説明

ダンパ装置およびそれを備えた開閉体の開閉装置

【課題】 鍵盤楽器の鍵盤蓋などの開閉体を閉じる際にも、また開閉体を開く際にも、開閉体の開閉動作を良好に制動することができるダンパ装置およびそれを備えた開閉体の開閉装置を提供する。
【解決手段】 ハウジング13a内に回転体17を回転自在に配置し、この回転体17の回転中心部に設けられた収納穴部22内に制動ばね18を配置し、この制動ばね18の一端部25aを回転体17に係止すると共に、制動ばね18の他端部25bをハウジング13aに固定し、制動ばね18の自由状態をニュートラル状態とした。従って、制動ばね18のニュートラル状態から回転体17を一方向に回転させても、またこれと逆方向に回転させても、制動ばね18によって回転体17に加わる負荷を徐々に増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器や、家具、ドアなどの開閉体に用いられるダンパ装置およびそれを備えた開閉体の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンパ装置として、特許文献1に記載されているように、円筒状のハウジングと、このハウジング内に回転自在に設けられた回転体と、ハウジングと回転体との間に設けられた制動スプリングとを備えた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−250388号公報
【0004】
この種のダンパ装置は、以下のように構成されている。すなわち、ハウジングの底部における中心部には、支持軸が設けられており、この支持軸の上部には、雄ねじ部が設けられている。また、回転体の回転中心部には、ハウジングの支持軸が隙間をもって挿入する大径の孔部が設けられていると共に、支持軸の雄ねじ部が螺合する小径の雌ねじ部が設けられている。さらに、ハウジングの支持軸と回転体の大径の孔部との間の隙間には、コイル状の制動スプリングが設けられている。
【0005】
これにより、ダンパ装置は、ハウジングに設けられた支持軸の雄ねじ部を回転体の雌ねじ部に螺合させて締め付けることにより、ハウジングと回転体とによって制動スプリングを圧縮させ、この圧縮した制動スプリングによって回転体に負荷を付与するように構成されている。
【0006】
このダンパ装置では、ハウジングの支持軸の雄ねじ部に対して回転体の雌ねじ部が締まる方向、つまり回転体の下面がハウジングの底部に接近する方向に回転体が回転すると、その回転に伴って制動スプリングが徐々に圧縮され、回転体に加わる負荷を徐々に増大させるようになっている。
【0007】
また、このダンパ装置では、ハウジングの支持軸の雄ねじ部に対して回転体の雌ねじ部が緩む方向、つまり回転体の下面がハウジングの底部から離れる方向に回転体が回転すると、その回転に伴って制動スプリングが徐々に伸び、回転体に加わる負荷を徐々に軽減させるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来のダンパ装置においては、ハウジングの支持軸の雄ねじ部に対して回転体の雌ねじ部が締まる方向(一方向)に回転体が回転すると、制動スプリングが圧縮し、またハウジングの支持軸の雄ねじ部に対して回転体の雌ねじ部が緩む方向(逆方向)に回転体が回転すると、制動スプリングが伸びる構成であるから、回転体が一方向に回転する際には回転体に加わる負荷を徐々に増大させて回転体を良好に制動することができるが、回転体が逆方向に回転する際には回転体に加わる負荷が徐々に軽減され、回転体に加わる負荷を徐々に増大させることができない。
【0009】
このため、上述した従来のダンパ装置では、例えば、鍵盤楽器の鍵盤蓋に用いて、鍵盤蓋の開閉動作を制動する際に、鍵盤蓋が開く動作と閉じる動作とのいずれか一方を制動することができても、両方の動作を良好に制動することができない。すなわち、鍵盤楽器の鍵盤蓋においては、鍵盤蓋が閉じる際にも、また鍵盤蓋が開く際にも、鍵盤蓋の開閉動作を制動する必要がある。このため、上述した従来のダンパ装置では、鍵盤楽器の鍵盤蓋などの開閉体の開閉動作を良好に制動することができない。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、鍵盤楽器の鍵盤蓋などの開閉体が閉じる際にも、また開く際にも、開閉体の開閉動作を良好に制動することができるダンパ装置およびそれを備えた開閉体の開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、ハウジングと、このハウジングの内部に回転自在に配置され、その回転中心部に収納部が設けられた回転体と、この回転体の前記収納部内に配置され、一端部が前記回転体に係止され、他端部が前記ハウジングに固定され、自由状態がニュートラル状態となる制動ばねと、を備えていることを特徴とするダンパ装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記ハウジングが、外側ハウジングと、この外側ハウジング内に螺着して円筒軸が前記回転体の前記収納部内に挿入する内側ハウジングとを備えており、前記回転体は、前記収納部内の回転中心部に設けられて前記内側ハウジングの前記円筒軸内に隙間をもって挿入する軸部を備えており、前記制動ばねは、前記内側ハウジングの前記円筒軸内に配置されて前記回転体の前記軸部が挿入し、この状態で一端部が前記回転体の前記軸部に係止され、他端部が前記内側ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記回転体に、前記外側ハウジングの外部に突出して前記回転体を外部部材の動作に応じて回転させるための駆動連結部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記外側ハウジングと前記内側ハウジングとの間に配置された状態で、前記回転体の外周面が摺動可能に圧接する防水リングと、前記内側ハウジングと前記回転体との間に封入された潤滑剤とを備えていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のダンパ装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載されたダンパ装置によって、開閉体の開閉動作を制動することを特徴とする開閉体の開閉装置である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記開閉体が、装置本体に設けられた支持軸に対して回転自在に取り付けられており、前記ダンパ装置は、前記装置本体に設けられて前記支持軸を中心に上下方向に回転する前記開閉体の回転動作を制動することを特徴とする請求項5に記載の開閉体の開閉装置である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記支持軸に、前記開閉体と共に回転する第1歯車が設けられており、前記ダンパ装置は、前記回転体の前記駆動連結部が前記第1歯車に連動して前記回転体と共に回転することを特徴とする請求項6に記載の開閉体の開閉装置である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、前記開閉体が、装置本体にスライド可能に設けられており、前記ダンパ装置は、前記開閉体に設けられて前記開閉体のスライド動作に伴う回転動作を制動することを特徴とする請求項5に記載の開閉体の開閉装置である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、前記開閉体に、第1歯車が設けられており、前記装置本体には前記第1歯車が噛み合って前記開閉体の移動に伴って転動することにより、前記開閉体をガイドするラックギアが設けられており、前記ダンパ装置は、前記回転体の前記駆動連結部が前記第1歯車に連動して前記回転体と共に回転することを特徴とする請求項8に記載の開閉体の開閉装置である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、制動ばねが自由状態であるニュートラル状態から回転体が一方向に回転すると、その回転体の一方向への回転に伴って制動ばねが弾性変形して回転体に加わる負荷を増大させることができ、また制動ばねが自由状態であるニュートラル状態から回転体が上述した一方向と逆方向に回転すると、その回転体の逆方向への回転に伴って制動ばねが弾性変形して回転体に加わる負荷を増大させることができる。このため、鍵盤楽器の鍵盤蓋などの開閉体に用いて開閉体の開閉動作を制動する場合に、開閉体が閉じる際にも、また開閉体が開く際にも、開閉体の開閉動作を良好に制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1において鍵盤蓋を完全に閉じた状態を示した断面図である。
【図2】図1の鍵盤楽器において鍵盤蓋が回転して完全に開いた状態を示した断面図である。
【図3】図1の鍵盤楽器において鍵盤蓋が回転して半分程度に開いた状態を示した断面図である。
【図4】図1の鍵盤楽器におけるダンパ装置を示した拡大断面図である。
【図5】図4のダンパ装置を示し、(a)はその一部を示した拡大底面図、(b)はその歯車部を示した拡大平面図である。
【図6】図4のダンパ装置において回転体が一方向に回転して制動ばねが収縮した状態を示した拡大断面図である。
【図7】図6の状態におけるダンパ装置の一部を示した拡大底面図である。
【図8】図4のダンパ装置において回転体が逆方向に回転して制動ばねが伸びて膨張した状態を示した拡大断面図である。
【図9】図8の状態におけるダンパ装置の一部を示した拡大底面図である。
【図10】図1の鍵盤蓋の開閉動作におけるダンパ装置の制動ばねによる鍵盤蓋の制動状態を示した図である。
【図11】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2において鍵盤蓋を完全に閉じた状態を示した断面図である。
【図12】図11の鍵盤楽器において鍵盤蓋がスライドして完全に開いた状態を示した断面図である。
【図13】図11の鍵盤楽器において鍵盤蓋がスライドして半分程度に開いた状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、図1〜図10を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1〜図3に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、脚部を兼ねる一対の側板2と、この一対の側板2間における上部側に設けられた底板3と、この底板3の前端部(図1では左端部)上に起立して設けられた前板4と、底板3の後端部(図1では右端部)上に起立して設けられた後板5とを備えている。
【0023】
これにより、楽器ケース1は、上部が開放された箱形状に形成されている。この楽器ケース1の内部には、図1〜図3に示すように、鍵盤部6が設けられている。この鍵盤部6は、白鍵7aおよび黒鍵7bを備え、これら白鍵7aおよび黒鍵7bを鍵盤シャーシ(図示せず)上に上下方向に回転可能に取り付けた状態で多数配列した構成になっている。
【0024】
また、この楽器ケース1の上部には、図1〜図3に示すように、鍵盤部6を開閉自在に覆う鍵盤蓋8が開閉装置10によって開閉可能に設けられている。この鍵盤蓋8は、開閉装置10によって上下方向に回転することにより、楽器ケース1の上部に配置されて楽器ケース1を閉じた際に鍵盤部6を覆い隠し、楽器ケース1の後方(図2では右側)に少し傾いた状態で起立して楽器ケース1を開いた際に鍵盤部6を楽器ケース1の上方に露出させるように構成されている。
【0025】
この鍵盤蓋8の開閉装置10は、図1〜図3に示すように、楽器ケース1内の後端部に位置する一対の側板2間に架け渡された支持軸11と、鍵盤蓋8の下面に取り付けられて支持軸11に回転自在に取り付けられたアーム部材12と、このアーム部材12に取り付けられて支持軸11を中心に鍵盤蓋8と共に回転する連動歯車14と、楽器ケース1の側板2の内面に設けられて鍵盤蓋8の開閉動作を制動するダンパ装置13とを備えている。これにより、鍵盤蓋8は、支持軸11を中心に、アーム部材12と共に上下方向に回転するように構成されている。
【0026】
この場合、連動歯車14は、図1〜図3に示すように、支持軸11を中心に鍵盤蓋8がアーム部材12と共に回転する際に、鍵盤蓋8の開閉動作をダンパ装置13に伝達するように構成されている。すなわち、この連動歯車14は、全体がほぼ扇形状に形成され、その外周面に歯部14aが設けられ、この状態で要となる部分が支持軸11に回転可能に取り付けられている。これにより、連動歯車14は、鍵盤蓋8と共に回転するアーム部材12の回転に伴って支持軸11を中心に回転するように構成されている。
【0027】
ダンパ装置13は、図4および図5に示すように、ハウジング13aと、このハウジング13a内に回転自在に配置された回転体17と、この回転体17の回転を制動する制動ばね18とを備えている。ハウジング13aは、外側ハウジング15と、この外側ハウジング15内に螺着する内側ハウジング16とを備えている。
【0028】
外側ハウジング15は、図4および図5に示すように、全体がほぼ円筒形状に形成されている。この外側ハウジング15の内周面には、雌ねじ部15aが設けられており、またこの外側ハウジング15の上部には、円板状の鍔部15bが外側ハウジング15の内側に向けて水平に突出して設けられている。この鍔部15bには、円形孔15cが外側ハウジング15の中心部に対応して設けられており、またこの鍔部15bの下面には、押え突起15dが設けられている。
【0029】
内側ハウジング16は、全体が外側ハウジング15内に挿入する円筒形状に形成されている。この内側ハウジング16の外周面には、外側ハウジング15の雌ねじ部15aに螺合する雄ねじ部16aが設けられている。また、この内側ハウジング16の下部には、図4および図5に示すように、内側ハウジング16の下部を塞ぐ底部16bが内側ハウジング16の外周側に突出して設けられている。
【0030】
これにより、内側ハウジング16は、図4に示すように、その外周側に突出した底部16bがスペーサ19を介して楽器ケース1の側板2にビス20によって取り付けられるように構成されている。また、底部16bにおける内側ハウジング16の中心部には、円筒軸21が内側ハウジング16内に起立して設けられている。この円筒軸21は、内側ハウジング16の内外に貫通し、その内部に底部16bの下側に開放された円柱状の空間が形成されている。
【0031】
回転体17は、図4および図5に示すように、全体が内側ハウジング16内に配置されるほぼ円板状に形成されている。この回転体17の回転中心部には、内側ハウジング16の円筒軸21が挿入する収納穴部22が下側に開放されて設けられている。この収納穴部22は、円形状の貫通しない穴であり、その内周面が内側ハウジング16の円筒軸21の外周面に対面するよう構成されている。これにより、回転体17は、収納穴部22の内周面が内側ハウジング16の円筒軸21の外周面にガイドされて回転するように構成されている。
【0032】
また、この収納穴部22の回転中心部には、図4および図5(a)に示すように、内側ハウジング16の円筒軸21内に隙間をもって挿入する軸部23が円筒軸21の下側に突出した状態で設けられている。さらに、この回転体17の上部には、図4および図5(b)に示すように、開閉装置10の連動歯車14の回転動作に応じて回転体17を回転させるための歯車部24が外側ハウジング15の鍔部15bの円形孔15cを通して上方に突出した状態で設けられている。
【0033】
この場合、回転体17は、図4に示すように、その外周面における上部が外側ハウジング15と内側ハウジング16との間に配置された防水リング26に摺動可能に圧接している。また、この回転体17は、その上面における外周部が外側ハウジング15の鍔部15bの下面に設けられた押え突起15dによって押えられている。さらに、この回転体17と内側ハウジング16との間には、グリスなどの潤滑剤27が封入されている。これにより、回転体17は、外側ハウジング15と内側ハウジング16との両者の内部に回転自在に配置されている。
【0034】
制動ばね18は、図4および図5に示すように、ねじりコイルばねであり、コイル部25を有している。この制動ばね18は、コイル部25が内側ハウジング16の円筒軸21内に配置された状態で、このコイル部25内に回転体17の軸部23が挿入するように構成されている。
【0035】
また、この制動ばね18は、コイル部25の一端部25a(図4では上端部)が軸部23の上部に設けられた取付穴23aに挿入されて係止されていると共に、他端部25b(図4では下端部)が内側ハウジング16の円筒軸21内から下側に突出して内側ハウジング16の底板16bの下面に固定され、これにより回転体17と内側ハウジング16との両者に取り付けられている。
【0036】
この制動ばね18は、図4および図5に示すように、コイル部25が自由状態のときにニュートラル状態となり、このニュートラル状態で回転体17が一方向、例えば図7に示す矢印X方向に回転すると、図6に示すように、コイル部25の外径が徐々に縮んで小さくなることにより、内側ハウジング16の円筒軸21の内周面から徐々に離れて回転体17の軸部23の外周面に徐々に接近するように弾性変形し、図10における右側の実線で示すように、回転体17に加わる負荷を徐々に増大させるように構成されている。
【0037】
また、この制動ばね18は、図4および図5に示すように、コイル部25が自由状態のニュートラル状態で、回転体17が上述した方向と逆方向、例えば図9に示す矢印Y方向に回転すると、図8に示すように、コイル部25の外径が徐々に伸びて大きくなり、回転体17の軸部23の外周面から徐々に離れて内側ハウジング16の円筒軸21の内周面に徐々に接近するように弾性変形し、図10における左側の実線で示すように、回転体17に加わる負荷を徐々に増大させるように構成されている。
【0038】
すなわち、この制動ばね18は、図10に実線で示すように、コイル部25が自由状態のニュートラル状態を境にして、回転体17が一方向(正方向)つまり図7に示した矢印X方向に回転すると、その回転に伴って徐々に収縮変形することにより、回転体17に付与される負荷を徐々に増大させ、またニュートラル状態を境にして、回転体17が逆方向(負方向)つまり図9に示した矢印Y方向に回転すると、その回転に伴って徐々に膨張変形することにより、回転体17に付与される負荷を徐々に増大させるように構成されている。
【0039】
ところで、このダンパ装置13は、図1〜図3、および図4に示すように、外側ハウジング15から上部外側に突出した回転体17の歯車部24の歯部24aを鍵盤蓋8の開閉装置10における連動歯車14の歯部14aに噛み合わせた状態で、楽器ケース1の側板2の内面に取り付けられている。すなわち、このダンパ装置13は、内側ハウジング16の底板16bが楽器ケース1の側板2の内面にスペーサ19を介してビス20によって取り付けられている。
【0040】
この場合、ダンパ装置13における回転体17の歯車部24と開閉装置10の連動歯車14との噛み合わせ位置は、図3に示すように、鍵盤蓋8が半分程度に開いた位置、つまり鍵盤蓋8の開閉動作における中間位置において、連動歯車14の歯部14aが設けられた外周部における中間部に、回転体17の歯車部24が対応して、回転体17の歯車部24と連動歯車14とが噛み合うように設定されている。
【0041】
このときには、ダンパ装置13の制動ばね18は、図4および図5に示すように、自由状態のニュートラル状態となるように設定されている。これにより、ダンパ装置13は、図10に示すように、鍵盤蓋8が半分程度に開いた位置がニュートラル状態となり、このニュートラル状態を境にして、鍵盤蓋8が閉じる際にも、また開く際にも、制動ばね18によって鍵盤蓋8に加わる負荷が徐々に増大するように構成されている。
【0042】
次に、このダンパ装置13を用いた鍵盤蓋8の開閉装置10の作用について説明する。
まず、図3に示すように、鍵盤蓋8が半分程度に開いている状態、つまり制動ばね18がニュートラル状態で、鍵盤蓋8を閉じる場合には、鍵盤蓋8が支持軸11を中心にアーム部材12と共に図3において反時計回りに回転し、これに伴って連動歯車14も支持軸11を中心に反時計回りに回転する。すると、ダンパ装置13の回転体17の歯車部24が連動歯車14に噛み合って回転する。
【0043】
このときには、図6および図7に示すように、回転体17の歯車部24が矢印X方向に回転し、制動ばね18がニュートラル状態から縮む方向に徐々に弾性変形する。このため、制動ばね18は、図10における右側の実線で示すように、回転体17に加わる負荷を徐々に増大させるので、鍵盤蓋8を閉じるための力を徐々に重くして、鍵盤蓋8の閉じる動作を徐々に遅くすることができる。
【0044】
すなわち、鍵盤蓋8は、図10における右側の点線で示すように、鍵盤蓋8が半分程度に開いた位置から閉じる方向に回転する際に、鍵盤蓋8によってダンパ装置13に加わるトルクが徐々に増大するが、その鍵盤蓋8のトルクを打ち消すように制動ばね18が回転体17に負荷を付与する。このため、鍵盤蓋8が完全に閉じる直前では、制動ばね18による負荷が最大になるので、鍵盤蓋8が完全に閉じる直前では鍵盤蓋8をゆっくり閉じることができる。
【0045】
また、図1に示すように、鍵盤蓋8を完全に閉じた状態から開く場合には、ダンパ装置13の制動ばね18のばね力が鍵盤蓋8を開く方向に付与されているので、軽い力で鍵盤蓋8を開き始めることができる。すなわち、鍵盤蓋8が完全に閉じた状態では、制動ばね18が最大に縮んで、制動ばね18のばね力が最大に蓄えられているので、鍵盤蓋8を開き始める際には制動ばね18に蓄えられたばね力によって軽い力で開くことができる。
【0046】
そして、鍵盤蓋8が開き始めて徐々に開き、回転体17の歯車部24が矢印Y方向に回転して行くと、制動ばね18の収縮が徐々に解放されるので、制動ばね18に蓄えられたばね力が徐々に弱くなると共に、鍵盤蓋8のトルクと制動ばね18のばね力との差が徐々に大きくなり、鍵盤蓋8の開く動作が速くなる。これにより、図3に示すように、鍵盤蓋8が半分程度に開く位置になるまで、すなわち制動ばね18がニュートラル状態になるまでは、制動ばね18に蓄えられたばね力によって軽い力で鍵盤蓋8を開くことができる。
【0047】
この後、鍵盤蓋8が更に開き、回転体17の歯車部24が矢印Y方向に回転し、制動ばね18がニュートラル状態を通過すると、図8および図9に示すように、制動ばね18が自由状態から伸びて膨張する方向に徐々に弾性変形する。このため、制動ばね18は、図10における左側の実線で示すように、回転体17に加わる負荷を徐々に増大させるので、鍵盤蓋8を開くための力を徐々に重くして、鍵盤蓋8の開く動作を徐々に遅くすることができる。
【0048】
すなわち、鍵盤蓋8は、図10における左側の点線で示すように、鍵盤蓋8が半分程度に開いた位置から更に開く方向に回転する際に、鍵盤蓋8によってダンパ装置13に加わるトルクが徐々に増大するが、その鍵盤蓋8のトルクを打ち消すように制動ばね18が回転体17に負荷を付与する。このため、鍵盤蓋8が完全に開く直前では、制動ばね18による負荷が最大になるので、鍵盤蓋8が完全に開く直前では鍵盤蓋8をゆっくり開くことができる。
【0049】
また、鍵盤蓋8を完全に開いた状態から閉じる場合には、ダンパ装置13の制動ばね18のばね力が鍵盤蓋8を閉じる方向に付与されているので、軽い力で鍵盤蓋8を閉じ始めることができる。すなわち、鍵盤蓋8が完全に開いた状態では、制動ばね18が最大に伸びて膨張し、制動ばね18のばね力が最大に蓄えられているので、鍵盤蓋8を閉じ始める際には、制動ばね18に蓄えられたばね力によって軽い力で閉じることができる。
【0050】
そして、鍵盤蓋8が閉じ始めて徐々に閉じ、回転体17の歯車部24が矢印X方向に回転して行くと、制動ばね18の膨張が徐々に解除されるので、制動ばね18に蓄えられたばね力が徐々に弱くなると共に、鍵盤蓋8のトルクと制動ばね18のばね力との差が徐々に大きくなり、鍵盤蓋8の閉じる動作が速くなる。これにより、図3に示すように、鍵盤蓋8が半分程度に閉じる位置になるまで、すなわち制動ばね18がニュートラル状態になるまでは、制動ばね18に蓄えられたばね力によって軽い力で鍵盤蓋8を閉じることができる。この後は、上述したように再び制動ばね18が縮むので、鍵盤蓋8をゆっくり閉じることができる。
【0051】
このように、このダンパ装置13によれば、ハウジング13a内に回転体17を回転自在に配置し、この回転体17の回転中心部に設けられた収納穴部22内に制動ばね18を配置し、この制動ばね18の一端部25aを回転体17に係止すると共に、制動ばね18の他端部25bをハウジング13aに固定し、制動ばね18の自由状態をニュートラル状態としたので、制動ばね18のニュートラル状態から回転体17を一方向に回転させても、またこれと逆方向に回転させても、制動ばね18によって回転体17に加わる負荷を徐々に増大させることができ、これにより鍵盤蓋8が閉じる際にも、また鍵盤蓋8が開く際にも、ダンパ装置13によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0052】
すなわち、このダンパ装置13によれば、制動ばね18が自由状態であるニュートラル状態から回転体17が一方向(図7の矢印X方向)に回転すると、その回転体17の一方向への回転に伴って制動ばね18が収縮するように弾性変形して回転体17にばね力を付与することができる。また、制動ばね18が自由状態であるニュートラル状態から回転体17が上述した方向と逆方向(図9の矢印Y方向)に回転すると、その回転体17の逆方向への回転に伴って制動ばね18が膨張するように弾性変形して回転体17にばね力を付与することができる。このため、鍵盤蓋8が閉じる際にも、また鍵盤蓋8が開く際にも、ダンパ装置13によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0053】
この場合、ハウジング13aは、外側ハウジング15と、この外側ハウジング15内に螺着して円筒軸21が回転体17の収納穴部22内に挿入する内側ハウジング16とを備えており、回転体17は、収納穴部22内の回転中心部に設けられて内側ハウジング16の円筒軸21内に隙間をもって挿入する軸部23を備えているので、内側ハウジング16の円筒軸21の外周面によって回転体17の収納穴部22の内周面をガイドすることができ、これにより回転体17を内側ハウジング16内で安定させて回転させることができる。
【0054】
また、制動ばね18は、ねじりコイルばねであり、そのコイル部25が内側ハウジング16の円筒軸21内に配置されて、コイル部25の内部に回転体17の軸部23が挿入され、この状態でコイル部25の一端部25aが回転体17の軸部23に係止され、他端部25bが内側ハウジング16の底部16bに固定されているので、制動ばね18を回転体17の収納穴部22内に安定した状態で組み込むことができると共に、制動ばね18のニュートラル状態から回転体17が一方向に回転しても、またこれと逆方向に回転しても、制動ばね18を安定した状態で円滑に且つ良好に弾性変形させることができる。
【0055】
また、このダンパ装置13は、回転体17に外側ハウジング15の外部に突出して回転体17を開閉装置10の連動歯車14の回転動作に応じて回転させるための歯車部24が設けられているので、この歯車部24を鍵盤蓋8の開閉装置10における連動歯車14に噛み合わせるだけで、鍵盤蓋8の開閉動作に応じて回転体17を確実に且つ良好に回転させることができ、これにより鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0056】
さらに、このダンパ装置13は、外側ハウジング15と内側ハウジング16との間に配置された防水リング26に回転体17の外周面が摺動可能に圧接しているので、内側ハウジング16と回転体17との間にゴミなどの異物が侵入するのを防ぐことができ、これにより円滑に且つ良好に回転体17を回転させることができる。また、このダンパ装置13は、内側ハウジング16と回転体17との間に潤滑剤27が封入されているので、この潤滑剤27によって回転体17を内側ハウジング16内で、より一層、円滑に回転させることができる。
【0057】
また、この鍵盤楽器における鍵盤蓋8の開閉装置10によれば、楽器ケース1に開閉自在に設けられて鍵盤部6を開閉自在に覆う鍵盤蓋8の開閉動作を、ダンパ装置13によって制動する場合において、鍵盤蓋8が楽器ケース1の一対の側板2間に架け渡された支持軸1に回転自在に取り付けられたアーム部材12に設けられ、ダンパ装置13が楽器ケース1の側板2に設けられて支持軸11を中心に上下方向に回転する鍵盤蓋8の回転動作を制動することにより、鍵盤蓋8が閉じる際にも、また鍵盤蓋8が開く際にも、ダンパ装置13の制動ばね18によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0058】
すなわち、この鍵盤楽器における鍵盤蓋8の開閉装置10によれば、支持軸11に、鍵盤蓋8と共に回転する第1歯車である連動歯車14が回転可能に設けられており、ダンパ装置13は、回転体17の歯車部24が連動歯車14に噛み合って回転体17と共に回転することにより、鍵盤蓋8の開閉動作に伴って連動歯車14が回転すると、この回転をダンパ装置13の回転体17に確実に伝えることができ、これにより鍵盤蓋8が閉じる際にも、また鍵盤蓋8が開く際にも、ダンパ装置13の制動ばね18によって鍵盤蓋8の開閉動作を確実に且つ良好に制動することができる。
【0059】
(実施形態2)
次に、図11〜図13を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図10に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、鍵盤部6を開閉自在に覆う鍵盤蓋30の開閉装置31が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0060】
すなわち、この鍵盤蓋30の開閉装置31は、図11〜図13に示すように、鍵盤蓋30がスライドして鍵盤部6を開閉自在に覆う構成になっている。この場合、楽器ケース1は、一対の側板2の前後方向(図11では左右方向)における中間部から後端部に亘る上部および後板5の上部に天板29が設けられ、この天板29の前側が開放された構成になっている。
【0061】
これにより、鍵盤蓋30は、図11に示すように、楽器ケース1の開放された前側にスライドして楽器ケース1の上部に配置された際に、楽器ケース1内の鍵盤部6を覆って隠し、図12に示すように、楽器ケース1の後側にスライドして天板29の下側に配置されて楽器ケース1内に収納された際に、鍵盤部6を露出させるように構成されている。
【0062】
この鍵盤蓋30の開閉装置31は、図11〜図13に示すように、鍵盤蓋30の前部をガイドする前側ガイド部32と、鍵盤蓋30の後部をガイドする後側ガイド部33と、鍵盤蓋30の開閉動作を制動するダンパ装置13とを備えている。前側ガイド部32は、鍵盤蓋30の前端部に設けられた取手部34の両側に設けられたガイドローラ35と、一対の側板2における前部から中間部に亘って設けられてガイドローラ35を移動可能にガイドする一対のガイドレール36とを備えている。
【0063】
また、後側ガイド部33は、図11〜図13に示すように、鍵盤蓋30の後端部における両側に取付片37を介して回転自在に設けられた一対のピニオンギア38と、一対の側板2における中間部から後部に亘って設けられてピニオンギア38が噛み合って転動することにより、ピニオンギア38をガイドする一対のラックギア39とを備えている。
【0064】
ダンパ装置13は、実施形態1と同じ構成のものであり、図11〜図13に示すように、回転体17の歯車部24がピニオンギア38に噛み合った状態で、鍵盤蓋30の後部に取り付けられている。すなわち、このダンパ装置13は、内側ハウジング16の底板16bが、鍵盤蓋30の下面に設けられた取付板40に、スペーサ19を介してビス20によって取り付けられている。
【0065】
この場合、ダンパ装置13における回転体17の歯車部24と開閉装置31のピニオンギア38との噛み合わせ位置は、図13に示すように、鍵盤蓋30が半分程度にスライドして開いた位置、つまり鍵盤蓋30の開閉動作における中間位置において、ダンパ装置13の制動ばね18が、図4および図5に示したように、自由状態であるニュートラル状態となるように設定されている。
【0066】
これにより、ダンパ装置13は、図10に示したように、鍵盤蓋30が半分程度にスライドして開いた位置がニュートラル状態となり、このニュートラル状態を境にして、鍵盤蓋30が閉じる際にも、また鍵盤蓋30が開く際にも、制動ばね18によって鍵盤蓋30に加わる負荷が徐々に増大するように構成されている。
【0067】
次に、このダンパ装置13を用いた鍵盤蓋30の開閉装置31の作用について説明する。
まず、図13に示すように、鍵盤蓋30が半分程度にスライドして開いている状態、つまり制動ばね18がニュートラル状態で、鍵盤蓋30を閉じる場合には、鍵盤蓋30の前部が前側ガイド部32によってガイドされると共に、鍵盤部30の後部が後側ガイド部33によってガイドされながら、鍵盤蓋30が前側に向けて移動する。
【0068】
このときには、後側ガイド部33における鍵盤蓋30の後端部に設けられたピニオンギア38が、楽器ケース1の側板2に設けられたラックギア39に噛み合って回転しながらラックギア39に沿って移動するので、ピニオンギア38の回転に伴って鍵盤蓋30に設けられたダンパ装置13の歯車部24が回転体17と共に回転する。
【0069】
このときには、図6および図7に示したように、回転体17の歯車部24が矢印X方向に回転し、制動ばね18がニュートラル状態から縮む方向に徐々に弾性変形する。このため、制動ばね18は、図10における右側の実線で示したように、回転体17に加わる負荷を徐々に増大させるので、鍵盤蓋8を閉じるための力を徐々に重くして、鍵盤蓋30の閉じる動作を徐々に遅くすることができる。このため、鍵盤蓋30が完全に閉じる直前では、制動ばね18による負荷が最大になるので、鍵盤蓋30をゆっくり閉じることができる。
【0070】
また、図11に示すように、鍵盤蓋30を完全に閉じた状態から開く場合には、ダンパ装置13の制動ばね18のばね力が鍵盤蓋30を開く方向に付与されているので、軽い力で鍵盤蓋30を開き始めることができる。すなわち、鍵盤蓋30が完全に閉じた状態では、制動ばね18が最大に縮んで、制動ばね18のばね力が最大に蓄えられているので、鍵盤蓋30を開き始める際には、制動ばね18に蓄えられたばね力によって軽い力で開くことができる。
【0071】
そして、鍵盤蓋30が開き始めて徐々にスライドして開き、回転体17の歯車部24が矢印Y方向に回転して行くと、制動ばね18の収縮が徐々に解放されるので、制動ばね18に蓄えられたばね力が徐々に弱くなると共に、鍵盤蓋30のトルクと制動ばね18のばね力との差が徐々に大きくなり、鍵盤蓋30の開く動作が速くなる。これにより、図13に示すように、鍵盤蓋30が半分程度にスライドして開く位置になるまで、すなわち制動ばね18がニュートラル状態になるまでは、制動ばね18に蓄えられたばね力によって、軽い力で鍵盤蓋30を開くことができる。
【0072】
この後、鍵盤蓋30が更に開き、回転体17の歯車部24が矢印Y方向に回転し、制動ばね18がニュートラル状態を通過すると、図8および図9に示したように、制動ばね18が自由状態から伸びて膨張する方向に徐々に弾性変形する。このため、制動ばね18は、図10における左側の実線で示すように、回転体17に加わる負荷を徐々に増大させるので、鍵盤蓋30を開くための力を徐々に重くして、鍵盤蓋30の開く動作を徐々に遅くすることができる。このため、図12に示すように、鍵盤蓋30が完全に開く直前では、制動ばね18による負荷が最大になるので、鍵盤蓋30をゆっくり開くことができる。
【0073】
また、図12に示すように、鍵盤蓋30を完全に開いた状態から閉じる場合には、ダンパ装置13の制動ばね18のばね力が鍵盤蓋30を閉じる方向に付与されているので、軽い力で鍵盤蓋30を閉じ始めることができる。すなわち、鍵盤蓋30が完全に開いた状態では、制動ばね18が最大に伸びて膨張し、制動ばね18のばね力が最大に蓄えられているので、鍵盤蓋30を閉じ始める際には、制動ばね18に蓄えられたばね力によって軽い力で閉じることができる。
【0074】
そして、鍵盤蓋30が閉じ始めて徐々にスライドして閉じ、回転体17の歯車部24が矢印X方向に回転して行くと、制動ばね18の膨張が徐々に解除されるので、制動ばね18のばね力が徐々に弱くなると共に、鍵盤蓋30のトルクと制動ばね18のばね力との差が徐々に大きくなり、鍵盤蓋30の閉じる動作が速くなる。
【0075】
これにより、図13に示すように、鍵盤蓋30が半分程度に閉じる位置になるまで、すなわち制動ばね18がニュートラル状態になるまでは、制動ばね18に蓄えられたばね力によって、軽い力で鍵盤蓋30を閉じることができる。この後は、上述したように再び制動ばね18が縮むので、鍵盤蓋30をゆっくり閉じることができる。
【0076】
このように、この鍵盤楽器における鍵盤蓋30の開閉装置31によれば、楽器ケース1に開閉自在に設けられて鍵盤部6を開閉自在に覆う鍵盤蓋30の開閉動作をダンパ装置13によって制動する場合において、鍵盤蓋30が楽器ケース1の側板2にスライド可能に設けられ、ダンパ装置13が鍵盤蓋30に設けられて鍵盤蓋30のスライド動作に伴う回転動作を制動することにより、実施形態1と同様、鍵盤蓋30が閉じる際にも、また鍵盤蓋30が開く際にも、ダンパ装置13の制動ばね18によって鍵盤蓋30の開閉動作を良好に制動することができる。
【0077】
すなわち、この鍵盤楽器における鍵盤蓋30の開閉装置31によれば、鍵盤蓋30に第1歯車であるピニオンギア38が設けられ、楽器ケース1の側板2にピニオンギア38が噛み合って転動することにより、鍵盤蓋30をガイドするラックギア39が設けられ、鍵盤蓋30に設けられたダンパ装置13の回転体17の歯車部24が、ピニオンギア38に噛み合って回転体17と共に回転するので、鍵盤蓋30の開閉動作に伴ってピニオンギア38がラックギア39に噛み合って回転しながら移動する際に、このピニオンギア38の回転に伴ってダンパ装置13の回転体17を確実に回転させることができ、これにより鍵盤蓋30が閉じる際にも、また鍵盤蓋30が開く際にも、ダンパ装置13の制動ばね18によって鍵盤蓋8の開閉動作を確実に且つ良好に制動することができる。
【0078】
なお、上記実施形態1、2では、制動ばね18として、ねじりコイルばねを用いた場合について述べたが、必ずしもねじりコイルばねである必要はなく、トーションばねを用いても良い。
【0079】
また、上記実施形態1、2では、鍵盤楽器の鍵盤蓋8、30の開閉装置10、31に適用した場合について述べたが、必ずしも鍵盤楽器である必要はなく、例えば家具の扉や蓋、あるいはドアなどの開閉体にも適用することができる。この場合においても、開閉体は、支点を中心に回転して開閉する構造のものでも良く、また引き戸などのようにスライドして開閉する構造のものでも良い。
【符号の説明】
【0080】
1 楽器ケース
6 鍵盤部
8、30 鍵盤蓋
10、31 開閉装置
11 支持軸
12 アーム部材
13 ダンパ装置
13a ハウジング
14 連動歯車
15 外側ハウジング
15a 雌ねじ部
16 内側ハウジング
16a 雄ねじ部
17 回転体
18 制動ばね
21 円筒軸
22 収納穴部
23 軸部
24 歯車部
25 コイル部
25a コイル部の一端部
25b コイル部の他端部
26 防水リング
27 潤滑剤
32 前側ガイド部
33 後側ガイド部
38 ピニオンギア
39 ラックギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
このハウジングの内部に回転自在に配置され、その回転中心部に収納部が設けられた回転体と、
この回転体の前記収納部内に配置され、一端部が前記回転体に係止され、他端部が前記ハウジングに固定され、自由状態がニュートラル状態となる制動ばねと、
を備えていることを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、外側ハウジングと、この外側ハウジング内に螺着して円筒軸が前記回転体の前記収納部内に挿入する内側ハウジングとを備えており、
前記回転体は、前記収納部内の回転中心部に設けられて前記内側ハウジングの前記円筒軸内に隙間をもって挿入する軸部を備えており、
前記制動ばねは、前記内側ハウジングの前記円筒軸内に配置されて前記回転体の前記軸部が挿入し、この状態で一端部が前記回転体の前記軸部に係止され、他端部が前記内側ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記回転体には、前記外側ハウジングの外部に突出して前記回転体を外部部材の動作に応じて回転させるための駆動連結部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記外側ハウジングと前記内側ハウジングとの間に配置された状態で、前記回転体の外周面が摺動可能に圧接する防水リングと、前記内側ハウジングと前記回転体との間に封入された潤滑剤とを備えていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のダンパ装置。
【請求項5】
請求項1に記載されたダンパ装置によって、開閉体の開閉動作を制動することを特徴とする開閉体の開閉装置。
【請求項6】
前記開閉体は、装置本体に設けられた支持軸に対して回転自在に取り付けられており、前記ダンパ装置は、前記装置本体に設けられて前記支持軸を中心に上下方向に回転する前記開閉体の回転動作を制動することを特徴とする請求項5に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項7】
前記支持軸には前記開閉体と共に回転する第1歯車が設けられており、前記ダンパ装置は、前記回転体の前記駆動連結部が前記第1歯車に連動して前記回転体と共に回転することを特徴とする請求項6に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項8】
前記開閉体は、装置本体にスライド可能に設けられており、前記ダンパ装置は、前記開閉体に設けられて前記開閉体のスライド動作に伴う回転動作を制動することを特徴とする請求項5に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項9】
前記開閉体には第1歯車が設けられており、前記装置本体には前記第1歯車が噛み合って前記開閉体の移動に伴って転動することにより、前記開閉体をガイドするラックギアが設けられており、前記ダンパ装置は、前記回転体の前記駆動連結部が前記第1歯車に連動して前記回転体と共に回転することを特徴とする請求項8に記載の開閉体の開閉装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−21700(P2011−21700A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167947(P2009−167947)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】