラミックグリーンシートを複数枚用意し、適宜に組み合わせて、未焼成の基材層10の一方主面に重ね合わせることにより、突起電極の金属酸化物を、所望の分布とすることができる。
【0100】
例えば図7に示す突起電極18aのように、基端18t側において金属酸化物18xが多くなるようにする。この場合、基板本体16と突起電極18aとの間の剥がれが発生しにくくなるほか、拘束層22用のセラミックグリーンシート23aと23bとの界面で突起電極18a中の口開きを抑制することができる。また、このように、金属酸化物が傾斜組成で分散していると、各拘束用グリーンシート間でのデラミネーションが少なくなる。
【0101】
図8に示す突起電極18bのように、先端18s側において金属酸化物18xが多くなるようにしてもよい。この場合、拘束層22用のセラミックグリーンシート23bと23cとの界面での突起電極18b中の口開きを抑制することができる。
【0102】
また、図9及び図10の突起電極18c,18dのように、金属酸化物18xが間欠的に分布するようにしてもよい。この場合、拘束層の各シートの突起電極用パターンに、金属の添加金属材料を含有する導電性ペーストと、金属の添加金属材料を含有しない導電性ペーストとを交互に用いる。
【0103】
この場合、金属の添加金属材料を含有する導電性ペーストには、全ての突起電極用パターンを同じ導電性ペーストを用いて形成する場合よりも金属の添加金属材料の含有量を多くして、金属の添加金属材料を含有しない導電性ペーストを用いた突起電極用パターンの焼成時の収縮を補うようにすることが好ましい。
【0104】
また、金属の添加金属材料を含有しない導電性ペーストは、基材層10のセラミックグリーンシート11a〜11dの導体パターン12a〜12dやビアパターン13a〜13dに用いるものと同じとすることができる。すなわち、突起電極において口開きが生じやすいところ、言い換えると、突起電極の焼成収縮力が拘束層の拘束力との差に起因する応力が集中しやすいところに金属酸化物を多く形成することが望ましい。
【0105】
(具体例) 次に、セラミック基板を作製した具体例について説明する。
【0106】
まず、40重量部のアルミナ粉末と、60重量部のSiO(60重量%)−B(8重量%)−Al(6重量%)−CaO(26重量%)系ガラス粉末(軟化点:700℃)とを、アクリルからなる有機バインダ、トルエン及びイソプロピレンアルコールからなる有機溶剤及びジ−n−ブチルフタレートからなる可塑剤を含んだ有機ビヒクル中に分散させ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーをドクターブレード法でシート成形し、未焼結ガラスセラミック層用セラミックグリーンシートを作製した。
【0107】
また、上記の未焼結ガラスセラミック層用セラミックグリーンシートの焼成温度では実質的に焼結しないアルミナ粉末(平均粒径:0.4μm)をポリビニルブチラールからなる有機バインダ、トルエン及びイソプロピレンアルコールからなる有機溶剤及びジ−n−ブチルフタレートからなる可塑剤を含んだ有機ビヒクル中に分散させ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーをドクターブレード法でシート成形し、厚み100μmの拘束層用セラミックグリーンシートを作製した。なお、この拘束層用セラミックグリーンシートの焼結温度は1600℃である。
【0108】
また導電性ペーストとして、Agを主成分としてペースト中の金属の添加金属材料の含有量が後掲の表1に示すような量に調整して、それぞれエチルセルロース樹脂1重量%とターピネオールを混合して粘度が約200Pa・sになるように作製した。なお、Agの含有量は、85重量%とした。
【0109】
次いで、所定サイズの未焼結ガラスセラミック層用セラミックグリーンシートにパンチングによって200μmφのビア、拘束層用のセラミックグリーンシートには600μm×600μmのビアをほぼ等間隔となるように形成し、上記導電性ペーストを印刷によって充填した。なお、ビア及び貫通孔の数は、それぞれ1000個とした。
【0110】
次いで、導体パターンが形成された未焼結ガラスセラミック層用セラミックグリーンシートの一方主面に充填済み貫通孔ありの拘束層用のセラミックグリーンシートを重ね合わせ、また他方主面においては貫通孔無しの拘束層用のセラミックグリーンシートを重ね合わせ、l00MPaの圧力にて圧着することにより、未焼結ガラスセラミック層用セラミックグリーンシートの両主面に拘束層用セラミックグリーンシートを有した突起電極評価用ガラスセラミックグリーンシート複合積層体を作製した。
【0111】
次いで、得られた複合積層体を、750℃まで大気中(酸素濃度10000ppm以上)で、750℃〜900℃〜750℃まで窒素を導入し、850℃〜900℃の範囲の酸素濃度が1000ppm以下になるようにして未焼結ガラスセラミック層を焼結した。その後、10×10Paの圧力でのウェットブラスト法により、焼成後の複合積層体から多孔質状態にある拘束層を除去して、ガラスセラミック基板を取り出した。
【0112】
このようにして得られた突起電極評価用ガラスセラミック基板について、10〜50倍の倍率の実体顕微鏡で突起電極の形状を観察し、折れた数を調べた。その測定結果を下記表1に示す。
【表1】

【0113】
表1から、突起電極の折れ数が1000個中5個未満になるようなセラミック基板を得るためには、いずれの添加金属材料も0.05〜20.0体積%の範囲になるようにすることが必要であることが分かる。
【0114】
これに対して、導電性ペースト中の添加金属材料の含有量が0.05体積%未満になるとブラスト洗浄時に突起電極が1000個中5個以上折れてしまった。これは突起電極形成において焼結が抑制されなかったために突起電極内部に大きな空隙ができたしまったからである。また、導体ペースト中の添加金属材料の含有量が20.0体積%より多くなり、突起電極の焼結が不十分になってしまい、その結果、ブラスト洗浄時に突起電極が折れやすくなってしまった。
【0115】
(まとめ) 以上に説明したように、突起電極を形成するための導電性ペースト中に金属の添加金属材料を含有させることにより、焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成することができる。
【0116】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施可能である。
【0117】
例えば、突起電極は、略円柱や略角柱などの柱状以外に、頭を切った略円錐や略角錐(略円錐台や略角錐台)、略半球などの形状とすることも可能である。突起電極パターンは、導電性ペーストの印刷以外、例えばインクジェット方式等で形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】セラミック基板の製造工程の説明図である。(実施例)
【図2】セラミック基板の製造工程の説明図である。(実施例)
【図3】セラミック基板の製造工程の説明図である。(実施例)
【図4】セラミック基板の製造工程の説明図である。(実施例)
【図5】複合セラミック基板の説明図である。(実施例)
【図6】複合セラミック基板の(A)実装状態の説明図、(B)突起電極の拡大断面図である。
【図7】突起電極の拡大断面図である。(変形例1)
【図8】突起電極の拡大断面図である。(変形例2)
【図9】突起電極の拡大断面図である。(変形例3)
【図10】突起電極の拡大断面図である。(変形例4)
【図11】セラミック基板の斜視図である。(実施例)
【図12】口開きの説明図である。
【図13】凹みの説明図である。
【符号の説明】
【0119】
10 基材層
11a〜11d セラミックグリーンシート
14 複合積層体
15 セラミック基板
16 基板本体
18,18a,18b,18c,18d 突起電極
18s 先端
18t 基端
18x 金属酸化物
19 領域
20 拘束層
21a〜21d セラミックグリーンシート
22 拘束層
23a〜23d セラミックグリーンシート
25a〜25c 突起導体
40 複合セラミック基板
50 プリント配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未焼成セラミック基板本体の少なくとも一方主面に、前記未焼成セラミック基板本体の焼成温度では実質的に焼結しない基材中に前記未焼成セラミック基板本体の焼成温度以下の温度で焼結する主成分金属材料及び前記未焼成セラミック基板本体の焼成中に酸化・膨張する副成分金属材料(以下、「添加金属材料」という。)を含んだ未焼成突起電極用パターンを有する拘束層を密着してなる未焼成複合積層体を形成する第1の工程と、
前記拘束層の前記基材は実質的に焼結せず、前記未焼成セラミック基板本体及び前記未焼成突起電極用パターンに含まれる前記主成分金属材料を焼結させ、前記添加金属材料を酸化・膨張させ得る温度・雰囲気のもとで、前記未焼成複合積層体を焼成する第2の工程と、
前記拘束層の前記基材を除去して、前記未焼成セラミック基板本体の焼成により形成された焼結済みセラミック基板本体の前記一方主面に、前記主成分金属材料の焼結体中に前記添加金属材料の酸化物を含有する焼成後の突起電極を有するセラミック基板を取り出す第3の工程と、
を備えたことを特徴とする、セラミック基板の製造方法。
【請求項2】
前記添加金属材料は、前記焼成後の前記突起電極のうち前記添加金属材料の前記酸化物が0.05〜20体積%を占めるようになる割合で、前記第1の工程において前記未焼成突起電極用パターンに含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記添加金属材料の平均粒径が0.1〜5.0μmφであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記主成分金属材料は銀であり、
前記添加金属材料は、タングステン、マンガン、鉄、ニッケル及びクロムからなる群より選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記主成分金属材料は、前記未焼成突起電極用パターンのうち80〜98重量%を占めていることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程において、複数の前記拘束層の前記基材にそれぞれ設けられた前記未焼成突起電極用パターンを連接するとともに、前記複数の拘束層のうち少なくとも2つの拘束層における前記未焼成突起電極用パターン中の前記添加金属材料の含有量を互いに異ならせ、
前記焼成後の前記突起電極は、連接された前記未焼成突起電極用パターンの焼成により形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程において複数の前記拘束層の前記未焼成突起電極用パターン中に含まれる前記添加金属材料の前記含有量は、前記未焼成セラミック基板本体に近い側において前記添加金属材料の割合が多くなるように選択されていることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の工程において複数の前記拘束層の前記未焼成突起電極用パターン中に含まれる前記添加金属材料の前記含有量は、前記未焼成セラミック基板本体から遠い側において前記添加金属材料の割合が多くなるように選択されていることを特徴とする、請求項6の製造方法。
【請求項9】
前記第3の工程において、前記焼成後の前記突起電極は前記焼結済みセラミック基板本体の前記一方主面の周縁に沿って配置されており、
前記焼結済みセラミック基板本体の前記一方主面において前記焼成後の前記突起電極に囲まれた領域に、第1の実装部品を搭載する第4の工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項10】
前記第4の工程は、前記焼結済みセラミック基板本体の他方主面に第2の実装部品を搭載する工程を含むことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記未焼成セラミック基板本体は、積層された複数の未焼成セラミック層を含み、
前記未焼成セラミック基板本体の内部に、層間接続電極用パターン及び面内電極用パターンを有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項12】
前記添加金属材料の表面は、前記添加物金属材料とは異なる金属材料、非金属無機材料あるいは有機材料のコーティング材料でコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項13】
前記コーティング材料は、前記主成分金属材料と同一の材料であることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
セラミック基板本体の少なくとも一方主面に突起電極を有し、
前記突起電極は、前記セラミック基板本体と同時焼成によって形成され、主成分金属材料の焼結体中に、焼成の際に酸化・膨張した添加金属材料の酸化物を含有することを特徴とする、セラミック基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−142223(P2007−142223A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334984(P2005−334984)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】