説明

タッチパネル入力装置のための透明導電層化構造

【課題】感度が高く、破断等に強いタッチパネル入力装置のための透明導電層化構造等を提供する。
【解決手段】タッチパネル入力装置のための透明導電層化構造で、基板4及び層状導電体5を有する。層状導電体5は、基板4上に形成され、導電性高分子の膜を有する透明第一導電層52と、基板4と反対側の第一導電層52上に形成され、導電性金属及び/あるいは金属化合物を有する第二導電層51とを有する。第二導電層51は、第一導電層52より大きい導電率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル入力装置のための透明導電層化構造、特に、第一導電層上に形成され、第一導電層より大きい導電性を持つ第二導電層を有する透明導電層化構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、透明導電層化構造1を有するタッチパネル入力装置は、基板11、インジウムスズ酸化物(ITO)を材料とし、基板11上に形成される透明導電層12、ITOを材料とし、複数のドットスペーサー3により透明導電層化構造1から離間している導電ガラス2を有する。ユーザが基板11を押すと、透明導電層12は曲がり、導電ガラス2に電気的に接触する。
一般に、タッチパネルの感度は透明導電層12の導電性により決まる。ITOは高導電性であるため、透明導電層化構造1はタッチパネルの二つの重要な感度試験、すなわち、タッチパネル上で複数回タップする試験、及び、タッチパネル上で描画することにより導電する描画試験に合格するのに十分な高い感度を有する。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−174665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に示す方法では、ITOからなる透明導電層12が前記の感度試験に合格するための十分な感度を有するが、曲げ強度が悪いために破断しやすい。
曲げ強度を高くするため、ITOからなる透明導電層12の代わりに導電性高分子を使用するという方法がある。しかしながら、導電性高分子は導電性が低いため、導電性高分子を用いたタッチパネル入力装置は描画試験に合格することができない。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、感度が高く、破断等に強いタッチパネル入力装置のための透明導電層化構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、タッチパネル入力装置のための透明導電層化構造であって、基板と、前記基板上に形成される透明第一導電層と、前記基板と反対側の前記第一導電層上に形成され、導電性金属及び/あるいは金属化合物を有する第二導電層とを有する層状導電体と、を有し、前記第二導電層は、前記第一導電層より大きい導電率を有することを特徴とする透明導電層化構造である。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の透明導電層化構造を特徴とするタッチパネル入力装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、感度が高く、破断等に強いタッチパネル入力装置のための透明導電層化構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のタッチパネル入力装置の部分断面を示す図
【図2】本発明の透明導電層化構造の第1の実施形態の概略を示す図
【図3】本発明の透明導電層化構造の第2の実施形態の概略を示す図
【図4】本発明の透明導電層化構造の第3の実施形態の概略を示す図
【図5】本発明の透明導電層化構造の第4の実施形態の概略を示す図
【図6】本発明の透明導電層化構造の第5の実施形態の概略を示す図
【図7】本発明の透明導電層化構造の第6の実施形態の概略を示す図
【図8】本発明の透明導電層化構造を組み込んだタッチパネル入力装置を示す図
【図9】本発明の透明導電層化構造の第7の実施形態の概略を示す図
【図10】本発明の透明導電層化構造の第8の実施形態の概略を示す図
【図11】本発明の透明導電層化構造の第9の実施形態の概略を示す図
【図12】本発明の透明導電層化構造の第10の実施形態の概略を示す図
【図13】本発明の透明導電層化構造の第11の実施形態の概略を示す図
【図14】感度試験に合格したタッチパネル入力装置の結果を示す図
【図15】感度試験に不合格だったタッチパネル入力装置の結果を示す図
【図16】感度試験に不合格だったタッチパネル入力装置の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいて、本発明に係る透明導電層化構造の実施形態を詳細に説明する。尚、以下の説明および図面において、略同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0011】
最初に、図2を参照しながら、本発明に係る透明導電層化構造の第1の実施形態について説明する。
図2に示す第1の実施形態の透明導電層化構造は、基板(substrate)4、層状導電体(layered conductor)5を有する。層状導電体5は、基板4上に形成され、導電性高分子膜(film of conductive polymer)を材料とする第一導電層52と、基板4と反対側の第一導電層52上に形成され、導電性金属及び/あるいは金属化合物を材料とする第二導電層51を有する。第二導電層51は、第一導電層52より大きい導電率を有する。
【0012】
詳細には、第一導電層52の導電性高分子膜は、基板4に導電性高分子(conductive polymer)を分散あるいは溶解した溶液を塗布することにより形成される。導電性高分子は、溶液が乾燥、硬化して膜状に形成される。第二導電層51の形成は、スパッタリング、真空蒸着、パルスレーザ蒸着等のドライコーティング工程によって行われる。
【0013】
次に、図3を参照しながら、本発明の透明導電層化構造の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の透明導電層化構造は、第1の実施形態と異なり、第二導電層51は微粒子(particulate particles)512、好ましくはナノ粒子(nanoparticles)512の形状の金属あるいは金属化合物から形成される薄層である。第二導電層51の薄層は、第一導電層52の表面にナノ粒子の懸濁液を塗布することにより形成される。
【0014】
次に、図4を参照しながら、本発明の透明導電層化構造の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態の透明導電層化構造は、第2の実施形態と異なり、第二導電層51はナノ粒子512に加えて導電性高分子を含み、導電性高分子及びナノ粒子512を含む液体組成物(liquid composition)を第一導電層52に塗布することにより形成される。第3の実施形態における第二導電層51の膜形成能は、第2の実施形態と比較して高くなる。
【0015】
次に、図5、6、7を参照しながら、本発明の透明導電層化構造の第4、第5、第6の実施形態について説明する。
第1、第2、第3の実施形態と異なり、第一導電層52は、導電性粒子521を含む。導電性粒子521が存在することにより、第一導電層52の導電率を高くすることが可能である。導電性粒子521は、第2及び第3の実施形態において用いられているナノ粒子512と同じものでもよい。
【0016】
次に、図8を参照しながら、本発明の透明導電層化構造を有するタッチパネル入力装置について説明する。
スペーサー30は、層状導電体5及び導電膜20間に設けられる。層状導電体5は、後述する突起部(protrusions)513を有する。突起部513を設けることにより、層状導電体5を押下すると第二導電層51は容易に、かつ効率的に導電膜20に接触することが可能となる。突起部513は、タッチパネル入力装置の感度を向上させることができる。
【0017】
次に、図9を参照しながら、本発明の透明導電層化構造の第7の実施形態について説明する。
第7の実施形態の透明導電層化構造は、第1の実施形態と異なり、第二導電層51が第一導電層52上に点群(dots)として、あるいは網目(screen web)として形成されるため、第一導電層52は突起した突起部513を有する。
【0018】
次に、図10を参照しながら、本発明の透明導電層化構造の第8の実施形態について説明する。
第8の実施形態の透明導電層化構造は、第7の実施形態と異なり、第二導電層51は膜状層(film layer)514と、膜状層514から突起した突起部513を有する。第二導電層51は、ドライコーティングあるいはウエットコーティング工程により形成される。マスクを用いて、突起部513を形成する。
【0019】
次に、図11を参照しながら、本発明の透明導電層化構造の第9の実施形態について説明する。
第9の実施形態の透明導電層化構造は、第2の実施形態と異なり、ナノ粒子512が広範な粒子サイズ分布を有するものであり、第二導電層51の表面は突起部513が形成され平坦ではない。
第2の実施形態で使用したナノ粒子512の懸濁液が低濃度の場合、ナノ粒子512は密に分散されず、その結果、突起部513が形成される。
【0020】
次に、図12を参照しながら、本発明の透明導電層化構造の第10の実施形態について説明する。
第10の実施形態の透明導電層化構造は、第3の実施形態と異なり、第二導電層51に用いられる液体組成物は、第3の実施形態と比較してより大量のナノ粒子512を含むため、第二導電層51の表面は平坦ではなくなり、その結果、突起部513が形成される。この場合、突起部513はナノ粒子512と、ナノ粒子512を覆う導電性高分子から形成される。
第7、第8、第9、第10の実施形態における第一導電層52は、導電性粒子521を含む。
【0021】
従来の基板のように、本発明で用いる基板4は、ハードコート層(hard coat layer)、防幻層(anti−glare layer)、防反射層(anti−reflective layer)、水及び気体を浸透させない層(water and gas impermeable layer)、帯電防止層(anti−static layer)、高屈折層(high−refractive layer)、低屈折層(low−refractive layer)、あるいはこれらのいずれかの組み合わせである付加層(additional layer)6が設けられる。図13に示すように、本発明の透明導電層化構造の第11の実施形態は、基板4を間に挟む二つの付加層6を有する。
基板4は、ポリイミド(polyimide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)、ポリアクリレート(polyacrylate)、三酢酸{さんさくさん}セルロース(triacetate cellulose)、シクロオレフィン重合体(cycloolefin polymer)、シクロオレフィン共重合体(cycloolefin copolymer)、あるいは、これらのいずれかの組み合わせ等の適切な重合体からなる。あるいは、基板4はガラスを材料としてもよい。基板4の厚さが25μmから300μmの範囲の場合、基板4は可撓性(flexibility)を示す。好適な実施形態としては、基板4はポリエチレンテレフタレートからなり、厚さは188μm、光線透過率は90%である。
【0022】
第二導電層51に関して、押下前に層状導電体5が導電膜20に接触し、信号誤り、さらに短絡のような問題を回避するため、突起部513の高さはスペーサー30(図8)の高さよりも小さくするべきである。突起部513の高さは、5μmより小さくするのが好ましい。
第二導電層51の厚さは、10μmより小さくするのが好ましく、5μmより小さくするのがさらに好ましい。好適な実施形態では、厚さは1nmから4μmの範囲である。
10nm以下の厚さを有する第二導電層51の形成は、ドライコーティング技術により可能である。10nmより大きい厚さの第二導電層51は、ウエットコーティング技術により得られる。
【0023】
本発明の透明導電層化構造は、70%以上の光線透過率を有することが好ましく、75%以上の光線透過率を有することがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
その一方で、層状導電体5全体の厚さは0.01μmから20μmの範囲であることが好ましく、0.05μmから10μmの範囲であることがさらに好ましく、0.1μmから5μmであることが最も好ましい。
ナノ粒子512あるいは導電性粒子521は、1nmから1000nmの範囲の粒子サイズであることが好ましく、5nmから500nmの範囲であることがさらに好ましく、10nmから100nmの範囲であることが最も好ましい。
【0024】
第二導電層51の導電率は、1S/cmより大きいことが好ましく、さらに100S/cmより大きいことが好ましい。
第一導電層52及び第二導電層51で使用される導電性金属あるいは金属化合物の導電率は、1S/cmあるいは100S/cmより大きい。
本発明で使用する導電性金属は、金、銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、マグネシウム、コバルト、鉛、プラチナ、チタン、タングステン、ゲルマニウム、アルミニウム、及びこれらの組み合わせから構成する群から選択される。
本発明で使用する金属化合物は、導電率が約10S/mのIn、導電率が約1.3×10S/mのSnO、導電率が10〜10S/mのITO、導電率が約2×10S/mのZnO、導電率が約10S/mのATO(アンチモン含有酸化スズ)、導電率が約10S/mのAZO(アンチモン含有酸化亜鉛)、及びこれらの組み合わせから構成する群から選択される。好適な実施形態としては、ITO及び/またはAZOが用いられる。
第一導電層52の導電率は、0.01S/cmより大きいことが好ましく、さらに0.1S/cmより大きいことが好ましい。
【0025】
第一導電層52、第二導電層51に使用される導電性高分子は、導電率が0.01S/cmあるいは0.1S/cmより大きい共役高分子を含むπ電子である。導電性高分子は、例えば、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリ(p−フェニレン)(poly(p−phenylene))、ポリ(フェニレンビニレン)(poly(phenylene vinylene))、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene))(PEDT)、ポリスチレンスルホン酸塩(polystyrene sulfonate)(PSS)、及び、これらの組み合わせである。好適な実施形態としては、導電率が0.1〜1S/cmの範囲のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸塩の混合物(PEDT/PSS)を使用する。
【0026】
導電性高分子の溶液あるいは分散系(液体組成物)を準備するため、適切な溶媒を使用する。例えば、溶媒はイソプロパノール(isopropanol)(IPA)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)(MEK)、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)(MIBK)、水、及び、これらの組み合わせを含む。好適な実施形態では、IPAを使用する。
本発明で使用する導電性高分子の溶液あるいは分散系(液体組成物)は、さらに、層間の接着性を向上させる接着剤(adhesive)、導電率向上剤、界面活性剤等のような添加剤を含む。接着剤は、ポリウレタン分散液(polyurethane dispersion)、ポリエステル分散液(polyester dispersion)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリ塩化ビニリデン分散液(polyvinylidenechloride dispersion)、シラン(silane)、及び、これらの組み合わせから選択される。導電率向上剤は、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)(DMSO)、N−メチルピロリドン(N−methylpyrrolidone)(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−dimethylformamide)、N,N−ジメチルアセトアミド(N,N−dimethylacetamide)、エチレングリコール(ethylene glycol)、グリセリン(glycerine)、ソルビトール(sorbitol)等から選択される。
【0027】
導電性高分子がナノ粒子512、あるいは導電性粒子521と混合されると、ナノ粒子512あるいは導電性粒子521に対する導電性高分子の重量比は、0.01から100の範囲であり、0.1〜50の範囲がより好ましく、0.25〜25の範囲が最も好ましい。
突起部513を形成するため、導電性高分子に対するナノ粒子512の重量比は0.2より大きい方が好ましく、さらに、0.25〜100の範囲がより好ましい。
層状導電体5の表面抵抗(シート抵抗)は、2000Ω/sq未満であり、1500Ω/sq未満であることが好ましく、1000Ω/sqであることがより好ましく、200〜800Ω/sqの範囲が最も好ましい。
【0028】
次に、本発明のタッチパネル入力装置のための透明導電層化構造の効果について、実施例E1〜E6と、比較例CE1〜CE5を参照しながら説明する。
【実施例】
【0029】
透明導電層化構造の材料及び装置を以下に示す。
(1)基板:PET基板(東洋紡績株式会社製、商品名A4300)
(2)導電性高分子分散液:PEDT/PSS(エイチ・シー・スタルク株式会社製、製品番号Clevios P HCV 4、固形分2wt%、高分子導電率0.3S/cm)
(3)導電性ナノ粒子金属化合物:AZO分散液(日産化学製、固形分40wt%、粒子サイズ分布範囲15nm〜100nm)
(4)溶媒:イソプロパノール(IPA)(Acros Organics製)
(5)導電率向上剤:N−メチル−2−ピロリジノン(N−methyl−2−pyrrolidinone)(NMP)(Acros Organics製)
(6)界面活性剤:Dynol(登録商標)604(エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)
(7)接着剤:Silquest A187(モメンティブ社製)
(8)コーティングロッド:No.4及びNo.14(RDS社製)
(9)ITOターゲット:In−SnO(三井金属鉱業株式会社製、90〜10wt%)
【0030】
透明導電層化構造の試験の内容を以下に示す。
(1)光線透過率試験:波長550nmの光線を透明導電層化構造に通過させ、分光光度計CM−3600D(コニカミノルタ製)を用いて透過光対入射光の比を測定する。
(2)表面抵抗試験:抵抗率計(Laresta−EP、三菱化学社製)及び四探針プローブを用いて測定する。透明層状導電体の標準仕様は、200〜800Ω/sqの範囲である。
(3)感度試験:商業用タッチパネル入力装置(AbonTouchsystem社、15インチ)の透明導電層化構造を、本発明の実施例及び比較例の透明導電層化構造と置き換え、タッチパネル入力装置をコンピュータに接続する。試験中、タッチペンでタッチパネル入力装置上に線あるいはパターンを描画する。その後、コンピュータのディスプレイ上に表示された結果を観察し、描画した線あるいはパターンがタッチパネル入力装置を介して完全に入力されているかどうかを確認する。表3における符号「O」は、Fig.14に示すように、描画した線あるいはパターンがタッチパネル入力装置を介して完全に入力されていることを示し、タッチパネル入力装置が感度試験に合格したことを示す。表3における符号「Δ」は、Fig.15に示すように、描画した線あるいはパターンのほとんどの部分がタッチパネル入力装置を介して入力されていることを示す。表3における符号「×」は、Fig.16に示すように、描画した線あるいはパターンが切れ切れに入力されていることを示す。符号「Δ」及び「×」は、タッチパネル入力装置が感度試験に不合格であったことを示す。
【0031】
<実施例E1>
表1に示す導電性高分子製剤を準備し、No.14のコーティングロッドを用いてPET基板上に塗布する。120度で5分間の乾燥処理を行い、第一導電層をPET基板上に形成する。次に、ITOターゲットをスパッタリングすることにより1nmの厚さのITO膜を第一導電層上に形成する。このように形成された透明導電層化構造は、第一及び第二導電層を有する。
【0032】
【表1】

【0033】
<実施例E2及びE3>
実施例E2及びE3の第一導電層は、実施例E1の手順に続いて形成する。しかしながら、実施例E2では、固形分が0.4%より低くなるまで溶媒IPAで100倍に希釈したAZO分散液を用いて第二導電層を形成する。実施例E3では、AZO分散液は希釈しない。No.4のコーティングロッドを用いて、第一導電層上にAZO分散液を塗布する。乾燥処理を行い、実施例E2及びE3の第二導電層を得る。
実施例E3のAZO粒子量は、実施例E2のAZO粒子量より多い。
【0034】
<実施例E4及びE5>
実施例E4及びE5の第一導電層は、実施例E1の手順に続いて形成する。しかしながら、第二導電層はNo.4のコーティングロッドを用いて、表2に示す製剤を使用し、形成する。実施例E4及びE5の第二導電層は導電性高分子を含有するため、その膜形成特性は実施例E2及びE3の膜形成特性よりよい。
実施例E5のAZO粒子対導電性高分子の比は実施例E4よりも大きいため、実施例E5の第二導電層は多数の突起部を有することが推測される。
【0035】
【表2】

【0036】
<実施例E6>
実施例E6は、実施例E4及びE5の手順に続いて、実施例E4及びE5の導電性高分子製剤を用いて行う。実施例E6の第一導電層は、実施例E4の製剤から形成し、実施例E6の第二導電層は実施例E5の製剤から形成する。AZO粒子対導電性高分子の比は、第二導電層の方が第一導電層よりも大きいため、第二導電層の導電率は第一導電層の導電率よりも高く、突起部は第二導電層上にある。
実施例E1〜E5の第二導電層の厚さは、1nm〜4μmの範囲である。
【0037】
<比較例CE1>
比較例CE1の透明導電層化構造は、商業用タッチパネル入力装置(AbonTouchsystem社、15インチ)から得たもので、基板、及び、基板上に形成したITO膜を有する。
【0038】
<比較例CE2>
比較例CE2の透明導電層化構造は、USP7332107の実施例E1において開示されている組成に対応する導電性高分子(PEDT/PSS)分散液を基板に塗布して作成した。導電性高分子の表面抵抗は、例えば、200〜800Ω/sqという標準仕様を満足する。
【0039】
<比較例CE3>
比較例CE3の透明導電層化構造は、WO2007/037292の実施例E1において開示されている組成に対応する導電性高分子(PEDT/PSS)分散液を基板に塗布して作成した。導電性高分子の表面抵抗は、例えば、200〜800Ω/sqという標準仕様を満足する。
【0040】
<比較例CE4及びCE5>
比較例CE4及びCE5の透明導電層化構造は、比較例CE1とほぼ同じである。但し、比較例CE4及びCE5は基板上にITO膜に加えて導電性高分子層を有する。比較例CE4及びCE5の導電性高分子層は、それぞれ、No.4のコーティングロッド及びNo.14のコーティングロッドを用いて形成され、異なる厚さを有する。
【0041】
<試験>
実施例E1〜E6及び比較例CE1〜CE5の各透明導電層化構造をタッチパネル入力装置に取り付け、コンピュータに接続して試験を実施した。試験の結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3の試験結果は、実施例E1〜E6及び比較例CE1は、感度試験に合格していることを示している。しかしながら、実施例E1はITO膜に加えて導電性高分子層を有するため、実施例E1は比較例CE1よりも耐久性がある。比較例CE1は、ITO膜が破断すると使用できなくなる。実施例E1では、ITO膜が破断した場合でも導電性高分子層が信号伝送及び電流電導の機能を引き継ぐことができるため、実施例E1は動作することが可能である。
さらに、表3の試験結果は、ITO膜と導電性高分子層の順序が比較例E1と逆である比較例CE4及びCE5の感度は、実施例E1〜E6の感度よりも劣ることを示している。
【0044】
以上説明したように、本発明の形態に係る透明導電層化構造では、高い導電率を有する第二導電層を第一導電層上に形成することにより、従来の技術における前述した欠点を解消することが可能である。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る透明導電層化構造等の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0046】
1………透明導電層化構造
2………導電ガラス
3………ドットスペーサー
4………基板
5………層状導電体
6………付加層
11………基板
12………透明導電層
20………導電膜
30………スペーサー
51………第二導電層
52………第一導電層
512………ナノ粒子
513………突起部
514………膜状層
521………導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネル入力装置のための透明導電層化構造であって、
基板と、
前記基板上に形成される透明第一導電層と、前記基板と反対側の前記第一導電層上に形成され、導電性金属及び/あるいは金属化合物を有する第二導電層とを有する層状導電体と、
を有し、
前記第二導電層は、前記第一導電層より大きい導電率を有することを特徴とする透明導電層化構造。
【請求項2】
前記第二導電層は、1S/cmよりも大きい導電率を有することを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項3】
前記第二導電層は、100S/cmよりも大きい導電率を有することを特徴とする請求項2記載の透明導電層化構造。
【請求項4】
前記導電性金属及び/あるいは金属化合物は、薄層として形成されることを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項5】
前記導電性金属及び/あるいは金属化合物の前記薄層は、複数の突起部を有することを特徴とする請求項4記載の透明導電層化構造。
【請求項6】
前記突起部は、前記薄層の表面から突起し、前記突起部の高さは5μmより小さいことを特徴とする請求項5記載の透明導電層化構造。
【請求項7】
前記導電性金属及び/あるいは金属化合物は、1nmから1000nmの範囲の粒子サイズを有する微粒子の形状であることを特徴とする請求項5記載の透明導電層化構造。
【請求項8】
前記第二導電層は、さらに、導電性高分子を含み、前記微粒子は、前記第二導電層の前記導電性高分子内に分散されることを特徴とする請求項7記載の透明導電層化構造。
【請求項9】
前記第二導電層における前記微粒子の前記導電性高分子に対する重量比は、0.01から100の範囲であることを特徴とする請求項8記載の透明導電層化構造。
【請求項10】
前記第二導電層における前記微粒子の前記導電性高分子に対する重量比は、0.25から100の範囲であることを特徴とする請求項9記載の透明導電層化構造。
【請求項11】
前記導電性金属は、金、銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、マグネシウム、コバルト、鉛、プラチナ、チタン、タングステン、ゲルマニウム、アルミニウム、及びこれらの組み合わせから構成する群から選択されることを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項12】
前記導電性金属化合物は、In、SnO、ITO、ZnO、ATO、AZO、及びこれらの組み合わせから構成する群から選択されることを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項13】
前記第一導電層の前記導電性高分子は、0.01S/cmより大きい導電率を有することを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項14】
前記第一導電層、あるいは、前記第二導電層の前記導電性高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニル)、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸塩、及びこれらの組み合わせから構成する群から選択されることを特徴とする請求項8記載の透明導電層化構造。
【請求項15】
前記第二導電層は、1nmから4μmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項16】
前記層状導電体は、0.01μmから20μmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項17】
前記層状導電体は、2000Ω/sqより小さい平均表面抵抗を有することを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項18】
前記第一導電層は、さらに、第一導電層の導電性高分子内に分散される導電性粒子を有することを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項19】
前記透明導電層化構造は、70%より大きい光線透過率を有することを特徴とする請求項1記載の透明導電層化構造。
【請求項20】
請求項1に記載される透明導電層化構造を特徴とするタッチパネル入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−86512(P2010−86512A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37525(P2009−37525)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(505283935)迎輝科技股▲分▼有限公司 (6)
【Fターム(参考)】