説明

タイヤ空気圧モニターの故障判別装置及びその故障判別方法

【課題】電波妨害と受信機の故障とを高精度に判別する。
【解決手段】タイヤ内に設けられた送信機と、該送信機が発するタイヤ空気圧情報を含んだ電波を受信する受信機とを含むタイヤ空気圧モニターの故障判別装置である。故障判別装置は、受信機が受信した電波強度を検出し、車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況を検出し(S320、S330)、走行状況に基づいて、車両の時間経過による位置を3つ以上算出する(S342)。そして、3つ以上の車両位置で、電波強度検出手段で検出した反比例する車両位置からの距離を各車両位置で求め、その車両位置から電波発信源までの想定距離が等しい等強度範囲を各車両位置で求め、各車両位置での等強度範囲が所定の一致状態となる場合に、その一致状態にある等強度範囲を電波発信源として特定する(S363)。一致状態にある等強度範囲がなく、電波発信源が特定できないときに、受信機3の故障と判別する(S390)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧モニターの故障判別装置及びその故障判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外来電波による障害の対策手段として、特許文献1に開示された車載用レーダ装置が知られている。特許文献1では、先ず、ビーム受信手段で被検出物体から反射された受信信号を検出して相対距離及び相対速度を検出するレーダ観測期間後からビーム送信手段で次の送信信号を送出するまでの間のレーダ観測期間外を電波障害判定期間と定めている。
【0003】
そして、この電波障害判定期間において閾値を超える周波数成分が観測された場合、現在から過去に遡ってノイズ成分の連続性を検証し、予め設定した条件以上の連続性が認められた場合、外来電波による障害下にあると判断している。
【0004】
さらに、自車両の走行距離をモニターすると共に、カウンタからの信号で電波障害の連続性をモニターし、ある走行距離以上連続して電波障害検知が続いた場合に限り、回路系に異常があると判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−111773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、回路系の異常(故障)か或いは電波妨害かの判別は可能だが、車両の走行状態に関わらず、単に時間や距離だけで判別しているため、必ずしも故障判別の精度が十分に高いとはいえない。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電波妨害と受信機の故障とを高精度に判別できるタイヤ空気圧モニターの故障判別装置及び故障判別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、タイヤ内に設けられた送信機と、送信機が発するタイヤ空気圧情報を含んだ電波を受信する受信機とを含むタイヤ空気圧モニターの故障判別装置である。この故障判別装置は、受信機が受信した電波強度を検出し、車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況を検出し、走行状況に基づいて、車両の時間経過による位置を3つ以上算出する。そして、3つ以上の車両位置で、電波強度検出手段で検出した電波強度に反比例する車両位置から電波発信源までの想定距離を各車両位置で求め、更に、この想定距離が等しい等強度範囲を各車両位置で求め、各車両位置での等強度範囲が所定の一致状態となる場合に、その一致状態にある等強度範囲を電波発信源として特定する。そして、電波発信源を特定できないときには、受信機の故障と判別する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わるタイヤ空気圧モニターの故障判別装置及び故障判別方法によれば、車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況に基づいて、電波発生源を高精度に予測して、電波妨害と受信機の故障とを高精度に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係わるタイヤ空気圧モニターの故障判別装置を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の受信機3の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図2の信号出力回路16の動作を説明する為のグラフである。
【図4】図1の制御部6の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】図1のタイヤ空気圧モニターがタイヤ5の空気圧の状態を判断する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】タイヤ空気圧モニターの故障判別装置が電波発生源を予測して、電波妨害と受信機3の故障とを判別する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)は、受信した電波の電界強度の時間変化の一例を示すグラフであり、図7(b)は、S320段階でプロットした操舵角の時間変化の一例を示すグラフである。図7(c)は、車両の挙動(向き)の時間変化の一例を示すグラフである。図7(d)は、xy座標上における車両の走行軌跡TGの一例を示すグラフである。そして、図7(e)は、走行軌跡TGに重ね合わせて描画した半径の円Cb〜Cdの一例を示す図である。
【図8】円Ca〜Ccの交点が交差領域α内にある場合の一例を示す図である。
【図9】図9(a)は、操舵状態に所定値以上の変化があるにもかかわらず、電波強度の変化が所定値以下である場合の一例を示すグラフであり、図9(b)は、図9(a)の例を描画し、円Ca〜Ccの交点が交差領域α内に入らない例である。
【図10】車両の電波放射特性の一例を示すグラフである。
【図11】電界強度検出回路15により検出された電界強度と、電波発信源までの想定距離の反比例関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付している。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係わるタイヤ空気圧モニター及び故障判別装置を含むシステム全体の構成を説明する。このシステムは、自動車のタイヤ空気圧を常時モニタリングするタイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS)である。このTPMSは、まず、各タイヤ5やホイール内部にセンサー(送信機2)を搭載し、タイヤ5の空気圧や温度を検知し、車体1に搭載された受信機3へ電波で空気圧情報や状態コード等を送信する。そして、空気圧が基準外になっている場合は警報を発する、いわゆる直接式TPMSである。
【0013】
送信機2は、タイヤ5内の空気圧等の情報を検出して、UHF帯の電波で発信する。受信機3は、ハーネスなどにより制御部6に接続されている。受信機3が受信した空気圧情報や状態コード等はこのハーネスを介して制御部6へ伝達される。制御部6は、表示器4にも接続され、タイヤ5の空気圧の状態を判断する。空気圧が基準外になっていると判断した場合、制御部6は、表示器4を通じて、ドライバに対して警報を発する。また、制御部6は、車両の操舵状態を検出する操舵角センサ8、及び車両の速度を検出する車速センサ9にも接続されている。
【0014】
なお、操舵角センサ8及び車速センサ9は、車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況を検出する「走行状況検出手段」の一例に相当する。
【0015】
図2を参照して、受信機3の詳細な構成を説明する。受信機3は、UHF帯の電波で受信
するアンテナ10と、アンテナ10が受信した電波から所定の周波数成分を抽出するフィルタ11と、抽出された電波の振幅の絶対値を増幅する増幅器12と、増幅された電波の波形を整える検波/発振回路13と、整形された電波の電界強度(電波強度の一例)を検出する電界強度検出回路15と、認識閾値以上の電界強度が流れた場合に電界強度を信号へ変換する信号出力回路16と、検波/発振回路13へ電力を供給する電源回路14とを備える。
【0016】
電界強度検出回路15により検出された電界強度、及び信号出力回路16により変換された電界強度の信号は、制御部6へ送信される。
【0017】
なお、電界強度検出回路15は、受信機3が受信した電波強度を検出する「電波強度検出手段」の一例に相当する。
【0018】
図3に示すように、信号出力回路16は、認識閾値以上の電界強度が電界強度検出回路15で検出された場合、電界強度データを信号に変換して制御部6へ出力する。
【0019】
図4を参照して、図1の制御部6の詳細な構成を説明する。制御部6としては、データの演算装置、データを一時的に記憶するレジスタやメモリ装置、及び周辺機器とのインターフェースを行う入出力装置を備えるマイクロプロセッシングユニット(MPU)を用いることができる。制御部6は、これを機能的に捉えた場合、信号出力回路16により変換された電界強度の信号を読取る信号読取部25と、読取られた信号を圧力などのデータへ変換するデータ処理部26と、電界強度検出回路15により検出された電界強度を読取る電界強度読取部18と、読取られた電界強度、操舵角情報27及び車速情報28に基づいて、車両の走行位置を予測する走行位置予測部19と、電界強度及び予測された車両の走行位置に基づいて、妨害電波の発信源を特定する電波発信源特定部20と、電波発信源の特定有無に基づき、電波妨害と受信機3の故障とを判断する妨害電波/故障判別部21と、妨害電波/故障判別部21による判別結果の表示指令を表示器4に対して出力する表示指令部22と、妨害電波と判別した場合に機器の故障を検知する検知時間を延長する故障検知時間延長部24とを有する。
【0020】
なお、走行位置予測部19は、車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況に基づいて、車両の時間経過による位置を3つ以上算出する「車両位置算出手段」の一例に相当する。
【0021】
また、電波発信源特定部20は、3つ以上の車両位置で、電界強度検出回路15により検出された電界強度に基づいて、電界強度が車両位置から電波発信源までの距離に反比例する関係に従って、車両位置から電波発信源までの想定距離を各車両位置で求め、更に、車両位置を中心とし、想定距離を半径とした等しい強度範囲(等強度範囲)を各車両位置で求める。この等強度範囲が交差する領域が一致状態、すなわち交差領域が所定の領域内にある場合に、その一致状態にある等強度範囲を電波発信源として特定する「電波発信源特定手段」に相当する。
【0022】
図11は、電界強度検出回路15により検出された電界強度を横軸として、この電界強度と、この電界強度から電波発信源までの想定距離との関係を示す。この電界強度と電波発信源までの想定距離との関係は、電界強度が強くなる程、電波発信源までの想定距離は短くなる反比例の関係となっている。
【0023】
妨害電波/故障判別部21は、電波発信源特定部20により電波発信源が特定されると、妨害電波と判別し、電波発信源が特定できないときには受信機3の故障と判別する。この判別結果によって、故障なら表示器4への表示指示を行うよう表示指示部22に指令する「受信機故障判別手段」に相当する。
【0024】
次に、図5を参照して、図1のTPMSがタイヤ5の空気圧の状態を判別する処理手順の一例を説明する。
【0025】
(イ)先ず、S10段階において、受信機3がUHF帯の電波を受信することを待機する。受信機3がUHF帯の電波を受信した場合(S10でYES)、S20段階に進み、受信機3が受信したUHF帯の電波の電界強度を検出する。
【0026】
(ロ)S30段階に進み、電波の電界強度データを制御部6へ送信する。S40段階に進み、電界強度データの初期値が認識閾値以上であるか否かを判断する。認識閾値未満である場合(S40でNO)、S10段階に戻る。一方、認識閾値以上である場合(S40でYES)、S50段階に進み、電界強度データを信号(デジタルデータ)へ変換して、制御部6へ送信する。
【0027】
(ハ)S60段階に進み、電界強度のデジタルデータを各タイヤ5の空気圧などのデータへ変換して、表示器4へタイヤ空気圧などの情報を表示する(S70)。以上の手順を繰返し実施することにより、図1のTPMSは、タイヤ5の空気圧の状態を常時モニターすることができる。
【0028】
次に、図6を参照して、タイヤ空気圧モニターの故障判別装置が等強度範囲を予測して、電波妨害と受信機3の故障とを判別する処理手順の一例を説明する。図6に示すフローチャートは、電波の電界強度データを受信した後(図5のS30段階の後)に開始される。
【0029】
(い)先ず、S310段階において、受信した電波の電界強度が閾値(妨害電波検出閾値Va)を超えたか否かを判断する。妨害電波検出閾値Vaを超えた場合(S310でYES)、制御部6が備えるタイマ機能を用いて、電波妨害継続時間タイマtをスタートさせる(S315段階)。
【0030】
(ろ)S320段階に進み、妨害電波検出閾値Vaを超えた時点の車両向きを0°に設定し、操舵角センサ8により検出された車両の操舵状態から、操舵角をプロットする。その後、S330段階に進む。図7(a)は、受信した電波の電界強度の時間変化の一例を示すグラフであり、図7(b)は、S320段階でプロットした操舵角の時間変化の一例を示すグラフである。
【0031】
(は)一方、電波の電界強度が妨害電波検出閾値Vaを超えていない場合(S310でNO)、S317段階に進み、既に、電波妨害継続時間タイマtがカウント中であるか否かを判断する。タイマtがカウント中であれば(S317でYES)、タイマtをリセットし(S318)、S310段階に戻る。タイマtがカウント中でなければ(S317でNO)、直接、S310段階に戻る。
【0032】
(に)S330段階において、操舵角を積分して車両の挙動をzy座標上へプロットする。図7(c)は、車両の挙動(向き)の時間変化の一例を示すグラフである。併せて、図7(d)に示すように、車両の挙動(向き)と車速情報28とから、xy座標上における車両の走行軌跡TGをプロットする。その後、S341段階に進み、タイマtが10分をカウントしているか否かを判断する。タイマtが10分をカウントしている場合(S431でYES)、S342段階に進み、タイマtが10分に達していない場合(S431でNO)、S310段階に戻る。
【0033】
(ほ)S342段階において、xy座標上における車両の走行軌跡TGの中で、次のよ
うに、A位置〜C位置を車両位置として設定する。A位置は、電界強度が妨害電波検出閾値(妨害電波を検出する下限値)Vaを超えた時の車両位置である。C位置は、妨害電波検出閾値Va以上の電界強度が継続する期間(10分間)において、A位置から最も離れた車両位置である。B位置は、A位置〜C位置の間で最も電界強度が強くなる車両位置である。A位置〜C位置における電界強度をそれぞれVa(妨害電波検出閾値)、Vb、Vcとする。図7(d)は、xy座標上における車両の走行軌跡TGの一例を示すグラフである。
【0034】
このように、受信機3で受信した電波強度が所定値(妨害電波検出閾値Va)以上となる時期を電波発信源の特定開始時期とし、この特定開始時期での車両位置をA位置(第1位置)とする。その後、所定値以上の電波強度が継続する期間において、A位置から最も離れた位置をC位置(第2位置)とし、妨害電波検出閾値Va以上の電波強度が継続する期間において、最も電波強度が強くなる時の車両位置をB位置(第3位置)とする。
【0035】
(へ)S350段階において、A位置〜C位置をそれぞれ中心とする、電波強度Va〜Vcと距離の関係から求められる半径の円Ca〜Ccを走行軌跡TGに重ね合わせて描画する。図7(e)は、走行軌跡TGに重ね合わせて描画した半径の円Ca〜Ccの一例を示す図である。円Ca〜Ccの半径Ra〜Rcは、図11を参照すると、電界強度Va〜Vcに反比例する関係によって決まる車両位置から電波発信源までの想定距離である。ここで電界強度Vaは、妨害電波検出閾値であり、これを元に算出した半径Raは電波発信源からの最大距離を示す。
【0036】
(と)S361段階において、円Ca〜Ccの各交点の集合が所定領域としての交差領域α内にあるか否かを判断する。具体的には、図7(e)に示すように、円CaとCbとが交差する場合に作られる最大2つの交点のうち1つの交点について注目し、円CbとCcとの交差、円CcとCaとの交差についても同様に1つの交点について注目し、これら3つの交点が所定半径の円を外縁とする交差領域α内に集合しているか否かを判断する。図8は、円Ca〜Ccの交点の集合が交差領域α内にある場合の一例を示す図である。各交点が交差領域α内にある場合(S361でYES)、S363段階に進み、電波妨害があると判断して、タイマtを10分に設定する。その後、S310段階に戻る。一方、各交点が交差領域α内にない場合(S361でNO)、S390段階に進み、受信機3の故障であると判別して、その旨を表示器4に表示させる。このように、A位置〜C位置におけるそれぞれの電波強度をもとに、電波強度に反比例する各車両位置から電波発信源までの想定距離Ra〜Rcをそれぞれ求め、更に、各車両位置を中心とし、電波発信源までの想定距離が等強度範囲となる半径とした円Ca〜Ccを求めて、この等強度範囲となる円の交点の集合が交差領域α内にある場合に、この交点の集合の中央部を電波発信源として特定する。
【0037】
(ち)妨害電波/故障判断部21は、妨害電波と特定するために、電波発信源PEが特定できたら(S361でYES)、妨害電波/故障判断部21は、妨害電波と判断する。そして、故障検知時間延長部24は、受信機3の故障を検知する検知時間を所定時間、例えば10分間、延長する。妨害電波で正しい信号の受信ができないことを告知してしまうと、誤って故障とみなしてしまうユーザがいるので、そのユーザの不安を解消することができる。一方、S361の条件が満足できない場合(S361でNO)、S390段階に進み、受信機3の故障であると判別して、その旨を表示器4に表示させる。
【0038】
図9(a),図9(b)を参照して、電波妨害ではなく、受信機3の故障であると判断される例を説明する。操舵状態に所定値以上の変化があるにもかかわらず、電波強度の変化が所定値以下である場合がある。例えば、図9(a)に示すように、車両が走行しているにも関わらず時間に応じて電界強度が変化せずに一定である場合は、受信機3の電圧計
に異常があると判断して、受信機3の故障を表示器4に表示する。このケースでは、図9(b)に示すように、円Ca〜Ccの交点の集合が交差領域α内に入らない。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0040】
車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況に基づいて、車両の時間経過によるA〜C位置を算出する。3つの車両位置(A〜C)における電界強度Va〜Vcに反比例する各車両位置から電波発信源までの想定距離(Ra〜Rc)を求め、更に、車両位置(A〜C)を中心として、電波発信源までの想定距離が等しい電波発信源PEの等強度範囲を円として算出する。車両位置(A〜C)を中心とした等強度範囲となる円の交点の集合が所定領域としての交差領域α内にある場合に、交点の集合の中央部を電波発信源として特定する。これにより、検出した電界強度と、車両の操舵状態と走行速度とを含む走行状況とを併せて電波発生源PEを特定できるので、電波妨害と受信機3の故障とを高精度に判別することができる。
【0041】
3つの車両位置A〜Cでの電界強度Va〜Vcに反比例する関係に従い算出した電波発信源PEの想定距離Ra〜Rcを、車両位置A〜Cをそれぞれ中心とした半径Ra〜Rcの円Ca〜Ccとして算出し、これらの円Ca〜Ccの交差領域を検出する。これにより、電波強度に反比例する車両位置からの距離の関係に基づき電波発生源PEを高精度に求めることができる。
【0042】
受信機3で受信した電界強度が所定値(妨害電波検出閾値Va)以上となる時期を電波発信源の特定開始時期とし、この特定開始時期での車両位置をA位置(第1位置)とし、その後、所定値以上の電界強度が継続する期間において、A位置から最も離れた位置をC位置(第2位置)とし、所定値以上の電界強度が継続する期間において、最も電界強度が強くなる時の車両位置をB位置(第3位置)とする。A位置〜C位置を中心とする、電界強度Va〜Vcと距離の関係から求められる半径Ra〜Rcの円Ca〜Ccを電波発信源PEの等強度範囲とする。この等強度範囲の交点が所定の一致状態になる、つまり所定領域としての交差領域α内にある場合に、この等強度範囲を電波発生源PEとして決定する。これにより、3つ以上の円の交差領域から、電波発生源PEを想定するので、電界強度が変化しても高精度に電波発生源PEを特定できる。
【0043】
操舵状態に所定値以上の変化があり、電波強度の変化が所定値以下である場合、タイヤ空気圧モニターの故障であると判断する。車両の操舵があるにも関わらず、受信した電界強度が高い場合には、電波による受信機3の妨害でないと判断でき、故障とみなすことができる。これにより、電波妨害と受信機3の故障とを高精度に判別することができる。
【0044】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は、1つの実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。すなわち、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【0045】
例えば、B位置の設定は、図6のS342段階に示した基準以外の基準によって行っても構わない。例えば、A位置〜C位置の1/2に当るとしてもよい。或いは、B位置を、A位置〜C位置の間の任意の位置としても構わない。なお、これらの場合においても、受信機3で受信した電波強度が所定値(妨害電波検出閾値Va)以上となる特定開始時期での車両位置をA位置(第1位置)とし、その後、所定値以上の電波強度が継続する期間において、A位置から最も離れた位置をC位置(第2位置)とする。
【0046】
また、図4において、走行位置予測部19は、操舵角センサ8で検出された操舵角情報27と、車速センサ9で検出された車速情報28に基づいて車両の走行位置を予測する代わりに、操舵トルクセンサと車輪速センサとを用いても構わない。
【0047】
更に、車両の電波特性に偏りがある場合、例えば図10に示すような車両の電波放射特性を予め用意しておくことにより、より高精度に電波発生源PEを予測することができる。
【0048】
更に、3つの車両位置(A〜C)における電界強度Va〜Vcに基づく電波発生源PEの予測位置を求める場合を説明したが、車両位置の数は3つに限定されない。4つ以上の車両位置における電界強度に基づく電波発生源PEの予測位置を求めてもよい。例えば新たにD位置を、BとCとの間、もしくは、AとBとの間に任意に設定することで、より精度の高い電波発信源の特定が可能となる。更に、電波強度に反比例する車両位置からの距離を求め、車両位置を中心とした電波強度の等しい等強度範囲は、円だけでなく、円の一部(円弧)でもよい。
【符号の説明】
【0049】
2:送信機
3:受信機
4:表示器
5:タイヤ
6:制御部
8:操舵角センサ(走行状況検出手段)
9:車速センサ(走行状況検出手段)
15:電界強度検出回路(電波強度検出手段)
19:走行位置予測部(車両位置算出手段)
20:電波発信源特定部(電波発信源特定手段)
21:妨害電波/故障判別部(受信機故障判別手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤ内に設けられた送信機と、
該送信機が発するタイヤ空気圧情報を含んだ電波を受信する受信機とを含む、タイヤ空気圧モニターの故障判別装置であって、
前記受信機が受信した電波強度を検出する電波強度検出手段と、
前記車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況を検出する走行状況検出手段と、
前記走行状況に基づいて、前記車両の時間経過による位置を3つ以上算出する車両位置算出手段と、
前記3つ以上の車両位置で、前記電波強度検出手段で検出した電波強度に反比例する車両位置から電波発信源までの想定距離を各車両位置で求め、更に、前記想定距離が等しい等強度範囲を各車両位置で求め、前記車両位置での等強度範囲が所定の一致状態となる場合に、その一致状態にある等強度範囲を電波発生源として特定する電波発生源特定手段と、
前記電波発信源特定手段による電波発信源の特定有無に基づき、電波発信源を特定できないときに前記受信機の故障と判別する受信機故障判別手段と
を備えることを特徴とするタイヤ空気圧モニターの故障判別装置。
【請求項2】
前記電波発生源特定手段は、前記等強度範囲を、前記車両位置を中心とする前記距離を半径とした円として表し、前記3つ以上の車両位置において算出した前記円の交差領域が所定の一致状態となることを検出することで電波発信源を特定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧モニターの故障判別装置。
【請求項3】
前記電波発生源特定手段は、前記受信機で受信した電波強度が所定値以上となる時期を特定開始時期とし、その特定開始時期での前記車両位置を第1位置とし、その後、所定値以上の電波強度が継続する期間において、前記第1位置から最も離れた位置を第2位置とし、前記所定値以上の電波強度が継続する期間において、最も電波強度が強くなる時の車両位置を第3位置とし、前記第1〜第3位置を中心とする、前記車両位置からの距離を半径とした円が交差する領域が所定の一致状態となることを検出することで、前記電波発生源を特定することを特徴とする請求項2に記載のタイヤ空気圧モニターの故障判別装置。
【請求項4】
タイヤ内に設けられた送信機と、
該送信機が発するタイヤ空気圧情報を含んだ電波を受信する受信機とを含む、タイヤ空気圧モニターの故障判別方法であって、
前記受信機が受信した電波強度を検出し、
車両の操舵状態と走行速度を含む走行状況を検出し、
前記走行状況に基づいて、前記車両の時間経過による位置を3つ以上算出し、
前記3つ以上の車両位置における電波強度に反比例する車両位置から電波発信源までの想定距離を各車両位置で求め、その車両位置からの距離が等しい等強度範囲を各車両位置で求め、
前記各車両位置での等強度範囲が所定の一致状態となる場合に、その一致状態にある等強度範囲を電波発生源として特定し、
前記一致状態にある等強度範囲がなく、電波発信源が特定できないときに前記受信機の故障と判別する
ことを特徴とするタイヤ空気圧モニターの故障判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−40940(P2012−40940A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183644(P2010−183644)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】