説明

ツール構成要素の動作領域を所定の要素に調節する方法

【課題】 本発明は、名目上同一構造の規則的グリッド中の特定構造での、たとえば電子顕微鏡像フィールドの位置設定について説明する。そのような構造はたとえば、チップ上のメモリセルであって良い。そのようなメモリセルは近年、たとえば1μm2未満の領域を有し、1000*1000のセル中に配列されている。変位中、構造のグリッド距離よりも大きなエラーが発生する可能性があり、その結果、像フィールドは意図しない構造に調節される。
【解決手段】 本発明の本質は、変位が多数の成分変位にさらに分割可能なことであり、それにより、成分変位あたりのエラーはグリッド距離の半分未満になる。各成分を変位させた後に、変位を決定することで、成分変位あたりのエラーは排除可能となる。この方法は自動化に適しており、それにより補正技術の手段によって像変位が決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、名目上同一のグリッド要素のうちの名目上規則的なグリッド中の、所定かつ任意のグリッド要素で、ツール構成要素の動作領域の位置を設定する方法に関する。それにより、位置設定は、調節機構の手段によって行われる。本方法は:
1.グリッド中の初期参照位置を検出する手順;
2.グリッドに対してツール構成要素を変位させる手順;
3.続いてグリッド中の参照位置を検出する手順;
4.所定のグリッド要素がツール構成要素の動作領域の所定距離内であるかどうかを検査する手順;及び、
5.検査結果に基づき、手順2を繰り返し、必要であれば手順3及び手順4を繰り返す手順;
を有する。
【0002】
本発明はまた、本発明に従った方法を実行する装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
上述のような方法はたとえば、半導体産業における欠陥分析で使用される。欠陥分析での使用では、半導体回路中に存在する名目上同一のメモリセルのグリッド中のたとえばメモリセルのような特定素子を、たとえば走査電子顕微鏡(SEM)の手段によって検査したいという要求がある。そのような半導体回路はすでにウエハから切り離されていても良いし、又はウエハの一部を形成していても良い。
【0004】
SEMの場合、集束電子ビームは半導体回路のような試料を検査する。電子ビームが試料に衝突する場所では、2次電子がとりわけ放出される。2次電子は、2次電子検出器(SED)によって検出される。この方法では、(位置に依存した)情報が得られる。それに続いてこの情報は像形式での入手が可能となる。現在では、非常に高分解能の像が得られるように、SEMの焦点サイズはたとえば1nmである。
【0005】
半導体産業では、所謂30cmサイズのウエハが処理されてICになる。ある時点で、ウエハは数十又は数百のICに分離される。それにより、数え切れないほどの半導体素子が各IC上に存在する。これらの半導体素子は、たとえば、メモリセル形式における半導体素子の場合での状況のように、しばしばそのIC上に名目上同一の構造のグリッド構造を形成する。製造ロスを減らすためには、特定の半導体素子を検査するのが望ましいだろう。
【0006】
たとえば電気的検査は、検査した素子の特性が他の素子の仕様と異なることを明らかにすることから、たとえば特定メモリセルのような特定素子を検査したいという要求が起こるのだろう。そのような特定素子を検査することで、前述の差異の原因を明らかにすることができ、その結果、プロセス及び/又は製造工程の改善に結びつき、製造ロスを減少させることができる。
【0007】
近年半導体産業で使用されているようなメモリセルは大抵の場合、1μm2未満の領域を占め、グリッドに配列している。そのグリッドにはたとえば、1000*1000のメモリセルが配列されている。たとえばSEMによって特定のメモリセルの検査を可能にするため、SEMの動作領域(像フィールド)を、この特定メモリセルへ移動させなくてはならない。この目的のため、最初にグリッドの頂点のような容易に認識可能な点を検出することが必要である。検出した後であれば、検査すべきメモリセルへの移動が可能となる。
【0008】
上述の方法では、SEMによって取得可能な半導体回路の像はディスプレイ上に連続的に表示される。x-yテーブルのような移動機構上に設けられている半導体回路はたとえばジョイスティックを使用して移動させることが可能である。最初に、像フィールドをグリッドの頂点のような既知の位置におけるグリッド要素へ移動する。この既知の位置から、SEMユーザーは前もって、検査すべき素子に到達するためには何列、何行を移動させなくてはならないのかを知る。それに続いて、半導体回路をジョイスティックの手段によって移動させ、それによって、ディスプレイ上での半導体回路の移動はリアルタイムに目で追うことができる。半導体回路を移動させたときに何列、何行が移動したのかを数えることで、所定の位置を最終的に到達する。
【非特許文献1】H.W.Tan他、”Automatic integrated circuit die positioning in the scanning electron microscope”, Scanning, Foundation for advances in medicine and science, US, 24巻,2002年,pp.86-91
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既知の方法の欠点は、計数エラーの危険が高いことである。そのような危険が高いのはたとえば、SEMユーザーが上述の方法を実行しているのを中断する、又は妨害されるような場合である。計数エラーは容易に起こりうるものであり、そうすると、これまで数えてきた値を破棄し、一から全プロセスを実行せざるを得なくなってしまうだろう。SEMユーザーは、この点に関して、1μm2未満の素子が画像化されるようなこの倍率でのx-yテーブルの移動は比較的大きな衝撃を発生させてしまうことに注意しなくてはならない。
【0010】
素子は必ずしも直角のグリッドに配列している必要はなく、歪んだグリッド又は、たとえば蜂の巣状のグリッドであっても良いことは留意すべきである。そのようなグリッド形式は計数エラーの危険性を増大させる。
【0011】
本発明の目的は、上述の方法で生じる計数エラーよりも計数エラーのリスクを小さくする方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明に従った方法は以下の特徴を有する。
-移動は移動ジャンプの形式をとる。
-最大ジャンプサイズは、
-グリッド周期の単位で表現された移動機構の位置的不確実さ、及び/又は、
-グリッド周期の単位で表現されたグリッド周期の不確実さ、
に基づいて決定される。並びに、
-移動ジャンプは、最大ジャンプサイズよりも小さくなるように選択される。
【0013】
本発明は、移動ジャンプ後のグリッド要素の位置はグリッド要素間のグリッド距離よりもかなり小さな精度で決定することが可能であるという知見に基づいている。その結果、各移動ジャンプ後のジャンプサイズの不確実さは除去可能である。しかし、ある1つのグリッド要素と、そのグリッド要素からのグリッド距離の整数倍に位置する名目上同一の要素との間には差異は生じない。従って、ジャンプ後、名目上同一のグリッド要素中のどのグリッド要素がその決定された位置を有していなければならないのかを知ることが必要である。調節機構によって実行される移動の不確実さは、一般的にはジャンプサイズに依存する。ここで、ジャンプサイズの不確実さがグリッド距離の半分未満になるようにジャンプサイズを選択することで、どのグリッド要素が決定された位置を有していなければならないのか分からなくなるという混乱は生じない。既知の位置から所定のグリッド要素の位置までの移動を、ジャンプサイズの不確実さがグリッド距離の半分未満となるようなサイズに分割すること、及びジャンプ毎のジャンプの不確実さを除去することで、ツール構成要素は結局、所定のグリッド要素に調節される。
【0014】
不確実さは移動機構の不確実さによって引き起こされうるが、そのようなエラーはまた、グリッド周期性の不規則性にも起因しうるということに留意すべきである。
【0015】
また、ジャンプサイズの不確実さは各異なる方向において同一である必要はないことにも留意すべきである。これは、移動機構(たとえば機械的移動テーブルのような)の不確実さは各異なる方向で異なる可能性があるからである。それに加えて、グリッド周期性は各異なる方向で異なっていて良い。それが、各異なる方向で異なる最大ジャンプサイズが生じる原因である。
【0016】
本発明に従った方法の一の実施例では、参照位置は相互相関の手段によって検出される。
【0017】
たとえば像生成技術のようなツール構成要素が使用される状況では、2つの像のシフトは、たとえば相互相関の手段によって決定することが可能である。この技術自体は既知である。従って相互相関は2つの像のシフト決定に使用できる。像の1つは移動ジャンプ前に記録されたものであり、もう1つは移動ジャンプ後に記録されたものである。このシフトは、移動ジャンプの結果生じる予想された成分及び、移動ジャンプの不確実さから生じる任意の成分から構成される。よって、任意の成分を決定し、その結果任意の成分による効果を除去することは可能である。
【0018】
像のシフトは必ずしもジャンプサイズに等しいわけではなく、たとえば、移動がグリッド距離の整数倍のときには名目上0に等しい(記録は名目上同一である)ことに留意すべきである。
【0019】
“像”という語は、平面像(2D)のことだけを指すのではなく、空間像(3D)も指して良い。
【0020】
相関技術を使用する利点は、本方法は、自動化された方法で実行することが可能なことである。これにより計数エラーのリスクはさらに減少し、ユーザー個人の負担も減少する。
【0021】
相関技術を使用する別な利点は、ユーザーがたとえばSEMから得られた像全体からの情報を使用することである。これにより、たとえS/N比が不十分なものであっても、良好なシフトの決定及び良好なジャンプサイズの決定を可能にする。
【0022】
相関技術を使用する付加的な利点は、互いに全く同一ではないグリッド要素の場合におけるシフトの良好な決定をも可能にすることである。その場合とはたとえば、一部のグリッド要素への損傷の結果、又は、グリッド要素が(部分的に)不可視になることで生じる。たとえば、埃粒子が要素上に乗っかってしまった場合など。このことによっても、計数エラーのリスクはさらに減少する。
【0023】
非特許文献1では、半導体回路上でのSEMの像平面の自動的位置設定方法についての説明があることに留意すべきである。この場合、第1半導体回路については、移動は最初、初期位置から検査位置までなされ、その後、初期位置に戻る。この戻りの間、一連の記録がなされる。ここで別な半導体回路について、名目上同一の初期位置に位置設定し、それに続いて像認識技術を使用して、ジャンプ毎にユーザーが記録像と過去に記録された一連の像のうちの1つとを比較する場合には、ユーザーはジャンプ毎の位置の不確実さを除去することが可能となり、第1半導体回路上を移動する経路を再現することが可能となる。よって、Tan他の方法は、第1半導体回路上で過去に実現されたような移動を再現するのに適している。しかし他の半導体回路では、当該方法は本発明の問題、つまり任意に選ばれた所定のグリッド要素での位置設定への解決策を与えない。
【0024】
本発明に従った方法の別な実施例では、参照位置は粒子ビームの手段によって検出される。
【0025】
数μm以下の最大寸法で素子を検査するため、1μmよりはるかに小さい解像度が望ましい。そのような解像度は光学顕微鏡では得られない。しかし、たとえば集束電子ビームを使用するSEMの場合、焦点サイズは1μmよりはるかに小さく、たとえば1nmである。その結果、たとえば数nmの解像度を有する像を生成することが可能となる。
【0026】
ビームは集束ビームである必要はないことに留意すべきである。たとえば透過型電子顕微鏡(TEM)では、試料は、平行入射と近似できるビームによって大抵の場合照射される。それにより、影の像が生成される。
【0027】
本発明に従った方法のさらに別な実施例では、移動機構は粒子ビームの偏向をもたらす。
【0028】
たとえば、グリッド要素に対する像フィールドの機械的移動の代わりに、非機械的移動もまた利用可能である。電子ビーム及びイオンビームのような粒子ビームを使用するとき、電場及び/又は磁場の手段で粒子ビームを偏向させることで、像フィールドの移動は可能である。
【0029】
本発明に従った方法のまたさらに別な実施例では、ツール構成要素は走査プローブ顕微鏡(SPM)である。
【0030】
走査トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡、静電力顕微鏡、走査近接場光顕微鏡などのような走査プローブ顕微鏡は目で見るには非常に小さな細部を原子スケールの細部で表示することが可能である。本発明に従った方法は、所定の数のグリッド距離でなされる走査プローブ顕微鏡の像フィールドの移動に非常に適している。
【0031】
本発明に従った方法のまたさらに別な実施例では、グリッドは半導体回路上のグリッドパターンである。
【0032】
半導体産業で使用されるような半導体回路は大抵の場合、ミクロなスケールにおいて小さな素子の規則的グリッドを示す。そのようなグリッドを検査するため、そのようなグリッド中の素子は、たとえば1μmよりも高い精度で突き止められなくてはならない。現状での予測は、半導体回路上の構造の大きさは将来減少する一方で、素子数は増加する一方である。その結果、素子のサイズに対する移動機構(たとえば移動テーブル)の相対的不正確さは減少する一方である。これにより、そのような回路において本発明に従った方法を使用するのは魅力的なものとなる。
【0033】
本発明に従った方法のまたさらに別な実施例では、参照位置は電磁波放射の手段によって検出される。
【0034】
ツール構成要素は光学顕微鏡で良いが、たとえば(位置依存の方法で)X線を検出する顕微鏡であっても良い。
【0035】
グリッドが設けられている試料が使用される波長の電磁波に対して十分透明な場合、2次元グリッドの参照位置を決定するだけではなく、3次元グリッドの参照位置をも決定することが可能であることは留意すべきである。ツール構成要素はある種類の放射線を物体に照射するが、それとは別な種類の放射線が観測されることは考えられることであることに留意すべきである。これに関連して、ユーザーはたとえば、蛍光要素を検討することが可能である。これはX線照射又は粒子線照射に応答して光を放出する。ユーザーはまた、グリッドがたとえば電子線ビームで照射されるときに発生するX線を検討することも可能である。
【0036】
本発明に従った方法のまたさらに別な実施例では、参照位置は音波の手段によって検出される。
【0037】
ツール構成要素は、超音波のような音波を伝送及び/又は受け取ることが可能である。それによりたとえば、超音波検査の生成が可能となる。応用としては、ユーザーはたとえば、医療分野で使用されているような超音波検査を検討することができる(それにより、ツール構成要素は超音波の生成及び検出の両方を行う)。それだけではなく、油田探索用として石油産業で使用されているような超音波検査を検討することも可能である。それにより、音波はたとえば爆発によって生成される。
【0038】
本発明に従った方法のまたさらに別な実施例では、参照位置は磁気共鳴の手段によって任意される。
【0039】
磁気共鳴の場合では、検査される試料は磁場中に設けられ、磁場は勾配を示す。続いて、試料を特定周波数の電磁波で照射する。周波数は磁場に依存する。これに応答して、試料(特にたとえば試料中の水素原子)は電磁波を吸収し、続いて電磁波を再放出する。これは、試料に関する情報を、振幅、周波数及び/又は位相の形式で与える。
【0040】
ここで試料が磁気共鳴を使用して検出することが可能なグリッド要素を含むとき、ツール構成要素の像フィールドはこのグリッドに対して位置設定されて良い。ここではグリッドは2次元グリッドでも良いし、3次元グリッドでも良い。
【0041】
本発明に従った方法のまたさらに別な実施例では、参照位置はグリッドに対するツール構成要素の動作領域の中断されない移動中に任意される。
【0042】
各ジャンプの後に移動機構の移動を繰り返し、中断及び再開することは時間がかかってしまう。代わりに、連続的移動中に参照位置を検出することで時間は節約される。
【0043】
参照位置を検出するための像の記録及び、移動中での像の記録は、ある程度の像の歪みを引き起こす。しかし比較される記録された像同士で強い相関がある場合には、実現された移動の決定に関する結果は重要ではない。両方の記録が同一の像の歪みを有するように、両記録をまさにその移動速度及び移動方向で行うことも可能である。他の可能性は、2つの像のうちの1つを操作することで生じる像の歪みを補償することである。
【実施例】
【0044】
本発明は図に基づいて明らかにされる。ここで、同一の参照番号は対応する構造に関する。
【0045】
図1は、本発明に従った方法を実行する装置をSEMの形式で概略的に図示している。
【0046】
半導体回路110のような分析される試料は、x-yテーブル112の形式で表される移動機構上に設けられている。半導体回路110は、電子銃120の形式で表されるツール構成要素によるデフォーカスされた電子線ビーム122によって照射される。この照射の結果、2次電子が放出される。2次電子は2次電子検出器(SED)126によって検出される。X線も放出され、検出器127によって検出され、その一方で検出器128は放出光を検出する。半導体回路110、移動機構112、検出器126、検出器127及び検出器128は真空チャンバ130内に設けられている。真空チャンバは(図示されていないが)真空引き手段によって真空引きされる。当業者に既知なように、この真空引きは、電子銃120及びSED126が適切に機能することを可能にするために必要である。
【0047】
電子線ビーム122の焦点124が半導体回路110上を、制御ユニット140によって制御される電子銃120によって描画されるので、検出器126、検出器127及び検出器128は半導体回路110からの位置依存情報を検出する。検出器126、検出器127及び検出器128のうちの1つ以上からの情報は像処理ユニット142によって、電子銃120の像フィールドのモニタ144上で像108-iに変換される。この方法では、その装置によって生成される各記録はこのモニタ144上で閲覧される。
【0048】
規則的なグリッドに配列している素子が、電子線ビームの手段で励起し、励起の結果光を放出する蛍光マーカーであることも可能であることに留意すべきである。そのようなマーカーはたとえば、ドープされたCdS又はCdSeのナノ結晶で良い。検出器128を使用して放出された光を検出することで、図1に従った装置は、電子線ビーム122の分解能を有するそのようなマーカーの位置を決定するのに適している。これは、電子線ビームがマーカー上に照射され、その結果マーカーが励起されるときにのみ光が放出されるためである。規則的グリッドに配列する素子の位置を決定することが可能であることに基づき、これらの素子はまた、材料に特有なX線を放出する材料を含んで良い。
【0049】
図2Aは、構造を有する第1像108-iを概略的に図示している。図2Aはまた、配向グリッドをも図示している。この配向グリッドは構造のグリッドの周期を有する。この配向グリッドは規則的構造の一部ではなく、モニタ144のスクリーン上に備えられていると見なすことができる。次の図2Bでの特定を容易に行うため、構造100-1を特別に示す。
【0050】
1グリッド距離だけ右に所望の移動をさせた後の、構造を有する次の像108-2を概略的に図示している。図2Bはまた、配向グリッドも図示している。この配向グリッドは規則的構造の一部ではなく、モニタ144のスクリーン上に備えられていると見なすことができる。次の像108-2は図2Aで図示されているように、像108-1に対してシフトするが、実際の移動が1グリッド距離だけ右に所望の移動に対応しないことが明らかに分かるだろう。
【0051】
図2Cは、図2Aに対する図2Aの所望の像変位及び実現した像変位を概略的に図示している。所望の変位-1グリッド距離だけ右-は変位ベクトル200で示されている。正方形202は実現した変位ベクトルが表れる領域を表す。ここではグリッド距離の半分未満の変位ジャンプの不確実さが与えられている。グリッドが名目上同一の構造のグリッドであるため、同様の画を与える変位は数多く存在する。これらの変位の例をベクトル204-iで示す。これらのベクトルから、ユーザーはここで、実際のシフトを表す変位ベクトルを選択しなくてはならない。構造が名目上同一であるため、構造の形式に基づいた修正ベクトルを検出することはできない。しかし、実現された変位ベクトルは正方形202内に位置しなくてはならないため、ベクトル204-1は、実現された変位を図示する。1つの変位ベクトルだけが正方形202で終端しているのは明らかである。
【0052】
ここで、ベクトル200とベクトル204-1との差異を決定することで、移動ジャンプの不確実さの効果を除去することが可能となる。
【0053】
構造によっては、それに付随する参照位置を単純な方法で決定できるとしても、必ずしも容易に到達可能とは限らない。たとえば、構造がシャープに画定されていないために構造上の参照位置を決定するのが容易ではない場合、構造の上に埃粒子が乗ってしまう場合、構造が損傷を受けてしまう場合などでは問題が発生しうる。これらの場合では、相関技術の使用が魅力的である。
【0054】
当業者には明らかなように、相互相関は2つの像の相互シフトを決定するアルゴリズムである。相互相関の場合では、第2像に対する第1像-所謂参照像-の各異なるシフトを使用することで、ユーザーは、この参照像と第2像との間のグレイ値(グレイレベル)の対応を決定する。ここで決定された値(各シフトで1つの値)は、メモリに記憶する、及び/又は、第3像で表すことが可能である。それにより、各点の(グレイ)値は、所与のシフトにおける第1像と第2像との間の相関値に対応する。大抵の場合がそうなのだが、像が有限サイズを有するとき、像は、シフトするときに互いに部分的に重なるのみである。ユーザーは、2つの像の重なり部分のみを比較することを選択できる。このこと及び、像フィールドの有限性を取り扱う対応技術は、当業者に知られているように“ウインドーイング”と呼ばれる。
【0055】
図2Dは、図2A及び図2Bで図示されている像を比較することで生成される相互相関パターンを概略的に図示している。パターンは、6の相関ピーク210-iを示す。これらのピークは、大きな相関が生じるような、像における6の相互シフトである。これらの相関ピークのうちのどれが実際の移動に用いられるのかをここで明らかにすべきである。不確実さがグリッド距離の半分未満の場合、求められている相関ピークは、期待される位置200からのグリッド距離の半分未満、つまり正方形202内部、に位置すべきである。よって、どの相関ピークが実際の移動を表しているのかは明らかとなるので、実際の移動を決定することが可能となる。
【0056】
図2Dと図2Cとの対応は明確でなくてはならない。図2Dの相関ピークは図2Cのベクトル204-iの終点を指す。
【0057】
不確実さを決定するときにエラーが発生する可能性があることには留意すべきである。このエラーはたとえば、相関パターンにおけるノイズに起因する。最後の2つの位置決定を比較することで移動ジャンプの不確実さが繰り返し除去されるとき、グリッド距離の半分より大きな累積的エラーが生じることは考えられる。この方法では、どのグリッド要素が検査されるべきグリッド要素なのかが依然として明確でない。しかし、たとえば繰り返し最後の像を第1像と比較することで、累積的なエラーは発生しない。この理由は、この場合、第1像に対して期待されるシフトと実現されるシフトが繰り返し決定されるからである。
【0058】
第1像はたとえば、ツール構成要素によって生成される像であって良いこと、及び、第1像はまた、たとえばCAD(コンピュータ支援設計)で作成された素子の設計データから構築された像であっても良いことにも留意すべきである。
【0059】
本方法で相関技術を使用することの大きな利点は、たとえば第1像を参照像として使用すること、及び、ジャンプ毎のこの像とジャンプ後に記録される像とを相関させることで、この全参照像及び全取得像の情報は、この目的のために特定されなくてはならない構造の具体的特徴がなくても、参照位置としての役割を果たす。
【0060】
相関技術の付随的な利点は、像全体からの情報を使用することが可能なことである。これにより、たとえばS/N比が低い場合でも応用することが可能になる。
【0061】
別な利点は、たとえば、埃粒子が素子(の一部)上にあるとき又は素子が損傷を受けているような素子がすべて同一でないときでさえも良好な結果が得られることである。
【0062】
参照位置を突き止めている間、試料が静止している必要はないことに留意すべきである。特に、たとえば相関技術が用いられる像の取得が迅速に行われることで、この取得時間中の移動が、ツール構成要素又は構造の動作領域のサイズに対して小さくなる場合には、移動はただ継続されて良く、調節手段の制御を移動中に変化させて良い。たとえ取得時間中に大きなシフトが生じるとしても、たとえば取得中に粒子ビームを連続的に偏向させることで補償することが可能である。取得中に移動があるという事実については、像メモリ中で補償を実行することも可能である。
【0063】
相互相関が実行される像がたとえば、5*5のグリッド形式で25の要素を有するときに、良好な結果が得られることを実験結果は示唆している。像がこれら5*5の要素で構成される、つまり256*256の像点で構成されるとき、移動ジャンプの実際のサイズは、通常のコンピュータの相関技術の手段によって、1秒あたり数10倍の速さで決定することが可能である。
【0064】
図3は、STMを概略的に図示している。STMでは、シャープな針302の形状を有するプローブが、検査される表面300に非常に近いところで移動手段304によって移動する。針302と表面300との距離は非常に小さく、たとえば0.5nmよりも小さい。針302と表面300との間には、電圧源306によって生じる電圧差が存在する。この電圧差がトンネル電流を生じさせる。このトンネル電流は電流測定手段308によって測定される。このトンネル電流の大きさは、針302と表面300との距離に強く依存する。移動手段304は一般に、針を表面300に平行な面内及びそれに垂直な方向に移動させることの可能な圧電素子から構成される。電流測定手段308から移動手段304への信号のフィードバックにより、針302は表面300からほとんど一定の距離に維持される。ここで針302が、制御ユニット310の制御を受けた状態で移動手段304によって表面上を移動するとき、針は表面からほぼ一定の距離を保つ。その結果、表面に垂直な移動に影響する圧電素子の制御信号は、(位置に依存する)表面300に関する高さ情報を与える。この高さ情報もまた、制御ユニット310に送られるため、この情報によってモニタ312上に像を表示することが可能となる。ここでは、たとえば、異なるグレイ値は異なる高さを表す。
【0065】
図3Aは図3の領域Aの概略的な拡大図である。針302の先端は検査される表面300からわずかに離れた距離に位置する。トンネル電流314は針と表面との間を流れる。移動機構は針302を表面からほぼ一定の距離に保つ。その際、運動時には針302の先端は経路316に従う。
【0066】
取得された像により、参照位置を決定することが可能なのは明らかである。従って本発明に従った方法は、STMの動作領域内での参照位置を決定し、続いて表面への距離を安全な距離(つまり、針が表面に触れない距離)まで増大させ、そこでジャンプさせ、再度針と表面との距離を減少させて再度(移動した)STMの動作領域中の参照位置を探すことで使用可能となる。上記手順は、所望の場所に到達するまで繰り返すことが可能である。
【0067】
本発明に従った方法の利点は、ジャンプ中の針の移動速度は、試料を描画している最中の移動速度よりもより速い速度を選択して良いことである。
【0068】
たとえ、本発明に従った方法を使用することがSTMの場合において明らかになるとしても、本方法をどのようにして他の走査プローブ顕微鏡に応用すればよいかは、当業者には明らかである。これは、すべてのSPMでは、シャープな針が表面に大きく接近する、又は接触することで表面を描画するからである。そして試料に関する情報が得られる。この情報はたとえば像形式で表すことができる。通常の型のSPMを使用することで、たとえば磁気粒子の位置又は摩擦係数の異なる表面位置のような特別な種類の参照位置を検出することが可能である。
【0069】
これまでの説明から、たとえば可視光若しくは赤外光を用いた顕微鏡、今日使用されているような超音波技術又は磁気共鳴を利用した技術のような任意の像生成技術の場合において、どのように本発明を適用すればよいのかは、当業者には明らかとなる。
【0070】
上述の説明から、当業者はまた、どのようにして本発明を他の位置決定技術に応用すればよいのかを演繹的に理解することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に従った方法を実行する装置を概略的に図示している。
【図2A】移動によるジャンプが起こる前の像を概略的に図示している。
【図2B】移動によるジャンプが起こった後の像を概略的に図示している。
【図2C】図2A及び図2Bの所望の像変位及び実現した像変位を概略的に図示している。
【図2D】図2Cに対応する相互相関パターンを概略的に図示している。
【図3】STMを概略的に図示している。
【図3A】図3の領域Aの拡大図である。
【符号の説明】
【0072】
110 半導体回路
112 x-yテーブル
120 電子銃
122 デフォーカスされた電子ビーム
124 焦点
126 2次電子検出器
127 検出器
128 検出器
130 真空チャンバ
140 制御ユニット
142 像処理ユニット
144 モニタ
108-i 構造を有する第1像
100-1 構造
108-1 構造を有する像
100-2 構造
108-2 構造を有する像
200 変位ベクトル
202 正方形
204-1 ベクトル
204-2 ベクトル
204-3 ベクトル
204-4 ベクトル
204-5 ベクトル
204-6 ベクトル
208 ベクトル
210-1 補正ピーク
210-i 補正ピーク
300 表面
302 針
304 移動手段
306 電圧源
308 電流測定手段
310 制御ユニット
312 モニタ
314 トンネル電流
316 経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
名目上同一のグリッド要素のうちの名目上規則的なグリッドの中の、所定かつ任意のグリッド要素でツール構成要素の動作領域を設定し、前記設定は調節機構の手段によって行われることを特徴とする方法であって:
前記グリッド中の初期参照位置を検出する手順;
前記グリッドに対して前記ツール構成要素を移動する手順;
続いて前記グリッド中の参照位置を検出する手順;
前記所定のグリッド要素が、前記のツール構成要素の動作領域の所定距離内であるかどうかを検査する手順;及び、
前記の検査結果に基づいて前記移動手順を繰り返し、必要であれば前記検出手順及び前記検査手順を繰り返す手順;
を有し、
前記移動は移動ジャンプの形式をとり、
最大ジャンプサイズは、
前記グリッド周期の単位で表現された前記移動機構の位置的不確実さ、及び/又は、
前記グリッド周期の単位で表現された前記グリッド周期の不確実さ、
に基づいて決定され、並びに、
前記移動ジャンプは、前記最大ジャンプサイズよりも小さくなるように選択される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記参照位置は相関技術の手段によって検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照位置は粒子ビームの手段によって検出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ツール構成要素は走査プローブ顕微鏡であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記参照位置は電磁波の手段によって検出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記参照位置は音波の手段によって検出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記参照位置は磁気共鳴の手段によって検出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記参照位置は、前記グリッドに対して前記ツール構成要素が連続的に移動している最中に検出されることを特徴とする、上記請求項のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記移動機構は前記粒子ビームの偏向を生じさせることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記グリッドは半導体回路上のグリッドパターンであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項11】
請求項2に記載の方法を実行するために実施される制御ユニットが備えられている装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図3A】
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【公開番号】特開2007−86066(P2007−86066A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248308(P2006−248308)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】