説明

センダングサ属植物抽出物含有組成物

【課題】センダングサ属植物、特にビデンス・ピローサの有効性を高めるような抽出物製造方法及びそのような方法により得られた抽出物を含む組成物を提供する。
【解決手段】センダングサ属植物、特にビデンス・ピローサに、ショウガまたはウコン等のショウガ科植物を混合し、この混合物を抽出溶媒にて抽出することにより製造されたセンダングサ属植物抽出物を用いることにより、高血糖、花粉症等の治療及び予防剤として優れた効果を示す組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンダングサ属植物、特にビデンス・ピローサ抽出物を含む組成物及び抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデンス・ピローサは昔から身近にあるハーブであり、民間薬草として干した地上部分を煎じ、解熱・解毒・消炎・鎮痛・止瀉・利尿薬として肝炎・腎炎・盲腸炎・糖尿病・膀胱炎・尿道炎・リウマチ性関節炎・気管支炎・腫れ物・胃腸病・下痢・消化不良などに内用し、外用では咽喉の腫れや痛み、打撲傷などに用いられてきた。特に、盲腸炎には癒着のある重症のものでも、煎じ汁を飲むか、新芽をそのまま食べ、或いは60gほどを搗いて汁を飲む(蜜とか食塩を少々加えてもいい)と炎症も痛みも収まるとされている。また、腫れた咽喉の痛みには飲むと同時にうがい薬として使用することもよいとされている。また、多少の殺菌静菌作用もあるため打撲などの外傷や、腫れた所を洗ったり、局所に塗ったりなど外用薬としても使われてきた。
従来、ビデンス・ピローサの使用方法としては、内服用または外用として水で抽出したもの(煎じられたもの)が用いられてきた。例えば、生の植物10〜15gを水400mLで煎じて半量まで煮詰めて飲むなどの方法がある。なお、ビデンス・ピローサは台湾では家庭用民間薬として、日本におけるドクダミやゲンノショウコなどのように野生のものを摘んで使用する人も多い。また中医(漢方医)の使う薬屋では調剤用咸豊草抽出物粉末が入手できる。花は黄色もあるが薬用には白色が良いとされている。
ビデンス・ピローサの成分研究の目的では、水抽出またはメタノールやエタノール等の溶媒による抽出が行われている(例えば非特許文献1参照)が、ビデンス・ピローサに他の添加物を添加して抽出を行った例は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Paul V. Tan et al., Journal of Ethnopharmacology 73, 415 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、センダングサ属植物の有用性、有効性を更に高めるセンダングサ属植物の抽出物を製造する方法及び前記抽出物を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はセンダングサ属植物につき種々検討を重ねた結果、ショウガまたはウコン等のショウガ科植物を予めセンダングサ属植物に混合して抽出した抽出物を含む組成物が、センダングサ属植物単独で抽出したものよりも高血糖、皮膚炎、花粉症等の治療及び予防において、また美肌剤や日焼け止め等の化粧品として優れた効果を示すことを発見した。また、センダングサ属植物とショウガ科植物を混合したものを抽出した抽出物の方がそれぞれ単独で抽出したものを混合するよりも優れた効果、すなわち相乗効果を示すことを見出した。
すなわち本発明は、センダングサ属植物にショウガ科植物を混合して抽出溶媒にて抽出することにより製造されたセンダングサ属植物抽出物を含む組成物を提供するものである。
本発明はまた、センダングサ属植物にショウガ科植物を混合して抽出溶媒により抽出することを特徴とするセンダングサ属植物抽出物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
以上の通り、本発明の方法により得られた抽出物を含む組成物は、高血糖、皮膚炎、花粉症等の治療及び予防剤として、また美肌剤や日焼け止め等の化粧品として優れた効果を示し、さらにビデンス・ピローサ単独の抽出物より明らかに優れた効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に使用されるセンダングサ属植物は、特開2001−178391号公報および特開2001−233427号公報に記載されるように、学名ではビデンス(Bidens)属と言われる一群の植物である。種類も多岐に亘り互いに交配するので変種も多く、植物学上も混乱が見られ、学名、和名、漢名、の対応も交錯していて同定することは極めて困難であるが、本発明で用いられるセンダングサ属植物は以下に掲げるものを包含する。
【0008】
Bidens pilosa L.(コセンダングサ、コシロノセンダングサ、咸豊草)
Bidens pilosa L .var. minor (Blume)Sherff (シロバナセンダングサ、シロノセンダングサ、コシロノセンダングサ、コセンダングサ、咸豊草)
Bidens pilosa L. var. bisetosa Ohtani et S.Suzuki(アワユキセンダングサ)
Bidens pilosa L. f. decumbens Scherff (ハイアワユキセンダングサ)
Bidens pilosa L. var. radiata Scherff (タチアワユキセンダングサ、ハイアワユキセンダングサを含むこともある)
Bidens pilosa L. var. radiata Schultz Bipontinus (シロノセンダングサ、オオバナノセンダングサ)
Bidens biternata Lour. Merrill et Sherff(センダングサ)
Bidens bipinnata L.(コバノセンダングサ、センダングサ)
Bidens cernua L.(ヤナギタウコギ)
Bidens frondosa L.(アメリカセンダングサ、セイタカタウコギ)
Bidens parviflora Willd (ホソバノセンダングサ)
Bidens radiata Thuill. var. pinnatifida (Turcz.)Kitamura(エゾノタウコギ)
Bidens tripartita L.(タウコギ)
【0009】
上記センダングサ属植物の中で、特にビデンス・ピローサ(Bidens pilosa)類が好ましい。
上記センダングサ属植物は通常、生の植物を天日乾燥または熱風(例えば70〜80℃)乾燥したもの、又は蒸気で、例えば1時間〜1時間半程度蒸した後、乾燥したものを使用してもよい。
上記センダングサ属植物の使用部位は、根、地上部(茎、葉、花等)又は全草何れの部位を用いてもよい。特に、葉及び茎の部分を使用することが効力の点において好ましい。
【0010】
ショウガ科植物としては、各種のショウガ、ウコン等が挙げられる。食用、薬用等に用いられるものでもよい。ショウガ科植物は、乾燥または粉砕された市販品を用いてもよく、または栽培した植物を乾燥して粉砕、若しくは蒸煮した後乾燥して粉砕したものを用いてもよい。ショウガ科植物の使用部位は少なくとも根を含む部分である。根部分のみを用いてもよく、または根と茎、葉等その他の部分を用いてもよい。本発明の効果の上で特に好ましいのは根の部分である。
【0011】
本発明の抽出物製造方法において、上述したセンダングサ属植物、ショウガ科植物の他にさらに風味改善等の目的で他の植物を加えてもよい。他の植物としてはセンダングサ属植物、ショウガ科植物からの成分の抽出を阻害しないもの、また本発明の抽出物の効果を阻害しないものであればよい。具体的には、大麦等が挙げられる。大麦は特に風味の改善の目的で用いることができ、その場合には焙煎した大麦を用いることがさらに好ましい。大麦等を添加する場合には、ショウガ科植物に続いてセンダングサ属植物に添加し、その後抽出を行ってもよい。また、別途水等で抽出したものを本発明の方法により製造されたセンダングサ属植物抽出物に添加してもよい。
センダングサ属植物及びショウガ科植物以外の植物を添加する場合の混合比率は、センダングサ属植物乾燥重量に対して、乾燥重量基準で10〜400質量%である。
【0012】
また、本発明の抽出物製造方法においてさらに酸化防止の目的で他の成分または植物を加えてもよい。他の成分または植物として具体的にはアセロラ抽出物またはアセロラが挙げられる。このような成分または植物を添加する場合には、ショウガ科植物に続いてセンダングサ属植物に添加してもよく、また、抽出後に添加してもよい。このような成分は、センダングサ属植物乾燥重量に対して、乾燥重量基準で1〜50質量%添加してもよい。
【0013】
本発明の方法は、センダングサ属植物にショウガ科植物を混合して抽出溶媒により抽出することを特徴とする。
本発明の方法の一つの実施態様を示すと、上述したようにセンダングサ属植物を乾燥したもの又は蒸気で蒸した後乾燥したものに対して、乾燥または蒸気で蒸した後乾燥し、粉砕したショウガ科植物を添加し、常温又は加温下に、溶媒を添加して抽出する。抽出方法としては例えば、浸漬して静置、またはソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出物を得ることもできる。
【0014】
センダングサ属植物に対するショウガ科植物の混合比率は、センダングサ属植物の乾燥全重量に対してショウガ科植物が乾燥重量基準で0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。ショウガ科植物の量が多くなりすぎるとショウガ科植物により皮膚に過剰な刺激を与えたり、ショウガ科植物の独特の風味が強くなりすぎるからであり、また少なすぎると本発明の効果が十分に得られないからである。
【0015】
抽出に使用される溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等のアルコール類、並びにこれらの含水物、アセトン、エチルメチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン及び酢酸エチル、並びにそれらの含水物を用いてもよい。また、上記溶媒を二種以上含む混合物であってもよい。溶媒の添加量は、例えば用いる植物の合計乾燥重量1kgに対して1L〜100L程度使用することができる。
抽出時の温度は、通常、室温〜沸点程度で行うことができる。また、抽出時間は、温度や溶媒にもよるが、室温〜沸点程度で抽出を行う場合には、1〜300時間程度の範囲にわたって行うことができる。
【0016】
抽出液は必要により溶媒を留去濃縮して濃縮物または固形物(乾燥物)としてもよい。濃縮物として使用する場合、濃度を調整した後そのまま用いてもよい。
また、抽出物は、脱色、不用物除去のため活性炭処理、HP20等の樹脂処理、低温放置、瀘過等の処理を施してから用いてもよい。さらに当該抽出物を適当な分離手段、例えばゲル瀘過法やシリカゲルカラムクロマト法、又は逆相若しくは順相の高速液体クロマト法により活性の高い画分を分画して用いることもできる。
【0017】
抽出物はそのまま、あるいは濃縮物または固形物(例えば粉末)として、内服または外用として用いてもよい。また、抽出物、抽出物の濃縮物または固形物は、水又は水−低級アルコール等の溶媒に溶解してもよい。また使用目的に応じて他の成分を混合して使用してもよい。
【0018】
本発明の組成物としては、高血糖治療剤または高血糖予防剤、皮膚炎治療剤または皮膚炎予防剤、花粉症治療剤または花粉症予防剤、化粧品等が挙げられる。
本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は、高血糖改善作用を示し、高血糖治療剤または高血糖予防剤として用いることができる。また、本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は高血糖改善作用を示す機能性食品としても有用である。高血糖治療剤または高血糖予防剤として用いる場合には、組成物の全重量に対して抽出物の乾燥重量換算で通常0.01〜20質量%程度の量が配合される。
【0019】
本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は、皮膚炎の改善作用を示し、皮膚炎治療剤または皮膚炎予防剤として用いることができる。用いることができる皮膚炎としては、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎等が挙げられる。また、本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は皮膚炎改善作用を示す機能性食品としても有用である。皮膚炎治療剤または皮膚炎予防剤として用いる場合には、組成物の全重量に対して抽出物の乾燥重量換算で通常0.01〜20質量%程度の量が配合される。
【0020】
本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は、花粉症の改善作用を示し、花粉症治療剤または花粉症予防剤として用いることができる。用いることができる花粉症としては、杉花粉症、檜花粉症、カモガヤ花粉症等が挙げられる。また、本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は皮膚炎改善作用を示す機能性食品としても有用である。皮膚炎治療剤または皮膚炎予防剤として用いる場合には、組成物の全重量に対して抽出物の乾燥重量換算で通常0.01〜20質量%程度の量が配合される。
【0021】
本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は、化粧品としても用いることができる。すなわち、内服若しくは外用により皮膚の保湿作用に効果があり、美肌剤等として使用することができる。また、日焼け止め作用も顕著であり、日焼け止めクリーム等の化粧品としても使用することができる。また、本発明のセンダングサ属植物抽出物を含む組成物は美肌作用を示す機能性食品としても有用である。化粧品が、美肌剤、または日焼け止め剤である場合、化粧品中に化粧品の全重量に対して抽出物の乾燥重量換算で通常は10質量%程度以下、好ましくは1〜5質量%の量が配合される。化粧品として用いる場合には、化粧水、乳液、クリーム、パック等いずれの形態で用いても構わない。
【0022】
以下試験例および実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
(実施例1)内服による高血糖改善作用
ビデンス・ピローサ(タチアワユキセンダングサ)を流水で洗浄して異物を取り除いた後、数センチ程度に裁断した。裁断物を底が網状の円筒形容器に入れ、1時間〜1時間半程度蒸気で蒸煮した。その後ニーダーで圧潰し、70〜80℃程度の熱風で乾燥した(参照、特開平2001−178390号公報)。
得られた乾燥物を、A)ビデンス・ピローサ単独、B)ビデンス・ピローサとショウガとの混合物、およびC)ビデンス・ピローサとウコンとの混合物とし、さらにそれぞれを焙煎した大麦で倍散して、各3gをティーバッグに仕立てた。
このティーバッグ1個に約1.2 Lの水を加えて5分間煮沸抽出し、その全量を1日で飲んでもらい、これを3カ月間毎日行った。調製したティーバッグの種類と内容は表1の通りである。
【0024】
〔表1〕ティーバッグの組成(質量%)

ティーバッグA〜Iの種類ごとに高血糖の人3人づつ(合計27人、いずれも食事や運動に注意しているが血糖降下剤は使用していない)に飲んでもらったところ、飲用前後の血糖値は表2のようになった。
【0025】
〔表2〕高血糖者の空腹時血糖値(mg/dL)の変化

注:被検者1〜3はティーバッグの種類ごとに別の被験者(被験者計27人)である。
【0026】
上記表からわかるようにビデンス・ピローサ単独(A)でも若干の血糖降下作用が認められるが、ショウガとの混合物の抽出物(例えばC、D、E)では個人差はあるもののいずれも血糖降下作用がより顕著に認められた。またウコンとの混合物の抽出物(例えば、G、H)についても血糖降下作用が認められた。
またビデンス・ピローサ単独では、独特の野草味、野草臭があって甚だ飲みにくいものであるが、これに少量のショウガ或いはウコンを配合するとこの臭味は著明に改善され格段に飲みやすいものになった。また、本実験で血糖降下作用の他の評価要因として、香味に関して言えば好みに個人差はあるもののショウガまたはウコンの配合量が1〜5%、特に1〜3%が飲みやすく、7%では些か飲みにくいことが分かった。
【0027】
(実施例2)内服による小児皮膚炎の改善作用
次の4例は、医師の診察を受けアトピー性皮膚炎と診断されたが、医師からの処方による薬剤を使用せず、ビデンス・ピローサ抽出物を使用した例である。最初1カ月は実施例例1の組成A(ビデンス・ピローサ単独)を飲ませたところ、改善される傾向が見られたものの一進一退であった。2カ月目から組成C(ビデンス・ピローサ+ショウガ)またはG(ビデンス・ピローサ+ウコン)に変更したところ、下記に示すようにいずれも著名な改善が見られた。この間に排便の回数も増え便の状態も改善された。
【0028】
内服による小児皮膚炎の改善(組成CまたはGに変更後)
K子(3カ月女) 組成C使用
発症部位:顔・耳・頸の周囲、四肢の付根や関節部。
投与法:入浴前後毎回50〜60mL、授乳前毎回30〜40mL。
1日量:約10回、約400mL。
経過:1カ月で顔・耳、2カ月で頸の症状消退、3〜4カ月でほぼ完治
【0029】
N子(4カ月女) 組成G使用
発症部位:耳・頸・頬・腕の関節部。
投与法:就眠前・授乳前毎回30〜60mL。
1日量:約10回、約500mL。
経過:約2週間でまず頬が、約5週間で他の部位の症状もほとんど消失した。
【0030】
S子(1歳半女) 組成C使用
発症部位:手・腕・顔・ふくらはぎ。
投与法:随時。
1日量:10回以上、1〜1.2 L。
経過:約1.5カ月で顔の発疹が、他は1〜2カ月遅れ消失、その後半年再発なし。
【0031】
T夫(2歳半男) 組成C使用
発症部位:耳・頸・腕・膝の裏。
投与法:随時。
1日量:10回以上、1.5 〜1.8L。
経過:約2カ月で発疹も痒みも次第に消退し3カ月で完治、その後半年再発なし。
【0032】
結果を総合するとショウガやウコンを混合していない組成Aを使用した期間は一進一退であったが、本発明の組成CまたはGに変更してからは症状が顕著に改善された。
【0033】
(実施例3)内服によるアトピー性皮膚炎の改善
42歳女性、20歳の時から顔面〜頸・胸にかけても重症のアトピー性皮膚炎が出て長期間ステロイド剤を使用していた。平成14年11月からステロイド剤を止めて、試験例1の組成A(ビデンス・ピローサ単独)を1日2〜2.5L飲んだところ1カ月頃から少し改善が見られ始めたが4カ月に入った頃にやや逆戻りしたので、本発明の組成B(ビデンス・ピローサ+ショウガ)に変更したところ、通算約7カ月で皮膚の色素斑もほとんど消え、一見して分からないくらいに改善が認められた。
【0034】
(実施例4)内服による主婦湿疹の改善
48歳女性、約2年前に洗剤で手が荒れた時から、四肢の主として外側に広範囲に、皮膚の隆起と硬化を伴い色素斑を残す皮膚炎を発症、病院でステロイド外用剤の投与を受け却って増悪した。平成13年2月からステロイド剤を止めて試験例1の組成A(ビデンス・ピローサ単独)のティーバッグを1日約3L(2包分)を飲んだところ、約2カ月で炎症はやや治まる傾向が見えたが別の箇所に新たな発症が見られたので、本発明の組成D(ビデンス・ピローサ+ショウガ)に変更したところ次第に改善されて色素斑や皮膚の隆起も退縮し、通算約5カ月でほぼ全快に近い状態となった。
【0035】
(実施例5)内服による夏季潰瘍の改善
皮膚の毛細血管の血行が障害されて膝から下の足、特に関節付近の皮膚に疼痛を伴う潰瘍を生じ、春から夏になると再発しやすい夏季潰瘍と呼ばれる特に女性に多く報告されている難病がある。そのような患者7人に実施例1のC(ビデンス・ピローサ+ショウガ)を試みに飲んでもらった(早い人は平成12年5月下旬から、遅い人は7月下旬から、1日1包、1〜1.2L)ところ、その夏は7人全員に潰瘍の再発が見られなかった。この時点で再発率ゼロ、そして飲まなかった9人中5人、関連病院の13例中9人が再発した。そこで翌13年3月から本発明以前の単純な組成のA(ビデンス・ピローサ単独)に変更したところ3人に潰瘍が再発し、内1人は軽症であったが2人はかなり重症で、再び本発明の組成Cに戻して軽症の1人は軽快したが重症の2人は改善せず、翌14年6月になって漸く潰瘍の新生は見られなくなった。症例を逐次追加し14年の夏は最初の7人を含めて15人中13人が再発しなかった。組成Aを使用した時期の潰瘍の数、大きさ、程度などを含めた観察結果から組成Cは明らかに組成Aよりも有効性が優れていた。
【0036】
(実施例6)ビデンス・ピローサ抽出条件の違いによる抗炎症作用比較試験
実施例1〜5において、内服剤としてビデンス・ピローサ単味よりも少量のショウガやウコンを配合して煎じたものの方がより有効であることが見出されたが、この理由として、a)ショウガやウコンの作用が、ビデンス・ピローサの作用に単に付加されたか、b)ショウガやウコンの添加によってビデンス・ピローサの作用が相乗的に増強されたことが考えられる。一方、実施例1に示したような血糖降下作用はショウガやウコンには報告されておらず、a)の解釈は成立しにくい。
これを確認すため抗炎症作用を代表として選び、ヒトでのパッチテストを行った。
【0037】
[抽出条件]
ビデンス・ピローサ水:実施例1と同じ材料100gに精製水2Lを加え、90〜100℃で5時間抽出した後、濾紙を用いて濾過し、瀘液を濃縮して抽出物全量を100mLとした。
ショウガ水:乾燥ショウガ粉末100gをビデンス・ピローサと同様に処理して抽出物全量を100mLとした。
ウコン水:乾燥ウコン粉末も同様に処理した。
混合抽出物1:ビデンス・ピローサ94g+ショウガ6gを同様に処理した。
混合抽出物2:ビデンス・ピローサ94g+ウコン6gを同様に処理した。
【0038】
[パッチテスト試料]
試料1:ビデンス・ピローサ水単独
試料2:ビデンス・ピローサ水94部+ショウガ水6部の混液
試料3:ビデンス・ピローサ水94部+ウコン水6部の混液
試料4:混合抽出物1
試料5:混合抽出物2
【0039】
[消炎効果の比較試験]
1)接触皮膚炎治療効果
起炎剤(ラウリル硫酸ナトリウムの10%水溶液)を上腕内側に4時間クローズドパッチし、90分後、試料(0.5mL)を16時間クローズドパッチして120時間まで観察した結果は表3に示すとおりである。
【0040】
〔表3〕消炎効果の比較試験

以上のように抽出後混合した試料2、3に比して本発明の方法による試料4と試料5は明らかに抗炎症治療効果に優れていた。
【0041】
2)接触皮膚炎予防効果
起炎剤を試料に混合して上腕内側に5時間クローズドパッチし、72時間まで観察した。その結果は表4に示すとおりである。
【0042】
〔表4〕炎症抑制効果の比較試験

以上のように抽出後混合した試料2、3に比しても本発明の方法による試料4と試料5は明らかに抗炎症予防効果において優れていた。またカブレを訴えた者は全くいなかった。
【0043】
(実施例7)美肌用スキンクリームの効果
実施例6で調製した試料を用いて表5に示す組成のスキンクリームを調製し、その効果及び使用感について、下記の方法に従い評価を行った。
[製造方法]
表5のAグループ成分を加温溶解し80℃に保った油相に、Bグループ成分を同様に処理した水相を加えて乳化し、冷却して製品(スキンクリーム1〜3)とした。
[評価方法]
上述したように製造した製品を、製品1g/日の使用量で、各クリームについて20名づつの被験者の顔と手に塗布して、1ヶ月間使用することにより評価した。
【0044】
[評価基準]
美肌効果(各20名ずつテスト)◎:皮膚がしっとりしたと回答75%以上。
○:皮膚がしっとりしたと回答50〜75%未満。
△:皮膚がしっとりしたと回答25〜50%未満。
使用感(各20名ずつテスト) 5点満点で評価した平均値。
【0045】
〔表5〕美肌用スキンクリームの比較評価

*1:スキンクリーム1(比較例)
*2:スキンクリーム2(本発明)
*3:スキンクリーム3(本発明)
【0046】
表5のとおり、対照である従来法のビデンス・ピローサ水を混合したスキンクリーム1に比べて本発明の混合抽出物1及び2を添加したスキンクリーム2及び3の方が顕著な美肌効果及び使用感の改善が認められた。またカブレを訴えた者は全くいなかった。
【0047】
(実施例8)乳液によるアトピー性皮膚炎の軽減
実施例1と同じビデンス・ピローサ94gにショウガ6gを混合し、エタノール2Lを加え、常温で7日間抽出した後、瀘液を濃縮して抽出物全量を100mLとして、混合抽出物3を製造した。また別にエタノールの代りに1,3-ブチレングリコールを用いて、混合抽出物4を製造した。対照としてビデンス・ピローサ100gをエタノールまたは1,3-ブチレングリコールで同様に処理したもの(ビデンス・ピローサ+エタノール、及びビデンス・ピローサ+1,3-ブチレングリコール)を用意した。
[乳液の製造方法]
表6のAグループ成分を加温溶解し80℃に保った油相に、Bグループ成分を同様に処理した水相を加えて乳化し、冷却して製品(乳液1〜4)とした。
【0048】
[評価方法]
これらの抽出物を配合した表6に示す組成の乳液を用い、アトピー性皮膚炎患者(全10名)で評価を行った。アトピー性皮膚炎が発症した部位に、0.5g/cm2程度の使用量で、1ヶ月間使用した。その効果及び使用感につき下記の方法に従い評価を行った。
[評価基準]
消炎効果 カユミ止め効果
◎:10名中7名以上が炎症が軽減。 ◎:10名中7名以上がカユミが軽減。
○:10名中4〜6名が炎症が軽減。 ○:10名中4〜6名がカユミが軽減。
△:10名中2〜3名が炎症が軽減。 △:10名中2〜3名がカユミが軽減。
×:10名中1名以下が炎症が軽減。 ×:10名中1名以下がカユミが軽減。
【0049】
〔表6〕乳液によるアトピー性皮膚炎の改善

【0050】
表6の結果に見られるように、エタノールで抽出した場合も1,3-ブチレングリコールで抽出した場合も本発明の実施例(混合抽出物3及び4)の方が比較(ビデンス・ピローサ+エタノール、ビデンス・ピローサ+1,3-ブチレングリコール)に比べて、顕著な消炎効果と、カユミ止め効果の改善が認められた。
【0051】
(実施例9)日焼け止めクリームの効果の改善
[日焼け止めクリームの製造方法]
表7の成分Aグループを加温溶解し80℃に保った油相に、成分Bグループを同様に処理した水相を加えて乳化し、冷却して製品(日焼け止めクリーム1〜4)とした。なお、表7における混合抽出物3、混合抽出物4、ビデンス・ピローサ+エタノール、及びビデンス・ピローサ+1,3-ブチレングリコールは、実施例8において調整したものと同じである。
[評価方法]
得られて製品を人の背部に塗布しその上に紫外線UVBを照射し、日本化粧品工業会の測定法に準じ日焼け防止効果SPFを算出して評価を行った。
【0052】
〔表7〕日焼け止めクリームの効果の改善

*1:日焼け止めクリーム1(比較例)
*2:日焼け止めクリーム2(本発明)
*3:日焼け止めクリーム3(比較例)
*3:日焼け止めクリーム4(本発明)
【0053】
表7の結果に見られるように、エタノールで抽出した場合も1,3-ブチレングリコールで抽出した場合も本発明の実施例(混合抽出物3及び4)の方が比較(ビデンス・ピローサ+エタノール、ビデンス・ピローサ+1,3-ブチレングリコール)に比べて、顕著な日焼け防止効果の改善が見られた。
【0054】
(実施例10)
タチアワユキセンダングサの地上部を刈り取り洗浄後、適当な長さに刻んで約1時間蒸煮し、80℃の熱風を送って通風乾燥した。その10kgに、乾燥したショウガ3kgを添加して、水/メタノール/1,3-ブチレングリコール(1/1/2、v/v)混液200Lを加えて室温で1週間放置して抽出し、濾過を行い、濾紙上の不溶物を十分に絞って濾液を得た。得られた濾液に乳糖0.5kgを加えて噴霧乾燥し、2.9kgの抽出物粉末を得た。
この抽出物粉末に賦形剤としてアビセル(結晶セルロース)0.3kgと滑沢剤として蔗糖脂肪酸エステル0.1kgを加え、打錠して250mgの錠子とした。
【0055】
杉花粉症に対する効果
くしゃみ、鼻水、目のかゆみ等の症状を有する杉花粉症患者5人を被験者とした。5人とも、医師の指導のもと、抗アレルギー剤、マスクの着用等の措置を講じていたが依然として症状が緩和されなかった。この5人の被験者に、医者の薬を止めて本発明の錠子を空腹時に3錠ずつ1日3回飲んでもらったところ、いずれも以下に示すように10日以内にはすっきりと症状がなくなった。その後服用を継続している限り症状が出なかったが、服用を二三日忘れると発症した。
【0056】
1)Y.S.男性47歳(会社管理職)5〜7日でほとんど症状がなくなり、その後再発症しなかった。
2)S.T.男性39歳(会社営業職)約1週間で症状が非常に軽くなった。
3)K.I.男性44歳(地方公務員)4〜5日でほとんど症状がなくなり、その後再発症しなかった。
4)M.I.男性75歳(会社役員)数日後からほとんど花粉症の症状が無くなった。
5)R.I.女性39歳(会社事務職)10日ほど経ってから極めて症状が軽くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センダングサ属植物にショウガ科植物を混合して抽出溶媒にて抽出することにより製造されたセンダングサ属植物抽出物を含む組成物。
【請求項2】
抽出溶媒が、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン、アセトン、エチルメチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、これらの含水物及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
センダングサ属植物がビデンス・ピローサである請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
ショウガ科植物がショウガおよび/またはウコンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ショウガ科植物の使用部位が根である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
センダングサ属植物に対するショウガ科植物の混合比率が乾燥重量基準で0.01〜20質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
高血糖治療剤または高血糖予防剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
皮膚炎治療剤または皮膚炎予防剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
皮膚炎が、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、及び接触皮膚炎からなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
花粉症治療剤または花粉症予防剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
化粧品である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
化粧品が、化粧水、クリーム、乳液、及びパックからなる群より選択される形態である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
化粧品が、美肌剤または日焼け止め剤である、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
センダングサ属植物にショウガ科植物を混合して抽出溶媒により抽出することを特徴とするセンダングサ属植物抽出物の製造方法。
【請求項15】
抽出溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン、アセトン、エチルメチルケトン、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、これらの含水物及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
センダングサ属植物がビデンス・ピローサである請求項14または15記載の製造方法。
【請求項17】
ショウガ科植物がショウガおよび/またはウコンである請求項14〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
ショウガ科植物の使用部位が根である請求項14〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
センダングサ属植物に対するショウガ科植物の混合比率が乾燥重量基準で0.01〜20質量%である請求項14〜18のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−292849(P2009−292849A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219395(P2009−219395)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2003−115703(P2003−115703)の分割
【原出願日】平成15年4月21日(2003.4.21)
【出願人】(591035391)株式会社武蔵野免疫研究所 (10)
【Fターム(参考)】