説明

タイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置及びタイヤ検査装置

【課題】タイヤやタイヤ構成部材の表面の欠陥を高精度に検査することを可能とする。
【解決手段】タイヤ又はタイヤ構成部材の表面の検査における前記表面の撮像画像から欠陥領域を抽出するためのタイヤ検査用特徴抽出プログラムを作成するタイヤ検査用の特徴抽出プログラム作成装置10は、前記タイヤ検査用特徴抽出プログラムを構成する複数種類の画像処理用フィルタを記憶するフィルタ記憶部14と、前記タイヤ又は前記タイヤ構成部材の表面に発生し得る欠陥が撮像された原画像を記憶した原画像記憶部16と、前記撮像画像を前記特徴抽出プログラムにより処理した際の目標となる目標画像を記憶する目標画像記憶部18と、前記原画像と前記目標画像とに基づいて、遺伝的プログラミングにより前記複数種類の画像処理用フィルタの中から適応度が最大となる画像処理用フィルタの組み合わせを決定する遺伝的プログラミング部12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ又はタイヤ構成部材の表面を検査するためのタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置及びタイヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等の被検出体の表面欠陥について、変位センサにより得られる表面形状の凹凸波形から周波数解析することにより欠陥検出する技術が各種知られている。その周波数解析には、高速フーリエ変換による技術が一般的に知られており、この技術では計測データに含まれる雑音(ノイズ)の除去や欠陥部の抽出(欠陥位置の特定)が可能である。この高速フーリエ変換では、位置特定が困難であるため、タイヤ外面の変位をセンサにより検知し、その変位信号であるセンサ出力信号についてウェーブレット処理により波形を得て、得られた波形と欠陥波形とを比較することによりタイヤ欠陥を検出する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなタイヤ等の表面欠陥を変位センサを用いて行うことに比べ、タイヤ等の表面を撮像した撮像画像を画像処理して検査することは、目視検査に近く、好ましい検査である。
【特許文献1】特開平10−106453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像処理によりタイヤ等の表面欠陥を得る方法では、画像処理のための様々なフィルタを詳細に設定した後に画像処理しなければならず、その設定は職人芸的なものであった。例えば、表面欠陥を表示させるためにタイヤ等の表面から欠陥箇所を抽出するのには、複数のフィルタ等を組み合わせたタイヤ検査用の特徴抽出プログラムを作成する必要がある。この特徴抽出プログラムの作成には、膨大な処理時間を要すると共にフィルタの組み合わせ等の設定は熟練者に依存する必要があった。従って、多数の種類が存在するタイヤやタイヤ構成部材の各々の検査に適用するのには実用的ではなく、また、特徴抽出プログラムの作成を簡単に行うことが困難であった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、タイヤやタイヤ構成部材の表面の欠陥を高精度に検査することを可能とするタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置及びタイヤ検査装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明のタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置は、タイヤ又はタイヤ構成部材の表面の検査における前記表面の撮像画像から欠陥領域を抽出するためのタイヤ検査用特徴抽出プログラムを作成するタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置であって、前記タイヤ検査用特徴抽出プログラムを構成する複数種類の画像処理用フィルタを記憶するフィルタ記憶手段と、前記タイヤ又は前記タイヤ構成部材の表面に発生し得る欠陥が撮像された原画像を記憶した原画像記憶手段と、前記撮像画像を前記特徴抽出プログラムにより処理した際の目標となる目標画像を記憶する目標画像記憶手段と、前記原画像と前記目標画像とに基づいて、遺伝的プログラミングにより前記複数種類の画像処理用フィルタの中から適応度が最大となる画像処理用フィルタの組み合わせを決定する決定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、タイヤ又はタイヤ構成部材の表面に発生し得る欠陥が撮像された原画像と、撮像画像を特徴抽出プログラムにより処理した際の目標となる目標画像とに基づいて、遺伝的プログラミングによりタイヤ検査用特徴抽出プログラムを構成する複数種類の画像処理用フィルタの中から適応度が最大となる画像処理用フィルタの組み合わせを決定するので、容易にタイヤ検査用特徴抽出プログラムを作成することができると共に、タイヤやタイヤ構成部材の表面の欠陥を高精度に検査することを可能とすることができる。
【0008】
なお、請求項2に記載したように、前記原画像記憶手段は、前記欠陥の種類毎に前記原画像を記憶すると共に、前記目標画像記憶手段は、前記欠陥の種類毎に前記目標画像を記憶するようにしてもよい。これにより、様々な欠陥の検査に対応することが可能となる。
【0009】
請求項3記載の発明のタイヤ検査装置は、請求項1又は請求項2記載のタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置で作成されたタイヤ検査用特徴抽出プログラムを記憶するプログラム記憶手段と、タイヤ又はタイヤ構成部材の表面を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した撮像画像を前記プログラム記憶手段に記憶された特徴抽出プログラムにより画像処理する画像処理手段と、前記画像処理手段による処理後の画像に基づいて、前記タイヤ又はタイヤ構成部材の表面の欠陥の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、請求項1又は請求項2記載のタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置で作成されたタイヤ検査用特徴抽出プログラムを用いてタイヤ又はタイヤ構成部材の表面の欠陥の検査を行うので、タイヤやタイヤ構成部材の表面の欠陥を高精度に検査することができる。
【0011】
なお、請求項4に記載したように、前記判定手段は、前記処理後の画像に関する複数のパラメータを各々算出する算出手段を含み、前記複数のパラメータに関して予め定めた条件に基づいて、前記欠陥の有無を判定するようにしてもよい。これにより、より高精度に欠陥を検査することができる。
【0012】
また、請求項5に記載したように、前記判定手段は、前記複数のパラメータを用いた重回帰式により前記処理後の画像の前記目標画像に対する適応率を求める適応率算出手段を含み、前記条件は、前記適応率に関して予め定めた条件を含むようにしてもよい。これにより、より高精度に欠陥を検査することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、タイヤやタイヤ構成部材の表面の欠陥を高精度に検査することが可能になる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
まず、タイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置について説明する。本実施形態に係るタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置は、タイヤやタイヤを構成するタイヤ構成部材の表面に発生している欠陥領域を精度良く抽出するための特徴抽出プログラム(画像処理プログラム)を自動的に作成するための装置である。なお、本実施の形態では、一例としてタイヤ構成部材であるベルトプライの表面検査用の特徴抽出プログラムを自動的に作成する場合について説明する。
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係る特徴抽出プログラム作成装置10の概略構成図を示した。同図に示すように、特徴抽出プログラム作成装置10は、遺伝的プログラミング部12、フィルタ記憶部14、原画像記憶部16、目標画像記憶部18、及び作成プログラム記憶部20を含んで構成されている。
【0017】
フィルタ記憶部14には、タイヤ構成部材の表面の画像に対して各種のフィルタ処理(画像処理)を施す複数のフィルタが記憶されている。フィルタとしては例えばメディアンフィルタ等の公知の各種フィルタがあるが、処理対象のベルトプライの画像に対して画像処理を施すものであれば、所定の画像処理を施す関数や画像処理プログラムでもよく、本発明のフィルタにはこれらも含まれる。
【0018】
原画像記憶部16には、過去に撮像した各種の欠陥を含むベルトプライの表面の画像が欠陥の種類毎に記憶されている。
【0019】
目標画像記憶部18には、遺伝的プログラミング部12により作成された特徴抽出プログラムにより、実際の検査においてベルトプライの表面の撮像画像を処理した時の目標となる目標画像が、欠陥の種類毎に記憶されている。
【0020】
遺伝的プログラミング部12は、詳細は後述するが、欠陥の種類毎に、上記の原画像や目標画像等に基づいて最適なフィルタの組み合わせ、すなわち特徴抽出プログラムを遺伝的プログラミングにより作成する。作成した特徴抽出プログラムは、作成プログラム記憶部20に記憶される。
【0021】
これらの各部12〜20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の組み合わせからなるコンピュータにより構成されるものとすることができ、このコンピュータが所定プログラムを読み込んで実行することにより特徴抽出プログラム作成装置10が実現されたものとすることができる。
【0022】
次に、遺伝的プログラミング部12において実行される特徴抽出プログラム作成処理について図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態では、一例としてベルトプライの凹みの欠陥を抽出するのに適した特徴抽出プログラムを作成する場合について説明する。
【0023】
まず、ステップ100では、遺伝的プログラミングの手法に従い、初期個体群を作成する。すなわち、図3に示すようにランダムにN個の個体(木)を生成し、これを初期個体群とする。ここで、個体とは一つの特徴抽出プログラムであり、複数のノードを木構造によって接続したものとして表現される。ノードは、プログラム内の1関数又はデータであり、画像処理に関するフィルタや四則演算等の各種処理を表わす。具体的には、フィルタ記憶部14に記憶された各種フィルタをランダムに組み合わせて図3に示すような初期個体群を作成する。
【0024】
ステップ102では、各個体の適応度Aを、原画像及び目標画像に基づいて次式により計算する。
【0025】
【数1】

【0026】
なお、xは原画像、目標画像の横画素位置、yは原画像、目標画像の縦横画素位置、wは原画像、目標画像の横画素数、hは原画像、目標画像の縦画素数、g(x、y)は目標画像の画素位置、h(x、y)は原画像の画素位置である。また、上記(1)式は、一例として各画像の階調が0〜255の256階調の場合の式である。
【0027】
具体的には、原画像記憶部16からベルトプライの凹みを含む原画像を読み込むと共に、目標画像記憶部18からベルトプライの凹みに対応した目標画像、すなわちベルトプライの凹みを明確に認識できる目標画像を読み込む。そして、読み込んだ原画像に対して各個体により画像処理を行い、その処理後の原画像と目標画像とに基づいて上記(1)式により適応度を計算する。
【0028】
例えば図3の個体1における適応度Aを計算する場合、読み込んだ原画像を個体1の末端のノードであるノードH、I、E、F、Gの各々に対して原画像を入力させ、個体1の根であるノードAまで各処理を施す。すなわち、例えばノードH、Iに設定されたフィルタ等により原画像を各々処理した画像に対して、ノードDでは例えばノードH、Iの処理が施された画像を足した後に所定のフィルタにより画像処理を施すといったように、末端側のノードから原画像を順次処理して、その個体により処理された画像を得る。
【0029】
適応度の最大値は上記(1)式より1.0であり、適応度が大きいほど、すなわち1.0に近いほど原画像が目標画像に近いことを示す。
【0030】
ステップ104では、次世代の個体の決定を行う。本実施形態では、例えば公知のルーレット選択によってN個の個体の中から幾つかの個体を選択する。なお、選択の方式はルーレット選択に限らずランキング選択等の他の方法を用いてもよい。
【0031】
ルーレット選択式は、個体i(iは個体を表わす添え字)を選ぶ確率をpiとして次式で表わされる。
【0032】
【数2】

【0033】
ここで、fiは個体iの適応度、kは1〜Nの個体番号を示す。
【0034】
ステップ106では、ノードの交叉を行う。すなわち、ステップ104で選択された次世代の個体の中からランダムに2つの個体を選んでペア(親)を作る。そして、例えばユーザーが設定した交叉率(例えば60〜90%程度)で、そのペアを交叉させるか否かを決定する。
【0035】
交叉させると決定した場合には、部分木交換交叉により例えば任意のノード以下の部分木を交叉させる。例えば図3に示す個体1と個体Nの交叉を行う場合、例えば個体1のノードB以下の部分木1−Bと個体NのノードB以下の部分木N−Bとを交換した新たな個体を2つ作成する。なお、新たな個体とせず、元のペアに置き換えても良い。
【0036】
ステップ108では、個体を突然変異させる。具体的には、全個体に対して所定の生起確率(例えば1〜10%程度)で、ランダムにあるノードを別のノードや部分木に交換させる。例えば図1の個体1を突然変異させる場合、例えばノードC以下の部分木を他のノードZや他の部分木に交換する。
【0037】
ステップ110では、次世代の各個体に対してステップ102と同様に適応度を計算する。
【0038】
ステップ112では、所定の終了条件を満たすか否かを判断する。終了条件は、例えば各個体について計算した適応度のうち最大の適応度が1.0である場合や、世代数が例えばユーザーが設定した最大世代数に達した場合等とすることができる。
【0039】
そして、終了条件を満たさない場合にはステップ104へ移行し、さらに次世代の個体について上記と同様の処理を行う。
【0040】
一方、終了条件を満たす場合には、ステップ114へ移行する。そして、例えば、適応度が最大となる個体をベルトプライの凹みを抽出するのに最適な特徴抽出プログラムとして作成プログラム記憶部20に記憶する。このようにして作成した特徴抽出プログラムにより実際に凹みのあるベルトプライを撮像した画像を処理すると、凹み部分を明確に認識可能な目標画像に近い画像を得ることができる。これにより、この特徴抽出プログラムを用いてベルトプライの検査をした場合に、高精度で凹みを検出することが可能となる。
【0041】
上記の処理を欠陥の種類毎に行うことにより、各欠陥に対応した特徴抽出プログラムが作成プログラム記憶部20に記憶される。
【0042】
次に、作成した特徴抽出プログラムを用いてタイヤの構成部材等の検査を行う場合について説明する。なお、本実施形態では、一例としてドラムに巻き掛けられたベルトプライの表面を検査する場合について説明する。
【0043】
図4には、タイヤ検査装置50の概略構成図を示した。同図に示すように、タイヤ検査装置50は、制御部52、駆動部54、撮像部56、表示部58、及び特徴抽出プログラム記憶部60を含んで構成されている。
【0044】
駆動部54は、短冊状のベルトプライ62が巻き掛けられるドラム64を回転駆動させる。
【0045】
撮像部56は、ドラム64に巻き掛けられたベルトプライ62の表面を撮像する。なお、この撮像部56は、本実施形態では一例として予め定めた所定位置(例えば撮像部56の位置)からベルトプライ62の表面までのベルトプライ62の厚み方向における距離を、撮像範囲の各位置について三角測距法により測定するものであり、ベルトプライ62にレーザー光を照射する投光部、ベルトプライ62から反射された光を受光する受光部等を含んで構成される。すなわち、撮像部56は、ベルトプライ62の表面の撮像画像をベルトプライ62の撮像範囲の各位置における厚み方向の距離として取得する。これにより、ベルトプライ62の表面の凹凸を検出することが可能となる。
【0046】
表示部58は、検査結果等を表示するためのものである。特徴抽出プログラム記憶部60は、前述の特徴抽出プログラム作成装置10により作成された各種欠陥に応じた複数の特徴抽出プログラムを予め記憶する。
【0047】
制御部52は、駆動部54、撮像部56、表示部58、及び特徴抽出プログラム記憶部60を統括制御すると共に、特徴抽出プログラム記憶部60に記憶された特徴抽出プログラムを用いて撮像画像を画像処理する。
【0048】
次に、制御部52で実行されるタイヤ検査処理について図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0049】
ステップ200では、駆動部54によりドラム64を回転駆動させ、撮像部56にベルトプライ62の表面を撮像させる。
【0050】
ステップ202では、撮像画像に基づいて、所定の欠陥種類特定処理を行い、欠陥が発生している可能性があるか否か、欠陥が発生している可能性がある場合には、どのような種類の欠陥が発生している可能性があるかを判定し、欠陥種類を特定する。なお、特定する欠陥の種類は、予め用意された特徴抽出プログラムの種類に対応する。
【0051】
前述したように、撮像画像は、撮像範囲の各位置におけるベルトプライ62の厚み方向の距離として取得されているため、例えば凹凸が発生している領域やその形状を判別することができ、これらに基づいて、発生している可能性のある欠陥種類を特定することができる。
【0052】
ステップ204では、発生している可能性のある欠陥種類を特定できたか否かを判断し、例えば凹凸がほぼ発生しておらず欠陥種類を特定できないと判断された場合、すなわち正常であると判断された場合にはステップ214へ移行し、発生している可能性のある欠陥種類を特定することができた場合には、ステップ206へ移行する。
【0053】
ステップ206では、特定した欠陥種類に対応した特徴抽出プログラムを特徴抽出プログラム記憶部60から読み出し、ステップ208において、その特徴抽出プログラムにより、撮像した画像を画像処理する。これにより、欠陥領域を他の領域と明確に判別することが可能な画像が得られる。
【0054】
ステップ210では、画像処理後の撮像画像に基づいて図6に示すような重回帰解析処理が行われる。この重回帰解析処理では、判別された欠陥の種類に応じた処理がなされる。以下では、一例として欠陥の種類が横長の凹みである場合について説明する。
【0055】
図6に示すステップ300では、撮像画像に対して公知のラベリング処理を施し、欠陥と思われる欠陥候補領域を抽出する。本実施形態では、一例として図7(A)に示すように撮像画像70内から横長の凹み領域である欠陥候補領域72が抽出された場合について説明する。なお、欠陥候補領域72は、例えば図7(B)に示すように、ベルトプライ62のうち一部のベルトプライ62Aが何らかの原因によってずれてしまった場合に、その領域(図7(B)においてハッチングした領域)の一部(例えば図7(B)において点線枠で示した領域)として抽出される場合があるが、これに限られるものではない。
【0056】
ステップ302では、欠陥候補領域72の長手方向における重心位置Gを求め、この重心位置で欠陥候補領域72を前記長手方向と直交する方向に横切るゲージプロファイルを撮像画像から抽出する。前述したように、撮像画像は、ベルトプライ62の厚み方向における距離で表わされるため、前記ゲージプロファイルは、図8(A)に示すように欠陥候補領域72の位置で凹部74となるようなプロファイルとなる。
【0057】
ステップ304では、抽出したゲージプロファイルに対して平滑微分フィルタ処理を施す。これにより、図8(B)に示すように、同図8(A)の凹部74の壁74A、74Bに相当する位置に互いに逆方向のピーク76A、76Bを有するプロファイルが得られる。
【0058】
ステップ306では、図8(B)に示すプロファイルをチェーンコード化する。本実施形態におけるチェーンコード化では、図9(A)に示すように、中心である‘0’から見た8方向に‘1’〜‘8’のコード(数字)を割り当て、このコードでプロファイルを表現する。図8(B)に示すプロファイルをチェーンコード化した例を図9(B)に示す。
【0059】
ステップ308では、欠陥候補領域72がその周辺と比較してどの程度凹んでいるかを示すボリューム偏差を求める。具体的には、図7(A)に示すように欠陥候補領域72を含む矩形領域78を定義し、例えば欠陥候補領域72の画素(ベルトプライ62の厚み方向の距離)の平均値と、矩形領域78から欠陥候補領域72を除いた周辺領域の画素の平均値との差分を求めてこれをボリューム偏差とする。
【0060】
ステップ310では、欠陥候補領域72の面積、図7(A)に示すようにX方向(横方向)主軸長X1及びY方向(縦方向)主軸長Y1を算出する。
【0061】
ステップ312では、適応率gを重回帰式により算出する。本実施形態では、重回帰式を次式で表わす。
【0062】
g=(k1×a1)+(k2×a2)+(k3×a3)+(k4×a4)+(k5×a5)+(k6×a6)+g0 ・・・(3)
【0063】
ここで、a1〜a6は図6の処理で得られた欠陥候補領域72に関するパラメータから選択されたパラメータである。本実施形態では、例えば以下のようにパラメータを設定するが、これに限られない。また、重回帰式や各パラメータは欠陥の種類に応じて適宜変更することができる。
【0064】
a1:図9(B)に示すチェーンコードのコード‘1’、‘7’の傾斜角度。
【0065】
a2:図9(B)に示すチェーンコードのコード‘3’、‘5’の傾斜角度。
【0066】
a3:欠陥候補領域72の面積。
【0067】
a4:欠陥候補領域72のY方向主軸長Y1。
【0068】
a5:欠陥候補領域72のX方向主軸長X1。
【0069】
a6:欠陥候補領域72とその周辺領域とのボリューム偏差。
【0070】
また、k1〜k6、g0は多数の過去のデータに基づいて最小自乗法等を用いて求めた定数である。
【0071】
そして、図5のステップ212において、正常か否か、すなわち欠陥候補領域72が欠陥ではなく正常であるか否かを判定する。
【0072】
具体的には、例えば複数の条件(ルール)を全て満たした場合に欠陥と判定し、それ以外は欠陥ではないと判定するプロダクションルールを用いた判定を行うことができる。本実施形態では、一例として以下のルール1〜8の全てを満たした場合に異常と判定する。
【0073】
ルール1:図9(B)に示すチェーンコードのコード‘8’の後にコード‘4’が出現する。
【0074】
ルール2:図9(B)に示すチェーンコードのコード‘1’、‘7’、‘3’、‘5’の傾斜角度のうち所定閾値以上となるものがある。
【0075】
ルール3:欠陥候補領域72の面積>所定閾値以上。
【0076】
ルール4:欠陥候補領域72のY方向主軸長Y1<欠陥候補領域72のX方向主軸長X1。
【0077】
ルール5:欠陥候補領域72のY方向主軸長Y1>所定閾値以上。
【0078】
ルール6:欠陥候補領域72のX方向主軸長X1>所定閾値以上。
【0079】
ルール7:ボリューム偏差<所定閾値。
【0080】
ルール8:適応率g<所定閾値
【0081】
なお、ルールの設定は一例であって、これに限られるものではなく、ルールの設定は欠陥の種類等に応じて適宜変更することができる。例えば、上記のルール8のみを用いて判定するようにしてもよい。すなわち、適応率g<所定閾値を満たせば欠陥(異常)と判定し、満たさなければ欠陥ではない(正常)と判定するようにしてもよい。
【0082】
そして、ステップ212で正常と判定した場合には、ステップ214へ移行して例えば正常である旨を表示部58に表示させ、異常と判定した場合には、ステップ216へ移行して異常である旨を表示部58に表示させる。
【0083】
このように、本実施形態では、特徴抽出プログラム作成装置10により遺伝的プログラミングを用いて欠陥の種類毎に特徴抽出プログラムを作成し、これを用いてタイヤ構成部材の検査を行うので、タイヤ構成部材の表面にどのような欠陥が発生しているかを高精度に検査することができる。
【0084】
また、本実施形態では、タイヤ構成部材としてベルトプライの表面を検査する場合について説明したが、これに限らず、他のタイヤ構成部材の表面の検査や完成品のタイヤの表面の検査にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】特徴抽出プログラム作成装置の概略構成図である。
【図2】特徴抽出プログラム作成処理のフローチャートである。
【図3】初期個体群の一例を示す図である。
【図4】タイヤ検査装置の概略構成図である。
【図5】タイヤ検査処理のフローチャートである。
【図6】重回帰解析処理のフローチャートである。
【図7】(A)は欠陥の一例を示すイメージ図、(B)は(A)を含む全体図である。
【図8】(A)はゲージプロファイルを示す図、(B)は(A)のゲージプロファイルを平滑微分フィルタ処理した後のゲージプロファイルを示す図である。
【図9】(A)はチェーンコードについて説明するための図、(B)はゲージプロファイルをチェーンコード化した図である。
【符号の説明】
【0086】
10 特徴抽出プログラム作成装置(タイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置)
12 遺伝的プログラミング部(決定手段)
14 フィルタ記憶部(フィルタ記憶手段)
16 原画像記憶部(原画像記憶手段)
18 目標画像記憶部(目標画像記憶手段)
20 作成プログラム記憶部
50 タイヤ検査装置
52 制御部(画像処理手段、判定手段、算出手段、適応率算出手段)
54 駆動部
56 撮像部
58 表示部
60 特徴抽出プログラム記憶部(プログラム記憶手段)
62 ベルトプライ
64 ドラム
70 撮像画像
72 欠陥候補領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ又はタイヤ構成部材の表面の検査における前記表面の撮像画像から欠陥領域を抽出するためのタイヤ検査用特徴抽出プログラムを作成するタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置であって、
前記タイヤ検査用特徴抽出プログラムを構成する複数種類の画像処理用フィルタを記憶するフィルタ記憶手段と、
前記タイヤ又は前記タイヤ構成部材の表面に発生し得る欠陥が撮像された原画像を記憶した原画像記憶手段と、
前記撮像画像を前記タイヤ検査用特徴抽出プログラムにより処理した際の目標となる目標画像を記憶する目標画像記憶手段と、
前記原画像と前記目標画像とに基づいて、遺伝的プログラミングにより前記複数種類の画像処理用フィルタの中から適応度が最大となる画像処理用フィルタの組み合わせを決定する決定手段と、
を備えたことを特徴とするタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置。
【請求項2】
前記原画像記憶手段は、前記欠陥の種類毎に前記原画像を記憶すると共に、前記目標画像記憶手段は、前記欠陥の種類毎に前記目標画像を記憶することを特徴とする請求項1記載のタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のタイヤ検査用特徴抽出プログラム作成装置で作成されたタイヤ検査用特徴抽出プログラムを記憶するプログラム記憶手段と、
タイヤ又はタイヤ構成部材の表面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した撮像画像を前記プログラム記憶手段に記憶されたタイヤ検査用特徴抽出プログラムにより画像処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段による処理後の画像に基づいて、前記タイヤ又はタイヤ構成部材の表面の欠陥の有無を判定する判定手段と、
を備えたタイヤ検査装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記処理後の画像に関する複数のパラメータを各々算出する算出手段を含み、前記複数のパラメータに関して予め定めた条件に基づいて、前記欠陥の有無を判定することを特徴とする請求項3記載のタイヤ検査装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記複数のパラメータを用いた重回帰式により前記処理後の画像の前記目標画像に対する適応率を求める適応率算出手段を含み、前記条件は、前記適応率に関して予め定めた条件を含むことを特徴とする請求項4記載のタイヤ検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−122939(P2009−122939A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295907(P2007−295907)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】