説明

ダイピックアップ装置

【課題】ダイピックアップ装置において、安定したシート剥離性能を確保する。
【解決手段】吸着ノズル30のパッド30aでダイシングシート29上のダイ21を吸着保持しながら、該ダイ21の貼着部分の手前側から剥離ステージ18を該ダイ21の貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイ21の貼着部分を徐々にシート剥離した後、吸着ノズル30を上昇させてダイ21をピックアップする。吸着ノズル30のパッド30aの吸着面部を多孔質部材又は多孔状部材で形成し、シート剥離開始側の吸着面に対する孔の面積比(気孔率)がシート剥離終了側の吸着面に対する孔の面積比より大きくなるように構成する。これにより、吸着ノズル30のパッド30aのシート剥離開始側の吸着力を相対的に大きくして、安定したシート剥離性能を確保できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングシートに貼着されたダイを吸着ノズルでピックアップする際に、吸着ノズルでピックアップするダイの貼着部分をシート剥離するための剥離ステージを備えたダイピックアップ装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ダイシングシートに貼着されたダイを剥離する方式には、突き上げ剥離方式とスライド剥離方式とがある。突き上げ剥離方式では、特許文献1(特開2010−129949号公報)に記載されているように、碁盤目状にダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシート上のウエハから分割したダイを吸着ノズルで吸着してピックアップする際に、ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分をその真下から突き上げポットで突き上げて該ダイの貼着部分をダイシングシートから部分的に剥離させながら、吸着ノズルで該ダイを吸着してダイシングシートからピックアップするようにしている。
【0003】
しかし、ダイが薄くて割れやすいダイの場合は、上記突き上げ剥離方式ではダイが割れてしまう可能性があるため、スライド剥離方式が用いられる。スライド剥離方式では、特許文献2(特許第3209736号公報)に記載されているように、多数のダイが貼着されたダイシングシート上のダイをピックアップする吸着ノズル(コレット)と、シート吸引孔を有する剥離ステージとを備え、吸着ノズルのパッドでダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から剥離ステージのシート吸引孔を該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで、該ダイの貼着部分を徐々にシート剥離するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129949号公報
【特許文献2】特許第3209736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シート剥離する際に、薄いダイが割れないようにするために、シート剥離するダイのほぼ全面を吸着ノズルのパッドで吸着保持する必要があり、そのために、吸着ノズルのパッドを多孔質材料で形成するのが一般的である。しかし、多孔質パッドの孔は微細であるため、生産設備の負圧源から吸着ノズルに供給される負圧(バキューム圧)に対して多孔質パッドの吸着力が大幅に弱められてしまう。特に、シート剥離開始部分については比較的大きな吸着力が必要となるため、シート剥離開始部分の吸着力が不足して、安定したシート剥離性能を確保できない可能性があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、安定したシート剥離性能を確保できるダイピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ウエハをダイシングして形成した多数のダイが貼着されたダイシングシート上のダイをピックアップする吸着ノズルと、前記吸着ノズルでピックアップするダイの貼着部分をシート剥離する剥離ステージとを備え、前記吸着ノズルのパッドで前記ダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から前記剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイの貼着部分をシート剥離するダイピックアップ装置において、前記吸着ノズルのパッドを、シート剥離開始側の吸着力がその反対側の吸着力より大きくなるように形成したことを特徴とするものである。本発明では、吸着ノズルのパッドのうちのシート剥離開始部分で比較的大きな吸着力を必要とするという事情を考慮して、吸着ノズルのパッドをシート剥離開始側の吸着力が相対的に大きくなるように形成しているため、シート剥離開始部分の吸着力を十分に確保できて、安定したシート剥離性能を確保できる。
【0008】
具体的には、請求項2のように、吸着ノズルのパッドを多孔質部材又は多孔状部材により形成し、シート剥離開始側の吸着面に対する孔の面積比(気孔率)がシート剥離終了側の吸着面に対する孔の面積比より大きくなるように構成すると良い。吸着面に対する孔の面積比が大きくなるほど、吸着力が大きくなるためである。
【0009】
更に、ダイのシート剥離量が増加するに従ってシート剥離に必要な吸引力が小さくなることを考慮して、請求項3のように、吸着ノズルのパッドは、シート剥離開始側からシート剥離終了側に向けて吸着力が徐々に又は段階的に小さくなるように形成しても良い。
【0010】
また、請求項4のように、吸着ノズルのパッドには、シート剥離開始側の吸着面の端部に沿ってスリット状の吸着孔を形成しても良い。このようにすれば、シート剥離開始側の吸着面の端部の吸着力をスリット状の吸着孔によって確実に大きくすることができる。但し、スリット状の吸着孔のスライド方向の幅が大きくなり過ぎると、その吸着力によってダイ自体が吸着孔内に引き込まれて撓んでしまい、ダイが割れてしまう可能性があるため、スリット状の吸着孔は、そのスライド方向の幅が大きくなり過ぎないように制限する必要がある。
【0011】
また、請求項5のように、剥離ステージには、ダイシングシートをその下面側から吸引してダイの貼着部分をシート剥離するためのシート吸引孔を形成すると良い。このようにすれば、ダイシングシートの下面に沿って剥離ステージをスライドさせることで、該剥離ステージのシート吸引孔からの吸引力によりダイシングシートを下方に吸引してダイの貼着部分をシート剥離することができる。
【0012】
また、請求項6のように、剥離ステージのシート吸引孔を、シート剥離しようとするダイの貼着部分に対応する大きさに形成し、該シート吸引孔のスライド方向側の縁部に、該ダイの貼着部分を浮かせながらシート剥離するための凸部を形成しても良い。このようにすれば、剥離ステージのシート吸引孔のスライド方向側の縁部に形成した凸部によってダイの貼着部分を浮かせながらシート剥離することができ、シート剥離性能を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるダイピックアップ装置の斜視図である。
【図2】図2は実施例1のダイピックアップ装置をセットした部品実装機の斜視図である。
【図3】図3は実施例1におけるダイのシート剥離のスライド動作開始時の状態(ダイシングシートの図示を省略)を示す斜視図である。
【図4】図4は実施例1におけるダイのシート剥離のスライド動作終了時の状態(ダイシングシートの図示を省略)を示す斜視図である。
【図5】図5は実施例1におけるダイシングシート上の各ダイと剥離ステージのシート吸引孔との位置関係を説明する平面図である。
【図6】図6は実施例1におけるダイのシート剥離のスライド動作の途中の状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】図7(a)は実施例1の吸着ノズルのパッドを示す縦断正面図、同(b)は同下面図である。
【図8】図8は実施例1におけるダイのシート剥離・ピックアップ動作のシーケンス制御を説明する図である。
【図9】図9(a)は実施例2の吸着ノズルのパッドを示す縦断正面図、同(b)は同下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図1乃至図8を用いて説明する。
図1に示すように、本実施例1のダイピックアップ装置11は、マガジン保持部12(トレイタワー)、パレット引き出しテーブル13、パレット引き出し機構14、サブロボット15、シャトル機構16、反転機構17、剥離ステージ18(図3〜図6参照)、NGコンベア19、ノズルチェンジャー20等を備えた構成となっている。このダイピックアップ装置11は、図2に示すように、部品実装機25のフィーダセット用スロットにパレット引き出しテーブル13を差し込んだ状態にセットされる。
【0016】
ダイピックアップ装置11のマガジン保持部12内に上下動可能に収納されたマガジンには、ダイ21を載せたウエハパレット22と、トレイ部品を載せたトレイパレット(図示せず)とを多段に混載できるようになっている。ウエハパレット22は、碁盤目状にダイシングされたウエハ(多数のダイ21)を貼着した伸縮可能なダイシングシート29(図6、図8参照)を、円形の開口部を有するウエハ装着板23にエキスパンドした状態で装着し、該ウエハ装着板23をパレット本体28にねじ止め等により取り付けた構成となっている。尚、ダイシングシート29のエキスパンドは、どのような方法で行っても良く、例えば、ダイシングシート29を下方から円形リングで押し上げた状態でウエハ装着板23に装着すれば良い。
【0017】
パレット引き出し機構14は、ウエハパレット22、トレイパレットのいずれかのパレットをマガジン保持部12内のマガジンからパレット引き出しテーブル13上に引き出すものであり、パレット上の部品やダイを部品実装機25(図2参照)の吸着ノズル(図示せず)でピックアップする位置(以下「部品実装機用引き出し位置」という)と、マガジンに近い引き出し位置(以下「サブロボット用引き出し位置」という)とのいずれの位置にもパレットを引き出し可能に構成されている。部品実装機用引き出し位置は、パレット引き出しテーブル13の前端の位置(マガジンから最も離れた位置)であり、サブロボット用引き出し位置は、サブロボット15の吸着ノズル30(図3、図4、図7、図8参照)でウエハパレット22のダイシングシート29上のダイ21を吸着可能な位置である。
【0018】
サブロボット15は、マガジン保持部12の背面部(サブロボット用引き出し位置側の面)のうちのパレット引き出しテーブル13の上方に位置して設けられ、XZ方向(パレット引き出しテーブル13の幅方向及び垂直方向)に移動するように構成されている。尚、サブロボット15の移動方向をX方向のみとし、ウエハパレット22に対するサブロボット15のY方向(パレット引き出し方向)の相対的位置は、パレット引き出し機構14によってウエハパレット22をY方向に徐々に引き出すことで制御している。
【0019】
このサブロボット15には、カメラ24が設けられ、このカメラ24の撮像画像に基づいて、ピックアップ対象となるダイ21の位置又はダイ21の吸着姿勢を確認できるようになっている。シャトル機構16は、サブロボット15の吸着ノズル30でピックアップされた部品をシャトルノズル26で受け取って部品実装機25の吸着ノズルでピックアップ可能な位置まで移送する。
【0020】
反転機構17は、サブロボット15から受け取るダイ21を必要に応じて上下反転させるものである。ダイ21の種類によっては、ウエハパレット22のダイシングシート29に上下反対に貼着されたダイ(例えばフリップチップ等)が存在するためである。
【0021】
剥離ステージ18(図3参照)は、パレット引き出しテーブル13の下側に配置され、剥離ステージ駆動手段であるXYロボット(図示せず)によってウエハパレット22のダイシングシート29の下面に沿ってXY方向(パレット引き出しテーブル13の幅方向及びその直角方向)に移動すると共に、ウエハパレット22のダイシングシート29の高さ位置に応じて剥離ステージ18の高さ位置を上下動させる機能を備えている。そして、部品実装機用引き出し位置とサブロボット用引き出し位置のいずれの位置にウエハパレット22を引き出した場合でも、部品実装機25又はサブロボット15の吸着ノズル30で吸着ノズル30上のダイ21をピックアップする際に、該吸着ノズル30でダイシングシート29上のダイ21を吸着保持しながら、該ダイ21の貼着部分の手前側から剥離ステージ18を該ダイ21の貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイ21の貼着部分を徐々にシート剥離する。剥離ステージ18と吸着ノズル30の構成とシート剥離方法については、後で詳しく説明する。尚、NGコンベア19は、不良部品や吸着不良のダイ21を排出するコンベアである。
【0022】
以上のように構成したダイピックアップ装置11の制御装置32は、キーボード、マウス等の入力装置33と、液晶ディスプレイ等の表示装置34等の周辺装置を備えたコンピュータにより構成され、部品実装機25に供給する部品の種類に応じてパレットの引き出し位置と部品のピックアップ方法を選択すると共に、その選択結果に応じてパレット引き出し機構14、サブロボット15及びシャトル機構16、反転機構17、剥離ステージ18、吸着ノズル30等の動作を次のように制御する。
【0023】
サブロボット15の吸着ノズル30でウエハパレット22上のダイ21をピックアップする場合は、マガジン保持部12内のマガジンからウエハパレット22をサブロボット用引き出し位置に引き出して、サブロボット15の吸着ノズル30で当該ウエハパレット22のダイシングシート29上のダイ21を同時にピックアップし、当該ダイ21をシャトル機構16のシャトルノズル26で受け取って所定のピックアップ位置まで移送し、このピックアップ位置で、シャトル機構16のシャトルノズル26からダイ21を部品実装機25の装着ノズルでピックアップする。
【0024】
本実施例1では、サブロボット15の吸着ノズル30は、ダイ21をピックアップした状態で上下反転可能に構成され、シャトル機構16を使用せずに、サブロボット15の吸着ノズル30から部品実装機25の装着ノズルへのダイ21の受け渡しが可能となっている。シャトル機構16を使用しない場合は、マガジン保持部12内のマガジンからウエハパレット22を部品実装機用引き出し位置に引き出して、サブロボット15の吸着ノズル30のパッド30aでダイ21をピックアップした状態で該吸着ノズル30を上下反転させ、部品実装機25の装着ノズルで該吸着ノズル30のパッド30a上のダイ21を吸着して回路基板に実装する。
【0025】
トレイ部品を部品実装機25に供給する場合は、マガジン保持部12内のマガジンからトレイパレットを部品実装機用引き出し位置に引き出して、当該トレイパレット上のトレイ部品を部品実装機25の装着ノズルで直接ピックアップする。
【0026】
次に、剥離ステージ18と吸着ノズル30の構成とシート剥離方法を図3〜図8を用いて説明する。尚、図3及び図4では、ダイシングシート29の図示を省略し、ダイ21と剥離ステージ18と吸着ノズル30のパッド30aのみを図示している。
【0027】
剥離ステージ18は、パレット引き出しテーブル13の下側に配置され、剥離ステージ駆動手段であるXYロボット(図示せず)によってウエハパレット22のダイシングシート29の下面に沿ってXY方向に移動する。剥離ステージ18には、ダイシングシート29をその下面側から吸引するシート吸引孔40が上向きに形成され、該シート吸引孔40は、電磁バルブ(図示せず)を介して負圧源(バキューム源)に接続され、ダイ21のシート剥離に適した圧力に調整された負圧がシート吸引孔40内に供給されるように構成されている。シート吸引孔40は、1個のダイ21の貼着部分のほぼ全面を吸引できるように当該ダイ21のサイズと同等若しくは若干小さいサイズに形成されている(図5参照)。
【0028】
このシート吸引孔40のスライド方向側の縁部には、凸部41が形成され、シート剥離するダイ21の貼着部分を凸部41で浮かせながらシート剥離するようになっている(図6参照)。尚、凸部41は、必ずしもシート吸引孔40のスライド方向側の縁部全体に沿って一直線状に形成する必要はなく、当該縁部の一部に1個又は複数個の凸部を形成するだけでも良く、また、各シート吸引孔40のスライド方向とは異なる方向の縁部にも凸部を形成しても良い。
【0029】
一方、サブロボット15の吸着ノズル30は、ピックアップするダイ21のサイズに応じてノズルチェンジャー20で自動交換できるようになっている。吸着ノズル30の下端部には、ピックアップするダイ21のサイズと同等若しくは若干小さいサイズのパッド30aが設けられている。
【0030】
図7に示すように、パッド30aの吸着面部30bは、多数の微細孔を有する多孔質部材又は多孔状部材で形成され、シート剥離開始側の吸着面に対する孔の面積比(気孔率)がシート剥離終了側の吸着面に対する孔の面積比より大きくなるように構成されている。本実施例1では、ダイ21のシート剥離量が増加するに従ってシート剥離に必要な吸引力が小さくなることを考慮して、パッド30aの吸着面部30bは、シート剥離開始側からシート剥離終了側に向けて吸着力が徐々に又は3段階以上に段階的に小さくなるように形成されている。パッド30aの内部には、吸着面部30b全面に負圧(バキューム圧)を作用させる負圧導入空洞部42が形成され、該負圧導入空洞部42が電磁バルブ(図示せず)を介して負圧源(バキューム源)に接続されている。
【0031】
次に、図8を用いてダイ21のシート剥離・ピックアップ動作のシーケンス制御を説明する。
シート剥離したダイ21を吸着ノズル30でピックアップする毎に、剥離ステージ18を駆動するXYロボットは、図8(a)に示すように、剥離ステージ18を次にピックアップするダイ21の貼着部分の手前側へ移動させて、該剥離ステージ18のシート吸引孔40のスライド側の縁部を次にピックアップするダイ21の縁部に合わせるように位置決めする(図3参照)。この後、図8(b)に示すように、吸着ノズル30を下降させると共に、該吸着ノズル30のバキュームをオンして該吸着ノズル30のパッド30aでダイ21のほぼ全面を吸着保持すると共に、剥離ステージ18のバキュームをオンしてシート吸引孔40でダイシングシート29を吸引する。
【0032】
この後、図8(c)に示すように、剥離ステージ18をダイ21の貼着部分の真下方向へスライドさせて、シート吸引孔40のスライド方向側の縁部に形成された凸部41で、ダイ21の貼着部分を浮かせながら徐々にシート剥離し、図8(d)に示すように、最終的に、剥離ステージ18のシート吸引孔40全体をダイ21の貼着部分の真下位置までスライドさせた時点で、該剥離ステージ18のスライドを停止する(図4参照)。この後、吸着ノズル30を上昇させてダイ21をピックアップする。以後、上述した動作を繰り返して、ダイシングシート29に貼着されたダイ21を1個ずつピックアップする。
【0033】
ところで、シート剥離する際に、薄いダイ21が割れないようにするために、シート剥離するダイ21のほぼ全面を吸着ノズル30のパッド30aで吸着保持する必要があり、そのために、吸着ノズル30のパッド30aを多孔質材料で形成するのが一般的である。しかし、多孔質のパッド30aの孔は微細であるため、生産設備の負圧源から吸着ノズル30に供給される負圧に対して多孔質のパッド30aの吸着力が大幅に弱められてしまう。特に、シート剥離開始部分については比較的大きな吸着力が必要となるため、従来の多孔質パッド(吸着面全体の吸着力が均一)では、シート剥離開始部分の吸着力が不足して、安定したシート剥離性能を確保できない可能性があった。
【0034】
この対策として、本実施例1では、吸着ノズル30のパッド30aの吸着面に対する孔の面積比が大きくなるほど、吸着力が大きくなることを考慮して、吸着ノズル30のパッド30aをシート剥離開始側の吸着面に対する孔の面積比(気孔率)がシート剥離終了側の吸着面に対する孔の面積比より大きくなるように構成している。これにより、吸着ノズル30のパッド30aの吸着力をシート剥離開始側の吸着力が相対的に大きくなるように変化させることが可能となり、シート剥離開始部分の吸着力を十分に確保できて、安定したシート剥離性能を確保できる。
【0035】
しかも、本実施例1では、剥離ステージ18のシート吸引孔40のスライド方向側の縁部に凸部41を形成したので、この凸部41によってダイ21の貼着部分を浮かせながらシート剥離することができ、シート剥離性能を更に向上させることができる。
【0036】
尚、本発明は、シート吸引孔40を省略して、剥離ステージ18上面に形成した凸部41のみによってシート剥離するようにしても良い。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の実施例2を図9を用いて説明する。但し、上記実施例1と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡単化し、主として異なる部分について説明する。
【0038】
本実施例2では、吸着ノズル30のパッド30aの吸着面部30cを多孔質部材又は多孔状部材により形成し、そのシート剥離開始側の端部に沿ってスリット状の吸着孔42を形成することで、シート剥離開始側の吸着力がシート剥離終了側の吸着力より大きくなるように構成している。この場合、パッド30aの吸着面部30cのうちのスリット状の吸着孔42以外の部分は、吸着面に対する孔の面積比(気孔率)が一定であっても良いし、前記実施例1と同様に、シート剥離開始側からシート剥離終了側に向けて吸着力が徐々に又は段階的に小さくなるように形成しても良い。
【0039】
以上説明した本実施例2では、吸着ノズル30のパッド30aには、シート剥離開始側の吸着面部30cの端部に沿ってスリット状の吸着孔43を形成しているため、シート剥離開始側の吸着面部30cの端部の吸着力をスリット状の吸着孔43によって確実に大きくすることができて、安定したシート剥離性能を確保できる。但し、スリット状の吸着孔43のスライド方向の幅が大きくなり過ぎると、その吸着力によってダイ21自体が吸着孔43内に引き込まれて撓んでしまい、ダイ21が割れてしまう可能性があるため、スリット状の吸着孔43は、そのスライド方向の幅が大きくなり過ぎないように制限する必要がある。
【0040】
尚、本発明は、上記実施例1,2に限定されず、ダイ21の貼着部分を複数のシート吸引孔で吸引するようにしても良く、また、シート吸引孔の形状も四角形に限定されず、円、楕円、長円、五角形以上の多角形等であっても良い。要は、ダイ21の貼着部分にその下面側から吸引力(負圧)を作用させるようにシート吸引孔を形成すれば良い。
【0041】
その他、本発明は、ダイピックアップ装置11の構成を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
11…ダイピックアップ装置、12…マガジン保持部、13…パレット引き出しテーブル、14…パレット引き出し機構、15…サブロボット、16…シャトル機構、17…反転機構、18…剥離ステージ、19…NGコンベア、20…ノズルチェンジャー、21…ダイ、22…ウエハパレット、23…ウエハ装着板、24…カメラ、25…部品実装機、26…シャトルノズル、28…パレット本体、29…ダイシングシート、30…吸着ノズル、30a…パッド、30b,30c…吸着面部、32…制御装置、40…シート吸引孔、41…凸部、42…負圧導入空洞部、43…スリット状の吸着孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハをダイシングして形成した多数のダイが貼着されたダイシングシート上のダイをピックアップする吸着ノズルと、前記吸着ノズルでピックアップするダイの貼着部分をシート剥離する剥離ステージとを備え、前記吸着ノズルのパッドで前記ダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から前記剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイの貼着部分をシート剥離するダイピックアップ装置において、
前記吸着ノズルのパッドは、シート剥離開始側の吸着力がシート剥離終了側の吸着力より大きくなるように形成されていることを特徴とするダイピックアップ装置。
【請求項2】
前記吸着ノズルのパッドは、多孔質部材又は多孔状部材により形成され、シート剥離開始側の吸着面に対する孔の面積比がシート剥離終了側の吸着面に対する孔の面積比より大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載のダイピックアップ装置。
【請求項3】
前記吸着ノズルのパッドは、シート剥離開始側からシート剥離終了側に向けて吸着力が徐々に又は段階的に小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイピックアップ装置。
【請求項4】
前記吸着ノズルのパッドには、シート剥離開始側の吸着面の端部に沿ってスリット状の吸着孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダイピックアップ装置。
【請求項5】
前記剥離ステージには、前記ダイシングシートをその下面側から吸引して該ダイの貼着部分をシート剥離するためのシート吸引孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のダイピックアップ装置。
【請求項6】
前記シート吸引孔は、シート剥離しようとするダイの貼着部分に対応する大きさに形成され、該シート吸引孔のスライド方向側の縁部に、該ダイの貼着部分を浮かせながらシート剥離するための凸部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のダイピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−182330(P2012−182330A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44542(P2011−44542)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】