説明

ツイストスライド機構及びロボット

【課題】スライド動作の俊敏性を低下させずにツイスト動作の俊敏性を向上させることが可能なツイストスライド機構及びロボットを提供する。
【解決手段】本発明のロボット10は、平行に配置された1対のボール螺子機構40,40における1対のベース駆動用ボールナット42,42を旋回ベース30と連結させた構成とすることで、それらボール螺子機構40,40を駆動する1対のベース駆動用サーボモータ81,81によって旋回ベース30のスライド駆動とツイスト駆動の両方を行うことができる。また、それら1対のベース駆動用サーボモータ81,81が共に固定ベース11に固定されているので、スライド動作の俊敏性の低下させずにツイスト動作の俊敏性を向上させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定ベースに対してスライドする直動ベースに旋回ベースを回転可能に連結して備え、旋回ベースにアクチュエータ等を固定又は組み付けた状態で、その旋回ベースをスライド駆動及びツイスト駆動可能なツイストスライド機構と、そのツイストスライド機構を備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のツイストスライド機構として、図7に示すように、固定ベース1に対して直動ベース3をスライド駆動するスライド用モータ2を固定ベース1に取り付ける一方、直動ベース3に対して旋回ベース5をツイスト駆動するツイスト用モータ4を直動ベース3に取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248197号公報(段落[0016]〜[0018]、第2図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のツイストスライド機構の構造では、例えば、ツイスト動作の俊敏性を高めるためにツイスト用モータ4の容量を上げると、ツイスト用モータ4の重量が増した分だけスライド用モータ2の負荷が増してスライド動作の俊敏性が低下するという問題が生じていた。また、そのスライド動作の俊敏性の低下を防ぐためにスライド用モータ2の容量も上げると、モータに係るコストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、スライド動作の俊敏性を低下させずにツイスト動作の俊敏性を向上させることが可能なツイストスライド機構及びロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るツイストスライド機構は、固定ベースに対してベーススライド方向にスライド可能に連結された直動ベースと、直動ベースに対してベーススライド方向と直交するベースツイスト軸回りにツイスト可能に連結された旋回ベースとを有し、旋回ベースにアクチュエータ又はワークが組み付けられ又は固定された状態で、その旋回ベースをスライド駆動及びツイスト駆動可能なツイストスライド機構において、ベースツイスト軸を間に挟んだ位置で互いに平行になってベーススライド方向に延び、固定ベースに回転可能に支持された1対のベース駆動用ボール螺子と、1対のベース駆動用ボール螺子に螺合すると共に旋回ベースに連結され、1対のベース駆動用ボール螺子の回転によって直動可能な1対のベース駆動用ボールナットと、旋回ベースに対する各ベース駆動用ボールナットのベースツイスト軸と平行な軸回りの回動と、ベース駆動用ボールナット同士の接近及び離間とを許容するように、各ベース駆動用ボールナットを旋回ベースに連結するベース・ナット連結機構と、固定ベースに取り付けられて1対のベース駆動用ボール螺子を別々に回転駆動し、1対のベース駆動用ボールナットを別々に任意の速度で直動させることが可能な1対のベース駆動用サーボモータとを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のツイストスライド機構において、ベース・ナット連結機構は、ベースツイスト軸を間に挟んだ位置に配置されかつ互いに接近及び離間するように旋回ベースに直動可能に連結された1対の中継ベースと、各中継ベースと各ベース駆動用ボールナットとをベースツイスト軸と平行な軸回りに回動可能に連結する1対のナット連結用ベアリングとを備えてなるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明に係るツイストスライド機構は、固定ベースに対してベーススライド方向にスライド可能に連結された直動ベースと、直動ベースに対してベーススライド方向と直交するベースツイスト軸回りにツイスト可能に連結された旋回ベースとを有し、旋回ベースにアクチュエータ又はワークが組み付けられ又は固定された状態で、その旋回ベースをスライド駆動及びツイスト駆動可能なツイストスライド機構において、ベースツイスト軸を間に挟んだ位置で互いに平行になってベーススライド方向に延びた1対の直動領域内を直動する1対の直動出力部と、固定ベースに取り付けられた1対のベース駆動用サーボモータとを有して、それら1対のベース駆動用サーボモータの回転出力によって1対の直動出力部を別々に直動させることが可能なツインスライド機構と、旋回ベースに対する各直動出力部のベースツイスト軸と平行な軸回りの回動と、直動出力部同士の接近及び離間とを許容するように、各直動出力部を旋回ベースに連結するベース・直動出力部連結機構とを備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明に係るロボットは、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のツイストスライド機構を一部に備えたロボットであって、ベースツイスト軸の軸方向に延びかつ旋回ベースに対してベースツイスト軸の軸方向に直動可能で、旋回ベースと一体にツイストする直動シャフトと、直動シャフトに固定されて、ベースツイスト軸方向と交差する方向に延びた旋回アームと、旋回ベースに取り付けられたアーム直動用サーボモータと、アーム直動用サーボモータの回転出力を直動シャフトの直動に変換する動力変換機構とが備えられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のロボットにおいて、直動シャフトは1対になってベースツイスト軸の両側に配置されると共に、それら1対の直動シャフトの一端部の間がシャフト連絡部材にて連結される一方、他端部の間が旋回アームにて連結され、動力変換機構は、ベースツイスト軸に沿って延び、アーム直動用サーボモータによって回転駆動されるボール螺子と、シャフト連絡部材に回転不能に固定され、ボール螺子に螺合したボールナットとからなるところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載のロボットにおいて、旋回ベースには、直動シャフト及び動力変換機構を収容しかつ直動ベースに回転可能に連結されたツイスト筒部と、ツイスト筒部の一端を閉塞した第1閉塞盤と、ツイスト筒部の他端を閉塞した第2閉塞盤とが備えられ、アーム直動用サーボモータの回転出力部は、第1閉塞盤に取り付けられると共に、第1閉塞盤に貫通形成された貫通孔を通して動力変換機構に連結され、直動シャフトは、第2閉塞盤に貫通形成されたシャフト挿通孔を通してツイスト筒部の内外に挿通され、直動シャフトのうちツイスト筒部の外部に位置した端部に、旋回アームが固定されたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1のツイストスライド機構では、1対のベース駆動用ボール螺子に螺合した1対のベース駆動用ボールナットが旋回ベースに連結され、それら1対のベース駆動用ボール螺子が1対のベース駆動用サーボモータによって別々に回転駆動される。これにより、1対のベース駆動用ボールナットを同一方向に同一速度で直動させて、旋回ベースをスライドさせたり、1対のベース駆動用ボールナットを異なる方向に同一速度で直動させて、旋回ベースをツイストさせたり、さらには、1対のベース駆動用ボールナットを異なる方向又は同一方向に異なる速度で直動させて、旋回ベースをスライドさせながらツイストさせる動作を、1対のベース駆動用サーボモータにより行わせることができる。そして、それら1対のベース駆動用サーボモータが固定ベースに取り付けられているので、ツイスト動作の俊敏性を向上させるために1対のベース駆動用サーボモータの容量を上げてモータ重量が増しても、従来のように、スライド動作の俊敏性が低下することはない。即ち、本発明の構成によれば、スライド動作の俊敏性の低下させずにツイスト動作の俊敏性を向上させることが可能になる。しかも、1対のベース駆動用サーボモータが旋回ベースのスライド駆動とツイスト駆動の両方の駆動源として兼用されているので、従来のようにスライド駆動専用のモータとツイスト駆動専用のモータとを設けた構造に比べてモータの有効利用が図られる。また、1対のベース駆動用サーボモータの両方のモータ出力トルクをツイスト動作に偏重して用いてツイスト動作の俊敏性を向上させたり、スライド動作に偏重して用いてスライド動作の俊敏性を向上させることもできる。なお、本発明の構成では、従来のように旋回ベースを旋回させるためのモータを直動ベースに搭載していないのでエネルギー効率にも優れる。
【0013】
[請求項2の発明]
本発明において、各ベース駆動用ボールナットを旋回ベースに連結するベース・ナット連結機構は、例えば、旋回ベースに形成された1対の長孔と、各ベース駆動用ボールナットから突出して各長孔に直動可能かつ回転可能に係合したピンとで構成してもよいし、請求項2の構成のように、ベースツイスト軸を間に挟んだ位置に配置されかつ互いに接近及び離間するように旋回ベースに直動可能に連結された1対の中継ベースと、各中継ベースと各ベース駆動用ボールナットとをベースツイスト軸と平行な軸回りに回動可能に連結する1対のナット連結用ベアリングとを備えた構成にしてもよい。また、請求項2の構成によれば、1対のベース駆動用ボールナット同士の接近及び離間動作を許容する部分と、旋回ベースに対する各ベース駆動用ボールナットの回動を許容する部分が別々に設けられているので、スムーズな動作が可能になる。
【0014】
[請求項3の発明]
請求項3のツイストスライド機構では、1対の直動出力部を同一方向に同一速度で直動させて、旋回ベースをスライドさせたり、1対の直動出力部を異なる方向に同一速度で直動させて、旋回ベースをツイストさせたり、さらには、1対の直動出力部を異なる方向又は同一方向に異なる速度で直動させて、旋回ベースをスライドさせながらツイストさせる動作を、1対のベース駆動用サーボモータにより行わせることができる。そして、それら1対のベース駆動用サーボモータが固定ベースに取り付けられているので、ツイスト動作の俊敏性を向上させるために1対のベース駆動用サーボモータの容量を上げてモータ重量が増しても、従来のように、スライド動作の俊敏性が低下することはない。即ち、本発明の構成によれば、スライド動作の俊敏性の低下させずにツイスト動作の俊敏性を向上させることが可能になる。しかも、1対のベース駆動用サーボモータが旋回ベースのスライド駆動とツイスト駆動の両方の駆動源として兼用されているので、従来のようにスライド駆動専用のモータとツイスト駆動専用のモータとを設けた構造に比べてモータの有効利用が図られる。また、1対のベース駆動用サーボモータの両方のモータ出力トルクをツイスト動作に偏重して用いてツイスト動作の俊敏性を向上させたり、スライド動作に偏重して用いてスライド動作の俊敏性を向上させることもできる。なお、本発明の構成では、従来のように旋回ベースを旋回させるためのモータを直動ベースに搭載していないのでエネルギー効率にも優れる。
【0015】
[請求項4及び5の発明]
請求項4のロボットでは、アーム直動用サーボモータの回転出力を動力変換機構によって直動シャフトの直動に変換して、直動シャフトと共に旋回アームをベースツイスト軸方向に直動させることができる。ここで、上記した直動シャフトは1つであってもよいし、1対又はそれ以上であってもよい。請求項5のロボットのように直動シャフトを1対備えた構成にすれば、直動シャフトを1つ備えた構成に比べて大きなツイスト用トルクを直動シャフトから旋回アームへと伝達することができる。
【0016】
[請求項6の発明]
請求項6のロボットでは、旋回ベースのうち直動ベースに対して回転可能に連結されたツイスト筒部内に動力変換機構等を収容したので、外観が簡素化されると共に動力変換機構等の可動部分の防塵を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るロボットの側面図
【図2】ロボットの平面図
【図3】図1のA−A切断面におけるロボットの側断面図
【図4】図3のB−B切断面におけるロボットの側断面図
【図5】ベース・ナット連結機構を示した部分断面図
【図6】旋回ベースを旋回させた状態のロボットの平面図
【図7】従来のツイストスライド機構を備えたロボットの側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1に示した本実施形態のロボット10は、5つの駆動軸を有し、それらのうち2つの駆動軸が本発明に係るツイストスライド機構によって構成されている。そのツイストスライド機構は、工場の架台等(図示せず)に固定される固定ベース11と、固定ベース11にスライド可能に連結された直動ベース20と、直動ベース20に対して旋回可能に連結された旋回ベース30とを備えている。
【0019】
固定ベース11は、図2に示すように、平面形状が長方形で上面全体が開放した略箱形状をなしている。図3に示すように、固定ベース11の底壁12には、その短手方向の中央における長手方向全体に亘って矩形窓12Aが形成されている。また、底壁12の上面には、短手方向で矩形窓12Aを間に挟んだ1対の開口縁に1対のガイドレール13,13が固定されている。
【0020】
直動ベース20は、図2に示すように平面形状が長方形の平板状をなし、図3に示すように、1対のガイドレール13,13の間に差し渡されている。また、直動ベース20の下面における両側部には、それぞれ1対ずつのスライダ14,14が間隔をあけて固定されている。そして、それら1対ずつのスライダ14,14が、各ガイドレール13に直動のみ可能に係合し、これにより、直動ベース20が固定ベース11に対してスライド可能に連結されている。また、その直動ベース20のスライド方向が本発明に係るベーススライド方向(図1の矢印Xで示した方向)になっている。
【0021】
図3に示すように、旋回ベース30は、上下方向の延びたツイスト筒部31を備えている。そして、直動ベース20の中央を上下方向に貫通した円形のセンター孔21内にツイスト筒部31が挿通され、例えばクロスローラベアリング22を介して直動ベース20に回転のみ可能に連結されている。これにより、旋回ベース30は、直動ベース20に対してベーススライド方向と直交するベースツイスト軸(図1の符号J1で示した軸)回りにツイストする。
【0022】
ガイドレール13,13の上方には、本発明に係る1対のベース駆動用ボール螺子41,41が各ガイドレール13と平行に設けられている。そして、これら1対のベース駆動用ボール螺子41,41の両端部が、図2に示すように、固定ベース11のうちベーススライド方向で対向した1対の端部壁15,15に支持されている。詳細には、一方の端部壁15には、各ベース駆動用ボール螺子41の同軸上に貫通孔が形成され、それら貫通孔内に減速機ユニット81Mがそれぞれ取り付けられている。そして、各ベース駆動用ボール螺子41の一端部が各減速機ユニット81Mの出力部に固定されることで、減速機ユニット81M内のベアリングを介して端部壁15に回転可能に支持されている。また、他方の端部壁15には、各ベース駆動用ボール螺子41の同軸上に貫通孔が形成されて、そこに図示しないベアリングがそれぞれ取り付けられ、それらベアリングを介して各ベース駆動用ボール螺子41の他端部が他方の端部壁15に回転可能に支持されている。
【0023】
一方の端部壁15の外面には、1対のブラケット81K,81Kを介して1対のベース駆動用サーボモータ81,81が横並びに取り付けられている。各ブラケット81Kは、減速機ユニット81Mの端部を囲んだ筒状をなし、各ベース駆動用サーボモータ81の回転出力軸が、ブラケット81K内で各減速機ユニット81Mの入力軸に連結されている。これらにより、1対のベース駆動用ボール螺子41,41が、1対のベース駆動用サーボモータ81,81にて別々に回転駆動される。
【0024】
図3に示すように、1対のベース駆動用ボール螺子41,41には本発明に係る1対のベース駆動用ボールナット42,42(本発明に係る「直動出力部」に相当する)が螺合し、これら1対のベース駆動用ボール螺子41,41とベース駆動用ボールナット42,42とによって上記した1対のボール螺子機構40,40が構成されている。そして、各ベース駆動用ボールナット42,42が、本発明に係る「ベース・ナット連結機構」(本発明に係る「ベース・直動出力部連結機構」にも相当する)を介して旋回ベース30に結合されている。即ち、旋回ベース30には、ツイスト筒部31から側方に矩形の連結プレート32が張り出され、その連結プレート32の下面には、ツイスト筒部31を間に挟んだ両側に、1対ずつの中継ガイドレール33,33が固定されている(図2参照)。これら中継ガイドレール33は、全て連結プレート32の長手方向に延びると共に、1対ずつが隣り合って平行に配置されている。
【0025】
各中継ガイドレール33にはそれぞれ中継スライダ34が直動可能に係合している。そして、ツイスト筒部31に対して一方の側方で平行に配置された1対の中継ガイドレール33,33の中継スライダ34,34が、共通の中継ベース35の上面に固定されると共に、ツイスト筒部31に対して他方の側方で平行に配置された1対の中継ガイドレール33,33の中継スライダ34,34が、共通の中継ベース35の上面に固定されている。これにより、1対の中継ベース35,35は、互いに接近及び離間するように直動する。
【0026】
各中継ベース35には、図5に示すように、上下方向にベアリング収容孔36Aが貫通形成され、そこにナット連結用ベアリング36が嵌合されて、抜け止めされている。また、各ナット連結用ベアリング36の内側には、ベース駆動用ボールナット42から上方に突出した中継ピン37が嵌合されている。そして、これら中継ガイドレール33、中継スライダ34、中継ベース35、ナット連結用ベアリング36及び中継ピン37から、上記した「ベース・ナット連結機構」が構成されている。これにより、ベース駆動用サーボモータ81,81にてベース駆動用ボールナット42,42の直動位置を制御して、例えば図2から図6への変化に示すように、旋回ベース30を直動ベース20と共にロボット10の長手方向における任意の位置にスライドしかつ、直動ベース20に対して任意の角度にツイストさせることができる。
【0027】
図3に示すように、ツイスト筒部31の上端部は、第1閉塞盤31Bによって閉塞される一方、ツイスト筒部31の下端部は、第2閉塞盤31Cによって閉塞されている。また、第2閉塞盤31Cの下面には、ガイドブロック31Gが固定されている。
【0028】
図4に示すように、第2閉塞盤31C及びガイドブロック31Gには、1対のシャフト挿通孔31D,31Dが上下方向に貫通形成されている。また、各シャフト挿通孔31Dの内面には、下端部から摺接スリーブ50が組み付けられている。そして、それらシャフト挿通孔31D,31Dに1対の直動シャフト51,51が挿通されて、上下動可能に支持されている。
【0029】
ツイスト筒部31内に配置された1対の直動シャフト51,51の上端部は、シャフト連絡部材52によって連結されている。また、シャフト連絡部材52のうち直動シャフト51,51が固定された部分の間の中央には、上下方向に貫通孔が形成されてその内部に昇降用ボールナット54が固定されている。そして、昇降用ボールナット54に昇降用ボール螺子53が螺合してシャフト連絡部材52を上下に貫通している。
【0030】
第1閉塞盤31Bには、昇降用ボール螺子53の同軸上に貫通孔が形成され、その貫通孔内に減速機ユニット82Mが取り付けられている。そして、昇降用ボール螺子53の上端部が、減速機ユニット82Mの下端側の出力部に固定されている。また、第1閉塞盤31Bの上面には、筒状のブラケット31Kを介してアーム直動用サーボモータ82が取り付けられている。さらに、アーム直動用サーボモータ82の回転出力軸が、ブラケット31K内で減速機ユニット82Mの入力軸に取り付けられている。これらにより、昇降用ボール螺子53がアーム直動用サーボモータ82によって回転駆動されて、昇降用ボール螺子53と昇降用ボールナット54とからなるボール螺子機構55(本発明の「動力変換機構」に相当する)により直動シャフト51,51が上下動する。
【0031】
直動シャフト51,51の下端部には、第1アーム60(本発明の「旋回アーム」に相当する)が固定されている。図1に示すように、第1アーム60は、直動シャフト51,51との結合部分から水平方向に延びた片持ち梁状をなし、その第1アーム60の先端部には、第2アーム駆動用サーボモータ83が取り付けられている。
【0032】
第2アーム駆動用サーボモータ83の中心軸は、旋回ベース30の回転中心であるベースツイスト軸と平行になっている。そして、第2アーム駆動用サーボモータ83の回転出力には、減速機ユニット83Mを介して第2アーム61が取り付けられている。詳細には、第1アーム60の先端部に図示しない貫通孔が上下方向に貫通形成され、そこに減速機ユニット83Mが組み付けられている。そして、減速器ユニット83Mの上面に第2アーム駆動用サーボモータ83が取り付けられると共に、第2アーム駆動用サーボモータ83の回転出力が減速機ユニット83Mに連結されている。そして、減速機ユニット83Mの下面に備えた出力部に第2アーム61が固定されている。
【0033】
第2アーム61は、減速機ユニット83Mに固定された一端部が水平となり、中間部で屈曲して他端部が一端部に対して例えば斜め45度下方に延びている。第2アーム61の下端部には、第3アーム駆動用サーボモータ84が取り付けられている。その第3アーム駆動用サーボモータ84の中心軸は、第2アーム61に直交しかつ第2アーム駆動用サーボモータ83の中心軸と交差するように配置されている。また、第3アーム駆動用サーボモータ84の回転出力には、第2アーム駆動用サーボモータ83と同様に、減速機ユニット84Mを介して第3アーム62が取り付けられている。第3アーム62は、第2アーム61と同様に、中間部で例えば45度屈曲した形状をなし、その一端部が減速機ユニット84Mの出力部に固定されている。そして、図1に示したようにロボット10が原点姿勢になると、第3アーム62は、減速機ユニット84Mに固定された端部とは反対側の端部が水平となる。また、第3アーム62のうちロボット10の原点姿勢で水平となる部分には、バリ取り装置90が取り付けられて鉛直下方に延びている。また、バリ取り装置90は、先端部に例えばバリ取り工具91を備え、このバリ取り工具91を回転駆動してバリを取る。なお、ロボット10の原点姿勢において、バリ取り工具91の中心軸と第2アーム駆動用サーボモータ83の回転中心とは、所定の間隔をあけて平行に配置されている。
【0034】
本実施形態のロボット10の構成に関する説明は以上である。次に、このロボット10の作用効果について説明する。本実施形態のロボット10は、例えば、水平方向の延びた図示しないワークの複数の加工孔における上端開口縁のバリを除去するために用いられる。そのために、ワークは図示しない搬送装置にて搬送され、長手方向をロボット10の長手方向と略平行に配置した状態にセットされる。そして、ティーチングプレイバック方式でロボット10が動作し、バリ取り工具91の先端部を各加工孔の上端開口縁に順次押し付けてバリを除去する。
【0035】
このときロボット10は、1対のベース駆動用サーボモータ81,81によるベース駆動用ボール螺子41,41の回転駆動によって1対のベース駆動用ボールナット42,42を直動させて、バリ取り工具91の先端部を2次元水平面内で任意の位置に移動することができる。具体的には、1対のベース駆動用ボールナット42,42を同一方向に同一速度で直動して、旋回ベース30をロボット10の長手方向(ベーススライド方向)にスライドさせることで、バリ取り工具91をロボット10の長手方向における任意の位置に移動することができる。また、1対のベース駆動用ボールナット42,42を異なる方向に同一速度で直動して、旋回ベース30をツイストさせることで、バリ取り工具91の先端部をロボット10の短手方向における任意の位置に移動することができる。これらにより、バリ取り工具91の先端部を2次元水平面内で任意の位置に移動することができる。なお、1対のベース駆動用ボールナット42,42を異なる方向又は同一方向に異なる速度で直動すれば、旋回ベース30がスライドしながらツイストし、バリ取り工具91の先端部をロボット10の長手方向と短手方向の両方向において任意の位置に向けて移動することができる。
【0036】
また、ロボット10は、アーム直動用サーボモータ82による昇降用ボール螺子53の回転駆動によって、バリ取り工具91の先端部を鉛直方向における任意の位置に移動することができる。そして、第2アーム駆動用サーボモータ83による第2アーム61の回転駆動と、第3アーム駆動用サーボモータ84による第3アーム62の回転駆動とによってバリ取り工具91を任意の姿勢に変更することができる。これらにより、図示しないワークの複数の加工孔における上端開口縁にバリ取り工具91の先端部を所望の方向から所望の姿勢で宛がってバリを除去することができる。
【0037】
上記したように本実施形態のロボット10では、1対のベース駆動用サーボモータ81,81によって旋回ベース30のスライド駆動とツイスト駆動の両方を行う。そして、それら1対のベース駆動用サーボモータ81,81が共に固定ベース11に固定されているので、ツイスト動作の俊敏性を向上させるために1対のベース駆動用サーボモータ81,81の容量を上げてモータ重量が増しても、従来のように、スライド動作の俊敏性が低下することはない。即ち、本実施形態のロボット10によれば、スライド動作の俊敏性の低下させずにツイスト動作の俊敏性を向上させることが可能になる。また、1対のベース駆動用サーボモータ81,81が旋回ベース30のスライド駆動とツイスト駆動の両方の駆動源に兼用されているので、従来のようにスライド駆動専用のモータとツイスト駆動専用のモータとを設けた構造に比べてモータの有効利用が図られる。また、1対のベース駆動用サーボモータ81,81の両方のモータ出力トルクをツイスト動作に偏重して用いてツイスト動作の俊敏性を向上させたり、スライド動作に偏重して用いてスライド動作の俊敏性を向上させることもできる。なお、本実施形態のロボット10では、従来のように旋回ベース30を旋回させるためのモータを直動ベース20に搭載していないのでエネルギー効率にも優れる。
【0038】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0039】
(1)前記実施形態のロボット10は、1対の直動シャフト51,51を備えていたが、直動シャフトは1つ又は3つ以上であってもよい。
【0040】
(2)前記実施形態では、本発明に係るツイストスライド機構をロボット10に適用した一例を示したが、ワーク搬送装置に本発明に係るツイストスライド機構を適用してもよい。具体的には、前記実施形態のロボット10における旋回ベース30からアーム直動用サーボモータ82、第1アーム60等を排除し、旋回ベース30にワークを固定するための機構を設けてワーク搬送装置としてもよい。そして、ワークを旋回ベースと共に任意の直動位置に移動しかつ任意の向きにツイストさせてもよい。なお、前記実施形態では、ロボット10のうち本発明に係る「ツイストスライド機構」以外の部分、即ち、旋回ベース30に組み付けられた部分が、本発明に係る「アクチュエータ」に相当する。
【0041】
(3)前記実施形態では、本発明に係る「ツイストスライド機構」が1対のボール螺子機構によって構成されているが、「ツイストスライド機構」は、例えば、以下のような構成でもよい。即ち、ベースツイスト軸を間に挟んだ位置で互いに平行になってベーススライド方向に延びるように1対のタイミングベルトを配置して、それら1対のタイミングベルトを固定ベースに回転可能に取り付けられた2対のプーリの間に架け渡して取り付ける。そして、前記実施形態の「ボールナット」の代わりとなる1対の直動出力部を1対のタイミングベルトに固定し、1対のタイミングベルトの各一端部のプーリを、固定ベースに取り付けた1対のベース駆動用サーボモータで別々に回転駆動可能にして、本発明に係る「ツイストスライド機構」を構成してもよい。
【0042】
(4)ベースツイスト軸を間に挟んだ位置で互いに平行になってベーススライド方向に延びた1対のラックを固定ベースに直動可能に支持すると共に、各ラックに噛合したピニオンを固定ベースに回転可能に取り付ける。そして、前記実施形態の「ボールナット」の代わりとなる1対の直動出力部を1対のラックに固定し、各ピニオンを、固定ベースに取り付けた1対のベース駆動用サーボモータで別々に回転駆動可能にして、本発明に係る「ツイストスライド機構」を構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 ロボット
11 固定ベース
20 直動ベース
30 旋回ベース
31 ツイスト筒部
31B 第1閉塞盤
31C 第2閉塞盤
31D シャフト挿通孔
32 連結プレート
33 中継ガイドレール
34 中継スライダ
35 中継ベース
36 ナット連結用ベアリング
37 中継ピン
41 ベース駆動用ボール螺子
42 ベース駆動用ボールナット
51 直動シャフト
52 シャフト連絡部材
60 第1アーム(旋回アーム)
61 第2アーム
62 第3アーム
81 ベース駆動用サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベースに対してベーススライド方向にスライド可能に連結された直動ベースと、前記直動ベースに対して前記ベーススライド方向と直交するベースツイスト軸回りにツイスト可能に連結された旋回ベースとを有し、前記旋回ベースにアクチュエータ又はワークが組み付けられ又は固定された状態で、その旋回ベースをスライド駆動及びツイスト駆動可能なツイストスライド機構において、
前記ベースツイスト軸を間に挟んだ位置で互いに平行になって前記ベーススライド方向に延び、前記固定ベースに回転可能に支持された1対のベース駆動用ボール螺子と、
前記1対のベース駆動用ボール螺子に螺合すると共に前記旋回ベースに連結され、前記1対のベース駆動用ボール螺子の回転によって直動可能な1対のベース駆動用ボールナットと、
前記旋回ベースに対する各前記ベース駆動用ボールナットの前記ベースツイスト軸と平行な軸回りの回動と、前記ベース駆動用ボールナット同士の接近及び離間とを許容するように、各前記ベース駆動用ボールナットを前記旋回ベースに連結するベース・ナット連結機構と、
前記固定ベースに取り付けられて前記1対のベース駆動用ボール螺子を別々に回転駆動し、前記1対のベース駆動用ボールナットを別々に任意の速度で直動させることが可能な1対のベース駆動用サーボモータとを備えたことを特徴とするツイストスライド機構。
【請求項2】
前記ベース・ナット連結機構は、
前記ベースツイスト軸を間に挟んだ位置に配置されかつ互いに接近及び離間するように前記旋回ベースに直動可能に連結された1対の中継ベースと、
各前記中継ベースと各前記ベース駆動用ボールナットとを前記ベースツイスト軸と平行な軸回りに回動可能に連結する1対のナット連結用ベアリングとを備えてなることを特徴とする請求項1に記載のツイストスライド機構。
【請求項3】
固定ベースに対してベーススライド方向にスライド可能に連結された直動ベースと、前記直動ベースに対して前記ベーススライド方向と直交するベースツイスト軸回りにツイスト可能に連結された旋回ベースとを有し、前記旋回ベースにアクチュエータ又はワークが組み付けられ又は固定された状態で、その旋回ベースをスライド駆動及びツイスト駆動可能なツイストスライド機構において、
前記ベースツイスト軸を間に挟んだ位置で互いに平行になって前記ベーススライド方向に延びた1対の直動領域内を直動する1対の直動出力部と、前記固定ベースに取り付けられた1対のベース駆動用サーボモータとを有して、それら1対のベース駆動用サーボモータの回転出力によって前記1対の直動出力部を別々に直動させることが可能なツインスライド機構と、
前記旋回ベースに対する各前記直動出力部の前記ベースツイスト軸と平行な軸回りの回動と、前記直動出力部同士の接近及び離間とを許容するように、各前記直動出力部を前記旋回ベースに連結するベース・直動出力部連結機構とを備えたことを特徴とするツイストスライド機構。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のツイストスライド機構を一部に備えたロボットであって、
前記ベースツイスト軸の軸方向に延びかつ前記旋回ベースに対して前記ベースツイスト軸の軸方向に直動可能で、前記旋回ベースと一体にツイストする直動シャフトと、
前記直動シャフトに固定されて、前記ベースツイスト軸方向と交差する方向に延びた旋回アームと、
前記旋回ベースに取り付けられたアーム直動用サーボモータと、
前記アーム直動用サーボモータの回転出力を前記直動シャフトの直動に変換する動力変換機構とが備えられたことを特徴とするロボット。
【請求項5】
前記直動シャフトは1対になって前記ベースツイスト軸の両側に配置されると共に、それら1対の直動シャフトの一端部の間がシャフト連絡部材にて連結される一方、他端部の間が前記旋回アームにて連結され、
前記動力変換機構は、前記ベースツイスト軸に沿って延び、前記アーム直動用サーボモータによって回転駆動されるボール螺子と、前記シャフト連絡部材に回転不能に固定され、前記ボール螺子に螺合したボールナットとからなることを特徴とする請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記旋回ベースには、前記直動シャフト及び前記動力変換機構を収容しかつ前記直動ベースに回転可能に連結されたツイスト筒部と、前記ツイスト筒部の一端を閉塞した第1閉塞盤と、前記ツイスト筒部の他端を閉塞した第2閉塞盤とが備えられ、
前記アーム直動用サーボモータの回転出力部は、前記第1閉塞盤に取り付けられると共に、前記第1閉塞盤に貫通形成された貫通孔を通して前記動力変換機構に連結され、
前記直動シャフトは、前記第2閉塞盤に貫通形成されたシャフト挿通孔を通して前記ツイスト筒部の内外に挿通され、
前記直動シャフトのうち前記ツイスト筒部の外部に位置した端部に、前記旋回アームが固定されたことを特徴とする請求項4又は5に記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161558(P2011−161558A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26150(P2010−26150)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(595031063)株式会社クロイツ (9)
【Fターム(参考)】