説明

テーラードブランク装置

【課題】段取り替えを行うことなく様々な形状のワーク材の溶接を可能にしたテーラードブランク装置を提供する。
【解決手段】本テーラードブランク装置1は、第一のワーク材3を保持すると共に移動可能な可動クランプ14と、第二のワーク材5を保持すると共に位置固定された固定クランプ15と、可動クランプを移動させる駆動手段19と、第一及び第二のワーク材の突き合わせ状態を検出する位置検出手段16と、位置検出手段の検出結果に基づいて駆動手段を稼動させる位置決め判断手段17と、第一及び第二のワーク材を突き合わせ溶接する溶接手段18と、を備える。位置検出手段が第一及び第二ワーク材の突き合わせ状態を検出し、位置決め判断手段が駆動装置を作動して可動クランプを移動させてワーク材同士を幅合わせすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーラードブランク装置に関し、更に詳しくは、段取り替えを行うことなく様々な形状のワーク材の溶接を可能にすることができるテーラードブランク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、厚さや形状の異なる金属板からなるワーク材の縁端同士を突き合わせて、レーザー溶接などにより突き合わせ溶接したテーラードブランクを、プレス加工により成型し、自動車のドアパネルなどに採用する技術が普及している(例えば特許文献1を参照。)。
かかるテーラードブランク溶接にあっては、例えば図5に示すように、溶接するワーク材ごとに幅合わせが必要なため、専用クランプ型を用いてワーク材の溶接縁端を除く3方向を固定するか、あるいは幅に合わせた位置決めピン100にワーク材101を沿わせて幅方向を固定し突き合わせる方法が採用されていた。
また、溶接位置をCCDカメラ等で撮影した映像を解析することによって求め、その位置に溶接装置を移動させて溶接する技術が普及している(例えば特許文献2を参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−154811号公報
【特許文献2】特開平10−305378号公報
【0004】
しかしながら、複数の組合せのあるワーク材を同一の生産ラインで突き合わせ溶接する場合、クランプ型を用いて3方向を固定する方法では、生産ラインの中で板形状に合わせた型の段取り替えを必要とした。また、位置決めピン100により幅方向の位置合わせをする方法では、板形状が変わると幅方向の位置決めピン100の位置を変更する段取り替えを必要とする。
段取り替えをするためにはライン生産を一旦停止しなければならず、生産効率が低下してしまう問題があった。また、固定幅決めピンの場合には、ワーク材の幅方向寸法に制約が生じてしまう問題があった。
更に、溶接装置を移動させて溶接する場合であっても、突き合わせに時間が必要な場合は、全体の生産効率が低下してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、段取り替えを行うことなく様々な形状のワーク材の溶接を可能にしたテーラードブランク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.第一ワーク材と第二ワーク材とを突き合わせ溶接するテーラードブランク装置において、上記第一ワーク材を保持すると共に移動可能な可動クランプと、上記第二ワーク材を保持すると共に位置固定された固定クランプと、上記可動クランプを移動させる駆動手段と、上記第一及び第二ワーク材の突き合わせ状態を非接触で検出する位置検出手段と、上記位置検出手段の検出結果に基づいて上記駆動手段を作動させて上記第一及び第二ワーク材間のずれを解消する位置決め判断手段と、上記第一及び第二ワーク材を突き合わせ溶接する溶接手段と、備えることを特徴とするテーラードブランク装置。
2.上記駆動手段は、上記可動クランプを少なくとも溶接線に平行な幅方向へ移動させる上記1.に記載のテーラードブランク装置。
3.上記位置検出手段は、上記第一ワーク材及び上記第二ワーク材の溶接する縁端を撮影するカメラであり、上記位置決め判断手段は、上記位置検出手段によって得られた上記第一ワーク材及び上記第二ワーク材の撮影画像を解析して、突き合わせ位置のずれ方向及びずれ量を検出し、次いで上記可動クランプを該ずれ方向の反対方向且つ該ずれ量だけ移動するように上記駆動手段を作動させる手段である上記1.又は上記2.記載のテーラードブランク装置。
4.上記溶接手段は、レーザー溶接装置である上記1.乃至3のいずれか1項に記載のテーラードブランク装置。
5.上記位置検出手段による上記突き合わせ状態の検出を行う前に、位置合わせピンに上記第一及び第二ワーク材を押し当てて、該第一及び第二ワーク材の溶接する縁端を平行に対向させる上記1.乃至4のいずれか1項に記載のテーラードブランク装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のテーラードブランク装置によれば、位置検出手段が第一及び第二ワーク材の突き合わせ状態、即ち一対のワーク材角部の位置を検出し、その検出した両ワーク材の偏差から位置決め判断手段が幅合わせ量を演算し、駆動装置を作動して可動クランプを移動させてワーク材同士を幅合わせする。したがって、ワーク材の形状に合わせて段取り替えを行うことなくワーク材の幅合わせをすることができるので、ラインの生産効率を向上させることができる。また、溶接を行う位置を特定の一直線状に定めることができるため、溶接装置の位置合わせを行う必要が無く、ラインの生産効率を向上させることができる。
駆動手段が可動クランプを少なくとも溶接線に平行な幅方向へ移動させるものである場合は、ワーク材の幅方向の位置合わせを迅速かつ容易に行うことができるようになる。
また、上記位置決め判断手段が、カメラによって撮影して得られた上記第一ワーク材及び第二ワーク材の撮影画像を解析して、突き合わせ位置のずれ方向及びずれ量を検出する手段である場合は、検出精度を高めて幅合わせを高精度に行うことができる。
更に、溶接手段がレーザー溶接装置である場合は、突き合わせ溶接を確実に行うことができる。
また、位置検出手段による突き合わせ状態の検出を行う前に、位置合わせピンを用いて第一及び第二ワーク材の溶接する縁端を平行に対向させる場合は、位置決め判断手段による位置決め判断の条件を簡略化でき、且つ正確な対向状態を得ることができるため、突き合わせに必要な時間を短くすることができ、ラインの生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.テーラードブランクライン及びテーラードブランク装置の構成
以下、本発明のテーラードブランク装置を実施するための最良の形態を、図を参照して説明する。
本発明のテーラードブランク装置1は、図1に示すように、テーラードブランクライン2に用いる装置である。テーラードブランクライン2は、第一ワーク材3を載置する第一のパレット4と、第二ワーク材5を載置する第二のパレット6と、各パレット4,6からテーラードブランク装置1に第一及び第二ワーク材3,5を供給する供給ロボット7と、供給コンベア8と、テーラードブランク装置1と、排出コンベア9と、突き合わせ溶接後のテーラードブランクを検査する溶接検査装置10と、成品パレット11と、不良品パレット12と、検査後のテーラードブランクを各パレット11,12に供給する排出ロボット13と、を備えている。
【0009】
第一ワーク材3と第二ワーク材5の形状は、特に制限がなく、例えば略長方形状を挙げることができる。また、例えば図4に示すように、略台形状及び略平行四辺形状であってもよい。供給ロボット7及び排出ロボット13は回転可能なアームを備え、第一及び第二ワーク材3,5の供給及び排出を行うことができる。
【0010】
テーラードブランク装置1は、第一ワーク材3を保持すると共に移動可能な可動クランプ14と、第二ワーク材5を保持すると共に位置固定された固定クランプ15と、可動クランプ14を移動させる駆動手段19と、第一及び第二ワーク材3,5の突き合わせ状態を検出する位置検出手段16と、位置検出手段16の検出結果に基づいて駆動手段19を作動させる位置決め判断手段17と、第一及び第二ワーク材3,5を突き合わせ溶接する溶接手段18と、を備えている。
【0011】
可動クランプ14及び固定クランプ15の配置は任意に選択することができ、例えば、可動クランプ14を下流側、固定クランプ15を上流側に配置することができる。また、固定クランプ15を下流側、可動クランプ14を上流側に配置することができる。
駆動手段19は、可動クランプ14を溶接線に平行な幅方向とそれと垂直な前後方向へ移動させることができればよく、その手段を特に問わない。
位置検出手段16は、第一及び第二ワーク材3,5の突き合わせのずれ方向及びずれ量を非接触で検出できるものであれば特に問わず、例えばCCDカメラ等の撮影画像が得られる素子、位置移動することによってワーク材の端部を検出できるレーザセンサ等を挙げることができる。これらのうちCCDカメラが好ましい。画像加工により台形や平行四辺形等の複雑な形状のワーク材の端部を容易に検出することができるからである。
位置決め判断手段17は、コンピュータやシークエンス回路などの各種演算装置を適用することができる。
溶接手段18は、任意に選択することができ、例えばレーザー溶接装置を用いることができる。
【0012】
2.テーラードブランクラインの動作及びテーラードブランク装置の効果
次に、このテーラードブランクライン2の動作を説明する。
(1)本テーラードブランクライン2によって接合される第一ワーク材3及び第二ワーク材5は、供給ロボット7によってパレット4,6から供給コンベア8に供給される。次いで、供給された第一及び第二ワーク材3,5は固定クランプ15と可動クランプ14によってそれぞれ挟持される。
(2)次いで、予め溶接線上のワーク材突き合わせ基準位置Aに立てた位置決めピンに第一及び第二ワーク材3,5の溶接する縁端を押し当てることによって、第一ワーク材3の溶接位置の位置合わせと、第二ワーク材5の向きあわせを行う。その後、位置決めピンを除去することによって、第一及び第二ワーク材3,5の溶接縁端は、平行に対向する。
【0013】
(3)ワーク材突き合わせ基準位置Aにおいて、固定クランプ15によって固定された第二ワーク材5の溶接縁端と、可動クランプ14によって固定された第一ワーク材3の溶接縁端とのずれ方向及びずれ量を位置検出手段16によって検出して位置データを得る。つまり、対向する第二ワーク材5の溶接縁端及び第一ワーク材3の溶接縁端が含まれる画像を撮影する。得られた位置データは位置決め判断手段17に伝達される。
(4)位置決め判断手段17は、位置検出手段16によって得られた位置データを解析して、突き合わせ位置のずれ方向及びずれ量を検出する。
(5)位置決め判断手段17は、可動クランプ14がずれ方向の反対方向、且つずれ量だけ移動するように駆動手段19を作動させる。このように駆動手段19の作動により可動クランプ14がずれ方向と反対の方へ、ずれ量の分だけ溶接線に対して平行に幅方向へ移動することによって、第一及び第二ワーク材3,5の両端縁端を合わせることができる。
【0014】
(6)第一ワーク材3及び第二ワーク材5を溶接手段18で突き合わせ溶接する。
(7)接合されたテーラードブランクは排出コンベア9で溶接検査装置10に搬送される、溶接部の品質検査をした後、排出ロボット13によって成品パレット11と不良品パレット12とに分配される。
【0015】
上述したように、本実施形態によれば、第一及び第二ワーク材3,5の形状に合わせて段取り替えを行うことなく第一及び第二ワーク材3,5の幅合わせをすることができるので、ラインの生産効率を向上させることができる。
また、駆動手段19が可動クランプ14を溶接線に平行な幅方向へ移動させるので、第一及び第二ワーク材3,5の幅方向の位置合わせを迅速かつ容易に行うことができる。更に、位置検出手段16が非接触型CCDセンサーであるので、検出精度を高めて幅合わせを高精度に行うことができる。しかも、溶接手段18がレーザー溶接装置であるので、突き合わせ溶接を確実に行うことができる。
【0016】
従来、同一の生産ラインで5品種のテーラードブランク溶接を行う場合、段取り替えが8〜10回/月(1回/3日)程度発生しており、段取り替えに月に8〜10時間程度の時間を要していた。
これに対し、本発明を用いることによって段取り替えが不要になったため、月に8〜10時間程度の損失をなくして生産性を向上させることができた。
【0017】
尚、本発明においては、上記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、本実施形態では、各パレット4,6,11,12とラインとの第一及び第二ワーク材3,5の搬送方法として回転アームを備えたロボット7,13を使用しているが、これには限定されず、コンベア等により供給する方法も可能である。
また、本実施形態では、固定クランプ15を上流側、可動クランプ14を下流側に配置しているが、これには限定されず、可動クランプ14を上流側、固定クランプ15を下流側に配置してもよい。
更に、本実施形態では、位置検出手段16として非接触式のCCDセンサーを使用しているが、これには限定されず、各種光学センサーやレーザー式変移センサー、あるいは接触式のセンサーとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、テーラードブランク装置の全般に広く適用可能であり、特に多種類の形状のワーク材を扱う場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態にかかるテーラードブランクラインを示す平面図である。
【図2】テーラードブランク装置の要部を示す斜視図である。
【図3】テーラードブランク装置の幅合わせ機能を説明するための平面図である。
【図4】ワーク材の形状を示す平面図である。
【図5】従来のピンによりワーク材を位置決めする方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1;テーラードブランク装置、2;テーラードブランクライン、3;第一ワーク材、5;第二ワーク材、10;溶接検査装置、14;可動クランプ、15;固定クランプ、16;位置検出手段、17;位置決め判断手段、18;溶接手段、19;駆動手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ワーク材と第二ワーク材とを突き合わせ溶接するテーラードブランク装置において、
上記第一ワーク材を保持すると共に移動可能な可動クランプと、
上記第二ワーク材を保持すると共に位置固定された固定クランプと、
上記可動クランプを移動させる駆動手段と、
上記第一及び第二ワーク材の突き合わせ状態を非接触で検出する位置検出手段と、
上記位置検出手段の検出結果に基づいて上記駆動手段を作動させて上記第一及び第二ワーク材間のずれを解消する位置決め判断手段と、
上記第一及び第二ワーク材を突き合わせ溶接する溶接手段と、
を備えることを特徴とするテーラードブランク装置。
【請求項2】
上記駆動手段は、上記可動クランプを少なくとも溶接線に平行な幅方向へ移動させる請求項1に記載のテーラードブランク装置。
【請求項3】
上記位置検出手段は、上記第一ワーク材及び上記第二ワーク材の溶接する縁端を撮影するカメラであり、
上記位置決め判断手段は、上記位置検出手段によって得られた上記第一ワーク材及び上記第二ワーク材の撮影画像を解析して、突き合わせ位置のずれ方向及びずれ量を検出し、次いで上記可動クランプを該ずれ方向の反対方向且つ該ずれ量だけ移動するように上記駆動手段を作動させる手段である請求項1又は2記載のテーラードブランク装置。
【請求項4】
上記溶接手段は、レーザー溶接装置である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のテーラードブランク装置。
【請求項5】
上記位置検出手段による上記突き合わせ状態の検出を行う前に、位置合わせピンに上記第一及び第二ワーク材を押し当てて、該第一及び第二ワーク材の溶接する縁端を平行に対向させる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のテーラードブランク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−262193(P2009−262193A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114531(P2008−114531)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000203977)太平工業株式会社 (41)
【出願人】(594052674)豊田スチールセンター株式会社 (14)
【Fターム(参考)】