説明

センシング手段及び接近警告システム

【課題】降雨や降雪による誤検知が考え得る場所に設置した場合に、誤検知の発生頻度を低減することができるセンシング手段及び接近警告システムを提供する。
【解決手段】電波発信部1及び電波受信部2が斜め下方に向けられていることで、重力によって下方に向けて進行する雨滴Aや雪粒Yは電波発信部1及び電波受信部2から全て遠ざかる方向に進行するようになり、電波受信部2から遠ざかる方向に進行する移動体から生じる反射波R2を検知対象から排除することで、かかる雨滴Aや雪粒Yにより生じる反射波R2に起因する誤検知の発生頻度を低減することができる。また電波受信部2から遠ざかる方向に進行する移動体を検知対象から排除するのみであるから、判別手段3を簡便なものとできる。
【参照図】 図2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨や降雪等の影響を受ける屋外に設置され、反射波を用いて車両や歩行者の存在を検知するセンサーのセンシング手段及び接近警告システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反射波を用いて道路上の車両や歩行者を検知するセンサーとしては、例えば特許文献1に開示されている道路上道路の路面上を電波によりスキャンし、該スキャンにより前記路面上の物体の有無と該物体の位置とを検知することにより、前記路面上に存在する障害物に係る情報及び交通流に係る情報のうち少なくとも一方を得る検知手段と、この検知手段により検知した情報を、前記道路を走行する車両の運転者及び道路管理者のうち少なくとも一方に通知する通知手段とを具備し、前記検知手段は、前記路面に向けてパルス状の電波をスキャンして発射し、発射から路面で反射して戻って来る時間差から路面上の障害物の有無及び位置を検知する道路監視システムの、検知手段が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−367073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の如きセンサーでは、強い降雨や降雪に見舞われた場合、雨滴や雪粒に発信された電波が反射され、その反射波を受信することで本来の検知対象が存在しない場合にも、該反射波により車両や歩行者が存在すると誤検知する恐れがある。かかる誤検知が発生することにより、例えば狭道の出入口に設置され、対向車の接近を警告するシステムや、歩行者の存在を検知し、発光等により車両の運転者に歩行者の存在を報知するシステムなどに用いた場合、発光等に係わるエネルギーの損失のみならず、誤検知によりシステム自体の信頼性が損なわれる恐れがある。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、降雨や降雪による誤検知が考え得る場所に設置した場合に、誤検知の発生頻度を低減することができるセンシング手段及び接近警告システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わるセンシング手段は、電波を発信する電波発信部と、前記電波が検知対象物により反射されて生じる反射波を受信する電波受信部と、前記電波受信部により受信された反射波に基づき検知対象物の進行方向が検知可能な判別手段とを備え、前記電波発信部から発せられる発信波の方向と、前記電波受信部が受信可能な受信波の方向とは、略平行で前記電波発信部及び前記電波送信部から斜め下方の方向となされていると共に、前記判別手段は前記電波受信部から遠ざかる方向に進行する移動体から生じる反射波を検知対象から排除していることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明に係わる接近警告システムは、請求項1に記載のセンシング手段と、接近警告手段と、前記判別手段が検知対象物有りと判別した場合に前記接近警告手段を動作させる制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わるセンシング手段によれば、電波発信部及び電波受信部が斜め下方に向けられていることで、重力によって下方に向けて進行する雨滴や雪粒は電波発信部及び電波受信部から全て遠ざかる方向に進行するようになり、電波受信部から遠ざかる方向に進行する移動体から生じる反射波を検知対象から排除することで、かかる雨滴や雪粒により生じる反射波に起因する誤検知の発生頻度を低減することができる。また電波受信部から遠ざかる方向に進行する移動体を検知対象から排除するのみであるから、判別手段を簡便なものとできる。
【0009】
また本発明に係わる接近警告システムによれば、請求項1に記載のセンシング手段により雨滴や雪粒の影響による誤検知と、それに伴う接近警告手段の誤動作の発生頻度が低減され、信頼性の高められた接近警告システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係わるセンシング手段の、実施の一形態を示すもので、イ)は斜視図、ロ)はイ)のA−A断面図である。センシング手段10は、立設された支柱Sの上端に取り付けられて設けられており、筐体6内にセンシングユニット5が内蔵され、センシングユニット5により道路を走行する車両や、道路周辺の歩行者を検知するものである。センシングユニット5は、ロ)に示す如く、判別手段3に接続された電波発信部1及び電波受信部2が設けられ、電波発信部1及び電波受信部2の前面側には保護用の合成樹脂製のレドーム4が設けられたものである。電波発信部1から発せられる発信波R1の方向は、電波受信部2が受信可能な反射波R2の方向と略平行となされている。
【0012】
図2は、センシング手段10における雨滴や雪粒の反射波への影響を説明する説明図である。電波発信部1から発せられた発信波R1は、途中に障害物がなければ検知対象物に衝突した場合に検知可能な反射波R2が生じるようになされるが、悪天候時には発信波R1が送信される空間に雨滴Aや雪粒Yが障害物として存在することがある。水は基本的に電波反射体であり、大雨や豪雪となって粒径が大きくなると、雨滴Aや雪粒Yに発信波R1が衝突することで反射波R2が生じる場合があり、かかる反射波R2が検知対象物による反射波R2と混同されて誤作動が起こる恐れがある。本発明においては、電波発信部1及び電波受信部2は、略平行で電波発信部1及び電波送信部2から斜め下方の方向となされていることで、重力により下方へ垂直に落下する雨滴Aや雪粒Yは絶対的に電波発信部1及び電波送信部2から遠ざかる方向に移動するものとなる。
【0013】
図3は、判別手段による検知対象物と雨滴等の判別方法を示すフロー図である。本フロー図においては、電波発信部1、電波受信部2及び判別手段3が一出力のドップラーレーダである場合を示すが、まず電波発信部1から発せられた発信波R1がセンシング対象領域で何らかの移動体に衝突して反射波R2が発生し、その反射波R2を電波受信部2により受信する。移動体に衝突して生じる反射波R2は、ドップラー効果により近づいてくる移動体であれば周波数が高く、遠ざかる移動体であれば周波数が低く変調される。反射波の周波数が発信波の周波数より高い場合には、検知した移動体が近づいており、検知対象物であると判断して処理を継続する。反対に反射波の周波数が発信波の周波数より低い場合には、検知した移動体が遠ざかっており、雨滴Aや雪粒S等の検知対象物以外と判断して処理を中止する。
【0014】
電波発信部1、電波受信部2及び判別手段3は、一出力のドップラーレーダを用いることで、最も簡便な方法にて判別が可能となるが、これに限定されるものではなく、電波発信部1及び電波受信部2を複数設け、電波受信部2が検知する反射波の位相差に基づいて、移動体の移動方向及び絶対距離を検知可能なものとしてもよく、また周波数の異なる電波を発信し各反射波間の位相差に基づいて移動体の移動方向及び絶対距離を検知可能なものとしてもよく、FM波を用いた周波数変調連続波(FM−CW)方式を利用し移動体の移動方向及び絶対距離を検知可能なものとしてもよく、またこれらの電波発信部1をパルス方式のものとしたもの等を、要求される検知内容に応じて適宜用いることができる。
【0015】
また用いる電波についても特に限定されるものではないが、マイクロ波(周波数3G〜30GHz、波長1〜10cmの範囲内の電波)またはミリ波(周波数30G〜300GHz、波長1〜10mmの範囲内の電波)を用いることで、屋外に設置した場合でも降雨、降雪、霧、粉塵等による検知への影響を受けることが比較的少なく、安定して誤作動の少ないセンシング手段とすることができる。
【0016】
図4は、本発明における接近警告システムを最も好適に適用できる状況の一例を示す道路の断面図である。高架道路H下に一般道路を通した所謂アンダーパスと呼ばれる箇所で、高架道路Hの手前の道路D1から高架道路H下の道路D2を通って高架道路Hの奧側の道路D3に通じる道路において、発信波R1が斜め下方に発信されるようになされたセンシング手段10が、道路D1及びD3において方向α及びβに向かう移動体を検知可能に設置されている。更に高架道路Hの側壁には、道路D1を方向αに向かう移動体と相対向するように発光文字標示板である接近警告手段20Aが、また道路D3を方向βに向かう移動体と相対向するように同じく接近警告手段20Bが取り付けられている。接近警告手段20A及び20Bには、センシング手段10からの検知対象物有りの信号を受けて接近警告手段20A及び20Bを動作させる制御部(図示せず)が内蔵されている。ここで、道路D1とD3間は見通しが悪く、また道路D2は自動車のすれ違いが不可能な道路である。
【0017】
イ)に示す如く移動体である自動車Cが道路D1を方向αに進行すると、センシング手段10Aにより検知対象物と判断され、センシング手段10Aと無線或いは有線により接続された制御部の指示により接近警告手段20Bが作動して道路D3を方向βに進行する車両や歩行者等に対し「車両接近注意」や「進入禁止」といった内容で前方から自動車C1が接近していることが警告される。道路D2を通過した自動車Cは、ロ)に示す如く道路D3で更にセンシング手段10Bからの発信波R1を受けるが、道路D3において自動車Cから反射した反射波は遠ざかる方向のものであり、上述の如く遠ざかる方向への移動体であれば検知対象物と判断しないことで、ロ)の場合には接近警告手段20Aは作動されない。逆に道路D3を方向βに向かう移動体がセンシング手段10Bにより検知された場合には、道路D1に向けられた接近警告手段20Aにより道路D1を方向αに進行する移動体に対して移動体が接近していることの警告がなされる。
【0018】
センシング手段10A及び10Bは、常時発信波R1を発するようにしておいてもよいが、更に赤外線等の簡易的なセンサーを設けて検知対象領域に物体が進入した場合にセンシング手段10A及び10Bを作動させるようにしてもよい。またセンシング手段10A又は10Bの一方が検知対象物を検知し、且つ他方のセンシング手段10B又は10Aも移動体を検知した場合のみに接近警告が必要と判断し、接近警告手段20A又は20Bによる接近警告を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わるセンシング手段の、実施の一形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係わるセンシング手段の、雨滴や雪粒の影響を説明する説明図である。
【図3】本発明に係わるセンシング手段の、検知対象物の検知を説明するフロー図である。
【図4】本発明に係わる接近警告システムの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 電波発信部
2 電波受信部
3 判別手段
10 センシング手段
20 接近警告手段
R1 発信波
R2 反射波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を発信する電波発信部と、前記電波が検知対象物により反射されて生じる反射波を受信する電波受信部と、前記電波受信部により受信された反射波に基づき検知対象物の進行方向が検知可能な判別手段とを備え、前記電波発信部から発せられる発信波の方向と、前記電波受信部が受信可能な受信波の方向とは、略平行で前記電波発信部及び前記電波送信部から斜め下方の方向となされていると共に、前記判別手段は前記電波受信部から遠ざかる方向に進行する移動体から生じる反射波を検知対象から排除していることを特徴とするセンシング手段。
【請求項2】
請求項1に記載のセンシング手段と、接近警告手段と、前記判別手段が検知対象物有りと判別した場合に前記接近警告手段を動作させる制御部とを備えていることを特徴とする接近警告システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−71499(P2006−71499A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256123(P2004−256123)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】