説明

タイヤ成形加硫用離型剤組成物及びタイヤ成形用ブラダー

【課題】同一ブラダーを用いてのタイヤ成形加硫回数を飛躍的に伸ばすとともに、タイヤ不良率を大幅に低減することができるタイヤ成形加硫用離型剤組成物及びそれを用いたタイヤ成形用ブラダーを提供する。
【解決手段】(A)環状ジオルガノポリシロキサンもしくは両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサン又はこれらの組み合わせ 100質量部と、(B)特定のメルカプト基含有アルコキシシランもしくは特定のメルカプト基含有環状ポリシロキサン又はこれらの組み合わせ 5〜30質量部とを、(C)乳化重合触媒 0.1〜15質量部、(D)乳化剤 0.1〜15質量部、及び(E)水 80〜500質量部、の存在下で乳化重合してなるオルガノポリシロキサンラテックスを含有するタイヤ成形加硫用離型剤組成物;上記のタイヤ成形加硫用離型剤組成物でコーティングされたタイヤ成形用ブラダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形加硫用離型剤組成物及びタイヤ成形用ブラダーに関する。さらに詳しくは、本発明は、自転車、自動車、その他車両用及び航空機用のタイヤの成形加硫時に用いられて良好な離型性を与え、同一ブラダーを用いてのタイヤ成形加硫回数を増加し、タイヤの不良率を低減することができるタイヤ成形加硫用離型剤組成物及びそれを用いたタイヤ成形用ブラダーに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの成形加硫時には、ブラダー又はエアバッグと称するゴム製の袋(以下、ブラダーと称す。)を成形加硫前のタイヤ(以下、グリーンタイヤと称する場合がある。)の内側に挿入し、ブラダーの内部に高温高圧の気体(例えば、約180℃の蒸気など)又は液体を導入することによって、グリーンタイヤを金型に押し付けて加熱加圧し、成形加硫を行っている。この場合、ブラダーとグリーンタイヤ内面は、何れもゴムを素材としているために、両者の間には離型剤が必要である。
【0003】
従来、行われてきた方法としては、(1)インサイドペイントと称する水系又は溶剤系の離型剤を、グリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法と、(2)グリーンタイヤとブラダーの間の剥離を良くするために、ブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法が知られている。
【0004】
インサイドペイントとしては、例えば、下記の特許文献1または2で提案されている方法が挙げられる。即ち、特許文献1には、表面が有機珪素化合物との反応により疎水化された無機珪酸塩が分散されている水性ジオルガノポリシロキサン乳濁液が提案されている。特許文献2には、ジアルキルポリシロキサンとポリアルキレングリコールとの共重合体及び雲母又はタルクからなる粉末離型剤組成物が提案されている。
【0005】
また、ブラダー表面に塗布する離型剤としては、例えば、下記の特許文献3〜6で提案されている方法が挙げられる。即ち、特許文献3には、官能基含有オルガノポリシロキサンラテックスを用いる潤滑剤組成物が提案されている。特許文献4には、アミノアルキル基変性オルガノポリシロキサンと界面活性剤を含有する炭酸ガスにより自己架橋する潤滑剤組成物が提案されている。特許文献5には、水分又は熱の作用下に重合するシリコーンゴムとシリコーン離型剤の混合物をブラダーに施し、水分を含有する空気又は熱にさらすことにより、ブラダー上に離型剤フィルムを構成する方法が提案されている。特許文献6には、異なる3種の特定のポリシロキサンを含有した潤滑剤組成物が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献7には、最内層にブラダーゴムとの接着性を有する室温硬化型シリコーン層が施され、最外層に縮合型のシリコーン樹脂層が形成されてなる2層以上の離型潤滑層を有するブラダーが提案されている。特許文献8には、オルガノポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリカ及び金属の有機酸塩を含有するシリコーン組成物により表面処理された加硫用ブラダーを用いる方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、(1)インサイドペイントをグリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法は、工程が煩雑になるとともに、塗布時に機器周辺の汚れが発生するという問題がある。また、それ以上に深刻な問題として、インサイドペイントがタイヤインナーライナーの接合部に入り込み、インナーライナー接合部の剥離を起こしてタイヤ不良が発生するといった問題、インサイドペイント塗布後のタイヤを成形工程に投入するまでのストックポイントに膨大なスペースを要するという問題等がある。
【0008】
また、(2)ブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法においては、シリコーン系の水系離型剤を使用する技術では、離型剤皮膜とブラダーとの接着性が充分なものはなくタイヤブラダーの離型効果の持続性が不十分であり、またブラダーゴムの濡れ性も不十分なため、ブラダーに均一に離型剤を塗布できないという問題がある。溶剤系の離型剤を用いる技術においては、ブラダーへの濡れ性は向上できるが、溶剤を使用する為、環境対策が必要であり、また密着効果は不十分であり、使用中に剥離が起きるという問題がある。
【0009】
特許文献7に提案された技術は、剥離を抑制するために2層以上の塗布を行い、使用初期にタイヤ内面に接触する最外層を、シリコーン樹脂層として滑り性を確保しているが、2回コーティングする必要がある上に、離型性もなお不充分であった。
【0010】
近年、タイヤ生産におけるコスト低減が強く求められていて、工程の時間ロスを小さくするために、ブラダーの交換回数を減らすことが一つのキーポイントとなっている。また、自動車交通の高速化により、自動車用タイヤはますますワイド化、ロープロファイル化する傾向にあり、成形加硫時のブラダーとグリーンタイヤの滑りを良くすることが、タイヤ不良を低減させるための重要なポイントとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭53−42243号公報
【特許文献2】特開昭52−86477号公報
【特許文献3】特開昭60−179211号公報
【特許文献4】特開昭60−229719号公報
【特許文献5】特開昭59−106948号公報
【特許文献6】特開平11−198150号公報
【特許文献7】特開平6−339927号公報
【特許文献8】特開昭62−275711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、同一ブラダーを用いてのタイヤ成形加硫回数を飛躍的に伸ばすとともに、タイヤ不良率を大幅に低減することができるタイヤ成形加硫用離型剤組成物及びそれを用いたタイヤ成形用ブラダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを用いた離型剤がブラダーと強固に密着し、タイヤ成形加硫回数を飛躍的に向上させることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、更にこのラテックスに、ゴムの濡れ性改良剤及び増粘剤の少なくとも一方を配合することにより、ブラダーの濡れ性がより改良されブラダーの離型性能が向上することを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は第一に、
(A)環状ジオルガノポリシロキサンもしくは両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサン又はこれらの組み合わせ 100質量部と
(B)下記一般式(1):
(R1O)a(R2)(3-a)Si-R3-SH (1)
(式中、R1及びR2は炭素原子数1から4の一価炭化水素基を表し、R3は炭素原子数1から10の二価炭化水素基を表し、aは、2又は3である)
で示されるメルカプト基含有アルコキシシランもしくは下記一般式(2):
【0015】
【化1】


(式中、R2及びR3は前記のとおりであり、mは平均で3から6の数である)
で示されるメルカプト基含有環状ポリシロキサン又はこれらの組み合わせ 5〜30質量部とを、
(C)乳化重合触媒 0.1〜15質量部、
(D)乳化剤 0.1〜15質量部、及び
(E)水 80〜500質量部
の存在下で乳化重合してなるオルガノポリシロキサンラテックスを含有するタイヤ成形加硫用離型剤組成物を提供するものである。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明のタイヤ成形加硫用離型剤組成物は、
(F)ゴムの濡れ性改良剤 前記オルガノポリシロキサンラテックス100質量部に対し、0.1〜10質量部、及び
(G)増粘剤 前記オルガノポリシロキサンラテックス100質量部に対し、0.01〜10質量部
の少なくとも一方を更に含有する。
【0017】
本発明は第二に、上記のタイヤ成形加硫用離型剤組成物でコーティングされたタイヤ成形用ブラダーを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤ成形加硫用離型剤組成物及びそれを用いたタイヤ成形用ブラダーによれば、自転車、自動車、その他車両用及び航空機用のタイヤの成形加硫時において良好な離型性が得られ、同一ブラダーを用いてのタイヤ成形加硫回数を飛躍的に伸ばし、タイヤ不良率を大幅に低減し、タイヤ成形加硫の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[(A)成分]
「環状ジオルガノポリシロキサン」とは、ジオルガノシロキサン単位を含む環状オルガノポリシロキサンをいう。環状ジオルガノポリシロキサンの例としては、ジオルガノシロキサン単位のみからなる環状オルガノポリシロキサン、ジオルガノシロキサン単位およびそれ以外の少なくとも1種のシロキサン単位(例えば、オルガノハイドロジェンシロキサン単位、ジハイドロジェンシロキサン単位等)からなる環状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0020】
一方、「両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサン」とは、ジオルガノシロキサン単位を含む両末端シラノール基含有直鎖状オルガノポリシロキサンをいう。両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサンの例としては、ジオルガノシロキサン単位のみからなる両末端シラノール基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、ジオルガノシロキサン単位およびそれ以外の少なくとも1種のシロキサン単位(例えば、オルガノハイドロジェンシロキサン単位、ジハイドロジェンシロキサン単位等)からなる両末端シラノール基含有直鎖状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0021】
環状ジオルガノポリシロキサンである(A)成分としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、テトラフェニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヒドロシクロテトラシロキサン等が例示される。環状ジオルガノポリシロキサンである(A)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサンである(A)成分としては、下記一般式(3)で示される化合物が例示される:
HO-Si(R4)2O-[Si(R4)2O]p-[Si(R4)r(R5)(2-r)O]q-Si(R4)2-OH
ここで、R4は独立に、メチル基、エチル基、プロピル基等の1価脂肪族飽和炭化水素基、R5は独立に、水素原子;ビニル基、アリル基等の1価脂肪族不飽和炭化水素基;非置換又は置換のフェニル基を示し、pおよびqは特に限定されないが、平均値として、pは、好ましくは0〜100、より好ましくは0〜50、更により好ましくは0〜20の数であり、qは、好ましくは0〜100、より好ましくは0〜50、更により好ましくは0〜10の数であり、rは0または1である。
【0023】
上記一般式(3)で表される化合物としては、
HO-Si(CH3)2O-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]2-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]4-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]10-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]20-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]30-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]50-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]100-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)(Ph)O]4-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]10-[Si(CH3)(Ph)O]3-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]20-[Si(CH3)(Ph)O]4-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]10-[Si(CH3)(Ph)O]10-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]50-[Si(CH3)(Ph)O]10-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(Ph)2O]4-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(Ph)2O]10-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]10-[Si(Ph)2O]3-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]20-[Si(Ph)2O]5-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]50-[Si(Ph)2O]10-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]100-[Si(Ph)2O]10-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(H)(CH3)O]6-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]20-[Si(H)(CH3)O]3-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]10-[Si(H)(CH3)O]10-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]30-[Si(H)(CH3)O]5-Si(CH3)2-OH
HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]30-[Si(H)(CH3)O]3-Si(CH3)2-OH
等が例示される。ここで、Phはフェニル基を示す。両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサンである(A)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
[(B)成分]
上記一般式(1)中のR1及び上記一般式(1)または(2)中のR2は炭素原子数1から4の一価炭化水素基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基等が例示される。
【0025】
上記一般式(1)または(2)中のR3は炭素原子数1から10の二価炭化水素基を表し、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、デシレン基等が例示される。
【0026】
上記一般式(1)中、aは2又は3であり、上記一般式(2)中、mは平均で3から6の数を表している。
【0027】
上記一般式(1)で表されるメルカプト基含有アルコキシシランである(B)成分の例としては、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、γ-メルカプト-β-メチルプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプト-β-メチルプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプト-β-メチルプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプト-β-メチルプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプト-β-メチルプロピルジメチルメトキシシラン、γ-メルカプト-β-メチルプロピルジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、6-メルカプトヘキシルトリエトキシシラン、6-メルカプトヘキシルメチルジエトキシシラン、10-メルカプトデシルトリメトキシシラン、10-メルカプトデシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。また、これらのアルコキシシランの部分加水分解物もしくは縮合物またはこれらの組み合わせの使用も可能である。上記一般式(1)で表されるメルカプト基含有アルコキシシランは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。上記の部分加水分解物および縮合物のおのおのも1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記一般式(2)で示されるメルカプト基含有環状ポリシロキサンの例としては、
トリ(γ-メルカプトプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、
テトラ(γ-メルカプトプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、
ペンタ(γ-メルカプトプロピル)ペンタメチルシクロペンタシロキサン、
γ-メルカプトプロピルペンタメチルシクロトリシロキサン、
ジ(γ-メルカプトプロピル)ヘキサメチルシクロテトラシロキサン
等が挙げられる。上記一般式(2)で示されるメルカプト基含有環状ポリシロキサンは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
さらに上記一般式(1)で示されるメルカプト基含有アルコキシシランと上記一般式(2)で示されるメルカプト基含有環状ポリシロキサンを混合して使用することもできる。
【0030】
[(C)成分]
(C)成分は、乳化重合触媒であり、従来知られている乳化重合可能な触媒であれば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒;ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルポリオキシアルキレン硫酸エステル、アルキルアリールポリオキシアルキレン硫酸エステル、アルコール硫酸エステル等の硫酸エステル等の酸触媒;オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩化合物等が挙げられる。(C)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
[(D)成分]
(D)成分は、乳化剤であり従来知られている乳化剤の使用が可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル等のノニオン系乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルポリオキシアルキレン硫酸ナトリウム、アルキルフェノールポリオキシアルキレン硫酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤等が挙げられる。(D)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
[(E)成分]
(E)成分は、水である。
【0033】
(A)成分と(B)成分とを、(C)〜(E)成分の存在下で乳化重合してオルガノポリシロキサンラテックスを得る。
【0034】
(B)成分の添加量は(A)成分100質量部に対し5〜30質量部である。該添加量が5〜30質量部であると、得られる組成物はタイヤ成形用ブラダーにコーティングしたときのゴムへの密着性が効果的に向上する。(B)成分の添加量が5質量部よりも少ないとゴムへの密着性が低下する場合があるため好ましくない。(B)成分の添加量が30質量部よりも多いと、省資源化が図れない場合があり、経済的に好ましくなく、また、メルカプト基含有アルコキシシランを用いた場合には、乳化重合時に発生するアルコール量が多くなるため、エマルジョンの安定性が低下することがあり、好ましくない。(B)成分の添加量は、より好ましくは8質量部〜20質量部であり、更により好ましくは、8質量部〜15質量部である。
【0035】
(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、通常、0.1質量部から15質量部であり、好ましくは0.5質量部から5質量部である。
(D)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、通常、0.1質量部から15質量部程度であり、好ましくは0.5質量部から5質量部である。
(E)成分の水の使用量は、乳化重合できる量であり、(A)成分100質量部に対し、通常、80質量部から500質量部である。
【0036】
[乳化重合時の任意成分]
また、本発明においてオルガノポリシロキサンラテックスの製造時に、他のアルコキシシラン、末端トリメチルシロキシ基を持ったポリシロキサン等を本発明の離型剤組成物の性能を損なわない程度で添加することは任意である。
【0037】
[オルガノポリシロキサンラテックスの製造]
本発明におけるオルガノポリシロキサンラテックスの製造方法も特に限定されず従来公知の方法により乳化を行えばよい。例えば、(E)成分の水に(D)成分の乳化剤を加え、更に(A)成分及び(B)成分を加えた後、乳化装置によって乳化を行い、その後所定温度において(C)成分の重合触媒を加えて所定時間重合し、その後場合により、触媒を中和することで所望のオルガノポリシロキサンラテックスを得ることが出来る。乳化装置は特に限定しないが、ホモディスパー、ホモミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等の乳化機が使用可能である。重合温度に関しても特に限定されないが、水が氷結しない温度から、水が沸騰しない温度であればよく、好ましくは、1℃から80℃程度であり、より好ましくは、(A)成分として両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサンを使用する場合には、5℃から25℃程度であり、(A)成分として環状ジオルガノポリシロキサンを使用する場合には、40℃から80℃程度で数時間重合を行い、その後、5℃から25℃程度で熟成を行い、さらに重合させることが好ましい。重合時間は、所望のオルガノポリシロキサンラテックスが得られるまでならばよく、特に限定されないが、2時間から100時間程度である。重合終了後は、中和剤で中和を行うことが好ましく、酸性触媒を使用した場合は、アルカリで中和すればよく、アルカリ触媒を使用した場合には、酸で中和すればよい。中和剤としては、特に限定されないが、酸であれば、蟻酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、燐酸、塩酸等が挙げられ、アルカリであれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0038】
このようにして得られたオルガノポリシロキサンラテックスの重合度は特に限定されないが、500から10000程度である。
【0039】
[(F)成分および(G)成分]
上記のオルガノポリシロキサンラテックスをタイヤ成形加硫用離型剤組成物として用いることで、ブラダーゴムへの密着性が良好なゴム皮膜をブラダー表面に形成可能であるが、ゴム表面へ均一に塗布する為には、オルガノポリシロキサンラテックスに対し、
(F)ゴムの濡れ性改良剤 前記オルガノポリシロキサンラテックス100質量部に対し、0.1〜10質量部、及び
(G)増粘剤 前記オルガノポリシロキサンラテックス100質量部に対し、0.01〜10質量部
の少なくとも一方を加えることが好ましい。
【0040】
・(F)成分
(F)成分の濡れ性改良剤としては、タイヤ成形加硫用離型剤組成物に対するゴム表面の濡れ性が改良できれば、特に限定されないが、濡れ性改良効果が高い化合物としては、アニオン界面活性剤が好適であり、特にポリオキシアルキレン置換アルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン非置換アルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン置換アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン非置換アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン置換アリールエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン非置換アリールエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン置換アリールエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン非置換アリールエーテル硫酸アンモニウム、又はこれらの2種以上の組み合わせがより好適である。(F)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸エステル等が挙げられる。その中でも特に、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウムが好ましい。
【0042】
(F)成分の濡れ性改良剤の添加量は、ゴムの濡れ性を改良できる量であればよく、前記オルガノポリシロキサンラテックス100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.5質量部から10質量部程度である。0.1質量部よりも少ないとゴムの濡れ性改良効果が充分でない場合があり、10質量部よりも多いと、得られる組成物のゴムへの密着性が悪化する場合がある。
【0043】
・(G)成分
(G)成分の増粘剤としては、タイヤ成形加硫用離型剤組成物に対するゴム表面の濡れ性が良好となるような適度な粘度を該組成物に付与できるものであれば、特に限定されないが、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、ポリビニルアルコール類、多糖類、セルロース類等が挙げられる。なかでも増粘効果が高い増粘剤としては、アルカシーガム(商品名、伯東株式会社製)、ダイユータンガム(CPケルコ社製)、ラムザンガム、ザンサンガム、キサンタンガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、グァーガム、ウェランガム、ジェランガムなどの多糖類が好ましく、これらの中で、より好ましくはアルカシーガム、ダイユータンガムである。(G)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
(G)成分の増粘剤の添加量は、タイヤ成形加硫用離型剤組成物の粘度を適度な値に調整できる量であればよく、ポリシロキサンラテックス100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.01質量部から3.0質量部程度である。0.01質量部よりも少ないと増粘効果に乏しく、10質量部よりも多いと離型剤コート膜の耐熱性が低下する場合があり、ゴムへの密着性も悪化することがある。
【0045】
[タイヤ成形加硫用離型剤組成物の任意成分]
また、本発明のタイヤ成形加硫用離型剤組成物には、必要に応じて有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機錫化合物などの触媒を添加することも任意である。このような触媒としては、例えば、ラウリン酸亜鉛、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、テトラプロピルチタネート及びその部分加水分解物、ビスジプロポキシチタン、ビス(アセチルアセトネート)チタンオキシド、チタンラクテート、アンモニウムチタンラクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテートなどを挙げることができる。これらの触媒の添加により、ポリシロキサンの架橋硬化を促進させることができる。これらの触媒は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
さらに本発明のタイヤ成形加硫用離型剤組成物には、無機粉体又は有機粉体を配合することができる。使用する無機粉体としては、例えば、マイカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、グラファイト、カーボンブラック、弗化カーボン粉体、酸化チタン、ボロンナイトライドなどを挙げることができる。また、使用する有機粉体としては、例えば、テフロン(登録商標)パウダーなどのフッ素樹脂パウダー、微粒子シリコーン樹脂パウダー、ナイロンパウダー、ポリスチレンパウダー、パラフィンワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸石鹸、脂肪酸アミン塩などを挙げることができる。有機粉体及び無機粉体のおのおのは、1種を単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0047】
[タイヤ成形用ブラダー]
本発明のタイヤ成形用ブラダーは、タイヤ成形用ブラダーに本発明の離型剤組成物を塗布することにより製造することができる。このようにして製造された本発明のタイヤ成形用ブラダーを用いてタイヤの成形加硫を行う。タイヤ成形用ブラダーに離型剤組成物を塗布するタイミング及び方法に特に制限はない。例えば、下記のような方法で、本発明の離型剤組成物からなる被膜をタイヤ成形用ブラダー表面に形成することができる。すなわち、ブラダーの表面をブラッシングしたのち、溶剤、エアブローなどにより、表面を洗浄し、室温又は加温条件下で乾燥する。次いで、本発明の離型剤組成物を刷毛塗り、スプレー塗布、浸漬塗布などの公知の方法によりブラダー表面に塗布する。本発明の離型剤組成物をタイヤ成形用ブラダーに塗布した後は、風乾のみで乾燥してもよいが、好ましくは80℃から250℃程度、より好ましくは120℃から200℃で加熱乾燥すると離型剤とブラダーとが強固に密着する。乾燥時間も特に限定されないが、3分程度から2時間程度でよく、より好ましくは5分から1時間程度である。
【0048】
本発明のタイヤ成形用ブラダーにおいては、ブラダーと離型剤が強固に密着しているため離型剤からなる被膜がブラダーから剥離しにくく、表面の滑り性が向上しており、タイヤ成形加硫時の離型性が改善している。その結果、同一ブラダーを用いるタイヤ成形加硫回数が著しく増加し、タイヤとブラダーの密着による不良タイヤの発生率が低減し、効率的なタイヤ生産を行うことができる。また、本発明のタイヤ成形用ブラダーの離型性能が低下した場合には、そのブラダーに本発明の離型剤組成物を再度塗布することで同一ブラダーを再度繰り返し使用してタイヤの成形加硫を行うことができる。
【0049】
本発明のタイヤブラダーは自転車、モーターサイクル、乗用車、トラック、バス、トレーラー、フォークリフト、農耕車等のあらゆる車両用タイヤ及び航空機用タイヤに適用可能であり、バイヤスタイヤ、ラジアルタイヤ、ソノータイヤ、スタッドレスタイヤ等のタイヤの種類に関係なく使用可能である。
【実施例】
【0050】
以下に、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0051】
ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価方法ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストの方法を以下に示す。
【0052】
(1)ゴムの濡れ性の評価
離型剤組成物を5cm×15cmのブチルゴムシートにバーコーター(#14)にて塗布し、濡れ性を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・・・全くハジキなく均一に塗布可能
○・・・・・1〜2箇所程度部分的にハジキが発生しているが、ほぼ均一に塗布可能
△・・・・・3箇所以上のハジキが発生
×・・・・・完全に液がはじいて均一塗布不能
【0053】
(2)ゴムへの密着性の評価
離型剤組成物を5cm×15cmのブチルゴムシートにバーコーター(#14)にて塗布し、このブチルゴムシートを180℃/30分の条件で加熱し、ブチルゴムシート表面を指で強く擦って、離型剤組成物が剥がれ落ちるかどうか確認した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・・・強く擦っても全く剥れない
○・・・・・強く擦ってもほとんど剥れない
△・・・・・強く擦ると剥れるが、軽く擦っただけでは剥れない
×・・・・・軽く擦っただけで簡単に剥がれ落ちる
【0054】
(3)自転車用タイヤ成形加硫テスト
離型剤塗布面積が1,300cm2である自転車用タイヤ成形用ブラダーを、市販のホワイトスピリット(沸点100〜140℃)を含浸させた紙タオルで拭き取り洗浄し、1日乾燥させた。このブラダーの表面に、離型剤組成物30gを刷毛塗りで塗布し、180℃にて20分間乾燥させた。このタイヤ成形用ブラダーを用いてタイヤの成形加硫を行った。10本のタイヤの成形加硫を行う毎に、タイヤとブラダーとの剥離状態とタイヤ内面の状態を観察し、剥離状態の低下あるいはタイヤ内面への離型剤の付着のいずれかが認められた時点でタイヤの成形加硫をやめ、その時点までのタイヤの本数を求めた。
【0055】
[合成例1]
イオン交換水430gにラウリル硫酸ナトリウム10gを溶解させてラウリル硫酸ナトリウム水溶液を得た。別の容器に平均して式:HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]38-Si(CH3)2-OHで表される両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサン455gとγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン45gを仕込み、前記したラウリル硫酸ナトリウム水溶液を加え、ホモミキサーにて攪拌後、ホモゲナイザー乳化機を用いて、800kg/cmで試料を2回通過させて乳化を行った。得られた乳化液を5℃まで冷却し、ここに2質量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液50gを加え、5℃にて72時間乳化重合を行った。その後、2質量%アンモニア水10gを加え、中和を行ってメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを得た。
【0056】
[合成例2]
合成例1における両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサンを平均して式:HO-Si(CH3)2O-[Si(CH3)2O]58-Si(CH3)2-OHで表される両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサンに変更した他は合成例1と同様にしてメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを得た。
【0057】
[合成例3]
合成例1におけるγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランをγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン24gに変更した他は合成例1と同様にしてメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを得た。
【0058】
[合成例4]
合成例1におけるγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランの添加量を155gに変更した他は合成例1と同様にしてメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを得た。
【0059】
[合成例5]
容器にオクタメチルシクロテトラシロキサン457gとγ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン43g、及び10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液140gを仕込み、ホモミキサーにて一次乳化を行い、更にイオン交換水150g加えて希釈した後、ホモゲナイザー乳化機を用いて、300kg/cmで試料を2回通過させて更に乳化を行った。得られた乳化物を70℃にて4時間保持し、その後、10質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液72gを添加し、5℃にて40時間熟成を行い重合をおこなった。熟成終了後、5質量%炭酸ソーダ水溶液60gを加えて中和を行い、メルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを得た。
【0060】
[合成例6]
合成例5におけるγ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランの代わりにテトラメチルテトラ(γ-メルカプトプロピル)シクロテトラシロキサン65gを使用した他は合成例5と同様にしてメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを得た。
【0061】
[比較合成例1]
合成例1におけるγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランをγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン12gに変更した他は合成例1と同様にしてメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスを得た。
【0062】
[比較合成例2]
合成例1におけるγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランをγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン45gとした他は合成例1と同様にしてエポキシ基含有ポリシロキサンラテックスを得た。
【0063】
[比較合成例3]
合成例1におけるγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランをγ-(β-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン45gとした他は合成例1と同様にしてアミノ基含有ポリシロキサンラテックスを得た。
【0064】
[実施例1]
合成例1で得たメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックス40.0g、ゴムの濡れ性改良剤としてのポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノールNF-08、第一工業製薬株式会社製)3.0g、増粘剤としてのアルカシーガム(商品名、伯東株式会社製)の0.5質量%水溶液40.0g、イオン交換水20.0gを混合し、タイヤ成形加硫用離型剤組成物を調製した。
得られた離型剤組成物について、ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価、ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストを行った。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例2〜6、比較例1〜3]
実施例1において合成例1で得たメルカプト基含有オルガノポリシロキサンラテックスに代えてそれぞれ合成例2〜6及び比較合成例1〜3にて合成したシロキサンラテックス40.0gを使用した他は実施例1と同様にしてタイヤ成形加硫用離型剤組成物を調製した。
得られた離型剤組成物について、ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価、ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストを行った。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例7]
実施例1におけるポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノールNF-08、第一工業製薬株式会社製)に代えて、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノールPS-06、第一工業製薬株式会社製)3.0gを使用した他は実施例1と同様にしてタイヤ成形加硫用離型剤組成物を調製した。
得られた離型剤組成物について、ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価、ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストを行った。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例8]
実施例1におけるポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノールNF-08、第一工業製薬株式会社製)に代えて、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム(ハイテノール330T、第一工業製薬株式会社製)3.0gを使用した他は実施例1と同様にしてタイヤ成形加硫用離型剤組成物を調製した。
得られた離型剤組成物について、ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価、ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストを行った。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例9]
実施例1におけるポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノールNF-08、第一工業製薬株式会社製)に代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノールLA-12、第一工業製薬株式会社製)3.0gを使用した他は実施例1と同様にしてタイヤ成形加硫用離型剤組成物を調製した。
得られた離型剤組成物について、ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価、ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストを行った。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例10]
実施例1において、アルカシーガム(商品名、伯東株式会社製)の0.5質量%水溶液を用いず、イオン交換水の添加量を60.0gに変更した他は実施例1と同様にしてタイヤ成形加硫用離型剤組成物を調製した。
得られた離型剤組成物について、ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価、ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストを行った。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例11]
実施例1において、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノールNF-08、第一工業製薬株式会社製)及びアルカシーガム(商品名、伯東株式会社製)の0.5質量%水溶液を用いず、イオン交換水の添加量を60.0gに変更した他は実施例1と同様にしてタイヤ成形加硫用離型剤組成物を調製した。
得られた離型剤組成物について、ゴムの濡れ性及びゴムへの密着性の評価、ならびに自転車用タイヤ成形加硫テストを行った。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)環状ジオルガノポリシロキサンもしくは両末端シラノール基含有ジオルガノポリシロキサン又はこれらの組み合わせ 100質量部と
(B)下記一般式(1):
(R1O)a(R2)(3-a)Si-R3-SH (1)
(式中、R1及びR2は炭素原子数1から4の一価炭化水素基を表し、R3は炭素原子数1から10の二価炭化水素基を表し、aは、2又は3である)
で示されるメルカプト基含有アルコキシシランもしくは下記一般式(2):
【化1】


(式中、R2及びR3は前記のとおりであり、mは平均で3から6の数である)
で示されるメルカプト基含有環状ポリシロキサン又はこれらの組み合わせ 5〜30質量部とを、
(C)乳化重合触媒 0.1〜15質量部、
(D)乳化剤 0.1〜15質量部、及び
(E)水 80〜500質量部
の存在下で乳化重合してなるオルガノポリシロキサンラテックスを含有するタイヤ成形加硫用離型剤組成物。
【請求項2】
(F)ゴムの濡れ性改良剤 前記オルガノポリシロキサンラテックス100質量部に対し、0.1〜10質量部、及び
(G)増粘剤 前記オルガノポリシロキサンラテックス100質量部に対し、0.01〜10質量部
の少なくとも一方を更に含有する請求項1に係るタイヤ成形加硫用離型剤組成物。
【請求項3】
(F)成分がアニオン界面活性剤である請求項2に係るタイヤ成形加硫用離型剤組成物。
【請求項4】
前記アニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレン置換アルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン非置換アルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン置換アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン非置換アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン置換アリールエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン非置換アリールエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレン置換アリールエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン非置換アリールエーテル硫酸アンモニウム、又はこれらの2種以上の組み合わせである請求項3に係るタイヤ成形加硫用離型剤組成物。
【請求項5】
(G)成分が多糖類である請求項2〜4のいずれか1項に係るタイヤ成形加硫用離型剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ成形加硫用離型剤組成物でコーティングされたタイヤ成形用ブラダー。

【公開番号】特開2011−251463(P2011−251463A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126706(P2010−126706)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】